説明

定義された反応性を有するシリコーン樹脂

一般式(1)[A1z1pSiO(4-p-z)/2](1)[式中、z及びpはそれぞれ0〜3の値にある整数を意味し、
1は同一又は異なる、水素−、アルキル−、シクロアルキル−、アリール−又はアルコキシ残基であって、脂肪族の線状又は分枝した又は脂環式のアルキル残基又はアリールオキシ残基を有する残基を意味するか、又は、官能基を意味し、
これは18個までのC原子を含有し、更に1個又は複数個の同一又は異なるヘテロ原子であって、O−、S、Si、Cl、F、Br、P又はN原子から選択されたヘテロ原子を含有することができる、
その際、
1は同一又は異なる、脂肪族又は脂環式のアルコキシ−、アリールオキシ又はヒドロキシ残基又は残基A1を意味する]
の繰り返し単位から構成され、少なくともT単位又はQ単位又はこの両方が存在しなくてはならず、かつこの他にM単位及び/又はD単位が存在することができ、かつ少なくとも1ppmのHClを含有することにより特徴付けられるシリコーン樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン樹脂及びその製造方法に関する。
【0002】
DE 195 07 594 A1によれば、シリコーン樹脂の反応性は、反応性の不活発なアルコキシ基を含有するシリコーン樹脂において、水蒸気を用いた処理によりこのアルコキシ基を、ケイ素に結合したヒドロキシ基で交換することで制御されることができる。
【0003】
OH豊富な、その反応性において適合させたシリコーン樹脂の製造のための更なる試みは、US 2 832 794及びUS 3 489 782中に説明されている。この際、固有の特異的な生成物を生じる、そのつど定義された方法パラメーターは遵守されていて、これにより反応性の要求される制御が可能になる。
【0004】
本発明の課題は、技術水準を改善することであり、特に、反応性がシリコーン樹脂のシラノール含分には依存しないパラメーターにより制御されるシリコーン樹脂を製造することである。前記課題は本発明によって解決される。
【0005】
本発明の主題は、一般式(1)
【化1】

[式中、z及びpはそれぞれ0〜3の値にある整数を意味し、
1は同一又は異なる、水素−、アルキル−、シクロアルキル−、アリール−又はアルコキシ残基であって、脂肪族の線状又は分枝した又は脂環式のアルキル残基又はアリールオキシ残基を有する残基を意味するか、又は、官能基を意味し、
これは18個までのC原子を含有し、更に1個又は複数個の同一又は異なるヘテロ原子であって、O−、S、Si、Cl、F、Br、P又はN原子から選択されたヘテロ原子を含有することができる、
その際、
1は同一又は異なる、脂肪族又は脂環式のアルコキシ−、アリールオキシ又はヒドロキシ残基又は残基A1を意味する]
の繰り返し単位から構成され、少なくともT単位又はQ単位又はこの両方が存在しなくてはならず、かつこの他にM単位及び/又はD単位が存在することができ、かつ少なくとも1ppmのHClを含有することにより特徴付けられるシリコーン樹脂である。
【0006】
有利なシリコーン樹脂は、分子量800〜500000を有するシリコーン樹脂である。
【0007】
このHCl量は、所望の反応性に相当して調整され、この結果本発明により少なくとも1ppmHClが存在し、有利にはこのHCl量は樹脂に対して1ppm〜10質量%である。しかしながら、有利には1ppm〜5質量%、特に有利には1ppm〜3質量%の量のHClが含有されている。
【0008】
本発明の更なる主題は、シリコーン樹脂の製造方法であって、この合成を、加水分解可能な基を含有するシラン及び/又はシロキサンから出発して行い、かつこの合成は、加水分解及び縮合の工程を含み、この加水分解可能な基はケイ素に結合した塩素原子であるか、又はケイ素に結合したアルコキシ基、アリールオキシ−又はヒドロキシ基であり、その際樹脂の製造の工程においてガス状の又は水中に溶解されたHClが使用され、かつこのHCl量は所望の反応性に相応して調整され、かつ余計に計量供給されたHClは除去される、シリコーン樹脂の製造方法である。
【0009】
この余計に計量供給されたHCl量は、この酸が、自体でガス状の生成物、例えばHClである場合には、中和又は技術水準によるその他の方法、例えば真空の適用によるガスとしての追い出し又は加熱により除去されることができる。
【0010】
本発明によるシリコーン樹脂は有利には、コーティングの製造のためのバインダーとして使用される。本発明によるシリコーン樹脂は、意外にも、HCl含量に応じて、多かれ少なかれ高い反応性を提供する。これらは、本発明によるシリコーン樹脂がバインダーとして使用されるコーティングに、優れた抵抗性を、例えば屋外暴露に対する影響に対する、化学的影響及びUV線による攻撃に対する、優れた抵抗性を付与する。同様に、このコーティングでもって、極めて良好な耐水性及び少ない汚染傾向が実現される。疎水性に調整されたコポリマーでもって、加えて多孔性のコーティングが実現され、これは臨界的な顔料容積濃度を超えた顔料容積濃度を有し、これは、高い水忌避性と同時に優れたガス透過性及び水蒸気透過性により優れている。加水分解可能かつ縮合可能な基を含有するシランの前記コポリマー中への重合導入により、バインダーが製造され、これは設けた後に湿分硬化性であり、この結果フィルム硬度、熱可塑性及び汚染傾向が調整される。
【0011】
この目的の他に、本発明によるシリコーン樹脂は、コーティング又はその他の使用目的のための調製物への付加的な添加剤としても使用されることができ、並びに更なる添加物質無しに、純粋なままで、基材上にフィルムを形成するか、もしくはブロック又は他の任意の形態へと硬化する材料としても使用することができる。
【0012】
単独での又はその他の調製物の成分と組み合わせたか又はその成分としての本発明によるシリコーン樹脂の使用により操作されることができる更なる特性は、例えば次のとおりである:
−導電性及び電気抵抗の制御、
−レベリング性の制御、
−フォームの不安定化の安定化、
−湿ったか又は硬化したフィルム又は物体の光沢の制御、
−耐候性の向上、
−化学薬品抵抗性の向上、
−色相安定性の向上、
−チョーキング傾向の減少、
−本発明による分散体を含有する調製物から得られる固体又はフィルムへの静止摩擦及び動摩擦の減少又は向上、
−湿式付着の改善、
−湿式耐摩耗性の改善、
−基材に対する付着の改善、
−2つの基材、フィルムその他の間の中間層付着の改善、
−充填剤−及び顔料架橋−及び分散挙動の制御、
−レオロジー特性の制御、
−本発明による分散体を含有する調整物から得られる固体又はフィルムの、機械的な特性、例えば柔軟性、耐引掻性、弾性、伸び性、曲げ性、引裂挙動、レジリエンス挙動、硬度、密度、引裂強さ、永久圧縮歪み、異なる温度での挙動、膨張率、耐摩耗性並びにその他の特性、例えば熱伝導率、燃焼性、ガス透過性、水蒸気、熱気、化学薬品、屋外暴露及び照射に対する抵抗性、消毒性の制御、
−電気的特性、例えば誘電損率、絶縁耐力、誘電率、抗トラッキング性、耐アーク性、表面抵抗、絶縁破壊の強さ(spezifischer Durchschlagwiderstand)の制御。
【0013】
本発明によるシリコーン樹脂が上記した特性を制御することを可能にする適用分野のための例は、コーティング物質及び含浸物、及び、基材、例えば金属、ガラス、木材、鉱物基材、テキスタイル、カーペット、床敷物、又は繊維から製造できるその他の物体の製造のためのプラスチック繊維及び天然繊維、皮革、プラスチック、例えばシート、成形体上の前記コーティング物質及び含浸物から得ることができるコーティング及び被覆体の製造である。本発明によるシリコーン樹脂は、液状又は硬化した固体の形で、エラストマー材料中に組み込まれることができる。この際、これらは、その他の使用特性、例えば、透明度、熱抵抗性、黄変傾向、耐候性の制御の増強又は改善のために使用されることができる。
【0014】
実施例:
式Me−Si(O)3/2の単位87%及び式Me2Si(O)2/2の単位13%から構成され、かつ更にエポキシ基5.8質量%及びOH基0.9質量%を表面に有するメチルシリコーン樹脂を、トルエン中に溶解させ、この結果50%溶液が生じた。塩酸0.02質量%を含有するこの混合物に、希釈した塩酸水溶液を計量供給し、この結果濃度系列(Konzentrationsreihe)が生じた。
【0015】
塩酸について次の濃度を調整した:
−固体樹脂に対してHCl8.78質量%(即ち、50%の樹脂溶液では、この記載8.78質量%は、この樹脂調製物100gで、この中に含有される樹脂50gに対する)
−固体樹脂に対してHCl1.61質量%
−固体樹脂に対してHCl1.57質量%。
【0016】
この試料を50℃で貯蔵し、含有される樹脂分子の縮合(Aufkondensation)のための濁りが何時間後に生じるか、即ち架橋が開始するかを観察した。
【0017】
以下の時間を得た:
0.02質量%HClでは:96時間
1.57質量%HClでは:34時間
1.61質量%HClでは:28時間
8.78質量%HClでは:8時間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

[式中、z及びpはそれぞれ0〜3の値にある整数を意味し、
1は同一又は異なる、水素−、アルキル−、シクロアルキル−、アリール−又はアルコキシ残基であって、脂肪族の線状又は分枝した又は脂環式のアルキル残基又はアリールオキシ残基を有する残基を意味するか、又は、官能基を意味し、
これは18個までのC原子を含有し、更に1個又は複数個の同一又は異なるヘテロ原子であって、O−、S、Si、Cl、F、Br、P又はN原子から選択されたヘテロ原子を含有することができる、
その際、
1は同一又は異なる、脂肪族又は脂環式のアルコキシ−、アリールオキシ又はヒドロキシ残基又は残基A1を意味する]
の繰り返し単位から構成され、少なくともT単位又はQ単位又はこの両方が存在しなくてはならず、かつこの他にM単位及び/又はD単位が存在することができ、かつ少なくとも1ppmのHClを含有することにより特徴付けられるシリコーン樹脂。
【請求項2】
請求項1記載のシリコーン樹脂の製造方法であって、この合成を、加水分解可能な基を含有するシラン及び/又はシロキサンから出発して行い、かつこの合成は、加水分解及び縮合の工程を含み、この加水分解可能な基はケイ素に結合した塩素原子であるか、又はケイ素に結合したアルコキシ基、アリールオキシ−又はヒドロキシ基であり、その際樹脂の製造の工程においてガス状の又は水中に溶解されたHClが使用され、かつこのHCl量は所望の反応性に相応して調整され、かつ余計に計量供給されたHClは除去されることを特徴とする、請求項1記載のシリコーン樹脂の製造方法。

【公表番号】特表2008−546896(P2008−546896A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518682(P2008−518682)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際出願番号】PCT/EP2006/006021
【国際公開番号】WO2007/003277
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】