説明

官能化ポリトリアゾールポリマーの製造方法

【課題】官能化ポリトリアゾールポリマーの製造方法を提供する。
【解決方法】官能化ポリトリアゾールポリマー、とりわけ、ポリ(1,2,4−トリアゾール)−ポリマーの製造方法において、
a)ヒドラジン塩、とりわけ、ヒドラジン硫酸塩を少なくとも1つの、とりわけ、芳香族および/またはヘテロ芳香族ジカルボキシル酸および/または少なくとも1つのジカルボキシル酸誘導体とポリリン酸および場合によっては別の成分中で溶液を得るために混合するステップと、
b)ポリヒドラジドを得るために保護ガス雰囲気中で前記溶液を加熱し、かつ芳香族および/またはヘテロ芳香族第一アミンを前記溶液に添加するステップと、
c)ポリマーを析出し、かつ場合によっては塩基溶液中で中和させるステップと
を特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、官能化ポリトリアゾールポリマー、とりわけ、ポリ(1,2,4−トリアゾール)−ポリマーの製造方法に関する。
【0002】
さらに、本発明は、本発明による方法によって得られるかかる官能化ポリトリアゾールポリマーに関する。
【0003】
さらに、本発明は、かかるポリマーを含んでなる膜、および、適切なポリマーを含んでなる燃料電池および繊維におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0004】
ポリトリアゾールはさまざまな範囲で使用可能である。最も好まれている応用範囲としては、燃料電池用のポリトリアゾールを含有する膜の製造が挙げられる。ポリトリアゾールは、生体適合性インプラントの範囲においても重要な役割を果たす。さらに、多種多様な範囲におけるコーティング材としても使用される。
【0005】
ポリ(1,2,4−トリアゾール)は、40年代以来合成されているヘテロ環ポリマーである。文献から、大部分が低分子量を有する4−フェニルまたは4−ヒドロ−1,2,4−トリアゾール単位を含有するポリマーの多数の合成方法が周知である。高分子量の芳香族ポリ(4−アリール−1,2,4−トリアゾール)は実質的に2つのやり方で合成される。すなわち、第1のやり方での方法においては、比較的低分子量を有するポリマーをもたらすジテトラゾールおよびジアジドクロライドが使用される。第2の、さらに好ましいやり方による方法においては、高分子量のポリマーが得られるが、ここではポリリン酸(PPA)中で高分子量の芳香族ヒドラジドによるアニリンの環化縮合が意図されている。
【0006】
最後に挙げたやり方による方法が、非特許文献1に記載されている。これは、芳香族ポリ(フェニル)4−フェニル−1,2,4−トリアゾールの製造のための2段階工程である。この場合、テレフタロイル−クロリドおよびイソフタロイル−ジヒドラジドとの重縮合によるプレポリマーの芳香族ポリヒドラジドの調製が意図されている。最初に製造されたポリヒドラジドは、PPA中でアニリンと175℃〜260℃の温度で環化縮合される。反応時間はそれぞれ24時間〜140時間で変動する。低温ではポリマーの分子量が20,000〜29,000で確認される。最も高い固有粘度は、175℃での反応が140時間行われると達成される。高温での短い反応時間により、結果として低い固有粘度のポリマーが生じる。
【0007】
ウィルプシャ(Virpsha)、トラブニコワ(Travnikova)、クロンガウツ(Krongauz)、コルシャク(Korshak)は、一段階工程でポリトリアゾールを合成している、非特許文献2を参照。彼らは、ヒドラジン硫酸塩とのジカルボキシル酸の反応によるポリ−1,3,4−オキサジアゾールの直接の製造で開始する。中間で形成されたポリオキソジアゾールはレジメンの混合(Rektionsmischung)によっては分離されず、アニリンおよびPPAが混合物に添加される。加熱はつねに攪拌しながら行われる。ポリオキソジアゾールの形成は、140℃〜180℃の温度および0.5時間〜5時間の反応時間で行われる。ポリトリアゾールは、215℃〜220℃の温度および12時間〜35時間の反応時間で形成される。結果として生じるポリマーは有機溶媒中で不溶性であることがわかり、硫酸中で測定されると0.42dL/g〜5.1dL/gの低減された粘度を有するが、ここでこれらの値は長い反応時間に応じて小さくなる。さらに、ヒドラジド残基が確認されることが報告されている。
【0008】
この背景の前にはつねに、有機溶媒中で可溶性であり、かつヒドラジド残基を有さないポリトリアゾールの製造に関心がある。さらに、少ない反応時間、低い反応温度、および結果として生じる高い分子量が望ましい。
【0009】
今日まで、ヒドラジド残基を含有し、有機溶媒中で不溶性であるポリトリアゾールのみがホットポット(Eintopf)法で製造されている。さらに、これにより高い反応時間、すなわち、少なくとも12時間、および高温が必要である。ヒドラジド残基の欠点は、熱的にも化学的に安定ではないという点である。有機溶媒中で可溶性であるポリトリアゾールは、確かに実質的に多くの時間および高温を必要とする2段階合成法で製造されている。この場合、2つのポリマーが合成される必要があり、かつ結果として生じる分子量は低い。さらに、2段階方法でのポリトリアゾールの商業的製造においては追加的な技術上の問題が生じる。
【0010】
特許文献1から、半導体製造における耐熱樹脂型の形成に役立つ感光性の樹脂化合物が周知である。この樹脂化合物は、例えば、ポリトリアゾールをも含んでなり、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶媒中で可溶性である。
【0011】
特許文献2には、例えば、燃料電池に使用するためでもある液体を分離するための複合膜が記載されている。この複合膜は、特にポリトリアゾールを含んでなり、N−メチル−2−ピロリドンを有するポリマー溶液から得られる。
【0012】
特許文献3において、ホットポット法における1,2,4−トリアゾールの製造が開示されている。
【0013】
【特許文献1】独国特許出願公表第69131529T2号明細書
【特許文献2】米国特許第4,933,083号明細書
【特許文献3】米国特許第6,096,898号明細書
【非特許文献1】ホルステン(Hosten)JR、リリークイスト(Lilyquist)MRら、J.Polym.Sci.:パートA、第3巻(1965年)3905−3917頁
【非特許文献2】Vysokomol.Soyed.、1969年、A11/1、69−72頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来技術に基づき、本発明の課題は、有機溶媒中で十分に可溶性であり、かつ高分子量を有する官能化ポリトリアゾールを短時間および低温による方法で製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題は、本発明によれば、官能化ポリトリアゾールポリマー、とりわけ、ポリ(1,2,4−トリアゾール)−ポリマーの製造方法によって解決されるが、これは次のステップ、すなわち、
a)ヒドラジン塩、とりわけ、ヒドラジン硫酸塩を少なくとも1つの、とりわけ、芳香族および/またはヘテロ芳香族ジカルボキシル酸および/または少なくとも1つのジカルボキシル酸誘導体とポリリン酸および場合によっては別の成分中で溶液を得るために混合するステップと、
b)ポリヒドラジドを得るために保護ガス雰囲気中で溶液を加熱し、かつ芳香族および/またはヘテロ芳香族第一アミン、すなわち第一アミン基を有するアミンを溶液に添加するステップと、
c)ポリマーを析出し、かつ場合によっては塩基溶液中で中和、すなわち腐食性作用を無効にするステップ、を特徴とする。
【0016】
芳香族ジカルボキシル酸のヘテロ芳香族ジカルボキシル酸との混合比は、好ましくは、1:99〜99:1であり、特に好ましくは、1:50〜50:1である。これらの混合比はジカルボキシル酸のスルホン酸含量と無関係である。
【0017】
ステップa)において調製された混合物は、ポリトリアゾールの調製用に、とりわけ、1〜30重量%、好ましくは、2〜15重量%のモノマーを含んでなる。
【0018】
本方法の好ましい実施形態では、ステップb)において最初にポリヒドラジドを得るために保護ガス雰囲気中での溶液の第1の加熱と、次いで溶液への芳香族および/またはヘテロ芳香族第一アミンの添加と、次いでポリヒドラジドを得るために保護ガス雰囲気中での溶液の更なる加熱が行われる。
【0019】
本方法の別の実施形態では、少なくとも1つのジカルボキシル酸および/または少なくとも1つのジカルボキシル酸誘導体が、式
【化2】

[式中、Arは芳香族またはヘテロ族基、とりわけ、置換基および/または多環系、選択的に−O−、−CO−、−C(CH)−、−C(CF)−および/または−SO−を芳香族環との間の結合として示し、
Xは式ORの基を示すが、ここでRは水素原子または1〜20個の炭素原子を有する基であり、
Yは1〜20個の炭素原子を有する結合または基を示し、
Zは一般式−SOまたは−PO(ORの基を示すが、ここでRは水素原子またはアルカリ金属であり、かつ
qは0〜4の間の整数である]の構造を含んでなることが意図される。
【0020】
パラメータqは、好ましくは、値1をとる。
【0021】
これらの構造は、周知かつ一般に入手可能な芳香族およびヘテロ芳香族物質によって容易に得られる。
【0022】
好ましくは、混合物は、少なくとも1つの芳香族ジカルボキシル酸およびヒドラジン塩を含んでなる。これから形成されるポリヒドラジドは一般に次式
【化3】

[式中、nは10以上、好ましくは、100以上の自然数である]を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
別の好ましい変型において、ステップa)における溶液は、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボキシル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、3−フルオロフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、2−フルオロテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボキシル酸、1,5−ナフタレンジカルボキシル酸、2,6−ナフタレンジカルボキシル酸、2,7−ナフタレンジカルボキシル酸、ジフェン酸、エーテル、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボキシル酸、ビス(4−ジカルボキシルフェニル)−スルホン、ビフェニル−4,4’−ジカルボキシル酸、4−トリフルオロメチル−フタル酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンまたはそのC1−C20−アルキルエステルまたはC5−C12−アリールエステルの群から少なくとも1つの芳香族ジカルボキシル酸を含んでなることが意図される。
【0024】
別の有利な実施形態において、ステップa)における溶液は、その芳香族環において窒素、酸素、硫黄、またはリンの群から少なくとも1つの原子を含んでなる少なくとも1つのヘテロ芳香族ジカルボキシル酸を含んでなることが意図される。
【0025】
好ましくは、ピリジン−2,5−ジカルボキシル酸、ピリジン−3,5−ジカルボキシル酸、ピリジン−2,6−ジカルボキシル酸、ピリジン−2,4−ジカルボキシル酸、4−フェニル−2,5−ピリジンジカルボキシル酸、3,5−ピラゾールジカルボキシル酸、2,6−ピリミジンジカルボキシル酸、2,5−ピラジンジカルボキシル酸、ベンズイミダゾール−5,6−ジカルボキシル酸またはそのC1−C20−アルキルエステルまたはC5−C12−アリールエステルの群から少なくとも1つのジカルボキシル酸が使用される。
【0026】
ステップb)における加熱は、250℃、好ましくは、200℃にまで上昇する温度で行われる。とりわけ、b)における加熱は、100℃〜190℃、特に好ましくは、150℃〜190℃の範囲の温度で行われる。
【0027】
好ましくは、保護ガス雰囲気には不活性ガスが使用されるが、これは希ガス、例えば、アルゴンまたはネオン、および/または窒素である。さまざまなかかるガスの混合物も考えられ得る。
【0028】
ステップb)におけるプレポリマーは、好ましくは、1〜3時間の時間で得られる。
【0029】
特に有利であることがわかるのは、とりわけスルホン酸基を含有する芳香族および/またはへテロ芳香族第1アミンが、次式:
N−Ar−YqZ
[式中、Arは芳香族またはヘテロ族基、とりわけ、置換基および/または多環系、選択的に−O−、−CO−、−C(CH)−、−C(CF)−および/または−SO−を芳香族環との間の結合として示し、
Yは1〜20個の炭素原子を有する結合または基を示し、
Zは一般式−SOの基を示すが、ここでRは水素原子またはアルカリ金属であり、かつ
qは0〜4の間の整数である]
の構造を有する方法である。
【0030】
好ましくは、芳香族および/またはへテロ芳香族第一アミンのステップb)において得られたポリヒドラジドとのモル比は実質的に1:1である。同じく、芳香族および/またはへテロ芳香族第一アミンのポリリン酸の量とのモル比が実質的に0.4モル/150gであると有利である。
【0031】
この場合、つねに関心が寄せられるのが、特に高分子量を達成することである。
【0032】
アニリン、4−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノピリジン、4−フルオロアニリン、3−フルオロアニリン、4−キノリンアミンおよび4−ブロモアニリンの群から第一アミンが使用されると有利であることがわかる。
【0033】
本方法の別の有利な実施形態では、第1の加熱は150℃〜170℃の温度範囲で行われ、かつ/またはその後の加熱は170℃〜190℃の温度範囲で行われる。
【0034】
好ましくは、ポリマーをステップc)において2〜5時間の時間で得る。
【0035】
本発明の課題はさらに、本発明による方法によって得られる官能化ポリトリアゾールポリマーによって解決される。
【0036】
窒素の炭素とのモル比N/Cは官能化ポリトリアゾールポリマーにおいて有利には0.168〜0.175、好ましくは、0.172〜0.175である。
【0037】
窒素の炭素とのモル比であるN/Cは、計算によって簡単に確認される。次いで、N/Cからオキサジアゾール基のトリアゾール環への変換は次の方程式
変換(%)=[(N/C−0.167)/0.008]×100
によって確認される。
【0038】
N/Cの値が0.167である場合、これはオキサジアゾールの100%がジフェニルエーテル基で変換されたことを意味する。変換されていないオキサジアゾール基は不利でないことがわかっており、それはこれらの基がトリアゾール環のように安定しているためである。しかし、ヒドラジド残基は望ましくなく、それはこれらの基がオキサゾール基のようには熱的にも化学的にも安定していないためである。
【0039】
好ましくは、硫黄の炭素とのモル比S/Cは0.018〜0.400、とりわけ、0.133〜0.400、特に好ましくは、0.235〜0.400である。
【0040】
硫黄の炭素とのモル比であるS/Cは、計算によって簡単に確認される。
【0041】
本発明の特定の実施形態では、少なくとも1つのスルホン酸基を有する芳香族および/またはへテロ芳香族第一アミンを使用することが意図されている。このようにして、反応時間および反応温度のN/C比、すなわちプレポリマーのポリトリアゾールへの変換に対する影響が確認される。さらに、両方のパラメータ反応時間および反応温度のS/C、すなわち、ポリトリアゾールのスルホン化度に対する効果が確認される。
【0042】
本発明によるポリマーの分子量は、好ましくは、10g/モル以上の範囲である。
【0043】
ジメチルスルホキシドにおいて測定されるポリマーの固有粘度は、好ましくは、1〜5dL/g、特に好ましくは、3〜4dL/gである。
【0044】
ポリマーは、とりわけ、非プロトン性極性溶媒および強酸、例えば、硫酸、塩酸、およびリン酸中で十分に可溶性であることによって特徴づけられる。
【0045】
高粘度は、とりわけ、高分子混合によってもたらされる。ポリマーは、好ましくは、互いに区別される少なくとも2つの単位を含有する式(I)のホモポリマーまたは式(II)のコポリマーを有する反復性トリアゾール単位を含んでなる。ポリマーはブロックポリマー(ジブロックまたはトリブロック)の形、統計コポリマー、周期コポリマー、および/または交互コポリマーの形で生じうるが、式中、mも自然数である。
【化4】

【化5】

【0046】
この課題はさらに本発明によるポリマーを含有する膜および繊維によって解決される。
【0047】
かかる膜は燃料電池において特に有利に使用可能である。
【0048】
本発明を次に一般の発明の意図を制限することなく2つの実施例および図面によって説明するが、これは本文において詳細に述べられていない本発明によるすべての詳細の開示に関して明確に参照される。
【実施例】
【0049】
実施例1
ポリマー合成
4,4’−ジフェニルエーテル−ジカルボキシル酸(DPE)およびヒドラジン硫酸塩(HS)を1時間、160℃で反応させ、次いで反応温度を180℃に上昇させる。その後、4−アミノベンゼンスルホン酸を反応器へ添加するが、ここでさらに2時間の反応時間が予定されている。モル溶解率(PPA/HS)およびモルモノマー率(HS/DPE)を、それぞれ10および1.2で一定に保持する。その場で形成されるポリヒドラジドの4−アミノベンゼンスルホン酸との1:1のモル比を使用する。この工程の終了後、反応媒体を5重量/体積%の水酸化ナトリウム溶液を含有するぬるま湯に添加し、ポリマーを析出する。ポリマー懸濁液のpH値は周知の方法により制御される、ゴメス(Gomes)ら、Polymer 45(2004年)4997−5004頁を参照。このようにして暗褐色の繊維が得られるが、これを蒸留水中で最初に軽く洗浄し、次いで真空オーブン中で48時間、100℃で乾燥させる。合成化ポリマーのN/C比は0.174であり、S/C比は0.058である。平均分子量は560,000である。ビスコテック(Viscotek)SEC型の装置によりポリマー試料の平均分子量を測定する。この場合、機器は、309〜944,000g/モルの範囲の平均分子量を有するメルク社(Firma Merck)の標準ポリストリロール(Polystryrol)で較正する。担体として0.05M臭化リチウムを有する溶液をDMAcにおいて使用する。オキサジアゾール基のトリアゾール環への変換は、上記の方程式によって計算されると88%である。このようにして、NMP、DMSO、およびDMFなどの有機溶媒中で可溶性であり、かつTGA−FTIR分析によりヒドラジド残基を有さないポリマーを得る。
【0050】
ポリマー膜の製造
ポリマー1gを7重量%のN−メチル−2−ピロリドン14g中に溶解する。溶液を4時間撹拌し、ガラスプレートに注ぐが、その前にオクタデシルトリクロロシランで疎水性にして65℃に加熱し、溶媒を蒸発させる。注いだ後、スルホン化ポリ(4−アリール−1,2,4−トリアゾール)膜を真空オーブン中で80℃下、24時間乾燥させる。暗褐色の膜の厚さは最終的に90μmである。
【0051】
実施例2
ポリマー合成
4,4’−ジフェニルエーテル−ジカルボキシル酸(DPE)およびヒドラジン硫酸塩(HS)を3時間、160℃で反応させ、次いで反応温度を180℃に上昇させる。その後、4−アミノベンゼンスルホン酸を反応器へ添加するが、ここでさらに2時間の反応時間が予定されている。モル溶解率(PPA/HS)およびモルモノマー率(HS/DPE)を、それぞれ10および1.2で一定に保持する。その場で形成されるポリヒドラジドの4−アミノベンゼンスルホン酸との1:1のモル比を使用する。この工程の終了後、反応媒体を5重量/体積%の水酸化ナトリウム溶液を含有するぬるま湯に添加し、ポリマーを析出する。ポリマー懸濁液のpH値は周知の方法により制御される、ゴメス(Gomes)ら、Polymer 45(2004年)4997−5004頁を参照。このようにして暗褐色の繊維が得られるが、これを蒸留水中で最初に軽く洗浄し、次いで真空オーブン中で48時間、100℃で乾燥させる。合成化ポリマーのN/C比は0.173であり、S/C比は0.094である。平均分子量は230,000である。ビスコテックSEC型の装置によりポリマー試料の平均分子量を測定する。オキサジアゾール基のトリアゾール環への変換は、上記の方程式によって計算されると75%である。このようにして、NMP、DMSO、およびDMFなどの有機溶媒中で可溶性であり、かつTGA−FTIR分析によりヒドラジド残基を有さないポリマーを得る。
【0052】
ポリマー膜の製造
ポリマー1gを7重量%のN−メチル−2−ピロリドン14g中に溶解する。溶液を4時間撹拌し、ガラスプレートに注ぐが、その前にオクタデシルトリクロロシランで疎水性にして65℃に加熱し、溶媒を蒸発させる。注いだ後、スルホン酸含有ポリ(4−アリール−1,2,4−トリアゾール)膜を真空オーブン中で80℃下、24時間乾燥させる。暗褐色の膜の厚さは最終的に85μmである。
【0053】
本発明の別の実施例を図面に示す。
【0054】
図1は、少なくとも1つのスルホン酸基を有する芳香族および/またはへテロ芳香族第一アミンの使用により官能化ポリトリアゾールポリマーを製造するための2つの別の機序AおよびBを示す。図1において、プレポリマーのポリトリアゾールへの変換度に特徴的である反応時間tおよびtのN/C、およびS/C、すなわち、ポリトリアゾールのスルホン化度に対する影響が明らかとなる。第1の反応時間tおよび総反応時間tは、N/CおよびS/Cの規模の決定的な因子である。一般に反応時間tは、好ましくは、1〜3時間、とりわけ、1〜2時間の範囲である。総反応時間tは、好ましくは、2時間〜16時間、とりわけ、2時間〜7時間、または2〜5時間の範囲でもある。
【0055】
の大きな値は、機序Aによる重合、すなわち、N/CおよびS/Cの高い値によるポリ(1,2,4−トリアゾール)の合成に有利となる。また、tの小さな値は、機序Bによる反応を促進し、両方の機序AおよびBが同時に効果を発揮し、最終的にS/Cの小さな値が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の別の実施例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能化ポリトリアゾールポリマー、とりわけ、ポリ(1,2,4−トリアゾール)−ポリマーの製造方法において、
a)ヒドラジン塩、とりわけ、ヒドラジン硫酸塩を少なくとも1つの、とりわけ、芳香族および/またはへテロ芳香族のジカルボキシル酸および/または少なくとも1つのジカルボキシル酸誘導体と、ポリリン酸および場合によっては別の成分中で溶液を得るために混合するステップと、
b)ポリヒドラジドを得るために保護ガス雰囲気中で前記溶液を加熱し、かつ芳香族および/またはへテロ芳香族の第一アミンを前記溶液に添加するステップと、
c)ポリマーを析出し、かつ場合によっては塩基溶液中で中和させるステップと
を特徴とする方法。
【請求項2】
ステップb)において最初にポリヒドラジドを得るために保護ガス雰囲気中での前記溶液の第1の加熱と、次いで前記溶液への芳香族および/またはへテロ芳香族の第一アミンの添加と、次いでポリヒドラジドを得るために保護ガス雰囲気中での前記溶液の更なる加熱とを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのジカルボキシル酸および/または少なくとも1つのジカルボキシル酸誘導体が、
【化1】

の構造を有し、
式中、Arは芳香族またはヘテロ族基、とりわけ、置換基および/または多環系、選択的に−O−、−CO−、−C(CH)−、−C(CF)−および/または−SO−を芳香族環の間の結合として示し、
Xは式ORの基を示すが、ここでRは水素原子または1〜20個の炭素原子を有する基であり、
Yは1〜20個の炭素原子を有する結合または基を示し、
Zは一般式−SOまたは−PO(ORの基を示すが、ここでRは水素原子またはアルカリ金属であり、かつ
qは0〜4の間の整数である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップa)における前記溶液が、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボキシル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、3−フルオロフタル酸、5−フルオロイソフタル酸、2−フルオロテレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボキシル酸、1,5−ナフタレンジカルボキシル酸、2,6−ナフタレンジカルボキシル酸、2,7−ナフタレンジカルボキシル酸、ジフェン酸、エーテル、ベンゾフェノン−4,4’−ジカルボキシル酸、ビス(4−ジカルボキシルフェニル)−スルホン、ビフェニル−4,4’−ジカルボキシル酸、4−トリフルオロメチル−フタル酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンまたはそのC1−C20−アルキルエステルまたはC5−C12−アリールエステルの群から少なくとも1つの芳香族ジカルボキシル酸を含んでなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップa)における溶液が、その芳香族環において窒素、酸素、硫黄、またはリンの群から少なくとも1つの原子を含んでなる少なくとも1つのヘテロ芳香族ジカルボキシル酸を含んでなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ピリジン−2,5−ジカルボキシル酸、ピリジン−3,5−ジカルボキシル酸、ピリジン−2,6−ジカルボキシル酸、ピリジン−2,4−ジカルボキシル酸、4−フェニル−2,5−ピリジンジカルボキシル酸、3,5−ピラゾールジカルボキシル酸、2,6−ピリミジンジカルボキシル酸、2,5−ピラジンジカルボキシル酸、ベンズイミダゾール−5,6−ジカルボキシル酸またはそのC1−C20−アルキルエステルまたはC5−C12−アリールエステルの群から少なくとも1つのジカルボキシル酸が使用されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップb)における加熱が150℃〜190℃の範囲の温度で行われることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
不活性ガスとして希ガス、例えば、アルゴンまたはネオンおよび/または窒素が使用されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップb)におけるプリポリマーが1〜3時間の間に得られることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
とりわけスルホン酸基を含有する芳香族および/またはへテロ芳香族の第1アミンが、次式:
N−Ar−YqZ
[式中、Arは芳香族またはヘテロ族基、とりわけ、置換基および/または多環系、選択的に−O−、−CO−、−C(CH)−、−C(CF)−および/または−SO−を芳香族環の間の結合として示し、
Yは1〜20個の炭素原子を有する結合または基を示し、
Zは一般式−SOの基を示すが、ここでRは水素原子またはアルカリ金属であり、かつ
qは0〜4の間の整数である]
の構造を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
芳香族および/またはヘテロ芳香族の第一アミンのステップb)において得られたポリヒドラジドに対するモル比が実質的に1:1であること、および/または、芳香族および/またはヘテロ芳香族の第一アミンのポリリン酸の量に対するモル比が実質的に0.4モル/150gであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
アニリン、4−アミノベンゼンスルホン酸、3−アミノベンゼンスルホン酸、4−アミノピリジン、4−フルオロアニリン、3−フルオロアニリン、4−キノリンアミンおよび4−ブロモアニリンの群から第一アミンが使用されることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
第1の加熱が150℃〜170℃の温度範囲で行われ、かつ/または更なる加熱は170℃〜190℃の温度範囲で行われることを特徴とする請求項2〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ステップc)におけるポリマーが2〜5時間の間で得られることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法によって得られる官能化ポリトリアゾールポリマー。
【請求項16】
窒素の炭素に対するモル比N/Cが0.168と0.175の間、好ましくは、0.172と0.175の間であることを特徴とする請求項15に記載のポリマー。
【請求項17】
硫黄の炭素に対するモル比S/Cが0.018と0.400の間、好ましくは、0.133と0.400の間、および特に好ましくは0.235と0.400の間であることを特徴とする請求項15または16に記載のポリマー。
【請求項18】
分子量が約10g/モル以上であることを特徴とする請求項15〜17のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項19】
ジメチルスルホキシドにおいて測定される固有粘度が、1〜5dL/g、好ましくは3〜4dL/gであることを特徴とする請求項15〜18のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項20】
非プロトン性極性溶媒および強酸、例えば、硫酸、塩酸およびリン酸中で良好に可溶性であることを特徴とする請求項15〜19のいずれか一項に記載のポリマー。
【請求項21】
請求項15〜20のいずれか一項に記載のポリマーを含んでなることを特徴とする膜。
【請求項22】
燃料電池における請求項21に記載の膜の使用。
【請求項23】
請求項15〜20のいずれか一項に記載のポリマーを含んでなることを特徴とする繊維。

【図1】
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【公開番号】特開2008−189921(P2008−189921A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17501(P2008−17501)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(504187593)ゲーカーエスエス・フォルシュングスツェントルム ゲーストアハト ゲーエムベーハー (14)
【Fターム(参考)】