説明

定着用ローラ、定着装置および画像形成装置

【課題】温度制御の応答性に優れる定着用ローラ、かかる定着用ローラを備えた定着装置および画像形成装置を提供すること。
【解決手段】定着ローラ(本発明の定着用ローラ)21は、定着ローラ21は、ローラ本体210と、ローラ本体210の外周面(表面)に設けられた発熱層(面状ヒータ)213と、発熱層213の外周面(表面)に設けられた弾性層214と、弾性層214の外周面(表面)に設けられた表層215とを有している。また、ローラ本体210は、筒体211と、筒体211内に固定された円筒状の回転軸216と、筒体211の外周面に設けられた絶縁層212とを備えている。本発明において発熱層213は、自己温度制御機能を有し、ポリマー(基材)中に、このポリマーとの密着性を向上させる改質処理を施した炭素系物質を含んでなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着用ローラ、定着装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、コピー、ファクシミリ等のような画像形成装置には、トナーにより形成されたトナー像を未定着状態で担持する記録媒体を加熱および加圧することにより、前記トナー像を記録用紙に定着させる定着装置が備えられているものがある。
このような定着装置は、例えば、ハロゲンヒータ(加熱手段)を内蔵した定着ローラと加圧ローラとの間に、トナー像が転写された記録材を通過させて、2つのローラによる加熱および加圧により、トナー像を記録材に定着させる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、このハロゲンヒータは、定着ローラの回転軸とほぼ同位置に設置されているとともに、空気を媒体としてローラ本体を加熱するため、熱のロスが生じる、すなわち、熱効率が低いという問題がある。
また、このハロゲンヒータでは、クイックヒートを行なうことができないという問題や、加熱に有効な赤外線よりも加熱に寄与しない可視光を多く照射するため、消費電力が高いという問題もある。
さらに、このハロゲンヒータは、自己温度制御機能を有さないため、定着ローラの温度を一定に保持するためには、サーモスタット、ヒューズ等を併用せざるを得ないという問題もある。
【0004】
【特許文献1】特開2004−294737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、温度制御の応答性に優れる定着用ローラ、かかる定着用ローラを備えた定着装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の定着用ローラは、記録媒体に担持された未定着像を該記録媒体に定着させる定着処理に用いる定着用ローラであって、
ローラ本体と、
該ローラ本体の外周面側に設けられた弾性層と、
自己温度制御機能を有し、通電により発熱して、当該定着用ローラを加熱する発熱体とを備え、
該発熱体は、ポリマー中に、該ポリマーとの密着性を向上させる改質処理を施した炭素系物質を含んでなることを特徴とする。
これにより、温度制御の応答性に優れる定着用ローラが得られる。
【0007】
本発明の定着用ローラでは、前記改質処理は、前記ポリマーと反応し得る反応性基を有する化合物を、前記炭素系物質に共有結合または配位結合させる処理であることが好ましい。
これにより、炭素系物質に対して、強い結合力により、反応性基を有する化合物を付与することができ、この化合物が炭素系物質から容易に離脱するのを防止することができる。また、炭素系物質の特性(高い導電性)に寄与するグラフェン構造を破壊することがないため、より温度制御の応答性に優れた発熱体を得ることができる。
【0008】
本発明の定着用ローラでは、前記改質処理は、前記ポリマーとの相溶性が高い第2のポリマーの前駆体を前記炭素系物質の表面で反応させて、得られた前記第2のポリマーで前記炭素系物質の表面を被覆する処理であることが好ましい。
これにより、炭素系物質に対して、強いアンカー力(アンカー効果)により、第2のポリマーを付与することができ、この第2のポリマーが炭素系物質から容易に離脱するのを防止することができる。また、炭素系物質の特性(高い導電性)に寄与するグラフェン構造を破壊することがないため、より温度制御の応答性に優れた発熱体を得ることができる。
【0009】
本発明の定着用ローラでは、前記発熱体中の前記炭素系物質の含有量は、1〜30wt%であることが好ましい。
発熱体中の炭素系物質の含有量を前記範囲とすることにより、電圧を印加した際、発熱体の初期状態での電気抵抗を十分に低くすることができ、一方で、所定温度において急激な電気抵抗の上昇を確実に生じるようにすることができる。
【0010】
本発明の定着用ローラでは、前記発熱体は、前記ローラ本体の外周面上に、層状をなして設けられていることが好ましい。
これにより、定着用ローラの最外表面における温度ムラが生じるのを防止すること、すなわち、温度分布を均一にすることができる。これにより、記録媒体に未定着像を安定して定着させることができる、すなわち、印字品質を向上させることができる。
【0011】
本発明の定着用ローラでは、前記発熱体は、前記弾性層に接触して設けられ、
前記ポリマーは、前記弾性層の構成材料と相溶性の高いものであることが好ましい。
これにより、層状の発熱体と弾性層との密着性が向上し、これらの間における剥離を好適に防止することができる。
本発明の定着用ローラでは、前記ローラ本体は、円筒状をなし、
前記発熱体は、前記ローラ本体の内周面に接触するように設けられていることが好ましい。
これにより、発熱体に通電するための電極構成を簡易なものとすること、すなわち定着装置の構造の簡素化を図ることができ、製造コストを削減することができる。
【0012】
本発明の定着装置は、定着ローラと、該定着ローラに圧接される加圧ローラとを備え、前記定着ローラと前記加圧ローラとの間に、未定着像を担持した記録媒体を通過させることにより、該記録媒体に前記未定着像を定着させる定着装置であって、
前記定着ローラと前記加圧ローラのうちの少なくとも一方を、本発明の定着用ローラで構成したことを特徴とする。
これにより、温度制御の応答性に優れ、かつ信頼性の高い定着装置を提供することができる。
本発明の画像形成装置は、本発明の定着装置を備えることを特徴とする。
これにより、温度制御の応答性に優れ、かつ信頼性の高い画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の定着用ローラ、定着装置および画像形成装置の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
[画像形成装置]
まず、本発明の画像形成装置の構成について説明する。
図1は、本発明の定着装置を備えた本発明の画像形成装置の全体構成図である。
画像形成装置1の装置本体2内には、感光体ドラムで構成される像担持体3が配設されている。この像担持体3は、図示しない駆動手段によって図示矢印方向に回転駆動される。
【0014】
像担持体3の周囲には、その回転方向に沿って、像担持体3を一様に帯電するための帯電装置4と、像担持体3上に静電潜像を形成するための露光装置5と、静電潜像を現像するためのロータリー現像装置6と、像担持体3上に形成された単色のトナー像を一次転写するための中間転写装置7とが配設されている。
ロータリー現像装置6は、イエロー用現像装置6Y、マゼンタ用現像装置6M、シアン用現像装置6Cおよびブラック用現像装置6Kが支持フレーム8に装着され、支持フレーム8は図示しない駆動モータにより回転駆動される構成になっている。
【0015】
これらの複数の現像装置6Y、6C、6M、6Kは、像担持体3の1回転毎に選択的に1つの現像装置の現像ローラ6aが像担持体3に対向するように回転移動するようにされている。
なお、各現像装置6Y、6C、6M、6Kには各色のトナーが収納されたトナー収納部が形成されている。
【0016】
中間転写装置7は、駆動ローラ9および従動ローラ10と、両ローラにより図示矢印方向に駆動される中間転写ベルト11と、中間転写ベルト11の裏面で像担持体3に対向して配設された一次転写ローラ12と、中間転写ベルト11上の残留トナーを除去する転写ベルトクリーナ13と、駆動ローラ9に対向して配設され、中間転写ベルト11に形成された4色フルカラー像を記録媒体(紙等)上に転写するための二次転写ローラ14とを有している。
装置本体2の底部には、給紙カセット15が配設され、給紙カセット15内の記録媒体は、ピックアップローラ16、記録媒体搬送路17、二次転写ローラ14、定着装置19を経て排紙トレイ20に搬送されるように構成されている。
【0017】
次に、上記のような構成の画像形成装置の作用について説明する。
図示しないコンピュータからの画像形成信号が入力されると、像担持体3、現像装置6の現像ローラ6aおよび中間転写ベルト11が回転駆動し、先ず、像担持体3の外周面が帯電装置4によって一様に帯電され、一様に帯電された像担持体3の外周面に、露光装置5によって第1色目(例えばイエロー)の画像情報に応じた選択的な露光がなされ、イエローの静電潜像が形成される。
【0018】
像担持体3上に形成された潜像位置には、イエロー用現像装置6Yが回動してその現像ローラ6aが当接し、これによってイエローの静電潜像のトナー像が像担持体3上に形成され、次に、像担持体3上に形成されたトナー像は一次転写ローラ12により中間転写ベルト11上に転写される。このとき、二次転写ローラ14は中間転写ベルト11から離間されている。
【0019】
上記の処理が画像形成信号の第2色目、第3色目、第4色目に対応して、像担持体3と中間転写ベルト11の1回転による潜像形成、現像、転写が繰り返され、画像形成信号の内容に応じた4色のトナー像が中間転写ベルト11上において重ねられて転写される。
そして、このフルカラー画像が二次転写ローラ14に達するタイミングで、記録媒体が搬送路17から二次転写ローラ14に供給され、このとき、二次転写ローラ14が中間転写ベルト11に押圧されるとともに二次転写電圧が印加され、中間転写ベルト11上のフルカラートナー像(未定着像)が記録媒体上に転写される。
【0020】
そして、当該トナー像を担持した記録媒体を、定着ローラ21と加圧ローラ22との間、すなわち、定着装置19を通過させることにより、トナー像が加熱加圧され記録媒体に定着される。中間転写ベルト11上に残留しているトナーは転写ベルトクリーナ13によって除去される。
なお、両面印刷の場合には、定着装置19を出た記録媒体は、その後端が先端となるようにスイッチバックされ、両面印刷用搬送路23を経て、二次転写ローラ14に供給され、中間転写ベルト11上のフルカラートナー像が記録媒体上に転写され、再び定着装置19により加熱加圧され定着される。
定着装置19は、熱源を備える定着ローラ(本発明の定着用ローラ)21とこれに圧接される加圧ローラ22とを有し、定着ローラ21の軸と加圧ローラ22の軸とを結ぶ線は水平線からθの角度を有するように配置されている。なお、0°≦θ≦30°である。
【0021】
[定着装置]
以下、本発明の定着装置について、詳細に説明する。
図2〜図6は、図1に示す定着装置の詳細を示し、図2は、本発明の定着装置の一部破断面を示す斜視図であり、図3は、図2に示す定着装置の平面図であり、図4は、図2に示す加圧ローラおよび定着ローラの取付状態を示す側面図であり、図5は、図2に示す加圧ローラの断面図であり、図6は、図2に示す定着ローラの断面図である。
【0022】
図2および図3に示すように、定着装置19のハウジング24内には、定着ローラ21が回動自在に装着され、定着ローラ21の一端には駆動ギヤ28が連結されている。
そして、定着ローラ21に対向して加圧ローラ22が回動自在に装着されている。加圧ローラ22の軸方向長さは定着ローラ21のそれよりも短く、その空いたスペースに軸受25が設けられ、加圧ローラ22の両端は軸受25により支持されている。
【0023】
軸受25には加圧レバー26が回動可能に設けられ、加圧レバー26の一端とハウジング24間には加圧スプリング27が配設され、これにより加圧ローラ22と定着ローラ21とが加圧(圧接)されるように構成されている。
ハウジング24の両側面には、支持軸29、30が設けられており、この支持軸29、30にそれぞれ、定着ローラ21側の剥離部材31と、加圧ローラ22側の剥離部材32とが回動自在に装着されている。これにより、定着ローラ21と加圧ローラ22との軸方向でニップ部N(図4参照)の記録媒体搬送方向下流側に剥離部材31、32が配設されることになる。
【0024】
図5に示すように、加圧ローラ22は、金属製の筒体221と、筒体221に固定された回転軸222と、回転軸222を軸支持する軸受25と、筒体221の外周に設けられたシリコーンゴム等で構成された弾性層223と、弾性層223の表面に被覆された表層224とを有している。
表層224は、例えば、フッ素ゴム、フッ素樹脂(例えばパーテトラフロロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA))等から構成される。このような材料で構成された表層224を設けることにより、トナーが加圧ローラ22(表層224)に付着するのを防止することができる。
なお、回転軸222は、図示のように、中空体で構成されているのに限定されず、中実体で構成されていてもよい。
【0025】
図6に示すように、定着ローラ21は、ローラ本体210と、ローラ本体210の外周面(表面)に設けられた発熱層(面状ヒータ)213と、発熱層213の外周面(表面)に設けられた弾性層214と、弾性層214の外周面(表面)に設けられた表層215とを有している。
また、ローラ本体210は、筒体211と、筒体211内に固定された円筒状の回転軸216と、筒体211の外周面に設けられた絶縁層212とを備えている。
このような構成により、回転軸216を中心(軸)として、各部が一体で回転するとともに、発熱層(層状をなす発熱体)213により定着ローラ21の表面(外周面)が暖められるようになっている。
【0026】
筒体211および回転軸216は、それぞれ、熱伝導率が良好な材料、例えば、金属材料等で構成されている。
絶縁層212は、例えば、ポリイミド樹脂等の耐熱性樹脂、SiO等から構成することができる。また、絶縁層212の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100μm程度であるのが好ましく、30〜50μm程度であるのがより好ましい。
【0027】
なお、筒体211と絶縁層212とは、別体を接合したものに限らず、例えば絶縁性材料を用いて一体的に形成してもよい。また、回転軸216は、中空体に限らず、中実体で構成することもできる。
発熱層213は、絶縁層212の表面の全周に渡って形成されている。この発熱層213は、通電により発熱して定着ローラ21を加熱する。
【0028】
本発明では、この発熱層213の構成材料に特徴を有する。なお、この点(特徴)については、後に詳述する。
発熱層213の平均厚さ(図6中t)は、特に限定されないが、10〜500μm程度であるのが好ましく、50〜300μm程度であるのがより好ましい。発熱層213が薄過ぎると、均一な膜形成が難しく、膜欠陥を生じるおそれがある。また、発熱層213が厚過ぎると、熱サイクルによりクラックが生じる恐れがある。
【0029】
また、発熱層213の回転軸方向の両端部には、それぞれ、該発熱層213に通電する電極部としてのブラシ電極217が設けられている(図3参照)。これにより、定着ローラ21が回転しているか否かによらず、発熱層213に確実に通電を行なうことができる。
図6に示すように、弾性層214は、発熱層213の表面の全周に渡って形成されている。
【0030】
弾性層214の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴムのような各種ゴム材料(特に加硫処理したもの)や、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等の弾性材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
これらの中でも、弾性層214の構成材料としては、シリコーンゴムを主成分とするものが好ましい。シリコーンゴムは、特に耐熱性に優れるとともに、弾力性(可撓性)に優れる材料であることから好ましい。
また、弾性層214の厚さは、加圧ローラ22の弾性層223の厚さより小さいのが好ましい。これにより、図4に示すように、加圧ローラ22側が凹状をなすようなニップ部Nを確実に形成することができる。
【0032】
具体的には、弾性層214の平均厚さは、特に限定されないが、0.1〜3mm程度であるのが好ましく、0.5〜1.5mm程度であるのがより好ましい。
弾性層214の表面(外表面)は、その全周に沿って形成された表層(剥離層)215で覆われている。
この表層215は、主として樹脂材料で構成されている。この樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、パーテトラフロロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)のようなフッ素系樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これにより、トナーが定着ローラ21(表層215)に付着するのを防止することができる。
【0033】
表層215の平均厚さは、特に限定されないが、1〜100μm程度であるのが好ましく、30〜80μm程度であるのがより好ましい。
さて、本発明において発熱層213は、自己温度制御機能を有し、ポリマー(基材)中に、このポリマーとの密着性を向上させる改質処理を施した炭素系物質を含んでなるものである。
【0034】
ここで、自己温度制御機能とは、電圧を印加すると、発熱層213に電流が流れ、この際、ジュール熱により、発熱層213の温度が上昇するが、一旦所定温度に到達すると電気抵抗が急激に高くなり、すなわち、発熱層213に流れる電流量が抑制され、前記所定温度を維持する機能である。
この発熱層213では、初期状態(電圧無印加状態)において、炭素系物質同士が直接接触するか、または極めて接近した状態で存在することにより、電圧の印加により電流が流れる。一方、通電により発熱して発熱層213の温度が上昇すると、ポリマーが熱膨張し、これに追従して炭素系物質が移動して、炭素系物質同士が離間またはそれらの離間距離が増大し、これにより、電気抵抗が急激に上昇して、発熱層213に流れる電流量が抑制される。
【0035】
炭素系物質は、その表面が不活性であり、各種ポリマー(樹脂材料)との密着性が低い。このため、仮に、炭素系物質をそのままポリマー中に混合して発熱層を形成すると、ポリマーが熱膨張した場合に、これに追従した炭素系物質の移動が起こり難く、発熱層が所定温度に到達しても電気抵抗の急激な上昇が期待できない。すなわち、かかる発熱層は、温度制御の応答性に劣る。
【0036】
これに対して、本発明では、炭素系物質に予めポリマーとの密着性を向上させる改質処理を施しておき、このものをポリマー中に混合して発熱層213を形成するので、炭素系物質がポリマー(基材)に強固に固定される。このため、ポリマーの熱膨張に追従して炭素系物質の移動が確実に起こり、発熱層213が所定温度に到達すると急激に電気抵抗の上昇が生じる。すなわち、かかる発熱層213は、温度制御の応答性に優れる。
【0037】
また、予め炭素系物質に改質処理を施しておくことにより、ポリマー中への分散性が向上し、これにより、発熱層(発熱体)213に温度ムラが生じるのを防止することもできる。
基材となるポリマーとしては、特に限定されず、各種の熱可塑性樹脂や、各種の熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0038】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66、アラミド樹脂)、熱可塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
一方、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル(不飽和ポリエステル)樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0039】
本実施形態の場合、ポリマーは、弾性層214の構成材料との相溶性に優れるものが好ましい。これにより、発熱層213と弾性層214との密着性が向上し、これらの間における剥離を好適に防止することができる。
前述したように、弾性層214の構成材料には、シリコーンゴムを主成分とするものが好適に用いられるが、この場合、ポリマーには、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂(オルガノポリシロキサン)のうちの少なくとも1種を主成分とするものが好適に用いられる。
【0040】
一方、炭素系物質としては、例えば、炭素繊維、グラファイト、カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ、カップスタック、カーボンナノコール等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、改質処理としては、例えば、前記ポリマーと反応し得る反応性基を有する化合物を、炭素系物質に共有結合、配位結合、イオン結合等、化学的に結合(吸着)する処理や、ポリマーとの相溶性が高いポリマー(第2のポリマー)で炭素系物質の表面を被覆する処理が挙げられる。
【0041】
これらの中でも、改質処理としては、I:ポリマーと反応し得る反応性基を有する化合物を、炭素系物質に共有結合または配位結合させる(グラフト化する)処理や、II:第2のポリマーの前駆体を炭素系物質の表面で反応させて、得られた第2のポリマーで炭素系物質の表面を被覆する処理であるのが好ましい。
これらの方法によれば、炭素系物質に対して、強い結合力(Iの場合)や、強いアンカー力(IIの場合)により、反応性基を有する化合物や第2のポリマーを付与することができ、これらのものが炭素系物質から容易に離脱するのを防止することができる。また、炭素系物質の特性(高い導電性)に寄与するグラフェン構造を破壊することがないため、より温度制御の応答性に優れた発熱層213を得ることができる。
【0042】
なお、Iの場合において、A:反応性基を有する化合物を共有結合させる方法としては、例えば、炭素系物質の末端の炭素を酸化して、カルボキシル基を導入し、このカルボキシル基に、反応性基を有する化合物を結合させる方法が挙げられ、B:反応性基を有する化合物を配位結合させる方法としては、例えば、反応性基を有する化合物として、反応性基を導入したフェロセン、ニッケロセンのような金属錯体誘導体を用い、この金属錯体誘導体を配位子交換反応を利用して結合させる方法等が挙げられる。
【0043】
このような改質処理が施された炭素系物質(改質処理済み炭素系物質)の発熱層213中における含有量は、特に限定されないが、0.01〜30wt%程度であるのが好ましく、0.5〜20wt%程度であるのがより好ましい。発熱層213中の炭素系物質の含有量を前記範囲とすることにより、電圧を印加した際、発熱層213の初期状態での電気抵抗を十分に低くすることができ、一方で、所定温度において急激な電気抵抗の上昇を確実に生じるようにすることができる。
【0044】
なお、発熱層213の構成材料の組成を適宜設定することにより、発熱層213の初期状態(電圧無印加状態)における抵抗値や、自己温度制御可能な温度を調整することができる。例えば、発熱層213中における炭素系物質の含有量、ポリマーの種類等を設定することにより、発熱層213の初期状態における抵抗値を調整することができる。また、例えば、発熱層213中における炭素系物質の含有量、ポリマーの熱膨張等を設定することにより、自己温度制御可能な温度を調整することができる。
このような発熱層213は、例えば、基材となるポリマーまたはその前駆体と、表面改質した炭素系物質とを含有する液状材料を調製し、この液状材料をロール本体210の外周面に供給して液状被膜を形成し、この液状被膜に対して所定の処理(例えば乾燥、熱処理、紫外線照射等)を施すことにより形成することができる。
【0045】
液状材料の調製に用いる溶媒(または分散媒)としては、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルイソプロピルケトン(MIPK)、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、グリセリン等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、アニソール、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールエチルエーテル(カルビトール)等のエーテル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、ベンゼン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、あるいはこれらの混合溶媒等が挙げられる。
また、液状材料を供給する方法としては、例えば、ディップコート法、スピンコート法、スリットコート法、キャップコート法、ディスペンサー法、スプレーコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等の各種塗布法が好適に用いられる。
【0046】
次に、定着ローラ21の他の構成例について説明する。
図7は、他の構成例の定着ローラの断面図である。
以下、図7に示す定着ローラについて、図6に示す定着ローラとの相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
図7に示す定着ローラ21は、発熱体の構成が異なり、それ以外は、図6に示す定着ローラ21と同様である。
すなわち、図7に示す定着ローラ21は、発熱体として、ローラ本体210(回転軸216)の内周面に接触(摺接)するように設けられた発熱ブロック218で構成されている。
【0047】
以上のような定着ローラ21では、発熱体が定着ローラ21の最外表面の近傍や、ローラ本体210の内周面に直接接触して設けられているため、熱効率を低下させずに発熱体からの熱を記録媒体に確実に伝えることができる、すなわち、定着装置19では、熱効率が高い状態を安定して維持することができる。
また、このような構成により、定着ローラ21の表面を迅速に暖めること(すなわち、クイックヒート)が可能となる。これにより、定着装置19は、その起動時間を確実に短縮することができる。
【0048】
また、図6に示すように発熱体の全体形状を筒状(層状)とすることにより、定着ローラ21の最外表面における温度ムラが生じるのを防止すること、すなわち、温度分布を均一にすることができる。これにより、記録媒体に未定着像を安定して定着させることができる、すなわち、印字品質を向上させることができる。
また、図7に示すように発熱体をブロック状とすることにより、発熱体に通電するための電極構成を簡易なものとすること、すなわち定着装置19の構造の簡素化を図ることができ、製造コストを削減することができる。
【0049】
また、定着装置19では、従来のように熱源(加熱手段)としてハロゲンヒータを用いた場合よりも消費電力を抑えることができる。定着装置19では、通常、消費電力を200〜300W程度とすることができる。
また、例えば、はがきのような小型の用紙が定着装置19を通過した場合であっても、発熱体が自己温度制御機能を有するため、定着ローラ21の中心軸方向の端部が過剰に熱せられるのが防止される。これにより、定着ローラ21の温度調整によるスタンバイ時間を省略することができ、よって、連続通紙(連続印刷)を行なうことができる。
【0050】
また、定着装置19は、発熱体が自己温度制御機能を有することにより、所定温度以上に発熱することが防止され、安全性にも優れている。
また、発熱体の電極部は、ブラシ電極217に代えて、例えば、ベアリング電極またはローラ電極で構成してもよい。例えばベアリング電極は、ブラシ電極217よりも耐久性が高い傾向がある。
【0051】
以上、本発明の定着用ローラ、定着装置および画像形成装置を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
例えば、定着用ローラ、定着装置および画像形成装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、前記実施形態では、本発明の定着用ローラを定着ローラに適用した場合を代表に説明したが、本発明の定着用ローラは、加圧ローラに適用してもく、定着ローラおよび加圧ローラの双方に適用してもよい。
【実施例】
【0052】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.定着装置の製造
(実施例1)
<1> まず、鉄製の筒体(外径30mm×長さ300mm)を用意し、内側に鉄製の円筒状の回転軸を接合した
<2> 次に、筒体の外周面に、ポリイミド樹脂で構成される絶縁層(平均厚さ40μm×長さ300mm)を形成した。これにより、ローラ本体を得た。
【0053】
<3> 次に、絶縁層の外周面に、発熱層(平均厚さ100μm×長さ300mm)を形成した。
<3−1> まず、炭素繊維(日本カーボン社製)を用意した。
なお、炭素繊維は、平均長さ100μm、平均径10μmであった。
次に、この炭素繊維を、熱処理により酸化して、その端部にカルボキシル基を導入した。
次に、カルボキシル基を導入した炭素繊維を、エチレンジアミンに混合し、100℃×1時間加熱した。これにより、カルボキシル基とエチレンジアミンとを反応させた。これにより、炭素繊維に改質処理を施した。
【0054】
<3−2> 次に、この改質処理を施した炭素繊維を、ポリアミド酸(ポリイミド樹脂の前駆体)を20wt%となるように、トリエチレングリコールジメチルエーテルに溶解して調製した溶液に混合して混合液を調製した。
この混合液を、絶縁層の外周面にディップコート法により塗布した後、乾燥し、その後、80℃×0.5時間で予備加熱し、次いで、230℃×1時間で本加熱(焼成)を行った。これにより、ポリイミド樹脂中に、改質処理が施された炭素繊維を含んでなる発熱層を得た。なお、発熱層中の炭素繊維の含有量は、15wt%であった。
【0055】
<4> 次に、発熱層が形成されたローラ本体を型内に配置し、この状態で、シリコーンゴムの前駆体組成物(信越シリコーン社製)を型内に供給し、250℃×4時間加熱した。加熱終了後、弾性層が形成されたローラ本体を型から取り出した。
なお、得られた弾性層は、平均厚さ1.5mm×長さ300mmであった。
<5> 次に、弾性層を覆うように、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体製の熱収縮チューブを被せた後、熱処理を施して、表層(平均厚さ50μm×長さ300mm)を形成した。
以上のようにして、図6に示す定着ローラを得た。
そして、この定着ローラを組み込んで、図2等に示す定着装置を製造した。
【0056】
(実施例2)
発熱層中の炭素繊維の含有量が18wt%となるようにした以外は、前記実施例1と同様にして定着ローラを作製し、定着装置を製造した。
(実施例3)
発熱層中の炭素繊維の含有量が12wt%となるようにした以外は、前記実施例1と同様にして定着ローラを作製し、定着装置を製造した。
【0057】
(実施例4)
前記工程<3>において、以下の改質処理を施した炭素繊維を用いた以外は、前記実施例1と同様にして定着ローラを作製し、定着装置を製造した。
まず、前記実施例1と同様の炭素繊維を用意した。
次に、この炭素繊維を、カルボキシル基が導入されたフェロセン誘導体を1mmolとなるように、AlCl3水溶液に溶解して調製した溶液に混合した。これにより、炭素繊維にフェロセン誘導体を配位結合させた。
なお、発熱層中の炭素繊維の含有量は、15wt%であった。
【0058】
(実施例5)
前記工程<3>において、以下の改質処理を施した炭素繊維およびポリマーを用いた以外は、前記実施例1と同様にして定着ローラを作製し、定着装置を製造した。
まず、前記と同様の炭素繊維を用意した。
次に、この炭素繊維を、テトラメチルシクロテトラシロキサンに混合した後、回収して乾燥することにより架橋重合させた。これにより、炭素繊維の表面をポリメチルシロキサンで被覆した。
【0059】
次に、この改質処理を施した炭素繊維を、シリコーン樹脂の前駆体組成物に混合して混合液を調製した。
この混合液を、絶縁層の外周面にディップコート法により塗布した後、乾燥し、その後、150℃×40時間で予備加熱し、次いで、300℃×20時間で本加熱(焼成)を行った。これにより、シリコーン樹脂(メチルフェニルポリシロキサン)中に、改質処理が施された炭素繊維を含んでなる発熱層を得た。なお、発熱層中の炭素繊維の含有量は、15wt%であった。
(比較例)
前記工程<3>において、改質処理を省略した炭素繊維を用いた以外は、前記実施例1と同様にして定着ローラを作製し、定着装置を製造した。
【0060】
2.評価
各実施例および比較例で作製した定着ローラにおいて、それぞれ発熱層の軸方向の抵抗値と、発熱層の温度とを連続的に測定した。なお、抵抗値の測定には、四端針法装置(三菱化学社製)を用いた。
また、各実施例および比較例で製造した定着装置を、図1に示す画像形成装置に取り付け、印刷可能となるまでの時間を測定した。
これらの結果を、以下の表1に示す。なお、表1には、評価結果として、初期状態での抵抗値(表1中「抵抗値」と表記する。)、自己温度制御可能な温度(表1中「温度」と表記する。)、および印刷可能となるまでの時間(表1中「時間」と表記する。)を示した。
【0061】
【表1】

【0062】
表1に示すように、各実施例で製造した定着装置を取り付けた画像形成装置では、いずれも印刷可能となるまでの時間が短縮された。
また、各実施例で作製した定着ローラは、いずれも抵抗値が急激に変化する温度が存在し、それぞれその温度が異なっていた。
これに対して、比較例で製造した定着装置を取り付けた画像形成装置では、印刷可能となるまでの時間が長かった。
【0063】
また、比較例で作製した定着ローラは、抵抗値の変化が緩やかであった。
なお、図8に一例として、実施例1および比較例で作製した定着ローラにおける発熱層の温度の変化と抵抗値の変化との関係を表すグラフを示す。
また、前記と同様にして、図7に示す定着ローラを作製し、定着装置を製造して、前記と同様の評価を行ったところ、前記と同様の結果であった。なお、ブロック状の発熱体は、前記と同様にして混合物を調製し、この混合物を減圧下に脱泡した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の成形型内に充填、混合物を硬化させて作製した。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の定着装置を備えた本発明の画像形成装置の全体構成図である。
【図2】本発明の定着装置の一部破断面を示す斜視図である。
【図3】図2に示す定着装置の平面図である。
【図4】図2に示す加圧ローラおよび定着ローラの取付状態を示す側面図である。
【図5】図2に示す加圧ローラの断面図である。
【図6】図2に示す定着ローラの断面図である。
【図7】他の構成例の定着ローラの断面図である。
【図8】実施例1および比較例で作製した定着ローラにおける発熱層の温度の変化と抵抗値の変化との関係を表すグラフである。
【符号の説明】
【0065】
1……画像形成装置 2……装置本体 3……像担持体 4……帯電装置 5……露光装置 6……ロータリー現像装置 6Y……イエロー用現像装置 6M……マゼンタ用現像装置 6C……シアン用現像装置 6K……ブラック用現像装置 6a……現像ローラ 7……中間転写装置 8……支持フレーム 9……駆動ローラ 10……従動ローラ 11……中間転写ベルト 12……一次転写ローラ 13……転写ベルトクリーナ 14……二次転写ローラ 15……給紙カセット 16……ピックアップローラ 17……記録媒体搬送路 19……定着装置 20……排紙トレイ 21……定着ローラ 210……ローラ本体 211……筒体 212……絶縁層 213……発熱層 214……弾性層 215……表層 216……回転軸 217……ブラシ電極 218……発熱ブロック 22……加圧ローラ 221……筒体 222……回転軸 223……弾性層 224……表層 23……両面印刷用搬送路 24……ハウジング 25……軸受 26……加圧レバー 27……加圧スプリング 28……駆動ギヤ 29、30……支持軸 31、32……剥離部材 40……載置台 N……ニップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に担持された未定着像を該記録媒体に定着させる定着処理に用いる定着用ローラであって、
ローラ本体と、
該ローラ本体の外周面側に設けられた弾性層と、
自己温度制御機能を有し、通電により発熱して、当該定着用ローラを加熱する発熱体とを備え、
該発熱体は、ポリマー中に、該ポリマーとの密着性を向上させる改質処理を施した炭素系物質を含んでなることを特徴とする定着用ローラ。
【請求項2】
前記改質処理は、前記ポリマーと反応し得る反応性基を有する化合物を、前記炭素系物質に共有結合または配位結合させる処理である請求項1に記載の定着用ローラ。
【請求項3】
前記改質処理は、前記ポリマーとの相溶性が高い第2のポリマーの前駆体を前記炭素系物質の表面で反応させて、得られた前記第2のポリマーで前記炭素系物質の表面を被覆する処理である請求項1に記載の定着用ローラ。
【請求項4】
前記発熱体中の前記炭素系物質の含有量は、1〜30wt%である請求項1ないし3のいずれかに記載の定着用ローラ。
【請求項5】
前記発熱体は、前記ローラ本体の外周面上に、層状をなして設けられている請求項1ないし4のいずれかに記載の定着用ローラ。
【請求項6】
前記発熱体は、前記弾性層に接触して設けられ、
前記ポリマーは、前記弾性層の構成材料と相溶性の高いものである請求項5に記載の定着用ローラ。
【請求項7】
前記ローラ本体は、円筒状をなし、
前記発熱体は、前記ローラ本体の内周面に接触するように設けられている請求項1ないし5のいずれかに記載の定着用ローラ。
【請求項8】
定着ローラと、該定着ローラに圧接される加圧ローラとを備え、前記定着ローラと前記加圧ローラとの間に、未定着像を担持した記録媒体を通過させることにより、該記録媒体に前記未定着像を定着させる定着装置であって、
前記定着ローラと前記加圧ローラのうちの少なくとも一方を、請求項1ないし7のいずれかに記載の定着用ローラで構成したことを特徴とする定着装置。
【請求項9】
請求項8に記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−156363(P2007−156363A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−355429(P2005−355429)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】