説明

定置洗浄可能な粉粒体殺菌装置

【課題】食品等の粉粒体を、高圧の過熱水蒸気を使用して連続的に殺菌処理する定置洗浄可能な粉粒体殺菌装置を提供する。
【解決手段】粉粒体と過熱水蒸気を連続的に供給して加熱殺菌処理する殺菌ゾーン、前記粉粒体を過熱水蒸気から分離する固気分離ゾーン、前記粉粒体を冷却する冷却ゾーン、及び、前記粉粒体を製品として回収する製品回収ゾーンの4つの区画からなり、前記殺菌ゾーン入口には前記粉粒体を供給するための高圧ロータリーバルブが設けられており、前記殺菌ゾーンと前記固気分離ゾーンとの間には両ゾーンの差圧を調整するためのノズルが設けられており、さらに、前記固気分離ゾーンには低圧ロータリーバルブが設けられた粉粒体殺菌装置において、少なくとも前記低圧ロータリーバルブは、洗浄時に限ってバイパス流路が形成される構造を有することを特徴とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品等の粉粒体を、高圧の過熱水蒸気を使用して連続的に殺菌処理する定置洗浄可能な粉粒体殺菌装置に関する。ここで、食品等の粉粒体には、食品原料のみならず、健康食品、医薬品、化粧品原料、飼料、肥料などが含まれる。
定置洗浄(CIP, Cleaning In Place)とは、機器や部品を分解することなく、設備・装置の構成の中に洗浄機能を組み込んで行う洗浄方法である。
【背景技術】
【0002】
粉粒体殺菌装置としては、特許文献1〜3にみられるように、30年ほど前から過熱水蒸気殺菌装置が実用的に開発されてきた。これらは、気流式殺菌装置と呼ばれ、気流管中を流れる過熱水蒸気に粉粒体食品等を投入し、移送中に瞬間殺菌する連続処理装置である。過熱水蒸気は、熱風に比して熱容量が大きく、殺菌効果が大であるばかりでなく、飽和水蒸気と同じように温度の低い物質に接すると凝縮する性質がある。このため、常温の食品等の粉粒体の水分含有量を適切に保ちながら、変質しないようにして高温で殺菌する場合には、過熱水蒸気殺菌装置は極めて好都合な殺菌装置である。しかしながら、各構成機器の洗浄についてはこれまで開発が遅れており、定置洗浄に配慮したものはこれまで皆無であった。このため、原料切り替え時には装置の分解洗浄を行う必要があり、装置の稼働時間が削られて装置の公称能力が発揮できないことが多かった。
【0003】
このような過熱水蒸気殺菌装置で高圧過熱水蒸気中に原料を供給する場合には、特許文献4、5にみられるような、高圧ロータリーバルブが用いられる。ロータリーバルブは、圧力差のある機器間を接続し、エアーロックを行いながら粉粒体を移送する場合に必要なものである。
特許文献4のロータリーバルブは、ロータのブレードのパッキン収納室に収納されたパッキンと、該パッキン収納室より該ロータの中心部に貫通して設けられた孔に収納され且つ一端を前記パッキンの底部と連結されたパッキンのせり出し作動体と、該ロータの中心部に設けられた、該作動体を介してパッキンのせり出しを調整する手段とよりなるものである。
【0004】
このタイプのバルブはブレード型ロータリーバルブと呼ばれるものであり、各ポケットをフラットシール材と円周シール材により囲ってポケット内の圧力を周囲と遮断する構造であり、周囲のケーシングに密着するフラットシール材(テフロン(登録商標)パッキン、PEEKパッキン、金属製パッキンなど)を磨耗による減耗に応じて、そのシール材を押し出す機構を有するものである。このロータリーバルブは、ポケット内に入った付着性の強い材料や軽量なフワフワした材料が落下しにくく、ポケット容量を大きくできないばかりでなく、洗浄についても何ら配慮がなされておらず、分解洗浄せざるを得ないものであった。
【0005】
特許文献5のロータリーバルブも、特許文献4のタイプと同様なものであり、ロータリーバルブに過熱水蒸気導入口が設けられて、ポケット内に過熱水蒸気が導入するものであるが、過熱水蒸気導入口はあくまで原料を加熱殺菌するためのものであって、洗浄を行うものではなかった。その他、高圧過熱水蒸気中に原料を供給する方法として、エクストリューダー方式、ダブルダンパー方式などの方式があるが、どの場合も装置内面と回転部の洗浄において、定置洗浄をしようとしても不十分なものとなっていた。
また、過熱水蒸気と殺菌後の粉粒体を分離するサイクロンや低圧ロータリーバルブにおいても、分解洗浄が行われてきた。
【0006】
これら従来の気流式殺菌装置では、連続的殺菌は可能であるが、各ゾーンの区切りや各機器の間には、高圧ロータリーバルブや、サイクロン下流のロータリーバルブが使用されており、各機器の間で縁切りされているため、連続的な洗浄は困難であり、洗浄時に装置を分解して分解洗浄する必要があった。
特許文献6のような、過熱水蒸気を用いずに、非圧縮性気体及び水蒸気を含むような加熱加圧混合気体中で粉粒体を加熱処理する装置にあっても、高圧ロータリーバルブや、サイクロン下流のロータリーバルブが使用されており、洗浄時に装置を分解して分解洗浄する必要性が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭63−50984号公報
【特許文献2】特開昭57−153654号公報
【特許文献3】特公平5−53号公報
【特許文献4】特開昭52−62858号公報
【特許文献5】特開平10−211103号公報
【特許文献6】特開2000−24091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題に鑑み、食品等の粉粒体を、高圧の過熱水蒸気を使用して連続的に殺菌処理する定置洗浄可能な粉粒体殺菌装置を提供するものである。ここで、本発明における洗浄には、装置の殺菌が含まれるものとする。また、食品等の粉粒体の加熱殺菌処理には、食品等の加熱処理一般まで含めるものとする。食品等の変質などを目的とした加熱処理まで含めて加熱殺菌処理とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、粉粒体と過熱水蒸気を連続的に供給して加熱殺菌処理する殺菌ゾーン、前記粉粒体を過熱水蒸気から分離する固気分離ゾーン、前記粉粒体を冷却する冷却ゾーン及び、前記粉粒体を製品として回収する製品回収ゾーンの4つの区画からなり、前記殺菌ゾーン入口には前記粉粒体を供給するための高圧ロータリーバルブが設けられており、前記殺菌ゾーンと前記固気分離ゾーンとの間には両ゾーンの差圧を調整するためのノズルが設けられており、さらに、前記固気分離ゾーンには低圧ロータリーバルブが設けられた粉粒体殺菌装置において、少なくとも前記低圧ロータリーバルブは、洗浄時に限ってバイパス流路が形成される構造を有することを特徴とする粉粒体殺菌装置である。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記低圧ロータリーバルブは、送入口と送出口を有する本体、側壁、及び、スライドカバーとから構成された低圧バルブケーシング、並びに、該低圧バルブケーシング内に収納されて回転自在に軸支された、複数のポケットを有するロータを具備し、前記スライドカバーは、前記低圧バルブケーシングの内周面を前記ロータの軸方向にスライド可能であって、前記スライドカバーが前記ロータから軸方向に離間することにより、洗浄時に限ってバイパス流路が形成される構造を有することを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記ノズルは、絞り流路と、洗浄用の開放流路とを切り替え可能な構造を有することを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれか1項記載の発明において、前記高圧ロータリーバルブは、原料入口と原料出口を有する本体と、2つの側壁とから構成された高圧バルブケーシング、該高圧バルブケーシング内に収納されて回転自在に片持ち軸支された、ロータブレードで仕切られた複数のポケットを有するロータ、及び、前記高圧バルブケーシングの内周面と前記ロータブレード間のシール機構を具備し、前記複数のポケットは、それぞれ、前記ロータブレード、2つのサイドウォール、及び、ポケット底面により形成され、一方の側壁に接する側のサイドウォールには、それぞれ、前記ポケット底面に接した位置に開口が設けられており、前記複数のポケットの全てにおいて、前記原料出口に前記ポケットの1つが連通する期間に、前記一方の側壁に設けられた高圧蒸気口と、前記ポケットの1つに設けられた前記開口とが連通するように構成されたことを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1から4のいずれか1項記載の発明において、前記固気分離ゾーンには、少なくとも2台のサイクロンが設けられており、該サイクロンの排出口には、それぞれ前記低圧ロータリーバルブが設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明は、低圧ロータリーバルブが、送入口と送出口を有する本体、側壁、及び、スライドカバーとから構成された低圧バルブケーシング、並びに、該低圧バルブケーシング内に収納されて回転自在に軸支された、複数のポケットを有するロータを具備し、前記スライドカバーは、前記低圧バルブケーシングの内周面を前記ロータの軸方向にスライド可能であって、前記スライドカバーが前記ロータから軸方向に離間することにより、洗浄時に限ってバイパス流路が形成される構造を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
洗浄時に水や飽和水蒸気を連続的に供給することで、殺菌ゾーン、固気分離ゾーン、冷却ゾーン、製品回収ゾーンの一部又は全てを連続的に定置洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態の殺菌装置を示す概略説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に使用される高圧ロータリーバルブの正面図である。
【図3】(a)は、図2の高圧ロータリーバルブの側面図であり、(b)は、図2の断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に使用されるノズルの正面図である。
【図5】本発明の一実施形態に使用される低圧ロータリーバルブの断面図である。
【図6】図5の低圧ロータリーバルブの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。各実施態様について、同一構成の部分には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態の殺菌装置を示す概略説明図である。原料としての粉粒体は、ホッパーから供給装置を経て、原料投入用のシュートを有する投入装置1から、高圧ロータリーバルブ100(詳細は後述する)のポケットに投入され、第1ライン11を経て、電気ヒータにより加熱する加熱管2に移送される。なお、この加熱は電気ヒータに限るものではなく、二重管で高温流体により加熱しても良い。
過熱水蒸気導入ライン20は、例えば、ボイラで発生した飽和水蒸気を、スーパーヒータ(図示せず)で一定の圧力の下で過熱して、過熱水蒸気を供給するラインである。過熱水蒸気導入ライン20は、高圧ロータリーバルブ100の原料出口付近において、ライン21で連通し、さらに、第1ライン11とライン22で連通している。第1ライン11は気流管を構成し、加熱管2を通過して第2ライン12に接続する。この間に、気流管中を流れる過熱水蒸気に粉粒体が投入されて移送中に殺菌がなされることになる。
【0019】
過熱水蒸気導入ライン20の過熱水蒸気の状態の一例としては、スーパーヒータの出口で、圧力は0.1〜1.0MPa程度で、好ましくは、0.2〜0.3MPaである。温度は、150〜300℃程度で、好ましくは170〜220℃である。
殺菌ゾーンの入口は、粉粒体を供給するための高圧ロータリーバルブ100が設けられており、第2ライン12の終端に、殺菌ゾーンの圧力を高圧に保つための圧力制御手段としてのノズル30(詳細は後述する)が設けられている。そして、ノズル30の手前までが殺菌ゾーンである。
【0020】
ノズル30を通過した原料(粉粒体)は、減圧されて気流中に浮遊しながら第3ライン13に移送され、固気分離ゾーンに入る。固気分離ゾーンでは、殺菌済みの原料を製品として回収するため、過熱水蒸気から分離する。第3ライン13は第1サイクロン4に連結し、出口には低圧ロータリーバルブ200(詳細は後述する)が設けられている。低圧ロータリーバルブ200の送出口にはエジェクタ5が設けられていて、過熱水蒸気の凝縮を防止するため、ブロアから熱風がライン50により送り込まれている。ライン50にはフィルターがもうけられて、汚染防止が配慮されていなければならない。第1サイクロン4は、主に原料を過熱水蒸気から分離する機能を有している。
【0021】
次に、第4ライン14を通過した原料は、第2サイクロン6、及びエジェクタ7を通過して、第5ライン15の冷却ゾーンを通過し、製品回収ゾーンに移送される。第2サイクロン6は分離のみならず乾燥といった機能を有している。また、冷却ゾーンである第5ライン15は、二重管により冷却水で冷却する。なお、冷却は、二重管による場合以外の任意の方法で行うことも可能であり、二重管を省略しても良い。
第5ライン15出口で製品回収ゾーンに移送された後、サイクロン8、バルブ9を経て、製品として回収される。
【0022】
ライン21は、定置洗浄用蒸気が投入される(後述するように、殺菌移送用の過熱水蒸気の投入もなされる)。ライン60は、投入装置1のシュートに投入される洗浄ラインである。
以上の殺菌ラインは、実施形態としての一例であって、対象とする原料に応じて、様々な変形がなされる。加熱管2を省略したり、固気分離ゾーンにおけるサイクロンの段数は、1段のみならず2段以上の複数段であっても良い。洗浄用に流す流体としては、洗浄部位、ゾーンの対象に応じて、過熱水蒸気、高圧水蒸気、高圧空気、高温熱水、市水、それらの混合気、混合相を適宜用いればよい。付着性の原料の場合、蒸気と、酸又はアルカリの薬剤を水に添加して洗浄するとよい。
【0023】
次に、粉粒体殺菌装置において、定置洗浄を実現するための高圧ロータリーバルブ100、ノズル30、低圧ロータリーバルブについて、詳しく説明する。これらは、いずれも単体としても発明を構成するものである。
【0024】
(高圧ロータリーバルブ)
図2は、本発明の一実施形態に使用される高圧ロータリーバルブの正面図である。図3(a)は、図2の高圧ロータリーバルブの側面図であり、(b)は、図2の断面図である。図2のロータ106の線A−Aの左側断面図は、図3(b)の線B−Bに関する断面図である。
【0025】
高圧のロータリーバルブ100について、以下に説明する。
高圧ロータリーバルブ100は、原料入口102と原料出口103を有する本体と、2つの側壁104とから構成された高圧バルブケーシング101、該高圧バルブケーシング101内に収納されて回転自在に片持ち軸支された、ロータブレード107で仕切られた複数のポケット130を有するロータ106、及び、前記高圧バルブケーシング101の内周面と前記ロータブレード間のシール機構140、121、108を具備し、前記複数のポケット130は、それぞれ、前記ロータブレード107、2つのサイドウォール113(サイドウォール113にはサイドシール板114、110が取り付けられている)、及び、ポケット底面により形成され、一方の側壁104に接する側のサイドウォール113(含むサイドシール板110)には、それぞれ、前記ポケット底面に接した位置に開口112が設けられており、前記複数のポケット130の全てにおいて、前記原料出口103に前記ポケット130の1つが連通する期間に、前記一方の側壁に設けられた高圧蒸気口105と、前記ポケット130の1つに設けられた前記開口112とが連通するように構成されたものである。さらに、上記高圧ロータリーバルブ100において、前記一方の側壁104がロータ106の軸方向に移動調整可能となっていても良い。
【0026】
原料としての粉粒体は、投入装置1から原料入口102に投入されて、ロータ106のポケット130に収納される。ポケット130は、ロータシャフト150を中心に回転して、原料は原料出口103において下方に排出され、第1ライン11に移送される。
高圧バルブケーシング101には、上方に原料入口102、下方に原料出口103、側方に残圧抜き口160(図3参照)が設けられている。ロータブレード107によりポケット130は仕切られており、一方の側壁104に接する側のサイドウォール113、サイドシール板110には、それぞれ、ポケット底面に接した位置に開口112が設けられている。
【0027】
図2の原料出口103付近のロータ下部を示す図は、図3(b)の線B−Bの断面が表示されているので、ややわかりにくい図となっているが、1つのポケット130が原料出口103に来ると、側壁104に設けられた高圧蒸気口105と、サイドウォール113、サイドシール板110を貫通する開口112とが、側壁104に設けられた連通路111を介して連通するようになっている。開口112はポケット底面に接した位置に設けられているので、ポケット内面をくまなく洗浄することができる。開口112の反対側のサイドウォール113は傾斜しており、原料出口に向けて高圧蒸気が噴射されるようになっている。ロータが回転するにつれ、各ポケット130が洗浄されてゆく。この際に、上方の原料入口102から水を流せば洗浄上さらに良い。
【0028】
側壁104に設けられた高圧蒸気口105は、洗浄のためばかりでなく、ポケット内に入った付着性の材料や軽量なふわふわした材料の場合などには、高圧蒸気を、通常運転中に開口112からポケット底面に向けて噴射すると、原料が良く排出されて原料移送上有利である。従来のポケットは底が極めて浅く、これに対して、本発明に使用される高圧ロータリーバルブでは、開口112から高圧蒸気を噴射することから、ポケットの深さを深くしても原料排出上の問題が発生しなくなっている。これにより、ポケットの容積効率を上昇させ、移送効率を高くすることができる。したがって、ロータを低速回転とすることが可能となり、シール材の摩耗を低減でき、シール材の交換周期をのばすことができる。
【0029】
高圧ロータリーバルブにおける、高圧バルブケーシング101の内周面とロータブレード107間のシール機構について説明する。これは、基本的には特許文献4と同じものであるが、片持ち支持にした点とサイドシール板が磨耗しても調整できるようにした点で大きく異なっている。ロータ106の軸心部は中空になっており、そこに円錐面を有し端部にねじ141が切られ、図2上の右端面には正方形の穴が形成されたテーパ体140が挿入されている。図2の右側の側壁104の中心は孔が存在して、そこから正方形の端面を有する調整シャフトで、テーパ体140をロータ軸方向に移動可能とすることができる。調整が終了すればメクラキャップで常時は閉じられている。
【0030】
ロータシャフト150は、図2での右端部にフランジ部142が設けられており、ロータ106と一体に回転することができるようになっている。左側の側壁104にはロータシャフト150との間をシールするように、グランドパッキン116、パッキン押さえ117が設けられている。
【0031】
図2上で左方向に、テーパ体140がねじ141で移動すれば、ロータブレード107に貫通して設けられたピン121が、パッキン108を高圧バルブケーシング101の内周面にせり出して押圧してシールを行うようになっている。
ロータ106は、図2に示されるように、軸受け118、119により片持ち支持されている。ロータシャフト150の左側端部143は伝動装置に連結できるようになっている。チェーン伝動の場合にはスプロケット、歯車伝動の場合にはギアーがキー結合している。このようにロータ106を片持ちで支持しているので、右側の側壁には、高圧蒸気口105や、調整シャフトでテーパ体140をロータ軸方向に移動可能するための孔を設けることができる。
【0032】
さらに、サイドシール板114、110が磨耗した場合には、右側の側壁104をねじ120で締め付け調整することで、磨耗に対応してシールを適切に保つことができる。サイドシール板114、110は円盤状にしても良い。すなわち、高圧ロータリーバルブ100において、ロータ106に取り付けられたサイドシール板が磨耗により厚みが減少したときに、高圧バルブケーシング101の一方のサイドの側壁をロータ軸方向に閉めることできるようにすると良い。このように、ロータ106に取り付けられたサイドシール板と側壁の間隙を限りなくゼロとすることにより、高圧蒸気のリークを防止し、シール性能を上げることができる。
サイドシール板は、グラス入りテフロン(登録商標)、PEEK、セラミック、金属などを用いることができる。なお、側壁104に設けた連通路111の代わりに、サイドシール板110にL字形状の連通路111を設けて、高圧蒸気口105と開口112とを連通させても良い。
【0033】
(可変ノズル)
図4は、本発明の一実施形態に使用されるノズルの正面図である。このノズルは、絞り流路と、洗浄用の開放流路とを切り替え可能な構造を有することを特徴とする。
図4に示すように、円筒管36内に絞りの最小流路径が、第1ノズル33より、第2ノズル34の方が大きく、第3ノズル35ではさらに大きく、洗浄用の開放流路となっている。第1〜3ノズルは、図4に示されるようにそれぞれ相互間をOリングで円筒管36内においてシールされている。
第1〜3ノズルが一体に形成された設けられた移動体は、ハンドル38により作動用軸37(ねじ)を回転させて、閉鎖上蓋39に設けられたねじ孔と協働してノズル入口31とノズル出口32に、第1〜3ノズルのいずれかが位置決めされるようになっている。移動体と作動用軸37は回転自在に取り付けられている。移動体の移動は手動に限らず流体圧や電動モータを使用しても良い。
洗浄時には、開放流路をもつ第3ノズル35が選定される。これにより、定置洗浄時には、殺菌ゾーンから製品回収ゾーンまでが連結されて、一気に洗浄用の蒸気、温水、それら混合相を容易に通過させることができるのである。
【0034】
(低圧ロータリーバルブ)
図5は、本発明の一実施形態に使用される低圧ロータリーバルブの断面図である。図6は、低圧ロータリーバルブの側面図である。なお、図5は、図6の線C−Cに関する断面図である。
低圧ロータリーバルブ200は、送入口202と送出口203を有する本体、側壁205、及び、スライドカバー206とから構成された低圧バルブケーシング201、並びに、該低圧バルブケーシング201内に収納されて回転自在に軸支された、複数のポケットを有するロータ210を具備し、前記スライドカバー206は、前記低圧バルブケーシング201の内周面を前記ロータの軸方向にスライド可能であって、前記スライドカバー206が前記ロータから軸方向に離間することにより、洗浄時に限ってバイパス流路240が形成される構造を有するものである。これにより、送入口202に連通するポケット、図5に示したバイパス流路240、及び、送出口203に連通するポケットが、連続した流路を形成する(図5において、紙面を平面としてみて、その平面に対して上下方向の各ポケットの左側サイドが、バイパス流路240に連通する)。
この低圧ロータリーバルブ200において、低圧バルブケーシング201の内周面とスライドカバー206との間にはシールが設けられている。
【0035】
低圧ロータリーバルブ200の送入口202は、サイクロン4、6の出口に連結しており、送出口203は第4ライン14、又は、第5ライン15に連結している。低圧バルブケーシング201は、送入口202と送出口203を有する本体、側壁205、及び、スライドカバー206とから構成されている。ロータ210は、低圧バルブケーシング201に収納されて回転自在に軸支されて、電動モータに駆動される減速機の駆動軸231により駆動される。低圧バルブケーシング201にモータを直結して、モータ直結型とすると小型化が図れる。ロータ210には、複数のロータブレード211が装着されている。各ポケットには、サイドウォールは設けられていない。
【0036】
ロータ210の図5上の左端部にはブッシュ212が嵌め込まれており、スライドカバー206にねじ込まれた軸207を支持している。スライドカバー206は、低圧ロータリーバルブを特徴付ける構成であり、低圧バルブケーシング201の内周面を、ロータ210の軸方向にスライド可能であって、スライドカバー206がロータ210から軸方向に離間することにより、洗浄時に限ってバイパス流路240が形成される。低圧バルブケーシング201の内周面とスライドカバー206との間にはOリングなどでシールされていなければならない。
【0037】
以上説明したように、本実施形態では、スライドカバー206がロータ210から軸方向に離間することにより、洗浄時に限ってバイパス流路240を形成したが、これに限るものではない。バイパス流路のその他の実施形態としては、一部のロータブレードが、ロータに対して周方向に回転して、ロータに固定された残りのロータブレードとの間に位相差を生じさせて、周方向にジグザクのバイパス通路を形成させても良い。その他様々な実施形態が考えられる。
【0038】
低圧バルブケーシング201の図5上の左端部には、ハンドル固定ステー220が固定されている。ハンドル214を回転させると、スライドカバー206を移動させることができる。217は無給油ワッシャ、215は、スライドカバー206を位置決め固定するための締め付け体である。ガイド211は、ガイド板219を固定したスライドカバー206が、回転せずにスライドできるようにするガイドである。スライドカバー206はねじの代わりに流体圧シリンダで移動させても良い。
【0039】
以上説明した本発明の一実施形態によれば、原料と高圧の過熱水蒸気を殺菌ゾーンに連続的に供給し、ここで加熱殺菌処理し、殺菌処理後の製品を固気分離ゾーンにて過熱水蒸気から分離し、冷却したのち、製品を回収する。そして、殺菌ゾーン、固気分離ゾーン、冷却ゾーン、製品回収ゾーンにおいて、すべてのゾーン又は一部のゾーンで定置洗浄(CIP: Cleaning in Place)を行うことができる。すなわち、洗浄時に殺菌ゾーンに水と飽和水蒸気などを連続的に供給することで、殺菌ゾーンから製品回収ゾーンを洗浄することができる。
付着性の原料の場合には、蒸気と、酸又はアルカリの薬剤を水に添加して洗浄するとよく、これらを循環させるためのラインを全体又は一部に設けてもよい。
【0040】
サイクロンの洗浄においても、本発明の一実施形態の洗浄方法は有効である。サイクロンの排出部に接続した低圧のロータリーバルブを停止すると、上流には水蒸気と温水の混合体が溜まり、サイクロンを洗浄することができる。スライドカバーを移動して、バイパス流路を開放させてドレインに排出した後、再度蒸気や市水などで一気に洗浄することができる。本発明の一実施形態の洗浄方法は、これ以外様々なやり方が考えられる。
【0041】
本発明の一実施形態の洗浄、装置殺菌の手順の一例としては、次のような手順で行うと良い。
(1)スーパーヒータをOFFにして、飽和水蒸気とする。
(2)ライン50のブロワーをOFFにする。
(3)ライン60の洗浄水を投入する。
(4)絞りバルブ30を図4の35にする。
(5)低圧ロータリーバルブ200のバイパス流路を開ける。
(6)適当な洗浄時間が経過後、サイクロン4の低圧ロータリーバルブ200の回転を止めバイパス流路を閉じ、サイクロン付随の配管(固気分離時に気体が排気される配管等)を洗浄する。
(7)サイクロン4の低圧ロータリーバルブのバイパス流路を再度開ける。
(8)次いでサイクロン6以降についても同様の操作を行う。
(9)すべての低圧ロータリーバルブのバイパス流路が開いている状態で、ロータを回転させ、洗浄水を止めた上で飽和水蒸気により装置の殺菌を行う。
(10)適当な殺菌時間が経過後、飽和水蒸気を止め、ライン50のブロアを稼働させ、装置の乾燥を行う。
装置部品の耐熱・耐圧性に問題がない場合には、装置殺菌時に過熱水蒸気を用いることができる。
【0042】
本発明の一実施形態の粉粒体殺菌装置には、以下のような高圧ロータリーバルブ、ノズル、低圧ロータリーバルブが使用されている。これらは、次のような作用効果を有するものである。高圧の殺菌ゾーンに原料を供給するための、CIP洗浄に対応した高圧ロータリーバルブについては、ロータは片持ち式、側面シールはスラスト式、ポケット内にガス(蒸気)可能な構造を有する。CIP洗浄に対応した可変ノズルについては、殺菌運転時には背圧を保つために作用する絞り流路、洗浄時には開放流路と切り替え可能である。CIP洗浄に対応した低圧ロータリーバルブについては、各ゾーンの区切りなどに使用される低圧ロータリーバルブは、片側の蓋(スライドカバー)がスライド可能な形式で、洗浄時には、バイパス流路が形成される構造を有する。可変ノズルや低圧ロータリーバルブのスライドカバーの駆動を電動モータや流体圧シリンダーで行い、バルブ類を自動弁とすることで、シーケンス制御による全自動殺菌・全自動洗浄が可能である。
これにより、少なくとも固気分離ゾーンはもとより、殺菌ゾーンから製品回収ゾーンまで圧力を加えて、洗浄することが可能となる。
【0043】
以上説明した高圧ロータリーバルブ100、ノズル30、低圧ロータリーバルブ200については、いずれも単体としても発明を構成するものである。また、これらの構成要素はいずれも定置洗浄においては、優れた作用効果を示すものであり、過熱水蒸気による粉粒体殺菌装置や、加熱高温単体又は混合ガス、薬剤などによる殺菌装置に限らず、一般的装置・装備、プラントなどにおいて、定置洗浄が必要な場合に単体としても使用することができるものである。
【符号の説明】
【0044】
1 投入装置
2 加熱管
4、6 第1、2サイクロン
5、7 エジェクタ
8 サイクロン
9 ロータリーバルブ
11〜15 第1〜5ライン
30 ノズル
20 過熱水蒸気導入ライン
100 高圧ロータリーバルブ
200 低圧ロータリーバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体と過熱水蒸気を連続的に供給して加熱殺菌処理する殺菌ゾーン、前記粉粒体を過熱水蒸気から分離する固気分離ゾーン、前記粉粒体を冷却する冷却ゾーン、及び、前記粉粒体を製品として回収する製品回収ゾーンの4つの区画からなり、前記殺菌ゾーン入口には前記粉粒体を供給するための高圧ロータリーバルブが設けられており、前記殺菌ゾーンと前記固気分離ゾーンとの間には両ゾーンの差圧を調整するためのノズルが設けられており、さらに、前記固気分離ゾーンには低圧ロータリーバルブが設けられた粉粒体殺菌装置において、
少なくとも前記低圧ロータリーバルブは、洗浄時に限ってバイパス流路が形成される構造を有することを特徴とする粉粒体殺菌装置。
【請求項2】
前記低圧ロータリーバルブは、送入口と送出口を有する本体、側壁、及び、スライドカバーとから構成された低圧バルブケーシング、並びに、該低圧バルブケーシング内に収納されて回転自在に軸支された、複数のポケットを有するロータを具備し、
前記スライドカバーは、前記低圧バルブケーシングの内周面を前記ロータの軸方向にスライド可能であって、前記スライドカバーが前記ロータから軸方向に離間することにより、洗浄時に限ってバイパス流路が形成される構造を有することを特徴とする請求項1に記載の粉粒体殺菌装置。
【請求項3】
前記ノズルは、絞り流路と、洗浄用の開放流路とを切り替え可能な構造を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の粉粒体殺菌装置。
【請求項4】
前記高圧ロータリーバルブは、原料入口と原料出口を有する本体と、2つの側壁とから構成された高圧バルブケーシング、該高圧バルブケーシング内に収納されて回転自在に片持ち軸支された、ロータブレードで仕切られた複数のポケットを有するロータ、及び、前記高圧バルブケーシングの内周面と前記ロータブレード間のシール機構を具備し、
前記複数のポケットは、それぞれ、前記ロータブレード、2つのサイドウォール、及び、ポケット底面により形成され、一方の側壁に接する側のサイドウォールには、それぞれ、前記ポケット底面に接した位置に開口が設けられており、
前記複数のポケットの全てにおいて、前記原料出口に前記ポケットの1つが連通する期間に、前記一方の側壁に設けられた高圧蒸気口と、前記ポケットの1つに設けられた前記開口とが連通するように構成されたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の粉粒体殺菌装置。
【請求項5】
前記固気分離ゾーンには、少なくとも2台のサイクロンが設けられており、該サイクロンの排出口には、それぞれ前記低圧ロータリーバルブが設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の粉粒体殺菌装置。
【請求項6】
低圧ロータリーバルブは、送入口と送出口を有する本体、側壁、及び、スライドカバーとから構成された低圧バルブケーシング、並びに、該低圧バルブケーシング内に収納されて回転自在に軸支された、複数のポケットを有するロータを具備し、
前記スライドカバーは、前記低圧バルブケーシングの内周面を前記ロータの軸方向にスライド可能であって、前記スライドカバーが前記ロータから軸方向に離間することにより、洗浄時に限ってバイパス流路が形成される構造を有することを特徴とする低圧ロータリーバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−78493(P2011−78493A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231595(P2009−231595)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(591127917)株式会社セイシン企業 (17)
【Fターム(参考)】