定着装置及び画像形成装置
【課題】ヒータによる加熱ローラ等の加熱を効率よく行うことができると共に、加熱ローラ等における第1幅領域(最大通紙領域)の端部に対応する位置の近傍の温度を効率的に昇温させることができる定着装置を提供すること。
【解決手段】第1回転軸Iを中心に回転可能な中空状の第1回転体9aと、第1回転体9aを内側から加熱するヒータ910と、第1回転体9aとによりシート状の被転写材Tが搬送される定着ニップN9を形成する第2回転体9bと、第1回転体9aに形成され、搬送方向D1に直交する搬送幅方向において最大幅の被転写材Tが通過する第1幅領域901aと、第1回転体9aの内部に、第1幅領域901aの第1回転軸I方向における端部である第1幅領域端部901eに対応する位置の近傍に配置され、ヒータ910から第1回転体9aの端部902に向かう放射熱を遮蔽する熱遮蔽部材920と、を備える。
【解決手段】第1回転軸Iを中心に回転可能な中空状の第1回転体9aと、第1回転体9aを内側から加熱するヒータ910と、第1回転体9aとによりシート状の被転写材Tが搬送される定着ニップN9を形成する第2回転体9bと、第1回転体9aに形成され、搬送方向D1に直交する搬送幅方向において最大幅の被転写材Tが通過する第1幅領域901aと、第1回転体9aの内部に、第1幅領域901aの第1回転軸I方向における端部である第1幅領域端部901eに対応する位置の近傍に配置され、ヒータ910から第1回転体9aの端部902に向かう放射熱を遮蔽する熱遮蔽部材920と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び定着装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、用紙に画像を形成(印刷)するための装置として、コピー機、プリンタ、ファクシミリ又はこれらの複合機などの画像形成装置が知られている。画像形成装置においては、感光体ドラムの表面を帯電させる帯電工程、帯電した感光体ドラムにレーザ光を照射して感光体ドラムの表面に静電潜像を形成する露光工程、感光体ドラムの表面に形成された静電潜像にトナーを付着させて現像を行う現像工程、感光体ドラムの表面に付着したトナーから形成されるトナー画像を用紙へ転写する転写工程、及び用紙に転写されたトナー画像を用紙に定着させる定着工程の各工程が順次行われることによって、用紙に画像が形成される。
【0003】
上記の各工程のうち、定着工程では、用紙に転写されたトナー画像を構成するトナーを用紙に定着させるために、トナーに熱を与えてトナーを溶融させる必要がある。定着工程を行う定着装置として、従来から、加熱ローラと、加熱ローラとによりトナー画像が転写された用紙が搬送される定着ニップを形成する加圧ローラと、加熱ローラの内側から加熱ローラを加熱するヒータとを備える定着装置が使用されている。
【0004】
近年、省エネルギー化の対応により、加熱ローラの内部に配置されるヒータが放射するエネルギーを効率よく利用することが望まれている。
エネルギーを効率よく利用するために、加熱ローラの厚さを薄くすることにより加熱ローラの熱容量を小さくする定着装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。熱容量が小さい加熱ローラを備えた定着装置によれば、定着装置のウォームアップに要する時間の短縮化を図ることができるので、省エネルギー化に対応することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−177624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の印刷速度の高速化に伴い、定着装置のウォームアップに要する時間の更なる短縮化が望まれている。一般的に、画像形成装置は、用紙の搬送方向に直交する搬送幅方向において最大幅の用紙が通過する第1幅領域(最大通紙領域)の端部近傍の温度が一定以上になったときに、印刷が開始されるように設計されている。特許文献1に記載の定着装置においては、加熱ローラの軸方向における両端部に特段の工夫がなされておらず、内部に配置されたヒータからの熱が加熱ローラの軸方向における両端部から放熱しやすい。そのため、加熱ローラの加熱を効率よく行うことができない。従って、加熱ローラにおける第1幅領域(最大通紙領域)の端部近傍の温度を効率的に昇温させて、加熱ローラの温度分布を効率よく均一化させることが望まれる。
【0007】
本発明は、ヒータによる加熱ローラ等の加熱を効率よく行うことができると共に、加熱ローラ等における第1幅領域(最大通紙領域)の端部に対応する位置の近傍の温度を効率的に昇温させることができる定着装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記定着装置を備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1回転軸を中心に回転可能な中空状の第1回転体と、前記第1回転体の内部に配置され、該第1回転体を内側から加熱するヒータと、前記第1回転体に対向して配置され、前記第1回転体とによりシート状の被転写材が搬送される定着ニップを形成すると共に前記第1回転軸に平行な第2回転軸を中心に回転可能な第2回転体と、前記第1回転体に形成され、搬送方向に直交する搬送幅方向において最大幅の被転写材が通過する第1幅領域と、前記第1回転体の内部に配置される熱遮蔽部材であって、前記第1幅領域の前記第1回転軸方向における端部である第1幅領域端部に対応する位置の近傍に配置され、前記ヒータから前記第1回転体の端部に向かう放射熱を遮蔽する熱遮蔽部材と、を備える定着装置に関する。
【0009】
また、前記熱遮蔽部材の外縁は、前記第1回転体の内周面における前記第1幅領域端部に対応する位置の近傍に対向して配置されることが好ましい。
【0010】
また、前記熱遮蔽部材は、前記第1回転軸方向における内側に形成される光反射面を有することが好ましい。
【0011】
また、前記熱遮蔽部材は、前記第1回転軸方向における内側に凹状の曲面部を有することが好ましい。
【0012】
また、前記熱遮蔽部材は、前記ヒータからの光を反射すると共に、少なくとも前記ヒータからの光の一部を前記第1回転体の内周面における前記第1幅領域端部に対応する位置の近傍に向かうよう反射することが好ましい。
【0013】
また、前記第1回転体は、円筒状の回転ローラであることが好ましい。
【0014】
また、前記第1回転体は、環状であると共に可撓性を有する回転ベルトであることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、表面に静電潜像が形成される1又は複数の像担持体と、前記1又は複数の像担持体に形成された静電潜像にトナー画像を現像する現像器と、前記像担持体に形成されたトナー画像を直接的又は間接的にシート状の被転写材に転写する転写部と、前記定着装置と、を備える画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ヒータによる加熱ローラ等の加熱を効率よく行うことができると共に、加熱ローラ等における第1幅領域(最大通紙領域)の端部に対応する位置の近傍の温度を効率的に昇温させることができる定着装置を提供することができる。
また、本発明によれば、前記定着装置を備える画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態のプリンタ1における各構成要素の配置を説明するための図である。
【図2】第1実施形態の定着装置9を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態の定着装置9を第1回転軸I方向から視た縦断面図である。
【図4】第1実施形態の定着装置9を用紙Tの搬送方向D1から視た縦断面図である。
【図5】図4に示す定着装置9の部分拡大縦断図である。
【図6】第1実施形態の加熱ローラ9aにおける第1幅領域端部901eに対応する位置の近傍の温度分布を示す図である。
【図7】第2実施形態の定着装置9を第1回転軸I方向から視た縦断面図である。
【図8】第2実施形態の定着装置9を用紙Tの搬送方向D1から視た縦断図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1により、本発明の画像形成装置の第1実施形態としてのプリンタ1における全体構造を説明する。図1は、第1実施形態のプリンタ1における各構成要素の配置を説明するための図である。
【0019】
図1に示すように、画像形成装置としてのプリンタ1は、装置本体Mと、所定の画像情報に基づいてシート状の被転写材としての用紙Tに所定のトナー画像を形成する画像形成部GKと、用紙Tを画像形成部GKに給紙すると共にトナー画像が形成された用紙Tを排紙する給排紙部KHとを有する。
装置本体Mにおける外形は、筐体としてのケース体BDにより構成される。
【0020】
図1に示すように、画像形成部GKは、像担持体(感光体)としての感光体ドラム2と、帯電部10と、露光ユニットとしてのレーザスキャナユニット4と、現像器16と、トナーカートリッジ5と、トナー供給部6と、ドラムクリーニング部11と、除電器12と、転写ローラ8と、定着装置9とを備える。
【0021】
図1に示すように、給排紙部KHは、給紙カセット52と、手差し給紙部64と、用紙Tの搬送路Lと、レジストローラ対80と、排紙部50とを備える。
【0022】
以下、画像形成部GK及び給排紙部KHの各構成について詳細に説明する。
まず、画像形成部GKについて説明する。
画像形成部GKにおいては、感光体ドラム2の表面に沿って、上流側から下流側に順に、帯電部10による帯電、レーザスキャナユニット4による露光、現像器16による現像、転写ローラ8による転写、除電器12による除電、及びドラムクリーニング部11によるクリーニング、及び定着装置9による定着が行われる。
【0023】
感光体ドラム2は、円筒形状の部材からなり、感光体又は像担持体として機能する。感光体ドラム2は、搬送路Lにおける用紙Tの搬送方向に対して直交する方向に延びる機軸を中心に、矢印の方向に回転可能に配置される。感光体ドラム2の表面には、静電潜像が形成され得る。
【0024】
帯電部10は、感光体ドラム2の表面に対向して配置される。帯電部10は、感光体ドラム2の表面を一様に負(マイナス極性)又は正(プラス極性)に帯電させる。
【0025】
レーザスキャナユニット4は、露光ユニットとして機能するものであり、感光体ドラム2の表面から離間して配置される。レーザスキャナユニット4は、不図示のレーザ光源、ポリゴンミラー、ポリゴンミラー駆動用モータ等を有して構成される。
【0026】
レーザスキャナユニット4は、PC(パーソナルコンピュータ)等の外部機器から入力された画像情報に基づいて、感光体ドラム2の表面を走査露光する。レーザスキャナユニット4により走査露光されることで、感光体ドラム2の表面の露光された部分の電荷が除去される。これにより、感光体ドラム2の表面に静電潜像が形成される。
【0027】
現像器16は、感光体ドラム2に対応して設けられ、感光体ドラム2の表面に対向して配置される。現像器16は、感光体ドラム2に形成された静電潜像に単色(通常はブラック)のトナーを付着させて、単色のトナー画像を感光体ドラム2の表面に形成する。現像器16は、感光体ドラム2の表面に対向配置された現像ローラ17、トナー攪拌用の攪拌ローラ18等を有して構成される。
【0028】
トナーカートリッジ5は、現像器16に対応して設けられており、現像器16に対して供給されるトナーを収容する。
【0029】
トナー供給部6は、トナーカートリッジ5及び現像器16に対応して設けられており、トナーカートリッジ5に収容されたトナーを現像器16に対して供給する。トナー供給部6と現像器16とは、不図示のトナー供給路により結ばれている。
【0030】
転写ローラ8は、感光体ドラム2の表面に現像されたトナー画像を用紙Tに転写させる。転写ローラ8には、不図示の転写バイアス印加部により、感光体ドラム2に形成されたトナー画像を用紙Tに転写させるための転写バイアスが印加される。
【0031】
転写ローラ8は、感光体ドラム2に対して当接したり離間したりする。具体的には、転写ローラ8は、感光体ドラム2に当接される当接位置と、感光体ドラム2から離間する離間位置とに移動可能に構成される。詳細には、転写ローラ8は、感光体ドラム2に現像されたトナー画像を用紙Tに転写させる場合には当接位置に配置され、他の場合には離間位置に配置される。
【0032】
感光体ドラム2と転写ローラ8との間で、搬送路Lを搬送される用紙Tが挟み込まれる。挟み込まれた用紙Tは、感光体ドラム2の表面に押し当てられる。感光体ドラム2と転写ローラ8との間で、転写ニップNが形成される。転写ニップNにおいて、感光体ドラム2に現像されたトナー画像が用紙Tに転写される。
【0033】
除電器12は、感光体ドラム2の表面に対向して配置される。除電器12は、感光体ドラム2の表面に光を照射することにより、転写が行われた後の感光体ドラム2の表面を除電する(電荷を除去する)。
【0034】
ドラムクリーニング部11は、感光体ドラム2の表面に対向して配置される。ドラムクリーニング部11は、感光体ドラム2の表面に残存したトナーや付着物を除去すると共に、除去されたトナー等を所定の回収機構へ搬送して、回収させる。
【0035】
定着装置9は、用紙Tに転写されたトナー画像を構成するトナーを溶融及び加圧して、用紙Tに定着させる。定着装置9は、ヒータにより加熱される加熱回転体(加熱ローラ)9aと、加熱回転体9aに圧接される加圧回転体(加圧ローラ)9bと、を備える。加熱回転体9aと加圧回転体9bとは、トナー画像が転写された用紙Tを挟み込んで加圧すると共に、搬送する。加熱回転体9aと加圧回転体9bとの間に挟み込まれた状態で用紙Tが搬送されることで、用紙Tに転写されたトナーは、溶融及び加圧され、用紙Tに定着される。定着装置9の詳細については、後述する。
【0036】
次に、給排紙部KHについて説明する。
図1に示すように、装置本体Mの下部には、用紙Tを収容する1個の給紙カセット52が配置される。給紙カセット52は、装置本体Mの前側(図1における右側)から水平方向に引き出し可能に構成される。給紙カセット52には、用紙Tが載置される載置板60が配置される。給紙カセット52には、用紙Tが載置板60の上に積層された状態で収容される。載置板60に載置された用紙Tは、給紙カセット52における用紙送り出し側の端部(図1において右側の端部)に配置されるカセット給紙部51により搬送路Lに送り出される。カセット給紙部51は、載置板60上の用紙Tを取り出すための前送りコロ61と、用紙Tを1枚ずつ搬送路Lに送り出すための給紙ローラ対63からなる重送防止機構を備える。
【0037】
装置本体Mの前面(図1において右側)には、手差し給紙部64が設けられる。手差し給紙部64は、給紙カセット52にセットされる用紙Tとは異なる大きさや種類の用紙Tを装置本体Mに供給することを主目的として設けられる。手差し給紙部64は、閉状態において装置本体Mの前面の一部を構成する手差しトレイ65と、給紙コロ66とを備える。手差しトレイ65は、その下端が給紙コロ66の近傍に回動自在(開閉自在)に取り付けられる。開状態の手差しトレイ65には、用紙Tが載置される。給紙コロ66は、開状態の手差しトレイ65に載置された用紙Tを手差し搬送路Laに給紙する。
【0038】
装置本体Mにおける上方側には、排紙部50が設けられる。排紙部50は、第3ローラ対53により用紙Tを装置本体Mの外部に排紙する。排紙部50の詳細については後述する。
【0039】
用紙Tを搬送する搬送路Lは、カセット給紙部51から転写ニップNまでの第1搬送路L1と、転写ニップNから定着装置9までの第2搬送路L2と、定着装置9から排紙部50までの第3搬送路L3と、手差し給紙部64から供給される用紙を第1搬送路L1に合流させる手差し搬送路Laと、第3搬送路L3を上流側から下流側へ搬送する用紙を表裏反転させて第1搬送路L1に戻す戻り搬送路Lbとを備える。
【0040】
また、第1搬送路L1の途中には、第1合流部P1及び第2合流部P2が設けられている。第3搬送路L3の途中には、第1分岐部Q1が設けられている。
第1合流部P1は、手差し搬送路Laが第1搬送路L1に合流する合流部である。第2合流部P2は、戻り搬送路Lbが第1搬送路L1に合流する合流部である。
第1分岐部Q1は、戻り搬送路Lbが第3搬送路L3から分岐する分岐部で、第1ローラ対54a及び第2ローラ対54bを有する。第1ローラ対54aの一方のローラと第2ローラ対54bの一方のローラとは兼用される。
【0041】
第1搬送路L1の途中(詳細には、第2合流部P2と転写ローラ8との間)には、用紙Tを検出するためのセンサと、用紙Tのスキュー(斜め給紙)補正や画像形成部GKにおけるトナー画像の形成とタイミングを合わせるためのレジストローラ対80が配置される。センサは、用紙Tの搬送方向におけるレジストローラ対80の直前(搬送方向における上流側)に配置される。レジストローラ対80は、センサからの検出信号情報に基づいて上述の補正やタイミング調整をして用紙Tを搬送する。
【0042】
戻し搬送路Lbは、用紙Tに両面印刷を行う際に、既に印刷されている面とは反対面(非印刷面)を感光体ドラム2に対向させるために設けられる搬送路である。
戻し搬送路Lbによれば、第1分岐部Q1から第1ローラ対54aにより排紙部50側に搬送された用紙Tを表裏反転させて第2ローラ対54bにより第1搬送路L1に戻して、転写ローラ8の上流側に配置されたレジストローラ対80の上流側に搬送させることができる。戻し搬送路Lbにより表裏反転された用紙Tには、感光体ドラム2により非印刷面に対して所定のトナー画像が転写される。
【0043】
第3搬送路L3における端部には、排紙部50が形成される。排紙部50は、装置本体Mにおける上方側に配置される。排紙部50は、装置本体Mの前面側(図1において右側、手差し給紙部64側)に向けて開口している。排紙部50は、第3搬送路L3を搬送される用紙Tを第3ローラ対53により装置本体Mの外部に排紙する。
【0044】
排紙部50における開口側には、排紙集積部M1が形成される。排紙集積部M1は、装置本体Mにおける上面(外面)に形成される。排紙集積部M1は、装置本体Mにおける上面が下方に窪んで形成された部分である。排紙集積部M1の底面は、装置本体Mにおける上面の一部を構成する。排紙集積部M1には、所定のトナー画像が形成され排紙部50から排紙された用紙Tが積層して集積される。
なお、各搬送路の所定位置には用紙検出用のセンサが配置される。
【0045】
以下、図面を参照して、第1実施形態のプリンタ1における特徴部分に係る構成について説明する。図2は、第1実施形態の定着装置9を示す斜視図である。図3は、第1実施形態の定着装置9を第1回転軸I方向から視た縦断側面図である。図4は、第1実施形態の定着装置9を用紙搬送方向から視た縦断正面図である。図5は、図4に示す定着装置9の部分拡大縦断正面図である。
【0046】
図2及び図3に示すように、第1実施形態の定着装置9は、第1回転体としての加熱ローラ9aと、第2回転体としての加圧ローラ9bと、ヒータ910と、熱遮蔽部材920と、非接触式の温度検出センサとしての第1サーミスタ970及び第2サーミスタ980と、を備える。
【0047】
図3及び図4に示すように、加熱ローラ9aは、中空状の円筒状の回転ローラである。加熱ローラ9aは、用紙Tの搬送方向D1と直交する搬送幅方向(第2方向)D2に延びる第1回転軸Iを中心に回転可能に構成される。例えば、加熱ローラ9aは、肉厚が1mm程度のAl(アルミニウム)等の円筒状の金属ローラの外周面に、肉厚が30μm程度のPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂製の耐熱性コート又はフィルムからなる離型層を設けることで構成される。加熱ローラ9aは、不図示の軸受部材を介して、プリンタ1における装置本体Mのケース体BDやその他の部材により回転可能に支持される。
【0048】
図3及び図4に示すように、加圧ローラ9bは、その外周面が、加熱ローラ9aの外周面に当接するように対向して配置される。加圧ローラ9bは、第1回転軸I方向(第2方向)D2において加熱ローラ9aよりも短く形成されている。加圧ローラ9bの第2回転軸J方向の中点と加熱ローラ9aの第1回転軸I方向の中点とは略一致している。
加圧ローラ9bは、加熱ローラ9aの第1回転軸Iと平行な第2回転軸Jを中心に回転可能に構成される。例えば、加圧ローラ9bは、直径が14mm程度のアルミニウムや鉄等の芯金の外周面に、肉厚が5.5mm程度でアスカーC硬度が15から60のシリコーンゴム等の弾性層を設け、更に、この弾性層の表面に厚み50μm程度のPFAやPTFE等のフッ素樹脂からなる離型層を設けることで構成される。
【0049】
また、図4に示すように、加圧ローラ9bは、第2回転軸J方向(第2方向D2)の両端部から、第2回転軸Jに平行なローラ軸931が突出して構成される。このローラ軸931は、プリンタ1における装置本体Mのケース体BDやその他の部材により回転可能に支持される。
加圧ローラ9bのローラ軸931には、加圧ローラ9bを回転駆動させる第2回転体駆動部としての電動モータ等の加圧ローラ駆動部(図示せず)が接続される。この加圧ローラ駆動部により、加圧ローラ9bが所定速度で回転駆動されることで、加圧ローラ9bの外周面に当接する加熱ローラ9aが従動して回転される。これにより、加圧ローラ9bと加熱ローラ9aとの間で、トナー画像が転写された用紙Tを挟持する定着ニップN9が形成される。
【0050】
図3及び図4に示すように、ヒータ910は、加熱ローラ9aを内側から加熱して、加熱ローラ9aと加圧ローラ9bとの当接部である定着ニップN9を加熱する。ヒータ910は、例えば、ハロゲンヒータから構成される。ヒータ910は、加熱ローラ9aの内部に加熱ローラ9aの第1回転軸Iに沿って配置される。ヒータ910は、加熱ローラ9aの第1回転軸I方向の両端部から突出する長手方向の両端部において、不図示の支持部材を介してプリンタ1における装置本体Mのケース体BDやその他の部材に固定される。そして、ヒータ910は、加熱ローラ9aと加圧ローラ9bとの間に挟持されて搬送される用紙Tに加熱ローラ9aを介して加熱する。これにより、トナー画像が転写された用紙Tを定着ニップN9に搬送し、通過させることで、用紙T上のトナーTNが溶融して用紙Tに定着される。
【0051】
定着ニップN9に搬送される用紙Tは、定着装置9における通紙領域内を通過して搬送された場合に、トナー画像が定着される。「通紙領域」とは、用紙Tの搬送方向D1に直交する搬送幅方向(第2方向)D2において定着ニップN9に搬送される用紙Tが加熱回転ベルト9aと加圧ローラ9bとに挟まれて通過する領域のことである。通紙領域は、加熱ローラ9a及び加圧ローラ9bにおける搬送幅方向D2の中央を基準として、当該プリンタ1において使用可能な用紙の最大サイズ(最大幅)に対応して形成(設定)される。
本実施形態の定着装置9においては、搬送幅方向D2において最大幅(第1回転軸I方向における最大長さ)の用紙Tを定着ニップN9に搬送させる通紙領域として、最大通紙領域を設定する。例えば、A4サイズの用紙Tにおける長辺が加熱ローラ9aの第1回転軸I方向(搬送幅方向D2)に平行な状態(A4サイズ横方向)で、A4サイズの用紙Tが定着ニップN9に搬送されるように、最大通紙領域を形成(設定)する。最大通紙領域は、プリンタごとにそれぞれ設定される。
【0052】
具体的には、図2及び図4に示すように、加熱ローラ9aには、第1幅領域901aが形成される。加熱ローラ9aの外周表面には、最大幅の用紙T、例えば、A4サイズの用紙Tが横方向で定着ニップN9に搬送される場合において、用紙Tが通過する最大通紙領域となる第1幅領域901aが形成(設定)される。加圧ローラ9bの外周表面には、加熱ローラ9aの第1幅領域901aに対応した最大通紙領域となる第2幅領域901bが形成(設定)される。
【0053】
最大幅の用紙Tが通過する場合、用紙Tの第1回転軸I方向における両端部に対応する位置は、第1幅領域端部901e、901eとなる。つまり、用紙Tは、第1幅領域端部901e、901eの内側の領域としての第1幅領域901aを通過して搬送される。
第1幅領域端部901e、901eは、加熱ローラ9aにおける第1回転軸I方向(搬送幅方向D2)の両端部902、902の近傍であって、両端部902、902から第1回転軸I方向の内側に所定距離だけ離れた位置に形成(設定)される。
【0054】
図4及び図5に示すように、熱遮蔽部材920は、加熱ローラ9aの内部に配置される。熱遮蔽部材920は、加熱ローラ9aの内部において、第1幅領域901aの第1幅領域端部901e、901eに対応する位置の近傍に配置される。「対応する位置」とは、第1幅領域端部901eに対して、加熱ローラ9a(第1回転体)の径方向内側の位置である。「対応する位置の近傍」の近傍とは、「対応する位置」に対して、加熱ローラ9aにおける第1回転軸I方向(搬送幅方向D2)に10mm以内の範囲をいう。
熱遮蔽部材920は、ヒータ910から加熱ローラ9aの第1回転軸I方向の端部902に向かう放射熱を遮蔽する。
【0055】
熱遮蔽部材920は、筒状の支持部材925により固定される。支持部材925は、加熱ローラ9aにおける第1回転軸I方向の両端部に形成される開口部903を介して、加熱ローラ9aにおける内部と外部とを跨るように配置される。支持部材925の一端は、熱遮蔽部材920に固定される。支持部材925の他端は、プリンタ1における装置本体Mのケース体BDやその他の部材に固定される。
【0056】
図3及び図5に示すように、熱遮蔽部材920は、ドーム形状を有する。加熱ローラ9aの第1回転軸I方向(第2方向D2)から視た場合、中央部に円形の孔部を有する幅広の環形状(ドーナツ形状)に形成される。熱遮蔽部材920の外縁921は、加熱ローラ9aの内周面における第1幅領域端部901eに対応する位置の近傍に対向して配置される。熱遮蔽部材920の内周縁923は、ヒータ910の外周面に沿うように対向してヒータ910の近傍に配置される。外縁921は、内周縁923よりも第1回転軸I方向における内側に位置する。
【0057】
熱遮蔽部材920は、加熱ローラ9aの第1回転軸I方向(第2方向D2)における内側に凹状(曲面状)の曲面部からなる光反射面922を有する。詳細には、熱遮蔽部材920における曲面部は、加熱ローラ9aの径方向における中心から加熱ローラ9aの内周面に向かうにしたがって第1回転軸I方向における内側に向かって延びるように形成されている。
【0058】
熱遮蔽部材920(光反射面922)は、例えば、SUSやアルミニウム等の軽金属により形成される。また、光反射面922は、凹状の曲面に、熱反射膜(例えば金膜)をコーティングして形成される。これにより、熱遮蔽部材920は、ヒータ910からの光を反射すると共に、ヒータ910からの光の一部を、図5の点線矢印に示すように、加熱ローラ9aの内周面における第1幅領域端部901eに対応する位置の近傍に向かうように反射する。また、熱遮蔽部材920は、ヒータ910からの放射熱が加熱ローラ9aの第1回転軸I方向の端部902に向かうことを遮蔽する。
【0059】
図4に示すように、非接触式の温度検出センサとしての第1サーミスタ970は、加熱ローラ9aの表面における第1回転軸I方向(第2方向D2)の中央部に近接して対向配置される。第1サーミスタ970は、加熱ローラ9aの表面における第1回転軸I方向の中央部の温度を検出する。第2サーミスタ980は、加熱ローラ9aの第1回転軸I方向の両端部近くの第1幅領域端部901eに対応する位置に近接して対向配置される。第2サーミスタ980は、加熱ローラ9aの表面における第1回転軸I方向の両端部近くの第1幅領域端部901eに対応する位置又は近傍の温度を検出する。
【0060】
第1サーミスタ970及び第2サーミスタ980には、サーモスタット990が電気的に接続されている。サーモスタット990は、第1サーミスタ970により検出される加熱ローラ9aの第1回転軸I方向における中央部の温度、及び第2サーミスタ980により検出される第1幅領域端部901eに対応する位置又は近傍の温度に基づいて電気抵抗値を変化させて、加熱ローラ9aが定着に必要な所定温度に保持されるように、ヒータ910の発熱量を自動的に調節する。
【0061】
次に、図1を参照して、第1実施形態のプリンタ1の動作について、簡単に説明する。
まず、給紙カセット52に収容された用紙Tに片面印刷を行う場合について説明する。
給紙カセット52に収容された用紙Tは、前送りコロ61及び給紙ローラ対63によって第1搬送路L1に送り出され、その後、第1合流部P1及び第1搬送路L1を介してレジストローラ対80に搬送される。
レジストローラ対80においては、用紙Tのスキュー補正や、トナー画像とのタイミング調整が行われる。
【0062】
レジストローラ対80から排出された用紙Tは、第1搬送路L1を介して感光体ドラム2と転写ローラ8との間に導入される。そして、用紙Tには、感光体ドラム2と転写ローラ8との間において、トナー画像が転写される。
その後、用紙Tは、感光体ドラム2と転写ローラ8との間から排出され、第2搬送路L2を介して、定着装置9における加熱ローラ9aと加圧ローラ9bとの間の定着ニップN9に導入される。そして、定着ニップN9においてトナーTNが溶融し、トナーTNが用紙Tに定着される。
【0063】
次いで、用紙Tは、第1ローラ対54aにより第3搬送路L3を通して排紙部50に搬送され、第3ローラ対53により排紙部50から排紙集積部M1に排出される。
このようにして、給紙カセット52に収容された用紙Tの片面印刷が完了する。
【0064】
手差しトレイ65に載置された用紙Tに片面印刷を行う場合には、手差しトレイ65に載置された用紙Tが、給紙コロ66によって手差し搬送路Laに送り出され、その後、第1合流部P1及び第1搬送路L1を介して、レジストローラ対80に搬送される。それ以降の動作は、前述した、給紙カセット52に収容された用紙Tの片面印刷の動作と同様であり、説明を省略する。
【0065】
次に、両面印刷を行う場合のプリンタ1の動作について説明する。
片面印刷の場合には、前述した通り、片面印刷がされた用紙Tが、排紙部50から排紙集積部M1に排出されて印刷動作が完了する。
これに対し、両面印刷を行う場合には、片面印刷がされた用紙Tが、戻し搬送路Lbを介して、片面印刷時とは表裏反転して、レジストローラ対80に再度搬送されることにより、用紙Tに両面印刷が施される。
【0066】
詳述すると、片面印刷がされた用紙Tが第3ローラ対53により排紙部50から排出されるまでは、前述した片面印刷の動作と同様である。而して、両面印刷の場合には、片面印刷された用紙Tが第3ローラ対53により保持されている状態において、第3ローラ対53の回転を停止させ、逆方向に回転させる。このように第3ローラ対53を逆方向に回転させると、第3ローラ対53に保持されている用紙Tは、第3搬送路L3を逆方向(排紙部50から第1分岐部Q1に向かう方向)に搬送される。
【0067】
前述したように、用紙Tが、第3搬送路L3を逆方向に搬送されると、(第1ローラ対54aではなく、)第2ローラ対54bに導入される。そして、用紙Tは、戻し搬送路Lb及び第2合流部P2を介して、第2搬送路L2に合流する。ここで、用紙Tは、片面印刷時とは表裏反転している。
【0068】
更に、用紙Tは、レジストローラ対80により前記スキュー補正や、タイミング調整が行われた後、第1搬送路L1を介して、感光体ドラム2と転写ローラ8との間に導入される。用紙Tは、戻し搬送路Lbを経由することにより、非印刷面が感光体ドラム2に対向するので、非印刷面にトナー画像が転写され、その結果、両面印刷が施される。
【0069】
次に、図3から図5を参照して、第1実施形態のプリンタ1の特徴部分である定着装置9の動作について説明する。
第1実施形態のプリンタ1においては、プリンタ1の電源をONにすると、電源部から帯電部10、レーザスキャナユニット4、現像器16、転写ローラ8、プリンタ制御部(図示せず)、定着装置9、及びヒータ910のそれぞれヘ電力が供給されると共に、プリンタ制御部からの制御信号により帯電部10、レーザスキャナユニット4、現像器16、転写ローラ8、定着装置9及びヒータ910がそれぞれ制御される。そして、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程及び定着工程の各工程が順に行われる。
【0070】
具体的には、本実施形態のプリンタ1において、レジストローラ対80から送り出された用紙Tは、第1搬送路L1を通って感光体ドラム2と転写ローラ8との間の転写ニップNへ搬送される。このように用紙Tが感光体ドラム2へ向かって搬送されるとき、まず、帯電部10が、帯電工程において感光体ドラム2の表面全体を帯電させると共に、レーザスキャナユニット4が、露光工程においてレーザ光源(図示せず)から感光体ドラム2へ向けてレーザ光を照射し、感光体ドラム2の表面のうちレーザ光が照射された部分に静電潜像を形成する。
【0071】
次に、現像器16が、現像工程において帯電したトナーを現像ローラ17により感光体ドラム2へ供給することで、感光体ドラム2の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させて、トナー画像を現像する。続いて、転写ローラ8が、転写工程において感光体ドラム2と転写ローラ8との間を通過する用紙Tに、感光体ドラム2の表面に付着したトナー画像を転写する。
【0072】
そして、転写工程においてトナー画像が転写された用紙Tは、第2搬送路L2を通って定着装置9へ向けて搬送され、定着装置9における加熱ローラ9aと加圧ローラ9bとの間へ搬送される。
【0073】
また、プリンタ制御部からヒータ910へ出力される制御信号をONとすることで電源部からヒータ910への電力供給が開始されて、ヒータ910が発熱動作される。同時に、プリンタ制御部から加圧ローラ駆動部(図示せず)へ出力される制御信号をONとすることで電源部から加圧ローラ駆動部への電力供給が開始されて、加圧ローラ9bが回転駆動されると共に、加圧ローラ9bの回転駆動に伴って加熱ローラ9aが従動回転される。これによって、定着装置9は、定着工程において加熱ローラ9aと加圧ローラ9bとの間を通過する用紙Tに付着したトナーTNに対して、ヒータ910からの放射熱により加熱された加熱ローラ9aを介して熱が付与され、この熱によってトナーTNが溶解されると共に、加圧ローラ9bによって用紙Tに圧力を加えることで、トナー画像が用紙Tに定着される。
【0074】
定着装置9による前述のような定着動作時において、加熱ローラ9aは、加熱ローラ9aの内部に配置されたヒータ910から放射される光(放射熱)により、加熱ローラ9aの内側から加熱され、その加熱された熱が定着ニップN9に伝達される。
【0075】
ここで、第1実施形態では、最大幅(A4サイズ横方向)の用紙Tが定着ニップN9に搬送された場合における加熱ローラ9aの外周表面の最大通紙領域となる第1幅領域901aの端部901eに対応する位置の近傍に、光反射面922を有する熱遮蔽部材920が配置されている。そのため、ヒータ910からの放射熱が遮蔽される。これにより、第1幅領域901aの端部901eに対応する位置の近傍よりも外側への放熱が抑制される。つまり、通紙領域の外側の位置する加熱ローラ9aの第1回転軸I方向の端部902の温度上昇が抑制される。
【0076】
特に、熱遮蔽部材920の光反射面922は、加熱ローラ9aの第1回転軸I方向における内側に凹状の曲面部に形成されている。そのため、ヒータ910からの光の一部は、図5の点線矢印に示すように、加熱ローラ9aの内周面における第1幅領域端部901eに対応する位置の近傍に向かうように反射される。これにより、ヒータ910からの光は、加熱ローラ9aの第1幅領域901aに集光される。そして、定着時において最も熱エネルギーの消費が大きい加熱ローラ9aの第1幅領域901aの中央部における温度の落ち込みを抑制することができる。また、加熱ローラ9aの内周面における第1幅領域端部901eに対応する位置の近傍の温度を効率的に上昇させることができる。その結果、加熱ローラ9aの第1幅領域901a全体における温度分布を効率よく均一化することができる。
【0077】
次に、図6により、実施例及び比較例を用いて、第1実施形態の定着装置9をより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものでない。
第1実施形態の定着装置9において、第1サーミスタ970及び第2サーミスタ980を用いて、熱遮蔽部材920を有する場合と熱遮蔽部材を有しない場合(以下、「比較例」という)とにおける加熱ローラ9aの外周表面の温度の比較を行った。具体的には、第1サーミスタ970及び第2サーミスタ980を用いて、加熱ローラ9aの第1幅領域901aの中央部及び第1幅領域端部901eの温度それぞれを検出した。これらの各検出温度に基づいて、加熱ローラ9aの外周表面の第1回転軸I方向における温度分布の測定を行った。その結果、図6に示すような温度分布特性が得られた。
【0078】
図6に示すように、熱遮蔽部材920を有する第1実施形態の定着装置9では、加熱ローラ9aの第1回転軸I方向の端部902の温度は、比較例の場合に比べて低い。これにより、加熱ローラ9aの第1幅領域901aの端部901eよりも外側への放熱が抑制されていることが確認できる。また、第1実施形態の定着装置9では、加熱ローラ9aの第1幅領域端部901eより内側の温度は、比較例の場合に比べて、高く且つなだらかである。これにより、加熱ローラ9aの第1幅領域901aの温度が効率よく均一化されていることが確認できた。
【0079】
第1実施形態の定着装置9によれば、次のような効果が奏される。
第1実施形態の定着装置9は、最大幅の用紙Tが定着ニップN9に搬送された場合における加熱ローラ9a外周表面の最大通紙領域となる第1幅領域901aの端部901eに対応する位置の近傍に、熱遮蔽部材920が配置されている。
そのため、ヒータ910からの放射熱が第1幅領域端部901eよりも外側に移動することが抑制される。これにより、ヒータ910からの放射熱の放熱による熱損失を抑制することができる。そして、加熱ローラ9aの内周面における第1幅領域端部901eに対応する位置の近傍を効率よく加熱して昇温することが可能である。その結果、加熱ローラ9aを定着に必要な所定温度に加熱して昇温させるために要する熱エネルギーを節減することができる。また、定着装置9における消費電力を抑制することができる。
【0080】
また、第1実施形態においては、熱遮蔽部材920の外縁921は、加熱ローラ9aの内周面における第1幅領域端部901eに対応する位置の近傍に配置されている。
そのため、ヒータ910からの放射熱が加熱ローラ9aの内周面と熱遮蔽部材920の外縁921との間に形成される隙間から外側へ移動する放熱による熱損失を最小限に抑制することが可能である。また、第1幅領域端部901eの付近を昇温させる効率を最大限高くすることができる。
【0081】
また、第1実施形態においては、熱遮蔽部材920によって、第1幅領域端部901eよりも外側への放熱が抑制される熱エネルギーに相当する量の熱エネルギーを、第1幅領域901aの中央部側の加熱に活用できる。そのため、第1幅領域901a全体の温度上昇の速度を速くすることが可能である。これにより、定着開始(スタート)時におけるウォームアップ時間を短縮することができる。
【0082】
また、第1実施形態においては、熱遮蔽部材920は、加熱ローラ9aの第1回転軸I方向(第2方向D2)における内側に凹状の曲面部を有し、この凹状の曲面部に光反射面922が形成されている。
そのため、ヒータ910からの光は、加熱ローラ9aの内周面に全体的に反射される。また、光反射面922に反射された反射光の一部は、加熱ローラ9aの内周面における第1幅領域端部901eに対応する位置の近傍に向かうように反射される。
これにより、ヒータ910からの光は、加熱ローラ9aの第1幅領域901aに対応する位置に集光される。そのため、定着時において最も熱エネルギーの消費が大きい加熱ローラ9aの第1幅領域901aの中央部における温度の落ち込みを抑制することができる。また、加熱ローラ9aの内周面における第1幅領域端部901eに対応する位置の近傍の温度を効率的に上昇させることができる。その結果、加熱ローラ9aの第1幅領域901aの全体における温度分布を効率よく均一化することができる。
【0083】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の定着装置9Aについて説明する。図7は、第2実施形態の定着装置9を第1回転軸I方向から視た縦断側面図である。図8は、第2実施形態の定着装置9を用紙搬送方向から視た縦断正面図である。
第2実施形態については、主として、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳しい説明を省略する。第2実施形態において、特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用される。また、第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0084】
図7及び図8に示すように、第2実施形態の定着装置9は、第1回転体としての加熱回転ベルト9aと、第2回転体としての加圧ローラ9bと、受圧部材940と、支持部材960と、2つのヒータ910,910と、熱遮蔽部材920と、非接触式の温度検出センサとしてのサーミスタ970及び980と、を備える。
【0085】
図7に示すように、加熱回転ベルト9aは、環状であると共に可撓性及び耐熱性を有する回転ベルトである。加熱回転ベルト9aは、用紙Tの搬送方向D1と直交する第2方向D2に延びる第1回転軸Iを中心に、回転可能に構成される。例えば、加熱回転ベルト9aは、肉厚が30から50μm程度のSUS(ステンレス鋼)、Ni鋼等の金属ベルトの外周面に、厚さが200から500μm程度のシリコーンゴムの弾性層を設け、更に、この弾性層の外周面に、肉厚が30μm程度のPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂製の耐熱性フィルムからなる離型層を設けることで構成される。
【0086】
図7及び図8に示すように、2つのヒータ910,910は、加熱回転ベルト9aの内部における支持部材960よりも搬送方向D1の下流側(図8において左側)及び上流側(図8において右側)それぞれに設置される。これら2つのヒータ910は、加熱回転ベルト9aと加圧ローラ9bとの間に挟持されて搬送される用紙Tに、加熱回転ベルト9aを介して熱を付与する。これにより、トナー画像が転写された用紙Tを定着ニップN9に搬送し、通過させることで、用紙T上のトナーTNが溶融して用紙Tに定着される。
【0087】
図7に示すように、受圧部材940は、加熱回転ベルト9aの内部において、加熱回転ベルト9aの第1回転軸I方向(第2方向D2)に長く延びて形成される。受圧部材940は、その長手方向の両端それぞれにおいて、不図示の筐体の長手方向両端に固定される。
受圧部材940は、加熱回転ベルト9aを介して加圧ローラ9bとの間に定着ニップN9を形成する部材である。受圧部材940には、加圧ローラ9bから加熱回転ベルト9aが受ける圧力を受け止めるために、一定以上の強度が必要である。また、受圧部材940は、加熱回転ベルト9aの内周面と接しているため、熱容量、耐熱性、耐摩耗性などにも優れていることが必要である。これらの必要条件を備えるため、受圧部材940は、例えば、SUS(ステンレス鋼)から構成される。なお、前記の条件を備えるのであれば、受圧部材940は、樹脂から構成することも可能である。
【0088】
受圧部材940の具体的な構成について説明する。受圧部材940は、図7に示すように、加熱回転ベルト9aの内周面に摺動可能に接触する摺接平板部941と、摺接平板部941に対して垂直に延びる2つの側面板部942,942と、これら2つの側面板部942,942と摺接平板部941とを繋ぐ2つの傾斜板部943,943と、を有する。受圧部材940は、加熱回転ベルト9aの第1回転軸I方向(第2方向)D2の断面において、加熱回転ベルト9aの径方向中心に向けて開放したC字形状を有する。受圧部材940は、例えば、厚みが0.2mm程度のSUS(ステンレス鋼)から構成される。受圧部材940が摺接平板部941の両側に2つの傾斜板部943,943を有することで、受圧部材940に対する加熱回転ベルト9aの摺動が滑らかになる。
【0089】
図7に示すように、支持部材960は、受圧部材940が加圧ローラ9bから受ける圧力を受け止めて支持するために、すなわち、受圧部材940を補強するために、加熱回転ベルト9aの内部に配置される。支持部材960は、加熱回転ベルト9aの第1回転軸I方向(第2方向)D2の断面において、略T字形状を有する。具体的には、支持部材960は、断熱部材962を挟んで、受圧部材940の摺接平板部941に突き当てられる下端板部960Aと、加熱回転ベルト9aの径方向中心に向かって延びる立上げ板部960Bとを有する。立上げ板部960Bは、その自由端が加熱回転ベルト9aの内周面に近接する高さを有する。
【0090】
図7に示すように、支持部材960は、その下端板部の長手方向両端部を不図示の筐体の長手方向両端に固定される。
前述のような支持部材960の存在により、定着ニップN9における圧力(定着圧)が安定し、定着ニップN9を通過する用紙Tに強い圧力を加えることが可能となり、定着不良を防止できる。
【0091】
支持部材960は、厚みが3mm程度のSUS(ステンレス鋼)から構成される。断熱部材962は、厚みが2mm程度の耐熱性シリコンスポンジ、シリコン繊維加工布、ガラスウールなどから構成されており、受圧部材940からの伝熱を抑制する。また、支持部材960の下端板部960Aの表面及び立上げ板部960Bの両面の全域は、反射部材963により覆われている。反射部材963は、厚みが0.5mm程度のアルミニウムや金膜などで構成され、ヒータ910の輻射熱が光熱変換しないように輻射熱を反射する。
【0092】
熱遮蔽部材920について説明する。
図8に示すように、熱遮蔽部材920は、加熱回転ベルト9aの内部で、加熱回転ベルト9aの第1回転軸I方向における両端部の近傍の第1幅領域端部901eに対応する位置の近傍で且つ2つのヒータ910の上部に配置される。熱遮蔽部材920は、支持部材960の立上げ板部960Bに固定されて支持されており、立上げ板部960Bの両側に突出されている。
【0093】
図7に示すように、熱遮蔽部材920は、加熱回転ベルト9aの第1回転軸I方向(第2方向D2)から視た場合、長方形の板状に形成される。
また、図8に示すように、熱遮蔽部材920は、上方から視た場合、第1回転軸I方向の外側に凸の円弧状に湾曲して形成される。熱遮蔽部材920は、長手方向両端の外縁921の角部が加熱回転ベルト9aの内周面における第1幅領域端部901eに対応する位置の近傍に対向するように配置される。熱遮蔽部材920は、加熱ローラ9aの第1回転軸I方向(第2方向D2)における内側に、凹状(曲面状)の曲面部からなる光反射面922を有する。詳細には、熱遮蔽部材920における曲面部は、加熱回転ベルト9aの径方向における中心から加熱回転ベルト9aの内周面に向かうにしたがって、第1回転軸I方向における内側に向かって延びるように形成されている。
これにより、熱遮蔽部材920は、2つのヒータ910から加熱回転ベルト9aの第1回転軸I方向の端部902に向かう放射熱を遮蔽する。これにより、熱遮蔽部材920は、通紙領域の外側に位置する加熱回転ベルト9aの第1回転軸I方向における端部902の温度の上昇を抑制する。
【0094】
以上の通り、第2実施形態の定着装置9においては、第1回転体として、環状であると共に可撓性を有する回転ベルトからなる加熱回転ベルト9aを使用している。
そのため、加熱ローラを用いる場合に比べて、加熱回転ベルト9aの熱容量を小さくすることが可能である。これにより、熱遮蔽部材920の存在に伴ってヒータ910からの放射熱が第1幅領域端部901eよりも外側に移動することによる放熱は抑制され、これにより、熱損失が抑制される。また、第1幅領域端部901e付近の昇温効率をより高めて、定着装置9のウォームアップに要する時間を一層短縮化することができる。
【0095】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した第1実施形態及び第2実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施形態においては、加圧ローラ9b(第2回転体)を回転駆動させ、加熱ローラ又は加熱回転ベルト9a(第1回転体)を従動回転させているが、これに制限されず、第1回転体を回転駆動させ、第2回転体を従動回転させてもよい。
【0096】
第1実施形態では、熱遮蔽部材920は、加熱回転ベルト9aの第1回転軸I方向(第2方向D2)から視た場合に、円形の環形状に形成されているが、これに限定されない。例えば、熱遮蔽部材920は、加熱回転ベルト9aの第1回転軸I方向(第2方向D2)から視た場合に、長方形の板状に形成されていてもよい。
【0097】
また、第2実施形態では、熱遮蔽部材920は、加熱回転ベルト9aの第1回転軸I方向(第2方向D2)から視た場合に、長方形の板状に形成されているが、これに限定されない。例えば、熱遮蔽部材920は、加熱回転ベルト9aの第1回転軸I方向(第2方向D2)から視た場合に、2つのヒータ910を取り囲み、支持部材960及び受圧部材940の位置を避けるように、略円形状に形成されていてもよい。
本発明の定着装置は、ユニット化され、画像形成装置の装置本体から着脱自在に構成されていてもよく、あるいは、画像形成装置の装置本体と一体的に構成されていてもよい。
【0098】
また、本発明の画像形成装置の種類は、特に限定がなく、コピー機、プリンタ、ファクシミリ、又はこれらの複合機などであってもよい。
シート状の被転写材は、用紙に制限されず、例えば、フィルムシートであってもよい。
【符号の説明】
【0099】
1……プリンタ(画像形成装置)、2……感光体ドラム(像担持体)、16……現像器、9……定着装置、9a……加熱ローラ又は加熱回転ベルト(第1回転体)、9b……加圧ローラ(第2回転体)、901a…第1幅領域、901e……第1幅領域端部、902……端部、910……ヒータ、920……熱遮蔽部材、922……光反射面、940……受圧部材、960……支持部材、I……第1回転軸、N9……定着ニップ、T……用紙(被転写材)、TN……トナー
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び定着装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、用紙に画像を形成(印刷)するための装置として、コピー機、プリンタ、ファクシミリ又はこれらの複合機などの画像形成装置が知られている。画像形成装置においては、感光体ドラムの表面を帯電させる帯電工程、帯電した感光体ドラムにレーザ光を照射して感光体ドラムの表面に静電潜像を形成する露光工程、感光体ドラムの表面に形成された静電潜像にトナーを付着させて現像を行う現像工程、感光体ドラムの表面に付着したトナーから形成されるトナー画像を用紙へ転写する転写工程、及び用紙に転写されたトナー画像を用紙に定着させる定着工程の各工程が順次行われることによって、用紙に画像が形成される。
【0003】
上記の各工程のうち、定着工程では、用紙に転写されたトナー画像を構成するトナーを用紙に定着させるために、トナーに熱を与えてトナーを溶融させる必要がある。定着工程を行う定着装置として、従来から、加熱ローラと、加熱ローラとによりトナー画像が転写された用紙が搬送される定着ニップを形成する加圧ローラと、加熱ローラの内側から加熱ローラを加熱するヒータとを備える定着装置が使用されている。
【0004】
近年、省エネルギー化の対応により、加熱ローラの内部に配置されるヒータが放射するエネルギーを効率よく利用することが望まれている。
エネルギーを効率よく利用するために、加熱ローラの厚さを薄くすることにより加熱ローラの熱容量を小さくする定着装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。熱容量が小さい加熱ローラを備えた定着装置によれば、定着装置のウォームアップに要する時間の短縮化を図ることができるので、省エネルギー化に対応することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−177624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の印刷速度の高速化に伴い、定着装置のウォームアップに要する時間の更なる短縮化が望まれている。一般的に、画像形成装置は、用紙の搬送方向に直交する搬送幅方向において最大幅の用紙が通過する第1幅領域(最大通紙領域)の端部近傍の温度が一定以上になったときに、印刷が開始されるように設計されている。特許文献1に記載の定着装置においては、加熱ローラの軸方向における両端部に特段の工夫がなされておらず、内部に配置されたヒータからの熱が加熱ローラの軸方向における両端部から放熱しやすい。そのため、加熱ローラの加熱を効率よく行うことができない。従って、加熱ローラにおける第1幅領域(最大通紙領域)の端部近傍の温度を効率的に昇温させて、加熱ローラの温度分布を効率よく均一化させることが望まれる。
【0007】
本発明は、ヒータによる加熱ローラ等の加熱を効率よく行うことができると共に、加熱ローラ等における第1幅領域(最大通紙領域)の端部に対応する位置の近傍の温度を効率的に昇温させることができる定着装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記定着装置を備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1回転軸を中心に回転可能な中空状の第1回転体と、前記第1回転体の内部に配置され、該第1回転体を内側から加熱するヒータと、前記第1回転体に対向して配置され、前記第1回転体とによりシート状の被転写材が搬送される定着ニップを形成すると共に前記第1回転軸に平行な第2回転軸を中心に回転可能な第2回転体と、前記第1回転体に形成され、搬送方向に直交する搬送幅方向において最大幅の被転写材が通過する第1幅領域と、前記第1回転体の内部に配置される熱遮蔽部材であって、前記第1幅領域の前記第1回転軸方向における端部である第1幅領域端部に対応する位置の近傍に配置され、前記ヒータから前記第1回転体の端部に向かう放射熱を遮蔽する熱遮蔽部材と、を備える定着装置に関する。
【0009】
また、前記熱遮蔽部材の外縁は、前記第1回転体の内周面における前記第1幅領域端部に対応する位置の近傍に対向して配置されることが好ましい。
【0010】
また、前記熱遮蔽部材は、前記第1回転軸方向における内側に形成される光反射面を有することが好ましい。
【0011】
また、前記熱遮蔽部材は、前記第1回転軸方向における内側に凹状の曲面部を有することが好ましい。
【0012】
また、前記熱遮蔽部材は、前記ヒータからの光を反射すると共に、少なくとも前記ヒータからの光の一部を前記第1回転体の内周面における前記第1幅領域端部に対応する位置の近傍に向かうよう反射することが好ましい。
【0013】
また、前記第1回転体は、円筒状の回転ローラであることが好ましい。
【0014】
また、前記第1回転体は、環状であると共に可撓性を有する回転ベルトであることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、表面に静電潜像が形成される1又は複数の像担持体と、前記1又は複数の像担持体に形成された静電潜像にトナー画像を現像する現像器と、前記像担持体に形成されたトナー画像を直接的又は間接的にシート状の被転写材に転写する転写部と、前記定着装置と、を備える画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ヒータによる加熱ローラ等の加熱を効率よく行うことができると共に、加熱ローラ等における第1幅領域(最大通紙領域)の端部に対応する位置の近傍の温度を効率的に昇温させることができる定着装置を提供することができる。
また、本発明によれば、前記定着装置を備える画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態のプリンタ1における各構成要素の配置を説明するための図である。
【図2】第1実施形態の定着装置9を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態の定着装置9を第1回転軸I方向から視た縦断面図である。
【図4】第1実施形態の定着装置9を用紙Tの搬送方向D1から視た縦断面図である。
【図5】図4に示す定着装置9の部分拡大縦断図である。
【図6】第1実施形態の加熱ローラ9aにおける第1幅領域端部901eに対応する位置の近傍の温度分布を示す図である。
【図7】第2実施形態の定着装置9を第1回転軸I方向から視た縦断面図である。
【図8】第2実施形態の定着装置9を用紙Tの搬送方向D1から視た縦断図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1実施形態>
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1により、本発明の画像形成装置の第1実施形態としてのプリンタ1における全体構造を説明する。図1は、第1実施形態のプリンタ1における各構成要素の配置を説明するための図である。
【0019】
図1に示すように、画像形成装置としてのプリンタ1は、装置本体Mと、所定の画像情報に基づいてシート状の被転写材としての用紙Tに所定のトナー画像を形成する画像形成部GKと、用紙Tを画像形成部GKに給紙すると共にトナー画像が形成された用紙Tを排紙する給排紙部KHとを有する。
装置本体Mにおける外形は、筐体としてのケース体BDにより構成される。
【0020】
図1に示すように、画像形成部GKは、像担持体(感光体)としての感光体ドラム2と、帯電部10と、露光ユニットとしてのレーザスキャナユニット4と、現像器16と、トナーカートリッジ5と、トナー供給部6と、ドラムクリーニング部11と、除電器12と、転写ローラ8と、定着装置9とを備える。
【0021】
図1に示すように、給排紙部KHは、給紙カセット52と、手差し給紙部64と、用紙Tの搬送路Lと、レジストローラ対80と、排紙部50とを備える。
【0022】
以下、画像形成部GK及び給排紙部KHの各構成について詳細に説明する。
まず、画像形成部GKについて説明する。
画像形成部GKにおいては、感光体ドラム2の表面に沿って、上流側から下流側に順に、帯電部10による帯電、レーザスキャナユニット4による露光、現像器16による現像、転写ローラ8による転写、除電器12による除電、及びドラムクリーニング部11によるクリーニング、及び定着装置9による定着が行われる。
【0023】
感光体ドラム2は、円筒形状の部材からなり、感光体又は像担持体として機能する。感光体ドラム2は、搬送路Lにおける用紙Tの搬送方向に対して直交する方向に延びる機軸を中心に、矢印の方向に回転可能に配置される。感光体ドラム2の表面には、静電潜像が形成され得る。
【0024】
帯電部10は、感光体ドラム2の表面に対向して配置される。帯電部10は、感光体ドラム2の表面を一様に負(マイナス極性)又は正(プラス極性)に帯電させる。
【0025】
レーザスキャナユニット4は、露光ユニットとして機能するものであり、感光体ドラム2の表面から離間して配置される。レーザスキャナユニット4は、不図示のレーザ光源、ポリゴンミラー、ポリゴンミラー駆動用モータ等を有して構成される。
【0026】
レーザスキャナユニット4は、PC(パーソナルコンピュータ)等の外部機器から入力された画像情報に基づいて、感光体ドラム2の表面を走査露光する。レーザスキャナユニット4により走査露光されることで、感光体ドラム2の表面の露光された部分の電荷が除去される。これにより、感光体ドラム2の表面に静電潜像が形成される。
【0027】
現像器16は、感光体ドラム2に対応して設けられ、感光体ドラム2の表面に対向して配置される。現像器16は、感光体ドラム2に形成された静電潜像に単色(通常はブラック)のトナーを付着させて、単色のトナー画像を感光体ドラム2の表面に形成する。現像器16は、感光体ドラム2の表面に対向配置された現像ローラ17、トナー攪拌用の攪拌ローラ18等を有して構成される。
【0028】
トナーカートリッジ5は、現像器16に対応して設けられており、現像器16に対して供給されるトナーを収容する。
【0029】
トナー供給部6は、トナーカートリッジ5及び現像器16に対応して設けられており、トナーカートリッジ5に収容されたトナーを現像器16に対して供給する。トナー供給部6と現像器16とは、不図示のトナー供給路により結ばれている。
【0030】
転写ローラ8は、感光体ドラム2の表面に現像されたトナー画像を用紙Tに転写させる。転写ローラ8には、不図示の転写バイアス印加部により、感光体ドラム2に形成されたトナー画像を用紙Tに転写させるための転写バイアスが印加される。
【0031】
転写ローラ8は、感光体ドラム2に対して当接したり離間したりする。具体的には、転写ローラ8は、感光体ドラム2に当接される当接位置と、感光体ドラム2から離間する離間位置とに移動可能に構成される。詳細には、転写ローラ8は、感光体ドラム2に現像されたトナー画像を用紙Tに転写させる場合には当接位置に配置され、他の場合には離間位置に配置される。
【0032】
感光体ドラム2と転写ローラ8との間で、搬送路Lを搬送される用紙Tが挟み込まれる。挟み込まれた用紙Tは、感光体ドラム2の表面に押し当てられる。感光体ドラム2と転写ローラ8との間で、転写ニップNが形成される。転写ニップNにおいて、感光体ドラム2に現像されたトナー画像が用紙Tに転写される。
【0033】
除電器12は、感光体ドラム2の表面に対向して配置される。除電器12は、感光体ドラム2の表面に光を照射することにより、転写が行われた後の感光体ドラム2の表面を除電する(電荷を除去する)。
【0034】
ドラムクリーニング部11は、感光体ドラム2の表面に対向して配置される。ドラムクリーニング部11は、感光体ドラム2の表面に残存したトナーや付着物を除去すると共に、除去されたトナー等を所定の回収機構へ搬送して、回収させる。
【0035】
定着装置9は、用紙Tに転写されたトナー画像を構成するトナーを溶融及び加圧して、用紙Tに定着させる。定着装置9は、ヒータにより加熱される加熱回転体(加熱ローラ)9aと、加熱回転体9aに圧接される加圧回転体(加圧ローラ)9bと、を備える。加熱回転体9aと加圧回転体9bとは、トナー画像が転写された用紙Tを挟み込んで加圧すると共に、搬送する。加熱回転体9aと加圧回転体9bとの間に挟み込まれた状態で用紙Tが搬送されることで、用紙Tに転写されたトナーは、溶融及び加圧され、用紙Tに定着される。定着装置9の詳細については、後述する。
【0036】
次に、給排紙部KHについて説明する。
図1に示すように、装置本体Mの下部には、用紙Tを収容する1個の給紙カセット52が配置される。給紙カセット52は、装置本体Mの前側(図1における右側)から水平方向に引き出し可能に構成される。給紙カセット52には、用紙Tが載置される載置板60が配置される。給紙カセット52には、用紙Tが載置板60の上に積層された状態で収容される。載置板60に載置された用紙Tは、給紙カセット52における用紙送り出し側の端部(図1において右側の端部)に配置されるカセット給紙部51により搬送路Lに送り出される。カセット給紙部51は、載置板60上の用紙Tを取り出すための前送りコロ61と、用紙Tを1枚ずつ搬送路Lに送り出すための給紙ローラ対63からなる重送防止機構を備える。
【0037】
装置本体Mの前面(図1において右側)には、手差し給紙部64が設けられる。手差し給紙部64は、給紙カセット52にセットされる用紙Tとは異なる大きさや種類の用紙Tを装置本体Mに供給することを主目的として設けられる。手差し給紙部64は、閉状態において装置本体Mの前面の一部を構成する手差しトレイ65と、給紙コロ66とを備える。手差しトレイ65は、その下端が給紙コロ66の近傍に回動自在(開閉自在)に取り付けられる。開状態の手差しトレイ65には、用紙Tが載置される。給紙コロ66は、開状態の手差しトレイ65に載置された用紙Tを手差し搬送路Laに給紙する。
【0038】
装置本体Mにおける上方側には、排紙部50が設けられる。排紙部50は、第3ローラ対53により用紙Tを装置本体Mの外部に排紙する。排紙部50の詳細については後述する。
【0039】
用紙Tを搬送する搬送路Lは、カセット給紙部51から転写ニップNまでの第1搬送路L1と、転写ニップNから定着装置9までの第2搬送路L2と、定着装置9から排紙部50までの第3搬送路L3と、手差し給紙部64から供給される用紙を第1搬送路L1に合流させる手差し搬送路Laと、第3搬送路L3を上流側から下流側へ搬送する用紙を表裏反転させて第1搬送路L1に戻す戻り搬送路Lbとを備える。
【0040】
また、第1搬送路L1の途中には、第1合流部P1及び第2合流部P2が設けられている。第3搬送路L3の途中には、第1分岐部Q1が設けられている。
第1合流部P1は、手差し搬送路Laが第1搬送路L1に合流する合流部である。第2合流部P2は、戻り搬送路Lbが第1搬送路L1に合流する合流部である。
第1分岐部Q1は、戻り搬送路Lbが第3搬送路L3から分岐する分岐部で、第1ローラ対54a及び第2ローラ対54bを有する。第1ローラ対54aの一方のローラと第2ローラ対54bの一方のローラとは兼用される。
【0041】
第1搬送路L1の途中(詳細には、第2合流部P2と転写ローラ8との間)には、用紙Tを検出するためのセンサと、用紙Tのスキュー(斜め給紙)補正や画像形成部GKにおけるトナー画像の形成とタイミングを合わせるためのレジストローラ対80が配置される。センサは、用紙Tの搬送方向におけるレジストローラ対80の直前(搬送方向における上流側)に配置される。レジストローラ対80は、センサからの検出信号情報に基づいて上述の補正やタイミング調整をして用紙Tを搬送する。
【0042】
戻し搬送路Lbは、用紙Tに両面印刷を行う際に、既に印刷されている面とは反対面(非印刷面)を感光体ドラム2に対向させるために設けられる搬送路である。
戻し搬送路Lbによれば、第1分岐部Q1から第1ローラ対54aにより排紙部50側に搬送された用紙Tを表裏反転させて第2ローラ対54bにより第1搬送路L1に戻して、転写ローラ8の上流側に配置されたレジストローラ対80の上流側に搬送させることができる。戻し搬送路Lbにより表裏反転された用紙Tには、感光体ドラム2により非印刷面に対して所定のトナー画像が転写される。
【0043】
第3搬送路L3における端部には、排紙部50が形成される。排紙部50は、装置本体Mにおける上方側に配置される。排紙部50は、装置本体Mの前面側(図1において右側、手差し給紙部64側)に向けて開口している。排紙部50は、第3搬送路L3を搬送される用紙Tを第3ローラ対53により装置本体Mの外部に排紙する。
【0044】
排紙部50における開口側には、排紙集積部M1が形成される。排紙集積部M1は、装置本体Mにおける上面(外面)に形成される。排紙集積部M1は、装置本体Mにおける上面が下方に窪んで形成された部分である。排紙集積部M1の底面は、装置本体Mにおける上面の一部を構成する。排紙集積部M1には、所定のトナー画像が形成され排紙部50から排紙された用紙Tが積層して集積される。
なお、各搬送路の所定位置には用紙検出用のセンサが配置される。
【0045】
以下、図面を参照して、第1実施形態のプリンタ1における特徴部分に係る構成について説明する。図2は、第1実施形態の定着装置9を示す斜視図である。図3は、第1実施形態の定着装置9を第1回転軸I方向から視た縦断側面図である。図4は、第1実施形態の定着装置9を用紙搬送方向から視た縦断正面図である。図5は、図4に示す定着装置9の部分拡大縦断正面図である。
【0046】
図2及び図3に示すように、第1実施形態の定着装置9は、第1回転体としての加熱ローラ9aと、第2回転体としての加圧ローラ9bと、ヒータ910と、熱遮蔽部材920と、非接触式の温度検出センサとしての第1サーミスタ970及び第2サーミスタ980と、を備える。
【0047】
図3及び図4に示すように、加熱ローラ9aは、中空状の円筒状の回転ローラである。加熱ローラ9aは、用紙Tの搬送方向D1と直交する搬送幅方向(第2方向)D2に延びる第1回転軸Iを中心に回転可能に構成される。例えば、加熱ローラ9aは、肉厚が1mm程度のAl(アルミニウム)等の円筒状の金属ローラの外周面に、肉厚が30μm程度のPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂製の耐熱性コート又はフィルムからなる離型層を設けることで構成される。加熱ローラ9aは、不図示の軸受部材を介して、プリンタ1における装置本体Mのケース体BDやその他の部材により回転可能に支持される。
【0048】
図3及び図4に示すように、加圧ローラ9bは、その外周面が、加熱ローラ9aの外周面に当接するように対向して配置される。加圧ローラ9bは、第1回転軸I方向(第2方向)D2において加熱ローラ9aよりも短く形成されている。加圧ローラ9bの第2回転軸J方向の中点と加熱ローラ9aの第1回転軸I方向の中点とは略一致している。
加圧ローラ9bは、加熱ローラ9aの第1回転軸Iと平行な第2回転軸Jを中心に回転可能に構成される。例えば、加圧ローラ9bは、直径が14mm程度のアルミニウムや鉄等の芯金の外周面に、肉厚が5.5mm程度でアスカーC硬度が15から60のシリコーンゴム等の弾性層を設け、更に、この弾性層の表面に厚み50μm程度のPFAやPTFE等のフッ素樹脂からなる離型層を設けることで構成される。
【0049】
また、図4に示すように、加圧ローラ9bは、第2回転軸J方向(第2方向D2)の両端部から、第2回転軸Jに平行なローラ軸931が突出して構成される。このローラ軸931は、プリンタ1における装置本体Mのケース体BDやその他の部材により回転可能に支持される。
加圧ローラ9bのローラ軸931には、加圧ローラ9bを回転駆動させる第2回転体駆動部としての電動モータ等の加圧ローラ駆動部(図示せず)が接続される。この加圧ローラ駆動部により、加圧ローラ9bが所定速度で回転駆動されることで、加圧ローラ9bの外周面に当接する加熱ローラ9aが従動して回転される。これにより、加圧ローラ9bと加熱ローラ9aとの間で、トナー画像が転写された用紙Tを挟持する定着ニップN9が形成される。
【0050】
図3及び図4に示すように、ヒータ910は、加熱ローラ9aを内側から加熱して、加熱ローラ9aと加圧ローラ9bとの当接部である定着ニップN9を加熱する。ヒータ910は、例えば、ハロゲンヒータから構成される。ヒータ910は、加熱ローラ9aの内部に加熱ローラ9aの第1回転軸Iに沿って配置される。ヒータ910は、加熱ローラ9aの第1回転軸I方向の両端部から突出する長手方向の両端部において、不図示の支持部材を介してプリンタ1における装置本体Mのケース体BDやその他の部材に固定される。そして、ヒータ910は、加熱ローラ9aと加圧ローラ9bとの間に挟持されて搬送される用紙Tに加熱ローラ9aを介して加熱する。これにより、トナー画像が転写された用紙Tを定着ニップN9に搬送し、通過させることで、用紙T上のトナーTNが溶融して用紙Tに定着される。
【0051】
定着ニップN9に搬送される用紙Tは、定着装置9における通紙領域内を通過して搬送された場合に、トナー画像が定着される。「通紙領域」とは、用紙Tの搬送方向D1に直交する搬送幅方向(第2方向)D2において定着ニップN9に搬送される用紙Tが加熱回転ベルト9aと加圧ローラ9bとに挟まれて通過する領域のことである。通紙領域は、加熱ローラ9a及び加圧ローラ9bにおける搬送幅方向D2の中央を基準として、当該プリンタ1において使用可能な用紙の最大サイズ(最大幅)に対応して形成(設定)される。
本実施形態の定着装置9においては、搬送幅方向D2において最大幅(第1回転軸I方向における最大長さ)の用紙Tを定着ニップN9に搬送させる通紙領域として、最大通紙領域を設定する。例えば、A4サイズの用紙Tにおける長辺が加熱ローラ9aの第1回転軸I方向(搬送幅方向D2)に平行な状態(A4サイズ横方向)で、A4サイズの用紙Tが定着ニップN9に搬送されるように、最大通紙領域を形成(設定)する。最大通紙領域は、プリンタごとにそれぞれ設定される。
【0052】
具体的には、図2及び図4に示すように、加熱ローラ9aには、第1幅領域901aが形成される。加熱ローラ9aの外周表面には、最大幅の用紙T、例えば、A4サイズの用紙Tが横方向で定着ニップN9に搬送される場合において、用紙Tが通過する最大通紙領域となる第1幅領域901aが形成(設定)される。加圧ローラ9bの外周表面には、加熱ローラ9aの第1幅領域901aに対応した最大通紙領域となる第2幅領域901bが形成(設定)される。
【0053】
最大幅の用紙Tが通過する場合、用紙Tの第1回転軸I方向における両端部に対応する位置は、第1幅領域端部901e、901eとなる。つまり、用紙Tは、第1幅領域端部901e、901eの内側の領域としての第1幅領域901aを通過して搬送される。
第1幅領域端部901e、901eは、加熱ローラ9aにおける第1回転軸I方向(搬送幅方向D2)の両端部902、902の近傍であって、両端部902、902から第1回転軸I方向の内側に所定距離だけ離れた位置に形成(設定)される。
【0054】
図4及び図5に示すように、熱遮蔽部材920は、加熱ローラ9aの内部に配置される。熱遮蔽部材920は、加熱ローラ9aの内部において、第1幅領域901aの第1幅領域端部901e、901eに対応する位置の近傍に配置される。「対応する位置」とは、第1幅領域端部901eに対して、加熱ローラ9a(第1回転体)の径方向内側の位置である。「対応する位置の近傍」の近傍とは、「対応する位置」に対して、加熱ローラ9aにおける第1回転軸I方向(搬送幅方向D2)に10mm以内の範囲をいう。
熱遮蔽部材920は、ヒータ910から加熱ローラ9aの第1回転軸I方向の端部902に向かう放射熱を遮蔽する。
【0055】
熱遮蔽部材920は、筒状の支持部材925により固定される。支持部材925は、加熱ローラ9aにおける第1回転軸I方向の両端部に形成される開口部903を介して、加熱ローラ9aにおける内部と外部とを跨るように配置される。支持部材925の一端は、熱遮蔽部材920に固定される。支持部材925の他端は、プリンタ1における装置本体Mのケース体BDやその他の部材に固定される。
【0056】
図3及び図5に示すように、熱遮蔽部材920は、ドーム形状を有する。加熱ローラ9aの第1回転軸I方向(第2方向D2)から視た場合、中央部に円形の孔部を有する幅広の環形状(ドーナツ形状)に形成される。熱遮蔽部材920の外縁921は、加熱ローラ9aの内周面における第1幅領域端部901eに対応する位置の近傍に対向して配置される。熱遮蔽部材920の内周縁923は、ヒータ910の外周面に沿うように対向してヒータ910の近傍に配置される。外縁921は、内周縁923よりも第1回転軸I方向における内側に位置する。
【0057】
熱遮蔽部材920は、加熱ローラ9aの第1回転軸I方向(第2方向D2)における内側に凹状(曲面状)の曲面部からなる光反射面922を有する。詳細には、熱遮蔽部材920における曲面部は、加熱ローラ9aの径方向における中心から加熱ローラ9aの内周面に向かうにしたがって第1回転軸I方向における内側に向かって延びるように形成されている。
【0058】
熱遮蔽部材920(光反射面922)は、例えば、SUSやアルミニウム等の軽金属により形成される。また、光反射面922は、凹状の曲面に、熱反射膜(例えば金膜)をコーティングして形成される。これにより、熱遮蔽部材920は、ヒータ910からの光を反射すると共に、ヒータ910からの光の一部を、図5の点線矢印に示すように、加熱ローラ9aの内周面における第1幅領域端部901eに対応する位置の近傍に向かうように反射する。また、熱遮蔽部材920は、ヒータ910からの放射熱が加熱ローラ9aの第1回転軸I方向の端部902に向かうことを遮蔽する。
【0059】
図4に示すように、非接触式の温度検出センサとしての第1サーミスタ970は、加熱ローラ9aの表面における第1回転軸I方向(第2方向D2)の中央部に近接して対向配置される。第1サーミスタ970は、加熱ローラ9aの表面における第1回転軸I方向の中央部の温度を検出する。第2サーミスタ980は、加熱ローラ9aの第1回転軸I方向の両端部近くの第1幅領域端部901eに対応する位置に近接して対向配置される。第2サーミスタ980は、加熱ローラ9aの表面における第1回転軸I方向の両端部近くの第1幅領域端部901eに対応する位置又は近傍の温度を検出する。
【0060】
第1サーミスタ970及び第2サーミスタ980には、サーモスタット990が電気的に接続されている。サーモスタット990は、第1サーミスタ970により検出される加熱ローラ9aの第1回転軸I方向における中央部の温度、及び第2サーミスタ980により検出される第1幅領域端部901eに対応する位置又は近傍の温度に基づいて電気抵抗値を変化させて、加熱ローラ9aが定着に必要な所定温度に保持されるように、ヒータ910の発熱量を自動的に調節する。
【0061】
次に、図1を参照して、第1実施形態のプリンタ1の動作について、簡単に説明する。
まず、給紙カセット52に収容された用紙Tに片面印刷を行う場合について説明する。
給紙カセット52に収容された用紙Tは、前送りコロ61及び給紙ローラ対63によって第1搬送路L1に送り出され、その後、第1合流部P1及び第1搬送路L1を介してレジストローラ対80に搬送される。
レジストローラ対80においては、用紙Tのスキュー補正や、トナー画像とのタイミング調整が行われる。
【0062】
レジストローラ対80から排出された用紙Tは、第1搬送路L1を介して感光体ドラム2と転写ローラ8との間に導入される。そして、用紙Tには、感光体ドラム2と転写ローラ8との間において、トナー画像が転写される。
その後、用紙Tは、感光体ドラム2と転写ローラ8との間から排出され、第2搬送路L2を介して、定着装置9における加熱ローラ9aと加圧ローラ9bとの間の定着ニップN9に導入される。そして、定着ニップN9においてトナーTNが溶融し、トナーTNが用紙Tに定着される。
【0063】
次いで、用紙Tは、第1ローラ対54aにより第3搬送路L3を通して排紙部50に搬送され、第3ローラ対53により排紙部50から排紙集積部M1に排出される。
このようにして、給紙カセット52に収容された用紙Tの片面印刷が完了する。
【0064】
手差しトレイ65に載置された用紙Tに片面印刷を行う場合には、手差しトレイ65に載置された用紙Tが、給紙コロ66によって手差し搬送路Laに送り出され、その後、第1合流部P1及び第1搬送路L1を介して、レジストローラ対80に搬送される。それ以降の動作は、前述した、給紙カセット52に収容された用紙Tの片面印刷の動作と同様であり、説明を省略する。
【0065】
次に、両面印刷を行う場合のプリンタ1の動作について説明する。
片面印刷の場合には、前述した通り、片面印刷がされた用紙Tが、排紙部50から排紙集積部M1に排出されて印刷動作が完了する。
これに対し、両面印刷を行う場合には、片面印刷がされた用紙Tが、戻し搬送路Lbを介して、片面印刷時とは表裏反転して、レジストローラ対80に再度搬送されることにより、用紙Tに両面印刷が施される。
【0066】
詳述すると、片面印刷がされた用紙Tが第3ローラ対53により排紙部50から排出されるまでは、前述した片面印刷の動作と同様である。而して、両面印刷の場合には、片面印刷された用紙Tが第3ローラ対53により保持されている状態において、第3ローラ対53の回転を停止させ、逆方向に回転させる。このように第3ローラ対53を逆方向に回転させると、第3ローラ対53に保持されている用紙Tは、第3搬送路L3を逆方向(排紙部50から第1分岐部Q1に向かう方向)に搬送される。
【0067】
前述したように、用紙Tが、第3搬送路L3を逆方向に搬送されると、(第1ローラ対54aではなく、)第2ローラ対54bに導入される。そして、用紙Tは、戻し搬送路Lb及び第2合流部P2を介して、第2搬送路L2に合流する。ここで、用紙Tは、片面印刷時とは表裏反転している。
【0068】
更に、用紙Tは、レジストローラ対80により前記スキュー補正や、タイミング調整が行われた後、第1搬送路L1を介して、感光体ドラム2と転写ローラ8との間に導入される。用紙Tは、戻し搬送路Lbを経由することにより、非印刷面が感光体ドラム2に対向するので、非印刷面にトナー画像が転写され、その結果、両面印刷が施される。
【0069】
次に、図3から図5を参照して、第1実施形態のプリンタ1の特徴部分である定着装置9の動作について説明する。
第1実施形態のプリンタ1においては、プリンタ1の電源をONにすると、電源部から帯電部10、レーザスキャナユニット4、現像器16、転写ローラ8、プリンタ制御部(図示せず)、定着装置9、及びヒータ910のそれぞれヘ電力が供給されると共に、プリンタ制御部からの制御信号により帯電部10、レーザスキャナユニット4、現像器16、転写ローラ8、定着装置9及びヒータ910がそれぞれ制御される。そして、帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程及び定着工程の各工程が順に行われる。
【0070】
具体的には、本実施形態のプリンタ1において、レジストローラ対80から送り出された用紙Tは、第1搬送路L1を通って感光体ドラム2と転写ローラ8との間の転写ニップNへ搬送される。このように用紙Tが感光体ドラム2へ向かって搬送されるとき、まず、帯電部10が、帯電工程において感光体ドラム2の表面全体を帯電させると共に、レーザスキャナユニット4が、露光工程においてレーザ光源(図示せず)から感光体ドラム2へ向けてレーザ光を照射し、感光体ドラム2の表面のうちレーザ光が照射された部分に静電潜像を形成する。
【0071】
次に、現像器16が、現像工程において帯電したトナーを現像ローラ17により感光体ドラム2へ供給することで、感光体ドラム2の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させて、トナー画像を現像する。続いて、転写ローラ8が、転写工程において感光体ドラム2と転写ローラ8との間を通過する用紙Tに、感光体ドラム2の表面に付着したトナー画像を転写する。
【0072】
そして、転写工程においてトナー画像が転写された用紙Tは、第2搬送路L2を通って定着装置9へ向けて搬送され、定着装置9における加熱ローラ9aと加圧ローラ9bとの間へ搬送される。
【0073】
また、プリンタ制御部からヒータ910へ出力される制御信号をONとすることで電源部からヒータ910への電力供給が開始されて、ヒータ910が発熱動作される。同時に、プリンタ制御部から加圧ローラ駆動部(図示せず)へ出力される制御信号をONとすることで電源部から加圧ローラ駆動部への電力供給が開始されて、加圧ローラ9bが回転駆動されると共に、加圧ローラ9bの回転駆動に伴って加熱ローラ9aが従動回転される。これによって、定着装置9は、定着工程において加熱ローラ9aと加圧ローラ9bとの間を通過する用紙Tに付着したトナーTNに対して、ヒータ910からの放射熱により加熱された加熱ローラ9aを介して熱が付与され、この熱によってトナーTNが溶解されると共に、加圧ローラ9bによって用紙Tに圧力を加えることで、トナー画像が用紙Tに定着される。
【0074】
定着装置9による前述のような定着動作時において、加熱ローラ9aは、加熱ローラ9aの内部に配置されたヒータ910から放射される光(放射熱)により、加熱ローラ9aの内側から加熱され、その加熱された熱が定着ニップN9に伝達される。
【0075】
ここで、第1実施形態では、最大幅(A4サイズ横方向)の用紙Tが定着ニップN9に搬送された場合における加熱ローラ9aの外周表面の最大通紙領域となる第1幅領域901aの端部901eに対応する位置の近傍に、光反射面922を有する熱遮蔽部材920が配置されている。そのため、ヒータ910からの放射熱が遮蔽される。これにより、第1幅領域901aの端部901eに対応する位置の近傍よりも外側への放熱が抑制される。つまり、通紙領域の外側の位置する加熱ローラ9aの第1回転軸I方向の端部902の温度上昇が抑制される。
【0076】
特に、熱遮蔽部材920の光反射面922は、加熱ローラ9aの第1回転軸I方向における内側に凹状の曲面部に形成されている。そのため、ヒータ910からの光の一部は、図5の点線矢印に示すように、加熱ローラ9aの内周面における第1幅領域端部901eに対応する位置の近傍に向かうように反射される。これにより、ヒータ910からの光は、加熱ローラ9aの第1幅領域901aに集光される。そして、定着時において最も熱エネルギーの消費が大きい加熱ローラ9aの第1幅領域901aの中央部における温度の落ち込みを抑制することができる。また、加熱ローラ9aの内周面における第1幅領域端部901eに対応する位置の近傍の温度を効率的に上昇させることができる。その結果、加熱ローラ9aの第1幅領域901a全体における温度分布を効率よく均一化することができる。
【0077】
次に、図6により、実施例及び比較例を用いて、第1実施形態の定着装置9をより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものでない。
第1実施形態の定着装置9において、第1サーミスタ970及び第2サーミスタ980を用いて、熱遮蔽部材920を有する場合と熱遮蔽部材を有しない場合(以下、「比較例」という)とにおける加熱ローラ9aの外周表面の温度の比較を行った。具体的には、第1サーミスタ970及び第2サーミスタ980を用いて、加熱ローラ9aの第1幅領域901aの中央部及び第1幅領域端部901eの温度それぞれを検出した。これらの各検出温度に基づいて、加熱ローラ9aの外周表面の第1回転軸I方向における温度分布の測定を行った。その結果、図6に示すような温度分布特性が得られた。
【0078】
図6に示すように、熱遮蔽部材920を有する第1実施形態の定着装置9では、加熱ローラ9aの第1回転軸I方向の端部902の温度は、比較例の場合に比べて低い。これにより、加熱ローラ9aの第1幅領域901aの端部901eよりも外側への放熱が抑制されていることが確認できる。また、第1実施形態の定着装置9では、加熱ローラ9aの第1幅領域端部901eより内側の温度は、比較例の場合に比べて、高く且つなだらかである。これにより、加熱ローラ9aの第1幅領域901aの温度が効率よく均一化されていることが確認できた。
【0079】
第1実施形態の定着装置9によれば、次のような効果が奏される。
第1実施形態の定着装置9は、最大幅の用紙Tが定着ニップN9に搬送された場合における加熱ローラ9a外周表面の最大通紙領域となる第1幅領域901aの端部901eに対応する位置の近傍に、熱遮蔽部材920が配置されている。
そのため、ヒータ910からの放射熱が第1幅領域端部901eよりも外側に移動することが抑制される。これにより、ヒータ910からの放射熱の放熱による熱損失を抑制することができる。そして、加熱ローラ9aの内周面における第1幅領域端部901eに対応する位置の近傍を効率よく加熱して昇温することが可能である。その結果、加熱ローラ9aを定着に必要な所定温度に加熱して昇温させるために要する熱エネルギーを節減することができる。また、定着装置9における消費電力を抑制することができる。
【0080】
また、第1実施形態においては、熱遮蔽部材920の外縁921は、加熱ローラ9aの内周面における第1幅領域端部901eに対応する位置の近傍に配置されている。
そのため、ヒータ910からの放射熱が加熱ローラ9aの内周面と熱遮蔽部材920の外縁921との間に形成される隙間から外側へ移動する放熱による熱損失を最小限に抑制することが可能である。また、第1幅領域端部901eの付近を昇温させる効率を最大限高くすることができる。
【0081】
また、第1実施形態においては、熱遮蔽部材920によって、第1幅領域端部901eよりも外側への放熱が抑制される熱エネルギーに相当する量の熱エネルギーを、第1幅領域901aの中央部側の加熱に活用できる。そのため、第1幅領域901a全体の温度上昇の速度を速くすることが可能である。これにより、定着開始(スタート)時におけるウォームアップ時間を短縮することができる。
【0082】
また、第1実施形態においては、熱遮蔽部材920は、加熱ローラ9aの第1回転軸I方向(第2方向D2)における内側に凹状の曲面部を有し、この凹状の曲面部に光反射面922が形成されている。
そのため、ヒータ910からの光は、加熱ローラ9aの内周面に全体的に反射される。また、光反射面922に反射された反射光の一部は、加熱ローラ9aの内周面における第1幅領域端部901eに対応する位置の近傍に向かうように反射される。
これにより、ヒータ910からの光は、加熱ローラ9aの第1幅領域901aに対応する位置に集光される。そのため、定着時において最も熱エネルギーの消費が大きい加熱ローラ9aの第1幅領域901aの中央部における温度の落ち込みを抑制することができる。また、加熱ローラ9aの内周面における第1幅領域端部901eに対応する位置の近傍の温度を効率的に上昇させることができる。その結果、加熱ローラ9aの第1幅領域901aの全体における温度分布を効率よく均一化することができる。
【0083】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態の定着装置9Aについて説明する。図7は、第2実施形態の定着装置9を第1回転軸I方向から視た縦断側面図である。図8は、第2実施形態の定着装置9を用紙搬送方向から視た縦断正面図である。
第2実施形態については、主として、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、詳しい説明を省略する。第2実施形態において、特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用される。また、第2実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が奏される。
【0084】
図7及び図8に示すように、第2実施形態の定着装置9は、第1回転体としての加熱回転ベルト9aと、第2回転体としての加圧ローラ9bと、受圧部材940と、支持部材960と、2つのヒータ910,910と、熱遮蔽部材920と、非接触式の温度検出センサとしてのサーミスタ970及び980と、を備える。
【0085】
図7に示すように、加熱回転ベルト9aは、環状であると共に可撓性及び耐熱性を有する回転ベルトである。加熱回転ベルト9aは、用紙Tの搬送方向D1と直交する第2方向D2に延びる第1回転軸Iを中心に、回転可能に構成される。例えば、加熱回転ベルト9aは、肉厚が30から50μm程度のSUS(ステンレス鋼)、Ni鋼等の金属ベルトの外周面に、厚さが200から500μm程度のシリコーンゴムの弾性層を設け、更に、この弾性層の外周面に、肉厚が30μm程度のPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂製の耐熱性フィルムからなる離型層を設けることで構成される。
【0086】
図7及び図8に示すように、2つのヒータ910,910は、加熱回転ベルト9aの内部における支持部材960よりも搬送方向D1の下流側(図8において左側)及び上流側(図8において右側)それぞれに設置される。これら2つのヒータ910は、加熱回転ベルト9aと加圧ローラ9bとの間に挟持されて搬送される用紙Tに、加熱回転ベルト9aを介して熱を付与する。これにより、トナー画像が転写された用紙Tを定着ニップN9に搬送し、通過させることで、用紙T上のトナーTNが溶融して用紙Tに定着される。
【0087】
図7に示すように、受圧部材940は、加熱回転ベルト9aの内部において、加熱回転ベルト9aの第1回転軸I方向(第2方向D2)に長く延びて形成される。受圧部材940は、その長手方向の両端それぞれにおいて、不図示の筐体の長手方向両端に固定される。
受圧部材940は、加熱回転ベルト9aを介して加圧ローラ9bとの間に定着ニップN9を形成する部材である。受圧部材940には、加圧ローラ9bから加熱回転ベルト9aが受ける圧力を受け止めるために、一定以上の強度が必要である。また、受圧部材940は、加熱回転ベルト9aの内周面と接しているため、熱容量、耐熱性、耐摩耗性などにも優れていることが必要である。これらの必要条件を備えるため、受圧部材940は、例えば、SUS(ステンレス鋼)から構成される。なお、前記の条件を備えるのであれば、受圧部材940は、樹脂から構成することも可能である。
【0088】
受圧部材940の具体的な構成について説明する。受圧部材940は、図7に示すように、加熱回転ベルト9aの内周面に摺動可能に接触する摺接平板部941と、摺接平板部941に対して垂直に延びる2つの側面板部942,942と、これら2つの側面板部942,942と摺接平板部941とを繋ぐ2つの傾斜板部943,943と、を有する。受圧部材940は、加熱回転ベルト9aの第1回転軸I方向(第2方向)D2の断面において、加熱回転ベルト9aの径方向中心に向けて開放したC字形状を有する。受圧部材940は、例えば、厚みが0.2mm程度のSUS(ステンレス鋼)から構成される。受圧部材940が摺接平板部941の両側に2つの傾斜板部943,943を有することで、受圧部材940に対する加熱回転ベルト9aの摺動が滑らかになる。
【0089】
図7に示すように、支持部材960は、受圧部材940が加圧ローラ9bから受ける圧力を受け止めて支持するために、すなわち、受圧部材940を補強するために、加熱回転ベルト9aの内部に配置される。支持部材960は、加熱回転ベルト9aの第1回転軸I方向(第2方向)D2の断面において、略T字形状を有する。具体的には、支持部材960は、断熱部材962を挟んで、受圧部材940の摺接平板部941に突き当てられる下端板部960Aと、加熱回転ベルト9aの径方向中心に向かって延びる立上げ板部960Bとを有する。立上げ板部960Bは、その自由端が加熱回転ベルト9aの内周面に近接する高さを有する。
【0090】
図7に示すように、支持部材960は、その下端板部の長手方向両端部を不図示の筐体の長手方向両端に固定される。
前述のような支持部材960の存在により、定着ニップN9における圧力(定着圧)が安定し、定着ニップN9を通過する用紙Tに強い圧力を加えることが可能となり、定着不良を防止できる。
【0091】
支持部材960は、厚みが3mm程度のSUS(ステンレス鋼)から構成される。断熱部材962は、厚みが2mm程度の耐熱性シリコンスポンジ、シリコン繊維加工布、ガラスウールなどから構成されており、受圧部材940からの伝熱を抑制する。また、支持部材960の下端板部960Aの表面及び立上げ板部960Bの両面の全域は、反射部材963により覆われている。反射部材963は、厚みが0.5mm程度のアルミニウムや金膜などで構成され、ヒータ910の輻射熱が光熱変換しないように輻射熱を反射する。
【0092】
熱遮蔽部材920について説明する。
図8に示すように、熱遮蔽部材920は、加熱回転ベルト9aの内部で、加熱回転ベルト9aの第1回転軸I方向における両端部の近傍の第1幅領域端部901eに対応する位置の近傍で且つ2つのヒータ910の上部に配置される。熱遮蔽部材920は、支持部材960の立上げ板部960Bに固定されて支持されており、立上げ板部960Bの両側に突出されている。
【0093】
図7に示すように、熱遮蔽部材920は、加熱回転ベルト9aの第1回転軸I方向(第2方向D2)から視た場合、長方形の板状に形成される。
また、図8に示すように、熱遮蔽部材920は、上方から視た場合、第1回転軸I方向の外側に凸の円弧状に湾曲して形成される。熱遮蔽部材920は、長手方向両端の外縁921の角部が加熱回転ベルト9aの内周面における第1幅領域端部901eに対応する位置の近傍に対向するように配置される。熱遮蔽部材920は、加熱ローラ9aの第1回転軸I方向(第2方向D2)における内側に、凹状(曲面状)の曲面部からなる光反射面922を有する。詳細には、熱遮蔽部材920における曲面部は、加熱回転ベルト9aの径方向における中心から加熱回転ベルト9aの内周面に向かうにしたがって、第1回転軸I方向における内側に向かって延びるように形成されている。
これにより、熱遮蔽部材920は、2つのヒータ910から加熱回転ベルト9aの第1回転軸I方向の端部902に向かう放射熱を遮蔽する。これにより、熱遮蔽部材920は、通紙領域の外側に位置する加熱回転ベルト9aの第1回転軸I方向における端部902の温度の上昇を抑制する。
【0094】
以上の通り、第2実施形態の定着装置9においては、第1回転体として、環状であると共に可撓性を有する回転ベルトからなる加熱回転ベルト9aを使用している。
そのため、加熱ローラを用いる場合に比べて、加熱回転ベルト9aの熱容量を小さくすることが可能である。これにより、熱遮蔽部材920の存在に伴ってヒータ910からの放射熱が第1幅領域端部901eよりも外側に移動することによる放熱は抑制され、これにより、熱損失が抑制される。また、第1幅領域端部901e付近の昇温効率をより高めて、定着装置9のウォームアップに要する時間を一層短縮化することができる。
【0095】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した第1実施形態及び第2実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施形態においては、加圧ローラ9b(第2回転体)を回転駆動させ、加熱ローラ又は加熱回転ベルト9a(第1回転体)を従動回転させているが、これに制限されず、第1回転体を回転駆動させ、第2回転体を従動回転させてもよい。
【0096】
第1実施形態では、熱遮蔽部材920は、加熱回転ベルト9aの第1回転軸I方向(第2方向D2)から視た場合に、円形の環形状に形成されているが、これに限定されない。例えば、熱遮蔽部材920は、加熱回転ベルト9aの第1回転軸I方向(第2方向D2)から視た場合に、長方形の板状に形成されていてもよい。
【0097】
また、第2実施形態では、熱遮蔽部材920は、加熱回転ベルト9aの第1回転軸I方向(第2方向D2)から視た場合に、長方形の板状に形成されているが、これに限定されない。例えば、熱遮蔽部材920は、加熱回転ベルト9aの第1回転軸I方向(第2方向D2)から視た場合に、2つのヒータ910を取り囲み、支持部材960及び受圧部材940の位置を避けるように、略円形状に形成されていてもよい。
本発明の定着装置は、ユニット化され、画像形成装置の装置本体から着脱自在に構成されていてもよく、あるいは、画像形成装置の装置本体と一体的に構成されていてもよい。
【0098】
また、本発明の画像形成装置の種類は、特に限定がなく、コピー機、プリンタ、ファクシミリ、又はこれらの複合機などであってもよい。
シート状の被転写材は、用紙に制限されず、例えば、フィルムシートであってもよい。
【符号の説明】
【0099】
1……プリンタ(画像形成装置)、2……感光体ドラム(像担持体)、16……現像器、9……定着装置、9a……加熱ローラ又は加熱回転ベルト(第1回転体)、9b……加圧ローラ(第2回転体)、901a…第1幅領域、901e……第1幅領域端部、902……端部、910……ヒータ、920……熱遮蔽部材、922……光反射面、940……受圧部材、960……支持部材、I……第1回転軸、N9……定着ニップ、T……用紙(被転写材)、TN……トナー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転軸を中心に回転可能な中空状の第1回転体と、
前記第1回転体の内部に配置され、該第1回転体を内側から加熱するヒータと、
前記第1回転体に対向して配置され、前記第1回転体とによりシート状の被転写材が搬送される定着ニップを形成すると共に前記第1回転軸に平行な第2回転軸を中心に回転可能な第2回転体と、
前記第1回転体に形成され、搬送方向に直交する搬送幅方向において最大幅の被転写材が通過する第1幅領域と、
前記第1回転体の内部に配置される熱遮蔽部材であって、前記第1幅領域の前記第1回転軸方向における端部である第1幅領域端部に対応する位置の近傍に配置され、前記ヒータから前記第1回転体の端部に向かう放射熱を遮蔽する熱遮蔽部材と、を備える
定着装置。
【請求項2】
前記熱遮蔽部材の外縁は、前記第1回転体の内周面における前記第1幅領域端部に対応する位置の近傍に対向して配置される
請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記熱遮蔽部材は、前記第1回転軸方向における内側に形成される光反射面を有する
請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記熱遮蔽部材は、前記第1回転軸方向における内側に凹状の曲面部を有する
請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記熱遮蔽部材は、前記ヒータからの光を反射すると共に、少なくとも前記ヒータからの光の一部を前記第1回転体の内周面における前記第1幅領域端部に対応する位置の近傍に向かうよう反射する
請求項3又は4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記第1回転体は、円筒状の回転ローラである
請求項1から5のいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
前記第1回転体は、環状であると共に可撓性を有する回転ベルトである
請求項1から5のいずれかに記載の定着装置。
【請求項8】
表面に静電潜像が形成される1又は複数の像担持体と、
前記1又は複数の像担持体に形成された静電潜像にトナー画像を現像する現像器と、
前記像担持体に形成されたトナー画像を直接的又は間接的にシート状の被転写材に転写する転写部と、
請求項1から7のいずれかに記載の定着装置と、を備える
画像形成装置。
【請求項1】
第1回転軸を中心に回転可能な中空状の第1回転体と、
前記第1回転体の内部に配置され、該第1回転体を内側から加熱するヒータと、
前記第1回転体に対向して配置され、前記第1回転体とによりシート状の被転写材が搬送される定着ニップを形成すると共に前記第1回転軸に平行な第2回転軸を中心に回転可能な第2回転体と、
前記第1回転体に形成され、搬送方向に直交する搬送幅方向において最大幅の被転写材が通過する第1幅領域と、
前記第1回転体の内部に配置される熱遮蔽部材であって、前記第1幅領域の前記第1回転軸方向における端部である第1幅領域端部に対応する位置の近傍に配置され、前記ヒータから前記第1回転体の端部に向かう放射熱を遮蔽する熱遮蔽部材と、を備える
定着装置。
【請求項2】
前記熱遮蔽部材の外縁は、前記第1回転体の内周面における前記第1幅領域端部に対応する位置の近傍に対向して配置される
請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記熱遮蔽部材は、前記第1回転軸方向における内側に形成される光反射面を有する
請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記熱遮蔽部材は、前記第1回転軸方向における内側に凹状の曲面部を有する
請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記熱遮蔽部材は、前記ヒータからの光を反射すると共に、少なくとも前記ヒータからの光の一部を前記第1回転体の内周面における前記第1幅領域端部に対応する位置の近傍に向かうよう反射する
請求項3又は4に記載の定着装置。
【請求項6】
前記第1回転体は、円筒状の回転ローラである
請求項1から5のいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
前記第1回転体は、環状であると共に可撓性を有する回転ベルトである
請求項1から5のいずれかに記載の定着装置。
【請求項8】
表面に静電潜像が形成される1又は複数の像担持体と、
前記1又は複数の像担持体に形成された静電潜像にトナー画像を現像する現像器と、
前記像担持体に形成されたトナー画像を直接的又は間接的にシート状の被転写材に転写する転写部と、
請求項1から7のいずれかに記載の定着装置と、を備える
画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2011−47995(P2011−47995A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194201(P2009−194201)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】
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