説明

定着装置及び画像形成装置

【課題】温度ムラが無く、成型も容易な磁性体コアを備えた定着装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】
実施形態の定着装置は、金属導電体を備えるエンドレスの発熱ローラと、前記金属導電体に誘導電流を発生させる励磁コイルと、前記発熱部の回転軸と平行な線に対して対称形状であり、前記励磁コイルの長手方向に所定の間隔を有して複数配置してなる磁性体コアとを備えることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来画像形成装置に使用する定着装置として、発熱ローラの軸方向に対して斜め方向に角度を持たせた複数のコアにより励磁コイルの磁束を発熱ローラの長手方向にむら無く誘導し、発熱ローラの長手方向の発熱ムラを軽減する装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−157513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、磁性体コアを斜めに配置するためには、磁性体コアを斜めに成型する必要がある。斜めの磁性体コアを金型で成型しようとすると、金型内で磁性材に均等に荷重が掛からない虞がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、成型性が良く、発熱ローラの発電ムラを軽減する磁性体コアを備えた定着装置及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、実施形態の定着装置は、金属導電体を備えるエンドレスの発熱部と、前記金属導電体に誘導電流を発生させる励磁コイルと、前記発熱部の回転軸と平行な線に対して対称形状であり、前記励磁コイルの長手方向に複数分散配置してなる磁性体コアとを備えることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態の画像形成装置を示す構成図。
【図2】第1の実施形態の定着装置を示す説明図。
【図3】第1の実施形態の図2と直交方向から見たときのIHコイルの平面図。
【図4】第1の実施形態のIHコイルの長手方向と垂直方向の磁性体コアの断面を示す説明図。
【図5】第1の実施形態の磁性体コアを示す斜視図。
【図6】第2の実施形態のIHコイルを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<第1の実施形態>
以下、発明を実施するための一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0009】
図1は画像形成装置1を示す構成図である。画像形成装置1は、カラー画像を出力する装置であり、給紙部100と、画像形成部110と、定着部(定着装置)120などを備える。
【0010】
画像形成装置1の下部には給紙部100が配置されている。給紙部100は、記録媒体である印刷用紙などのシートPが収納された給紙カセット101と、シートPを給紙カセット100から1枚ずつ送り出す給紙ローラ102を有する。
【0011】
給紙部100の上部には、画像形成部110が配置されている。画像形成部110は、感光体ドラム10a、10b、10c、10d、各感光体ドラム10a、10b、10c、10dの表面を一様に所定の電位に対応させる帯電装置20a、20b、20c、20d、感光体ドラム10a、10b、10c、10d上に形成された静電潜像をトナーによって顕像化する現像装置40a、40b、40c、40d、各感光体ドラム10a、10b、10c、10dの表面に顕像化されたトナー像を転写する転写装置50a、50b、50c、50d、トナー像を転写した後に感光体ドラム10a、10b、10c、10dに残っている残留トナーを除去するクリーニング装置60a、60b、60c、60dを有する。各感光体ドラム10a、10b、10c、10dの周囲には、帯電装置20a、20b、20c、20dや、現像装置40a、40b、40c、40d転写装置50a、50b、50c、50d、クリーニング装置60a、60b、60c、60dなどが配置され画像形成ステーションを形成している。図中の画像形成ステーションPa、Pb、Pc、Pdでは、それぞれブラック画像、シアン画像、マゼンタ画像、イエロー画像が形成される。また、画像形成部110は、感光体ドラム10a、10b、10c、10d上に特定色の画像データに対応したレーザービームの走査線を照射する露光装置30、各感光体ドラム10a、10b、10c、10d上に顕像化されたトナー像を転写装置50a、50b、50c、50dによってその表面上に転写される中間転写ベルト70、転写装置70の表面上に転写されているトナーをシートPに転写する2次転写である転写ローラな80などを有する。露光装置30から各色に対応する走査線の30K(ブラック)、30C(シアン)、30M(マゼンタ)、30Y(イエロー)が照射されている。中間転写ベルト70は、図1上の矢印A方向へ回動する。また、中間転写ベルト70は、感光体ドラム10a、10b、10c、10dに形成された各色の単色画像が順次重ねて転写される。
【0012】
画像形成部110の上部には定着装置120が配置されている。定着装置120については図2以降に詳細に説明をする。
【0013】
また、給紙部100から画像形成部110を介して定着装置120にかけて用紙搬送路90が設けられている。
【0014】
このような構成の画像形成装置1において、まず画像形成ステーションPaの帯電装置20aおよび露光手段3により感光体ドラム10a上に画像情報のブラック成分色の潜像が形成される。この潜像は現像装置40aでブラックトナーを有する現像装置40aによりブラックトナー像として可視像化され、転写装置50aにより中間転写ベルト70上にブラックトナー像として転写される。
【0015】
ブラックトナー像が中間転写ベルト70に転写されている間に、画像形成ステーションPbではシアン成分色の潜像が形成され、続いて現像装置40bでシアントナーによるシアントナー像が顕像化される。そして、先の画像ステーションPaでブラックトナー像の転写が終了した中間転写ベルト70にシアントナー像が画像ステーションPbの転写装置50bにて転写され、ブラックトナー像と重ね合わせられる。マゼンタトナー像、イエロートナー像についても同様の方法で画像形成が行われる。
【0016】
中間転写ベルト70に4色のトナー像の重ね合わせが終了すると、給紙ローラ102により給紙カセット101から給紙されたシートP上に転写ローラ80によって4色のトナー像が一括転写される。転写されたトナー像は定着装置120でシートPに加熱定着され、シートP上にフルカラー画像が形成される。
【0017】
続いて図2を用いて定着装置120について説明する。定着装置120は、エンドレスの発熱部材である発熱ローラ130と、加圧ローラ160と、誘導電流発生コイル(以下IHコイルと略称する)200とを備える。
【0018】
発熱ローラ130は、画像形成装置1の駆動モータによって矢印D方向に回転駆動される。発熱ローラ130は、例えば鉄・ニッケル・クロムの合金である金属導電体によって構成されている。
【0019】
発熱ローラ130の表面には、離型性を付与するために、フッ素樹脂からなる離型層が被覆されている。なお、離型層としては、PTFE、PFA、FEP、シリコーンゴム、フッ素ゴム等の離型性の良好な樹脂やゴムを単独であるいは混合して用いても良い。発熱ローラ130をモノクロ画像の定着用として用いる場合には、離型性のみを確保すればよいが、発熱ローラ130をカラー画像の定着用として用いる場合には弾性を付与することが望ましく、その場合にはさらに厚いゴム層を形成する。
【0020】
加圧ローラ160は例えば硬度JISA65度のシリコーンゴムによって構成され、20kgfの押圧力で発熱ローラ130に圧接してニップ部を形成している。この状態で加圧ローラ160は発熱ローラ130に従動して矢印E方向に回転する。シートPは発熱ローラ130と加圧ローラ160に挟持されて矢印F方向に搬送される。
【0021】
IHコイル200は、発熱ローラ130を中心にして、加圧ローラ160側とは反対側に配置されて、加熱ローラ160の外周の約半周を覆うように配置されている。IHコイル200は励磁コイル170と磁性体コア172を含む。磁性体コア172磁性体コア172は、図2に示す円弧上の一端に突起172aを有し、同円弧上の中央部に突起172bを有し、同円弧上の他端に突起172cを有している。突起172a、172b、172cは、加熱ローラ172の回転軸方向に対して突起が存在していない部位と同じ長さ伸延している。
【0022】
励磁コイル170は、表面が絶縁された銅製の線材を多数本束ねた線束を、発熱ローラ130の回転軸方向に延伸し、かつ、発熱ローラ130の周方向に沿って周回して形成されている。また、励磁コイル170は、突起172bを中心にして巻きまわされている。
【0023】
磁性体コア172は高透磁率かつ低損失のものを用いる。パーマロイのような合金の場合、磁性体コア172内の渦電流損失が高周波で大きくなるため、積層構造にしても良い。磁性体コア172は励磁コイル170の磁場を強化する。突起172aと突起172bとの間に配置されている励磁コイル170と、突起172bと突起172cとの間に配置されている励磁コイル170の電流の流れる方向は逆になっている。
【0024】
図3を用いて図2と直交方向から見たIHコイル200について説明をする。図3に示すように、励磁コイル170の発熱ローラ130とは反対側には磁性体コア172が設けられている。磁性体コア172は、発熱ローラ130の周方向に沿って、発熱ローラ130の回転軸R方向に均等な間隔L1を空けて複数個配置される。ここで言う均等な間隔L1とは、例えば断面X−X’のように、発熱ローラ130の回転軸R方向と鉛直の向きにランダムに断面をとったとき、いずれの箇所においても磁性体コア172の断面がとれる距離のことを意味する。
【0025】
また磁性体コア172は発熱ローラ130の回転軸Rを対称軸として線対称に配置される。磁性体コア172が例えば線Qを対称軸とするV字型である場合、V字の開き角度θは、0°<θ<180°ならば任意の値でよい。
【0026】
また、磁性体コア172の角度θは全ての磁性体コア172について同一である必要は無い。例えば変形例として、発熱ローラ130の長手方向中央部と両側部とでV字の開き角度を変えても良い。
【0027】
線Q上に配置されている磁性体コア172のV字の先端の位置は、線Qと直交する方向に対して、隣接する一端および他端と同一線上に配置するように配置している。
【0028】
また図4に示すように、磁性体コア172の断面積は発熱ローラ130の回転軸Rと平行な線Qを挟んで等しい。
【0029】
図5は磁性体コア172の斜視図を示している。発熱ローラ130の回転軸と並行方向の線Q方向の磁性体コア172の幅は、線Qと直交する方向の磁性体コア172の幅の数倍の幅を有している。
【0030】
磁性体コア172の材料としては例えば、比透磁率が1000〜3000、飽和磁束密度が200〜300mT、体積抵抗率が1〜10Ω・mのフェライトが用いられている。尚、磁性体コア172の材料としてはフェライトの他、パーマロイを用いることもできる。
【0031】
これらの磁性体コア172は、金型を用いて作成する。金型は、鋳型と押し型とからなる。磁性体コア172の成型は、例えばフェライト173を鋳型に流し込み、押し型により所定の方向に荷重を加えて行う。磁性体コア172は左右対称の形状であるため、フェライト173に、均等に荷重を掛けることができる。
【0032】
これに対して、傾斜した磁性体コアを金型で成型すると、金型内で台形の押し型によりフェライトに加えた押圧方向の荷重が押圧方向と直交する方向の一方の方向に逃げてしまい、フェライト183に均等に荷重が掛からない虞が生じる。
【0033】
IHコイル200の励磁コイル170に高周波電流を印加することによって磁束が発生する。磁束は磁性体コア172により発熱ローラ130に集中して誘導される。磁束は、発熱ローラ130に渦電流を発生させる。渦電流と発熱ローラ130の抵抗によりジュール熱を発生し、発熱ローラ130は発熱する。
【0034】
第1の実施形態のように構成された定着装置120は、磁性体コア172が発熱ローラ130の長手方向の全領域に存在することから、発熱ローラ130にはその回転軸R方向に均等にジュール熱を発生し、回転軸R方向における発熱量のムラが解消される。
【0035】
また磁性体コア172は線対称形状であるため、金型で成型する際に、磁性体コア172の加圧面に対して加圧力が均等に掛かる。そのため安定して成型することができ、製造性が向上する。
【0036】
<第2の実施形態>
続いて第2の実施形態について、図6を用いて説明する。第1の実施形態と異なる点は、磁性体コア172同士の間隔が、発熱ローラ130の長手方向両側部と長手方向中央部とで異なる点である。第1の実施形態と同様の部分については同一の符号を付してその説明は省略する。
【0037】
磁性体コア172は、発熱ローラ130の周方向に沿って、発熱ローラ130の回転軸R方向に均等な間隔を空けて複数個配置される。発熱ローラ130の長手方向中央部αの磁性体コア172同士の間隔をL1、発熱ローラ130の長手方向両側部βの磁性体コア172同士の間隔をL2とすると、L1よりL2のほうが大きい。
【0038】
発熱ローラ130の全長部γを例えばJIS規格A4サイズ縦(297mm)とした場合、発熱ローラ130の長手方向中央部αの長さを例えばJIS規格A4サイズ横(210mm)とする。
【0039】
第2の実施形態のように構成された定着装置220は、磁性体コア172が発熱ローラ130の長手方向に存在することから、発熱ローラ130にはその回転軸方向に均等にジュール熱を発生し、回転軸R方向に対する発熱量のムラが解消される。
【0040】
また磁性体コア172は線対称形状であるため、金型で成型する際に、磁性体コア172の加圧面に対して加圧力が均等に掛かる。そのため安定して成型することができ、製造性が向上する。
【0041】
また発熱ローラ130の長手方向両側部の磁性体コア172同士の間隔が、発熱ローラ130の長手方向中央部の磁性体コア172同士の間隔よりも広くなることにより、例えば小サイズ用紙の連続印刷時、用紙が通過しない長手方向両側部βが高温になることを防止できる。また、磁性体コア172の個数を減らすことにより、製造コストを削減することができる。
【0042】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、磁性体コアが線対称形状であるため、金型で安定して成型することができ、製造性が向上する。
【0043】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。磁性体コアの形状はV字型に限らず、U字型であっても良い。
【0044】
本発明では発熱ローラ130の定義は外周をベルトで構成し内部が中空のものも含む。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1・・・画像形成装置
110・・・給紙部
120・・・画像形成部
130・・・定着部
120・・・定着装置
130・・・発熱ローラ
160・・・加圧ローラ
170・・・励磁コイル
172・・・磁性体コア
172a、172b・・・磁性体コア
173・・・フェライト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属導電体を備えるエンドレスの発熱ローラと、
前記金属導電体に誘導電流を発生させる励磁コイルと、
前記発熱部の回転軸と平行な線に対して対称形状であり、前記励磁コイルの長手方向に複数配置してなる磁性体コアと、
を備えた定着装置。
【請求項2】
前記平行な線と直交する方向に対して、前記磁性体コアの所定の一点と隣接する磁性体コアの一端とが同一線上に配置される、請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記励磁コイルの長手方向の側部に配列される前記磁性体コアの間隔が、前記励磁コイルの長手方向中央部に配列される前記磁性体コアの間隔よりも広い、請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記磁性体コアの形状がV字形状である、請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記媒体上の画像に接触し、金属導電体を備えるエンドレスの発熱ローラと、
前記金属導電体に誘導電流を発生させる励磁コイルと、
前記発熱部の回転軸と平行な線に対して対称形状であり、前記励磁コイルの長手方向に所定の間隔を有して複数配置してなる磁性体コアと、
を備えた画像形成装置。
【請求項6】
前記磁性体コアの形状がV字形状である、請求項5に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−145909(P2012−145909A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209072(P2011−209072)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】