説明

安全弁及びシール構造

【課題】環状弾性部材の組み込みが簡便に行え弁の作動圧力が精度よく設定でき、設定された圧力が経時的に変化することがなく、環状弾性部材の耐久性が向上し、部品点数が削減されて生産コストが低減でき、生産性が高められる安全弁及びシール構造を提供する。
【解決手段】流路14を備える筒本体11と、流路14に配設され筒本体11の軸線C方向に沿って相対移動可能で、付勢手段22により軸線C方向の一方側へ付勢される弁体21と、筒本体11の一方側に配置され、流路14に連通する流入孔12cを備え流体を受け入れるスタンド部材12と、筒本体11の一方側の端部に形成される第1凹部15とスタンド部材12の他方側の端部に形成される第2凹部17とに挟まれ、径方向内方の他方側が開口する略リング穴状の空間からなる室18を有し、室18には弁体21に接触して流路14を封止する環状弾性部材19と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス等の流体の圧力を調整する安全弁及びシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス等の流体の圧力を調整するための安全弁としては、例えば特許文献1に開示されるものが知られている。特許文献1の安全弁は、流体の流路に接続された流入孔(通路)を備えた筒状の弁ハウジングと、該弁ハウジングの内部を軸線方向に相対移動可能であり流入孔に向けて付勢された弁体と、これら弁ハウジング及び弁体に接触してその間隙を封止可能な環状弾性部材(Oリング)を備えて構成されている。
【0003】
そして、流体の圧力が予め設定した圧力を超えて上昇した際には、該圧力が弁体を付勢する弁ばねの付勢力を上回り、弁体が流入孔とは反対側に向け移動することにより、Oリングの封止が解除され、流体が安全弁の外部へと放出されて、流体の圧力が減じるようになっている。流体の圧力が充分に減じた後には、弁ばねの付勢力が該圧力を上回り、弁体が元の位置に戻されてOリングが再び流体を封止する。
また、特許文献2に開示される電磁弁にも、Oリングで流体を封止する構成が記載されている。
【特許文献1】特開2004−340265号公報
【特許文献2】特開2003−269642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようにOリングを用いて流体を封止する弁の構造においては、下記の共通の課題を有している。
すなわち、装置の内部にOリングを組み込む際に、Oリングが挿入されていく間に流路の内面に形成された段差等や内面との摩擦抵抗により、該Oリングが捩れたり波打ったりして変形することがある。このようにOリングが変形した状態で装置に組み込まれると、弁体との接触の精度が確保できず、シール性が低下して、弁が設定圧力で正確に作動しなくなるという問題が生じる。
【0005】
また、組み込まれた後のOリングの周囲には、弁体と接触するために開放された空間が設けられるが、変形したOリングが該空間に向け経時的に僅かに変形することにより、組立時に設定された作動圧力と出荷検査時に計測した作動圧力とが相違し、出荷前に再度作動圧力を調整する必要が生じて、作業性が妨げられていた。
【0006】
また、このように変形して組み込まれたOリングには、無理な力が加えられているので、劣化が早期に進行しやすいという課題がある。
また、装置にOリングを組み込む際の調整には作業者の熟練を要するため、劣化したOリングを新しいものと交換したり、ガス等の流体の種類に対応して材質の異なる市販のOリングに交換したりすることは難しかった。
【0007】
また、装置のOリングを配置する部分に該Oリングを固定するための突起状の角部が形成される場合には、角部の先端がOリングを傷付けてシール性を低減させてしまうことがあるため、角部の加工を精細に行う必要が生じ、加工コストが嵩んでいた。
また、Oリングを配設するためのOリング受け部材等を装置に組み込む場合には、Oリングがシール面から離間してシール性が低下するのを防いでOリング受け部材等と周辺部材とのシール性を確保するために別途パッキン等が必要となるため、部品点数が増大し生産コストがかかっていた。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、環状弾性部材の組み込みが簡便に行えるとともに弁の作動圧力が精度よく設定でき、設定された圧力が経時的に変化することがなく、環状弾性部材の耐久性が向上し、部品点数が削減されて生産コストが低減でき、生産性が高められる安全弁及びシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち本発明の安全弁は、流路を備える筒本体と、前記流路に配設され前記筒本体の軸線方向に沿って該筒本体と相対移動可能で、付勢手段により該軸線方向の一方側へ付勢される弁体と、前記筒本体の一方側に配置され、前記流路に連通する流入孔を備え流体を受け入れるスタンド部材と、前記筒本体の一方側の端部に形成される第1凹部と前記スタンド部材の他方側の端部に形成される第2凹部とに挟まれ、径方向内方の他方側が開口する略リング穴状の空間からなる室を有し、該室には前記弁体に接触して前記流路を封止する環状弾性部材と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る安全弁によれば、筒本体の一方側の第1凹部とスタンド部材の他方側の第2凹部とに挟まれて形成される略リング穴状の空間からなる室に、流路を封止するための環状弾性部材が配置されているので、環状弾性部材を装置に組み込む際、該環状弾性部材の一方側又は他方側の端面を第1凹部又は第2凹部に当接し、安定した状態で押し込み挿入することができ、組み込み時に該環状弾性部材に捩れや波打ち等の変形が起こることを防止している。
【0011】
すなわち、従来のように、環状弾性部材を流路の内壁に摺接しながら挿入していき、流路に形成される段差や該流路との摩擦抵抗によって該環状弾性部材を変形させてしまうようなことがなく、簡便に精度よく装置に組み込むことができ、弁の作動圧力を正確に設定することが可能である。また、環状弾性部材の装置への組み込みに際して、作業者に熟練を要するようなことがなく、種々の用途に対応して交換が容易に行える。
【0012】
また、本構造による環状弾性部材の押え込み方法によれば、組み込まれた環状弾性部材には、従来のように変形等による無理な力が加わらないので、組み込み時に設定された作動圧力が経時的に変化するようなことがなく、作動圧力の設定が長期に亘り安定して維持される。また、経時的な変化が起こらないので、従来のように、製品検査時に行われていた作動圧力の再調整作業が削減でき、作業性・生産性が高められている。また、変形等の無理な力が加わらないので環状弾性部材の耐久性が向上する。
【0013】
また、組み込まれた後の環状弾性部材はその一方側及び他方側を第1凹部及び第2凹部に挟まれ安定した状態で固定されているので、流入孔から設定圧力を超える流体の圧力が加わり弁が作動した際にも、該圧力によって一方側や他方側に移動してしまうようなことがない。また、頻繁に弁が作動した場合にも装置の作動圧力の精度が安定して確保されていて、再現性に優れている。
【0014】
また、第1凹部及び第2凹部で囲まれるようにして形成される室に配置される環状弾性部材は、これら第1凹部及び第2凹部の内面に当接して固定されることとなるので、外面を傷付けてしまうようなことが防止されている。すなわち、従来のように、室の内方に向け突出する突起状の角部等が形成され、該角部等が環状弾性部材に接触してその外面を傷付けてしまい弁のシール性を低減させてしまうようなことがなく、また、角部等を形成する場合に必要とされていた精細で難しい加工が不要となり、加工コストが低減する。
【0015】
また、環状弾性部材を筒本体の第1凹部及びスタンド部材の第2凹部の2つの部品で挟み込むようにして固定しているので、従来のように、これら筒本体及びスタンド部材の他に、別途環状弾性部材を配設するための受け部材等を装置に組み込む必要がなく、該受け部材等及びこの受け部材等と周辺部材とのシール性を確保するためのパッキン等が不要となり、部品点数が削減されて、生産コストが抑えられる。
【0016】
また本発明の安全弁において、前記第1凹部は、前記軸線方向に直交し一方側を向く端面と径方向内方を向く内周面とを有し、前記第2凹部は、前記軸線方向に直交し他方側を向く端面と径方向外方を向く外周面とを有することとしてもよい。
【0017】
本発明によれば、第1凹部及び第2凹部で形成される室の一方側、他方側、径方向内方及び径方向外方が、全て角部等を形成しない平面及び曲面で形成されているので、室に配置される環状弾性部材は、これら平面及び曲面に当接して固定されることとなり、外面を傷付けられるようなことが確実に防止される。
【0018】
また本発明の安全弁において、前記弁体は、一方側の外周端縁が滑らかな曲面状に形成されており、前記外周端縁が、前記環状弾性部材に接触することとしてもよい。
【0019】
本発明によれば、環状弾性部材に接触して流体を封止する弁体の一方側の外周端縁が滑らかな曲面状に形成されており、該外周端縁が環状弾性部材に接触するようになっているので、弁体の接触により環状弾性部材が傷付くことが防止されている。すなわち、従来のように、弁体の環状弾性部材に接触する外周端縁が、例えば凸状の角部で形成される場合に、該角部が環状弾性部材を押圧する際に傷付けてしまい、シール性を低減させるようなことがない。
【0020】
また、弁体の外周端縁が曲面状に形成されていることにより、該弁体と環状弾性部材とは、該外周端縁周りに線接触に近い状態で接触することとなるので、接触面積が低減されており、弁体を付勢する付勢手段に多大な付勢力を必要とせず高い気密性を得ることができる。また、弁体の付勢力が低減できるので、環状弾性部材の耐久性が向上し、長期に亘り安定して装置を使用することができる。
【0021】
また、本発明のシール構造は、流体を通す第1の流路と、前記第1の流路の一方側に配置され、該第1の流路に連通する第2の流路と、前記第1の流路内を一方側と他方側とに移動可能に配設される弁体と、前記第1の流路と前記第2の流路とを接続し、径方向内方の他方側が該第1の流路に向け開口する略リング穴状の空間からなる室と、前記室に配置される環状弾性部材と、を備え、前記環状弾性部材の径方向内方の他方側が前記弁体の一方側の外周端縁に当接して前記第1の流路と前記第2の流路とを開閉可能とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る安全弁及びシール構造によれば、環状弾性部材の組み込みが簡便に行えるとともに弁の作動圧力が精度よく設定でき、設定された圧力が経時的に変化することがなく、環状弾性部材の耐久性が向上し、部品点数が削減されて生産コストが低減でき、生産性が高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る安全弁の概略構成を示す側断面図、図2は本発明の一実施形態に係る安全弁の環状弾性部材近傍の概略構成を示す部分側断面図である。
【0024】
本実施形態の安全弁10は、例えば流体として各種ガスを対象としており、配管や器具等のガス経路に連通状態に設置され、該ガス経路の内圧が予め設定した作動圧力を超えた場合に、流体の圧力を装置の外部に逃がして、作動圧力以下となるように調整するための装置である。
図1に示すように、本実施形態の安全弁10は、略多段円筒状の筒本体11と、該筒本体11の軸線C方向の一方側(図1における左側)に配置されるスタンド部材12と、筒本体11の軸線C方向の他方側(図1における右側)に配置されるキャップ13とを備えている。
【0025】
筒本体11は、外形部分11aの軸線Cに直交する断面が略六角形状に形成されている。外形部分11aの一方側には、該外形部分11aよりも縮径された円筒部11bが形成されており、円筒部11bの外周には雄ネジ加工が施されている。また、円筒部11bの一方側の端面は軸線Cに直交する略リング状の平面11cとされている。また、この筒本体11には、内部に流体を通すための略多段円柱孔状の流路(第1の流路)14が軸線C方向に貫通して形成されている。
【0026】
流路14は、軸線C方向の中央部分が円柱孔状に形成されており、この中央部分の他方側に、該中央部分より拡径され、内周に雌ネジ加工が施された雌ネジ部14aを備えている。また、流路14の中央部分の一方側には、該中央部分の端部から一方側へ向かうに連れ漸次径方向内方へ縮径するようにして傾斜する傾斜面14bが形成されている。また、傾斜面14bの一方側の端部には、該端部に繋がり軸線Cに平行な円柱孔状若しくは円盤孔状の縮径部14cが設けられている。
【0027】
また、縮径部14cの一方側の端部には、該端部から軸線Cに直交して径方向外方に延び、一方側を向く略リング状の平面からなる端面15aが形成されている。また、この端面15aの径方向外方の端部には、該端部から軸線Cに平行に一方側に延び径方向内方を向く内周面15bが形成されている。また、内周面15bの一方側の端部は、平面11cの径方向内方の端部に繋がっている。そして、端面15a及び内周面15bからなる第1凹部15が形成されている。
【0028】
また、スタンド部材12は、外形部分12aの軸線Cに直交する断面が略六角形状に形成されており、該外形部分12aの対辺寸法が、筒本体11の外形部分11aの対辺寸法と略同一に設定されている。また、外形部分12aの一方側には、該外形部分12aよりも縮径されたテーパ部12bが形成されており、テーパ部12bの外周にはテーパ雄ネジ加工が施されている。また、テーパ部12bの一方側の端面には円柱孔状の流入孔(第2の流路)12cが開口しており、該流入孔12cがスタンド部材12を軸線C方向に貫通している。
【0029】
スタンド部材12の外形部分12aの他方側の端面には、軸線C方向に穿設されて開口する略円柱穴状の円柱穴部16が形成されている。円柱穴部16は、その内周に雌ネジ加工が施されており、筒本体11の円筒部11bの外周と螺合されるようになっている。
【0030】
また、円柱穴部16の底部には、該円柱穴部の一方側の端部から軸線Cに直交して径方向内方に延び、他方側を向く略リング状の平面からなる端面17aが形成されている。また、この端面17aの径方向内方の端部には、該端部から軸線Cに平行に他方側に延び径方向外方を向く外周面17bが形成されている。そして、端面17a及び外周面17bからなる第2凹部17が形成されている。また、外周面17bの他方側の端面は軸線Cに直交する略リング状の平面12dとされている。平面12dの径方向内方の端部は、流入孔12cの他方側の端部に繋がっている。
【0031】
そして、筒本体11の一方側の端部近傍に形成される第1凹部15と、スタンド部材12の他方側の端部近傍に形成される第2凹部17とに挟まれる略リング穴状の空間が、室18とされている。室18は、その軸線C方向の一方側がスタンド部材12の端面17aで形成され、他方側が筒本体11の端面15aで形成され、軸線Cに直交する径方向内方がスタンド部材12の外周面17bで形成され、径方向外方が筒本体11の内周面15bで形成されている。また、端面15aと外周面17bとは互いに当接しておらず、若干の間隙が設けられている。すなわち、室18の径方向内方の他方側は、流路14へ向け開口している。また、室18には、流体の種類に対応した合成ゴム等からなるOリング(環状弾性部材)19が配設されている。
【0032】
Oリング19は、断面略円形状に形成されており、その軸線C方向の一方側が端面17aに当接し、他方側が端面15aに当接し、軸線Cに直交する径方向内方が外周面17bに当接し、径方向外方が内周面15bに当接している。またOリング19は、その端面15aと外周面17bとの間隙に対応する径方向内方の他方側の部分を、流路14へ向け配置しており、この部分を後述する弁体21に当接するようになっている。
【0033】
また、キャップ13は、外形部分13aの軸線Cに直交する断面が略六角形状に形成されており、該外形部分13aの対辺寸法が、筒本体11の外形部分11aの対辺寸法と略同一に設定されている。また、外形部分13aの他方側には、該外形部分13aよりも縮径された略円筒状の管部13bが形成されている。また、管部13bの他方側の端面には円柱孔状の流出孔13cが開口しており、該流出孔13cがキャップ13を軸線C方向に貫通している。
【0034】
キャップ13の外形部分13aの一方側の端面には、軸線C方向に穿設されて開口する略多段円柱穴状の穴部13dが形成されている。穴部13dは、その一方側の端部に形成される大径部分にOリング20を配置しており、該大径部分の他方側には、この大径部分よりも縮径された小径部分が形成されている。そして、この小径部分の内径が、筒本体11の雌ネジ部14aと同一寸法とされており、該小径部分の内周面に雌ネジ加工が施されている。また、小径部分の他方側の端部は流出孔13cに連通している。
【0035】
また、筒本体11の流路14には、弁体21が挿入されて配置されている。弁体21は、外形部分21aの軸線Cに直交する断面が略六角形状に形成されており、該外形部分21aの対角寸法が、流路14の内径よりも僅かに小さく設定されていて、該流路14内を軸線C方向に相対移動可能とされている。また、外形部分21aの一方側には、該外形部分21aよりも縮径された略円柱状の縮径部21bが形成されている。縮径部21bの一方側の外周端縁21cは、滑らかな曲面状に形成されている。弁体21の外周端縁21cは室18のOリング19に当接して配置されている。また、外周端縁21cの一方側の端部には軸線Cに直交する平面21dが形成されていて、スタンド部材12の平面12dに当接している。
【0036】
また、弁体21の他方側の端面には、軸線C方向に穿設されて開口する略円柱穴状の穴部21eが形成されている。穴部21eには、圧縮コイルばねからなる弾性部材(付勢手段)22が挿入されており、穴部21eの底面に、弾性部材22の一方側の端部が当接している。また、弾性部材22の他方側の端部には、調整ネジ23が配設されている。調整ネジ23は、略円筒状の形状をなし、その外周面に雄ネジ加工が施されていて、筒本体11の雌ネジ部14a及びキャップ13の穴部13dに該外周面を各々螺合している。
【0037】
また、調整ネジ23には軸線C方向に延びる貫通孔23aが設けられており、貫通孔23aの一方側の端部は他方側の端部より拡径して形成されていて、この拡径された部分の一方側を向く底面には、弾性部材22の他方側の端部が当接している。調整ネジ23は、筒本体11との軸線C方向の相対位置を前記螺合により調整可能とされている。また図中符号23bは、前記螺合の調整用の調整穴を示す。
【0038】
またこのようにして、筒本体11の流路14、該流路14内を軸線C方向に移動可能で弾性部材22により一方側へ付勢される弁体21、流路14に連通するスタンド部材12の流入孔12c、室18及びOリング19を備えたシール構造24が形成されている。
【0039】
次いで、この安全弁10の作動について説明する。
図2(a)は、安全弁10の閉弁状態を示しており、弁体21の外周端縁21cがOリング19に当接していて、流入孔12cの一方側から流入した流体をこの外周端縁21cの部分で封止している。すなわち、流体の圧力が、弾性部材22が弁体21を一方側へ付勢する付勢力よりも小さい値の状態を示している。
【0040】
流体の圧力が、弾性部材22の前記付勢力を超えると、図2(b)に示すように、弁体21が該付勢力に抗って軸線C方向の他方側へ移動して、安全弁10が開弁状態となる。すなわち、弁体21の外周端縁21cとOリング19との離反した間隙から、流体が他方側へ図の矢印の向きに流出するようになっている。外周端縁21cから他方側へ向け流出した流体は、略円柱穴状の流路14の内周と断面略六角形状の弁体21の外周との間隙を通過し、調整ネジ23の貫通孔23aを通って、キャップ13の流出孔13cから装置の外部へと排出される。このように流体が安全弁10から外部へと排出されて、予め設定した作動圧力より低い値に戻ると、弁体21は弾性部材22の付勢力で再び図2(a)に示す元の閉弁状態に戻るようになっている。
【0041】
以上説明したように、本実施形態の安全弁10によれば、筒本体11の一方側の端部の第1凹部15とスタンド部材12の他方側の端部の第2凹部17とに挟まれて形成される室18に流路14を封止するためのOリング19が配置されているので、Oリング19を装置に組み込む際に、該Oリング19の他方側の端面を第1凹部15に当接し、安定した状態で流路14内に押し込み挿入することができる。従って、Oリング19の組み込み時に捩れや波打ち等の変形が起こることを防止している。
【0042】
すなわち、従来のように、Oリングを流路の内壁に摺接しながら挿入していき、流路に形成される段差や該流路との摩擦によってOリングを変形させてしまうようなことがなく、簡便に精度よく装置に組み込むことができ、弁の作動圧力を正確に設定することが可能である。また、Oリング19の装置への組み込みに際して、作業者に熟練を要するようなことがなく、ガス種変更等の種々の用途に対応して交換が容易に行える。
【0043】
また、組み込まれたOリング19には、従来のように変形等による無理な力が加わっていないので、組み込み時に設定された圧力が経時的に変化するようなことがなく、作動圧力が長期に亘り安定して維持される。また経時的な変化が起こらないので、従来のように、製品検査時に行われていた作動圧力の再調整作業が削減でき、作業性・生産性が高められている。また、無理な力が加わらないので、Oリング19の耐久性が向上し、長期に亘り安定して装置を使用することができる。
【0044】
また、組み込まれたOリング19は、その一方側を第1凹部15に、他方側を第2凹部17に各々当接して挟まれ安定した状態で室18に配置されているので、流入孔12cから作動圧力を遥かに超える流体の圧力が加わり、弁が作動した際にも、該圧力によって一方側や他方側に移動させられてしまうようなことがない。また、頻繁に弁が作動した場合にも位置が変動しないので、装置の作動圧力の精度が安定して確保されていて、再現性に優れている。
【0045】
また、Oリング19を筒本体11の第1凹部15及びスタンド部材12の第2凹部17の2つの部品で挟み込むようにして固定しているので、従来のように、これら筒本体11及びスタンド部材12の他に、別途Oリング19を配設するための受け部材等を装置に組み込む必要がなく、該受け部材等及びこの受け部材等と周辺部材とのシール性を確保するためのパッキン等が不要であり、部品点数が削減されていて、生産コストが抑えられている。
【0046】
また、室18は、その一方側、他方側、径方向内方及び径方向外方を形成する各々の面が、全て角部等を形成しない平面及び曲面で形成されているので、室18に配置されるOリング19がその外面を傷付けられるようなことがない。よって、従来のように、室18の内方に向け突出する突起状の角部等が形成され、該角部等がOリング19に接触して傷付けてしまい弁のシール性を低減させてしまうようなことがなく、また、角部等を形成する場合に必要とされていた精細で難しい加工が不要となり、加工コストが低減する。
【0047】
また、Oリング19に接触して流体を封止する弁体21の一方側の外周端縁21cが滑らかな曲面状に形成されているので、弁体21の接触によりOリング19が傷付くことが防止されている。すなわち、従来のように、弁体のOリングに接触する外周端縁が凸状の角部等で形成され、該角部等がOリングを押圧する際に傷付けてしまい、シール性を低減させてしまうようなことがない。
【0048】
また、外周端縁21cが滑らかな曲面状に形成されていることにより、弁体21とOリング19とは、該外周端縁21c周りに線接触に近い状態で接触することとなるので、接触面積が低減されており、弁体21を付勢する弾性部材22に多大な付勢力を必要とせず、高い気密性を得ることができる。また、このように弁体21の付勢力が低減できるので、Oリング19の耐久性がより向上する。
【0049】
尚、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本実施形態では、シール構造24を安全弁10に用いることとして説明したが、これに限定されるものではなく、該シール構造24を、分析関連ガス用減圧弁、逆止弁、グリスを使用しているとガスの汚染がある場合等、各種装置のシール構造24として適宜用いることが可能である。
【0050】
また、本実施形態では、室18が第1凹部15の端面15a及び内周面15bと、第2凹部17の端面17a及び外周面17bとに挟まれて略リング穴状に形成されるとして説明したが、これに限られず、第1凹部15及び第2凹部17を、軸線Cに直交する断面が略扇形穴状の各々の凹溝で形成し、これらを対向配置して室18を形成することとしても構わない。
【0051】
また、本実施形態では、弁体21の外周端縁21cが滑らかな曲面状に形成されるとして説明したが、これに限られず、平面や角部等で形成されていても構わない。ただしOリング19の耐久性を鑑み、本実施形態のように曲面状に形成することがより好ましい。
【0052】
また、本実施形態では、環状弾性部材としてOリング19を用いて説明したが、流体を封止可能であればよく、これに限られず、それ以外の樹脂材料等を成形したものであっても構わない。また、材質も本実施形態の合成ゴム等に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係る安全弁の概略構成を示す側断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る安全弁の環状弾性部材近傍の概略構成を示す部分側断面図である。
【符号の説明】
【0054】
10 安全弁
11 筒本体
12 スタンド部材
12c 流入孔(第2の流路)
14 流路(第1の流路)
15 第1凹部
15a 端面
15b 内周面
17 第2凹部
17a 端面
17b 外周面
18 室
19 Oリング(環状弾性部材)
21 弁体
21c 外周端縁
22 弾性部材(付勢手段)
24 シール構造
C 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を備える筒本体と、
前記流路に配設され前記筒本体の軸線方向に沿って該筒本体と相対移動可能で、付勢手段により該軸線方向の一方側へ付勢される弁体と、
前記筒本体の一方側に配置され、前記流路に連通する流入孔を備え流体を受け入れるスタンド部材と、
前記筒本体の一方側の端部に形成される第1凹部と前記スタンド部材の他方側の端部に形成される第2凹部とに挟まれ、径方向内方の他方側が開口する略リング穴状の空間からなる室を有し、該室には前記弁体に接触して前記流路を封止する環状弾性部材と、を備えることを特徴とする安全弁。
【請求項2】
請求項1に記載の安全弁であって、
前記第1凹部は、前記軸線方向に直交し一方側を向く端面と径方向内方を向く内周面とを有し、
前記第2凹部は、前記軸線方向に直交し他方側を向く端面と径方向外方を向く外周面とを有することを特徴とする安全弁。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の安全弁であって、
前記弁体は、一方側の外周端縁が滑らかな曲面状に形成されており、
前記外周端縁が、前記環状弾性部材に接触することを特徴とする安全弁。
【請求項4】
流体を通す第1の流路と、
前記第1の流路の一方側に配置され、該第1の流路に連通する第2の流路と、
前記第1の流路内を一方側と他方側とに移動可能に配設される弁体と、
前記第1の流路と前記第2の流路とを接続し、径方向内方の他方側が該第1の流路に向け開口する略リング穴状の空間からなる室と、
前記室に配置される環状弾性部材と、を備え、
前記環状弾性部材の径方向内方の他方側が前記弁体の一方側の外周端縁に当接して前記第1の流路と前記第2の流路とを開閉可能とすることを特徴とするシール構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−243522(P2009−243522A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88578(P2008−88578)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000150981)日酸TANAKA株式会社 (33)
【Fターム(参考)】