説明

安定剤を含むオレフィンポリマーおよびそれから製造されるポリオレフィン繊維

ポリマーに対してppmで:フラン-2-オンタイプのラクトンと、50〜200 ppmの量のフェノールと、50〜300 ppmの量の立体障害性アミンと、50から280 ppm未満の量の有機ホスファイトおよび/または有機ホスホナイトとを含むオレフィンポリマー組成物。該ポリマー組成物は、非置換フラン-2-オン分子を、ポリマーに対して11〜49 ppmの範囲の量で含有する。このようなオレフィンポリマー組成物から、高い靭性および破断点伸びを有するステープルファイバーならびに不織布が製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定剤混合物を含む熱可塑性ポリマー、接着性が改善された繊維、該ポリマーから製造された繊維からつくられた熱接着された不織布(thermal bonded non-woven fabric)および該繊維の製造方法に関する。具体的には、本発明は、ベンゾフラン-2-オンタイプの少なくとも1種の化合物を含む安定剤混合物とフェノール系長期安定剤とを含むポリオレフィンベースの熱可塑性樹脂、およびこのような安定化されたポリオレフィンベースの熱可塑性樹脂からつくられた熱接着性繊維(thermal bondable fibres)に関する。
【0002】
「繊維」の定義は、繊維に類似の製品、例えばフィブリルおよびカットフィラメント(ステープルファイバー)をも含む。
【背景技術】
【0003】
ある熱可塑性材料の繊維は、種々の方法による熱接着製品、例えば不織布の製造において広く用いられる。これらの方法は、不織布の複合構造のための主にステープルカーディング/カレンダリングおよびこれらのいずれの組み合わせである。
【0004】
カーディング/カレンダリングを用いる長紡糸および短紡糸(long and short spinning)による熱接着ステープルは、衛生不織布の製造に適用される主要な技術の一つである。
熱接着された不織布に対するポリオレフィン繊維の基本的な要件は、熱カレンダリング法が基づく温度および圧力の合同の作用により、繊維が互いに接着することである。
【0005】
ポリマーへの添加剤が、繊維の接着性、ひいては不織布の機械的特性に影響を及ぼすことがよく知られている。繊維のよりよい接着性は、不織布の機械的特性、特に接着インデックスにより本質的に規定される機械的強度の改良に導く。
【0006】
乏しい機械的特性は、しばしば、メルトフローレートの増加により明らかにされるようにポリマーの著しい酸化的分解の結果であり得る。
【0007】
最も一般的に用いられる安定剤を含有するポリマーにより得られる繊維が、ほとんど溶接能力を有さないこともよく知られている。よって、上記の繊維をカレンダリングすることにより得られる不織生地の機械的特性は乏しい。
【0008】
よって、このような問題点により影響されない熱接着性繊維の生産に対する必要性が存在する。
【0009】
国際出願WO 02/31038号からの従来技術において、第2級芳香族アミンと、立体障害性(sterically hindered)フェノールと、2-フェニルベンゾフラン-2-オンの部類から選択されるラクトンとのブレンドが、メルトフローレートの維持により明らかにされるように、酸化的分解に対する良好な安定性をポリマーに賦与することが知られている。開示されたブレンドを用いたポリマーの安定化は、実際の実施例によると、少なくとも450 ppmという非常に大量の立体障害性フェノールを必要とする。
【0010】
ベンゾフラン-2-オンタイプのラクトンを含有する安定剤混合物で安定化されたポリオレフィン繊維は、既によく知られている。このような安定剤混合物は、フェノールを含有しない。例えば、米国特許第6521681号は、(i) ベンゾフラン-2-オンタイプのラクトンと(ii) 立体障害性アミンとを含む安定剤混合物を開示している。このような安定剤混合物は、第三成分、つまり(iii) 有機ホスホナイトまたはホスファイトをさらに含み得る。
【0011】
米国特許第5834541号は、繊維に適する安定剤オレフィンポリマーを開示している。オレフィンポリマーは、ホスファイトおよびベンゾフラノンおよび/またはN,N-ジアルキルヒドロキシルアミンを含む安定化系により安定化される。
【0012】
欧州特許第1260618号は、2-フェニルベンゾフラン-2-オンの部類から選択されるラクトンと、任意にホスファイトまたはホスホナイトとを含むプロピレンポリマーからつくられるステープルファイバーを開示している。
【0013】
ポリオレフィンファイバー用のこのような安定剤混合物は、該繊維が満たす必要がある要件をあらゆる点で満足するわけではない。このような安定剤混合物の使用は、乏しい機械的特性、特に低い靭性および破断点伸びに導く。
【0014】
機械的特性が乏しいポリマーは、紡糸作用にも影響を及ぼす。実際、いくつかのフィラメントの破断が、紡糸プロセス中に起こる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
今回、予期せぬことに、相乗効果を有する混合物を形成する安定剤のために上記の問題点を示さない熱可塑性ポリオレフィンが見出された。本発明による安定化されたポリマーは、押出機中の良好なレベルの安定性(溶融安定剤)と、紡糸口金のすぐ外側での制御されたレベルの酸化的分解(長期熱老化)を達成し、メルトフローレートの値の中程度の増加に導く。よって、本発明による繊維および不織布は、良好な機械的特性、特に高い靭性および破断点伸びをも示す。
【0016】
驚くべきことに、本発明による安定化されたポリマーで製造された繊維は、高い熱溶接性および接着性をも有する。
【0017】
本発明による安定化されたポリマーの大きな利点は、繊維の熱溶接性の増大が、繊維、ひいてはそれによりつくられる不織布の機械的特性を損なわないことである。
【0018】
本発明による安定剤ポリマーは、紡糸プロセスの間のフィラメントの破断を低減することにより、紡糸プロセスの実効性をも改善する。
【0019】
本発明によるポリマー組成物および繊維は、フェノール系酸化防止剤を含有するが着色を示さない。なぜなら、このような酸化防止剤が少量で存在するからである。変色しないことは、ある適用、例えば衛生の適用において重要な要件である。
【0020】
よって、本発明は、ポリマーに対してppmで:
- フラン-2-オンタイプのラクトンと、
- 50〜200 ppmの量のフェノールと、
- 50〜300 ppmの量の立体障害性アミンと
- 50から280 ppm未満の量の有機ホスファイトおよび/または有機ホスホナイト
とを含むオレフィンポリマー組成物に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
該ポリマー組成物は、ポリマーに対して11〜49 ppmの範囲の量の非置換のフラン-2-オン分子を含有する。
好ましくは、該ポリマー組成物は、40〜220 ppm、より好ましくは50〜200 ppmのフラン-2-オンタイプのラクトンを含有する。
【0022】
本発明のある好ましい実施形態によると、上記のラクトンは、ベンゾフラン-2-オンタイプのものである。適切なベンゾフラン-2-オンおよびそれらの製造方法は、U.S. 4,325,863、4,338,224、5,175,312および5,344,860号に記載される。上記の化合物は、例えばGB 2322374号に記載されるように、安定化組成物またはポリオレフィンに既に適用されている。
【0023】
このようなベンゾフラン-2-オンの例は、式(I):
【0024】
【化1】

【0025】
(式中、R1基はH以外のいずれの種類の置換基、好ましくは未置換フェニルまたは置換フェニル基であり;R2〜R5基は独立してHまたはいずれの種類の他の置換基、好ましくはアルキル基である)
の化合物である。
【0026】
好ましくは、フェニル基に結合している置換基は、1〜3の、1〜12の炭素原子を有するアルキル基、より好ましくはC1〜C4アルキル基(あわせて最大で18の炭素原子を有する)、1〜12の炭素原子を有するアルコキシ基、2〜18の炭素原子を有するアルコキシカルボニル基またはハロゲン原子、例えば塩素である。
【0027】
好ましくは、R2は水素の基であり、R4は水素の基、1〜12の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖状のアルキル、C4〜C8シクロアルキル、例えばシクロペンテニル、シクロヘキシル、またはハロゲン原子、例えば塩素であり、R3基はR2またはR4基の意味を有するかまたは式:
-(CH2)n-CO-O-R6;-(CH2)n-CO-N(R7)2;-(CH2)n-CO-O-A-O-CO-(CH2)n-E;
-(CH2)n-CO-NR8-A-NR8-CO-(CH2)n-E;-(CH2)n-CO-NR8-A-O-CO-(CH2)n-E;
【0028】
【化2】

【0029】
-CH2-S-R9;-CH(C6H5)-CO-O-R6;または-D-E
(ここで、R6は水素の基、1〜18の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖状のアルキル、酸素または硫黄が介在する2〜18の炭素原子を有するアルキル、合計で3〜16の炭素原子を有するジアルキルアミノアルキル、C4〜C8シクロアルキル、例えばシクロペンテニル、シクロヘキシル、フェニル、あるいはあわせて最大で18の炭素原子を有する1〜3のアルキル基で置換されているフェニルであり;
nは0、1または2であり;
【0030】
置換基R7は互いに独立して、水素の基、1〜18の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖状のアルキル、C4〜C8シクロアルキル、例えばシクロペンテニル、シクロヘキシル、フェニル、あわせて最大で16の炭素原子を有する1または2のアルキル基で置換されているフェニル、式:
-C2H4OH;-C2H4-O-CmH2m+1またはC2H4OCO-R10
の基であるか、あるいはそれらが結合する窒素原子とピペリジンまたはモルホリン基を形成し;
mは1〜18であり;
R10は、水素の基、1〜22の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖状のアルキル、あるいは5〜12の炭素原子を有するシクロアルキルであり、
【0031】
Aは、窒素、酸素または硫黄が介在していてもよい2〜22の炭素原子を有するアルキレン基であり;
R8は、水素の基、1〜18の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖状のアルキル、C4〜C8シクロアルキル、例えばシクロペンテニル、シクロヘキシル、フェニル、あわせて最大で16の炭素原子を有する1または2の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基で置換されているフェニル、あるいはベンジルであり;
R9は、1〜18の炭素原子を有するアルキル基であり;
Dは、-O-;-S-;-SO-;-SO2-または-C(R11)2-であり;
置換基R11は互いに独立して、水素の基、C1〜C16アルキル(2つのR11があわせて1〜16の炭素原子を含有する)であるか、R11はさらにフェニル基または式:
-(CH2)n-CO-O-R6または-(CH2)n-CO-N(R7)2
(式中、n、R6およびR7基は上記で規定したとおりである)の基であり;
Eは、式(II):
【0032】
【化3】

【0033】
(式中、R1、R2およびR4基は、式(I)について上記で規定したとおりである)
の基であり;
R5は、水素の基、1〜20の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖状のアルキル、C4〜C8シクロアルキル、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル基、ハロゲン原子、例えば塩素、または式:
-(CH2)n-CO-O-R6または-(CH2)n-CO-N(R7)2
(式中、R6およびR7基は上記で規定したとおりである)
の基であるか、あるいはR5基はR4基と一緒にテトラメチレン基を形成する)
の基である。
【0034】
好ましくは、R3が水素の基、1〜12の炭素原子を有するアルキル、シクロペンチル、シクロヘキシル、塩素または式:
-(CH2)n-CO-O-R6;-(CH2)n-CO-N(R7)2または-D-E
(式中、n、R6、R7、DおよびE基は上記で規定したとおりであり、R6は、特に水素の基、1〜18の炭素原子を有するアルキル、C4〜C8シクロアルキル、例えばシクロペンチルまたはシクロヘキシル基である)
の基であるベンゾフラン-2-オンである。
【0035】
さらに好ましくは、R1が、フェニルまたはあわせて最大で12の炭素原子を有する1または2の直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル基で置換されているフェニルであり;R2が水素基であり;R4が、水素の基または1〜12の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖状のアルキルであり;R3が水素の基、1〜12の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖状のアルキル、または式:
-(CH2)n-CO-O-R6;-(CH2)n-CO-N(R7)2もしくは-D-E
の基であり;R5が水素の基、1〜20の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖状のアルキル、または式:
-CH2-CO-O-R6もしくは-CH2-CO-N(R7)2
の基であるか、あるいは
R5基がR4基と一緒にテトラメチレン基を形成し、n、R6、R7、DおよびE基は最初に規定した基であるベンゾフラン-2-オンである。
【0036】
上記のもののうち好ましいラクトンは、ベンゾフラン-3-フェニル-2-オンタイプである。このような化合物は、R1がフェニル基であり、R2〜R5が独立して水素の基または直鎖もしくは分岐鎖状のアルキル、好ましくは水素またはC1〜C6アルキル基である式(I)により表される。
【0037】
さらに好ましくは、該ラクトンは5,7-ジ-tert-ブチル-ベンゾフラン-3-フェニル-2-オン、そのメチル置換誘導体またはいずれのこのような化合物の混合物を含む。このような化合物は、R3およびR5がtert-ブチル基であり、R2およびR4基が水素であり、R1が1以上のメチル基でさらに置換されていてもよいフェニル基である式(I)により表される。
【0038】
特に好ましい実施形態において、該ラクトンは、5,7-ジ-tert-ブチル-ベンゾフラン-3-フェニル-2-オン、5,7-ジ-tert-ブチル-ベンゾフラン-3-(3,4-ジ-メチル-フェニル)-2-オンおよび5,7-ジ-tert-ブチル-ベンゾフラン-3-(2,3-ジ-メチル-フェニル)-2-オンまたはそのような化合物のいずれの混合物の群から選択される化合物を含む。最も好ましくは、該ラクトンは、上記の最後の2つの化合物の混合物であるチバスペシャリティーケミカルズのIrganox (登録商標) HP-136を含む。
【0039】
一般的に高い分子量を有する適切なフェノール系酸化防止剤は、一般式(III):
【0040】
【化4】

【0041】
(式中、R12およびR14基は互いに同一または異なって、1〜12の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖状のアルキル基であり、R3は、硫黄のようなヘテロ原子を任意に含有していてもよいアルキル、アリール、アルキルアリールおよびシクロアルキル基から選択される一価または多価の基である)
を有する。
【0042】
好ましいフェノール系酸化防止剤の例は、2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-ter-ブチルベンジルアビエテート;トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-s-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン(これは、CyanamidからCyanox 1790 (商標)の下で市販で入手可能である);カルシウム ビ[モノエチル(3,5-ジ-ter-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート];1,3,5-トリス(3,5-ジ-ter-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-s-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン;1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-ter-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン;ペンタエリスリチル-テトラキス[3(3,5-ジ-ter-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、およびオクタデシル 3-(3',5'-ジ-tert-ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(これらは全てチバスペシャリティーケミカル社から次の商標:Irganox 1425、Irganox 3114、Irganox 1330、Irganox 1010およびIrganox1076の下でそれぞれ市販で入手可能である)である。
【0043】
本発明により用いられるポリオレフィンに添加剤として用い得る有機ホスファイトは、一般式(IV):
【0044】
【化5】

【0045】
(式中、R15、R16、R17は同一または異なって、1〜18の炭素原子を有するアルキル、アリールまたはアリールアルキル基である)、
一般式(V):
【0046】
【化6】

【0047】
(式中、R18およびR19は同一または異なって、上記のR15基の意味を有する基であり;
Qは四価のアルキル基、例えばC(CH2-)4である)、
一般式(VI):
【0048】
【化7】

【0049】
(式中、R20、R21、R22、R23は同一または異なって、R15基について上記した意味を有する基であり、Xは二価のアルキル、アリールまたはアリールアルキル基である)
から選択されるのが好ましい。
【0050】
一般式(IV)に含まれる有機ホスファイトの例は、本明細書に参照として組み込まれる米国特許第4,187,212号および第4,290,941号に記載される。
【0051】
一般式(IV)、(V)、(VI)に含まれる化合物の具体例は:トリス(2,4-ジ-ter-ブチルフェニル)ホスファイト(チバスペシャリティーケミカルズ社からIrgafos 168 (商標)の下で市販で入手可能);ジステアリルペンタエリスリトール ジホスファイト(Borg-Warner ChemicalからWeston 618 (商標)の下で市販で入手可能);4,4'-ブチリデンビス(3-メチル-6-ter-ブチルフェニル-ジトリデシル)ホスファイト(Adeka Argus ChemicalからMark P (商標)の下で市販で入手可能);トリス(モノノニル-フェニル)ホスファイト;ビス(2,4-ジ-ter-ブチル)ペンタエリスリトール ジホスファイト(Borg-Warner ChemicalからUltranox 626 (商標)の下で市販で入手可能)である。
【0052】
本発明により添加剤として用い得る有機ホスホナイトは、一般式(VII):
【0053】
【化8】

【0054】
(R24、R25、R26は同一または異なって、1〜18の炭素原子を有するアルキル、アリールまたはアリールアルキル基である)
の化合物から選択されるのが好ましい。
あるいは、これが好ましいが、R24基は(VIII)基:
【0055】
【化9】

【0056】
(R23およびR24は同一または異なって、R20基について上記した意味を有する基であり、Xは二価のアルキル、アリールまたはアリールアルキル基である)
により置換され得る。
【0057】
本発明に従って簡便に用い得る一般式(VII)に含まれる有機ホスホナイトの例は、英国特許第1,372,528号に記載される。
一般式(VII)に含まれる化合物の好ましい例は、SandozからSandostab P-EPQ (商標)の下で市販で入手可能なテトラキス(2,4-ジ-ter-ブチルフェニル)4,4 min -ジフェニレンジホスホナイトである。
【0058】
有機ホスファイトおよびホスホナイトは、一般的に、溶融状態にあるポリオレフィンの分解および酸化を阻害するのに用いられ(プロセス安定剤)、よって、当該技術によると、完全な安定化を得るためには大量のフェノール系安定剤の添加を必要とする。
【0059】
本発明においてもポリオレフィン安定剤として用いられるHALSは、アミン基の立体障害性を有するアミン化合物であり、光により誘導される酸化に対する固体状態にあるポリオレフィンの安定剤として一般的に用いられる。
上記の場合においても同様に、当該技術によると、ポリオレフィン製品の充分な安定化のためには、大量のフェノール系安定剤の添加が必要である。
【0060】
本発明により用いられるHALSは、一般式(IX):
【0061】
【化10】

【0062】
(式中、R29基は同一または異なって、C1〜C4アルキル基またはテトラメチルピペリジン基またはそれが結合しているピペリジン炭素原子とC5〜C9シクロアルキル基を形成するアルキル基であり;R30基は同一または異なって、水素またはC1〜C18アルキル基、C7〜C18アリールアルキル基またはそれが結合しているピペリジン炭素原子とC5〜C10シクロアルキル基を形成するアルキル基であり;R31基は同一または異なって、水素またはC1〜C18アルキル基またはC7〜C18アリールアルキル基であり;R32基は水素またはC1〜C8アルキル基またはベンジル基であり;Zは水素またはC1〜C18アルキル、C1〜C12アルキレン、C3〜C12アルケニル、C3〜C5アルキニル、C7〜C18アリールアルキル、C2〜C4アシル、C2〜C18アルカノイル、C3〜C18アルコキシアルキル、C3〜C18アルケノイル、オキシリック、シアノメチル、キシリレニル基、または1〜4価であり1〜4のヒドロキシル基と任意にエーテル、エステルまたは複素環基とを含有する基(該基の結合価は、ピペリジン基の窒素に関連する)、または1以上のエステルまたはアミド基を含有する二価の基、または-CO-N(R33)(R34)基(ここで、R33およびR34は炭化水素基である)である)
を有する1以上の置換ピペリジン基を分子内に含有するモノマーまたはオリゴマー性の化合物である。
【0063】
好ましくは、ZがC1〜C12アルキル基またはC3〜C8アルケニル、C7〜C11アラルキル基、または1以上のエステル基を含有する二価の基である(上記の基の結合価は、ピペリジン基の窒素原子に関連する)。
【0064】
本発明による好ましいHALSの具体例は、ポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]-1,6-ヘキサンジイ[(2,2,6,6-テトラメチ-4-ピペリジニル)イミノ]];N,N',N'',N'''-テトラキス(4,6-ビス(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)-アミノ)トリアジン-2-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン;(1,6-ヘキサンジアミン, N, N'-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-ポリマー、およびポリ-(N-β-ヒドロキシエチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシ-ピペリジル スクシネート)を含む。これらは、チバスペシャリティーケミカルズ社からChimassorb 944 (商標)、Chimassorb 119 (商標)、Chimassorb 2020 (商標)、およびTinuvin 622 (商標)の下でそれぞれ市販で入手可能である。
【0065】
オレフィンポリマーは、ポリエチレン、例えばHDPE、LLDPE、LDPE、または好ましくは結晶性プロピレンポリマー、最も好ましくは、90より高い、最も好ましくは93より高い周囲温度でのキシレン可溶画分を有する結晶性プロピレンホモポリマーあるいは85より高い周囲温度でのキシレン可溶画分を有するプロピレンとエチレンおよび/または直鎖もしくは分岐鎖状のC4〜C10 α-オレフィンとの半結晶性ランダムポリマーあるいはこれらの混合物のいずれかであり得る。好ましいα-オレフィンは、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテンである。該ポリマーにおいて、全コモノマー含量は0.05重量%〜20重量%の範囲である。上記の結晶性ポリマーは、プロピレンの配列のアイソタクチックタイプの立体規則性を有するのが好ましい。
【0066】
ヘテロ相(heterophasic)オレフィンポリマー組成物は、(A) 上記の結晶性オレフィンポリマーと(B) 弾性オレフィンポリマーとして用いることもできるし、これらにより構成される。該組成物は、典型的には、5〜80重量%の量のポリマー画分(B)と、20〜95重量%%の量の結晶性ポリマー(A)とを含有する。弾性オレフィンポリマーは、典型的には、エチレン含量が典型的には15〜85重量%の範囲であり、存在する場合にはジエン含量が0.5〜5重量%であるエチレンとC3〜C10 α-オレフィンと任意にジエンとのポリマーである。ポリマー(B)は、エチレン-プロピレンコポリマーおよびエチレン-プロピレン-ジエン ラバーターポリマーから選択されるのが好ましい。
【0067】
上記のヘテロ相ポリマー組成物は、溶融状態にある上記の成分の混合、またはチーグラー・ナッタ触媒のような立体特異触媒の存在下での連続重合を介する公知の方法により製造される。
【0068】
結晶性プロピレンポリマーは、プロピレンの配列のシンジオタクチックタイプの立体規則性も有することができる。
【0069】
一般的に、本発明による繊維を製造するのに用いられる添加剤を添加された(additivated)ポリオレフィンは、重合において直接または制御されたラジカル分解(controlled radical degradation)を介して得られる、0.5と100 g/10分との間、より好ましくは1.5と35 g/10分との間の、以下に記載の方法により測定されるメルトフローインデックス値を有する。
【0070】
安定剤混合物成分は、安定剤をポリマーペレットと直接ドライブレンドすること、タンブルミキサーおよびヘンシェルブレンダーによることのようないずれの通常の方法でオレフィンポリマーと混ぜあわせることができる。溶液、エマルションまたはスラリーの安定剤混合物成分は、その後の溶媒の蒸発を伴うかまたは伴わずに、粒状ポリマー上に噴霧するかまたは粒状ポリマーと混合することができる。例えば、オレフィンポリマーの顆粒は、米国特許第5,141,772号に従って、流動床中に安定剤成分で被覆されるかまたは安定剤成分に浸漬させることができる。安定剤成分は、バンバリーミキサー、ブラベンダーミキサー、練りロール機またはスクリュー押し出し機により溶融ポリマーとブレンドすることもできる。
【0071】
安定剤混合物成分は、米国特許第5,236,962号に議論される通常の技術に従って、マスターバッチの形でオレフィンポリマーに加えることもできる。
【0072】
上記の安定剤混合物の他に、本発明のオレフィンポリマーは、添加される添加剤が安定剤でないという条件において、ポリマー組成物の意図した使用に適切な他の添加剤、例えば繊維を含有することができる。当該技術において通常用いられる適切なさらなる添加剤は、例えば滑り防止剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤、核剤、顔料、防汚剤(anti-soiling agent)、光増感剤である。
【0073】
別の観点において、本発明は、上記の量で安定剤を含有するオレフィンポリマーからつくられる熱溶接可能な繊維に向けられる。より具体的には、本発明はステープルファイバーに関する。
【0074】
典型的には、本発明による繊維は、少なくとも16 cN/texの靭性および/または少なくとも200%の破断点伸びおよび/または少なくとも350 cNの150℃での接着力(bonding force)を有する。
典型的には、本発明による繊維は、1.5〜2.5 dtexの範囲のタイターを有する。
【0075】
本発明の繊維は、当該技術において知られるいずれの溶融紡糸プロセスにより製造することができる。特に、長紡糸(long-spinning)装置および短紡糸(short-spinning)装置の両方を用いることにより、ステープルファイバーの形で製造することができる。
【0076】
長紡糸装置は、通常、比較的速い紡糸速度で繊維が押し出されて冷却カラムで空冷される第一の紡糸部分を含む。続いて、これらの繊維は最終工程に行き、この間に繊維は引取られ(drawn)、けん縮されてバルクにされ(crimped-bulked)、そして切断される。一般に、上記の最終工程は、繊維ロービングが単一の大きいロービングにまとめられる特定の部分において、紡糸とは分離して行なわれる。上記の大きいロービングは、次いで、100〜200 m/分の範囲の速度で運転する引取り、けん縮-バルクおよび切断装置に送られる。
【0077】
他のタイプの長紡糸装置において、上記の最終工程は、紡糸工程と連続して行われる。この場合、繊維はまとめから引取りロールに直接行き、ここでこれらは引取られる。
【0078】
長紡糸装置を用いるときに通常採用されるプロセス条件は、以下のとおりである。
- 孔当たりの押出量:0.1 g/分より大きい、好ましくは0.15〜1 g/分、より好ましくは0.2〜0.5 g/分;
- 巻取速度:500 m/分に等しいかそれより高い、好ましくは500〜3500 m/分、より好ましくは600〜2000 m/分;
- ダイを出た後に繊維が冷却され固化する空間:0.50 mより大きい。
さらに、延伸比が1.1〜4であるのが好ましい。
【0079】
長紡糸装置についてのさらなる詳細については、Friedelm Hauser "Plastics Extrusion Technology", Hauser Publishers, 1988, 第17章を参照されたい。
【0080】
短紡糸装置は、紡糸速度が引取り、けん縮および切断速度に矛盾しないので、連続操作を許容する。
【0081】
短紡糸装置を用いる本発明により用いるのに最も適するプロセス条件は、以下のとおりである。孔当たりの押出量は0.005〜0.18 g/分、好ましくは0.008〜0.07 g/分、より好ましくは0.01〜0.03 g/分の範囲である。巻取速度は、30〜500 m/分、好ましくは40〜250 m/分、より好ましくは50〜100 m/分の範囲である。延伸比は、1.1〜3.5、好ましくは1.2〜2.5である。さらに、ダイの出口(output)での繊維の冷却および固化空間(冷却空間)は、2 mmより大きいのが好ましく、より好ましくは10 mmより大きく、特に10〜350 mmである。該冷却は、通常、エアジェットまたは気流により誘発される。
【0082】
短紡糸装置についてのさらなる詳細については、M. Ahmed, "Polypropylene fibres science and technology", Elsevier Scientific Publishing Company (1982) 第344〜346頁を参照されたい。
【0083】
上記の長紡糸および短紡糸装置についての紡糸温度は、通常、220〜340℃、好ましくは250〜300℃の範囲である。特に、押出温度は、繊維が互いに接着する能力に負の影響を与えずに260〜275℃の範囲であり得る。
【0084】
第一の工程でのステープルの製造の後に、ステープルファイバーをカードを通過させることにより、およびカレンダリングによる熱接着(カレンダーロールを用いる)によりファイバーウェブを形成する。
用いる具体的な熱接着法に関係なく、接着温度は120〜160℃の範囲が好ましく、より好ましくは130〜145℃の範囲である。
【0085】
本発明のさらなる実施形態は、本発明によるステープルファイバーを用いて製造された熱接着された物品、特に不織布である。
【0086】
さらなる実施形態において、本発明は、少なくとも1つの層が上記の熱接着された不織布でつくられた2またはそれより多い層からつくられた多層不織布に関する。他の層は不織布であってもよいし、それらは他の種類のポリマーまたはポリマー組成物でつくられていてもよい。
【0087】
本発明による不織布は、別の種類の複合構造を製造するためにキャストフィルムと積層することもできる。
【0088】
典型的には、本発明によりつくられた20 グラム/m2の重量の不織布は、少なくとも8 N/5cmのCD靭性および/または少なくとも30 N/5cmのMD靭性と、少なくとも35%のCD破断点伸びおよび/または少なくとも30%のMD破断点伸びとを有する。これは、典型的には、少なくとも15 N/5cmの熱接着インデックス(thermal-bonding index)を有する。
【0089】
「MD」の略語は、「縦方向(machine direction)」を意味し、繊維の「長さに沿った」方向、すなわち繊維の方向のことをいう。「CD」の略語は、「横方向(cross direction)」を意味し、繊維を横切る方向、縦方向または長手方向に垂直のことをいう。
【実施例】
【0090】
以下の実施例は、本発明を説明するために与えられ、本発明を限定するものではない。
実施例のポリマーおよび繊維に関するデータは、以下に報告する方法により測定する。
- MFR:ISO 1133法(230℃、2.16 kg)による。
- 繊維のタイター:10 cm長のロービングから、50の繊維を無作為に選択して秤量する。該50の繊維の全重量(mgで表される)を2倍することにより、dtexでのタイターを得る。
【0091】
- 繊維の靭性および(破断点)伸び:500 mのロービングから100 mm長の部分を切断する。この部分から、試験する単一の繊維を無作為に選択する。試験される各単一の繊維を、インストロンダイナモメータ(モデル1122)のクランプに固定し、100%より低い伸びについて20 mm/分のけん引速度で、および100%より高い伸びについて50 mm/分のけん引速度で破断点まで引っ張る(クランプ間の最初の距離は20 mmである)。極限強さ(破断点荷重)および破断点伸びを測定する
【0092】
靭性は、次の等式を用いて得られる。
靭性 = 極限強さ (cN)×10/タイター (dtex)
【0093】
- 繊維の接着力:試験片を、連続繊維(continuous fibres)からつくられる0.4メートル長の400 texのロービングから作製する(ASTM D 1577-7法)。ロービングを80回撚った後に2つの端を一つにし、ロービングの2つの半分がロープとしてより合わさった物質を得る。熱接着を上記の試験片について、種々のプレート温度(表を参照)で運転するBruggel HSC-ETK熱接着装置を用いて、0.28 MPaのクランピング圧力および1秒の接着時間を用いて行う。2 cm/分のけん引速度で運転する上記のダイナモメータは、熱接着点において各試験片を構成するロービングの2つの半分を分離するのに必要な平均の力を測定するのに用いられる。得られるグラフは、最小から最大の値で変動する力を表す(ピークが得られる)。グラフに示される全ての最小および最大の値を平均して得られる値は、上記の平均力を表す。cNで表される結果は、少なくとも8つの測定を平均して得られ、繊維の接着強度を表す。
【0094】
不織布の試料を作製する場合、接着強度は、長さ20 cmおよび幅5 cmの試験片について測定される。幅5 cmの両端をダイナモメータのクランプに固定し、100 mm/分のクランプ速度で引っ張る(クランプ間の最初の距離は10 cm)。カレンダリング工程に関して、縦方向(MD)および横方向(CD)で測定される最大の力は、繊維の強度を表す。
【0095】
- 熱接着インデックス
【数1】

(式中、Xは不織布の重量であり、20は対照重量である)
として計算される。
【0096】
実施例1
二軸押出機において、プロピレンホモポリマー(MFR 11 g/10分および3.2重量%の室温でのキシレン可溶性)を、抗酸剤(anti acid agent)としての200 ppmのステアリン酸カルシウムと:
- 125 ppmのオクタデシル 3-(3',5'-ジ-tert-ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバスペシャリティーケミカル社により商標Irganox 1076として市販)、
- 110 ppmの5,7-ジ-tert-ブチル-3-(3,4-ジ-メチルフェニル)-3H-ベンゾフラン-2-オン(チバスペシャリティーケミカル社により商標Irganox HP136として市販)、
- 220 ppmのトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(チバスペシャリティーケミカル社により商標Irgafos 168として市販)、および
- 200 ppmのポリ(N-β-ヒドロキシメチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシ-ピペリジル スクシネート) (チバスペシャリティーケミカル社により商標Tinuvin 622として市販)
からなる安定剤組成物との存在下に混合し、溶融して顆粒にする。
【0097】
安定化されたポリマーを、表1に報告する条件で運転する通常の長紡糸ラインで紡糸する。フィラメントをオンラインで延伸し、けん縮させる。延伸条件を表2に報告する。
このようにして得られた40 mmのステープルファイバーは、表3に報告する機械的特性および紡糸の性質を有する。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
【表3】

【0101】
比較例1
実施例1を、安定剤組成物がフェノールを含まないこと以外は同じにして繰り返す。
得られたステープルファイバーは、表3に報告する機械的特性および紡糸の性質を有する。
実施例1の繊維は、比較例1のものよりもより高い靭性および伸びを有し、後者は明らかなポリマー分解による影響を受ける。
【0102】
実施例2
実施例1で作製したステープルファイバーを、通常のカード/カレンダー機を用いて、表4に報告する条件を用いてカーディング/カレンダリングして、20g/m2の重量の不織布を製造する。
【0103】
【表4】

【0104】
比較例2
比較例1で製造したステープルファイバーを、実施例1で用いたのと同じ通常のカード/カレンダー機および同じ設定条件を用いてカーディング/カレンダリングする。
表5は、それぞれ実施例2および比較例2で製造した不織布の特性を示す。
エダナ標準法(Edana Standard Method)を用いて、不織布の特性を試験する。
【0105】
【表5】

【0106】
表5において、不織布のいくつかの特性を報告する。特に、本発明による不織布の熱接着インデックスおよび靭性は、著しく改善されている。熱接着インデックスは比較例の布のものに比べてほぼ2倍であり、CD靭性は比較例の布のCD靭性のほぼ3倍である。
フェノール系酸化防止剤が存在するが、実施例1の繊維および実施例2の不織布はともに変色を示さない(気体退色(gas fading))。
【0107】
実施例3および比較例3
実施例1および比較例1で得られた組成物を、スクリューの長さ/直径の比が25であり、スクリューの直径が25 mmでありかつ圧縮比が1:3であるLeonard 25紡糸パイロットラインで紡糸する。このラインは、Costruzioni Meccaniche Leonard-Sumirago (VA)により販売される。
【0108】
紡糸試験を以下の条件で行う。孔の直径:0.4 mm、押出量:0.4 g/分×孔、機械的値は1500 m/分の巻取速度、延伸比(stretching ratio) 1:1.5で測定する。
このようにして得られた繊維の特性を表6に報告する。
【0109】
表6において、データは、比較例のものに対して、本発明によるポリマー組成物は、容易にかつ安定して加工可能であり、同時に、得られる繊維は靭性および特に接着力の値が良好であるが、比較例のポリマー組成物はかなり溶融分解し、それにより不充分な溶融強度となり、不安定な紡糸プロセスとなったために加工することさえもできないことを示す。試験のための適当な繊維を回収できない。
【0110】
【表6】

【0111】
実施例4および5
実施例1の組成物を、スクリューの長さ/直径の比が5であり、Costruzioni Meccaniche Leonard-Sumirago (VA)により販売されるLeonard 25紡糸パイロットラインで紡糸する。
紡糸条件は、表8に報告するようなより低い押出温度である以外は実施例3のものと同じである。
このようにして得られた繊維の特性を表7に報告する。
【0112】
比較例4および5
実施例1の組成物の変わりに比較例1の組成物を用いる以外は実施例4および5を繰り返す。
【0113】
【表7】

【0114】
表7において、データは、比較例のものに対して、本発明によるポリマー組成物は容易に加工可能であり、得られた繊維は、より低い押出温度で達成された繊維のより低いMFRであっても良好な接着力を維持することを示す。これに比べて、比較例のポリマーは、溶融強度を増大させるべきより低い押出温度にもかかわらず加工可能ではなく、化学分解に付される。
【0115】
本発明による組成物は、低いポリマー分解のために高い接着力の値を有し、かつ広い範囲の押出温度(265〜280℃)における靭性と伸びとの間の良好なバランスを示す繊維を得ることを許容する。
【0116】
実施例6
実施例1の組成物を、多段(multiple)押出プロセスの試験に付す。MFR値を、押出前、ならびに次いでCOMACPLAST 19押出機での再造粒の第3および第5段階の後のポリマーについて測定する。押出プロセスの運転プロフィールは次のとおりである。
- 溶融温度:287℃、
- 頭部圧力:1.9×10-4 Pa、
- スクリュー速度:150 rpm。
【0117】
比較例6
実施例1の組成物の代わりに比較例1の組成物を用いる以外は同様にして、実施例6を繰り返す。
本発明による安定剤混合物成分の良好な溶融の維持は、多段押出試験により確認される。
【0118】
【表8】

【0119】
表8において、データは、多段階押出の後にMFR値の増大がより低いことによって示されるように、本発明によるポリマー組成物が比較例1のものに比べてよりよい溶融安定性を有することを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(ポリマーに対してppmで)
- フラン-2-オンタイプのラクトンと、
- 50〜200 ppmの量のフェノールと、
- 50〜300 ppmの量の立体障害性アミンと、
- 50から280 ppm未満の量の有機ホスファイトおよび/または有機ホスホナイト
とを含み、ポリマーに対して11〜49 ppmの量の非置換のフラン-2-オン分子を含有するオレフィンポリマー組成物。
【請求項2】
40〜220 ppmのフラン-2-オンタイプのラクトンを含有する請求項1に記載のオレフィンポリマー組成物。
【請求項3】
ラクトンが、5,7-ジ-tert-ブチル-ベンゾフラン-3-フェニル-2-オン、5,7-ジ-tert-ブチル-ベンゾフラン-3-(3,4-ジ-メチル-フェニル)-2-オンおよび5,7-ジ-tert-ブチル-ベンゾフラン-3-(2,3-ジ-メチル-フェニル)-2-オンまたはこれらのいずれの化合物の混合物から選択される請求項1に記載のオレフィンポリマー組成物。
【請求項4】
オレフィンポリマーが:
1) プロピレンのアイソタクチックホモポリマー;
2) ポリエチレン;
3) エチレンおよび/またはその他の直鎖もしくは分岐鎖状のC4〜C10 α-オレフィンとのプロピレンの結晶性ポリマー(ここで、全コモノマー含量は0.05重量%〜20重量%の範囲である);
4) (A) プロピレンのアイソタクチックホモポリマーまたは項目(3)で記載したポリマーの1つから選択される結晶性ポリマーと(B) 弾性オレフィンポリマーとで構成されるヘテロ相オレフィンポリマー組成物
から選択される請求項1〜3のいずれか1つに記載のオレフィンポリマー組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の安定剤成分が、オレフィンポリマーに混合される請求項1〜4のいずれか1つに記載のオレフィン組成物の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のオレフィンポリマー組成物からつくられた熱溶接可能な繊維。
【請求項7】
繊維がステープルファイバーである請求項6に記載の熱溶接可能な繊維。
【請求項8】
溶融状態の請求項1〜4のいずれか1つに記載のオレフィンポリマー組成物から繊維を紡糸し、ソリッドファイバーを引取ることを含む請求項6または7に記載の繊維を製造する方法。
【請求項9】
請求項6または7に記載の熱溶接可能な繊維から製造される不織布。
【請求項10】
請求項6または7に記載の熱溶接可能な繊維から製造される多層不織布。

【公表番号】特表2006−527778(P2006−527778A)
【公表日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515977(P2006−515977)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006542
【国際公開番号】WO2004/111120
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(501468046)バセル ポリオレフィン イタリア エス.アール.エル. (33)
【住所又は居所原語表記】Via Pergolesi 25,20124 Milano,Italy
【Fターム(参考)】