説明

安定化GLP−1類似体

本発明のポリペプチド類似体は、a)GLP−1断片の1つと少なくとも80%同一の基礎アミノ酸配列;およびb)前記基礎アミノ酸配列のカルボキシ末端に結合するアミノ酸残基とを含み、ここで、前記類似体は、天然GLP−1よりも持続時間の長い、GLP−1に類似する活性を有し、および/または前記GLP−1受容体は、前記類似体に対して、天然GLP−1よりも大きな親和性を有している。本発明の他のポリペプチド類似体は、a)GLP−1の前記P’残基に対応する前記基礎アミノ酸配列の中の前記アミノ酸残基が、四置換Cβ 炭素を有するアミノ酸類似体である、GLP−1断片と少なくとも50%同一である基礎アミノ酸配列:およびb)前記基礎アミノ酸配列のカルボキシ末端に結合するアミノ酸残基とを含み、ここでは前記類似体は上記に示された前記特性を有する。本発明はまた、これらの類似体が投与される治療方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2005年9月8日に出願された、米国仮出願特許第60/715,322号の優先権の利益を主張するものであり、参照することによりその全体が本願明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般に、生体内において、より長い時間、GLP−1に似た活性を持続するGLP−1類似体を提供する。本発明はまた、GLP−1受容体への親和性が増したGLP−1類似体を提供する。
【背景技術】
【0003】
ポリペプチドおよびペプチド治療薬は、医療において幅広く使用されている。組み替え型DNA技術もしくはペプチド・シンセサイザのいずれかによるその容易な生成によって、今後の数年も様々な状況における連用が確保されている。従って、ホルモン、サイトカインおよび成長因子のような、ポリペプチド治療薬は、治療薬の重要な類を代表している。しかしながら、特定の天然ポリペプチドは、タンパク質分解もしくは異性化を介して、急速に生体内で不活性化されることがある。そのような不活性化は、一貫性のある、または持続性のある治療血中濃度を長時間にわたり維持しようとする場合、投与が繰り返し必要になるため、不利になることがある。場合によっては、1つ以上のポリペプチドのタンパク質分解生成物は、無傷の(intact)ポリペプチド活性と拮抗していることがある。これらの場合、追加治療薬の投与のみでは、タンパク質分解生成物のアンタゴニスト作用を克服するには不十分であるかもしれない。
【0004】
さらに詳しく説明すると、長期にわたって血中に存在していることが有益となる1つのペプチドホルモンとして、グルカゴンに類似するペプチド1(GLP−1)が挙げられる。GLP−1は、グルコース代謝、消化管分泌物および新陳代謝における制御機能を備えた重要なポリペチドホルモンである。最新の取り組みによると、GLP−1は膵臓内のβ細胞の成長因子であり、おそらく膵臓以外の他の臓器内の細胞分化に関係している。
【0005】
GLP−1は、ポストプロリン開裂(post-proline cleaving)酵素の種類の1つである、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)などのセリンプロテイナーゼ酵素によって劣化されると考えられている。DPP IVは、セリンペプチダーゼに関連した細胞膜であり、これは、好ましくはプロリン残基を最後から二番目の(P1)位置に含むか、あるいはN末端残基(P2)がヒスチジンであるか、チロシン、トリプトファンまたはフェニルアラニンなどの大きい芳香族である場合にはアラニン残基を最後から二番目の(P1)位置に含んでいるペプチド鎖からN末端ジペプチドを開裂する。GLP−1のアミノ末端配列は、His−Ala−Gluである。よって、 DPP−IVは、生体内のGLP−1活性の調整に関与している。
【0006】
Xaaがアミノ酸残基である、Xaa−AlaもしくはXaa−ProジペプチドのDPP−IVを媒介とする除去は、GLP−1のような生物活性のペプチドホルモンのN末端を不活性もしくは拮抗にさえしてしまう。従って、DPP−IVのようなセリンプロテイナーゼによるペプチドホルモンの開裂および不活性化は、治療用ポリペプチドの使用の限界、すなわち、生体内でのそれらの作用の持続時間が短いことを表す一例である。したがって、GLP−1に類似する活性を持つ長時間作用型のペプチドのための技術が必要である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一般に、生体内において、より長い時間、GLP−1に似た活性を持続するGLP−1類似体を提供する。本発明はまた、GLP−1受容体への親和性が増したGLP−1類似体を提供する。
【0008】
1つの態様では、本発明は、
a) GLP−1−(7−34)、GLP−1−(7−35)、GLP−1−(7−36)およびGLP−1−(7−37)(配列番号1−4)のうちの1つと少なくとも80%同一の基礎アミノ酸配列と、
b)前記基礎アミノ酸配列のカルボキシ末端に結合する、1から15の(天然または非天然)のアミノ酸残基と、
を含み、
ここで、前記類似体は、ヒト生体内において、天然GLP−1より持続時間の長い、GLP−1に類似する活性を有することを特徴とするポリペプチド類似体である。
【0009】
別の態様では、本発明は、
a)GLP−1−(7−34)、GLP−1−(7−35)、GLP−1−(7−36)およびGLP−1−(7−37)(配列番号1−4)のうちの1つと少なくとも80%同一の基礎アミノ酸配列と、
b)前記基礎アミノ酸配列のカルボキシ末端に結合している1から15のアミノ酸残基と、
を含み、
ここで、GLP−1受容体が、前記類似体に対して、天然GLP−1よりも大きな親和性を有することを特徴とするポリペプチド類似体である。こういった類似体はまた、有利なことに、ヒト生体内で、天然GLP−1より持続時間の長い、GLP−1に類似する活性を有している。
【0010】
さらにもう1つの態様では、本発明は、
a)GLP−1のP’残基に対応する基礎アミノ酸配列のアミノ酸残基が、四置換Cβ炭素を有するアミノ酸類似体である、GLP−1−(7−34)、GLP−1−(7−35)、GLP−1−(7−36)およびGLP−1−(7−37)(配列番号1−4)のうちの1つと少なくとも50%同一の基礎アミノ酸配列と、
b)前記基礎アミノ酸配列のカルボキシ末端に結合している1から15のアミノ酸残基とを、
含み、
ここで、ヒト生体内において、天然GLP−1より持続時間の長い、GLP−1に類似する活性を有することを特徴とするポリペプチド類似体である。
【0011】
さらなる態様では、本発明は、
a)GLP−1のP’残基に対応する基礎アミノ酸配列のアミノ酸残基が、四置換Cβ炭素を有するアミノ酸類似体である、GLP−1−(7−34)、GLP−1−(7−35)、GLP−1−(7−36)およびGLP−1−(7−37)(配列番号1−4)のうちの1つと少なくとも50%同一である基礎アミノ酸配列と、
b)前記基礎アミノ酸配列のカルボキシ末端に結合する1から15のアミノ酸残基と、
を含み、
ここで、GLP−1受容体が、前記類似体に対して、天然GLP−1よりも大きな親和性を有することを特徴とするポリペプチド類似体である。こういった類似体はまた、有利なことに、ヒト生体内で、天然GLP−1より持続時間の長い、GLP−1に類似する活性を有している。
【0012】
本発明はまた、1つ以上の本課題の類似体を含む医薬品組成物を提供する。典型的な医薬品組成物は、医薬品として許容される担体もしくは賦形剤と、処方される1つ以上の類似体と、を含む。
【0013】
本発明の別の態様は、治療効果のある量の1つ以上の類似体を投与することを含む、対象の疾病を治療する方法である。本課題の類似体は、単独で投与されることが可能で、また特定の疾病の適応症に対する適当な他の治療薬を含む投薬計画の一部として投与されることも可能である。一例として、糖尿病治療のための類似体の投与は、単独で、もしくは食事療法および運動の調節および/またはインスリンの投与と併用して使用されてもよい。さらに典型的な治療の併用方法は、類似体の投与、および特定の酵素、または天然GLP−1ポリペプチドを開裂する酵素の阻害剤の投与を含む。こういった阻害剤は、特定の酵素(例えば、DPP−IV特異的阻害剤)に特異的であって差し支えなく、もしくは、その酵素の種類(例えばセリンプロテアーゼ阻害剤)についてもっと一般的であってもよい。
【0014】
本発明のもうひとつの態様は、本課題の類似体の診断目的での使用である。
【0015】
本発明のもうひとつの態様は、本明細書に開示されている病気あるいは病状を治療するための薬剤の製造への本課題の類似体の使用である。
【0016】
本発明のさらなる態様は、GLP−1に少なくとも80%同一のペチプドのヒト生体内での半減期を長くする方法であり、それには、ペプチドのカルボキシ末端に1から15のアミノ酸残基を結合させることが含まれる。
【0017】
本発明のさらにもうひとつの態様は、本発明にかかる類似体、その医薬品組成物、および/または、類似体を含むキットを同定、製造、販売、流通、および/またはライセンス供与することを含む、事業を営む方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
I.要約
本発明は、一般に、例えば、タンパク質分解酵素による開裂に対する感受性の低下、および/またGLP−1受容体に対する親和性の増加に起因して、生体内での半減期が長く、さらに、望ましいGLP−1の活性を保持するGLP−1類似体に関連する。具体的には、本発明は、GLP−1に類似する活性を有するペプチドの生体内の半減期が、1から15の(天然または非天然の)アミノ酸残基をペプチドのカルボキシ末端に結合することによって伸ばすことができる、という発見に関連する。
【0019】
本発明にかかるGLP−1類似体は、基礎アミノ酸配列のカルボキシ末端に結合する1から15のアミノ酸残基を有する。基礎アミノ酸配列は、1から15の追加アミノ酸残基による修飾前のアミノ酸配列を指す。通常、基礎アミノ酸配列は、GLP−1−(7−34)、GLP−1−(7−35)、GLP−1−(7−36)およびGLP−1−(7−37)(配列番号1−4)のうちの1つの配列と少なくとも50%同一であり、特に、少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、もしくは100%同一でさえもある。通常、配列同一性は、関連配列の全体の長さ全体にわたって測定する。本発明の特定の実施例では、基礎アミノ酸配列は、GLP−1−(7−34)、GLP−1−(7−35)、GLP−1−(7−36)およびGLP−1−(7−37)(配列番号1−4)のうちの1つであり、もしくはGLP−1−(7−34)、GLP−1−(7−35)、GLP−1−(7−36)およびGLP−1−(7−37)(配列番号1−4)のうちの1つと、1つだけアミノ酸残基が異なる。GLP−1−(7−34)、GLP−1−(7−35)、GLP−1−(7−36)およびGLP−1−(7−37)(配列番号1−4)の配列は、以下の通りである:
GLP−1−(7−34):
HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVK(配列番号1)
GLP−1−(7−35):
HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKG(配列番号2)
GLP−1−(7−36):
HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGR(配列番号3)
GLP−1−(7−37):
HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRG(配列番号4)
追加アミノ酸残基は、通常、α−アミノ酸残基である。
【0020】
特定の実施例では、1つ以上の(またはすべての)追加アミノ酸残基は、非天然(non-naturally occurring)である。本明細書では、非天然のアミノ酸は、ヒトDNAにコード化された20種類のアミノ酸以外のアミノ酸である。「非天然の」とは、特に指示されない限り、生命体(ヒトおよびその他の哺乳類)に見られるすべてのアミノ酸を除くことを意図しているわけではない。
【0021】
本発明の使用に適する、典型的な非天然のアミノ酸は、アリール含有側鎖を有するものである。特定の実施例では、アリール含有側鎖は、二環式もしくは多環アリール基を有する。特定の実施例では、アリール含有側鎖は、ビフェニル(4−フェニル−フェニル)のように、二つ以上のアリール基を有する。非天然の側鎖を伴った典型的なアミノ酸の例として、ビフェニルグリシン、ビフェニルアラニンおよびナフトイルグリシンが挙げられ、その構造は以下の通りである:
【化1】

【0022】
特定の実施例では、追加アミノ酸残基はすべて天然のものである。すべての追加アミノ酸残基が天然の場合、残基は、エキセンディン−4のカルボキシ末端、残基31−39において、1つ以上の中から有利に選択される。エキセンディン−4は、哺乳類の中でグルコース降下活性を有するアメリカドクトカゲ(Herloderma suspectum)(ヒーラ・モンスター)の唾液から単離されたペプチドホルモンである。エキセンディン−4の残基31−39は:
Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser(配列番号5)
である。
【0023】
Pro−Ser−Serまたは9残基の配列全体など、残基31−39に由来する少なくとも3つの連続する残基が、基礎アミノ酸配列のカルボキシ末端に追加されることが好ましい。もうひとつの好ましい実施例では、Proのみがカルボキシ末端に結合される。
【0024】
本発明の特定の実施例では、基礎アミノ酸配列は、P’位置(アミド開裂部位のカルボキシ末端側の残基)で、プロテイナーゼを開裂するポストプロリン用に修飾される。この修飾により、天然GLP−1と比較して、酵素媒介の開裂に対する感受性が大幅に低減されたGLP−1類似体を生成することができるが、さらに、類似体は天然GLP−1の生物活性を保持している。
【0025】
通常、P’残基(開裂部位)におけるGLP−1類似体の修飾は、四置換Cβ炭素を有するアミノ酸類似体の置換を含む。こういったアミノ酸類似体は、結果として生じる類似体の生体内での半減期を顕著に長くすることが可能であり、たとえば、野生型ポリペプチドと比較して、生物活性の持続時間を長くし、および/または、クリアランスを少なくする(例えば、血清半減期を長くする)ことができる。
【0026】
P’残基を別の天然のアミノ酸と置き換えることが意図されていると同時に、好ましい実施例では、P’残基は非天然アミノ酸類似体に置き換えられ、さらにより好ましくは、立体的および/または電子的性質に関して同様の属性を保持しているなどの構造的類似体に置き換えられる。例えば、特定の実施例では、本発明は、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)などのポストプロリン開裂プロテイナーゼによるタンパク質分解に対する感受性を低下させた修飾ポリペプチドを提供し、ここで前記ポリペプチドは、P’位置で構造式Iのアミノ酸もしくはアミノ酸類似体で修飾される:
【化2】

【0027】
式中、
およびRは、独立して、低級アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルコキシル、カルボキサミド、カルボニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アミン、またはシアノを表し、もしくは、RおよびRは共に、4−7員環を形成し、
は、低級アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アミノ、アルコキシル、ハロゲン、カルボキサミド、カルボニル、シアノ、チオール、チオアルキル、アシルアミノ、アミド、シアノ、ニトロ、アジド、サルフェート、スルホネート、スルホンアミド、−(CH−R、−(CH−OH、−(CH−COOH、−(CH−O−低級アルキル、−(CH−O−低級アルケニル、−(CH−O−(CH−R、−(CH−S−低級アルキル、−(CH−S−低級アルケニル、−(CH−S−(CH−R4、−(CH−N−C(=NH)NH、−(CH−C(=O)NH、もしくは−(CH−NHを表し、
は、それぞれ存在ごとに独立して、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくは複素環を表し、
m=0、1もしくは2であり、
n=0、1もしくは2である。
【0028】
特定の好ましい実施例では、RおよびRは、それぞれ独立して、低級アルキル(好ましくは、メチル、エチルもしくはプロピル、さらに好ましくは、メチル)、ハロゲン、またはハロゲン化低級アルキルなどの小さな疎水基を表す。
【0029】
特定の好ましい実施例では、Rは、低級アルキル、さらに好ましくは、メチル、エチル、またはプロピル、そしてさらに好ましくは、メチルを表す。他の好ましい実施の形態では、Rは、フェニルもしくはヒドロキシフェニル(好ましくは、パラヒドロキシ)などのアリールを表す。さらに好ましい他の実施例では、Rは、ヒドロキシル基を表す。さらに他の好ましい実施例では、Rは、−(CH−COOHを表し、ここで、mは0もしくは1であることが好ましい。
【0030】
特定の好ましい実施例では、n=0である。
【0031】
こういった基質類似体の特定の好ましい実施例では、P’は、構造式IIに表されるような四置換Cβ炭素を有するアミノ酸類似体である:
【化3】

【0032】
式中、
およびRは、それぞれ独立して、低級アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルコキシル、カルボニル、カルボキサミド、ハロゲン、ヒドロキシル、アミン、またはシアノを表し、もしくは、RおよびRは共に4−7員環を生成し、
は、低級アルキル、ヘテロアルキル、アミノ、アルコキシル、ハロゲン、カルボキサミド、カルボニル、シアノ、チオール、チオアルキル、アシルアミノ、ニトロ、アジド、サルフェート、スルホネート、スルホンアミド、−(CH−R、−(CH−OH、−(CH−COOH、−(CH−O−低級アルキル、−(CH−O−低級アルケニル、−(CH−O−(CH−R、−(CH−S−低級アルキル、−(CH−S−低級アルケニル、−(CH−S−(CH−R4、−(CH−N−C(=NH)NH、−(CH−C(=O)NH、または−(CH−NHを表し、
は、それぞれ存在ごとに独立して、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、または非芳香族ヘテロシクリルを表し;
m=0、1もしくは2である。
【0033】
特定の実施例では、RおよびRは、それぞれ独立して、低級アルキルまたはハロゲンを表し、Rは、低級アルキル、アリール、ヒドロキシル基、−(CH−COOH、−(CH−NH、−(CH−N−C(=NH)NH、−(CH−C(=O)NH、−SH、もしくは−(CH−S−CHを表し、m=0、1もしくは2である。
【0034】
特定の好ましい実施例では、RおよびRは、それぞれ独立して、メチル、エチルもしくはプロピルであり、さらに好ましくは、メチルを表す。
【0035】
特定の好ましい実施例では、Rは、低級アルキルを表し、好ましくは、メチル、エチルもしくはプロピルを表し、さらに好ましくは、メチルを表す。他の好ましい実施例では、Rは、フェニル、ヒドロキシフェニル(好ましくは、パラヒドロキシ)、インドールまたはイミダゾールなどのアリールを表す。さらに他の好ましい実施例では、Rは、ヒドロキシル基を表す。特定の好ましい実施例では、Rは、−COOHあるいは−CH−COOHを表す。さらに他の好ましい実施例では、Rは、−CH−CH−N−C(=NH)NH、−CH−C(=O)NH、−CH−CH−C(=O)NH、−SH、あるいは−CH−S−CHを表す。
【0036】
修飾されたP’残基を有する典型的な基礎アミノ酸配列が表1に示されており、ここでXは修飾されたP’残基の位置を示している:
【表1】

【0037】
さらに一般的には、本発明は、特に、以下のアミノ酸配列を有する、GLP−1の類似体の生成を意図している:
Xaa−Ala−Yaa−R もしくは Xaa−Pro−Yaa−R’
ここで、XaaおよびYaaはアミノ酸残基を表しており、RおよびR’はそれぞれ存在ごとにて独立して、GLP−1に類似する活性を有し、かつ、1から約100のアミノ酸残基を含むポリペプチド鎖を表し、ここで、類似体配列Yaaは、構造式Iまたは構造式IIによって表されるアミノ酸残基で置換されている。本発明は、変異型のP’類似体を生成するための、GLP−1と配列の異なる変異型ポリペプチドの修飾を意図している。こういった変異型は、少なくとも80%、85%、90%、95%、97%、99%、もしくは99%よりも大きい割合でGLP−1−(7−36)と同一である。
【0038】
特定の実施例では、Rは、以下から選択されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである:
GTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRG(配列番号10)、および
GTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGR−NH(配列番号11)、
または、それに加えて5つ以下のアミノ酸残基が異なる配列、さらにより好ましくは、最大4つ、3つ、またさらには2つのアミノ酸残基が異なる配列。
【0039】
好ましい基礎アミノ酸配列は:
His−Ala−Xaa−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Gly−Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Arg(配列番号12)
であり、
ここで、Xaaはβ−ジメチルアスパルテートまたはt−ロイシンであり、特にβ−ジメチルアスパルテートである。この基礎アミノ酸配列に有利に結合するアミノ酸として、ビフェニルグリシン、Pro−Ser−SerおよびPro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser(配列番号5)が挙げられる。
【0040】
II.定義
ペプチド基質に対する結合部位は、酵素の表面の一連の「特異性サブサイト(specificity subsite)」からなる。「特異性サブサイト」という用語は、酵素基質の一部と相互作用する能力のある酵素上のポケットまたは他の部位を指す。
【0041】
ペプチドおよびタンパク質基質と、例えばセリンおよびシステインのプロテイナーゼなどのプロテイナーゼとの相互作用の議論では、本願は、SchechterおよびBergerの命名法を使用する[(1967)Biochem.Biophys.Res.Commun.27:157-162]。基質あるいは阻害剤の個々のアミノ酸残基は、アミノ末端からカルボキシ末端まで、−P−P−P’−P’−のように指定され、酵素の対応するサブサイトは、S、S、S’、S’のように指定される。基質の切断可能な結合は、PとP’残基を連結するアミド結合である。
【0042】
「P’残基」は、基質ポリペプチドのアミド骨格のプロテイナーゼ−媒介開裂に起因する生成ポリペプチドの新規アミノ末端になる基質ポリペプチドのアミノ酸残基を指す。さらに例証を挙げると、基質ポリペプチドとして、タンパク質分解反応を受けやすいアミド結合が挙げられ、それは以下の一般的なスキームで表される:

【0043】
「アミノ酸残基」という用語は、アミノ酸を意味し、通常はα−アミノ酸である。一般に、本明細書の天然のアミノ酸を指す略語は、IUPAC-IUB Commission on BioChemical Nomenclature(Biochemistry(1972)11:1726-1732参照)の勧告に基づくものである。例えば、Met、Ile、Leu、AlaおよびGlyは、それぞれメチオニン、イソロイシン、ロイシン、アラニンおよびグリシンの「残基」を表す。残基は、カルボキシル基のOH部分およびα−アミノ基のH部分を脱離によって、対応するα−アミノ酸から派生したラジカルを意味する。
【0044】
「アミノ酸側鎖」という用語は、骨格を除くアミノ酸残基の部分であり、K. D. Kopple著、「ペプチドおよびアミノ酸 (Peptides and Amino Acids)」, W.A. Benjamin Inc.,New York and Amsterdam, 1966の2頁および33頁に定義されている。こういった一般的なアミノ酸側鎖の例としては、−CHCHSCH(メチオニンの側鎖)−CH(CH)−CHCH(イソロイシンの側鎖)、−CHCH(CH(ロイシンの側鎖)もしくは−H(グリシンの側鎖)が挙げられる。これらの側鎖は、Cα炭素骨格から伸びている。
【0045】
「四置換Cβ炭素」という用語は、(i)アミノ酸骨格のCα炭素から直接伸び、(ii)4つの置換基(Cα炭素を含む)を有し、その置換基のいずれも水素ではない、炭素原子のことをいう。
【0046】
本明細書では、「タンパク質」は、20種類のアミノ酸のいずれかの組合せから実質的に成るポリマーである。「ポリペプチド」は比較的大きいタンパク質についてしばしば用いられるが、「ペプチド」は小さなタンパク質についてしばしば用いられ、当技術分野におけるこれらの用語の使用は、重複しており、様々である。文脈から明らかでない限り、「ペプチド」、「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、ここでは同義的に用いられている。
【0047】
国際生化学・分子生物学連合(The International Union of Biochemistry and Molecular Biology)(1984)では、ペプチド結合加水分解酵素のサブセットについて、「ペプチダーゼ」という用語を使用することを推奨している(サブクラスE.C3.4.)。幅広く使用されている用語「プロテアーゼ」は、「ペプチダーゼ」と同義語であり、本明細書では同じ意味で使用されている。ペプチダーゼには、エンドペプチダーゼおよびエキソペプチダーゼの2つの酵素群が含まれる。エンドペプチダーゼは、タンパク質内部においてペプチド結合を開裂し、エキソペプチダーゼは、アミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかから、順次、アミノ酸を除去する。
【0048】
「プロテイナーゼ」という用語はまた、エンドペプチダーゼの同義語として使用される。プロテイナーゼは触媒機構によって分類される。4つの機構の種類は、国際生化学・分子生物学連合によって承認されており、それらは、セリンプロテイナーゼ、システインプロテイナーゼ、アスパラギン酸プロテイナーゼ、およびメタロプロテイナーゼである。
【0049】
本明細書では、「アゴニスト」という用語は、動物に投与する場合に同様の生物学的効果が生じるように、対象とする天然基質の生物活性(例えばGLP−1)を保持する類似体のことを意味する。
【0050】
「アンタゴニスト」という用語は、対象とする天然基質の生物活性(例えばGLP−1)を保持せず、もしくは少なくとも天然基質と比較して活性レベルが低減された、天然基質の生物作用を阻害する類似体のことをいう。
【0051】
「類似体」という用語は、天然ペプチドもしくはタンパク質、またはそれらの断片と機能が非常に類似している分子のことをいう。
【0052】
本明細書では、「使用説明書」とは、製品ラベル、および/または、キットまたは包装された医薬品の使用について、関連資料または方法を記載した文書を意味する。これらの資料には、以下のいずれの組合せを含んでいてもよい:基本的な情報、成分リスト、用量の提案、潜在的な副作用に関する警告、投薬についての説明、技術サポート、およびその他関連文書。
【0053】
例えば本発明にかかる類似体などの化合物の「有効量」とは、治療での使用に関しては、望ましい処方計画(哺乳類、好ましくは、ヒトに対する)の一環として投薬される場合に、例えばいずれの治療にも適用できる妥当な損益比でなど、治療すべき障害もしくは状態、もしくは審美目的での臨床的に受入れ可能な基準に従って、症状を緩和し、病状を改善し、または疾病状態の開始を遅らせる、調剤中の類似体の量のことをいう。
【0054】
「アルキル」という用語は、指定された炭素原子の数、あるいは指定されない場合には最大30個の炭素原子を有する、飽和分岐もしくは非分岐の炭素鎖ラジカルを指す。例えば、「低級アルキル」は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、およびオクチルなどの1から10個の炭素原子を有するアルキル、およびこれらのアルキルの位置異性体を指す。10から30個の炭素原子のアルキルとしては、デシル、アンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、へクサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、エイコシル、ヘンエイコシル、ドコシル、トリコシルおよびテトラコシルルが挙げられる。好ましい実施例では、直鎖もしくは分岐鎖アルキルは、その骨格中に30以下の炭素原子を有し(例えば、直鎖ではC−C30、分岐鎖ではC−C30)、さらに好ましくは、20個以下である。同様に、好ましいシクロアルキルは、環構造中に3から10個の炭素原子を有し、さらに好ましくは、環構造中に5、6もしくは7個の炭素を有している。
【0055】
さらには、明細書、実施例および特許請求の範囲の全体を通して、「アルキル」(もしくは「低級アルキル」)という用語は、非置換および置換アルキル鎖の両方を含むことを意図しており、後者は炭化水素骨格の1つ以上の炭素上の水素と置換する置換基を有するアルキル部分のことをいう。こういった置換基としては、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、もしくはアシルなど)、チオカルボニル(チオエステル、チオアセテート、またはチオホルメート(thioformate)など)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、シアノ、ニトロ、スルフヒドリル基、アルキルチオ、サルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、もしくは芳香族またはヘテロ芳香族部分が挙げられる。炭化水素鎖の置換された部分は、適切な場合には、それ自体、置換されうるということが、当業者にとって理解されよう。例えば、置換アルキルの置換基は、アミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスフェートおよびホスフィネートを含む)、スルホニル(サルフェート、スルホンアミド、スルファモイルおよびスルホネートを含む)、シリル基、さらにエーテル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレートおよびエステルを含む)、−CF、−CNなどの置換および非置換の形態を含んでいて差し支えない。典型的な置換アルキルは以下に示されている。シクロアルキルは、さらにアルキル、アルケニル、アルコキシル、アルキルチオ、アミノアルキル、カルボニルで置換されたアルキル、−CF、−CNなどで置換されうる。
【0056】
炭素の数が特記されていない限り、本明細書では、「低級アルキル」とは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、およびt−ブチルなど骨格構造に1から10の炭素を有する、上記に定義したアルキル基を意味し、1から6の炭素原子を有していることがさらに好ましい。同様に、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は類似した鎖の長さを有している。本明細書を通して、好ましいアルキル基は低級アルキルである。好ましい実施の形態では、本明細書でアルキルとして指定される置換基は低級アルキルである。
【0057】
「ヘテロアルキル基」は、1つ以上の内部の(すなわち末端ではない)炭素原子が窒素、酸素、硫黄、リン、セレンもしくはケイ素などのヘテロ原子で置換されたアルキル基である。通常、ヘテロ原子は窒素、酸素もしくは硫黄である。「ヘテロシクロアルキル基」は、炭素原子がヘテロ原子で置換された、類似の環状アルキル基である。
【0058】
本明細書では、「炭素環」とは、環の各原子が炭素である芳香族または非芳香族環を指す。
【0059】
「アリール」という用語は、本明細書では、例えば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどといった、0から4個のヘテロ原子を含んで差し支えない、5、6および7員環の単環芳香族基を含む。環構造の中にヘテロ原子を有するこれらのアリール基はまた、「アリール複素環」または「ヘテロ芳香族」と呼ばれる。芳香族環は、上述のこういった置換基、例えば、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル基、イミノ、アミド、ホスフェート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族もしくはヘテロ芳香族部分、−CF、−CNなどと、1つ以上の環位置で置換することができる。「アリール」という用語には、2つ以上の炭素が2つの隣接する環(その環は「縮合環」である)を共有している、2つ以上の環式環を有する多環系も含まれ、ここで、少なくとも環の1つが芳香族であり、例えば、他の環式環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリールおよび/またはヘテロシクリルであってもよい。
【0060】
「アルケニル」とは、炭素原子の数が特定された、または限定されていない場合は、最大26個の炭素原子の数を有し、さらにラジカルの中に1つ以上の二重結合を有する、いずれかの分岐または非分岐の不飽和炭素鎖ラジカルのことをいう。6から26個の炭素原子のアルケニルは、様々な異性体の形態における、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデニル、トリデセニル、テトラデセニル、ペンタデセニル、へクサデセニル、ヘプタデセニル、オクタデセニル、ノナデセニル、エイコセニル、ヘンエイコセニル、ドコセニル、トリコセニルおよびテトラコセニルによって典型的に示され、ここで、不飽和結合はラジカルのどこにでも配置される可能性があり、二重結合に関してZ型もしくはE型のいずれかの配置をとることができる。
【0061】
「アルキニル」という用語は、ラジカルの中に1つ以上の三重結合を有している、アルケニルの範囲のヒドロカルビルラジカルのことをいう。
【0062】
本明細書では、「アルコキシル」または「アルコキシ」は、酸素ラジカルが結合している、以下に定義されるアルキル基を指す。代表的なアルコキシル基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、t−ブトキシ等が挙げられる。「エーテル」は、酸素と共有結合している二つの炭化水素である。従って、そのアルキルをエーテルに変えるアルキルの置換基は、−O−アルキル、−O−アルケニル、−O−アルキニル、−O−(CH−Rのうちの1つによって表されるような、アルコキシルか、もしくはそれに類似しているものであり、ここでmおよびRは以下に示されている。
【0063】
「ヘテロシクリル」または「複素環式基」という用語は、それらの環構造に1から4のヘテロ原子を含む、3から10員環構造のことをいい、さらに好ましくは、3−から7−員環のことをいう。複素環はまた、多環でありうる。ヘテロシクリル基としては、例えば、チオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキソザン、ピロール、イミダゾーレ、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナントリル、フェノチアジン、フラザン、フェノキサゾン、ピロリジン、オキソリン、チオラーゼ、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、アゼチジノンおよびピロリジノンといったラクタム、スルタム、スルトンなどが挙げられる。複素環式環は、1つ以上の位置で、上記に示したような、たとえば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル基、イミノ、アミド、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、カルボニル、カルボキシル、シリル、スルファモイル、スルフィニル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族またはヘテロ芳香族部分、−CF、−CNなど、こういった置換基と置換することができる。
【0064】
「アルキルチオ」という用語は、硫黄ラジカルが結合している、上記に示されたようなアルキル基を指す。好ましい実施の形態では、「アルキルチオ」部分は、−(S)−アルキル、−(S)−アルケニル、−(S)−アルキニル、および−(S)−(CH−Rのうちの1つで表され、ここでmおよびRは以下に示される。代表的なアルキルチオ基として、メチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。
【0065】
本明細書では、「ニトロ」という用語は、−NOを意味し、「ハロゲン」という用語は、−F、−Cl、−Brまたは−Iを指し、「スルフヒドリル基」もしくは「チオール」という用語は、−SHを意味し、「ヒドロキシル」という用語は−OHを意味し、「スルホニル」という用語は−SO−を意味する。
【0066】
「アミン」および「アミノ」という用語は、当技術分野において認識されており、例えば、下記の一般式によって表せる部分である、非置換および置換アミンの両方を意味し、
【化4】

【0067】
ここで、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、−(CH−Rを表し、または、RおよびRは共に、それが結合するN原子と共に、環構造の中に4から8の原子を有する複素環を完成し、Rは、アルケニル、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリルまたは多環式を表し、mは0もしくは1から8の整数である。好ましい実施の形態では、RもしくはRのうち、1つのみがカルボニルであってよく、例えば、R、Rおよび窒素は共にイミドを形成しない。さらに好ましい実施の形態では、RおよびR(任意でR)は、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルケニル、もしくは−(CH−Rを表す。このように、「アルキルアミン」という用語は、本明細書では、そこに結合する置換または非置換アルキルを有する、すなわち、RおよびRのうち少なくとも1つはアルキル基である、上記に定義されるアミン基を意味する。特定の実施の形態では、アミノ基またはアルキルアミンは塩基性であり、pK7.00であることを意味する。これらの官能基のプロトン化した形態は、水と比較して、7.00を超えるpKを有する。
【0068】
「カルボニル」という用語は、当技術分野において認識されており、下記一般式によって表されるような部分を含み、
【化5】

【0069】
ここで、Xは結合もしくは酸素または硫黄を表し、Rは、水素、アルキル、アルケニル、−(CH−Rまたは医薬品として許容される塩を表し、Rは、水素、アルキル、アルケニルまたは−(CH−Rを表し、ここでは、mおよびRは上記のとおりである。Xが酸素であり、RまたはRが水素でない場合、その構造式は「エステル」を表す。Xが酸素であり、Rが上記のとおりである場合、本明細書ではその部分をカルボキシル基と称し、特に、Rが水素である場合、その構造式は「カルボン酸」を表す。Xが酸素であり、Rが水素である場合、その構造式は「ギ酸」を表す。一般に、上記一般式の酸素原子が硫黄に置き換えられた場合、その構造式は「チオカルボニル」基を表す。Xが硫黄であり、RもしくはRが水素でない場合、その構造式は「チオエステル」基を表す。Xが硫黄であり、Rが水素である場合、化学式は「チオカルボン酸」基を表す。Xが硫黄であり、Rが水素である場合、その構造式式は「チオギ酸」基を表す。一方、Xが結合であり、Rが水素でない場合、上記構造式は「アシル」基を表す。Xが結合であり、Rが水素である場合、上記構造式は「アルデヒド」基を表す。
【0070】
本明細書では、「置換(された)」という用語は、有機化合物のすべての許容される置換基が含まれるように意図されている。広範な態様では、許される置換基には、環式および非環式、分岐および非分岐、炭素環および複素環式、芳香族および非芳香族有機化合物の置換基が含まれる。実例となる置換基としては、例えば、本明細書の上述ものが挙げられる。許容される置換基は、1つ以上であってよく、適切な有機化合物と同一、もしくは異なっていてもよい。本発明の目的では、窒素などのヘテロ原子は、ヘテロ原子の価数を満たす、水素置換基および/または本明細書に記載される有機化合物のいずれかの許容される置換基を有していてもよい。本発明は、有機化合物の許容される置換基によるいかなる方法においても、制限されることを意図していない。「置換」または「〜と置換された」には、こういった置換が、置換された原子および置換基の許容する価数に従っている、という暗黙の条件が含まれており、例えば、転位、環化、脱離などによる転換が自然に起こらないなど、その置換の結果として、安定した化合物が得られるということは理解されるであろう。
【0071】
「スルファモイル」という用語は、当技術分野において認識されており、以下の一般式によって表される部分を含み、
【化6】

【0072】
ここで、RおよびRは上記に定義されたとおりである。
【0073】
「サルフェート」という用語は、当技術分野において認識されており、以下の一般式によって表される部分を含み、
【化7】

【0074】
ここで、Rは上記に定義されたとおりである。
【0075】
「スルホンアミド」という用語は当技術分野において認識されており、以下の一般式によって表される部分を含み、
【化8】

【0076】
ここで、RおよびRは上記に定義されたとおりである。
【0077】
「スルホネート」という用語は、当技術分野において認識されており、以下の一般式によって表される部分を含み、
【化9】

【0078】
ここで、Rは、電子対、水素、アルキル、シクロアルキル、もしくはアリールである。
【0079】
「スルホキシド」または「スルフィニル」という用語は、本明細書では、以下の一般式によって表される部分のことをいい、
【化10】

【0080】
ここで、R12は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アラルキル、またはアリールから選択される。
【0081】
アルケニルおよびアルキニル基に同様の置換を行なって、例えば、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アミドアルケニル、アミドアルキニル、イミノアルケニル、イミノアルキニル、チオアルケニル、チオアルキニル、カルボニルで置換されたアルケニルもしくはアルキニルを生成することができる。
【0082】

本明細書では、例えば、アルキル、m、nといった各表現の定義は、いずれかの構造において2つ以上存在する場合、同じ構造内の他の部分におけるその定義から独立していることが意図されている。
【0083】
本発明の目的では、化学元素は、CAS版、化学物理学便覧第67版、1986−87、内表紙(the Periodic Table of the Elements, CAS version, Handbook of Chemistry and Physics, 67th Ed., 1986-87, inside cover)の元素周期表に従って認定されている。さらに本発明の目的では、「炭化水素」という用語は、少なくとも1つの水素および1つの炭素原子を有する、すべての許容される化合物を含むことが意図されている。広範な態様では、許容される炭化水素としては、非環式および環式、分岐および非分岐、炭素環および複素環式、芳香族および非芳香族の、置換もしくは非置換であって差し支えない、有機化合物が挙げられる。
【0084】
III.典型的な実施例
(a)類似体の特性
多くの実施の形態では、天然基質の1つ以上の生体外または生体内での活性を保有するために、類似体が選択される。生体外または生体内での活性は、特定の類似体にとって適切な、通常の技術の1つに利用できるいずれかの手法を用いて測定される。類似体が同一または同様の機能活性を維持するかどうかを確定するために測定されうる典型的な機能活性には、細胞系または無細胞系における、類似体の受容体結合能、GLP−1応答細胞における変化(例えば、増殖、分化、生存、成長、移動など)を誘発する類似体の能力、GLP−1応答細胞における1つ以上の遺伝子またはタンパク質の発現を調整する類似体の能力が挙げられる。
【0085】
特定の実施の形態では、類似体は、天然GLP−1またはその断片と実質的に同様の活性を有する(例えば、天然GLP−1と比べて約80%、90%、100%、110%または120%活性)。いくつかの実施の形態では、類似体は、天然GLP−1に比べて活性が低い(例えば、天然ポリペプチドと比べて約50%、60%、70%または75%活性)。活性が低下した場合であっても、十分な時間、類似体の局所濃度を十分に提供する能力を提供できれば、幾分活性の低い類似体も生体内または細胞培養などにおいて有益であることは、注目される。従って、例えば、プロテイナーゼ抵抗によってもたらされる半減期の増加が、類似体の構造によって生じた活性低下を相殺することができるであろう。別の実施の形態では、類似体は天然GLP−1よりも活性が高い(例えば、天然GLP−1と比べて約130%、150%、175%、200%、300%、500%、800%、または1000%活性)。前述のいずれかにおいて、「活性」とは、天然GLP−1の1つ以上の機能を意味する。例えば、類似体の活性(例えば、生物学的機能)としては、受容体結合、転写活性化因子または抑制因子として機能する能力、特定の信号変換経路に係る能力、または細胞行動(例えば、増殖、分化、生存、成長、移動など)に影響を与える能力が挙げられる。
【0086】
こういった活性を、例えば、相対結合定数(例えば、受容体結合に対するなど)、有効濃度(EC50)および/または有効量(ED50)などとして表してもよい。
【0087】
典型的な類似体は、天然GLP−1と比べて半減期(または作用の持続時間)が増加する(生体外および/または生体内)。しかし、多様な類似体は、異なる半減期(および、天然GLP−1と比べて半減期の異なる変化)を有すると一般的に認識されている。生体外および/または生体内の半減期(または作用の持続時間)は、例えば、グルコース降下活性の経時的経過など標準的な方法を用いて、当業者によって簡単に測定可能である。特定の実施の形態では、類似体は、同様の半減期の測定条件の下、天然ポリペプチドの生体外および/または生体内半減期の0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.3、1.5、2、3、5、10、25、30、50、75、100または100倍以上もの倍率で、生体外または生体内半減期(作用の持続時間)を有する。
【0088】
(b)ペプチドホルモン類似体の合成
本発明の類似体は、標準的な固相合成によって調製可能である。例として、Stewart,J.M.らの固相合成(Solid Phase Synthesis)(ピアスケミカル社、第2版、1984年(Pierce Chemical Co., 2d ed. 1984))を参照。一般に知られているように、必要な長さのペプチドは、干渉する基の遮断、反応すべきアミノ酸の保護、結合、脱保護、未反応残基のキャップ化に関する製造者の指示に従い、市販の機器および薬剤を用いて調製可能である。適切な機器としては、例えば、米国カリフォルニア州フォスターシティーのアプライドバイオシステム社(Applied BioSystems)または米国カリフォルニア州サン・ラファエルのバイオサーチ社(Biosearch Corporation)から入手可能である。
【0089】
好ましい方法では、類似体は、適切な側鎖保護と併せてt−ブトキシカルボニル−α−アミノ酸を用いる標準的な自動固相合成法を用いて合成される。標準フッ化水素法を用いて、同時に側鎖の脱保護をすることにより、固相担体から完成した類似体を取り除く。0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)中のアセトニトリル勾配を用いて、セミ分取用逆層−HPLC(Vydac C18)により、粗類似体をさらに精製する。類似体を真空乾燥してアセトニトリルを除去し、0.1%TFA水溶液から凍結乾燥する。純度は、分析RP−HPLCにより確認する。ペプチドを凍結乾燥後、水または重量濃度1−2mg/mLの0.01M酢酸の中で溶解させる。
【0090】
コード化されていないアミノ酸またはD型アミノ酸が類似体内で発生した場合は、前記合成法の利用が必要となる。しかしながら、遺伝子コード化された類似体については、市販の発現系で容易に合成されたDNA配列を利用した組み換え技術に依存することができる。
【0091】
(c)機能分析
候補類似体がタンパク質分解に耐性を示すかどうかを確認する手法は、当技術分野において多様にある。例えば、特定のプロテイナーゼの類似体を開裂する能力は、生体外の無細胞系において測定可能である。1つのこういった無細胞系の実施形態では、候補基質(例えば、類似体および/または天然ポリペプチド)は放射能などの検出可能標識で末端標識される。標識された基質は、プロテイナーゼの存在下で培養される。やがて、反応混合物である試料の反応が停止し、ゲル上を進行する。放射能帯の大きさの変化は、ポリペプチドがプロテイナーゼによって開裂されたことを示し、放射能帯の変化率はポリペプチドがプロテイナーゼによって開裂する率を示す。この率は、天然ポリペプチドに係る率と比較することができる。
【0092】
さらに詳細には、特定の類似体を試験する典型的な実験には、以下が含まれる。天然ポリペプチド(GLP−1)および推定される類似体を放射活性物質で標識する。(注記:標識を目的とする場合、必要なのは、ポリペプチドの開裂が、標識されたポリペプチドの全長と大きさが異なる放射能を帯びた断片を生成することである。)標識された天然ポリペプチドおよび類似体は、特定のプロテイナーゼと共に培養される。培養後、天然ポリペプチドおよび類似体をゲル電気泳動によって分離し、標識された種類についての移動を検査する。特定のプロテイナーゼが天然ポリペプチドを開裂することが知られていることから、開裂による生成物に対応する小さな断片を伴った、天然ポリペプチドの標識された断片の大きさの変化が(酵素による培養の前後で)見られることが期待されよう。しかしながら、類似体がタンパク質分解に耐性を示す場合には、プロテイナーゼでの培養に続く移動性の変化が生じないか、または天然タンパク質のタンパク質分解に比べて非常にゆっくりと生じる。
【0093】
天然ポリペプチドと比較して類似体を開裂するプロテイナーゼの相対的能力もまた生体外細胞系において評価される。1つのこういった細胞系試験において、所定のプロテイナーゼを発現する細胞は、天然ポリペプチドまたは類似体と接触し、細胞内に天然ポリペプチドまたは類似体が存在するようになる。前述の無細胞系の検査と同様に、天然ポリペプチドおよび類似体を、検出できるように標識する。天然ポリペプチドおよび類似体の開裂は、細胞からタンパク質を抽出し、標識されたタンパク質の移動を測定することで、測定および比較できる。
【0094】
細胞系のさらなる実施例では、所定のプロテイナーゼを発現しない細胞が、検出できるように標識された天然ポリペプチド、または類似体と接触し、天然ポリペプチドまたは類似体が細胞内で発現されるるようになる。細胞はさらに特定のプロテイナーゼと接触し、プロテイナーゼが細胞内で発現するようになる。天然ポリペプチドおよび類似体の開裂は、細胞からタンパク質を抽出し、標識されたタンパク質の移動を測定することで、測定および比較できる。
【0095】
前述の細胞系の検査のいずれにおいても、本発明は、多くの主要な細胞または細胞系のいずれかの利用を意図する。場合によっては、生体外分析を行なうための特定の細胞または細胞系を選択することが有利であることがある。例えば、最終的には類似体を使用することが望ましい細胞型に非常に近似した細胞系を選択することが、場合によっては有利である。しかしながら、その他の場合においては、主に便利さに基づいて選択された、おそらく無関連の細胞型または細胞系における候補類似体の初期スクリーニングおよび試験を行い、またその後、必要に応じて、さらに特定の細胞系または動物モデルにおいて安全および効能試験を行うことが最も有益であっても差し支えない。
【0096】
無細胞系および細胞系試験に加えて、特定の類似体のプロテイナーゼ耐性は、多くの動物モデルのいずれかを利用して生体内で測定することができる。所定の類似体のタンパク質分解の初期試験は、野生型の動物で評価することができる。こういった初期試験中は、類似体の潜在的な効果または弊害は問題ではなく、むしろ問題は特定の類似体がタンパク質分解に耐性を示すかどうかである。特定の類似体が、前述の無細胞系、細胞系または生体内試験、のいずれかを利用してタンパク質分解に耐性があることが示されれば、その類似体の治療効果を確かめるために該類似体の生体外および生体内試験がさらに実施される。
【0097】
さらなる試験を利用して、類似体の特定の機能活性を評価することができる。こういった試験は、特定の類似体に基づいて選択することができる。本GLP−1類似体においては、類似体の機能活性は、無細胞系または細胞系の試験において、受容体と結合する類似体の能力を測定し、これを天然ペプチドホルモンの能力と比較することによって評価される。これらの例のいずれにおいても、機能活性は、血糖値およびインスリン濃度を評価するなど、動物モデルでも測定可能である。
【0098】
以下の説明に役立つ実例は、類似体の機能活性を評価するための可能な方法を提供する。
【0099】
1.インスリン活性の試験
活性GLP−1ペプチド、7−34、7−35、7−36、および7−37は、インスリン活性を有し、本発明はこれらの活性GLP−1ペプチドのペプチド類似体の製造方法を提供する。タンパク質分解に対するGLP−1ペプチド類似体の耐性は簡単に測定できる。さらに、GLP−1ペプチド類似体の機能活性は、ペプチドホルモン類似体のインスリン特性を試験することで実証できる。インスリン活性は、例えば、動物細胞に所定のペプチド類似体を提供し、あるいは、その類似体を動物に注射して、媒体または動物の循環系への免疫反応性インスリン(IRI)の放出をモニタすることにより決定される。IRIの存在は、インスリンを具体的に検出することができる放射免疫測定を利用することによって、検出できる。
【0100】
db/dbマウスは遺伝的に肥満であり、糖尿病性のマウス株である。db/dbマウスは、肥満の進行に伴い、高血糖および高インスリン血を発現するため、2型糖尿病(NIDDM)のモデルとして使用される。db/dbマウスは、例えばジャクソン研究所(The Jackson Laboratories)(米国メーン州バーハーバー)から購入できる。典型的な実施の形態では、ペプチドホルモン類似体を含む投薬計画を有するマウスの治療またはコントロール群マウスのために、各動物への投薬前および投薬後のある時点(例えば60分後)に眼窩下の洞血の血液が採取される。血糖測定はグルコースメーターなど従来技術のいずれかを利用して実施される。コントロール群およびペプチドホルモン類似体を投与された動物の血糖値が比較される。
【0101】
外因性GLP−1類似体の代謝運命は、非糖尿病性または2型糖尿病性の対象のいずれかに従い、候補類似体の効果を測定できる。例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、特定放射免疫測定(RIAs)および酵素免疫測定法(ELISA)を組み合わせて使用でき、ここで、無傷の生物活性GLP−1およびその代謝体を検出することができる。例えば、Deaconらの(1995) Diabetes(糖尿病)44: 1126-1131を参照。例えば、GLP−1類似体を投与後、無傷のペプチドを、NH−末端を対象とするRIA法またはELISA法を用いて測定することができ、これらの試験と、COOH−末端に特異的なRIA法との間の濃度差が、NH−末端の先端が切断された代謝体の検出を可能にする。類似体無しでは、皮下GLP−1は時間に依存して急速に減退し、HPLC上でGLP−1−(9−36)アミドと共に共溶出し、同等の免疫反応性を有する代謝体を形成する。例えば、糖尿病患者(n=8)へGLP−1を皮下投与した30分後、代謝体は、COOH−末端のRIA法によって測定される血漿免疫活性の88.5+1.9%の増加を計上し、これは健康体で測定された値よりも高かった(78.4+3.2%;n=8;P<0.05)。Deaconらの上記文献を参照。静脈内に注射したGLP−1もまた、非常に減少する。
【0102】
GLP−1類似体のインスリン活性の測定方法は、米国特許第5、545、618号に開示されている。
【0103】
(d) 医薬品
治療用途として、選択された類似体は、医薬品として許容される担体であって、かつ、所望の組織にペプチドが供給されるように、選択された投与経路(つまり経口、静脈または非経口)に適した投与量で、治療に効果的な量の類似体を対象者に投与するのに適した担体と共に、調合される。特定の実施の形態では、類似体は非発熱性であり、すなわち臨床的に許容される以上に患者の体温の上昇を引き起こすことはない。医薬品として許容される好ましい担体は、希釈剤や賦形剤など通常ペプチド系の薬剤と共に用いられるものである。一般的な製剤における指針として、「Remington's Pharmaceutical Sciences」第17版、Mack Publishing Company(マック出版)、米国ペンシルバニア州イーストン、1985年を参照されたい。本発明の1つの実施形態では、化合物は、例えば、患者への完全非経口栄養療法における液体栄養補給剤として用いられる場合などの輸液用、あるいは皮下、筋肉または静脈への注射による投与用に製剤され、したがって、無菌で、発熱物質を含まない形態での水溶液として利用され、任意で、例えばわずかに酸性などの生理学的に許容されるpH、または生理学的なpHに緩衝される。従って、化合物は、蒸留水などの媒体、あるいは、さらに望ましくは、生理食塩水、リン酸緩衝性食塩水、または5%デキストロース溶液などで、投与されて差し支えない。必要に応じて、酢酸または水酸化ナトリウムなどの促進剤を含めることにより、類似体の水溶性を高めることができる。
【0104】
本発明の類似体は医薬品として許容される塩の形態で供給することができる。このような塩としては、限定はしないが、有機酸(例えば、酢酸、乳酸、マレイン酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、安息香酸、メタンスルホン酸またはトルエンスルホン酸)、無機酸(例えば、塩酸、硫酸またはリン酸)およびポリマー酸(例えば、タンニン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリ乳酸、ポリグリコール酸またはポリ乳酸−グリコール酸のコポリマー)と共に調合されるものが挙げられる。
【0105】
本発明の類似体の治療に効果的な量および医薬品として許容される担体物質(例えば、炭酸マグネシウム、乳糖、あるいは、治療用類似体がそれと共にミセルを形成するリン脂質)を併せて、患者に投与(例えば、経口、静脈、経皮、肺、経膣、皮下、鼻、粘膜、気管、頭蓋内、筋肉細胞、心膜、筋肉)する治療用組成物(例えば、ピル、タブレット、カプセルまたは液体)を形成する。経口で投与されるピル、タブレットまたはカプセルは、消化されずに小腸に届くのに十分な時間、活性組成物を胃酸または腸内酵素から保護するための物質でコーティングすることができる。
【0106】
治療用組成物は、皮下または筋肉内投与用に、生物分解可能な、または微生物で分解できない徐放性製剤の形態をとることができる。例えば、米国特許第3、773、919号、同第4、767、628号の各明細書、および国際公開第94/15587号パンフレットを参照。継続投与は、体内埋め込み型ポンプまたは体外ポンプ(例えば、INFUSAID(商標)ポンプ)を用いて実施可能である。投与は、例えば1日1回の注射などのように断続的に投与することができ、または、例えば徐放性製剤など、少量での継続投与も可能である。
【0107】
本発明の治療または診断用組成物は、疾患を治療または診断するのに十分な量で、患者に投与される。上記疾病または疾患の治療にとっての本発明のペプチドの効果的な量は、投与法、患者の年齢、体重および状態によって異なり、最終的には主治医または獣医によって決定されるであろう。
【0108】
異常グルコース代謝、脂質代謝または摂食障害に関する疾病または疾患の治療に適用される上記一般製剤に適用されるペプチドもまた、本発明の範囲内にあることが意図されている。
【0109】
本発明の他の特徴および利点は、詳細な説明および請求項から明らかとなるであろう。
【0110】
(e) 利用方法
1.診断上の利用
本発明の類似体は、限定はしないが、グルコース代謝、脂質代謝および食物摂取に関係するものが挙げられる、多様な疾病状態の診断または治療のための放射性標識または非標識の形態で利用して差し支えない。
【0111】
本発明の化合物の放射性標識された複合体は、このような診断および治療に利用されることが好ましい。本発明にかかる化合物の放射性標識された実施形態は、国際公開第93/18797号パンフレットおよびWolteringらのSurgery 116、1139-1147(1994)に開示されているとおり、放射性同位体誘導手術(radioisotope guided surgery)に利用することができる。好ましい実施の形態では、99Tcなどのγ線放射性核種と本発明の化合物との複合体が、SSTR−発現腫瘍の診断に利用され、その後、188Reまたは186Reβ放射性核種と本化合物との複合体が腫瘍の治療に用いられる。
【0112】
診断目的のため、本発明にかかる診断または放射性診断用の薬剤の診断に効果的な量が、好ましくは静脈に、投与される。診断に効果的な量とは、磁気共鳴、CTスキャン、ガンマシンチグラフィー、SPECT、PETなど、従来の手法を用いた生体内での標識の局所化および検出に効果を上げるのに必要な診断または放射性診断用の薬剤の量と定義される。
【0113】
シンチグラフィ造影を用いた診断において、好ましくは、本発明の99Tc−標識化合物は一回分の注射量で投与される。本発明の99Tc−標識化合物は、生理食塩水を溶剤として、または血漿溶剤など、静脈注射用の従来の溶剤で静脈に投与して差し支えない。一般的に、一回の投与量は、約0.01mCi〜約100mCiの放射性活性を有し、好ましくは1mCi〜50mCiである。単回投与で注射されるべき溶液は、約0.01mLから約10mLである。静脈投与後数分以内に、生体内造影が実施される。しかしながら、造影は、必要であれば、放射性化合物が患者に注射されてから数時間後またはそれ以降に実施することもできる。ほとんどの場合、投与量のうち十分な量が、0.1時間以内に、造影される部位に蓄積され、シンチフォトの撮影が可能となるであろう。診断目的のシンチフォトの撮影のいかなる従来法も、本発明に従って利用することができる。
【0114】
2.治療方法
本発明の類似体は、「親」ポリペプチドが生体内で通常プロテイナーゼによって開裂される、所定の治療用組成物で治療可能な疾病または状態の治療における改善された方法を提供する。タンパク質分解が治療の有効性を低減させ、または排除すること、および、場合によっては、機能的拮抗生成物の生成が誘導されることから、特定の疾病および状態の治療に利用可能な多くのポリペプチド治療の安全性および効能が大きく低下する。従って、本発明の方法および類似体の組成物は、あらゆる多様な疾病および状態の治療方法の改善策を提供する。
【0115】
本発明の類似体は、特定の実施の形態では、血糖値の降下、肥満解消、耐糖能障害の緩和、肝臓グルコース新生の抑制、血中脂質(例えば、遊離脂肪酸)濃度の降下およびアルドース還元酵素を阻害する、各能力を有する。本発明の類似体は、特定の実施の形態では、島細胞の増生(islet proliferation)および新生の増加、グルコース依存性のインスリン分泌の増加、インスリン生合成の増加、グルカゴン分泌の減少、胃内容排出の遅滞、食物摂取および/または食欲の減退、心機能の増加(例えば、左心室の駆出率)、心拍数の増加、最大血圧の増加、血管抵抗(最低血圧)の減少、末梢血流の増加、高ナトリウム血性患者におけるナトリウム排出の増加(例えば、ナトリウム依存性高血圧の軽減)、虚血/再潅流傷害の減少(例えば、心筋梗塞後の梗塞面積の減少)、神経毒性(例えば、グルタミン酸またはカイニン酸興奮毒性に関連する神経毒性)の減少、細胞自然死の減少(例えば、神経細胞内)、βアミロイドタンパク質の蔓延の減少、および、空間および連想的学習の向上の能力を備える。従って、とりわけ、高血糖、肥満、高脂質血、糖尿病性合併症(網膜症、腎症、神経障害、白内障、冠動脈疾患および動脈硬化を含む)、心疾患、心筋梗塞、循環障害、神経変性病(例えば、アルツハイマー病、ハンティントン病、筋萎縮性側索硬化)の予防および/または治療、さらに肥満関連の高血圧および骨粗しょう症に有用である。従って、本発明の一態様は、本明細書に開示される1つ以上のGLP−1類似体を治療に効果的な量で投与することを含む、患者または対象の疾病の治療方法である。
【0116】
GLP−1ペプチドの類似体は、I型およびII型糖尿病を含む糖尿病を罹患する患者に投与される場合に特に有効であるであるが、とりわけII型に有効である。糖尿病は、インスリン分泌の相対的または絶対的減少、インスリン感受性またはインスリン抵抗性の低下から起こる高血糖によって特徴づけられる疾病である。この病気の罹患および死亡は、血管、腎臓および神経系の合併症に起因する。経口的ブドウ糖負荷試験は、糖尿病診断に利用される臨床試験である。経口的ブドウ糖負荷試験において、グルコース負荷またはグルコースチャレンジに対する患者の生理学的反応が評価される。グルコース摂取後、グルコースチャレンジに対する患者の生理学的反応が評価される。一般的に、予め決められた時間に複数回、患者の血糖値(患者の血漿、血清または全血内のグルコース濃度)を測定することで実施される。
【0117】
従って、1つの態様では、本発明は、高血糖症、肥満、高脂質血症、(網膜症、腎症、神経障害、白内障、冠動脈疾患および動脈硬化を含む)糖尿病性合併症と、さらに肥満関連の高血圧および骨粗しょう症の治療のためのタンパク質分解−耐性GLP−1類似体の治療用途および関連用途に関する。
【0118】
本発明は、類似体のみで治療計画が構成される治療方法、および、さらに複雑な複数要素からなる治療計画の一部として、1種類以上の類似体が投与される治療方法における類似体の使用を意図している。例えば、糖尿病および/または糖尿病合併症の治療方法の場合、本発明はGLP−1投与による糖尿病の治療方法を目的とする。本発明はさらに、ある状況において、2種類以上の類似体の投与が好ましいであろうことが意図されている。例えば、治療方法には2種類以上の類似体の投与を含んでいて差し支えない。さらに、本発明は、1種類以上の類似体の投与が、複合治療計画の一部として利用されるであろうことを意図している。糖尿病または糖尿病の合併症の治療方法の場合、典型的な治療計画には、1種類以上の類似体の投与、インスリン投与、食事の調節および運動の調節が含まれる。
【0119】
さらに別の多角的治療計画の例では、本発明は1種類以上の類似体および天然タンパク質を内生的に開裂する特定の酵素の酵素活性を阻害する1種類以上の薬剤を意図している。GLP−1の場合、典型的な方法には、DPP−IVの1種類以上の阻害剤と共に、1種類以上の類似体を投与することが含まれるであろう。特定の酵素の阻害剤は、特異的であってもよく(例えば、DPP−IVの活性のみを調節する阻害剤)、あるいは、阻害剤はもっと無差別であって構わない(例えば、複数のセリンプロテアーゼの活性を調節する阻害剤)。さらに、本発明は、1種類以上の類似体、および、天然タンパク質を内生的に開裂する特定の酵素を分解する1種類以上の酵素の投与を意図している。GLP−1の場合、典型的な方法には、DPP−IVを分解する1種類以上の酵素を伴う、1種類以上のペプチド類似体の投与が含まれる。こういった酵素は、特異的であってもよく(例えば、DPP−IVのみを分解する酵素)、あるいは、酵素は他の複数のタンパク質を分解しても差し支えない(例えば、複数のセリンプロテアーゼを分解する酵素)。
【0120】
(f)事業の方法
本発明の他の態様では、事業を行う特定の方法を提供する。特に、本発明にかかる方法の実施は、特定のGLP−1類似体の同定であって構わない。この技術的工程は、さらなる工程の1つと組み合わせる場合、薬学、農芸化学、バイオ技術または好ましくは生命科学技術における事業を行なう上での新規なアプローチを提供する。例えば、本発明に従った類似体は、様々な疾病モデルの治療薬として効能を試験され、次に、可能性のある治療用組成物について、調剤、包装および疾病治療用として得られた製剤のその後の販売の前に、その毒性および安全性を試験される。あるいは、こういった製剤を開発および販売し、またはこういった工程を実施する権利を、有償で第三者に使用許諾してもよい。本発明のある別の態様では、同定された類似体を、生物学的または治療的状況においてその類似体の機能または副作用のさらなる理解が得られるように、有償で第三者に提供可能な情報という形で活用されてもよい。
【0121】
特定の実施例では、最初にに特定された類似体はさらなる最適化の対象となり、例えばリード類似体の構造をさらに改良する。当該最適化は、溶解性、浸透性、生体利用効率、毒性、変異原性および薬物動態を含むその他望ましい薬理学特性と薬理作用の最大持続時間を合わせた類似体開発へとつながる可能性がある。
【0122】
一般的には、上記のパラメーターの問題に対処する、リード類似体を導くように構造修正が行なわれる。しかし、これらの修正は、類似体の有効性および活性への推定される影響を配慮に入れねばならない。例えば、動物モデルで試験される際リード類似体の毒性が高い場合、望ましい特性を維持しつつ毒性を減少させるように類似体に対する修正を行うことができる。
【0123】
候補類似体(類似体は生体内特性を改善するよう変更されるために修正されるかどうかに関わらず)またはその組み合わせは、動物モデルにおいて効能および毒性を試験されなければならない。そのような治療用プロファイリングは一般的に薬剤技術において使用される。人間で試験的治療の試験を行なう前に、広範な治療用プロファイリング(前臨床試験)が、安全性および効能の初期パラメーターを構築するために実施されねばならない。前臨床試験は、生体外(すなわち、試験官、ビーカー、ペトリ皿、等)および動物で行なわれる研究を通して治療効果、生体利用効率、吸収、分布、代謝および除去に関する作用のメカニズムを構築する。動物実験は、治療薬が望ましい結果をもたらすかどうかを評価するために実施される。実験的治療において異なる量が治療の効能を試験し、推定される有害な副作用を特定し、毒性を評価するために投与される。
【0124】
簡潔に述べると、当業者は、候補類似体の特定が投与に有効な医薬品の開発における第一ステップであると認識する。病状または疾病に効果的な類似体を構成する医薬品の投与は安全かつ効果的でなければならない。当該技術で定期的に実施される治験の初期段階は、潜在的薬剤の安全性および効能の懸案事項に対処する。類似体の特定事例では、医薬品の効能は直ちにまず細胞培養で、その後マウスまたはラットで評価される。特定の類似体が使用される特定の疾病徴候に適する細胞培養システムおよび動物モデルを迅速に当業者によって選択することができる。簡潔に述べると、多様な工程で異なる量の前記医薬品がマウスまたはラットに投与される。投与経路は製剤の特性および類似体を供給するのに望ましい細胞型に基づき適切に選択される。対照マウスはプラセボが投与される(例、担体または賦形剤のみ)。
【0125】
一実施例では、治療用プロファイリングのステップは、細胞培養および動物における類似体の毒性試験、候補類似体の薬物動態および代謝の分析、および疾病の動物モデルにおける効能の決定を含む。特定の場合、当該方法は、構造―活性関係の分析、効能、安全性および薬物動態プロファイルに基づくリード類似体の最適化を含む。当該ステップの目的は、前臨床試験用の類似体候補を選択し、人体臨床試験の前にFDA(食品医薬品局)へ新薬臨床試験開始届(「IND」)を申請することである。
【0126】
リード最適化および治療的プロファイリングの間での1つの目的は、天然GLP−1およびその断片と比較して作用の持続時間が長く、最小限の副作用で投与可能な類似体の開発である。生体外使用での類似体の場合、典型的な類似体は培養細胞に特に高い毒性を、また培養細胞に変異原性を有してはならず、培養細胞に発癌性を有してはならない。生体内使用での類似体の場合、典型的な類似体は特に高い毒性(例、患者に投与された場合に許容範囲の副作用が生じるのみ)、変異原性および発癌性があってはならない。
【0127】
毒性プロファイリングは効果的な量の医薬品が投与された時に起こりうる推定される有害な副作用の評価を意味する。副作用は有害である場合も、有害でない場合もあり、医薬品と関連する副作用が許容範囲内であるかどうかの決定は通常の承認審査中にFDA(食品医薬品局)によって下される。この決定は厳重な修正のきかない規定に基づくものではなく、許容される副作用は以下の要因によって異なる:(a)治療される病状の重症度および(b)その他の治療方法の使用可能度、および当該する可能な治療方法に現在関連づけられている副作用。例えば、癌という用語は機能が破綻した細胞成長、増殖および分化に関連する疾病状態の複合体を含む。多くの癌の形態は特に壊滅的な疾病であり、強烈な痛み、影響を受けた組織の機能消失および死が結果として引き起こされる。化学療法的薬物は、癌の多くの種にとって標準的治療の重要な部分を占める。化学療法自体は、脱毛、ひどい吐き気、体重減少および不妊を含む深刻な副作用をもたらし得るが、このような副作用は治療を目指す疾病の重大さをみれば、許容範囲であると考えられる。本発明の文脈において、副作用が重大であるかどうかは、治療対象の病状および病状を治療するその他方法の使用可能度に因る。
【0128】
毒性試験は効能試験と併せて実施し、医薬品の効果的な量を投与されたマウスを医薬品への副作用について観察することができる。
【0129】
動物実験で安全かつ効果的であると実証された1つ以上の類似体は、医薬品へと調合することができる。このような医薬品は宣伝、流通および販売される。典型的な類似体および当該類似体の医薬品は宣伝され単体で販売されるか、医薬包装および/またはキットとして販売される。さらに、上記のいかなる態様においても、1つ以上の類似体のデザインに基づいた事業を行なう方法は任意で患者および/または患者の保険会社に請求するシステムおよび患者および/または患者の保険会社から適切な報酬を徴収するシステムを含む。
【実施例】
【0130】
以下の実施例は説明として示されており限定するものではない。
【0131】
実施例1:GLP−1類似体の作用の持続時間
DPP−IVは、末端から2番目(P2)に位置するProまたはAlaいずれかのペプチドからN末端ジペプチドを開裂する。三級側鎖β−炭素を有する非天然アミノ酸t−ロイシン(Tle)の挿入により、開裂率が大幅に減少する。これは、P3残基の側鎖原子の配列のみが異なる3種相同ペプチドAla−Pro−Leu−Ser−Trp−Ser−NH、Ala−Pro−Ile−Ser−Trp−Ser−NHおよびAla−Pro−Tle−Ser−Trp−Ser−NHと併せて図1に図示されている。LeuおよびIleを含むペプチド(半減期はそれぞれ49分および41分)の開裂率にはほとんど違いがない。30分間の消化中、Ileを含むペプチドでの反応は観察されなかった。
【0132】
DPP−IVは、P2にAla、P3にGluを有するGLP−1を開裂することが知られている。P3Glu残基の代わりにTleを有するGLP−1の類似体は、DPP−IVによる分解作用に対して安定性を有する(図1B)。Glu残基は、GLP−1受容体結合および活性に重要であると知られている。従って、P3のβ−ジメチルAsp(DMA)を有する別の類似体を合成した。この修飾は天然配列内に見られる酸性基を維持するが、三級β−炭素を導入する。図1Bで図示されるとおり、Tle−およびDMAで置換されたGLP−1類似体は、天然Glp−1の96分の半減期に比べ、1000分以上の半減期を有するDPP−IVによる分解への耐性がある。
【0133】
GLP−1のP3残基の修飾はペプチドを安定させたが、その変換は受容体親和性を低下させた。それでもなお、エキセンディン−4から引き離したアミノ酸残基をペプチドのカルボキシ末端へ結合することで、修飾されたペプチドのGLP−1受容体に対する親和性が向上し、P3修飾(図2)で生じた消失が概して補われる。TPA144と称するペプチドを生成するために、GLP−1のP3に位置するGlu残基をTleに変えるすることで、GLP−1と比べGLP−1受容体に対する親和性が20分の一に減少した。IC50は、GLP−1に対する1.5nMからTPA144に対して36.3nMに増加した。P3残基がTPA1B4を形成するβ−ジメチルAspであった場合、親和性の低下は約5分の一であった。TPA1B4は、7.6nMのIC50を有すした。エキセンディン−4のカルボキシ末端9残基をTPA1B4配列の末端に結合させ、P1732を形成することで、P3DMA残基からの親和性の消失を補なった。P1732の親和性は、GLP−1の親和性と大きく異なることはない(P1732のIC50は2.5nMであり、GLP−1は1.5nM)。エキセンディン−4とGLP−1受容体の結合が比較のために測定された。GLP−1受容体へのエキセンディン−4結合値が0.4nMであることから、このペプチドはGLP−1と比べて小さいが重、有意に向上した親和性をもって結合するといえる。
【0134】
GLP−1の変換は、ペプチドの有効性に影響を与えない(図3)。高ペプチド濃度、つまり、cAMPで測定されるGLP−1受容体活性の量は、GLP−1、TPA144、TPA1B4およびP1732に対して同等であった。従って、P3修飾を伴うP3GLP−1類似体は、GLP−1受容体の完全なアゴニストとしての機能を果たす。カルボキシ末端の拡張は、アゴニスト活性を減退させなかった。受容体活性のEC50値(図4)を測定することで、P1732の生体外有効性は測定され、GLP−1およびエキセンディン−4と比較された。アミノ−およびカルボキシ−末端の修飾を組み合わせたGLP−1類似体は、0.3−0.8nMのEC50を有したGLP−1と比較して、4−1.1nMのEC50を有し、通常の有効性を維持する。エキセンディン−4は、GLP−1に比べてやや低いEC50を有した(0.1−0.5nM)。
【0135】
DPP−IVに対して耐性のあるGLP−1類似体は、GLP−1(図5A)に比べて長い持続作用時間を有する。GLP−1は、注射30分後dbマウスの血糖を下げ、この効果は60分後にはほぼ消失する。逆に、DPP−IV抵抗類似体TPA1B4は30分後に同様の効果を見せるが、注射後60分間血糖は下がり続ける。60分後の血糖値は通常のマウスで観察される範囲内である。この効果は少なくとも90分続く。4時間後までに、血糖値は対照動物で観察される高血糖値へ戻る。
【0136】
エキセンディン−4は、GLP−1またはDPP−IV耐性類似体TPA1B4よりも非常に長い持続作用時間を有する。最低注射後少なくとも4時間dbマウスの血糖値は降下する(図5B)。P1732を形成するために9残基C−末端拡張を結合することで、血糖の効果はエキセンディン−4と同等になる。9残基拡張全体が持続作用時間に与える影響に必要であるかを試験するために、GLP−1類似体DGS65は、エキセンディン−4の残基31−33に対応するP3β−DMAおよび3残基カルボキシ末端拡張を用いて調製された。エキセンディン−4およびP1732と同様に、このペプチドは、最低4時間dbマウスの血糖値を通常値までに下げ、8時間後までには高血糖値へと戻った。
【0137】
グルコース降下活性の用量依存性を決定するために、エキセンディン−4およびDPP−IV耐性GLP−1類似体P1732およびTPA1B4が0.008μgから80μgdbの用量にわたってマウスに投与された。注射60分後に血糖値が測定され、これは投与量8μgの最大効果時間に対応する。全3種のペプチドは用量依存性を示し(図6)、エキセンディン−4に対するEC50値は0.5μg、P1732は1.1μgおよびTPA1B4は0.4μgと類似した値を有した。
【0138】
実施例1の結果を表2にまとめる。
【表2】

【0139】
実施例2:カルボキシ末端非天然アミノ酸残基を有するGLP−1類似体の持続作用時間
ペプチドDGS69は、DPP−IV抵抗GLP−1類似体TPA1B4に相同する。この2種のペプチドは共に第3番目に位置するβ−ジメチルAspを備え、DPP−IVによる分解への耐性を与える。DGS69は、異常アミノ酸ののビフェニルアラニン(Bip)がカルボキシ末端に結合されている点で、TPA1B4と異なる。この単一の残基の結合により、糖尿病マウスにおける薬の効果を降下させる血糖の持続時間が大幅に増加した。 図7で、前記ペプチドの作用の経時的経過は、TPA1B4およびエキセンディン−4と比較される。前三種のペプチドの構造を下記に示す。
【0140】
GLP−1:HAEGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGR−NH(配列番号3)
エキセンディン−4:HGEGTFTSDLSKQMEEEAVRLFIEWLKNGGPSSGAPPPS−[NH](配列番号8)
TPA1B4:HAXGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGR−NH(配列番号12)
DGS69:HAXGTFTSDVSSYLEGQAAKEFIAWLVKGRZ−NH(配列番号13)
X=β−ジメチルAsp(DMA) Z=ビフェニルアラニン(Bip)
まとめると、1つの非天然アミノ酸、ビフェニルアラニンをDPP−IV耐性GLP−1類似体のカルボキシ末端へ結合することで、長時間の持続作用時間がもたらされ、実質的に、エキセンディン−4と同等となることが発見された。
【0141】
各出版物、特許および出願継続中特許が引用して援用されるよう明確におよび個別に開示されるのと同様に、出版物、特許および出願継続中特許に開示された内容を本願に引用して援用する。
【0142】
均等物
当業者は通常の実験のみで、本願に開示されている化合物および使用法に対する均等物を認識または確定することができる。このような均等物は本発明の範囲内に限られ、以下の請求項に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】(A)50mMのHEPESおよび0.14MのNaCl中、37℃、pH8.0でラットDPP−IVを用いてインキュベートされたAla−Pro−Leu−Ser−Trp−Ser−NH(□)、Ala−Pro−Ile−Ser−Trp−Ser−NH(△)およびAla−Pro−Tle−Ser−Trp−Ser−NH(▽)の消化、および、(B)50mMのHEPESおよび0.14MのNaCl中、30℃、pH8.0でDPP−IVを用いてインキュベートされたGLP−1(7−36アミド)(■)、TPA1B4(◆)、およびP1732(▲)の消化。指示された時間に一定量を取り出し、HClを加えてpH2にすることにより反応を停止し、試料をLCMSで分析した。ペプチド濃度は、0.1mMであった。開裂の割合は、MSクロマトグラムでの基質と生成物のピークの積分によって決定された。データは、単相指数方程式に当てはまった。
【図2】ヒトGLP−1受容体を発現するCOS−7細胞における、GLP−1(■)、エキセンディン−4(▲)、TPA144(○)、TPA1B4(◆)およびP1732(▼)の、125Iエキセンディン(9−39)結合との競合関係。IC50値は、GLP−1に対して1.5nM、TPA144に対して36.3nM、TPA1B4に対して7.6nM、P1732に対して2.5nM、およびエキセンディン−40に対して0.4nMであった。データは、それぞれの実験結果を示しており、競合物が存在しない場合の、125Iエキセンディン(9−39)結合で標準化される。
【図3】cAMP生成によって測定されたGLP−1受容体の活性化を示している。ペプチドを、300nMの濃度でのアゴニスト活性について試験した。データは、n=4での平均値+標準誤差。
【図4】GLP−1(■)、P1732(▼)およびエキセンディン−4(▲)の様々な濃度でのインキュベーション後のヒトGLP−1受容体を発現するCOS−7細胞におけるcAMP生成。データ値■標準誤差をプロットしたところ、S字用量反応曲線に当てはまった。近似曲線から得られたEC50値は、GLP−1、P1732およびエキセンディン−4に対して、それぞれ0.5nM、0.6nMおよび0.2nMである。
【図5】経時的なグルコース効果作用の経過を示しており、ここでは、生理食塩水(●)、もしくは8μgのGLP−1(■)、TPA1B4(◆)、P1732(▼)、DGS65(□)、またはエキセンディン−4(▲)の注射前、および注射後の指示された時間に血糖測定を行った。P3β−ジメチルAspを有するTPA1B4をGLP−1(A)と比較し、P3とカルボキシ末端修飾の両方を有するペプチド類似体をエキセンディン−4(B)と比較する。各時点において、血糖変化の割合を10匹のマウスについて測定し、平均変化±標準誤差をプロットしている。
【図6】糖尿病のマウスにおける実施例1のペプチドによって生じた用量反応を示している。血糖測定は、TPA1B4(◆)、P1732(▼)およびエキセンディン−4(▲)の様々な用量の注射前に行なわれ、また、注射後60分に再び行われた。各投与において、血糖変化の割合を10匹のマウスついて測定し、平均変化±標準誤差をプロットしている。データはS字用量反応曲線に当てはまった。これらの適合(および95%信頼区間)から得られるEC50値は、TPA1B4に対して0.4μg(0.1〜1.92μg)、P1732に対して0.5μg(0.4〜3.5μg)、エキセンディン−4に対して0.5μg(0.2〜1.2μg)である。
【図7】経時的なグルコース降下活性の経過を示しており、ここで、生理食塩水(■)、または8μgのTPA1B4(▼)、DGS69(▽)、もしくはエキセンディン−4(▲)の注射前および注射後の指示された時間に血糖測定が行われた。各時点において、血糖変化の割合を10匹のマウスについて測定し、その平均変化±標準誤差をプロットしている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチド類似体であって、
a)GLP−1−(7−34)、GLP−1−(7−35)、GLP−1−(7−36)およびGLP−1−(7−37)(配列番号1−4)のうちの1つと少なくとも80%同一の基礎アミノ酸配列と、
b)基礎アミノ酸配列のカルボキシ末端に結合している1から15のアミノ酸残基と、
を含み、
ここで、前記類似体が、ヒト生体内で、天然GLP−1より持続時間の長い、GLP−1に類似する活性を有することを特徴とするポリペプチド類似体。
【請求項2】
ポリペプチド類似体であって、
a)GLP−1−(7−34)、GLP−1−(7−35)、GLP−1−(7−36)およびGLP−1−(7−37)(配列番号1−4)のうちの1つと少なくとも80%同一の基礎アミノ酸配列と、
b)前記基礎アミノ酸配列のカルボキシ末端に結合している1から15のアミノ酸残基と、
を含み、
ここで、GLP−1受容体が、前記類似体に対して、天然GLP−1よりも大きな親和性を有することを特徴とする、ポリペプチド類似体。
【請求項3】
ポリペプチド類似体であって、
a)GLP−1のP’残基に対応する基礎アミノ酸配列のアミノ酸残基が、四置換Cβ炭素を有するアミノ酸類似体である、GLP−1−(7−34)、GLP−1−(7−35)、GLP−1−(7−36)およびGLP−1−(7−37)(配列番号1−4)のうちの1つと少なくとも50%同一の基礎アミノ酸配列と、
b)前記基礎アミノ酸配列のカルボキシ末端に結合している1から15のアミノ酸残基と、
を含み、
ここで、前記類似体が、ヒト生体内で、天然GLP−1より持続時間の長い、GLP−1に類似する活性を有することを特徴とするポリペプチド類似体。
【請求項4】
ポリペプチド類似体であって、
a)GLP−1のP’残基に対応する基礎アミノ酸配列のアミノ酸残基が四置換Cβ炭素を有するアミノ酸類似体である、GLP−1−(7−34)、GLP−1−(7−35)、GLP−1−(7−36)およびGLP−1−(7−37)(配列番号1−4)のうちの1つと少なくとも50%同一の基礎アミノ酸配列と、
b)前記基礎アミノ酸配列のカルボキシ末端に結合している1から15のアミノ酸残基と、
を含み、
ここで、GLP−1受容体が、前記類似体に対して、天然GLP−1より大きな親和性を有することを特徴とするポリペプチド類似体。
【請求項5】
P’残基に対応する残基が、GLP−1と比較して、 プロテイナーゼによる開裂に対する前記類似体の感受性を低減することを特徴とする請求項3または4に記載の類似体。
【請求項6】
P’残基に対応する残基が、以下の化学式:
【化1】

によって表され、
式中、
およびRは、それぞれ独立して、低級アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルコキシル、カルボニル、カルボキサミド、ハロゲン、ヒドロキシル、アミン、またはシアノを表し、もしくは、 Rおよび Rが共に4−7員環を形成し、
は、低級アルキル、ヘテロアルキル、アミノ、アルコキシル、ハロゲン、カルボキサミド、カルボニル、シアノ、チオール、チオアルキル、アシルアミノ、ニトロ、アジド、サルフェート、スルホネート、スルホンアミド、−(CH−R、−(CH−OH、−(CH−COOH、−(CH−O−低級アルキル、−(CH−O−低級アルケニル、−(CH−O−(CH−R、−(CH−S−低級アルキル、−(CH−S−低級アルケニル、−(CH−S−(CH−R4、−(CH−N−C(=NH)NH、−(CH−C(=O)NH、もしくは−(CH−NHを表し、
は、それぞれ存在ごとに独立して、アリール、アラルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、もしくは非芳香族ヘテロシクリルを表し、
m=0、1または2である、
請求項5に記載の前記プロテイナーゼ耐性の類似体。
【請求項7】
およびRが、それぞれ独立して低級アルキルまたはハロゲンを表し、
が、低級アルキル、アリール、ヒドロキシル基、−(CH−COOH、−(CH−NH、−(CH−N−C(=NH)NH、−(CH−C(=O)NH、−SH、または−(CH−S−CHを表す、
請求項6に記載の類似体。
【請求項8】
およびRが、それぞれ独立して、メチル、エチルまたはプロピルを表すことを特徴とする請求項7に記載の類似体。
【請求項9】
およびRが、それぞれ独立して、メチルを表すことを特徴とする請求項8に記載の類似体。
【請求項10】
が、低級アルキル、フェニル、ヒドロキシフェニル、インドール、イミダゾール、ヒドロキシル、−COOH、−CH−COOH、−CH−CH−N−C(=NH)NH、−CH−C(=O)NH、−CH−CH−C(=O)NH、−SH、または−CH−S−CHを表すことを特徴とする請求項8に記載の類似体。
【請求項11】
前記類似体が、GLP−1の生物活性の少なくとも50%を保持することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の類似体。
【請求項12】
1つ以上の非天然のアミノ酸残基が、前記基礎アミノ酸配列のカルボキシ末端に結合していることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の類似体。
【請求項13】
前記非天然のアミノ酸残基が、アリール含有側鎖を有することを特徴とする請求項12に記載の類似体。
【請求項14】
前記非天然のアミノ酸がビフェニルアラニンであることを特徴とする請求項13に記載の類似体。
【請求項15】
前記基礎アミノ酸配列の前記カルボキシ末端に結合している前記アミノ酸残基が、エキセンディン−4のアミノ酸残基31〜39から選択されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の類似体。
【請求項16】
前記基礎アミノ酸配列の前記カルボキシ末端に結合する前記アミノ酸残基が、エキセンディン−4のアミノ酸残基31〜39から選択される3つ以上の連続したアミノ酸残基であることを特徴とする請求項15に記載の類似体。
【請求項17】
前記基礎アミノ酸配列の前記カルボキシ末端に結合している前記アミノ酸残基が、Pro−Ser−Serであることを特徴とする請求項16に記載の類似体。
【請求項18】
前記基礎アミノ酸配列の前記カルボキシ末端に結合している前記アミノ酸残基が、Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser(配列番号5)であることを特徴とする請求項16に記載の類似体。
【請求項19】
前記類似体が、GLP−1−(7−34)、GLP−1−(7−35)、GLP−1−(7−36)およびGLP−1−(7−37)(配列番号1−4)のうちの1つと少なくとも80%同一の基礎アミノ酸配列を有することを特徴とする請求項3または4に記載の類似体。
【請求項20】
前記類似体が、GLP−1−(7−34)、GLP−1−(7−35)、GLP−1−(7−36)およびGLP−1−(7−37)(配列番号1−4)のうちの1つと少なくとも90%同一の基礎アミノ酸配列を有することを特徴とする請求項19に記載の類似体。
【請求項21】
前記類似体が、GLP−1−(7−34)、GLP−1−(7−35)、GLP−1−(7−36)およびGLP−1−(7−37)(配列番号1−4)のうちの1つと少なくとも95%同一の基礎アミノ酸配列を有することを特徴とする請求項20に記載の類似体。
【請求項22】
前記類似体が、以下の基礎アミノ酸配列:
His−Ala−Xaa−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Val−Ser−Ser−Tyr−Leu−Glu−Gly−Gln−Ala−Ala−Lys−Glu−Phe−Ile−Ala−Trp−Leu−Val−Lys−Gly−Arg(配列番号12)
を有し、
式中、Xaaはβ−ジメチルアスパルテートもしくはt−ロイシンであることを特徴とする請求項21に記載の類似体。
【請求項23】
前記類似体が、GLP−1−(7−36)(配列番号3)の配列と最大1つの残基しか異ならない基礎アミノ酸配列を有することを特徴とする請求項1または2に記載の類似体。
【請求項24】
前記類似体が、GLP−1−(7−36)(配列番号3)と同一の基礎アミノ酸配列を有するとを特徴とする請求項23に記載の類似体。
【請求項25】
請求項1から24のいずれか1項記載の前記類似体と、医薬品として許容される担体もしくは賦形剤とを含む医薬品組成物。
【請求項26】
請求項1から24のいずれか1項記載の前記類似体と、医薬品として許容される担体と、患者への投薬するためのラベル、使用説明書またはその双方と、を含む、包装された製剤。
【請求項27】
請求項1から24のいずれか1項記載の前記類似体と、許容される担体と、動物への投薬のためのラベル、使用説明書またはその双方と、を含む、包装された動物用製剤。
【請求項28】
請求項1から24のいずれか1項記載の類似体の有効量を投与することを含む、インスリン耐性、耐糖能異常、高血糖、高インスリン血、肥満、高脂質血および糖尿病性合併症の1つ以上を、それらの治療を必要とする患者に治療する方法 。
【請求項29】
ペプチドのカルボキシ末端に1から15のアミノ酸残基が結合していることを含む、GLP−1と少なくとも80%同一のペチプドの、生体内での半減期を上昇させる方法。
【請求項30】
前記アミノ酸残基が非天然であることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記非天然のアミノ酸残基のうち少なくとも1つがアリール含有側鎖を有することを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記非天然のアミノ酸のうち少なくとも1つがビフェニルアラニンであることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記アミノ酸残基がエキセンディン−4のアミノ酸残基31−39から選択されることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項34】
前記アミノ酸残基が、エキセンディン−4のアミノ酸残基31−39から選択される3つ以上の連続したアミノ酸残基であることを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記アミノ酸残基がPro−Ser−Serであることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記アミノ酸残基がPro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser(配列番号5)であることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記ペプチドが、GLP−1−(7−36)(配列番号3)と最大1つのアミノ酸残基しか異ならないことを特徴とする請求項29に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−507844(P2009−507844A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530161(P2008−530161)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/034685
【国際公開番号】WO2007/030519
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(303043726)トラスティーズ オブ タフツ カレッジ (26)
【復代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
【復代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
【Fターム(参考)】