説明

安定なフォトレジスト組成物の製造法

微量金属含有ポリマーの溶液からのポリマー含有の安定なフォトレジスト溶液の製造方法であって、(a)ポリマー、第一の溶媒及び微量金属を含有するポリマー溶液を準備し;(b)ポリマー溶液を酸性の陽イオン交換材料に通して前記微量金属を該溶液から除去して遊離酸基を含有するポリマー溶液を形成させ;(c)bのポリマー溶液からポリマーを、実質的に不溶である第二の溶媒と接触・沈殿させ;(d)溶液と第二の溶媒をろ過することにより固体のポリマーケーキを形成させ;(e)dのケーキを十分量の追加の第二の溶媒と接触させ遊離酸基を除去し;(f)eの固体ポリマーケーキに相溶性のフォトレジスト溶媒を加え、混合してポリマーをフォトレジスト溶媒中に溶解させてフォトレジスト溶液を形成させ;(g)ポリマー含有のフォトレジスト溶液から残留第一及び第二の溶媒を除去し、安定なフォトレジスト溶液を形成させる工程とを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は安定なフォトレジスト組成物の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術の記載
業界ではリソグラフィ技術を用いて製造されるマイクロ電子デバイスの高密度回路が求められている。チップあたりの素子数(集積度)を増加させる一つの方法は、チップ上の最小加工寸法(minimum feature size)を小さくすることで、これには高いリソグラフィ解像度が必要とされる。現在使用されている中間UVスペクトル範囲(例えば350nm〜400nm)より短波長の放射線(例えば遠紫外線、例えば190〜315nm)の使用は、より高解像度の可能性を提供する。しかしながら、遠紫外線では同じエネルギー線量で少ない光子しか移送されず、同じ所望の光化学的応答を達成するのに高い照射線量が必要となる。さらに、現在のリソグラフィ用装置は遠UVスペクトル領域では非常に減弱された出力しか持たない。
【0003】
感度を改良するために、いくつかの酸触媒化学増幅型レジスト組成物が開発されている。例えば、米国特許第4,491,628号(1985年1月1日)及びNalamasuらによる“遠紫外線リソグラフィ用レジスト加工の概説(An Overview of Resist Processing for Deep UV Lithography)”,3.Photopolymer Sci.Technol.4,299(1991)に開示されているようなものである。レジスト組成物は、一般的に感光性酸発生剤及び酸感受性ポリマーを含む。ポリマーは、ポリマー骨格に結合し、プロトンに対して反応性の酸感受性側鎖(ペンダント)基を有している。放射線への像様暴露により、光酸発生剤はプロトンを生ずる。レジスト膜を加熱すると、プロトンはポリマー骨格からペンダント基の接触切断を起こす。プロトンは切断反応中に消費されず、追加の切断反応を触媒する。それによってレジストの光化学的応答が化学増幅される。切断されたポリマーはアルコール及び水性塩基のような極性現像剤に可溶となるが、未露光ポリマーはアニソールのような非極性有機溶媒に可溶である。従って、レジストは現像溶媒の選択に応じてマスクのポジ像又はネガ像を形成する。化学増幅されたレジスト組成物は一般的に適切なリソグラフィ感度を有しているが、ある用途においては、その性能は、(i)熱分解及び塑性流れに関してその熱安定性を増大させること、及び(ii)空中浮遊化学汚染物質の存在下でその安定性を増大させることによって改良できる。例えば、ある半導体製造プロセスでは、後現像温度(例えばエッチング、打込みなど)は200℃に達しうる。Brunsvoldらによる米国特許第4,939,070号(1990年7月3日発行)及び4,931,379号(1990年6月5日発行)は、後現像段階での熱安定性の増大した化学増幅酸感受性レジスト組成物を開示している。Brunsvoldのレジスト組成物は、酸感受性側鎖基の切断後、水素結合ネットワークを形成することによってポリマーの熱安定性を増大している。Brunsvoldは切断反応前に水素結合部分ができないようにしている。なぜならば、そのような水素結合は酸感受性側鎖を容認しがたいほど不安定化することが知られているからである。Brunsvoldのレジストは適切な熱安定性を有しているが、低感度なので、ある用途においては不適切である。
【0004】
化学汚染に関して、MacDonaldら SPIE 14662(1991)は、画像形成メカニズムの触媒的性質のために、化学増幅されたレジスト系は、塩基性有機物質のような微量の空中浮遊化学汚染物質に対して敏感であると報告している。これらの物質は膜内に得られた現像画像を劣化させ、現像画像の線幅制御を損わせる。この問題は、基板への膜塗布と画像の現像との間に長期及び不定の時間があるような製造プロセスで増強される。レジストをそのような空中浮遊汚染物質から保護するために、塗膜周辺の空気を注意深くろ過してそのような物質を除去する。あるいは、レジスト膜を保護ポリマー層でオーバーコートする。しかしながら、これらは煩雑なプロセスである。
【0005】
従って、当該技術分野では、半導体製造に使用するための高い熱安定性及び空中浮遊化学汚染物質の存在下での安定性を有する酸感受性の化学増幅されたフォトレジスト組成物が求められていた。明らかに、これは米国特許第5,625,020号に概説された発明で達成された。前記特許は、(i)感光性酸発生剤及び(ii)ヒドロキシスチレンとアクリレート、メタクリレート又はアクリレートとメタクリレートの混合物とを含むポリマーを含む感光性レジスト組成物に関する。該レジストは高いリソグラフィ感度と高い熱安定性とを有する。該レジストはまた、空中浮遊化学汚染物質存在下でもかなりの安定性を示す。しかしながら、上で引用した先行技術並びに米国特許第5,284,930号及び米国特許第5,288,850号には、フォトレジスト組成物の安定性に関する別の問題がある。すなわち、前駆体ポリマー溶液から微量金属を除去するために使用した酸性陽イオン交換材料がある場合、遊離酸基が残り、これがレジスト組成物の製造プロセスを通して持ち越されて、目的の最終用途でレジスト組成物を不安定にする。そこで、本発明の一つの目的は、安定なフォトレジスト組成物を製造するための改良法を提供することである。
【0006】
本発明の方法は、迅速でクリーンな、そしてフォトレジスト組成物を長時間にわたって非常に安定にする方法を提供する。
先行技術
以下の参考文献を一般的な背景情報として開示する。
【0007】
1.米国特許第4,898,916号は、酸触媒エステル交換反応によるポリ(アセトキシスチレン)からのポリ(ビニルフェノール)の製造法を開示している。
2.米国特許第5,239,015号は、フォトレジスト及び光学用の低光学濃度ポリマー及びコポリマーの製造法を開示している。
【0008】
3.米国特許第5,625,007号は、フォトレジスト及び光学用の低光学ポリマー及びコポリマーの製造法を開示している。
4.米国特許第5,625,020号は、感光性酸発生剤と、ヒドロキシスチレンとアクリレート、メタクリレート又はアクリレートとメタクリレートの混合物との反応生成物を含むポリマーとを含有するフォトレジスト組成物の製造法を開示している。
【0009】
5.EP0813113 A1,Barclayは、保護ポリマーを脱保護するための水性エステル交換反応を開示している。
6.WO94 14858 Aは、保護基なしにヒドロキシスチレンを重合する方法を開示している。
【0010】
興味深いその他の特許は、米国特許第4,679,843号;米国特許第4,822,862号;米国特許第4,912,173号;米国特許第4,962,147号;米国特許第5,087,772号;米国特許第5,284,930号;米国特許第5,288,850号;米国特許第5,304,610号;米国特許第5,395,871号;米国特許第5,789,522号;米国特許第5,939,511号;米国特許第5,945,251号;米国特許第6,414,110 B1号;米国特許第6,787,611 B2号;米国特許第6,759,483 B2号;及び米国特許第6,864,324 B2号である。
【0011】
本明細書中に記載の全参考文献は、それらの全文を引用によって本明細書に援用する。
発明の要旨
【発明の開示】
【0012】
本発明は、一部は、微量金属を含有するポリマーの溶液からポリマーを含有する安定なフォトレジスト溶液を製造する方法を提供する。前記方法は、
(a)ポリマー、第一の溶媒及び微量金属を含有するポリマー溶液を準備する工程と;
(b)前記ポリマー溶液を酸性の陽イオン交換材料に通して前記微量金属を該溶液から除去することによって遊離酸基を含有するポリマー溶液を形成させる工程と;
(c)工程bの前記ポリマー溶液から前記ポリマーを、前記ポリマーが実質的に不溶である第二の溶媒と接触させることによって沈殿させる工程と;
(d)前記溶液と前記第二の溶媒をろ過することによって固体のポリマーケーキを形成させる工程と;
(e)工程dの前記ケーキを十分量の追加の前記第二の溶媒と接触させて遊離酸基をそれから除去する工程と;
(f)工程eの前記固体ポリマーケーキに相溶性のフォトレジスト溶媒を加え、その二つを混合して前記ポリマーを前記フォトレジスト溶媒中に溶解させることによってフォトレジスト溶液を形成させる工程と;そして
(g)前記ポリマーを含有する前記フォトレジスト溶液から残留するあらゆる第一及び第二の溶媒を除去して、安定なフォトレジスト溶液を形成させる工程と
を含む。
発明の詳細な説明
従って、本発明は、一部は、酸基を含まないポリマーの新規製造法を提供する。該ポリマーはその後、安定なフォトレジスト組成物を提供するのに使用できる。以下の主題は、ある種のポリマーに向けられているが、これは例示であって、広範囲のポリマーが本発明の方法に使用するためのポリマー溶液の製造に使用できることは理解されるはずである。
ポリマー溶液の製造
以下は、I:
【0013】
【化1】

【0014】
を単独で、又は式II:
【0015】
【化2】

【0016】
を有するアクリレートモノマー、及び/又は一つ又は複数のエチレン性不飽和共重合可能モノマー(EUCM)と組み合わせてヒドロキシル含有ポリマーを製造する方法の一例である。前記EUCMは、スチレン、4−メチルスチレン、スチレンアルコキシド(アルキル部分はC〜C直鎖又は分枝鎖)、無水マレイン酸、マレイン酸ジアルキル、フマル酸ジアルキル及び塩化ビニル(アルキルは1〜4個の炭素原子を有する)からなる群から選ばれ、前記方法は下記工程を含む。
工程1−重合
本工程では、式III:
【0017】
【化3】

【0018】
[式中、Rは−C(O)R又は−Rのいずれか]の置換スチレンモノマーを単独で(ホモポリマーを製造する場合)、又は前記モノマーII、及び/又は一つ又は複数の前記共重合可能モノマー(EUCM)と組み合わせて、カルボキシルアルコール溶媒中及びフリーラジカル開始剤の存在下、適切な温度で十分な時間、適切な重合条件に委ね、対応する組成のポリマーを製造する。
【0019】
上記式I、II、及びIIIにおいて下記を定義とする。
i)R及びRは、同一又は異なっており、
水素;
フッ素、塩素又は臭素;
式C(式中、nは1〜4の整数、x及びyは0〜2n+1の整数、及びxとyの合計は2n+1である)を有するアルキル又はフルオロアルキル基;及び
フェニル又はトリル
からなる群から独立して選ばれ;
ii)Rは、
水素;及び
メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル又はt−ブチル
からなる群から選ばれ;
iii)Rは、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、t−アミル、ベンジル、シクロヘキシル、9−アントラセニル、2−ヒドロキシエチル、シンナミル、アダマンチル、メチル又はエチルアダマンチル、イソボルニル、2−エトキシエチル、n−ヘプチル、n−ヘキシル、2−ヒドロキシプロピル、2−エチルブチル、2−メトキシプロピル、2−(2−メトキシエトキシ)、2−ナフチル、2−フェニルエチル、フェニルなどからなる群から選ばれ;
iv)Rは、直鎖又は分枝鎖いずれかのC〜Cアルキルである。
【0020】
式Iのホモポリマーを式IIIのモノマーから製造することも範囲に含まれる。一つの好適な態様として、ポリヒドロキシスチレン(PHS)がアセトキシスチレンモノマー(ASM)から製造できる。
【0021】
従って、本範囲は、(a)式IIIのモノマーから誘導された式Iのホモポリマー;(b)式II及び式IIIのモノマーから誘導されたコポリマー;(c)式IIIのモノマー及びEUCMから誘導されたコポリマー;及び(d)式II、式IIIのモノマー及びEUCMから誘導されたターポリマーをカバーする。本発明の新規方法によって処理される粗ポリマー生成物を、ノルボルネンモノマー、フッ素モノマーなどのようなその他のモノマーを用いて形成することも本発明の範囲に含まれる。
【0022】
本明細書中に示した式II(アクリレートモノマー)に関して、いくつかの好適なアクリレートモノマーは、(1)MAA−メチルアダマンチルアクリレート、(2)MAMA−メチルアダマンチルメタクリレート、(3)EAA−エチルアダマンチルアクリレート、(4)EAMA−エチルアダマンチルメタクリレート、(5)ETCDA−エチルトリシクロデカニルアクリレート、(6)ETCDMA−エチルトリシクロデカニルメタクリレート、(7)PAMA−プロピルアダマンチルメタクリレート、(8)MBAMA−メトキシブチルアダマンチルメタクリレート、(9)MBAA−メトキシブチルアダマンチルアクリレート、(10)イソボルニルアクリレート、(11)イソボルニルメタクリレート、(12)シクロヘキシルアクリレート、及び(13)シクロヘキシルメタクリレートである。使用できるその他の好適なアクリレートモノマーは、(14)2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート;(15)2−エチル−2−アダマンチルメタクリレート;(16)3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート;(17)3−ヒドロキシ−1−アダマンチルアクリレート;(18)2−メチル−2−アダマンチルアクリレート;(19)2−エチル−2−アダマンチルアクリレート;(20)2−ヒドロキシ−1,1,2−トリメチルプロピルアクリレート;(21)5−オキソ−4−オキサトリシクロ−ノナ−2−イルアクリレート;(22)2−ヒドロキシ−1,1,2−トリメチルプロピル2−メタクリレート;(23)2−メチル−1−アダマンチルメタクリレート;(24)2−エチル−1−アダマンチルメタクリレート;(25)5−オキソテトラヒドロフラン−3−イルアクリレート;(26)3−ヒドロキシ−1−アダマンチルメタクリレート;(27)5−オキソテトラヒドロフラン−3−イル2−メチルアクリレート;(28)5−オキソ−4−オキサトリシクロ−ノナ−2−イル2メチルアクリレートである。
【0023】
様々なコポリマーを形成するために置換スチレンと共に本発明で使用できる追加のアクリレート及びその他のモノマーは、下記物質などである。すなわち、マレイン酸モノデシル;2−ヒドロキシエチルメタクリレート;イソデシルメタクリレート;ヒドロキシプロピルメタクリレート;イソブチルメタクリレート;ラウリルメタクリレート;ヒドロキシプロピルアクリレート;メチルアクリレート;t−ブチルアミノエチルメタクリレート;イソシアナトエチルメタクリレート;トリブチルスズメタクリレート;スルホエチルメタクリレート;ブチルビニルエーテルブロックトメタクリル酸;t−ブチルメタクリレート;2−フェノキシエチルメタクリレート;アセトアセトキシエチルメタクリレート;2−フェノキシエチルアクリレート;2−エトキシエトキシエチルアクリレート;ベータ−カルボキシエチルアクリレート;無水マレイン酸;イソボルニルメタクリレート;イソボルニルアクリレート;メチルメタクリレート;エチルアクリレート;2−エチルヘキシルメタクリレート;2−エチルヘキシルアクリレート;グリシジルメタクリレート;N−ブチルアクリレート;アクロレイン;2−ジエチルアミノエチルメタクリレート;アリルメタクリレート;メソメタクリレートのビニルオキサゾリンエステル;イタコン酸;アクリル酸;N−ブチルメタクリレート;エチルメタクリレート;ヒドロキシエチルアクリレート;アクリルアミド油;アクリロニトリル;メタクリル酸;及びステアリルメタクリレートなどである。
【0024】
ポリヒドロキシスチレン(PHS)と上記アクリレートモノマーの一つ又は複数を有するコポリマーは、これらの方法によって製造される物質のいくつかである。
本工程1の別の態様において、反応混合物は追加の共溶媒を含んでいてもよい。共溶媒は、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、アセトン、及び1,4−ジオキサンからなる群から選ばれる。
【0025】
カルボキシルアルコール溶媒は、1〜4個の炭素原子を有するアルコールで、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる。使用される溶媒(及び/又は第二溶媒)の量は重要でなく、所望の最終結果を達成すればいずれの量でもよい。
【0026】
フリーラジカル開始剤は、所望の最終結果を達成すればいずれの開始剤でもよい。該開始剤は、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−アミルペルオキシピバレート、ジイソノナノイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、コハク酸ペルオキシド、ジ(n−プロピル)ペルオキシジカーボネート、ジ(sec−ブチル)ペルオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、t−ブチルペルオキシネオデカノエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、t−アミルペルオキシネオデカノエート、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート及びそれらの組合せからなる群から選ばれうる。
【0027】
好適な態様として、開始剤は、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルペンタンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパンニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシピバレート、t−アミルペルオキシピバレート、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる。
【0028】
開始剤の量は、所望の最終結果を達成する任意の量である。しかしながら、好適な態様として、前記開始剤は、すべての前記モノマーI、II、及び前記共重合可能モノマーの総モルを基にして約3モルパーセントまで存在する。
【0029】
重合条件は、所望の最終結果をもたらす任意の温度及び圧力である。一般に、温度は約30℃〜約100℃、好ましくは約40℃〜約100℃、最も好ましくは約45℃〜約90℃である。圧力は、大気圧、大気圧以下(sub-atmospheric)又は大気圧以上(super-atmospheric)であってよい。重合時間は重要ではないが、一般的に対応する組成のポリマーを製造するために少なくとも1分間にわたって行われる。
工程2−精製
工程1の重合後、所望であれば、工程3のエステル交換の前に工程1のポリマーを精製プロセスにかける。その場合、同じ種類のカルボキシルアルコール溶媒(第一溶媒)を用い、多段階分別法(multi-step fractionation process)によってポリマーを精製する。追加の第一溶媒を工程1のポリマー混合物に加え、得られたスラリーを激しく撹拌、及び/又は沸点(約66℃)に数分間加熱し、その後25℃ほどの低温に冷却して放置する。これによってスラリーは相分離を起こすので、その後液体を遠心分離、ろ過、デカンテーション又は類似手段によって取り出す。このプロセスをそれ以上精製が確認されなくなるまで、例えばデカントされた溶媒の小サンプルを蒸発乾固しても実質的に残渣が認められなくなるまで、少なくとももう1回繰り返す。この分別プロセス、すなわち加熱、冷却、分離、及び溶媒交換は一般的に2〜10回行われる。
【0030】
モノマーの重合から製造された粗ポリマーの不純度を測る一つの重要な尺度は多分散性の値である。一般に、低い値、例えば約3未満を有するのが望ましい。低い値は、重合反応が鎖長においてより均一であったことを示している。この精製工程の独自性は、形成された所望ポリマーは溶媒にある程度不溶であること、そして所望でない低平均分子量ポリマー及び所望でないモノマーは溶媒に可溶であることである。従って、新規の精製/分別は、これらの望ましくない材料の除去を提供する。一般に、粗ポリマーの多分散性はこの精製/分別工程の前、最中及び後に測定され、この値を精製処理前の元の粗ポリマーの値の少なくとも約10%削減することを目標としている。好ましくは、多分散性が約2.0未満の生成物を得るのが望ましい。多分散性は、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比率を意味し、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で測定されることは理解されるはずである。
工程3−エステル交換
エステル交換工程では、工程2のポリマー/溶媒混合物を、触媒量のエステル交換触媒の存在下、前記アルコール溶媒中でエステル交換条件に委ねる。触媒は、ポリマー、又は前記アルキルアクリレートモノマーII、又は前記共重合可能モノマー(EUCM)と実質的に反応しないようなものである。該触媒は、(無水)アンモニア、リチウムメトキシド、リチウムエトキシド、リチウムイソプロポキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムイソプロポキシド、セシウムメトキシド、セシウムエトキシド、セシウムイソプロポキシド、及びそれらの組合せからなる群から選ばれる(カルボキシルアルコキシドアニオンはカルボキシルアルコール溶媒と類似している)。触媒は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム及びそれらの組合せのようなアルカリ金属水酸化物でもよいことも理解されるはずである。使用されるモノマーが、−Rである−Rの場合、触媒はHClのような鉱酸などの強酸である。
【0031】
使用される触媒の量は、前記ポリマーの組成に存在するモノマーIの約0.1モルパーセント〜約2モルパーセントである。
好適な態様において、触媒は、前記アルコール溶媒中の溶液として工程(b)で添加される。
【0032】
工程(b)の温度は、形成されたエステル交換された副産物エステルが反応混合物から継続的に除去されて、I、II、及び前記共重合可能モノマーのポリマーが形成されるような温度である。そのような温度は約50℃〜約200℃であろう。好適な態様において、エステル交換反応は前記アルコール溶媒の還流温度で実施される。
工程4−精製
この所望による精製工程は触媒除去工程の前に来る。この工程4によれば、アルコール溶液中のポリマーに、前記アルコール溶媒とは非混和性の第二の溶媒を第二の層が形成されるまで加える。次に混合物を激しく撹拌するか数分間加熱沸騰させた後、放冷する。明らかに分離した第二の層が形成されたら、次にこれをデカンテーション又は類似手段によって取り出す。該プロセスをそれ以上精製が確認されなくなるまで、例えばデカントされた第二の(非アルコール)溶媒の小サンプルを蒸発乾固しても残渣が認められなくなるまで繰り返す。このようにして副産物及び低平均分子量の材料が除去される。
【0033】
次に、ポリマーのアルコール溶液を蒸留にかけて、アルコール中に混和していた残留第二溶媒を除去する。ほとんどの場合、第二溶媒の除去は共沸蒸留によって達成される。共沸混合物は、アルコール又は第二溶媒のいずれかの沸点よりも低い温度で沸騰する。
【0034】
本工程の方法に有用な典型的な第二溶媒は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、リグロイン、低級アルキルハロ炭化水素、すなわち塩化メチレンなどである。
本発明の方法の工程
工程A:ポリマー溶液の準備
この時点で、ポリマー、第一の溶媒、及び微量金属を含有するポリマー溶液は準備できており(上記)、これが本発明の新規方法の出発材料となる。
工程B:微量金属の除去
上記工程3で使用される触媒の性質を考慮すると、使用触媒に由来するあらゆる微量金属を系から除去することは重要である。本工程では、陽イオン交換樹脂、好ましくは酸性陽イオン交換樹脂を用いて所望の最終結果を達成する。酸性イオン交換樹脂、例えば水素形のスルホン化スチレン/ジビニルベンゼン陽イオン交換樹脂が本方法に好適に利用される。適切な酸性交換樹脂は、Rohm and Haas Companyから例えばAMBERLYST 15 酸性イオン交換樹脂を入手できる。このAmberlyst樹脂は、典型的には80,000〜200,000ppbほどのナトリウム及び鉄を含有している。本発明の方法に利用する前に、該イオン交換樹脂は水と鉱酸溶液で順次処理して金属イオン濃度を低減すべきである。ポリマー溶液から触媒を除去する際、イオン交換樹脂は、ポリマー溶液の溶媒と同一又は少なくとも相溶性の溶媒で濯ぐことが重要である。この工程Bの手順は、米国特許第5,284,930号及び米国特許第5,288,850号に開示されている手順と類似しうる。一般的に、陽イオン交換手順は、所望の最終結果を達成する任意の温度、圧力及び流量で実施される。
工程C:ポリマーの沈殿
本工程では、ポリマー溶液をポリマーが実質的に不溶である第二の溶媒と接触させることによって、第一の溶媒からポリマーを分離する。沈殿は、この接触プロセスが行われると発生する。第二の溶媒は一般的に、水、ヘキサン類、ヘプタン類、オクタン類、石油エーテル、リグロイン、低級アルキルハロ炭化水素(例えば塩化メチレン)、及びそれらの混合物からなる群から選ばれる。これには上記全アルカン類の混合異性体も含まれる。
例示すると、ポリマー溶液は、メタノール中27〜30%固体溶液を18MΩの撹拌脱イオン水中に室温及びポリマー溶液:水の比率1:10で量り入れることによって沈殿させる。撹拌速度は、最終結果として生成物がろ過可能な粒子となるような速度である。ポリマー溶液の計量装填速度は、一般的に、撹拌脱イオン水に毎分ポリマー溶液の10〜15%を入れるというものである(例えば60kgのポリマーの場合、6〜8kg/分を600kgの脱イオンHOに)。この装填速度は最適の沈殿粒径を可能にするので、適切なろ過及び洗浄スキームの助けとなる。本工程の結果は、水/メタノール媒体中の沈殿ポリマー粒子のスラリー混合物で、ポリマーの大部分は不溶性である(ポリマーの一部の低分子量フラグメント及び不純物は、得られた水/メタノール溶液に可溶性でありうる)。イオン交換(IEX)樹脂工程に由来する酸性種は母液溶媒に可溶である。
【0035】
第一及び第二の溶媒に関して、これらは、第一の溶媒はポリマーが実質的に可溶である任意の溶媒であり、第二の溶媒はポリマーが実質的に不溶である任意の溶媒であるという点で、ポリマー特異的である。従って、本明細書中で述べた溶媒に関して、一つの溶媒があるポリマーには第一溶媒として使用できても、別のポリマーにとっては同じ溶媒が適切とは限らず、異なる溶媒が利用されることもある。
工程D:ろ過
本工程では、ポリマー溶液、第二溶媒、及び沈殿ポリマーをろ過して、実質的に固体のポリマーケーキを得る。このろ過は、重力によって又は真空を使用して実施できる。
例示すると、沈殿ポリマー粒子及び水/メタノール溶液からなるポリマースラリーを室温で25〜30μmフィルタに通してろ過し、ポリマー粒子を水/メタノール溶液から分離/単離する。ポリマー粒子はフィルタ上に捕捉されるが、水/メタノール溶液はフィルタを通過し、該溶液と共にあらゆる可溶性の低分子量ポリマーフラグメント及び不純物(酸性IEX樹脂工程由来の酸性不純物を含む)を取り去って廃棄する。結果は、水/メタノールで湿ったポリマーウェットケーキである。ろ過は典型的には遠心力又は真空条件下で実施され、所望でない水/メタノール溶液をフィルタ上のポリマーウェットケーキからさらに除去し、水分を約40〜約60%、例えば50%に下げる。
沈殿したポリマーウェットケーキを少なくとももう1回、適当な溶媒に再溶解し、適当な溶媒中で沈殿させ、次いでろ過することも本発明の範囲に含まれる。
工程E:ポリマーケーキの洗浄
本工程では、工程Dのポリマーケーキを十分な量の追加の新鮮な第二溶媒で少なくとも1回洗浄し、遊離酸基をそれから除去する。この工程は前記ケーキからの酸基の除去を提供するが、まだ少量の前記第一及び第二溶媒は存在している。
例示すると、ポリマーウェットケーキをフィルタ上で新鮮な脱イオン水で洗浄して、ポリマー中のメタノールの量を削減し、そしてあらゆる可溶性低分子量フラグメント及びIEX樹脂工程由来の酸性不純物を含む不純物をさらに除去する。洗浄は室温及び大気圧で1〜10分間かけて弱く撹拌しながら実施される。新鮮な脱イオン水の装填量は、予洗されたウェットケーキの重量の約50〜67wt%、又は沈殿前の出発ポリマー溶液の約30〜50wt%である。この装填量の水洗は、ポリマーウェットケーキからのメタノールの適切な除去を提供するため、引火の危険性を最小限化し、また、あらゆる可溶性低分子量ポリマーフラグメント及び不純物もさらに除去される。結果は、脱イオン水中で再スラリー化されたポリマーウェットケーキとなり、次いでこれを前工程で述べたようにろ過/単離して洗浄水を除去する。洗浄はフィルタ上で行われるので、更なる不純物への暴露が最小限に抑えられ、ポリマーウェットケーキの時宜を得た再単離を可能にする。再度ポリマーウェットケーキは水分約50wt%にまで“脱水”される。
工程F:溶媒交換
本工程では、固体ポリマーは溶媒交換され、フォトレジスト相溶性(PC)溶媒である非プロトン性/有機溶媒中に溶解される。このPC溶媒は、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類及びヒドロキシル又はケト基を持たない脂肪族エステル類から選ばれる少なくとも一つのメンバーである。該溶媒の例は、グリコールエーテルアセテート類、例えばエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)並びにエステル類、例えばエチル−3−エトキシプロピオネート、メチル−3−メトキシプロピオネートなどであるが、この中でPGMEAが好適である。これらの溶媒は単独でもそれらの混合物の形態でも使用できる。
【0036】
PC溶媒の更なる例は、ブチルアセテート、アミルアセテート、シクロヘキシルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、3−エトキシエチルプロピオネート、3−エトキシメチルプロピオネート、3−メトキシメチルプロピオネート、メチルアセトアセテート、エチルアセトアセテート、ジアセトンアルコール、メチルピルベート(ピルビン酸メチル)、エチルピルベート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、メチルラクテート、エチルラクテート、プロピルラクテート、及びテトラメチレンスルホンなどである。これらのうちプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類及びアルキルラクテート類が特に好適である。溶媒は単独で用いても二つ以上を混合して用いてもよい。有用な溶媒混合物の例は、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテートとアルキルラクテートとの混合物である。プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類のアルキル基は、好ましくは1〜4個の炭素原子のもの、例えばメチル、エチル及びプロピルで、メチル及びエチルが特に好適であることに注意する。プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類は、1,2−及び1,3−置換体を含むので、置換位置の組合せに応じてそれぞれ3つの異性体を含む。それらは単独でも混合しても使用できる。また、アルキルラクテート類のアルキル基は、好ましくは1〜4個の炭素原子のもの、例えばメチル、エチル及びプロピルで、メチル及びエチルが特に好適であることにも注意する。
【0037】
プロピレングリコールアルキルエーテルアセテートをPC溶媒として使用する場合、全PC溶媒の少なくとも50重量%を占めるのが好ましい。同じくアルキルラクテートをPC溶媒として使用する場合、全PC溶媒の少なくとも50重量%を占めるのが好ましい。プロピレングリコールアルキルエーテルアセテートとアルキルラクテートの混合物をPC溶媒として使用する場合、該混合物は全PC溶媒の少なくとも50重量%を占めるのが好ましい。このPC溶媒混合物において、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテートが60〜95重量%であり、アルキルラクテートが40〜5重量%であるのがさらに好適である。プロピレングリコールアルキルエーテルアセテートの割合が低ければ不十分なコーリングの問題を招くが、その割合が高ければ溶解が不十分となり、粒子及び異物の形成を招くことになろう。アルキルラクテートの割合が低ければ溶解不十分となって多数の粒子及び異物の問題を起こすが、その割合が高ければ粘度が高すぎて塗布できず、貯蔵安定性を失った組成物をもたらすことになろう。
【0038】
通常、PC溶媒は、化学増幅ポジレジスト組成物中の固体100重量部あたり約300〜2,000部、好ましくは約400〜1,000重量部の量で使用される。濃度は、既存法で膜形成が可能である限り、この範囲に限定されない。
工程G:第一及び第二溶媒の除去
本工程では、ポリマー、及び残留第一及び第二溶媒を含有する得られたフォトレジスト溶液を蒸留プロセスにかけ、それによって第一及び第二溶媒をフォトレジスト溶液から除去し、実質的に何らの遊離酸基も水(すなわち<5000ppmの水)も含まない安定なフォトレジスト組成物を提供する。
【0039】
最終フォトレジスト組成物を製造するのにそのように所望すれば、フォトレジスト材料を単離することなく製造できる。すなわち、フォトレジスト溶液(上記のようにして製造)に、化学線への暴露で酸を発生できる光酸発生(PAG)化合物(光酸発生剤)、並びに必要であれば塩基及び各種添加剤(光学的及び機械的特性、塗膜形成能、基板との接着性などを改良するための添加剤)を、所望により溶液の形態で直接加えることによる。組成物の粘度は必要であればPC溶媒の添加によって調整される。レジスト組成物の製造に使用されるPC溶媒は、工程Fで使用されたPC溶媒の種類に必ずしも限定されず、フォトレジスト組成物の製造に従来使用されているいずれかその他のPC溶媒を使用することも可能である。さらに、化学増幅レジストに従来使用されているあらゆる光酸発生化合物及びその他の添加剤も使用できる。レジスト組成物中の総固体分は、溶媒に対して好ましくは9〜50重量%、さらに好ましくは15〜25重量%の範囲である。
【0040】
光酸発生剤は、高エネルギー放射線への暴露で酸を発生できる化合物である。好適な光酸発生剤は、スルホニウム塩類、ヨードニウム塩類、スルホニルジアゾメタン類、及びN−スルホニルオキシイミド類である。これらの光酸発生剤を以下に例示するが、それらは単独で使用しても二つ以上を混合して使用してもよい。
【0041】
スルホニウム塩は、スルホニウムカチオンとスルホネートとの塩である。スルホニウムカチオンの例は、トリフェニルスルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(4−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、(3−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、(3,4−ジ−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、ビス(3,4−ジ−tert−ブトキシフェニル)フェニルスルホニウム、トリス(3,4−ジ−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、ジフェニル(4−チオフェノキシフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシカルボニル−メチルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリス(4−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシフェニル)スルホニウム、(4−tert−ブトキシフェニル)ビス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、トリス(4−ジメチルアミノフェニル)スルホニウム、2−ナフチルジフェニルスルホニウム、ジメチル−2−ナフチルスルホニウム、4−ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウム、4−メトキシフェニル−ジメチルスルホニウム、トリメチルスルホニウム、2−オキソシクロヘキシルシクロヘキシル−メチルスルホニウム、トリナフチルスルホニウム、及びトリベンジルスルホニウムなどである。スルホネートの例は、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、4,4−トルエンスルホニルオキシベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、及びメタンスルホネートなどである。前述の例の組合せに基づくスルホニウム塩が含まれる。
【0042】
ヨードニウム塩は、ヨードニウムカチオンとスルホネートとの塩である。ヨードニウムカチオンの例は、ジフェニルヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、4−tert−ブトキシフェニルフェニルヨードニウム、及び4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムなどのアリールヨードニウムカチオンである。スルホネートの例は、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、4,4−トルエンスルホニルオキシ−ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、及びメタンスルホネートなどである。前述の例の組合せに基づくヨードニウム塩が含まれる。
【0043】
スルホニルジアゾメタン化合物の例は、ビススルホニルジアゾメタン化合物及びスルホニルカルボニルジアゾメタン化合物、例えばビス(エチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1−メチルプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2−メチルプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(パーフルオロイソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(4−メチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2−ナフチルスルホニル)ジアゾメタン、4−メチルフェニルスルホニルベンゾイルジアゾメタン、tert−ブチルカルボニル−4−メチルフェニルスルホニルジアゾメタン、2−ナフチルスルホニルベンゾイルジアゾメタン、4−メチルフェニルスルホニル−2−ナフトイルジアゾメタン、メチルスルホニルベンゾイルジアゾメタン、及びtert−ブトキシカルボニル−4−メチルフェニルスルホニルジアゾメタンなどである。
【0044】
N−スルホニルオキシイミド光酸発生剤は、イミド骨格とスルホネートとの組合せなどである。イミド骨格の例は、スクシンイミド、ナフタレンジカルボン酸イミド、フタルイミド、シクロヘキシルジカルボン酸イミド、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イミド、及び7−オキサビシクロ[2,2,1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸イミドである。スルホネートの例は、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、及びメタンスルホネートなどである。
【0045】
ベンゾインスルホネート光酸発生剤は、ベンゾイントシレート、ベンゾインメシレート、及びベンゾインブタンスルホネートなどである。
ピロガロールトリスルホネート光酸発生剤は、すべてのヒドロキシル基が、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、及びメタンスルホネートによって置換されているピロガロール、フルオログリシン、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノンなどである。
【0046】
ニトロベンジルスルホネート光酸発生剤は、2,4−ジニトロベンジルスルホネート、2−ニトロベンジルスルホネート、及び2,6−ジニトロベンジルスルホネートなどで、スルホネートの例は、トリフルオロメタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート、ヘプタデカフルオロオクタンスルホネート、2,2,2−トリフルオロエタンスルホネート、ペンタフルオロベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、4−フルオロベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、ベンゼンスルホネート、ナフタレンスルホネート、カンファースルホネート、オクタンスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、ブタンスルホネート、及びメタンスルホネートなどである。同じく有用なのは、ベンジル側のニトロ基がトリフルオロメチル基によって置換されている類似のニトロベンジルスルホネート化合物である。
【0047】
スルホン光酸発生剤は、ビス(フェニルスルホニル)メタン、ビス(4−メチルフェニルスルホニル)メタン、ビス(2−ナフチルスルホニル)メタン、2,2−ビス(フェニルスルホニル)プロパン、2,2−ビス(4−メチルフェニルスルホニル)プロパン、2,2−ビス(2−ナフチルスルホニル)プロパン、2−メチル−2−(p−トルエンスルホニル)プロピオフェノン、2−シクロヘキシルカルボニル−2−(p−トルエンスルホニル)プロパン、及び2,4−ジメチル−2−(p−トルエンスルホニル)ペンタン−3−オンなどである。
【0048】
グリオキシム誘導体形の光酸発生剤は、ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−o−(p−トルエンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−α−ジフェニルグリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−α−ジシクロヘキシルグリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−2,3−ペンタンジオングリオキシム、ビス−o−(n−ブタンスルホニル)−2−メチル−3,4−ペンタンジオングリオキシム、ビス−o−(メタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(トリフルオロメタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(1,1,1−トリフルオロエタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(tert−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(パーフルオロオクタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(シクロヘキシルスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(ベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(p−フルオロベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(p−tert−ブチルベンゼンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−o−(キシレンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、及びビス−o−(カンファースルホニル)−α−ジメチルグリオキシムなどである。
【0049】
これらの光酸発生剤のうち、スルホニウム塩、ビススルホニルジアゾメタン化合物、及びN−スルホニルオキシイミド化合物が好適である。
化学増幅ポジレジスト組成物において、光酸発生剤の適当な量は、組成物中の固体100重量部あたり0〜20部、特に1〜10重量部である。光酸発生剤は単独でも二つ以上の混合物でも使用できる。レジスト膜の透過率は、露光波長で低透過率を有する光酸発生剤を使用し、添加する光酸発生剤の量を調整することによって制御できる。
【0050】
工程Gとその後の添加(前述)に関して、これらの工程は無水ベース、すなわち水分量約5,000ppm未満で実施することが重要である。それは、可能な副反応を回避するためであり、ポリマー生成物を単離せずにレジスト組成物への便利で直接的な経路を提供し、その後追加の加工工程を実施する機構を提供するためでもある。
【0051】
前述の精製工程に関して、これらの工程を両方とも使用するのも、これらの工程を一つだけ使用するのも、これらの工程をいずれも使用しないのも、本発明の範囲に含まれることは理解されるべきである。
【0052】
本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、これらの実施例は説明のために提供されたものであり、本発明の範囲を制限するものでは決してない。
【実施例】
【0053】
実施例1
直径1インチのPPカラム(19cm)に水で湿ったUSFTM樹脂A15を加えた。この材料を1000グラムの脱イオン水で1時間フラッシュした。樹脂上に1インチの脱イオン水が残るまでカラムを排水した。500グラムのメタノールをカラムに加え、液面が樹脂の約1〜2インチ上になるまで2.5時間かけて排水した。次いで、樹脂をメタノール中に12時間浸しておいた。第二のメタノール洗浄(フラッシュ)を同様に実施し、再度さらに12時間浸し置いた。第二のメタノール浸漬後、樹脂を追加の500グラムのメタノールで1時間にわたってフラッシュし、水分測定のためにサンプルを採取した。水分保持量はKF滴定による測定で0.08%であった。
【0054】
1600グラムのポリ(4−ヒドロキシスチレン/t−ブトキシスチレン)ポリマー(モル比50:50)をメタノールに溶解し、得られたポリマー溶液をイオン交換床(前述のようにして調製)に27時間かけて通した。
【0055】
次に、イオン交換されたポリマー溶液400グラムを脱イオン水と接触させ(モル比10:1)、それによってポリマーを沈殿させた。溶液及び沈殿ポリマーをガラスフリット(glass-frit)フィルタ上でろ過し、新鮮な脱イオン水で2回洗浄した。各洗液は沈殿体積の約半分であった。ウェットケーキポリマーを水分測定のためにサンプル採取した。結果はKF滴定による測定で55.6%であった。
【0056】
222.9グラムのポリマーウェットケーキ(脱イオン水中固形分44.4%)を丸底フラスコに入れ、230.9グラムのエチルラクテートを該ウェットケーキポリマーに加え、30%固体溶液を形成した(水を除いた乾燥ポリマーを基にして)。ウェットケーキは大きな“ドウボール(dough ball)”を形成したので、完全に溶解させるために40℃で3時間の弱い加熱と12時間の撹拌を必要とした。得られた溶液を真空下、回転蒸発器(rotovap)でストリップして水を除去し、固体の割合を38〜42%の範囲に上げた。合計194.3グラムの脱イオン水/エチルラクテートを除去し(しかしながら、不適切な蒸気捕集により若干のロスあり)、溶液を固形分49.7%及びKF滴定に基づく水分量0.17%とした。固形分を、48.0グラムのエチルラクテートを加えて調整し、溶液を42.5%の固形分とした。12.4グラムのエチルラクテートの第二の添加を行い、固体を48%の範囲の固形分にした。この最終溶液のサンプルを75℃で4時間、促進安定性試験にかけた。得られた材料は緑色に変色せず、t−ブトキシ基が分解せず、従って安定であることを示していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微量金属を含有するポリマーの溶液からポリマーを含有する安定なフォトレジスト溶液を製造する方法であって、前記方法は、
(a)ポリマー、第一の溶媒及び微量金属を含有するポリマー溶液を準備する工程と;
(b)前記ポリマー溶液を酸性の陽イオン交換材料に通して前記微量金属を該溶液から除去することによって遊離酸基を含有するポリマー溶液を形成させる工程と;
(c)工程bの前記ポリマー溶液から前記ポリマーを、前記ポリマーが実質的に不溶である第二の溶媒と接触させることによって沈殿させる工程と;
(d)前記溶液と前記第二の溶媒をろ過することによって固体のポリマーケーキを形成させる工程と;
(e)工程dの前記ケーキを十分量の追加の前記第二の溶媒と接触させて遊離酸基をそれから除去する工程と;
(f)工程eの前記固体ポリマーケーキに相溶性のフォトレジスト溶媒を加え、その二つを混合して前記ポリマーを前記フォトレジスト溶媒中に溶解させることによってフォトレジスト溶液を形成させる工程と;そして
(g)前記ポリマーを含有する前記フォトレジスト溶液から残留するあらゆる第一及び第二の溶媒を除去して、安定なフォトレジスト溶液を形成させる工程と
を含む方法。
【請求項2】
第一の溶媒がアルコール性溶媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第二の溶媒が、水、ヘキサン類、ヘプタン類、オクタン類、石油エーテル、リグロイン、低級アルキルハロ炭化水素、及びそれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アルコール性溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール、及びそれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
微量金属を含有するポリマーの溶液から安定なポリマーを製造する方法であって、前記方法は、
(a)ポリマー、第一の溶媒及び微量金属を含有するポリマー溶液を準備する工程と;
(b)前記ポリマー溶液を酸性の陽イオン交換材料に通して前記微量金属を該溶液から除去することによって遊離酸基を含有するポリマー溶液を形成させる工程と;
(c)工程bの前記ポリマー溶液から前記ポリマーを、前記ポリマーが実質的に不溶である第二の溶媒と接触させることによって沈殿させる工程と;
(d)前記溶液と前記第二の溶媒をろ過することによって固体のポリマーケーキを形成させる工程と;
(e)工程dの前記ケーキを十分量の追加の前記第二の溶媒と接触させて遊離酸基をそれから除去する工程と;そして
(f)前記ポリマーから残留するあらゆる第一及び第二の溶媒を除去して、安定なポリマーを形成させる工程と
を含む方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法から誘導された組成物に基づく電子回路のパターン形成用の一次フォトレジスト組成物。
【請求項7】
請求項5に記載の方法から誘導された組成物に基づくエポキシ樹脂用の硬化剤。
【請求項8】
請求項5に記載の方法から誘導された組成物を配合しているワニス。
【請求項9】
請求項5に記載の方法から誘導された組成物を配合している印刷用インク。
【請求項10】
請求項5に記載の方法から誘導された組成物を配合しているゴム用粘着付与剤。
【請求項11】
請求項5に記載の方法から誘導された組成物を配合している原油分離用剤。
【請求項12】
請求項5に記載の方法から誘導された組成物を配合している硬質又は軟質プリント回路板用ソルダーマスク又は感光性カバーレイ。
【請求項13】
請求項5に記載の方法から誘導された組成物中のヒドロキシ基との反応によってさらに誘導体化されているエポキシ材料。
【請求項14】
請求項5に記載の方法から誘導された組成物も配合しているエポキシ又はブロックトイソシアネート含有ペイント塗料。
【請求項15】
請求項5に記載の方法から誘導された組成物を配合している高粘性ポリマーであって、該組成物はそのための粘度調整剤として働いている高粘性ポリマー。
【請求項16】
請求項5に記載の方法から誘導された組成物を配合しているポリマー材料であって、該組成物はそのための抗酸化剤として働いているポリマー材料。
【請求項17】
請求項5に記載の方法から誘導された組成物を組み込んでいる微小電気機械システム。
【請求項18】
請求項5に記載の方法から誘導された組成物を含有している写真複写用トナー樹脂。
【請求項19】
請求項5に記載の方法から誘導された組成物を含有している反射防止コーティング。
【請求項20】
第一の溶媒が、ポリマーが実質的に可溶である任意の溶媒である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
第二の溶媒が、ポリマーが実質的に不溶である任意の溶媒である、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2009−521539(P2009−521539A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547238(P2008−547238)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/044808
【国際公開番号】WO2007/078445
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(506200599)デュポン・エレクトロニック・ポリマーズ・エル・ピー (5)
【Fターム(参考)】