説明

定着用ヒータの製造方法、定着用ヒータ、定着装置および画像形成装置

【課題】発熱特性のばらつきが小さい定着用ヒータの製造方法、定着用ヒータ、定着装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】セラミック粒子32および有機バインダ33を含む固着用セラミックシート31を基板上21に設置し、抵抗発熱体を前記固着用セラミックシート31の上に設置し、前記固着用セラミックシートを焼成して、前記有機バインダを熱分解し、それによって、前記抵抗発熱体を前記基板上に固着させる固着用セラミック層を形成することを特徴とする定着用ヒータの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像形成装置に用いられる定着用ヒータの製造方法、定着用ヒータ、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスにおいては、画像情報に対応する未定着のトナー像を画像形成プロセス手段により熱可塑性の樹脂等からなるトナーを用いて記録媒体の面に間接(転写)または直接方式で形成し、永久固着画像として加熱定着処理する。このような電子写真プロセスは、複写機やレーザープリンタ、ファクシミリなどに活用されている。
【0003】
ところで、使用可能温度への昇温時間の短縮のため、ハロゲンランプを内挿した筒型の伝統的な定着用ヒータに代えて、矩形状の基板上に抵抗発熱体を配置してなる定着用ヒータが用いられる場合がある。これは、電子写真プロセスにおける定着装置の小型化、軽量化にもなる。
かかる定着用ヒータは、セラミック製の絶縁基板上に、銀・パラジウムペースト等を用いて矩形状に印刷・焼成してなる抵抗発熱体を形成する(例えば、特許文献1ないし3参照)。
【0004】
これらの定着用ヒータは、簡単な製造プロセスによって得ることができるとともに、概して薄状である。また、抵抗発熱体両端部間への通電後、瞬時にしてトナー定着可能温度に昇温し得る。そのため、上記の電子写真プロセスにおける定着部の構成を小型化、軽量化、低コスト化できるのみならず、ウォームアップ完了までの待ち時間を短くすることができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開H9−6161号公報
【特許文献2】特開H5−181376号公報
【特許文献3】特開2007−212589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来知られている定着用ヒータにおける抵抗発熱体は、上記のように、絶縁基板上に銀・パラジウムペースト等の抵抗体ペーストを用いて印刷・焼成して形成される。しかし、ペースト材料の成分、印刷および焼成・温度条件等にはばらつきがあり、定着用ヒータの作製ごとに抵抗発熱体の平均の電気抵抗値にばらつきが生じる原因となる。このことは、同一の定着用ヒータ内または複数の定着用ヒータ間に発熱特性のばらつきを生じさせ、発熱特性を不安定にする。また定着用ヒータの熱効率も悪くなり、消費電力も大きくなる。そのため、このような抵抗ばらつきの問題を解消し、発熱特性の安定した定着用ヒータの実現が望まれていた。
【0007】
この発明は、上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、電気抵抗値のばらつきの影響が小さく、均一かつ安定した発熱特性を有する定着用ヒータの製造方法、定着用ヒータ、定着装置および画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、セラミック粒子および有機バインダを含む固着用セラミックシートを基板上に設置し、抵抗発熱体を前記固着用セラミックシートの上に設置し、前記固着用セラミックシートを焼成して、前記有機バインダを熱分解し、それによって、前記抵抗発熱体を前記基板上に固着させる固着用セラミック層を形成することを特徴とする定着用ヒータの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明による定着用ヒータの製造方法によれば、固着用セラミックシートを介して抵抗発熱体を設置し、固着用セラミックシートの焼成により固着用セラミック層を形成することによって、発熱量の分布が均一な定着用ヒータを作製できる。その結果、同一の定着用ヒータ内または複数の定着用ヒータ間の抵抗ばらつきを解消でき、安定した発熱特性を有し、熱効率が良くかつ消費電力の小さい定着用ヒータが実現できる。
【0010】
また、抵抗発熱体を一枚のシート状の抵抗発熱体からエッチングなどにより切り出し、固着用セラミックシートを介して基板上に設置することにより、抵抗体ペーストを直接印刷する場合と比べて、定着用ヒータの作製ごとに抵抗発熱体の厚さや電気抵抗率のばらつきが生じないため、発熱特性が安定し、信頼性の高い定着用ヒータが実現できる。
【0011】
さらに、固着用セラミックシートは、成型が容易で柔軟性に優れているため、曲面上にも設置でき、また焼成前ならば何度も設置のやり直しができるため、定着用ヒータの製造時の取り扱いが極めて簡便である。その上、固着用セラミックシートの焼成により形成された固着用セラミック層は、高い絶縁性を有し、また固着力も強いため、安全でかつ安定した定着用ヒータが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施形態1に係る画像形成装置の全体構成を示す説明図である。
【図2】この発明の実施形態1に係る定着装置の構成を示す説明図である。
【図3】この発明の実施形態1に係る定着用ヒータの構成を示す説明図である。
【図4】この発明の図3の定着用ヒータの変形例を示す説明図である。
【図5】この発明の図3の定着用ヒータの変形例を示す説明図である。
【図6】図5の定着用ヒータのC部の側面拡大図である。
【図7】この発明の図3の定着用ヒータの変形例を示す説明図である。
【図8】図7の定着用ヒータのD部の側面拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明による定着用ヒータの製造方法は、セラミック粒子および有機バインダを含む固着用セラミックシートを基板上に設置し、抵抗発熱体を前記固着用セラミックシートの上に設置し、前記固着用セラミックシートを焼成して、前記有機バインダを熱分解し、それによって、前記抵抗発熱体を前記基板上に固着させる固着用セラミック層を形成することを特徴とする。
【0014】
この発明による定着用ヒータの製造方法において、セラミックシートには、平均粒径が約0.1〜100μmの粉末状のセラミック粒子を、炭化水素系の樹脂等からなる有機バインダで結着してシート状に形成したものを用いることができる。セラミック粉末としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア等が一般に用いられ、有機バインダとしては、炭化水素系樹脂、ビニル系ないしスチレン系樹脂等が一般に用いられる。セラミックシートは、粉末状のセラミック粒子を塑性のある樹脂からなる有機バインダにて結着して形成するため、成型が容易で柔軟性に優れ、また曲面に貼り付けることもできるため、バーコードパターンなどの印刷用のラベルとして用いられている(例えば、特許第2700930号参照)。
【0015】
有機バインダとしては、熱溶融性があり、焼成時に熱分解して消失するものが用いられる。セラミックシートは、一般に常温(25℃)では、有機バインダがセラミック粒子を結着してシート状に形成されるが、加熱により有機バインダが溶融すると流動性を有し、有機バインダとともにセラミック粒子も自由に動き回れるようになる。このとき、セラミックシートに面した基板等の表面に存在する微小な穴や亀裂等にセラミック粒子が入り込み、接着性を発揮する。この状態で、有機バインダが熱分解するまでさらに加熱すると、熱分解で残ったセラミック粒子が基板等の表面に存在する微小な穴や亀裂に入り込んだ状態のまま固化してセラミック層を形成する。このようにして形成されたセラミック層は、基板等との間に強い固着力を発揮し、再度加熱しても固着性が失われず、また高い絶縁性を有するため、定着用ヒータの製造に適している。なお、焼成時の温度は、一般に600℃±100℃である。
【0016】
抵抗発熱体は、電気抵抗を有し、通電により発熱し、被加熱体に直接または間接に接触して熱供給するものであり、厚さが一様で単位面積当たりの発熱量が均一なものが好ましい。例えば、ニッケルクロムを主成分とした金属合金やステンレス鋼からなる電気抵抗を有する金属箔、カーボンシートなどがあげられる。
【0017】
基板は、抵抗発熱体を設置し、その形状を保持するものであり、剛性を有することが好ましい。基板を構成する材料は、特に限定されないが、高い熱伝導性を有する金属材料であることが好ましく、その金属材料としては、鉄、アルミニウム、銅などをあげることができるが、ステンレスを用いることも可能である。
なお、基板および抵抗発熱体の熱膨張係数が大きく異なる場合は、焼成時の基板および抵抗発熱体の間の熱膨張の差に起因して抵抗発熱体が基板から剥離を起こしてしまう場合がある。このような抵抗発熱体の基板からの剥離を防止するため、一般的には、基板および抵抗発熱体の熱膨張係数が同等の材質を用いることが好ましい。
【0018】
この発明による定着用ヒータの製造方法において、前記有機バインダは、熱可塑性樹脂であり、前記固着用セラミックシートは、前記セラミック粒子が前記有機バインダにより均一に結着され、一様な厚さを有するものであってもよい。
このようにすれば、セラミック粒子を均一に含む固着用セラミックシートの焼成により形成される固着用セラミック層も一様な厚さを有し、定着用ヒータの発熱特性の均一性が実現できる。
【0019】
熱可塑性を有する有機バインダは、一般に常温(25℃)では、セラミック粒子を結着してシート状に形成されるが、加熱により軟化するため、製造時における成型加工が容易であり、基板等の形状に合わせて、厚さが一様なセラミック層の形成が容易にできる。また、有機バインダの加熱による軟化により、固着用セラミックシートは接着性を発揮するが、その接着力は弱く、容易に引きはがすことができるため、焼成前の仮接着が簡便にできる。
【0020】
この発明による定着用ヒータの製造方法において、前記抵抗発熱体は、厚さが一様な金属箔であってもよい。
このようにすれば、抵抗発熱体の単位面積あたりの発熱量が均一となり、安定した発熱特性が実現できる。また、厚さの一様な同一の金属箔のシートからエッチングなどにより所定形状に加工して抵抗発熱体を形成することにより、抵抗発熱体間の抵抗ばらつきを解消することが可能となる。
【0021】
この発明による定着用ヒータの製造方法において、前記有機バインダは、25℃〜80℃の温度領域において塑性となるものであってもよい。
このようにすれば、焼成前に有機バインダが接着性を発現する温度で加熱しながら加圧し、空気を押し出しながら固着用セラミックシートを基板および抵抗発熱体に接着できる。これによって、固着用セラミックシートおよび基板または抵抗発熱体の接着面への空気の混入を防ぎ、ピンホールの発生を解消することが可能となる。
【0022】
固着用セラミックシートを基板に貼り付けるとき、当該固着用セラミックシートおよび基板または抵抗発熱体の接着面に空気が入り込むと、空気溜りが発生する。定着用ヒータの焼成時に加熱によりこの空気溜りが膨張すると、内部の空気が固着用セラミックシートを破って逃げ出し、「ピンホール」が発生する。このようなピンホールを放置すると、固着用セラミックシートが損傷するだけでなく、ピンホール付近の発熱量の分布が崩れる。
【0023】
そこで、有機バインダが接着性を発現する温度で加熱しながらローラ対の間を通すことによって加圧し、空気を押し出しながら固着用セラミックシートを基板および抵抗発熱体に接着(仮接着)する。仮接着の段階でピンホールが発生していないのを確認した後、焼成により基板および抵抗発熱体を固着することにより、上記の問題を解消できる。
【0024】
この発明による定着用ヒータの製造方法において、前記有機バインダは、アクリル樹脂であってもよい。
アクリル系の材料は、エポキシ系の材料に比べて短時間で実用強度を得られ、特に、常温(25℃)〜80℃の範囲で強い接着強度を得ることができる。
【0025】
この発明による定着用ヒータの製造方法において、前記基板は、前記抵抗発熱体と熱膨張係数が同等の材質であってもよい。
このようにすれば、抵抗発熱体と同等の熱膨張係数を有する基板を用いることで、焼成時における抵抗発熱体の基板からの剥がれや浮きを防止することができる。
【0026】
固着用セラミックシートを構成する有機バインダが熱可塑性の樹脂の場合、当該固着用セラミックシートは、有機バインダが熱可塑性を有する温度領域において柔軟性があり、また強い接着性を有する。それゆえ、基板と抵抗発熱体との熱膨張差が小さい場合は、当該固着用セラミックシートは、その柔軟性ゆえに基板および抵抗発熱体の熱膨張の変化に追従し、基板および抵抗発熱体が焼成により形成される固着用セラミック層に十分に固着されるまで、抵抗発熱体の基板からの剥がれや浮きを防止できる。
【0027】
抵抗発熱体が金属箔の場合、接着強度と伝熱性との兼ね合いから、第1のセラミックシートの厚さが約20〜120μmの範囲内であることが好ましい。
【0028】
この発明による定着用ヒータの製造方法において、セラミック粒子と有機バインダを含む固着用セラミックシートを基板上に設置し、抵抗発熱体を前記固着用セラミックシートの上に設置し、セラミック粒子と有機バインダを含む被覆用セラミックシートを前記抵抗発熱体の上に設置し、前記固着用および被覆用セラミックシートを焼成して前記有機バインダを熱分解し、それによって、前記抵抗発熱体を前記基板上に固着させる固着用セラミック層と、前記抵抗発熱体を被覆する被覆用セラミック層とを形成するものであってもよい。
このようにすれば、基板および抵抗発熱体の焼成時の熱膨張変化が固着用セラミックシートの柔軟性によって追従できないほど大きい場合でも、抵抗発熱体の基板からの剥がれや浮きを解消できる。固着用セラミック層および被覆用セラミック層で抵抗発熱体を完全に内包するため、基板および抵抗発熱体の熱膨張差に起因する金属箔の反りの力を十分に押さえつけ、良好な密着性を得ることができるためである。また、セラミック層によって絶縁性が増すため、安全な定着用ヒータが実現できる。
【0029】
この発明による定着用ヒータの製造方法において、前記有機バインダは、熱可塑性樹脂であり、前記固着用および被覆用セラミックシートは、前記セラミック粒子が前記有機バインダにより均一に結着され、一様な厚さを有するものであってもよい。
このようにすれば、セラミック粒子を均一に含む被覆用セラミックシートの焼成により形成される被覆用セラミック層も一様な厚さを有し、定着用ヒータの発熱特性の均一性が実現できる。
【0030】
この発明による定着用ヒータの製造方法において、前記抵抗発熱体は、厚さが一様な金属箔であってもよい。
このようにすれば、抵抗発熱体の単位面積あたりの発熱量が均一となり、安定した発熱特性が実現できる。また、厚さの一様な同一の金属箔のシートからエッチングなどにより所定形状に加工して抵抗発熱体を形成することにより、抵抗発熱体間の抵抗ばらつきを解消することが可能となる。
【0031】
この発明による定着用ヒータの製造方法において、前記有機バインダは、25℃〜80℃の温度領域において塑性となるものであってもよい。
このようにすれば、焼成前に有機バインダが接着性を発現する温度で加熱しながら加圧し、空気を押し出しながら被覆用セラミックシートを抵抗発熱体に接着できる。これによって、被覆用セラミックシートおよび抵抗発熱体の接着面への空気の混入を防ぎ、ピンホールの発生を解消することが可能となる。
【0032】
この発明による定着用ヒータの製造方法において、前記有機バインダは、アクリル樹脂であってもよい。
アクリル系の材料は、エポキシ系の材料に比べて短時間で実用強度を得られ、特に、常温(25℃)〜80℃の範囲で強い接着強度を得ることができる。
【0033】
この発明による定着用ヒータの製造方法において、前記基板は、前記抵抗発熱体と熱膨張係数が異なる材質であってもよい。
このようにすれば、抵抗発熱体および基板が同等の熱膨張係数を有する場合だけでなく、異なる熱膨張係数を有する場合においても、焼成時における抵抗発熱体の基板からの剥がれや浮きを防止し、良好な密着性を得ることができる。
【0034】
この発明による定着用ヒータは、基板と、前記基板上に設置される抵抗発熱体とを備え、この発明による定着用ヒータの製造方法で製造されたものである。
この発明による定着用ヒータによれば、同一の定着用ヒータ内または複数の定着用ヒータ間の抵抗ばらつきを解消でき、安定した発熱特性を有し、熱効率が良くかつ消費電力の小さい定着用ヒータが実現できる。
【0035】
この発明による定着用ヒータにおいて、前記抵抗発熱体が細長形状の抵抗発熱体からなる第1抵抗発熱部と、前記第1抵抗発熱部に平行な細長形状の抵抗発熱体からなる第2抵抗発熱部とを備え、前記第1抵抗発熱部は、長手方向の単位長さ当たりの発熱量が一定の中央発熱領域と、長手方向の単位長さ当たりの発熱量が一定かつ前記中央発熱領域よりも高い両端発熱領域とを有し、前記第2抵抗発熱部は、長手方向の単位長さ当たりの発熱量が一定の中央発熱領域と、長手方向の単位長さ当たりの発熱量が一定かつ前記中央発熱領域よりも低い両端発熱領域とを有し、前記第1および第2抵抗発熱部の各発熱領域の境界部分では、長手方向の単位長さ当たりの電気抵抗値が徐々に変化するように電気抵抗率の異なる複数の抵抗発熱体が直列接続され、前記第1および第2の抵抗発熱部が同時に発熱したとき、前記基板全体の長手方向の単位長さ当たりの発熱量が一定であるものであってもよい。
このようにすれば、異なる電気抵抗率を有する複数の抵抗発熱体の組み合わせによって抵抗発熱部を構成することにより、同じ電気抵抗率を有する抵抗発熱体のみで抵抗発熱部を構成するよりも、発熱量の調整が容易となり、複数の抵抗発熱部を有する場合でも、定着用ヒータ全体の発熱量の均一性が容易に実現できる。また、第1抵抗発熱部のみを発熱させることにより、幅の狭い用紙のトナー像を効率よく定着することができる。
【0036】
定着用ヒータが複数の抵抗発熱部から構成される場合、基板全体の長手方向の単位長さ当たり各抵抗発熱部の合成発熱量の分布を均一にするには、定着用ヒータを構成する各抵抗発熱部の長手方向における単位長さ当たりの発熱量の対称性を実現する必要がある。しかし、各抵抗発熱部の中央発熱領域と両端発熱領域の発熱量が大きく異なる場合、それらの境界部分において、単位長さ当たりの発熱量が急激に変化する。それゆえ、基板全体の合成発熱量の均一性を確保するためには、当該境界部分において発熱量の微細な調整が必要となる。
この発明による定着用ヒータは、その製造過程において、同一の電気抵抗率を有する抵抗発熱体を、厚さが一様なシートからエッチングなどによって切り出し、また固着用セラミックシートを介して、抵抗発熱体を基板に仮接着することで抵抗発熱部が簡易に構成できるため、銀・パラジウムペースト等を用いて抵抗発熱体を印刷・焼成する従来の方法よりも発熱量の調整が容易である。それゆえ、定着用ヒータが複数の抵抗発熱部から構成される場合であっても、均一かつ安定した発熱特性が実現できる。
【0037】
この発明による定着装置は、定着用ヒータと、定着ローラと、前記定着用ヒータおよび定着ローラの間に回動可能に張架され定着用ヒータにより加熱される無端状の定着ベルトと、前記定着用ヒータの前記定着用ベルトに接触面に形成されたコート層と、前記定着ベルトを介して前記定着ローラに対向して配設された加圧ローラとを備え、前記定着ベルトと前記加圧ローラとの間に未定着のトナー像を担持した記録媒体を搬送し、記録媒体上のトナー像を熱定着する定着装置において、前記定着用ヒータが、この発明による定着用ヒータである定着装置である。
【0038】
この発明による定着装置によれば、抵抗ばらつきが少なく、均一で安定した発熱特性を有する定着用ヒータを用いることにより、消費電力の少ない定着装置を提供することができる。
【0039】
この発明による画像形成装置は、記録媒体上に未定着のトナー像を形成する画像形成部と、前記トナー像を前記記録媒体上に熱定着させる定着装置を備えた画像形成装置において、前記定着装置は、この発明による定着装置である。
【0040】
この発明による画像形成装置によれば、抵抗ばらつきが少なく、均一で安定した発熱特性を有する定着装置を用いることにより、消費電力の少ない画像形成装置を提供することができる。
【0041】
以下、図面に基づいてこの発明の実施形態に係る定着用ヒータの製造方法、定着用ヒータ、定着装置およびこれを備えた画像形成装置について詳述する。なお、以下の説明はすべての点で例示であって、この発明を限定するものと解されるべきではない。
【0042】
実施形態1
この発明の実施形態1に係る画像形成装置について図1〜図3に基づいて説明する。
【0043】
≪画像形成装置の構成≫
図1は、この発明の画像形成装置の全体構成を示す説明図である。図1で、画像形成装置1は、カラー複合機であり、光学系ユニット50、第1〜第4可視像形成ユニット51,52,53,54、中間転写ベルト55、2次転写ユニット56、定着装置2、内部用紙給送ユニット57および手差し用紙給送ユニット58、排紙トレイ75を備える。そして、それらの第1〜第4可視像形成ユニット51,52,53,54、中間転写ベルト55および2次転写ユニット56を用いてトナー像を形成する。
【0044】
第1可視像形成ユニット51は、感光体59と、帯電ユニット60と、光学系ユニット50と、現像ユニット61aと、1次転写ユニット62aとを有する。像担持体となる感光体59の周囲に、帯電ユニット60、現像ユニット61aおよびクリーニングユニット63が配置されている。これらのユニットにより、感光体59にトナー像が形成され、トナー像が中間転写ベルト55に転写される。光学系ユニット50では、4つのレーザー光源64からのビームが4組の感光体59,65,66,67に届くように配置される。1次転写ユニット62aは、中間転写ベルト55を介して感光体59に圧接するように配置される。
【0045】
他の第2〜第4可視像形成ユニット52,53,54は、第1可視像形成ユニット51と同様の構成である。各ユニット51,52,53,54の現像ユニット61a,61b,61c,61dには、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)の各色のトナーがそれぞれ収容される。
【0046】
中間転写ベルト55は、各色のトナー像が転写され、表面に各色のカラートナー像が重畳される。中間転写ベルト55は、テンションローラ68,69によって駆動され回動する。中間転写ベルト55のテンションローラ68側に当接して2次転写ユニット56が配置される。2次転写ユニット56は、中間転写ベルト55上に形成されたカラートナー像を内部用紙給送ユニット57および手差し用紙給送ユニット58から、それぞれ給送ローラ73および74によって送られてきた記録紙に転写する。また、中間転写ベルト55に当接してテンションローラ69側に配置される廃トナーボックス70には、2次転写後、中間転写ベルト55の表面に残ったトナーが回収される。
【0047】
定着装置2は、2次転写ユニット56の下流側に配置される。定着装置2は、定着部71および加圧部72から構成される。加圧部72は、図示しない加圧機構により定着部71に所定の圧力で圧接される。定着装置2の下流には、排紙トレイ75が設けられている。
【0048】
≪画像形成装置の動作≫
続いて、画像形成装置1における画像形成の動作を説明する。
感光体59表面は、帯電ユニット60により一様に帯電される。帯電ユニット60としては、感光体59表面を一様に、またオゾンを極力発生させることなく帯電するために、帯電ローラ方式が採用されている。
【0049】
光学系ユニット50は、帯電された感光体59の表面をレーザー光源64からのビームで露光する。レーザー光源64は画像情報により制御される。これによって、感光体59表面に画像情報に応じた静電潜像が形成される。
現像ユニット61aは、感光体59上の静電潜像を現像し、トナー像を形成する。1次転写ユニット62aは、トナーと逆極性のバイアス電圧が印加されており形成されたトナー像を中間転写ベルト55上に転写する。
他の3組の第2〜第4可視像形成ユニット52,53,54も同様に動作し順次、中間転写ベルト55上にトナー像を転写する。
【0050】
中間転写ベルト55上のトナー像は2次転写ユニット56まで搬送される。内部用紙給送ユニット57の給送ローラ73または手差し用紙給送ユニット58の給送ローラ74から供給された記録紙に、トナーとは逆極性のバイアス電圧が2次転写ユニット56によって印加され、トナー像が記録紙に転写される。トナー像を担持した記録紙は、定着装置2に搬送され、定着部71および加圧部72によって充分に加熱されて、トナー像が記録紙に融着し、排紙トレイ75に排出される。記録紙のサイズは最大A3サイズまで対応し、定着装置2による加熱幅はA4の長手方向のサイズに対応している。
【0051】
≪定着装置の構成≫
次に、画像形成装置1における定着装置2の構成を説明する。図2は、この発明の定着装置2の構成例を示す説明図である。定着装置2は、定着部71と加圧部72とで構成され、定着部71は、定着ローラ5と、定着ベルト4と、定着用ヒータ3と、コート層8で構成され、加圧部72は、加圧ローラ6とヒータランプ7とで構成される。
【0052】
図2に示されるように、定着装置2は、面状発熱ベルト定着方式であり、定着ローラ5と、無端状の定着ベルト4と、定着ベルト4を懸架し加熱するための定着用ヒータ3と、定着用ヒータ3を被覆するコート層8と、加圧ローラ6と、加圧ローラ6を熱するための熱源であるヒータランプ7と、定着ベルト4および加圧ローラ6のそれぞれの温度を検出する温度検出手段を構成する温度センサとしてのサーミスタ10aおよびサーミスタ10bと、定着ローラ5および加圧ローラ6が互いに圧接されるように加圧するための図示しない加圧スプリングと、当該圧接を解除するための図示しない加圧解除機構とを備えている。
【0053】
定着ローラ5および加圧ローラ6は、加圧スプリングにより、所定の荷重(例えば、216N)で互いに圧接され、両ローラ間に定着ニップ部N(定着ローラ5と加圧ローラ6とが互いに当接する部分)を形成している。この定着ニップ部Nに、2次転写ユニット56およびテンションローラ68(図1)から搬送方向Fに搬送されてきた未定着のトナー像12が形成された記録紙11を給紙し、定着ニップ部Nを通過させることで、記録紙11にトナー像12が定着されるようになっている。記録紙11が定着ニップ部Nを通過する時には、定着ベルト4は記録紙11のトナー像形成面に当接する一方、加圧ローラ6は記録紙11におけるトナー像形成面とは反対側の面に当接するようになっている。なお、この実施形態では、定着ニップ幅W(定着ニップ部Nの記録紙11の搬送方向の長さ)を7mmとしている。
【0054】
定着ローラ5は、定着ベルト4を介して、加圧ローラ6に圧接することで定着ニップ部Nを形成すると同時に、回転駆動することにより定着ベルト4を駆動する目的のものである。定着ローラ5としては、例えば、内側から順に芯金と、弾性層とが形成された2層構造のものを用いることができる。芯金には、例えば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属あるいはそれらの合金等が用いられる。また、弾性層にはシリコンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性を有するゴム材料が適している。なお、この実施形態では、定着ローラ5は、直径が30mmで、芯金に直径15mmの鉄(STKM)、弾性層に厚さ5mmのシリコンスポンジゴムを用いている。
【0055】
加圧ローラ6としては、例えば、内側から順に芯金と、弾性層と、離型層とが形成された3層構造のものを用いることができる。芯金には、例えば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属あるいはそれらの合金等が用いられる。また、弾性層には、シリコンゴム、フッ素ゴム等の耐熱性を有するゴム材料等が用いられる。また、離型層には、PFA(テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂が適している。なお、この実施形態では、加圧ローラ6は、直径は30mmで、芯金に直径28mm、肉厚2mmの鉄パイプ(STKM)、弾性層に厚さ1mmのシリコンソリッドゴム、離型層に厚さ30μmのPFAチューブを用いている。
【0056】
また、加圧ローラ6の内部には、加圧ローラ6を加熱するハロゲンランプ等からなる定着用のヒータランプ7が配置されている。図示しない制御回路が電源回路からヒータランプ7に電力を供給(通電)させることにより、ヒータランプ7が発光し、ヒータランプ7から赤外線が放射される。これにより、加圧ローラ6の内周面が赤外線を吸収して加熱され、加圧ローラ6全体が加熱される。なお、この実施形態では、定格電力400Wのヒータランプ7を使用している。
【0057】
定着ベルト4は、無端状のベルトであり、定着用ヒータ3および定着ローラ5によって懸架され、定着ローラ5の回転時には、定着ローラ5に従動して定着ベルトの送り方向Rに回転するようになっている。定着ベルト4は弾性があり、定着用ヒータ3および定着ローラ5に懸架しない状態で円筒状にしたとき、直径50mmのチューブ状をなす。
定着ベルト4は、内周側より順に、基材、弾性層および離型層の3層から構成される。定着ベルト4の基材としては、ポリイミド等の耐熱樹脂またはステンレス鋼やニッケル等の金属材料が用いられる。当該基材の外周面に、弾性層として耐熱性および弾性に優れたエラストマー材料(例えばシリコンゴム)が形成され、当該弾性層の外周面に、離型層として合成樹脂材料(例えばPFAやPTFE等のフッ素樹脂)が形成される。なお、基材にポリイミド等の耐熱樹脂を用いる場合、フッ素樹脂を内添することがより好ましい。こうすることで、定着用ヒータ3との摺動負荷をさらに低減することができる。
この実施形態においては、基材として厚さ50μmのポリイミドが用いられ、弾性層として厚さ150μmのシリコンゴム、離型層として厚さ30μmのPFAが用いられる。
【0058】
定着用ヒータ3は、後述するコート層8を介して、定着ベルト4に接触して、定着ベルト4を所定の温度に加熱するためのものである。
定着用ヒータ3は、基板と抵抗発熱体および絶縁体とを含んで構成される。定着用ヒータ3は、定着ベルト4の幅方向(定着ローラ5の軸線方向)に延びて、コート層8が定着ベルト4に接触するように配置され、定着用ヒータ3が発生させる熱を、コート層8を介して、定着ベルト4に伝導させる。基板を構成する材料は、特に限定されないが、高い熱伝導性を有する金属材料であることが好ましく、その金属材料としては、鉄、アルミニウム、銅などを挙げることができるが、ステンレス鋼を用いることも可能である。
【0059】
定着用ヒータ3の定着ベルト4と接触する外側の面にはコート層8が設けられ、その上を定着ベルト4が摺動するようになっている。コート層8は、定着用ヒータ3が発生させた熱を定着ベルト4に伝導するための熱伝導性を有するとともに、定着ベルト4との間の摩擦力が低減可能な材料から形成する必要がある。このようなコート層8が形成されることによって、定着ベルト4に熱を伝導させるとともに、ヒータ3と接触して摺動する定着ベルト4の摩耗を防止して高い耐久性を確保することができる。また、定着ベルト4との間の摩擦力が低減可能となるので、定着ベルト4を駆動する定着ローラ5および加圧ローラ6への負荷も低減することができ各ローラの耐久性も確保し、より低トルクで駆動することが可能となる。コート層8を構成する材料としては、PFAやPTFE等のフッ素樹脂を挙げることができる。この実施形態では、コート層8は、PTFEからなる厚さ20μmの層である。
【0060】
≪定着用ヒータの詳細な説明≫
次に、この発明の実施形態1に係る定着用ヒータの詳細な構成について、図3に基づいて説明する。
図3(a)は、この発明の実施形態1に係る定着用ヒータの構成を示す説明図である。
図3(b)は、図3(a)に示す定着用ヒータの製造過程において、固着用セラミックシートの焼成前の定着用ヒータの構成を示す説明図である。
図3(c)は、図3(b)に示すA部の拡大説明図である。
【0061】
図3(a)に示されるように、定着用ヒータ3は、矩形状の基板21上に厚さが一様なセラミック層(固着用セラミック層22)を介して予め所定形状に加工された厚さが一様な金属箔23の抵抗発熱体が設置される。上記基板21は、金属材料からなる基板であり、ステンレス鋼(SUS)やアルミニウムなどの材料が用いられる。この実施形態では、厚さ0.7mmの基板を用いている。
【0062】
図3(b)は、固着用セラミック層22の焼成前の定着用ヒータの構成を示す説明図である。図3(b)に示されるように、基板21の上にはシート状に加工された固着用セラミックシート31が配される。
図3(c)に示されるように、固着用セラミックシート31は、セラミック粒子32をアクリル系樹脂の有機バインダ33で均一に結着され、シート状に形成されている。実施形態1では、焼成前の固着用セラミックシート31の厚さTh1は、70μmとしている。固着用セラミックシート31は、シート状に加工されかつ柔軟性があるため、取り扱いが容易である。
【0063】
さらに、固着用セラミックシート31上に、予めエッチングなどにより所定のパターンに加工された金属箔23の抵抗発熱体が設けられる。金属箔23はニッケルクロムを主成分とした金属合金やステンレス鋼からなる電気抵抗を有する金属抵抗体で、厚さが30μmである。
【0064】
次に、定着用ヒータ3の製造方法を説明する。
【0065】
上記金属箔23の抵抗発熱体は、上記固着用セラミックシート31に含まれるアクリル系樹脂の有機バインダ33が接着性を発揮する所定の温度(常温(25℃)〜80℃)に加熱することによって、固着用セラミックシート31を介して基板21の表面上に仮接着される。その後、定着用ヒータ3は焼成炉に投入され、700℃の焼成温度により固着用セラミックシート31の焼成が行われる。固着用セラミックシート31を構成する有機バインダ33が焼成により熱分解し、残ったセラミック粒子32が基板21および金属箔23を固着し、固着用セラミック層22を形成した結果、定着用ヒータ3が完成される。
【0066】
ところで、金属箔23と基板21との熱膨張係数が大きく異なる場合、金属箔23が焼成時の熱膨張の変化により基板21からはがれるように反ることがある。しかし、金属箔23および基板21の熱膨張係数が同等または熱膨張係数の差が小さい場合は、固着用セラミックシート31の柔軟性により、金属箔23および基板21の熱膨張の変化に追従し、金属箔23の基板21からのはがれや浮きを防止できる。そこで、この効果を確認すべく、金属箔をステンレス鋼として、基板の材質をそれぞれステンレス鋼、アルミニウム、セラミックとした場合に焼成を行い、金属箔23の基板21からのはがれや浮きを防止できるか検証を行った。その際、焼成前の固着用セラミックシート31の厚さTh1は、70μmとした。下の表1に焼成結果を示す。
【0067】
【表1】

【0068】
上の表1に示されるように、基板21の材質が、金属箔23(ステンレス鋼。熱膨張係数:18.6×10―6/℃)と熱膨張係数が同一のステンレス鋼(熱膨張係数:18.6×10―6/℃)の場合、良好な密着性を示した。一方、基板21の材質が、金属箔23(ステンレス鋼。熱膨張係数:18.6×10―6/℃)と熱膨張係数が大きく異なるセラミック材料(アルミナ96%。熱膨張係数:6.4×10―6/℃)の場合は、基板21および金属箔23の間の焼成時の熱膨張の差が大きいため、十分な密着性を得る前に金属箔23が基板21から剥離を起こしてしまう。しかし、基板21および金属箔23の熱膨張率が異なる場合でも、基板21および金属箔23(ステンレス鋼。熱膨張係数:18.6×10―6/℃)の熱膨張係数の差が比較的小さいアルミニウム(熱膨張係数:24.0×10―6/℃)の場合は、焼成によっても剥がれや浮きは生じず、良好な密着性を示した。
それゆえ、基板21および金属箔23の間の熱膨張係数の差が異なる場合でも、その差が比較的小さい場合は、固着用セラミックシート31の柔軟性により基板21および金属箔23の焼成時の熱膨張の差に十分に追従し得るため、金属箔23の基板21からのはがれや浮きを有効に防止できることが判明した。
【0069】
実施形態2
実施形態2として、定着用ヒータの変形例を図4に基づいて説明する。
図4(a)は、この発明の実施形態2に係る定着用ヒータの構成を示す説明図である。
図4(b)は、図4(a)に示す定着用ヒータの製造過程において、固着用セラミックシートおよび被覆用セラミックシートの焼成前の定着用ヒータの構成を示す説明図である。
図4(c)は、図4(b)に示すB部の拡大説明図である。
【0070】
図4(a)に示されるように、定着用ヒータ3aは、矩形状の基板21a上に厚さが一様なセラミック層(固着用セラミック層22a)を介して予め所定形状に加工された厚さが一様な金属箔23aの抵抗発熱体が設置される。上記基板21aは、アルミナなどのセラミックス材料からなる基板であり、実施形態2では純度96%、厚さ1mmのアルミナ基板を用いている。
実施形態2に係る定着用ヒータ3aは、さらに金属箔23aを被覆するように第2のセラミック層(被覆用セラミック層24)を備えている。
【0071】
図4(b)は、固着用セラミック層22aおよび被覆用セラミック層24の焼成前の定着用ヒータの構成を示す説明図である。図4(b)に示されるように、基板21aの上にはシート状に加工された固着用セラミックシート31aおよび被覆用セラミックシート34が配される。
図4(c)に示されるように、固着用セラミックシート31aは、セラミック粒子32aをアクリル系樹脂の有機バインダ33aで均一に結着することにより、シート状に形成されている。被覆用セラミックシート34も同様に、セラミック粒子32bをアクリル系樹脂の有機バインダ33bで均一に結着することにより、シート状に形成されている。
実施形態2では、焼成前の固着用セラミックシート31aの厚さTh1は、70μmとしている。固着用セラミックシート31aおよび被覆用セラミックシート34は、シート状に加工されかつ柔軟性があるため、取り扱いが容易である。
【0072】
固着用セラミックシート31a上に予めエッチングなどにより所定パターンに加工された金属箔23aの抵抗発熱体が設けられる。なお、金属箔23aの材質と厚さは、実施形態1と同じである。実施形態2では、上記金属箔23aを被覆するように、さらに被覆用セラミックシート34が配される。
【0073】
次に、定着用ヒータ3aの製造方法を説明する。
【0074】
上記金属箔23aの抵抗発熱体は、上記固着用セラミックシート31aに含まれるアクリル系樹脂の有機バインダ33aが接着性を発揮する所定の温度(常温(25℃)〜80℃)に加熱することによって、固着用セラミックシート31aを介して基板21aの表面上に仮接着される。さらに、被覆用セラミックシート34を、金属箔23aを被覆するように仮接着した後、定着用ヒータ3aは焼成炉に投入され、700℃の焼成温度により固着用セラミックシート31aおよび被覆用セラミックシート34の焼成が行われる。固着用セラミックシート31aおよび被覆用セラミックシート34を構成する有機バインダ33aおよび33bが焼成により熱分解し、残ったセラミック粒子32aおよび32bが上下から包みこむように金属箔23aを固着し、固着用セラミック層22aおよび被覆用セラミック層24を形成した結果、定着用ヒータ3aが完成される。
【0075】
ところで、実施形態1に示したように、金属箔23aと基板21aとの熱膨張係数が大きく異なる場合、焼成時に金属箔23aが熱膨張の変化により基板21aからはがれるように反ることがある。しかし、このような場合でも、金属箔の反りを矯正する(押さえつける)ように被覆用セラミックシート24を被覆させることにより、金属箔23aの基板21aからのはがれや浮きを有効に防止することができる。
そこで、この効果を確認すべく、金属箔23aをステンレス鋼(熱膨張係数:18.6×10―6/℃)とし、基板21aの材質を金属箔23aと熱膨張係数の大きく異なるセラミック(アルミナ96%。熱膨張係数:6.4×10―6/℃)として焼成を行い、金属箔23aが基板21aから剥離せずに良好に固着されるか検証を行った。ここで、焼成前の固着用セラミックシート31aの厚さTh1は70μmとし、被覆用セラミックシート34の厚さTh2を、それぞれ250μm、300μm、500μmとした場合の焼成結果を下の表2に示す。
【0076】
【表2】

【0077】
上の表2に示されるように、金属箔23a上に被覆用セラミックシート34を設置しない場合(実施形態1)は、基板21aおよび金属箔23aの焼成時の熱膨張の差が大きく、金属箔23aが基板21aから剥離してしまうためうまく固着されない。しかし、この実施形態のように、金属箔23a上に被覆用セラミックシート34をさらに設置して焼成を行った場合、焼成前の被覆用セラミックシート34の厚さTh2が300μmのときに、金属箔23aが基板21aから剥離することなく良好に固着された。これは、固着用セラミックシート31aおよび被覆用セラミックシート34が焼成により、それぞれ固着用セラミック層22aおよび被覆用セラミック層24を形成するときに、金属箔23aを上下から内包するように押さえつけ、焼成時の熱膨張の差による金属箔23aの基板21aからの剥離を防止するためであると考えられる。
【0078】
一方、金属箔23a上に被覆用セラミックシート34を設置した場合でも、被覆用セラミックシート34の厚さTh2が250μmのときは、金属箔23aの反りの力を押さえきれず、金属箔23aを基板21aにうまく固着できなかった。これは、被覆用セラミックシート34の厚みTh2が薄すぎる場合、金属箔23aの反りの力に耐えきれず、被覆用セラミックシート34に亀裂が入るためであると考えられる。
また、被覆用セラミックシート34の厚さTh2が500μmの場合も、金属箔23aを基板21aにうまく固着できなかった。被覆用セラミックシート34の厚さTh2が厚すぎる場合は、被覆用セラミックシート34自体の柔軟性が損なわれるために、被覆用セラミックシート34に亀裂が入りやすくなるためであると考えられる。
それゆえ、被覆用セラミックシート34は、薄すぎても厚すぎても良くなく、被覆用セラミックシート34が受ける金属箔23aの反りの力にもよるが、この実施形態の条件においては、被覆用セラミックシート34の厚さTh2は、250〜350μmの範囲が適当であると考えられる。
【0079】
以上の結果から、被覆用セラミックシート34の厚さTh2が金属箔23aの反りの力に耐え、かつ被覆用セラミックシート34の柔軟性が損なわれない範囲で、金属箔23aを固着用セラミックシート31aおよび被覆用セラミックシート34で上下から包み込むように固着することにより、金属箔23aと基板21aとの熱膨張差が大きく異なる場合でも、良好な密着性を示すことが確認された。
【0080】
実施形態3
実施形態3として、定着用ヒータの別の変形例を、図5および図6に基づいて説明する。
図5(a)は、この発明の実施形態3に係る定着用ヒータの構成を示す上面図である。
図5(b)は、図5(a)に示す定着用ヒータのX1−X1矢視断面図である。
図5(c)は、図5(b)に示す定着用ヒータの製造過程において、固着用セラミックシートの焼成前の定着用ヒータの構成を示す説明図である。
図6(a)は、図5(a)に示す定着用ヒータのC部の側面拡大図である。
図6(b)は、図6(a)に示される部分の固着用セラミックシートの焼成前の定着用ヒータの構成を示す説明図である。
【0081】
図5(a)および(b)に示されるように、実施形態3に係る定着用ヒータ3bに係る2組の発熱部(主抵抗発熱部41および副抵抗発熱部42)は、基板21cの表面上に固着用セラミック層22cを介して、異なる電気抵抗率を有する複数の金属箔23d,23e,23f,23g,23hを組み合わせて構成される。なお、金属箔同士は、導電性の接着剤にて接着される。
X1−X1矢視断面図において、基板21cの表面上に、固着用セラミック層22cを介して、予め所定形状に加工された厚さが一様だが電気抵抗率が異なる金属箔23d,23hの抵抗発熱体が設置される。
【0082】
図5(c)は、定着用ヒータ3bの製造過程において、固着用セラミック層22cの焼成前の定着用ヒータの構成を示す説明図である。図5(c)に示されるように、基板21cの表面上に固着用セラミックシート31cが配される。さらに、固着用セラミックシート31c上に、予めエッチングなどにより所定のパターンに加工された金属箔23dおよび23hの抵抗発熱体が設けられる。
【0083】
ここで、図5(a)に示される主抵抗発熱部41は、長手方向において、中央発熱領域Mおよび両端発熱領域Sにそれぞれ対応する金属箔23hおよび23dを備え、副抵抗発熱部42は、主抵抗発熱部41に平行に、中央発熱領域Mおよび両端発熱領域Sにそれぞれ対応する金属箔23dおよび23hを備える。金属箔23hおよび23dの長手方向の単位長さ当たりの発熱量は一定である。ただし、金属箔23hは、金属箔23dよりも長手方向の単位長さ当たりの発熱量が大きく、主抵抗発熱部41は両端発熱領域Sよりも中央発熱領域Mに、副抵抗発熱部42は中央発熱領域Mよりも両端発熱領域Sに熱量が集中するような構成を有する。
【0084】
一方、主抵抗発熱部41および副抵抗発熱部42はいずれも、中央発熱領域Mおよび両端発熱領域Sの境界部分において、電気抵抗率が段階的に異なる複数の金属箔23d〜23hを長手方向で一部互いに重ね合わさるように直列接続する。これにより、長手方向における単位長さ当たりの発熱量が徐々に変化するように構成される。なお、この実施形態において、金属箔23d〜23hの電気抵抗率は、23d,23e,23f,23g,23hの順に徐々に変化するように構成される。
【0085】
次に、定着用ヒータ3bの製造方法を説明する。
【0086】
上記金属箔23d〜23hの抵抗発熱体の組み合わせは、所定の温度(常温(25℃)〜80℃)に加熱することによって、固着用セラミックシート31cを介して基板21cの表面上に仮接着される。その後、固着用セラミックシート31cにより金属箔23d〜23hの抵抗発熱体の組み合わせが仮接着された基板21cが焼成炉に投入され、所定の焼成条件で固着用セラミックシート31cの焼成が行われ、定着用ヒータ3bが完成される。
【0087】
ここで、主抵抗発熱部41のみに電流を流したとき、主抵抗発熱部41の長手方向における発熱量の分布は中央発熱領域Mに対応する幅W1に集中する。一方、副抵抗発熱部42のみに電流を流したとき、副抵抗発熱部42の長手方向における発熱量の分布は両端発熱領域Sに集中する。また、主抵抗発熱部41および副抵抗発熱部42の両方に電流を流したとき、主抵抗発熱部41および副抵抗発熱部42の長手方向における合成発熱量の分布は均一になり、基板21cの全長に対応する幅W2に集中する。
その後、定着ベルト4(図2)を介して熱量が伝えられ、記録紙11(図2)の用紙サイズに対応した発熱領域が実現できる。
【0088】
ところで、主抵抗発熱部41および副抵抗発熱部42の両方に電流を流したとき、中央発熱領域Mおよび両端発熱領域Sの境界部分における合成発熱量の分布を均一にするには、主抵抗発熱部41および副抵抗発熱部42の長手方向における単位長さ当たりの発熱量の対称性を実現する必要がある。しかし、中央発熱領域Mおよび両端発熱領域Sの境界部分においては、主抵抗発熱部41および副抵抗発熱部42の単位長さ当たりの発熱量が急激に変化するため、発熱量の対称性を保つには多くの場合、発熱量の微細な調整を要する。
しかし、この実施形態においては、同一の電気抵抗率を有する金属箔を、厚さが一様なシートからエッチングなどによって切り出すことができ、また固着用セラミックシート31cを介して、基板21への仮接着により主抵抗発熱部41および副抵抗発熱部42が簡易に構成できるため、発熱量の調整が従来の方法よりも容易であり、均一で安定した発熱特性が実現できる。
【0089】
実施形態4
実施形態4として、定着用ヒータのさらに別の変形例を、図7および図8に基づいて説明する。
図7(a)は、この発明の実施形態4に係る定着用ヒータの構成を示す一部切り欠きの上面図である。
図7(b)は、図7(a)に示す定着用ヒータのX2−X2矢視断面図である。
図7(c)は、図7(b)に示す定着用ヒータの製造過程において、固着用セラミックシートおよび被覆用セラミックシートの焼成前の定着用ヒータの構成を示す説明図である。
図8(a)は、図7(a)に示す定着用ヒータのD部の側面拡大図である。
図8(b)は、図7(a)に示される部分の固着用セラミックシートおよび被覆用セラミックシートの焼成前の定着用ヒータの構成を示す説明図である。
【0090】
図7(a)および(b)に示されるように、実施形態4に係る定着用ヒータ3cに係る2組の発熱部(主抵抗発熱部41aおよび副抵抗発熱部42b)は、基板21eの表面上に、固着用セラミック層22eを介して、異なる電気抵抗率を有する複数の金属箔23k,23l,23m,23n,23oを組み合わせて構成される。なお、金属箔同士は、導電性の接着剤にて接着される。
X2−X2矢視断面図において、基板21eの表面上に、固着用セラミック層22eを介して、予め所定形状に加工された厚さが一様だが電気抵抗率が異なる金属箔23kおよび23oの抵抗発熱体が設置される。この実施形態では、さらに金属箔23kおよび23oを固着用セラミック層22eおよび被覆用セラミック層24bで上下から内包するようにして、被覆用セラミック層24bを設置する。
図7(a)に示されるように、金属箔23k〜23oの組み合わせの全体は、固着用セラミック層22eおよび被覆用セラミック層24bとで上下から包み込むように被覆される。
【0091】
図7(c)は、定着用ヒータ3cの製造過程において、固着用セラミック層22cおよび被覆用セラミック層24bの焼成前の定着用ヒータの構成を示す説明図である。図7(c)に示されるように、基板21eの表面上に固着用セラミックシート31eが配される。その後さらに、固着用セラミックシート31e上に、予めエッチングなどにより所定のパターンに加工された金属箔23kおよび23oが設けられる。
なお、この実施形態では、さらに固着用セラミックシート31eおよび被覆用セラミックシート34bで、金属箔23kおよび23oを上下から包み込むように被覆する。
【0092】
ここで、図7(a)に示される主抵抗発熱部41aは、長手方向において、中央発熱領域Mおよび両端発熱領域Sにそれぞれ対応する金属箔23oおよび23kを備え、副抵抗発熱部42aは、主抵抗発熱部41aと平行に、中央発熱領域Mおよび両端発熱領域Sにそれぞれ対応する金属箔23kおよび23oを備える。金属箔23kおよび23oの長手方向の単位長さ当たりの発熱量は一定である。ただし、金属箔23kは、金属箔23oよりも長手方向の単位長さ当たりの発熱量が大きく、主抵抗発熱部41aは両端発熱領域Sよりも中央発熱領域Mに、副抵抗発熱部42aは中央発熱領域Mよりも両端発熱領域Sに熱量が集中するような構成を有する。
【0093】
一方、主抵抗発熱部41aおよび副抵抗発熱部42aはいずれも、中央発熱領域Mおよび両端発熱領域Sの境界部分において、電気抵抗率が段階的に異なる複数の金属箔23k〜23oを長手方向で一部互いに重ね合わさるように直列接続する。これにより、長手方向における単位長さ当たりの発熱量が徐々に変化するように構成される。なお、この実施形態において、金属箔23k〜23oの電気抵抗率は、23k,23l,23m,23n,23oの順に徐々に変化するように構成される。
【0094】
次に、定着用ヒータ3cの製造方法を説明する。
【0095】
上記金属箔23k〜23oの抵抗発熱体の組み合わせは、所定の温度(常温(25℃)〜80℃)に加熱することによって、固着用セラミックシート31eを介して基板21eの表面上に仮接着される。その後、固着用セラミックシート31eにより金属箔23k〜23oの抵抗発熱体の組み合わせが仮接着された基板21eが焼成炉に投入され、所定の焼成条件で固着用セラミックシート31eおよび被覆用セラミックシート34bの焼成が行われ、定着用ヒータ3cが完成される。
【0096】
ここで、金属箔23k〜23oは導電性接着剤によって互いに接着される。しかし、各金属箔23k〜23oの熱膨張係数が大きく異なる場合、焼成時の熱膨張差によって基板21eとの密着性が金属箔23k〜23oによって異なるため、金属箔23k〜23oの基板21eからの剥がれや浮きが生じるおそれがある。しかし、この実施形態においては、各金属箔23k〜23oの熱膨張係数が大きく異なる場合でも、金属箔23d〜23hの組み合わせを固着用セラミックシート22eおよび被覆用セラミックシート24bで上下から挟み込んで内包することにより、熱膨張差に起因する金属箔の剥がれや浮きを防止でき、均一で安定した発熱特性が実現できる。
【符号の説明】
【0097】
1:画像形成装置
2:定着装置
3,3a,3b,3c:定着用ヒータ
4:定着ベルト
5:定着ローラ
6:加圧ローラ
7:ヒータランプ
8:コート層
10a,10b:サーミスタ
11:記録紙
12:トナー像
21,21a,21c,21e:基板
22,22a,22c,22e:固着用セラミック層
23,23a,23d,・・・,23h,23k,・・・,23o:金属箔
24,24b:被覆用セラミック層
31,31a,31c,31e:固着用セラミックシート
32,32a,32b:セラミック粒子
33,33a,33b:有機バインダ
34,34b:被覆用セラミックシート
41,41a:主抵抗発熱部
42,42a:副抵抗発熱部
50:光学系ユニット
51:第1可視像形成ユニット
52:第2可視像形成ユニット
53:第3可視像形成ユニット
54:第4可視像形成ユニット
55:中間転写ベルト
56:2次転写ユニット
57:内部用紙給送ユニット
58:手差し用紙給送ユニット
59,65,66,67:感光体
60:帯電ユニット
61a,61b,61c,61d:現像ユニット
62a,62b,62c,62d:1次転写ユニット
63:クリーニングユニット
64:レーザー光源
68,69:テンションローラ
70:廃トナーボックス
71:定着部
72:加圧部
73,74:給送ローラ
75:排紙トレイ
F:記録紙の搬送方向
R、R1:定着ベルトの送り方向
N:定着ニップ部
W:定着ニップ幅
Th1:固着用セラミックシートの厚さ
Th2:被覆用セラミックシートの厚さ
M:基板の長手方向の中央発熱領域
S:基板の長手方向の両端発熱領域
W1:基板の長手方向の中央発熱領域に対応する幅
W2:基板の長手方向の全長に対応する幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック粒子および有機バインダを含む固着用セラミックシートを基板上に設置し、抵抗発熱体を前記固着用セラミックシートの上に設置し、
前記固着用セラミックシートを焼成して、前記有機バインダを熱分解し、それによって、前記抵抗発熱体を前記基板上に固着させる固着用セラミック層を形成することを特徴とする定着用ヒータの製造方法。
【請求項2】
前記有機バインダは、熱可塑性樹脂であり、
前記固着用セラミックシートは、前記セラミック粒子が前記有機バインダにより均一に結着され、一様な厚さを有する請求項1に記載の定着用ヒータの製造方法。
【請求項3】
前記抵抗発熱体は、厚さが一様な金属箔である請求項1または2に記載の定着用ヒータの製造方法。
【請求項4】
前記有機バインダは、25℃〜80℃の温度領域において塑性となる請求項2または3に記載の定着用ヒータの製造方法。
【請求項5】
前記有機バインダは、アクリル樹脂である請求項1〜3のいずれか1つに記載の定着用ヒータの製造方法。
【請求項6】
前記基板は、前記抵抗発熱体と熱膨張係数が同等の材質である請求項1〜5のいずれか1つに記載の定着用ヒータの製造方法。
【請求項7】
セラミック粒子と有機バインダを含む固着用セラミックシートを基板上に設置し、抵抗発熱体を前記固着用セラミックシートの上に設置し、セラミック粒子と有機バインダを含む被覆用セラミックシートを前記抵抗発熱体の上に設置し、前記固着用および被覆用セラミックシートを焼成して前記有機バインダを熱分解し、それによって、前記抵抗発熱体を前記基板上に固着させる固着用セラミック層と、前記抵抗発熱体を被覆する被覆用セラミック層とを形成する定着用ヒータの製造方法。
【請求項8】
前記有機バインダは、熱可塑性樹脂であり、
前記固着用および被覆用セラミックシートは、前記セラミック粒子が前記有機バインダにより均一に結着され、一様な厚さを有する請求項7に記載の定着用ヒータの製造方法。
【請求項9】
前記抵抗発熱体は、厚さが一様な金属箔である請求項7または8に記載の定着用ヒータの製造方法。
【請求項10】
前記有機バインダは、25℃〜80℃の温度領域において塑性となる請求項8または9に記載の定着用ヒータの製造方法。
【請求項11】
前記有機バインダは、アクリル樹脂である請求項7〜9のいずれか1つに記載の定着用ヒータの製造方法。
【請求項12】
前記基板は、前記抵抗発熱体と熱膨張係数が異なる材質である、請求項7〜11に記載の定着用ヒータの製造方法。
【請求項13】
基板と、前記基板上に設置される抵抗発熱体とを備え、
請求項1〜6のいずれか1つに記載の製造方法で製造された定着用ヒータ。
【請求項14】
基板と、前記基板上に設置される抵抗発熱体とを備え、
請求項7〜12のいずれか1つに記載の製造方法で製造された定着用ヒータ。
【請求項15】
前記抵抗発熱体が細長形状の抵抗発熱体からなる第1抵抗発熱部と、前記第1抵抗発熱部に平行な細長形状の抵抗発熱体からなる第2抵抗発熱部とを備え、
前記第1抵抗発熱部は、長手方向の単位長さ当たりの発熱量が一定の中央発熱領域と、長手方向の単位長さ当たりの発熱量が一定かつ前記中央発熱領域よりも高い両端発熱領域とを有し、
前記第2抵抗発熱部は、長手方向の単位長さ当たりの発熱量が一定の中央発熱領域と、長手方向の単位長さ当たりの発熱量が一定かつ前記中央発熱領域よりも低い両端発熱領域とを有し、
前記第1および第2抵抗発熱部の各発熱領域の境界部分では、長手方向の単位長さ当たりの電気抵抗値が徐々に変化するように電気抵抗率の異なる複数の抵抗発熱体が直列接続され、
前記第1および第2の抵抗発熱部が同時に発熱したとき、前記基板全体の長手方向の単位長さ当たりの発熱量が一定である請求項13または14に記載の定着用ヒータ。
【請求項16】
定着用ヒータと、定着ローラと、前記定着用ヒータおよび定着ローラの間に回動可能に張架され定着用ヒータにより加熱される無端状の定着ベルトと、前記定着用ヒータの前記定着用ベルトの接触面に形成されたコート層と、前記定着ベルトを介して前記定着ローラに対向して配設された加圧ローラとを備え、
前記定着ベルトと前記加圧ローラとの間に未定着のトナー像を担持した記録媒体を搬送し、記録媒体上のトナー像を熱定着する定着装置において、
前記定着用ヒータは、請求項13〜15のいずれか1つに記載の定着用ヒータである定着装置。
【請求項17】
記録媒体上に未定着のトナー像を形成する画像形成部と、前記トナー像を前記記録媒体上に熱定着させる定着装置を備えた画像形成装置において、
前記定着装置は、請求項16に記載の定着装置である画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−58414(P2012−58414A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200191(P2010−200191)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】