説明

定電流回路

【課題】 温度係数を有しない、または、任意の温度係数を有する、温度補償された定電流を出力する。
【解決手段】 温度補償された電流I1を出力する温度補償回路と、温度補償回路に電流I2を供給する電流供給回路と、を備え、温度補償回路は、ベース・エミッタ間電圧を所定の比で増倍したベース・コレクタ間電圧を発生するトランジスタQ1を含む電圧増倍回路と、ベース・エミッタ間電圧がQ1と略等しくなる、Q1と同一導電型のトランジスタQ2と、両端がQ1のコレクタおよびQ2のベースに接続される抵抗R1と、両端がQ1およびQ2のエミッタに接続される抵抗R2と、を有し、I1は、Q2のコレクタ電流に応じて出力され、I2は、Q2のベースおよびR1の接続点に供給され、R1の両端に温度に略比例して変化する電圧を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定電流回路に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路などに用いられる電圧源としては、ダイオードやトランジスタのpn接合のバンドギャップ電圧を利用するバンドギャップ回路を含むものが一般に知られている。例えば、特許文献1の図1ないし図4では、一対のトランジスタのベース・エミッタ間電圧の差を利用して基準電圧を発生し、正の温度係数を有する抵抗の両端電圧と、負の温度係数を有するpn接合の順方向降下電圧とを相殺して、温度係数を持たない基準電圧を出力する基準電圧発生回路(特許文献1においては基準電圧回路)が開示されている。
【0003】
ここで、特許文献1の図3と同様の構成となっている基準電圧発生回路を図6に示す。図6の基準電圧発生回路21aにおいて、抵抗R9の両端電圧をVR9とし、ダイオードD1の順方向降下電圧をVDとすると、出力電圧Voutは、
Vout=VR9+VD
=(R9/R5)・(k・T/q)・ln(N)+VD
となり、VR9が有する正の温度係数(R9/R5)・(k/q)・ln(N)を、VDが有する負の温度係数の絶対値と等しくすることによって、温度係数を0にすることができる。
【0004】
このようにして、バンドギャップ回路において温度係数が相殺されるように抵抗値やトランジスタのエミッタ面積比などを設定することによって、温度補償された基準電圧を出力することができる。
【特許文献1】特開平8−339232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、半導体集積回路などの電源として電流源を必要とする場合、図6の基準電圧発生回路21aの抵抗R9に流れる電流I5を出力電流としても、温度係数を0にすることはできない。例えば図7に示すように、図6の電流I5を外部の負荷(不図示)に供給する構成とした電流供給回路2aにおいて、出力電流Ioutは、
Iout=(1/R5)・(k・T/q)・ln(N)
となり、正の温度係数を有する。
そのため、温度によらず一定の定電流を出力することができない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決する主たる本発明は、温度補償された第1の電流を出力する温度補償回路と、前記温度補償回路に第2の電流を供給する電流供給回路と、を備え、前記温度補償回路は、ベース・エミッタ間電圧を所定の比で増倍したベース・コレクタ間電圧を発生する第1のトランジスタを含む電圧増倍回路と、ベース・エミッタ間電圧が前記第1のトランジスタと略等しくなる、前記第1のトランジスタと同一導電型の第2のトランジスタと、両端が前記第1のトランジスタのコレクタおよび前記第2のトランジスタのベースに接続される第1の抵抗と、両端が前記第1のトランジスタのエミッタおよび前記第2のトランジスタのエミッタに接続される第2の抵抗と、を有し、前記第1の電流は、前記第2のトランジスタのコレクタ電流に応じて出力され、前記第2の電流は、前記第2のトランジスタのベースおよび前記第1の抵抗の接続点に供給され、前記第1の抵抗の両端に温度に略比例して変化する電圧を発生させることを特徴とする定電流回路である。
【0007】
本発明の他の特徴については、添付図面及び本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、温度係数を有しない、または、任意の温度係数を有する、温度補償された定電流を出力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
<第1実施形態>
以下、図1を参照して、本発明の第1の実施形態における定電流回路の構成について説明する。
図1に示されている定電流回路は、電流供給回路2aおよび温度補償回路1aで構成されている。
【0011】
電流供給回路2aは、例えば、NPNバイポーラトランジスタであるトランジスタQ3、Q4、PNPバイポーラトランジスタであるトランジスタQ8、Q9、Q10、および抵抗R5と、NPNバイポーラトランジスタであるトランジスタQ20および抵抗R20で構成される起動回路20aとを含んで構成されている。ダイオード接続されたトランジスタQ8、および第4のトランジスタQ4は、コレクタ同士が接続され、それぞれのエミッタが電源電位VCCおよびグランド電位に接続されている。また、トランジスタQ8とカレントミラー回路を構成するトランジスタQ9、およびダイオード接続された第3のトランジスタQ3は、コレクタ同士が接続され、トランジスタQ9のエミッタが電源電位VCCに、トランジスタQ3のエミッタが第5の抵抗R5を介してグランド電位に、それぞれ接続されている。なお、トランジスタQ3およびQ4は、ベース同士が接続され、エミッタ面積比の値がNとなっている。さらに、トランジスタQ8とカレントミラー回路を構成するトランジスタQ10は、エミッタが電源電位VCCに接続され、コレクタ電流が第2の電流I2として電流供給回路2aから出力されている。そして、起動回路20aのトランジスタQ20は、コレクタが電源電位VCCに、エミッタが抵抗R20を介してグランド電位に、ベースがトランジスタQ8のベースに、それぞれ接続されている。
【0012】
温度補償回路1aは、本実施形態では、例えば、NPNバイポーラトランジスタであるトランジスタQ1、Q2、PNPバイポーラトランジスタであるトランジスタQ6、Q7、および抵抗R1、R2、R3、R4で構成されている。第1のトランジスタQ1は、ベース・エミッタ間が第3の抵抗R3で、ベース・コレクタ間が第4の抵抗R4で、それぞれ接続され、エミッタがグランド電位に、コレクタが第1の抵抗R1を介して電流供給回路1aの出力に、それぞれ接続されている。また、ダイオード接続されたトランジスタQ6、および第2のトランジスタQ2は、コレクタ同士が接続され、トランジスタQ6のエミッタが電源電位VCCに、トランジスタQ2のエミッタが第2の抵抗R2を介してグランド電位に、トランジスタQ2のベースが電流供給回路1aの出力に、それぞれ接続されている。そして、トランジスタQ6とカレントミラー回路を構成するトランジスタQ7は、エミッタが電源電位VCCに接続され、コレクタ電流が第1の電流I1として温度補償回路1aから出力されている。なお、トランジスタQ7およびQ6は、エミッタ面積比の値がMとなっている。
【0013】
次に、本実施形態における定電流回路の動作について説明する。以下、電流供給回路2aおよび温度補償回路1aの各トランジスタのベース電流は、電流I1ないしI5に対して十分に小さいものとする。
【0014】
電流供給回路2aにおいて、トランジスタQ3およびQ4のベース・エミッタ間電圧をそれぞれVbe3およびVbe4とすると、抵抗R5の両端電圧はVbe4−Vbe3となるため、カレントミラー回路を構成するトランジスタQ8ないしQ10のコレクタ電流I5は、
I5=(Vbe4−Vbe3)/R5
と表すことができる。また、トランジスタQ3およびQ4のエミッタ電流をそれぞれIe3およびIe4とすると、上記ベース・エミッタ間電圧Vbe3およびVbe4は、それぞれ
Vbe3=(k・T/q)・ln(Ie3/Is)、
Vbe4=(k・T/q)・ln(Ie4/Is)
で与えられることが知られている。なお、k(≒1.38×10−23J/K)はボルツマン定数、Tは絶対温度、q(≒1.60×10−19C)は電気素量(素電荷)、IsはトランジスタQ3およびQ4の飽和電流である。さらに、前述したように、トランジスタQ3およびQ4のエミッタ面積比の値がNであるので、上記エミッタ電流Ie3およびIe4の関係は、
Ie4=N・Ie3
となる。したがって、電流供給回路2aの出力電流I2は、
a=(k/q)・ln(N)
となる温度Tに依存しない定数aを用いて、
I2=I5=(1/R5)・(k・T/q)・ln(N)
=(a/R5)・T
と表すことができる。なお、本実施形態では、電流供給回路2aの出力電流I2は、ソース電流(吐き出し電流)となる。
【0015】
なお、電流供給回路2aは、トランジスタQ3、Q4、Q8、およびQ9がループ状に接続されており、各トランジスタのベースがいずれも当該ループ内で接続されている。そのため、電源投入時の各トランジスタのバイアスは不確定であり、電源の投入方法によってはいずれのトランジスタにも電流が流れず、電流供給回路2aが起動しない場合もあり得る。本実施形態では、起動回路20aのトランジスタQ20のベースに向かってトランジスタQ8およびQ9のベース電流が流出することによって、電流供給回路2aは正常に起動することができる。
【0016】
温度補償回路1aにおいて、抵抗R1およびR4の両端電圧をそれぞれVR1およびVR4とし、トランジスタQ1のベース・エミッタ間電圧Vbe1およびトランジスタQ2のベース・エミッタ間電圧Vbe2が略等しくなるものとすると、抵抗R2の両端電圧VR2は、
VR2=VR1+VR4+Vbe1−Vbe2
=VR1+VR4
と表すことができる。また、抵抗R4およびR3に流れる電流をI4とすると、上記両端電圧VR1およびVR4は、抵抗R1およびR5の抵抗値比の値b1(=R1/R5)と、抵抗R4およびR3の抵抗値比の値b2(=R4/R3)とを用いて、それぞれ
VR1=I2・R1=a・(R1/R5)・T
=a・b1・T、
VR4=I4・R4=(R4/R3)・Vbe1
=b2・Vbe1
と表すことができる。ここで、抵抗R1およびR5が略等しい温度係数c1を有するものとすると、温度Tにおける各抵抗値は、それぞれ
R1=Rref1・(1+c1・T)、
R5=Rref5・(1+c1・T)
で与えられるため、上記抵抗値比の値b1は温度Tに依存しない定数である。したがって、上記両端電圧VR1は、温度Tに略比例して変化する電圧となる。同様に、抵抗R4およびR3が略等しい温度係数を有するものとすると、上記抵抗値比の値b2も温度Tに依存しない定数である。したがって、上記両端電圧VR4、すなわち、トランジスタQ1のベース・コレクタ間電圧は、ベース・エミッタ間電圧Vbe1を温度によらず一定の比で増倍した電圧となる。さらに、トランジスタQ1のpn接合の0Kにおけるバンドギャップ電圧をVbg1とし、温度係数を−d1とすると、上記ベース・エミッタ間電圧Vbe1は、
Vbe1=Vbg1−d1・T
で与えられる。したがって、上記両端電圧VR2は、
A1=b2・Vbg1、
B1=a・b1−b2・d1
となる温度Tに依存しない定数A1およびB1を用いて、
VR2=b2・Vbg1+(a・b1−b2・d1)・T
=A1+B1・T
のように、温度Tの一次関数で表すことができる。
【0017】
一方、抵抗R2には、トランジスタQ6のコレクタ電流I3が流れるため、当該コレクタ電流I3は、
I3=VR2/R2
となる。また、抵抗R2の温度係数をc2すると、温度Tにおける抵抗値は、
R2=Rref2・(1+c2・T)
で与えられる。ここで、上記コレクタ電流I3を温度Tで微分すると、
∂I3/∂T=(1/R2)・(R2・B1−Rref2・c2・VR2)
=(Rref2/R2)・(B1−c2・A1)
となる。したがって、上記コレクタ電流I3は、
B1−c2・A1=a・b1−(d1+c2・Vbg1)・b2
=0
の条件下で、温度によらず一定となる。そして、前述したように、トランジスタQ7およびQ6のエミッタ面積比の値がMであるので、温度補償回路1aの出力電流Ioutは、上記条件下で、
Iout=I1=M・I3
=M・(A1+B1・T)/R2
=M・b2・Vbg1/Rref2
となり、温度によらず一定となる。一例として、N=10、Vbg1=1.2V、d1=2mV/K、およびc2=2000ppm/℃とした場合には、a≒0.2mV/Kとなるため、
b1/b2=(d1+c2・Vbg1)/a=22
となるように抵抗R1、R3、R4、およびR5の各抵抗値を設定することによって、出力電流Ioutは温度によらず一定となる。また、一例として、さらにM=1、b2=10、およびRref2=100Ωとした場合には、
b1=22×b2=220
となるように抵抗R1およびR5の各抵抗値を設定することによって、出力電流Ioutは、
Iout=M・b2・Vbg1/Rref2=120mA
となり、温度によらず一定となる。
【0018】
このようにして、本実施形態の温度補償回路1aは、温度によらず一定の定電流Ioutを出力することができる。なお、本実施形態では、温度補償回路1aの出力電流Ioutは、ソース電流となる。
【0019】
<第2実施形態>
以下、図2を参照して、本発明の第2の実施形態における定電流回路の構成について説明する。
図2に示されている定電流回路は、電流供給回路2bおよび温度補償回路1bで構成され、第1実施形態の定電流回路に対して、極性を反転させたような構成となっている。
【0020】
より具体的には、電流供給回路2bは、例えば、PNPバイポーラトランジスタであるトランジスタQ3、Q4、NPNバイポーラトランジスタであるトランジスタQ8、Q9、Q10、および抵抗R5と、PNPバイポーラトランジスタであるトランジスタQ20および抵抗R20で構成される起動回路20bとを含んで構成されている。また、温度補償回路1bは、本実施形態では、例えば、PNPバイポーラトランジスタであるトランジスタQ1、Q2、NPNバイポーラトランジスタであるトランジスタQ6、Q7、および抵抗R1、R2、R3、R4で構成されている。そして、トランジスタQ1、Q4、および抵抗R2、R3、R5、R20が電源電位VCCに、トランジスタQ6ないしQ10、およびQ20がグランド電位に、それぞれ接続されている。
【0021】
このような構成によって、本実施形態の温度補償回路1bは、第1実施形態の温度補償回路1aと同様に、温度によらず一定の定電流Ioutを出力することができる。なお、本実施形態では、電流供給回路2bの出力電流I2および温度補償回路1bの出力電流Ioutは、シンク電流(吸い込み電流)となる。
【0022】
<第3実施形態>
以下、図3を参照して、本発明の第3の実施形態における定電流回路の構成について説明する。
図3に示されている定電流回路は、第1実施形態の電流供給回路2aが、電流供給回路2cとなっている。
【0023】
電流供給回路2cは、例えば、NPNバイポーラトランジスタであるトランジスタQ3、Q4、PNPバイポーラトランジスタであるトランジスタQ8、Q9、Q10、および抵抗R5と、NPNバイポーラトランジスタであるトランジスタQ20および抵抗R20で構成される起動回路20aとを含んで構成されている。ダイオード接続されたトランジスタQ8、および第3のトランジスタQ3は、コレクタ同士が接続され、それぞれのエミッタが電源電位VCCおよびグランド電位に接続されている。また、トランジスタQ8とカレントミラー回路を構成するトランジスタQ9、および第4のトランジスタQ4は、コレクタ同士が第5の抵抗R5を介して接続され、それぞれのエミッタが電源電位VCCおよびグランド電位に接続されている。なお、トランジスタQ3のベースは、抵抗R5およびトランジスタQ4のコレクタの接続点に接続され、トランジスタQ4のベースは、トランジスタQ9のコレクタおよび抵抗R5の接続点に接続され、トランジスタQ3およびQ4のエミッタ面積比の値は、Nとなっている。さらに、トランジスタQ8とカレントミラー回路を構成するトランジスタQ10は、エミッタが電源電位VCCに接続され、コレクタ電流が第2の電流I2として電流供給回路2cから出力されている。そして、起動回路20aのトランジスタQ20は、コレクタが電源電位VCCに、エミッタが抵抗R20を介してグランド電位に、ベースがトランジスタQ8のベースに、それぞれ接続されている。
【0024】
次に、本実施形態における定電流回路の動作について説明する。
電流供給回路2cにおいて、トランジスタQ3およびQ4のベース・エミッタ間電圧をそれぞれVbe3およびVbe4とすると、抵抗R5の両端電圧はVbe4−Vbe3となるため、カレントミラー回路を構成するトランジスタQ8ないしQ10のコレクタ電流I5は、
I5=(Vbe4−Vbe3)/R5
と表すことができる。また、前述したように、トランジスタQ3およびQ4のエミッタ面積比の値がNであるので、第1実施形態の場合と同様に計算すると、電流供給回路2cの出力電流I2、および温度補償回路1aの抵抗R1の両端電圧VR1は、それぞれ
I2=I5=(a/R5)・T、
VR1=I2・R1=a・b1・T
と表すことができる。なお、本実施形態では、電流供給回路2cの出力電流I2は、ソース電流となる。
【0025】
このようにして、本実施形態の電流供給回路2cは、温度補償回路1aに電流I2を供給し、第1実施形態の場合と同様に、温度Tに略比例して変化する抵抗R1の両端電圧VR1を発生させる。したがって、温度補償回路1aは、温度によらず一定の定電流Ioutを出力することができる。なお、第2実施形態の場合と同様に、電流供給回路2cに対して、極性を反転させたような構成の電流供給回路を用いることによって、温度補償回路1aの代わりに温度補償回路1bを用いることができる。
【0026】
<第4実施形態>
以下、図4を参照して、本発明の第4の実施形態における定電流回路の構成について説明する。
図4に示されている定電流回路は、第1実施形態の電流供給回路2aが、電流供給回路2dとなっている。
【0027】
電流供給回路2dは、例えば、基準電圧発生回路21a、起動回路20a、PNPバイポーラトランジスタであるトランジスタQ5、および抵抗R6を含んで構成されている。基準電圧発生回路21aおよび起動回路20aは、第1実施形態の電流供給回路2aに対して、カソードがグランド電位に接続されるダイオードD1と、両端がトランジスタQ10のコレクタおよびダイオードD1のアノードに接続される抵抗R9とが追加され、特許文献1の図3と同様の構成となっている。なお、トランジスタQ10のコレクタおよび抵抗R9の接続点の電圧は、基準電圧発生回路21aの出力電圧Vref1となっている。また、第5のトランジスタQ5は、エミッタが第6の抵抗R6を介して電源電位VCCに接続され、ベースが基準電圧発生回路21aの出力に接続され、コレクタ電流が第2の電流I2として電流供給回路2dから出力されている。
【0028】
次に、本実施形態における定電流回路の動作について説明する。
電流供給回路2dにおいて、前述したように、基準電圧発生回路21aの出力電圧Vref1は、抵抗R9の両端電圧VR9が有する正の温度係数を、ダイオードD1の順方向降下電圧VDが有する負の温度係数の絶対値と等しくすることによって、温度によらず一定となる。また、電源電位VCCを基準とした基準電圧発生回路21aの出力電圧を−Vref2(=Vref1−VCC)とし、トランジスタQ5のベース・エミッタ間電圧をVbe5とすると、抵抗R6の両端電圧はVref2−Vbe5となるため、電流供給回路2dの出力電流I2は、
I2=(Vref2−Vbe5)/R6
と表すことができる。さらに、トランジスタQ5のpn接合の0Kにおけるバンドギャップ電圧をVbg5とし、温度係数を−d5とすると、上記ベース・エミッタ間電圧Vbe5は、
Vbe5=Vbg5−d5・T
で与えられる。したがって、電流供給回路2dの出力電流I2は、
Vref0=Vref2−Vbg5
となる温度Tに依存しない定数Vref0を用いて、
I2=[Vref2−(Vbg5−d5・T)]/R6
=(Vref0+d5・T)/R6
と表すことができる。なお、本実施形態では、電流供給回路2dの出力電流I2は、ソース電流となる。
【0029】
温度補償回路1aにおいて、抵抗R1の両端電圧VR1は、抵抗R1およびR6の抵抗値比の値b3(=R1/R6)を用いて、
VR1=I2・R1=(R1/R6)・(Vref0+d5・T)
=b3・(Vref0+d5・T)
と表すことができる。ここで、抵抗R1およびR6が略等しい温度係数を有するものとすると、上記抵抗値比の値b3は温度Tに依存しない定数である。したがって、上記両端電圧VR1は、温度Tの一次関数で表される電圧、すなわち、温度Tに略比例して変化する電圧となる。また、第1実施形態の場合と同様に計算すると、抵抗R2の両端電圧VR2は、
A2=b3・Vref0+b2・Vbg1、
B2=b3・d5−b2・d1
となる温度Tに依存しない定数A2およびB2を用いて、
VR2=VR1+VR4
=b3・(Vref0+d5・T)+b2・(Vbg1−d1・T)
=A2+B2・T
のように、温度Tの一次関数で表すことができる。さらに、第1実施形態の場合と同様に、トランジスタQ6のコレクタ電流I3を温度Tで微分すると、
∂I3/∂T=(1/R2)・(R2・B2−Rref2・c2・VR2)
=(Rref2/R2)・(B2−c2・A2)
となる。したがって、上記コレクタ電流I3は、
B2−c2・A2=(d5−c2・Vref0)・b3
−(d1+c2・Vbg1)・b2
=0
の条件下で、温度によらず一定となる。そして、前述したように、トランジスタQ7およびQ6のエミッタ面積比の値がMであるので、温度補償回路1aの出力電流Ioutは、上記条件下で、
Iout=I1=M・I3
=M・(A2+B2・T)/R2
=M・b2・(d5・Vbg1+d1・Vref0)
/[Rref2・(d5−c2・Vref0)]
となり、温度によらず一定となる。一例として、VCC=3V、Vref1=1.8V、Vbg1=Vbg5=1.2V、d1=d5=2mV/K、およびc2=2000ppm/℃とした場合には、Vref0=0Vとなるため、
b3/b2=(d1+c2・Vbg1)/d5=2.2
となるように抵抗R1、R3、R4、およびR6の各抵抗値を設定することによって、出力電流Ioutは温度によらず一定となる。また、一例として、さらにM=1、b2=10、およびRref2=100Ωとした場合には、
b3=2.2×b2=22
となるように抵抗R1およびR6の各抵抗値を設定することによって、出力電流Ioutは、
Iout=M・b2・Vbg1/Rref2=120mA
となり、温度によらず一定となる。
【0030】
このようにして、本実施形態の温度補償回路1aは、温度によらず一定の定電流Ioutを出力することができる。
【0031】
<第5実施形態>
以下、図5を参照して、本発明の第5の実施形態における定電流回路の構成について説明する。
図5に示されている定電流回路は、第2実施形態の電流供給回路2bが、電流供給回路2eとなっている。
【0032】
電流供給回路2eは、例えば、基準電圧発生回路21b、NPNバイポーラトランジスタであるトランジスタQ5、および抵抗R6を含んで構成されている。基準電圧発生回路21bは、例えば、NPNバイポーラトランジスタであるトランジスタQ3、Q4、Q11、抵抗R5、R7、R8、および電流源S1を含んで構成され、特許文献1の図4と同様の構成となっている。ダイオード接続されたトランジスタQ4は、一端が電源電位VCCに接続された電流源S1から抵抗R8を介してコレクタに電流が供給され、エミッタがグランド電位に接続されている。また、トランジスタQ3は、電流源S1から抵抗R7を介してコレクタに電流が供給され、エミッタが抵抗R5を介してグランド電位に、ベースがトランジスタQ4のベースに、それぞれ接続されている。さらに、トランジスタQ11は、電流源S1からコレクタに電流が供給され、エミッタがグランド電位に、ベースが抵抗R7およびトランジスタQ3のコレクタの接続点に、それぞれ接続されている。なお、抵抗R8、R7、およびトランジスタQ11のコレクタの接続点の電圧は、基準電圧発生回路21bの出力電圧Vref2となっている。そして、第5のトランジスタQ5は、エミッタが第6の抵抗R6を介してグランド電位に接続され、ベースが基準電圧発生回路21bの出力に接続され、コレクタ電流が第2の電流I2として電流供給回路2eから出力されている。
【0033】
次に、本実施形態における定電流回路の動作について説明する。
電流供給回路2eにおいて、基準電圧発生回路21bの抵抗R7の両端電圧をVR7とし、トランジスタQ11のベース・エミッタ間電圧をVbe11とすると、基準電圧発生回路21bの出力電圧Vref2は、
Vref2=VR7+Vbe11
となり、上記両端電圧VR7が有する正の温度係数を、上記ベース・エミッタ間電圧Vbe11が有する負の温度係数の絶対値と等しくすることによって、第4実施形態の電流供給回路2dの出力電圧Vref1と同様に、温度によらず一定となる。また、トランジスタQ5のベース・エミッタ間電圧をVbe5とすると、抵抗R6の両端電圧はVref2−Vbe5となるため、電流供給回路2eの出力電流I2は、
I2=(Vref2−Vbe5)/R6
と表すことができる。したがって、第4実施形態の場合と同様に計算すると、電流供給回路2eの出力電流I2、および温度補償回路1bの抵抗R1の両端電圧VR1は、それぞれ
I2=(Vref0+d5・T)/R6、
VR1=I2・R1=b3・(Vref0+d5・T)
と表すことができる。なお、本実施形態では、電流供給回路2eの出力電流I2は、シンク電流となる。
【0034】
このようにして、本実施形態の電流供給回路2eは、温度補償回路1bに電流I2を供給し、第4実施形態の場合と同様に、温度Tに略比例して変化する(温度Tの一次関数で表される)抵抗R1の両端電圧VR1を発生させる。したがって、温度補償回路1bは、温度によらず一定の定電流Ioutを出力することができる。
【0035】
前述したように、温度補償回路1aおよび1bにおいて、抵抗R1の両端をトランジスタQ1のコレクタおよびトランジスタQ2のベースに、抵抗R2の両端をトランジスタQ1およびQ2のエミッタに、それぞれ接続し、同一導電型のトランジスタQ1およびQ2のベース・エミッタ間電圧を略等しくし、トランジスタQ1のベース・エミッタ間電圧およびベース・コレクタ間電圧を所定の比とし、トランジスタQ2のベースおよび抵抗R1の接続点に温度に略比例して変化する抵抗R1の両端電圧VR1を発生させる電流I2を供給することによって、トランジスタQ2のコレクタ電流I3に応じて、温度補償された電流I1(Iout)を出力することができる。
【0036】
また、略等しい温度係数を有する抵抗R3およびR4の両端を、それぞれトランジスタQ1のベース・エミッタ間およびベース・コレクタ間に接続することによって、トランジスタQ1のベース・エミッタ間電圧およびベース・コレクタ間電圧の比を温度によらず一定とすることができる。
【0037】
また、図1ないし図3に示したように、エミッタ面積が異なるトランジスタQ3およびQ4のベース・エミッタ間電圧の差電圧を、抵抗R1と略等しい温度係数を有する抵抗R5の両端に印加し、抵抗R5に流れる電流I5に応じて、電流I2を温度補償回路1aまたは1bに供給することによって、温度に略比例して変化する抵抗R1の両端電圧VR1を発生させることができる。
【0038】
また、図4および図5に示したように、抵抗R1と略等しい温度係数を有する抵抗R6に、温度補償された基準電圧がベースに印加されるトランジスタQ5のエミッタ電流を流し、トランジスタQ5のコレクタ電流を、電流I2として温度補償回路1aまたは1bに供給することによっても、温度に略比例して変化する抵抗R1の両端電圧VR1を発生させることができる。
【0039】
なお、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るととともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0040】
上記第1ないし第3実施形態では、温度補償回路1aまたは1bに電流I2を供給し、温度に略比例して変化する抵抗R1の両端電圧VR1を発生させる電流供給回路の構成例として、図1ないし図3において電流供給回路2aないし2cを示したが、これに限定されるものではない。他の構成の電流供給回路であっても、エミッタ面積が異なる一対のトランジスタのベース・エミッタ間電圧の差電圧を、抵抗R1と略等しい温度係数を有する抵抗の両端に印加し、当該抵抗に流れる電流に応じて電流I2を供給すれば、抵抗R1の両端電圧VR1は、温度に略比例して変化する電圧となる。なお、電流I2を供給する電流供給回路は、温度補償回路1aを用いる場合には電流I2としてソース電流を供給し、温度補償回路1bを用いる場合には電流I2としてシンク電流を供給するよう、電流供給回路2aおよび2bのように、極性を反転させた構成に適宜変更され得る。
【0041】
上記第4および第5実施形態では、温度補償回路1aまたは1bに電流I2を供給し、温度に略比例して変化する抵抗R1の両端電圧VR1を発生させる電流供給回路の構成例として、図4および図5において電流供給回路2dおよび2eを示したが、これに限定されるものではない。他の構成の電流供給回路であっても、抵抗R1と略等しい温度係数を有する抵抗に、温度補償された基準電圧がベースに印加されるトランジスタのエミッタ電流を流し、当該トランジスタのコレクタ電流を電流I2として供給すれば、抵抗R1の両端電圧VR1は、温度に略比例して変化する(温度の一次関数で表される)電圧となる。なお、電流I2を供給する電流供給回路は、温度補償回路1aを用いる場合には電流I2としてソース電流を供給し、温度補償回路1bを用いる場合には電流I2としてシンク電流を供給するよう、電流供給回路2dおよび2eのように、トランジスタQ5および抵抗R6の極性を反転させた構成に適宜変更され得る。また、温度補償された基準電圧を発生する基準電圧発生回路は、一例として図4および図5に示したようなバンドギャップ回路を含むものに限定されない。
【0042】
上記実施形態では、各トランジスタがいずれもバイポーラトランジスタとなっているが、これに限定されるものではない。例えば、バイポーラトランジスタとしてはPNP型またはNPN型の何れかのみを用い、それ以外のトランジスタをMOS(Metal-Oxide Semiconductor:金属酸化膜半導体)トランジスタとすることによって、本発明の定電流回路を集積回路として構成する場合に、CMOS(Complementary MOS:相補形金属酸化膜半導体)プロセスを用いることが可能となる。より具体的には、一例として、図1に示した定電流回路において、トランジスタQ6ないしQ10をPチャネルMOSトランジスタとした場合、CMOSプロセスにおいて、MOSトランジスタとともに、例えば、n型半導体基板をコレクタとし、n型半導体基板に形成されるp型ウェル層およびp型ウェル層にさらに形成されるp型拡散層をベースとし、p型ウェル層に形成されるn型拡散層をエミッタとした、サブストレート型のNPNバイポーラトランジスタを同時に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1実施形態における定電流回路の構成を示す回路ブロック図である。
【図2】本発明の第2実施形態における定電流回路の構成を示す回路ブロック図である。
【図3】本発明の第3実施形態における定電流回路の構成を示す回路ブロック図である。
【図4】本発明の第4実施形態における定電流回路の構成を示す回路ブロック図である。
【図5】本発明の第5実施形態における定電流回路の構成を示す回路ブロック図である。
【図6】一般的な基準電圧発生回路の構成の一例を示す回路ブロック図である。
【図7】一般的な電流供給回路の構成の一例を示す回路ブロック図である。
【符号の説明】
【0044】
1a、1b 温度補償回路
Q1、Q2、Q6、Q7 トランジスタ
R1、R2、R3、R4 抵抗
2a、2b、2c、2d、2e 電流供給回路
20a、20b 起動回路
21a、21b 基準電圧発生回路
Q3、Q4、Q5、Q8、Q9、Q10、Q11、Q20 トランジスタ
R5、R6、R7、R8、R9、R20 抵抗
D1 ダイオード
S1 電流源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度補償された第1の電流を出力する温度補償回路と、
前記温度補償回路に第2の電流を供給する電流供給回路と、
を備え、
前記温度補償回路は、
ベース・エミッタ間電圧を所定の比で増倍したベース・コレクタ間電圧を発生する第1のトランジスタを含む電圧増倍回路と、
ベース・エミッタ間電圧が前記第1のトランジスタのベース・エミッタ間電圧と略等しくなる、前記第1のトランジスタと同一導電型の第2のトランジスタと、
一端が前記第1のトランジスタのコレクタと接続され、他端が前記第2のトランジスタのベースに接続される第1の抵抗と、
一端が前記第1のトランジスタのエミッタと接続され、他端が前記第2のトランジスタのエミッタに接続される第2の抵抗と、
を有し、
前記第1の電流は、前記第2のトランジスタのコレクタ電流に応じて出力され、
前記第2の電流は、前記第2のトランジスタのベースと前記第1の抵抗との接続点に供給され、前記第1の抵抗の両端に温度に略比例して変化する電圧を発生させることを特徴とする定電流回路。
【請求項2】
前記電圧増倍回路は、
両端が前記第1のトランジスタのベース・エミッタ間に接続される第3の抵抗と、
前記第3の抵抗と略等しい温度係数を有し、両端が前記第1のトランジスタのベース・コレクタ間に接続される第4の抵抗と、
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の定電流回路。
【請求項3】
前記電流供給回路は、
エミッタ面積が異なる第3および第4のトランジスタと、
前記第1の抵抗と略等しい温度係数を有し、両端に前記第3および第4のトランジスタのベース・エミッタ間電圧の差電圧が印加される第5の抵抗と、
を有し、
前記第2の電流は、前記第5の抵抗に流れる電流に応じて供給されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の定電流回路。
【請求項4】
前記電流供給回路は、
温度補償された所定の基準電圧を発生する基準電圧発生回路と、
ベースに前記基準電圧が印加される第5のトランジスタと、
前記第1の抵抗と略等しい温度係数を有し、前記第5のトランジスタのエミッタ電流が流れる第6の抵抗と、
を有し、
前記第2の電流は、前記第5のトランジスタのコレクタ電流であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の定電流回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−86056(P2010−86056A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251470(P2008−251470)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(506227884)三洋半導体株式会社 (1,155)
【Fターム(参考)】