説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】 スポンジ状の弾性層を備えた低硬度の弾性ローラを備え、長期的に定着性を維持することができる定着装置、及びこれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】 スポンジ状の弾性層であるゴム層41aを備え、その硬度がアスカーC硬度で28[Hs]以上、34[Hs]以下となる低硬度の弾性ローラである定着ローラ41と、定着ローラ41よりも硬度が高く、定着ローラ41との間で定着ニップを形成する高硬度ローラである加圧ローラ45とを備える定着装置4で、定着ローラ41のゴム層41aの密度を、0.38[g/cm]以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に用いられる定着装置に係り、詳しくは、複数の支持部材に張架された定着ベルトを有する定着装置、及びこの定着装置を備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を利用した画像形成装置のトナー像形成手段としては、像担持体である感光の表面に静電潜像を形成し、感光上の静電潜像を現像剤であるトナー等によって現像して可視像化するものがある。そして、現像された画像は転写装置により記録体に転写され、未定着の画像担持した記録体は、圧力や熱等を用いる定着装置によってトナー画像を定着され、定着された記録体は、画像形成装置外に排出される。また、定着装置には、対向するローラもしくはベルトもしくはそれらの組み合わせによりなる、2つの定着回転体が配置されており、記録体を挟みこみ、熱および圧力を加え、トナー像を記録体上に定着する。
【0003】
2つの定着回転体が記録体を挟み込む箇所では、2つの定着回転体がローラ対である場合だけでなく、ベルトを備えた構成であっても、ベルトを介して2つのローラが対向している。そして、二つのローラのうち、比較的硬度の低い一方の弾性ローラが、比較的硬度の高い他方の高硬度ローラよりも凹んだ状態で互いに押圧し、定着ニップを形成している。また、ベルトを備えているものであれば、二つのローラはベルトを介して互いに押圧し、定着ニップを形成している。
【0004】
近年の画像形成装置を小型化する傾向に伴い、定着装置の小型化を実現するため、定着ニップを形成する2つのローラを小径化する必要がある。弾性ローラの硬度が同じであっても、ローラの径が小さくなると定着ニップでの変形量が小さくなり、定着ニップの幅が減少することで、定着性の低下に繋がる。2つのローラを小径化しても定着ニップの幅を確保する定着装置として、スポンジ状の弾性層を備え、より低硬度の弾性ローラを用いるものがある。
スポンジ状の弾性層を備えた低硬度のローラを用いた弾性ローラとしては、特許文献1、特許文献2に記載のものがある。特許文献1には、アスカーC硬度が、5[Hs]以上、40[Hs]以下となる弾性ローラが記載されており、特許文献2には、アスカーC硬度が、10[Hs]以上、50[Hs]以下となる弾性ローラが記載されている。
低硬度の弾性ローラを用いることにより、2つのローラを小径化しても、定着ニップの幅を確保することができ、定着性を維持することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2005−49455号公報
【特許文献2】特許3506880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、スポンジ状の弾性層を備えた低硬度の低硬度の弾性ローラを用いて長期間使用すると、定着ニップの幅が減少することがあった。長期間使用することによって定着ニップ幅が減少する理由としては以下のことが考えられる。
【0007】
この弾性層はその内部に壁に仕切られた多くの空孔(セル)を形成することでスポンジ状となっており、圧縮されセルがつぶれた場合、セルを形成する壁の復元力が働くことにより、表面弾性力が得られ、所望のニップ圧を得ることができる。このようなスポンジ状の弾性層に、繰り返しの負荷がかかってセルを形成する壁が破れることがある(以下、破泡と呼ぶ)。破泡が生じた箇所では復元力が低下する。そして、破泡が進行すると、弾性ローラの表面弾性力が低下し、ローラの測定値としてはアスカーC硬度が低下する。
ここで、弾性ローラの弾性層に破泡が進行する際の定着ニップの変化について、図11を用いて説明する。図11(a)は、破泡が生じる前の定着ニップ近傍の拡大説明図であり、図11(b)は、破泡が進行した状態の定着ニップ近傍の拡大説明図である。
図11に示すように弾性ローラ51と高硬度ローラ52とが互いに押圧し、弾性ローラ51が大きく変形して、定着ニップを形成する。このとき、定着ニップにおける弾性ローラ51と高硬度ローラ52との表面移動方向を図中矢印Aで示す。
弾性ローラ51の表面弾性力の低下にともない、ニップ入口Bとニップ出口Cとを形成していた弾性ローラ51の弾性層部分が高硬度ローラ52側から徐々に離れ、定着ニップの幅Wが減少すると考えられる。
【0008】
定着ニップの幅が減少すると、定着ニップを通過する記録体上のトナー像に対して、熱及び圧力を十分に加えることができず、トナー像の記録体に対する定着性が悪化するという問題が生じるおそれがある。
【0009】
本発明は、以上の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、スポンジ状の弾性層を備えた低硬度の弾性ローラを備え、長期的に定着性を維持することができる定着装置、及びこれを備えた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、スポンジ状の弾性層を備える弾性ローラと、該弾性ローラよりも硬度が高く、該弾性ローラとの間で定着ニップを形成する高硬度ローラと、該定着ニップを加熱するための加熱手段とを備える定着装置において、該弾性ローラの硬度はアスカーC硬度で28[Hs]以上、34[Hs]以下であり、該弾性層の密度が、0.38[g/cm]以上であることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の定着装置において上記弾性層の材料がゴムであることを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2の定着装置において、複数の張架部材によって支持されるベルト形状で該複数の張架部材の一つが上記弾性ローラであり、上記加熱手段によって加熱される定着ベルトを備え、上記高硬度ローラは、該定着ベルトを介して該弾性ローラを押圧し、該弾性ローラとの間で上記定着ニップを形成することを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1または2の定着装置において、上記弾性ローラは上記定着ニップで記録体上の未定着画像を担持する面と対向する定着ローラであり、上記高硬度ローラは該定着ニップで該記録体の該未定着画像を担持する面の裏面側から加圧する加圧ローラであることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1、2、3または4の定着装置において、上記弾性ローラのアスカーC硬度をAt、上記高硬度ローラのアスカーC硬度をAkとすると、Ak>At+20[Hs]の関係を満たすことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1、2、3、4または5の定着装置において、上記定着ニップを形成していない状態での上記弾性層の厚さをSt、該定着ニップを形成した状態での該弾性層の厚さの最小値をStminとすると、Stmin/St≧0.75の関係を満たすことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1、2、3、4、5または6の定着装置において、上記弾性ローラは上記弾性層と金属製の芯金とから構成することを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項7の定着装置において、上記芯金の半径をRs、上記弾性層の厚さStをとすると、St/Rs≦1.5の関係を満たすことを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項8の定着装置において、上記芯金の半径をRsと、上記弾性層の厚さStとが、1.2≦St/Rs≦1.5の関係を満たすことを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、スポンジ状の弾性層と金属製の芯金とを備える弾性ローラと、該弾性ローラよりも硬度が高く、該弾性ローラとの間で定着ニップを形成する高硬度ローラと、該定着ニップを加熱する加熱手段とを備える定着装置において、該弾性ローラの硬度はアスカーC硬度で28[Hs]以上、34[Hs]以下であり、該弾性層の密度が該弾性ローラの半径方向について異なり、該芯金に近いほど該弾性層の密度が高いことを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項10の定着装置において、上記弾性層は、単一構造物からなり、芯金側となる内側ほど空孔を小さくし、外側ほど該空孔が大きくなるように形成したことを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項10または11の定着装置において上記弾性層の材料がゴムであることを特徴とするものである。
また、請求項13の発明は、請求項10、11または12の定着装置において、複数の張架部材によって支持されるベルト形状で該複数の張架部材の一つが上記弾性ローラであり、上記加熱手段によって加熱される定着ベルトを備え、上記高硬度ローラは、該定着ベルトを介して該弾性ローラを押圧し、該弾性ローラとの間で上記定着ニップを形成することを特徴とするものである。
また、請求項14の発明は、請求項10、11、12または13の定着装置において、上記弾性ローラは上記定着ニップで記録体上の未定着画像を担持する面と対向する定着ローラであり、上記高硬度ローラは該定着ニップで該記録体の該未定着画像を担持する面の裏面側から加圧する加圧ローラであることを特徴とするものである。
また、請求項15の発明は、請求項10、11、12、13または14の定着装置において、上記弾性ローラのアスカーC硬度をAt、上記高硬度ローラのアスカーC硬度をAkとすると、Ak>At+20[Hs]の関係を満たすことを特徴とするものである。
また、請求項16の発明は、記録体にトナー像を形成するトナー像形成手段と、該記録体にトナー像を定着させる定着手段とを備える画像形成装置において、該定着手段として、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15に記載の定着装置を備えることを特徴とするものである。
【0011】
上記請求項1の構成を備えた定着装置においては、スポンジ状の弾性層を備え、その硬度がアスカーC硬度で28[Hs]以上、34[Hs]以下となる低硬度の弾性ローラを備える定着装置を用いて、表1を用いて後述する本発明者らの実験の結果、弾性ローラの弾性層の密度を、0.38[g/cm]以上とすることで、長期間使用しても定着ニップの幅が減少することを抑制できることがわかった。
また、上記請求項10の構成を備えた定着装置においては、スポンジ状の弾性層と金属製の芯金とを備え、その硬度がアスカーC硬度で28[Hs]以上、34[Hs]以下となる低硬度の弾性ローラについて、芯金に近いほど弾性層の密度を高くすることで、弾性層の密度が略一様なものに比べて、長期間使用した際に定着ニップの幅が減少することを抑制できる。これは、以下の理由による。すなわち、回転時に弾性ローラの弾性層に働く応力は、芯金との界面で最大となり、芯金に近いほど大きくなる。応力が大きいとセルを形成する壁にかかる負荷が大きくなり、破泡が生じやすくなる。よって、応力が大きくなり、破泡が生じ易い芯金に近い箇所ほど密度を高くし、強度を高めることにより、破泡の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1乃至16の発明によれば、長期使用した際に定着ニップの幅が減少することを抑制することができるため、長期的に定着性を維持することができるという優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[実施形態1]
以下、本発明を、画像形成装置であるカラーレーザプリンタ(以下、単に「プリンタ100」という)に適用した一つ目の実施形態について説明する。図1は、実施形態1のプリンタ100の概略構成図である。
プリンタ100は、イエロー・シアン・マゼンタ・ブラックの4つのトナー像形成手段を横に並べて配置してタンデム画像形成部を構成する。タンデム画像形成部においては、個々のトナー像形成手段であるトナー像形成ユニット101Y、101C、101M、101Kが、図中有左から順に配置されている。ここで、各符号の添字Y、C、M、Kは、それぞれイエロー、マゼンダ、シアン、黒用の部材であることを示す。また、タンデム画像形成部においては、個々のトナー像形成ユニット101Y,C,M,Kは、潜像担持体としてのドラム状の感光体21Y,C,M,Kのまわりに、帯電装置、現像装置10Y,C,M,K、感光体クリーニング装置等を備えている。プリンタ100の上部には、イエロー、シアン、マゼンタ、黒の各色トナーが充填されたトナーボトル2Y,C,M,Kが配置されている。そして、このトナーボトル2Y,C,M,Kから図示しない搬送経路によって、所定の補給量だけ各色の現像装置10Y,C,M,K、に各色トナーが補給される。
【0014】
また、タンデム画像形成部の下部に潜像形成手段としての光書込ユニット9を設ける。この光書込ユニット9は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を備え、画像データに基づいて各感光体21の表面にレーザ光を走査しながら照射するように構成されている。
【0015】
また、タンデム画像形成部の直ぐ上には、中間転写体として無端ベルト状の中間転写ベルト1を設けている。この中間転写ベルト1は、支持ローラ1a、1bに掛け回され、この支持ローラのうち駆動ローラ1aの回転軸には駆動源としての図示しない駆動モータが連結されている。この駆動モータを駆動させると、中間転写ベルト1が図中反時計回りに回転移動するとともに、従動可能な支持ローラ1bが回転する。中間転写ベルト1の内側には、感光体21Y,C,M,K上に形成されたトナー像を中間転写ベルト1上に転写するための一次転写装置11Y,C,M,Kを設ける。
【0016】
また、一次転写装置11Y,C,M,Kより中間転写ベルト1の駆動方向下流に二次転写装置としての二次転写ローラ5を設ける。この二次転写ローラ5と中間転写ベルト1を挟んで反対の側には、支持ローラ1bが配置されており、押部材としての機能を果たしている。また、記録体としての転写紙Pを収容する給紙カセット8、給紙コロ7、レジストローラ6等を備えている。さらに、二次転写ローラ5によりトナー像を転写された転写紙Pの進行方向に関して二次転写ローラ5の下流部には、転写紙P上の画像を定着する定着装置4、排紙ローラ3を備えている。
【0017】
つぎに、プリンタ100の動作を説明する。個々のトナー像形成ユニット101Y,C,M,Kで、その感光体21Y,C,M,Kを回転し、感光体21Y,C,M,Kの回転とともに、まず帯電装置17Y,C,M,Kで感光体21Y,C,M,Kの表面を一様に帯電する。次いで画像データを光書込ユニット9からのレーザによる書込み光を照射して感光体21Y,C,M,B上に静電潜像を形成する。その後、現像装置10Y,C,M,Kによりトナーが付着され静電潜像を可視像化することで各感光体ド21Y,C,M,K上にそれぞれ、イエロー・シアン・マゼンタ・ブラックの単色画像を形成する。また、不図示の駆動モータで駆動ローラ1aを回転駆動して他の従動ローラ1b、二次転写ローラ5を従動回転し、中間転写ベルト1を回転搬送して、その可視像を一次転写装置11Y,C,M,Kで中間転写ベルト1上に順次転写する。これによって中間転写ベルト1上に合成カラー画像を形成する。画像転写後の感光体21Y,C,M,Kの表面は感光体クリーニング装置で残留トナーを除去して清掃して再度の画像形成に備える。
【0018】
また、上述の画像形成のタイミングにあわせて、給紙カセット8からは転写紙Pが給紙コロ7により繰り出され、レジストローラ6まで搬送され、一旦停止する。そして、上記画像形成動作とタイミングを取りながら、二次転写ローラ5と中間転写ベルト1の間に搬送される。ここで、中間転写ベルト1と二次転写ローラ5とは転写紙Pを挟んでいわゆる二次転写ニップを形成し、二次転写ローラ5にて中間転写ベルト1上のトナー像を記録媒体S上に二次転写する。
【0019】
画像転写後の転写紙Pは定着装置4へと送り込まれ、定着装置4で熱と圧力とを加えて転写画像を定着して機外へ排出される。一方、画像転写後の中間転写ベルト1は、中間転写体クリーニング装置12で、画像転写後に中間転写ベルト1上に残留する残留トナーを除去し、タンデム画像形成部による再度の画像形成に備える。
【0020】
なお、各色のトナー像形成ユニット101Y、C、M、Kは、一体的に形成され、本体に脱着可能な着脱可能なプロセスカートリッジとなっている。そして、これらの一体的なプロセスカートリッジは、プリンタ100本体に固定された図示しないガイドレールに沿って、プリンタ100本体の手前側に引き出すことができる。また、このプロセスカートリッジをプリンタ100本体の奥側に押し込むことによって、トナー像形成ユニット101Y、C、M、Kを所定の位置に装填することができる。
【0021】
ここで、各トナー像形成ユニット101Y、C、M、Kのプロセスカートリッジは、それぞれ同じ構成、動作をおこなうものとなっている。そこで、以下各符号の添字Y、C、M、Kを省略し、このトナー像形成ユニット101Y、C、M、Kのプロセスカートリッジの説明を詳細におこなう。図2に、トナー像形成ユニット101Y、C、M、Kであるプロセスカートリッジ一つの概略構成を拡大して示す。
図2において、図中時計方向に回転する感光体21のまわりに、帯電装置としての帯電ローラ17、現像装置10、感光体クリーニング装置としてのファーブラシ36、クリーニングブレード33等が順に配置されている。このように、プリンタ100では、帯電ローラ17は感光体21の鉛直下方に配置されている。また、帯電ローラ17の下方には帯電ローラ17の表面に連れ周りで回転可能に当接してクリーニングする帯電クリーニングローラとしてのクリーナローラ18を備えている。また、感光体クリーニング装置はファーブラシ36、クリーニングブレード33、感光体21より掻き取られた廃トナーをプロセスカートリッジ外に排出する廃トナー搬送コイル34を備えている。
【0022】
図3は、定着装置4の概略構成図である。定着装置4は2つの対向するローラとして、スポンジ状の弾性層を備えた弾性ローラである定着ローラ41と、定着ローラ41と定着ベルト43を介して対向し、定着ローラ41よりも硬度が高い高硬度ローラである加圧ローラ45とを備える。図3に示すように、定着装置4では、無端状の定着ベルト43が複数の張架部材としての加熱ローラ42と定着ローラ41とに張架されている。
定着ローラ41は、ゴム製の弾性層であるゴム層41aと、金属製の芯金41bとから構成される。加熱ローラ42は、金属製の芯金にハロゲンランプ等の加熱手段であるヒータ44を内蔵しており、この輻射熱によって定着ベルト43を内側から加熱している。また、加熱ローラ42と定着ベルト43を介して対抗する位置には、温度センサ素子であるサーミスタ48を配置し、サーミスタ48の温度検知に基づき、その設定温度となるようにヒータ44を制御している。
【0023】
加圧ローラ45は、定着ベルト43を介して定着ローラ41を加圧している。また、加圧ローラ45には、図示しない駆動手段によって回転しており、これにより、定着ローラ41が従動回転するようになっている。また、定着装置4には、定着ベルト43の中央部付近に接触するテンションローラ47が設けられている。このテンションローラ47は、バネによってベルトを内側へ加圧しており、これにより、定着ベルト43にテンションが付与されている。なお、実施形態1においては、駆動手段を加圧ローラ45に設けているが、定着ローラ41に設け、加圧ローラ45を従動回転させてもよい。また、定着ニップの用紙搬送方向下流側には、分離爪46が設けられており、転写紙Pが定着ベルト43に巻き付かないようにしている。
【0024】
また、この定着装置4には、溶融したトナーが定着ベルトに付着しないよう、離型剤塗布装置140が設けられている。離型剤塗布装置140は、定着ベルト43に圧接して定着ベルト43にとも回りして、定着ベルト43に離型剤を供給する離型剤塗布ローラ110が設けられている。離型剤塗布ローラ110は、スポンジなどの浸透性のある部材で構成されており、その内部に離型剤として例えばシリコーンオイルが貯溜されている。離型剤塗布ローラ110は、定着ベルト43にとも回りすることで、定着ベルト43と等速回転でき、これにより定着ベルト43の表面に均一に離型剤が塗布される。このように、定着ベルト43に均一の離型剤が塗布されることで、定着ベルト43に溶融したトナーが付着するいわゆるオフセットが抑制される。また、離型剤塗布装置140は、離型剤塗布ローラ110に圧接して離型剤塗布ローラ110に付着した紙粉などを除去するクリーニングローラ120が設けられている。クリーニングローラ120は、例えば、その表面がブラシ状となっており、離型剤塗布ローラ110にとも回りしている。また、上記ブラシを、導電性を有する部材で構成し、静電的に離型剤塗布ローラ110に付着した紙粉などを除去するようにしてもよい。
図3においては、離型剤塗布装置140は、定着ベルト43に設けているが、これに限られず、加圧ローラ45に離型剤塗布装置140を設けても良い。
【0025】
定着装置4において、加圧ローラ45はアルミ又は鉄等の芯金の上にシリコーンゴムなどの弾性層を設けてあり、表層はPFAやPTFEの離型層となっている。定着ベルト43はニッケル、ポリイミドなどの基材にPFAやPTFEなどの離型層を有するもの、または、その中間にシリコーンゴムなどの弾性層を設けたもので構成されている。定着ベルト43は定着ローラ41と加熱ローラ42に掛け渡されており、外側からテンションローラ47に押圧され適切な張力に保たれている。
定着ローラ41は金属の芯金41bとシリコーンゴムからなるゴム層41aとから構成される。加熱ローラ42はアルミ、又は、鉄の中空ローラで内部にヒータ44を有している。ヒータ44としてはハロゲンヒータに限るものではなく、IHの場合もある。
定着装置4のように定着ベルトを用いた方式では、一般に転写紙Pの定着後の分離性を向上させるために、相対的に加圧ローラ45よりも定着ローラ41を柔らかくしている。このことにより、定着ニップ通過後の用紙搬送方向が加圧側(非画像面)になるため、(画像面の)トナーによる粘着性に打ち勝ち分離しやすくなる。また、広い定着ニップを取るためにできるだけ定着ローラ41を低硬度にする。なお、定着ベルト43と接触する定着ローラ41としては断熱性が高い(熱伝導率が低い)ものを用いることで、暖められた定着ベルト43の熱が定着ローラ41に移動しにくくなり、定着ベルト43が冷めにくくなるため、ウォームアップが早くなる。よって、ウォームアップを早くするように高断熱化する目的から低熱伝導材料であるスポンジ状のゴム層を有した定着ローラ41が用いられている。また、低熱容量のベルト状の定着ベルト43を用いることにより、定着ニップに効率よく熱を伝えることができるので、ウォームアップを早くすることができる。
【0026】
定着ローラ41の直径は29[mm]であり、硬度はアスカーC硬度で28[Hs]〜34[Hs]の範囲のものを用いることができ、定着装置4では、アスカーC硬度で31[Hs]のものを用いた。
加圧ローラ45の直径は30[mm]であり、硬度はアスカーC硬度で、定着ローラ41よりも20[Hs]以上大きい、57±3[Hs]のものを用い、定着装置4では、アスカーC硬度で57[Hs]となるものを用いた。
また、定着ニップの幅は、8[mm]〜9[mm]であり、二つのローラの半径を合わせた長さから、二つの軸間距離を引いた、ローラの凹み量が2.2[mm]〜2.3[mm]となるように、加圧ローラ45の設置位置を設定する。
定着ニップでの線速は、高速の画像形成を実現するために180[m/s]以上とし、定着装置4では182[m/s]である。
【0027】
転写紙Pは定着ローラ41と加圧ローラ45とにより形成される定着ニップに向かって下方から進入する。定着ニップにおいて所定の熱と圧力を与えて画像を定着させ、分離爪46によりガイドされて図中上方に搬送される。
【0028】
近年、画像形成装置の小型化の要望に伴い、定着装置4でも、定着ローラ41、加圧ローラ45の小径化が求められている。定着ローラ41及び加圧ローラ45としては、例えば直径20[mm]〜40[mm]の範囲のものを用いる。定着ローラ41、加圧ローラ45の小径化することで、定着装置4が小型化でき、定着装置4の小型化により低熱容量になるため、ウォームアップが早くなり、また無駄な放熱が少なくなるので、省エネにもなる。
しかしながら、反面、画像形成装置の高速化に伴い、トナーに与える熱量を確保するために、定着ニップの幅は広くする必要がある。ローラを小径化し、かつ定着ニップ幅を広く取るためには少なくとも一方のローラをさらに低硬度化し、互いに高荷重で押しあわせなければならない。
そのため、従来よりもゴム層にかかるストレスが増大しており、定着ローラを構成するスポンジ層が破泡しやすくなっている。
さらに、定着ローラ41のゴム層41aが、スポンジゴムであるときの問題として定着ローラ41の耐久性がある。この現象は、ゴム層41aが高温に保たれており、スポンジゴムの機械的強度が低下している状態において、定着ローラ41が回転するごとに、(繰返しニップ部が変形することで)スポンジ内の空孔(セル)を形成するゴムが疲労し、発生するものと考えられている。
また、とりわけ定着ローラ41もしくは加圧ローラ45のどちらかのみに駆動力がかかっている場合は、一方が回転開始(もしくは回転停止)をするときに、他方のローラの負荷(または慣性力)により定着ローラ41のゴム層41aはせん断力を受け、さらに耐久性が劣化するという問題がある。
【0029】
以下、図4を用いて破泡の発生について説明する。
図4(a)は、定着ローラ41の概略断面図であり、図4(b)は、図4(a)中の領域αの拡大図である。さらに、図4(c)は、領域αで破泡が生じた状態の説明図である。
図4(a)に示すように、定着ローラ41の弾性層であるゴム層41aは、その内部に多くの空孔(セル)を形成するスポンジ状となっている。そして、使用開始前のゴム層41aは、図4(b)に示すように、セル41cは壁部41dによって仕切られている。定着ニップではセル41cが圧縮されることでゴム層41aが凹んだ状態となり、圧縮されたセル41cを形成する壁部41dの復元力が働くことにより、定着ニップにニップ圧が働き、定着ニップ通過後のゴム層41aが元の形状に復元する。このようなゴム層41aが、定着ニップで凹んだり、定着ニップを通過して復元したりすることで、ゴム層41aに繰り返し負荷がかかって、セル41cを構成する壁部41dが破れ、図4(c)に示すように隣り合うセル41cが連通した破泡した状態となる。
【0030】
破泡が生じた箇所では壁部41dによる復元力が低下し、破泡が広がると定着ローラ41の表面弾性力が低下し、ローラの測定値としてはアスカーC硬度が低下する。このとき、ゴム層41aの密度が低ければ低いほど、すなわち壁部41dを構成するゴムの部分が少ないほど、個々のセル41cの壁部41dは薄くなり破壊しやすくなる。
【0031】
[実験1]
実験1として、図3に示す構成の定着装置4を用いて、定着ローラ41のゴム層41aの密度の値を振って、6万枚の画像形成を行った後のセル41cの破壊状況の評価を行った。セル41cの破壊状況の評価としては、定着ニップが所定の幅(8[mm])以下となったものをNGとした。これは、セル41cの破壊が進行すると、定着ローラ41の表面弾性力が低下(ローラの測定値としてはアスカーC硬度が低下)し、定着ニップでの定着ローラ41による圧力が低下するため定着ニップ幅が減少するためである。
以下に実験条件を示す。
定着ローラ
直径:29[mm]、芯金(鉄製)の直径:10[mm]、ゴム層(シリコーンゴム製)の厚さ:9.5[mm]、アスカーC硬度:31[Hs]、ゴム層の密度:0.37[g/cm]、0.38[g/cm]、0.39[g/cm]、0.4[g/cm
加圧ローラ
直径:30[mm]、芯金(鉄製)の直径:23[mm]、ゴム層(シリコーンゴム製)の厚さ:3.5[mm]、アスカーC硬度:57[Hs]
加圧ローラ表面の線速:182[mm]
軸間距離:26.2[mm](加圧ローラの押圧力200[N]、凹み量:3.3[mm])
なお、ゴム層の密度は、以下の方法で測定する。
成型前の芯金の質量と体積とを量った後にローラを成型する。そして、ローラの質量と体積とを量り、芯金分の質量と体積とを引いて、ゴム層の質量と体積とを算出し、密度(質量/体積)を算出する。体積の測定は芯金のみの状態と、成型したローラの状態とを水に沈めることで測定することができる。
また、ローラ形状であれば、ゴム層は単なる円筒状であるので、その内径、外形及び長さから幾何学的に算出することができる。
【0032】
実験1の結果を表1に示す。
【表1】

【0033】
表1より、0.38[g/cm]以上の密度のゴム層41aを備える定着ローラ41であれば、6万枚プリント後においても、定着ニップが所定の幅を保つことが出来、従来の定着ローラよりも高耐久となることが明らかになった。
図5は、図4(b)に示す状態よりもゴム層41aのゴム密度が高い状態の説明図である。
ゴム密度が高い状態としては、図5(a)に示すように、壁部41dの厚さはあまり変わらず、径が小さいセル41cが増加した状態や、図5(b)に示すように、セル41cの数はあまり変わらず、セル41cの径が小さくなる状態が考えられる。
図5(a)の状態であれば、壁部41dの強度はあまり変わらなくても、セル41cと同様に壁部41dの数も増化したため、一つ一つの壁部41dに対する負荷が軽減し、耐久性を向上することができると考えられる。
一方、図5(b)の状態であれば、壁部41dの数は変わらなくても、壁部41dが厚くなるため、一つ一つの壁部41dの強度が増し、耐久性を向上することができると考えられる。
このように、低硬度でありながらも、ある一定以上のゴム密度以上とすることで、壁部41dの耐久性が向上し、セルの破壊が防止されローラの耐久性を向上する。
なお、上記軸間距離は使用前の軸間距離であり、引っ張りスプリングによって加圧ローラ45を加圧方向に200[N]で押圧した際の軸間距離である。経時使用による定着ローラ41の硬度低下に伴ない軸間距離は狭まり、軸間距離が狭まると押圧力は200[N]よりも低減する。軸間距離が狭まるとニップ幅が増加することが考えられるが、実験1では硬度が低下した定着ローラ41を用いたものではニップ幅は低下した。これは、軸間距離が狭まることによるニップの増加量よりも、定着ローラ41の表面弾性力が低下することによる定着ニップの減少量の方が大きいためと考えられる。
また、実験1では、定着ニップを形成する構成として、加圧ローラ45を押圧手段である引っ張りスプリングにより定着ローラ41に押圧する構成を採用した。定着ニップを形成する構成としては、押圧手段を用いた構成に限らず、定着ローラ41と加圧ローラ45との半径の和よりも二つのローラの軸間距離が凹み量分小さくなるように、定着ローラ41と加圧ローラ45とを設置することで定着ニップを形成する構成としてもよい。
【0034】
定着装置4において、定着ニップを形成するときは、加圧ローラ45に押し込まれて定着ローラ41は変形する。実験1で、6万枚プリント後でも定着ニップの幅が減少せず、定着性を維持できる定着ローラであっても、ゴム層41aの変形率が大きい定着ローラ41であると、6万枚を越えるプリントを行った際に定着ニップの幅が減少することがある。
図6に定着ニップを形成する定着ローラ41と加圧ローラ45との概略説明図である。
図6において、Stはゴム層41aの層厚、Stminは定着ニップにおけるゴム層41aの層厚、そして、Rsは芯金41bの半径を示している。このとき、加圧ローラ45に押し込まれた状態でのゴム層41aの層厚であるStminの値が大きいほど変形量が小さくゴムに付与される応力が少なくて済むため、破泡が発生しにくくなる。
【0035】
[実験2]
実験2として、図3及び図6に示す構成の定着装置4を用いて、定着ローラ41に対して加圧ローラ45の硬度がアスカーC硬度で20[Hs]以上高くしたローラ対において、定着ニップにおけるゴム層41aの層厚であるStminの値を振って、8万枚のプリントを行った後のセル41cの破壊状況の評価を行った。セル破壊の評価は実験1と同様に定着ニップの幅の減少によって評価した。また、定着ニップにおけるゴム層41aの層厚であるStminの値は、軸間距離を調節し、定着ローラ41の凹み量を変化させることで調節した。
以下に実験条件を示す。
定着ローラ
直径:29[mm]、芯金(鉄製)の直径:10[mm](Rs=5[mm])、ゴム層(シリコーンゴム製)の厚さ(St):9.5[mm]、アスカーC硬度:31[Hs]、ゴム層の密度:0.38[g/cm
加圧ローラ
直径:30[mm]、芯金(鉄製)の直径:23[mm]、ゴム層(シリコーンゴム製)の厚さ:3.5[mm]、アスカーC硬度:57[Hs]加圧ローラ表面の線速:182[mm]
軸間距離:26.2[mm](Stmin=6.2[mm])、27.1[mm](Stmin=7.1[mm])、27.8[mm](Stmin=7.8[mm])
【0036】
実験2の結果を表2に示す。
【表2】

【0037】
表2より、Stmin/St≧0.75の関係を満たすことにより、ゴム層41aの過度な変形を防止することが出来、耐久性が向上することが明らかになった。
一般にカラーの画像形成装置では、定着後の転写紙Pの分離性を向上させるために定着ローラ41よりも加圧ローラ45の方が硬度は硬い。そのため、定着ローラ41と加圧ローラ45とで定着ニップを形成するときは、定着ローラ41の変形量は加圧ローラ45の変形量に比べて大きくなる。このときスポンジ層であるゴム層41aの厚みStに対する定着ニップでの変形量(St−Stmin)をある値以下とすることで、ゴム層41aへの負荷を低減し、定着ローラ41の耐久性を向上させることができる。
このような条件を満足する定着装置4としては、加圧ローラ45としてアスカーC硬度で57[Hs]のものを用い、定着ローラ41としては、アスカーC硬度で31[Hs]、芯金41bの径φ10[mm](Rs=5[mm])、ゴム層41aの厚さSt=9.5[mm]、ニップを形成したときのゴム層の厚さ7.2]のものを適用することができる。
このような定着装置4であれば、
Stmin/St(=7.2/9.5≒0.758)≧0.75
となる。
【0038】
図4を用いて破泡について説明したが、破泡は芯金に近い箇所ほど発生し易い。これは以下の理由による。
定着ローラ41は断面が円形で回転中心が円の中心となる回転体であるので、回転時(特に駆動開始と停止)には中心に近いほどせん断応力が大きくなる。よって、ゴム層41aの中心に近いほどせん断応力は大きくなり、セル41cを形成する壁部41dにかかる負荷は大きくなり、破泡が生じやすくなる。そして、芯金41bとゴム層41aとの界面でゴム層41aに働くせん断応力は最大となり、さらに、芯金41bは金属でできているため強度差が大きいゴム層41aと芯金41bとの界面近傍で破泡が生じやすい。
【0039】
図4(c)に示すように、ゴム層41aの芯金41bとの境界層41eのすぐ外側のセル41cほど、形成する壁部41dが破断しやすく、破泡となりやすい。境界層41e近傍での破泡が周方向及び回転軸方向に広がると、図7に示すように、芯金41bの外周面に、薄層である境界層41eを残してゴム層41aが芯金41bから剥がれる剥離が生じる。ゴム層41aの剥離が生じると、定着ローラ41はローラとして機能しなくなる。なお、ゴム層41aの剥離としては、図7に示すようにゴム層41aが芯金41bから完全に剥がれるものに限らず、部分的な剥離であっても、定着ローラ41の硬度が不均一になる等、問題となる。
このとき、回転体は中心から遠ざかるほど応力が小さくなる応力分布であるので、芯金41bの径を増やすことにより、応力がより小さい箇所をゴム層41aと芯金41bとの界面とすることができ、芯金41b近傍に働く応力を低減することが可能である。
つまり、芯金41bの半径Rsとゴム層41aの厚さStの関係においてSt/Rsを所定の値より小さくする必要がある。
【0040】
一方、ゴム層41aの厚さStを薄くしすぎると、ゴム層41aの厚みStに対する変形量(St−Stmin)の比率が高くなり、実験2同様の理由により、ゴム層41a全体が破泡しやすくなり硬度低下しやすくなる。
【0041】
[実験3]
実験3として、図3及び図6に示す定着装置4を用いて、定着ローラ41のゴム層41aの厚さStと、芯金41bの半径との比率を振って、10万枚のプリントを行った後のゴム層41aの剥離、及びセル41cの破壊状況の評価を行った。
以下に実験条件を示す。
定着ローラ
直径:29[mm]、アスカーC硬度:31[Hs]、ゴム層の密度:0.38[g/cm
芯金(鉄製)の半径をRs[mm]、ゴム層(シリコーンゴム製)の厚さをSt[mm]としたときのSt/Rs:1.9、1.5、1.2、1.1
加圧ローラ
直径:30[mm]、芯金(鉄製)の直径:23[mm]、ゴム層(シリコーンゴム製)の厚さ:3.5[mm]、アスカーC硬度:57[Hs]加圧ローラ表面の線速:182[mm]
St/Rsが異なる各定着ローラを用いた場合の諸条件を表3に示す。
【表3】

【0042】
実験3の結果を表4に示す。なお、芯金近傍最大応力[MPa]は、上記実験条件を応力を計算するソフトに入力し、シュミレーションを行った際の、駆動開始時の芯金近傍の応力の値である。
【表4】

【0043】
表4より、芯金41bの半径Rsとゴム層41aの厚さStとが、St/Rs≦1.5の関係を満たすことにより、芯金41b近傍のゴム層41aの剥離を抑制することができることが明らかになった。
ここで、St/Rsの値が小さすぎる、すなわちゴム層41aの厚さStを薄くしすぎると、ゴム層41aの厚みStに対する変形量(St−Stmin)の比率が高くなり、ゴム層41aが全体的に破泡しやすくなり硬度低下しやすくなる。したがって、表4より、芯金41bの半径Rsとゴム層41aの厚さStとが、1.2≦St/Rsの関係を満たすことにより、ゴム層41aの過度な変形を防止することが出来、耐久性が向上することが明らかになった。
実験3より、芯金41bの半径Rsとゴム層41aの厚さStとの関係が、1.2≦St/Rs≦1.5となるような定着ローラ41を用いることにより、10万枚プリントを行った後でも、セル41cの破壊やゴム層41aの剥離の問題が生じない定着装置4とすることができる。
【0044】
定着ローラ41のゴム層41aと芯金41bの界面付近は、ゴム層41aが弾性変形するのに対して、芯金41bは金属シャフト等の剛性体であるため、回転開始/停止時のせん断力が集中しやすい。また、定着ローラ41に働くせん断応力は、回転中心に近いほど大きくなるので、ゴム層41aに働くせん断応力は芯金41bとの界面が最大となる。よって、ゴム層41aは、芯金41b近傍が破壊し易い。このとき、定着ローラ41の芯金41bの半径Rsと(スポンジ)ゴム層41aの厚さStとの比であるSt/Rsをある一定以下にすることにより、より回転中心から離れ、よりせん断応力が小さい箇所をゴム層41aと芯金41bとの界面とすることができる。また、回転中心から遠いほど、ゴム層41aと芯金41bとの界面の面積は大きくなるため、界面にかかる剪断力が分散し、せん断応力が低減するので、ローラの耐久性が向上することができる。
ゴム層41aと芯金41bとの界面近傍の破泡は、芯金41bの半径に比べてゴム層41aの厚さが薄いほど界面近傍の応力が低減する効果が得られる。しかし、他方でスポンジのゴム層41aが薄くなりすぎると、ゴム層41aの厚みStに対する定着ニップでの変形量(St−Stmin)が大きくなり、逆に破泡しやすい状態となる。つまり、ゴム層の厚さStをある一定以上とすることにより、ゴム層41aの変形率(単位体積あたりの変形量)を低く抑えられる為、ローラの耐久性が向上する。
このような条件を満たす定着ローラ41としては、たとえば外径φ29[mm]、芯金径φ12[mm](Rs=6[mm])、スポンジゴム層の厚さSt=8.5[mm]、のものを適用することができる。
この定着ローラ41であれば、
1.2<St/Rs(=8.5/6≒1.42)≦1.5
となる。
【0045】
実施形態1では、定着ベルト43の張架部材として定着ローラ41を備え、加圧ローラ45によって加圧し定着ニップを形成する構成について説明した。定着装置としては、実施形態1で説明した定着装置の特徴部は、実施形態1に記載の構成に限るものではなく、定着装置内に記録体の未定着トナーを担持した面と接触する定着体と、記録体を定着体との間で挾持する加圧体を有し、いずれか一方がベルトにより構成されているものであれば適用可能である。
また、図8に示すように定着ベルト43に、外側からテンションを加えるテンション付与部材を備えない構成であっても良い。
【0046】
また、定着ベルトを備えない定着装置であっても、二つのローラが対向し、定着ニップを形成する構成であれば適用可能である。
定着ベルトを備えない定着装置としては、例えば図9に示すものがある。図9に示す定着装置4では、低硬度の定着ローラ41の表面が金属層(もしくは金属層を有するベルト)で構成される。また、定着ローラ41の金属層と対向するようにIHコイル49が備えられている。この定着装置4では、IHコイル49と金属層とのIH加熱によって、金属層が加熱され、定着ニップにおいて、転写紙P上のトナー像に熱と圧力とが加えられる。
【0047】
[実施形態2]
実施形態1では、弾性ローラである定着ローラ41の弾性層であるゴム層41aの密度が略均一なものについて説明した。以下、実施形態2として、破泡を抑制する他の弾性ローラとしての定着ローラ41の構成について説明する。なお、定着ローラ41以外の構成は実施形態1と共通するので説明は省略し、定着ローラ41についてのみ説明する。
【0048】
図10は、実施形態2にかかる弾性ローラとしての定着ローラ41の概略説明図である。図10(a)は、定着ローラ41の概略断面図であり、図10(b)は、図10(a)中の領域βの拡大説明図である。
図10(a)に示すように、実施形態2の定着ローラ41は、実施形態1の定着ローラ41と同様に、ゴム製の弾性層であるゴム層41aと、金属製の芯金41bとから構成される。
そして、実施形態2の定着ローラ41は、図10(b)に示すように、弾性層であるゴム層41aは単一構造物からなり、芯金41b側となる内側ほど空孔であるセル41cを小さくし、外側ほどセル41cが大きくなるように形成している。すなわち、ゴム層41aの密度がローラの半径方向について異なり、芯金41bに近いほどゴム層41aの密度が高い定着ローラ41を用いる。
このようなゴム層41aは、セル41cを芯金41bに近いほど小さくすることによって、壁部41dが芯金41bに近いほど厚くなり、ゴム層41aは芯金41bに近いほど強度が強まる形状となる。そして、セル41cの個数が同じで、壁が厚くなれば、密度が大きくなる。このようなゴム層41aは、ゴム層の材料であるシリコーンゴムに発泡剤を混入し、加熱して発泡を行う際に、内側はゆっくりと熱を上げて、外側は急速に熱を上げることにより、形成することができる。
【0049】
スポンジ状の弾性ローラの破泡に対しては、弾性層のゴム密度を高くすることで抑制する効果が得られるが、反面、ゴム密度を高くしすぎるとアスカーC硬度が高くなり所定のニップが出せなくなるおそれがある。さらに、ゴム密度が高いものは空孔が占める体積が少なくなり、空孔が占める体積が多いモノに比べて熱伝導率が高まり、定着ベルト43から移動する熱量が増えウォームアップが遅くなるなどの不具合が発生する。
また、上述したように、定着ローラ41のゴム層41aは芯金41b近傍ほどセルを変形させるせん断応力が大きく、特にその部分でのゴム破壊が多い。よって、芯金41bに近いほどゴム層41aの密度が高い定着ローラ41を用いることにより、芯金41b近傍の強度を向上し、表面の硬度が増加することを抑制することができる。このように構成することで、スポンジローラの特性(低硬度、低熱伝導率)を有しながら高耐久な定着ローラ41とすることができる。
なお、従来技術において、芯金付近をソリッドゴムにし、表面をスポンジゴムとする、弾性層を2層とするローラがあるが、このようなローラだと、ソリッドゴムとスポンジゴムの界面でやはり同じような応力集中が発生する。そして、そこではやはり破泡が発生するため、実施形態2の定着ローラ41のゴム層41aのように、単一構造物からなり連続的にセル41cの大きさが変化する方がより高寿命なローラとなる。
【0050】
以上、実施形態1によれば、スポンジ状の弾性層であるゴム層41aを備え、その硬度がアスカーC硬度で28[Hs]以上、34[Hs]以下となる低硬度の弾性ローラである定着ローラ41を備える定着装置4において、定着ローラ41のゴム層41aの密度を、0.38[g/cm]以上とすることで、6万枚プリントを行う長期間使用を行っても定着ニップの幅が減少することを抑制できる。すなわち、6万枚プリント後のセル41cの破壊を抑制することができる。そして、長期使用した際に定着ニップの幅が減少することを抑制することができるため、長期的に定着性を維持することができる。
また、弾性層の材料としてシリコーンゴムを用いることにより、スポンジ状の弾性層を容易に作成することができる。
また、複数の張架部材として、加熱ローラ42と定着ローラ41とによって支持される定着ベルト43を備え、高硬度ローラとしての加圧ローラ45は、定着ベルト43を介して定着ローラ41を押圧し、定着ローラ41との間で定着ニップを形成することにより、スポンジ状の定着ローラ41ではなく、離型性が高い定着ベルト43が転写紙P上のトナー像と接触するため、分離性を向上することができる。
また、定着ローラ41のアスカーC硬度をAt、加圧ローラ45のアスカーC硬度をAkとすると、Ak>At+20[Hs]の関係を満たすようにすることにより、定着ニップでは定着ローラ41が大きく凹んだ形状となることで、定着ニップ通過後の転写紙Pの搬送方向が加圧ローラ45側(非画像面側)になるため、定着ベルト43に対する転写紙Pの分離性を高めることができる。
また、ゴム層41aの厚さSt、定着ニップでのゴム層41a厚さの最小値Stminについて、Stmin/St≧0.75の関係を満たすことにより、8万枚プリントを行う長期間使用を行っても定着ニップの幅が減少することを抑制できる。すなわち、8万枚プリント後のセル41cの破壊を抑制することができる。そして、長期使用した際に定着ニップの幅が減少することを抑制することができるため、長期的に定着性を維持することができる。
また、芯金41bの半径Rsと、ゴム層41aの厚さStとが、1.2≦St/Rs≦1.5の関係を満たすことにより、10万枚プリントを行う長期間使用を行っても、ゴム層41aの芯金41bからの剥離を抑制しつつ、定着ニップの幅が減少することを抑制できる。すなわち、10万枚プリント後のセル41cの破壊を抑制することができる。そして、長期使用した際に定着ニップの幅が減少することを抑制することができるため、長期的に定着性を維持することができる。
また、画像形成装置であるプリンタ100の定着手段として、定着装置4を用いることにより、長期にわたり、安定した定着性を維持することができ、画像品質を維持することができる。
また、実施形態2の定着装置4のように、弾性層であるゴム層41aの密度が定着ローラ41の半径方向について異なり、芯金41bに近いほどゴム層41aの密度が高くすることにより、セル41cの破壊が発生しやすい芯金41b近傍のゴム層41aの強度を向上しつつ、定着ローラ41表面の弾性を維持することができる。
また、ゴム層41aを、単一構造物とし、芯金41b側となる内側ほど空孔であるセル41cを小さくし、外側ほどセル41cが大きくなるように形成することで、芯金41bに近いほど強度が高いゴム層41aを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施形態1に係るプリンタを示す概略構成図。
【図2】上記プリンタのトナー像形成部を構成するプロセスカートリッジの概略構成図。
【図3】定着装置の概略構成図。
【図4】定着ローラのゴム層に発生するは破泡の説明図。(a)は定着ローラの概略断面図、(b)は破泡が生じる前の拡大説明図、(c)は破泡が生じた状態の拡大説明図。
【図5】定着ローラのゴム層の密度を高めた状態の説明図。(a)は径の小さなセルが増えた状態、(b)は壁部が厚くなった状態。
【図6】定着ニップを形成する定着ローラと加圧ローラとの概略説明図。
【図7】ゴム層の剥離が生じた定着ローラの断面図。
【図8】テンションローラ付与部材を備えない定着装置の概略構成図。
【図9】定着ベルトを備えない定着装置の一例の概略構成図。
【図10】実施形態2に係る定着ローラの概略説明図。(a)は定着ローラの概略断面図、(b)は拡大説明図。
【図11】定着ニップ近傍の拡大説明図。(a)は破泡が生じる前の定着ニップ近傍の拡大説明図、(b)は破泡が進行した状態の定着ニップ近傍の拡大説明図。
【符号の説明】
【0052】
1 中間転写ベルト
4 定着装置
5 二次転写ローラ
6 レジストローラ
7 給紙コロ
8 給紙カセット
9 光書込ユニット
10 現像装置
11 一次転写装置
21 感光体
41 定着ローラ
41a ゴム層
41b 芯金
42 加熱ローラ
43 定着ベルト
44 ヒータ
45 加圧ローラ
46 分離爪
47 テンションローラ
100 プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スポンジ状の弾性層を備える弾性ローラと、
該弾性ローラよりも硬度が高く、該弾性ローラとの間で定着ニップを形成する高硬度ローラと、
該定着ニップを加熱するための加熱手段とを備える定着装置において、
該弾性ローラの硬度はアスカーC硬度で28[Hs]以上、34[Hs]以下であり、
該弾性層の密度が、0.38[g/cm]以上であることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
請求項1の定着装置において
上記弾性層の材料がゴムであることを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1または2の定着装置において、
複数の張架部材によって支持されるベルト形状で該複数の張架部材の一つが上記弾性ローラであり、上記加熱手段によって加熱される定着ベルトを備え、
上記高硬度ローラは、該定着ベルトを介して該弾性ローラを押圧し、該弾性ローラとの間で上記定着ニップを形成することを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1または2の定着装置において、
上記弾性ローラは上記定着ニップで記録体上の未定着画像を担持する面と対向する定着ローラであり、上記高硬度ローラは該定着ニップで該記録体の該未定着画像を担持する面の裏面側から加圧する加圧ローラであることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1、2、3または4の定着装置において、
上記弾性ローラのアスカーC硬度をAt、上記高硬度ローラのアスカーC硬度をAkとすると、
Ak>At+20[Hs]
の関係を満たすことを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5の定着装置において、
上記定着ニップを形成していない状態での上記弾性層の厚さをSt、
該定着ニップを形成した状態での該弾性層の厚さの最小値をStminとすると、
Stmin/St≧0.75
の関係を満たすことを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6の定着装置において、
上記弾性ローラは上記弾性層と金属製の芯金とから構成することを特徴とする定着装置。
【請求項8】
請求項7の定着装置において、
上記芯金の半径をRs、上記弾性層の厚さStをとすると、
St/Rs≦1.5
の関係を満たすことを特徴とする定着装置。
【請求項9】
請求項8の定着装置において、
上記芯金の半径をRsと、上記弾性層の厚さStとが、
1.2≦St/Rs≦1.5
の関係を満たすことを特徴とする定着装置。
【請求項10】
スポンジ状の弾性層と金属製の芯金とを備える弾性ローラと、
該弾性ローラよりも硬度が高く、該弾性ローラとの間で定着ニップを形成する高硬度ローラと、
該定着ニップを加熱する加熱手段とを備える定着装置において、
該弾性ローラの硬度はアスカーC硬度で28[Hs]以上、34[Hs]以下であり、
該弾性層の密度が該弾性ローラの半径方向について異なり、該芯金に近いほど該弾性層の密度が高いことを特徴とする定着装置。
【請求項11】
請求項10の定着装置において、
上記弾性層は、単一構造物からなり、芯金側となる内側ほど空孔を小さくし、外側ほど該空孔が大きくなるように形成したことを特徴とする定着装置。
【請求項12】
請求項10または11の定着装置において
上記弾性層の材料がゴムであることを特徴とする定着装置。
【請求項13】
請求項10、11または12の定着装置において、
複数の張架部材によって支持されるベルト形状で該複数の張架部材の一つが上記弾性ローラであり、上記加熱手段によって加熱される定着ベルトを備え、
上記高硬度ローラは、該定着ベルトを介して該弾性ローラを押圧し、該弾性ローラとの間で上記定着ニップを形成することを特徴とする定着装置。
【請求項14】
請求項10、11、12または13の定着装置において、
上記弾性ローラは上記定着ニップで記録体上の未定着画像を担持する面と対向する定着ローラであり、上記高硬度ローラは該定着ニップで該記録体の該未定着画像を担持する面の裏面側から加圧する加圧ローラであることを特徴とする定着装置。
【請求項15】
請求項10、11、12、13または14の定着装置において、
上記弾性ローラのアスカーC硬度をAt、上記高硬度ローラのアスカーC硬度をAkとすると、
Ak>At+20[Hs]
の関係を満たすことを特徴とする定着装置。
【請求項16】
記録体にトナー像を形成するトナー像形成手段と、
該記録体にトナー像を定着させる定着手段とを備える画像形成装置において、
該定着手段として、請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15に記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−206265(P2007−206265A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−23491(P2006−23491)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】