説明

害虫を防除する方法

【課題】 家畜の糞便または厩肥周辺における害虫を防除する方法を提供すること。
【解決手段】 サイロマジンを経口投与することを含み、前記投与によって、処置される動物の糞便中に殺虫量のサイロマジンが含まれる方法が開示される。本発明はさらに、家畜の糞便または厩肥でのハエの幼虫の成長を阻害する方法を提供する。そのような方法は、サイロマジンを経口投与することを含み、前記投与によって、処置される動物の糞便中に殺虫量のサイロマジンが含まれる方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家畜の糞便または厩肥周辺における害虫を防除する方法に関する。より詳細には、本発明は、家畜の糞便中に殺虫量のサイロマジン(cyromazine)を含ませる、サイロマジンの経口投与に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の記載は、読者が理解し易いようにと提供するものである。提供した情報も引用した文献も本発明に対する従来技術であると認めるものではない。
【0003】
家畜の厩肥及び糞便周辺でよく見られる害虫は、動物自身にとって及びそのような動物の周囲の人々にとって悩ましく、健康を害するものである。特にハエ、厩肥中で繁殖するサシバエ、ノサシバエ、イエバエ、顔バエ(face fly)等は、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの哺乳類及び家禽の一般的な害虫である。
【0004】
そのような害虫の繁殖が放置されると、直ちに沢山増殖し、動物をじっとしていられなくさせ、活動亢進となるまで苛立たせ、苦しめて、一時的に食物の摂取を停止させてしまうことがある。苦しくなった動物は、病気になりがちでもあり、体重が減ることが多い。さらにそのような害虫は、多くの動物及び人の疾病及び/または寄生虫の蔓延における媒介動物でもある。
【0005】
そのため、特に個人の動物またはペット動物(たとえばウマ及びイヌ)に関して、多数の動物をたとえば農場、畜舎、出荷用の囲い場などで預かる場合には、害虫の防除が非常に望まれる。
【0006】
習慣的に、納屋及び他の動物収容施設でハエを抑制するためには、動物自体及び通常それらの環境を、殺虫剤を含む製品で処理している。通常、有効であるものの、特にこれらに繰り返し適用しなければならない場合には、この防除方法は多大な時間を必要とし、費用がかかる。さらに、動物の糞便及び厩肥中でハエが絶対繁殖しないように動物の糞便及び厩肥を殺虫剤で効果的に処理するのは、通常、不可能でないとしても、非常に困難である。
【0007】
種々の害虫成長調節剤が、従来の殺虫剤の代替品として、特に糞で繁殖するハエを防除するために、家畜害虫の防除にうまく利用されてきた。
【0008】
粉末飼料(たとえば、幼若ホルモン類似体、Harrisら、J.Econ.Entomol.66巻:1099−1102頁,1973年)、ミネラルブロック(たとえば、メソプレン、Harrisら、J.Econ.Entomol.67巻:384−386頁,1974年)、及び飲料水(たとえば、メソプレン、Beadlesら、J.Econ.Entomol.68巻:781−785頁,1975年))中の昆虫成長調節剤をウシに投与することによって、厩肥中での成長が完全に阻害される。
【0009】
サイロマジン(2−シクロプロピルアミノ−4,6−ジアミノ−s−トリアジン)は、これが幼虫を死なせたり、サナギを変形させたりすることが知見された後、アジドトリアジン除草剤から誘導された新規種類の昆虫成長調節剤として開発されてきた(たとえば、米国特許第4,225,598号、及びFriedel及びMcDonell、J.Econ.Entomol.78巻:868−873頁,1985年を参照されたい)。
【0010】
米国特許第4,225,598号は、サイロマジンまたはその塩で盛食期および成長期を示す昆虫の幼虫を処理すると、孵化したばかりの幼虫を殺すか、またはサナギから成虫がかえらないようになることを開示する。サイロマジンの作用機序は、従来の殺虫剤、不妊化剤または幼若ホルモン類似体とは異なるようであるが、まだ不確かなままである(たとえば、Belら、Arch.Inc.Biochem.Physiol.45巻:69−78頁,2000年を参照されたい)。
【0011】
本発明以前、当業者にはサイロマジンは主に尿中に排泄されるものと考えられていた。かくして、当業界では、糞便周辺のハエを防除するためには、糞便を尿と混合して殺虫剤の有効性をもたらさなければならないと考えられていた。従って、サイロマジンの使用は今日まで、解剖学的に、生理学的に及び/または住環境によって本質的に尿と糞便とが混ざる場合の動物に限定されていた。
【0012】
サイロマジン(CGA−72662としても公知)は、主に、ニワトリで餌を介して与えられる(feed−through)殺虫剤として及び農作物上への葉面散布剤(foliar spray)として使用される。
【0013】
これは、商標名Larvadex(登録商標)のもと、Novartisにより製造及び配合され、特に家禽用に開発されたものであって、積層されたカゴに入れられたニワトリの厩肥においてハエを防除するために現在上市されている。Larvadex(登録商標)は、飼料中5ppm濃度とするためにニワトリ飼料に添加する1%プレミックスとして提供される。
【0014】
ニワトリの解剖学的、生理学的(全てのニワトリ排泄物は堆積する前に排泄腔で混合される)、及びニワトリが収容される条件により、ニワトリの尿中に排泄されるサイロマジンは糞便及び床敷きと混ざり、それによってその中のハエの成長を阻害する。
【0015】
サイロマジンの使用を他の家畜に拡大する試みがなされてきている。0.1〜1.0mg/体重kgの範囲で毎日、戸外の子牛小屋に工業用サイロマジンを施すための研究が実施されている。0.5〜1.0mg/kgの用量は、麦わら床敷きでのハエの幼若段階の成長を抑制することが知見された。しかしながら、この系でのサイロマジンは子牛の尿に排出されていることが知見されたので、麦わら床敷きに知見されたサイロマジンの殺虫量は、尿で床敷きが飽和したことに起因する(Schmidmannら、J.Econ.Entomol.82巻:1134−1139頁,1989年;およびMillerら、J.Econ.Entomol.89巻:689−698頁,1996年を参照されたい)。
【0016】
もう一つの研究では、ブタ小屋でのイエバエ繁殖を抑制するために、肥育中の食用ブタに餌を介してサイロマジンを投与した。麦わら床敷きを使用する従来の畜舎では、何匹かの成虫ハエが成長したことが知見された。著者は、これは、サイロマジンは主に尿と一緒に排泄されるので、おそらく尿、厩肥及び麦わらとが不均一に混合されたためであると述べている(Skovmand,Intl.Pest Contorl.30巻;10〜13頁、1988年を参照されたい)。かくして、知見された全ての殺虫作用は、厩肥に付着している一方、厩肥敷きわらを通って流出しているサイロマジンに起因していた。
【0017】
もう一つの研究では、ミンク飼料に添加されたサイロマジンは、イエバエの繁殖を抑制するのに効果がなかった(Skovmand及びBrandt,Ann.Rep.Danish Pest Infestation Lab.43−44頁,1981年)。
【0018】
さらに、この著者は、サイロマジンに効果が無かったのは、ミンクの尿が排泄された全サイロマジンの95%を含んでいること、並びにミンクが様々な場所で排尿及び排泄する傾向があるということに起因すると考えている。示唆された解決策は、家畜小屋で糞と尿とを確実に混合して有効性を高めることである。
【0019】
かくして、生理的に尿と糞便とを分け、糞を尿と同じ周辺に集中させず、自由に移動し得る動物を処理することによる害虫の防除に関し、当業界では依然として需要がある。この需要に取り組む種々の試みがなされてきたが、労働集約的で且つ多大な時間のかかる仕事が含まれることが多い。たとえば、糞及び厩肥は、ハエの繁殖を抑制するために頻繁に集められて処理される。もう一つの例として、米国特許第5,707,658号は、ハエを減らすために、一週間に少なくとも1回、重硫酸ナトリウムでウマの厩肥を処理する方法を提供しているが、これも多大な時間のかかる取り組みである。代案として、殺虫剤を使用できるが、多大な時間がかかることに加えて、そのような用途(たとえば、噴霧)は、毒性問題及び環境問題を引き起こす。
【0020】
従って、廃棄物を出す家畜の所有者によって実施すべき余計な時間のかかる仕事に関係しない、低密度の動物小屋及び隔離された糞便の周辺における害虫を簡単に防除する方法に関し、当業界では依然として需要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第4,225,598号
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Friedel及びMcDonell、J.Econ.Entomol.78巻:868−873頁,1985年
【非特許文献1】Belら、Arch.Inc.Biochem.Physiol.45巻:69−78頁,2000年
【非特許文献1】Schmidmannら、J.Econ.Entomol.82巻:1134−1139頁,1989年
【非特許文献1】Millerら、J.Econ.Entomol.89巻:689−698頁,1996年
【非特許文献1】Skovmand,Intl.Pest Contorl.30巻;10〜13頁、1988年
【非特許文献1】Skovmand及びBrandt,Ann.Rep.Danish Pest Infestation Lab.43−44頁,1981年
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の目的は、動物の糞便周辺における害虫を簡単に防除する方法を家畜の所有者に提供するものである。従って、本発明は、動物にサイロマジンを経口投与する方法であって、この投与によって動物の糞便に殺虫量のサイロマジンが含まれる、方法を提供する。好ましい態様では、家畜は哺乳類、たとえばウマである。
【0024】
かくして、本発明は、ハエ、ブヨ及び蚊などの害虫を防除する便利な手段を提供する。サイロマジンは、カプセル、丸薬、錠剤、液体などの組成物及び配合物を使用して、または好ましくは飼料添加剤投与により、容易に経口投与できる。
【0025】
糞便または厩肥に殺虫量のサイロマジンを配合することにより、その上のハエ幼虫の成長を抑制する。かくして、本発明はさらに、家畜の糞便または厩肥上でのハエ幼虫の成育を阻害する方法も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明によれば、家畜の糞便の周辺で害虫を防除する方法が提供される。そのような発明は、この家畜にサイロマジンを経口投与することを含み、この投与によってこの糞便に殺虫量のサイロマジンが含まれる。
【0027】
サイロマジン(2−シクロプロピルアミノ−4,6−ジアミノ−s−トリアジン)及びその塩は、本明細書中、その全体が参照として含まれる米国特許第4,225,598号に開示されており、農業団体には公知の種々の製造業者から商業的に入手可能である。好ましくは、サイロマジンは、>90%、より好ましくは>95%、最も好ましくは>97%の活性成分を含む工業用製品として得られる。本明細書中で使用する「工業用製品:technical product」なる用語は、通常、高純度(95〜98%以上)であるが、少量の必須添加剤も含み得るため、完全に純粋ではなく、殺虫剤が製造され、配合前に取り扱われる通常形態を指す。
【0028】
サイロマジンは、特に、双翅目の衛生害虫(hygiene pest)及び動物の外部寄生虫、たとえばハエ、ブヨ及び蚊を含む種々の害虫の防除に使用し得る。本発明の方法は、以下の科:イエバエ科(たとえばイエバエ、サシバエ、ノサシバエ及び顔バエ)、キノコバエ科(たとえば、キノコブヨ)、キモグリバエ科(たとえば目ブヨ:eye gnat)、蚊科(たとえば蚊)、ブヨ科(たとえば黒バエ)、ガガンボ科(たとえばガガンボ)、クロバエ科(たとえばクロバエ)、ウマバエ科(たとえばウマバエ)、及びアブ科(たとえばアブ及びメクラアブ)の防除に特に有用である。従って、本発明はハエを防除する方法であって、このハエは、サシバエ、ノサシバエ、イエバエ、顔バエ及びこれらの二種以上の組み合わせからなる群から選択される、方法を提供する。
【0029】
これらの害虫のタイプは、全種類の家畜及び、このような動物の周辺に立ち入る人にとって不愉快であり且つ健康的に問題である。本明細書中で使用するように、家畜は、(野生と対照的に)人に慣れた状態で生活し且つ繁殖するために飼い慣らされた任意の種々の動物であってもよい。好ましい態様では、この家畜は哺乳類、最も好ましくはウマである。別の態様では、この哺乳類は、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、フェレット、ミンク、イヌ及びネコからなる群から選択される。ニワトリの尿から糞便は分離できないので、本発明の方法はニワトリでは好ましくない。
【0030】
「糞便:feces」及び「厩肥:manure」なる用語は、互換可能に使用することが多い。しかしながら、殺虫量のサイロマジンが家畜の糞便に含まれていることが本発明の有利な特徴である。本明細書中で使用するように、厩肥とは、家畜糞尿からなる馬屋及び納屋の前庭の廃棄物を指し、これは糞便に加えて尿を含むことがある。
【0031】
今日まで、家畜にサイロマジンを使用すると、サイロマジンが主に尿中に排泄されることが知見されている。かくして、厩肥が殺虫性であることが知見されたとき、これは厩肥の成分として尿が存在することによるものであった。これは、尿が糞便と混じるような、小さな、狭いエリアに収容された動物の場合である。
【0032】
意外にも、本明細書中に開示の本発明の方法は、活性サイロマジンの殺虫量がサイロマジンを受容する動物の糞便に特異的に存在するようにサイロマジンを経口投与することを提供する。かくして、処置動物によって排泄されるが、同じ動物由来の尿とは殆ど接触しない糞便は、孵化した幼虫がハエに成長するのを完全に抑制するのに非常に効果的である(下の実施例2を参照されたい)。
【0033】
全ての従来技術は、尿中にサイロマジンが主に排泄されるという証拠及び所信により、処置動物の糞便中での殺虫量を達成するためにサイロマジンを経口投与することを妨げるよう示唆する傾向にある。かくして、全ての従来技術の範囲内で、当業者は、殺虫量が家畜の糞便に含まれるように、サイロマジンを有効に経口投与しうることには思いもしなかったであろう。
【0034】
本明細書中で使用する「殺虫量:insecticidal amount」なる用語は、殺虫、及び/または昆虫の卵が幼虫に及び/またはサナギへ及び/または幼虫から成虫へ成長することを抑制または阻害し、最終的に処理動物の糞便周辺での全昆虫個体群を抑制するのに有効なサイロマジンの量を指す。殺虫量は、以下に記載の如くバイオアッセイで測定したように幼虫のハエへの成長を抑制または阻害するのが好ましい。
【0035】
糞便または厩肥上で餌をとる害虫に関しては、本発明は、その中またはその上でのハエ幼虫の成長を抑制する殺虫量を糞便中に提供する。好ましくは、殺虫量は、対照の未処理糞便サンプルと比較して少なくとも50%、より好ましくは>75%、最も好ましくは>90%の割合で、殺虫及び/または成長を抑制または阻害するのに有効である。
【0036】
殺虫量が糞便中に存在するかを測定するために、本明細書中、実施例2に記載の如くバイオアッセイを実施することができる。糞便中のサイロマジン濃度が殺虫量未満であると、糞便サンプルは、バイオアッセイにおいてハエの成長の抑制にも阻害にも効果的ではない。その場合には、得られた糞便サンプル(投薬後)がバイオアッセイで有効であるまで、動物への投与量を増やすことによって、糞便中の殺虫量のサイロマジンを得ることができる。
【0037】
「防除する:control」なる用語は、動物の糞便周辺にいる昆虫の数を抑制することを意味する。これは、サイロマジンがある成長段階の害虫と接触して、殺虫、または卵の幼虫へ、幼虫のサナギへ、または幼虫のハエへの成長に影響を与える限り、様々な手段によって達成することができる。通常、厩肥で繁殖する害虫の防除において、害虫は処置動物の糞便または厩肥を餌とするため、糞便中に含まれる殺虫量のサイロマジンと接触することになる。
【0038】
従って、本発明は、家畜の糞便または厩肥上のハエ幼虫の成長を阻害する方法であって、前記方法は前記家畜にサイロマジンを経口投与することを含み、前記投与によって前記糞便中に殺虫量のサイロマジンが含まれる、方法も提供する。
【0039】
本明細書中で使用するように「成長を阻害する」なる用語は、未処理動物由来の糞便または厩肥周辺と比較して、処置動物由来の糞便または厩肥周辺の幼虫から羽化するハエの最終的な数の減少を意味する。好ましくは、阻害により、(未処理と比較して処理された)幼虫から羽化するハエが少なくとも50%、より好ましくは>75%、最も好ましくは>90%の割合で減少する。
【0040】
本明細書中で使用する「周辺:vicinity」なる用語は、囲まれた居住施設に堆積されたか、または開放耕地に露出した糞として、糞便を取り囲む物理的環境を指す。害虫は、通常100平方フィート未満の面積の、たとえば納屋または馬屋の区画などの、サイロマジンで処置されたそれぞれ個々に収容された動物の居住区内で防除するのが好ましい。あるいは、開放耕地で、害虫は、似たような領域、好ましくは糞便の周囲半径10〜20フィート内であるが、物理的囲いはない領域で防除するのが好ましい。
【0041】
本発明の方法は、家畜にサイロマジンを経口投与することを含む。サイロマジンは、処置される家畜の特定のタイプに及び予定した特定の用途に適した配合でまたは単独で投与することができる。カプセル、丸薬、錠剤、液体または飼料添加剤配合物を含む、種々の方法を経口投与に関して使用することができる。
【0042】
標準的な獣医学的措置に従った慣用法にて、そのような製剤を製造する。かくして、スターチ、ラクトース、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ゼラチンなどの崩壊剤及び/またはバインダーをさらに含有する適切に微粉砕した希釈剤またはキャリヤと活性物質とを混合することにより、カプセル、丸薬または錠剤を製造または配合することができる。適切な媒体に活性成分のサイロマジンを溶解または懸濁させることにより、経口水薬(drench)を製造する。
【0043】
「配合した」なる用語は、たとえば、粉末、錠剤、顆粒、カプセル、エマルション、フォーム及び当業界で公知の他の手段の形態にサイロマジンを調製することを意味する。液体製剤は、飲料水を補足するため、または糞便上に散布若しくは拡散するためにも使用することができる。
【0044】
これらの製剤は、動物の体重などの処置すべき家畜の種類及び因子に依存して、その中に含まれる活性物質の組成物及び濃度に関して変動する。本発明の方法に従った活性成分サイロマジンの典型的な投与範囲は、1日当たり0.1〜5.0mg/動物体重kgである。好ましくは、経口投与は、約0.5mg/kg以上であり、より好ましくは約0.75mg/kg以上であり、さらに好ましくは約1.0mg/kg以上であり、約1.1mg/kg以上であり、約1.2mg/kg以上であり、最も好ましくは約1.25mg/kg以上の一日当たりの投与量を含む。
【0045】
現在好ましい態様では、経口投与は、処置される家畜の地理的及び環境的位置によって決定され、ハエの季節の間に毎日サイロマジンを投与することを含む。別の態様として、サイロマジンは、害虫を防除するために所望の期間、一日おき、または3、4、5、6若しくは7日間隔で投与することができる。
【0046】
サイロマジンは、動物がその飼料と一緒にサイロマジン用量を摂取するように、好都合には飼料添加剤として経口投与することができる。活性成分サイロマジンは、処置される動物によって消費されるべき飼料に工業用製品を単にふりかけまたは散布することによって、飼料の表層(top−dressing)として使用することができる。あるいは、サイロマジンを動物飼料、たとえば濃縮飼料添加剤と混合してもよく、プレミックスを通常の動物飼料と一緒に混合するために製造してもよい。
【0047】
動物飼料に家畜用添加剤を配合することは、当業界で周知のことである。活性成分が液体または顆粒固体キャリヤ中に分散されるプレミックスとして、最初に化合物を配合することは通例である。このプレミックスは、好ましくは、濃縮量のサイロマジンを含み、飼料で、所望の濃度に「希釈」される。
【0048】
当業界で公知の如く、多くの活性成分が動物飼料の成分によって加水分解または劣化することがある。選択したミックス中のサイロマジンが同様に劣化を受け易い場合、プレミックスに添加する前に、ゼラチンなどの保護マトリックス中に配合することができる。
【0049】
あるいは、飼料はサイロマジンを含むように特別に配合することができる。飼料添加剤のもう一つの変形例は、サイロマジンの固体または液体形により、サイロマジンを家畜の飲料水に補充することを含む。さらに、家畜は、サイロマジンと混合し得るサプリメント飼料を頻繁に摂取する。
【0050】
本明細書中で使用する「サプリメント飼料」なる用語は、その通常の飼料に加えて動物により消費される任意の食品またはサプリメントを指す。一例として、角砂糖またはビスケットなどのおやつをサイロマジンで処理するか、またはサイロマジンを含むように配合することができ、次いで動物に飼料を与えて経口投与を実施することができる。
【0051】
従って、当業界で公知の多くの方法は、配合されたまたは純粋な活性成分を経口投与するのに使用することができる。製剤は必ずしも動物に直接投与しなければならないとは限らない;上記の如く動物飼料と製剤とを混合するのが最も好都合である。製剤業界で一般に使用されるアジュバントを含ませることに加えて、経口投与すべき組成物は勿論、さらに適切な芳香またはフレーバー剤などの動物による自由摂取を刺激する添加剤を含むことができる。その単純性により、経口投与は本発明の好ましい目的の一つである。
【0052】
経口投与のさらなる例として、当業者は、チュアブル錠、水溶性カプセルまたは錠剤、水の中にスポイトで適用する水溶性化合物または飼料上に任意の形状で適用される物質中にサイロマジンを提供することができる。このサイロマジン組成物または製剤は、安定剤、消泡剤、粘度調節剤、バインダー、増粘剤並びに特別な効果を得るための他の活性成分などのさらなる成分も含むことができる。経口投与用に適しているものとして獣医学的措置により公知の物質は、配合助剤(formulation assistance)として使用することができる。
【0053】
適切なキャリヤとしては、特別な充填剤、たとえば糖類(たとえばラクトース、サッカロース、マンニトールまたはソルビトール)、セルロース製剤及び/またはリン酸カルシウム(たとえばリン酸三カルシウムまたはリン酸水素カルシウム)、またはたとえばトウモロコシ、小麦、米を使用するスターチペーストなどのバインダー、またはポテトスターチ、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、及び/または所望によりたとえば上記のごときスターチ類、カルボキシメチルスターチ、架橋ポリビニルピロリドン、寒天などの崩壊剤、たとえばアルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸またはその塩がある。
【0054】
添加剤としては、特に、たとえばシリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム若しくはステアリン酸カルシウムなどのステアリン酸またはその塩、及び/またはポリエチレングリコールなどの流動性調節剤(flow−regulating agent)及び潤滑剤がある。
【0055】
ドラジェ・コア(dragee core)(糖衣剤コア)には、胃液に対して耐性の適切なコーティング、たとえばアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール及び/または二酸化チタンを含み得る濃縮糖溶液、または適切な有機溶媒若しくは溶媒混合物中のラッカーまたは、胃液に耐性のコーティング製造に関しては、アセチルセルロースフタレート若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどの適切なセルロース製剤の溶液を提供することができる。
【0056】
活性成分の種々の用量を表示するためまたは識別目的のためなどに、着色剤、フレーバー剤または顔料を錠剤またはドラジェ・コーティング(dragee coating)(糖衣剤コーティング)に添加することができる。
【0057】
さらなる経口投与可能な製剤としては、さらに、ゼラチンと、ゼラチン及びグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤からなる柔らかい密閉カプセルからなる乾燥充填(dry−filled)カプセルがある。この乾燥充填カプセルは、たとえばラクトースなどの充填剤、たとえばスターチなどのバインダー、及び/または、たとえばタルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの流動促進剤(glidant)、及び場合により安定剤と混合した、顆粒状の活性成分を含むことができる。
【0058】
ソフトカプセルでは、活性成分は、脂肪油、パラフィン油または液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に好ましくは溶解または懸濁されており、安定剤を添加することも可能である。中でも、容易に咬み切れたりまたは咬まずに飲み込めたりするカプセルが好ましい。
【0059】
本発明の製剤は、たとえば慣用の混合、造粒、調合(confectioning)、溶解または凍結乾燥プロセスによって、当業者に公知の任意の方法で製造することができる。たとえば経口投与用の医薬製剤は、活性成分と固体キャリヤとを混合し、場合により得られた混合物を造粒し、次いで適切な添加剤を添加した後、所望によりまたは必要により、前記混合物または顆粒を加工して、錠剤またはドラジェ・コアを製造することによって得ることができる。
【実施例】
【0060】
本発明を以下の非限定的実施例を参照して詳細に説明する。
実施例1
サイロマジン投与及び厩肥集め
サイロマジン(2−シクロプロピルアミノ−4,6−ジアミノ−s−トリアジン)は、98%以上のサイロマジン(工業用サイロマジン)の精製化学組成物として得られた。ハエの季節の間、毎日連続投与するために、ウマ用飼料の表面に添加することによってそれぞれのウマに毎日サイロマジン600mgを経口投与した。この実施例では、アメリカ合衆国ノースカロライナ州に住んでいるウマを、暦年のおおよそ3月〜10月まで続くその土地のハエの季節の間、処理した。
【0061】
一つの研究では、サイロマジン投与を停止し、投与後24、48、72、96及び120時間で同じウマから5つのサンプルを得、サイロマジンの糞便中の殺虫剤量での持続時間をモニターした。もう一つの研究では、サイロマジン投与後<24時間で、すなわちもう一回の日用量を与える前に、それぞれのウマ(n=4)から一つの糞便サンプルを集めた。未処理対照ウマの厩肥を直ぐ近くのウマの放牧場から集めた。サンプルを輸送し、ウマのハエ・バイオアッセイが調整されるまで、冷蔵庫で保存した。この用量でサイロマジンはよく許容され、副作用は知見されなかった。
【0062】
実施例2
イエバエ・バイオアッセイ
卵/幼虫孵化の調製
約五十(50)匹の<24時間齢のムコサ・ドメスティカ(Mucosa domestica:イエバエ)(Hilmer Strain)を数え、サイロマジン処理群または対照毎に4サンプル(rep)の各サンプルを濾紙ディスク上においた。各サンプルでペーパータオルをかぶせ、80゜F(27℃)、80%相対湿度及び14:10(明:暗)の光周期の環境室においた。2日後、幼虫孵化に関して卵を記録し、湿度バリヤ及び蛹態期の乾燥支持体として経木を1枚加えた。
【0063】
糞便中のサイロマジンに暴露した幼虫からの成虫ハエ羽化
孵化した幼虫を含むサンプルの実験物を試験糞便サンプルの存在下で環境チャンバに戻して、糞便中のサイロマジンの殺虫作用を測定した。幼虫からの成虫ハエ羽化率を3週間後に測定した。
【0064】
計算
幼虫孵化率、成虫ハエ羽化率及び修正パーセント効果(corrected percent effect)を計算し、記録した。卵孵化率は、50(全体の卵投入量)で割り、100倍した、試験当たりの2日後に孵化した卵の平均数として計算する。孵化した幼虫からの成虫ハエ羽化率(ハエとして羽化する%幼虫)は、試験2日目に孵化している幼虫の平均数で割り、100倍した、試験毎の3週間後に羽化する成虫ハエの平均数として計算する。成長していない幼虫の割合は、試験2日目に孵化している幼虫の平均数で割り、100倍した、試験当たりの成長していない幼虫の平均数として計算する。かくして、表2のデータは、表1のデータを参照し、表4のデータは表3のデータを参照する。
【0065】
サイロマジン処理したウマからの糞便の殺虫剤活性
第一の研究では、同じウマを異なる5つの時間点でサンプリングした場合、サイロマジン処理は、試験の第一の部分で孵化した幼虫からの成虫ハエの羽化を完全に阻害した(表2を参照されたい)。殺虫量のサイロマジンは、投薬処置後24、48、72、96及び120時間で得られた糞便に含まれていた。たった一匹のハエ(0.2%)が120時間サンプル(4サンプル)から羽化した。未処理対照サンプル(n=4)に関する対照の羽化率は、75.2%であった。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
第二の研究では、投薬処置後<24時間で、種々のウマ(n=4)全てについてサンプリングし、サイロマジン処置は、試験の第一の部分で孵化した幼虫からの成虫ハエ羽化を完全に阻害し得た(表4を参照されたい)。全部で4つの処置群(ウマ)はこのバイオアッセイ系でアブの成長を100%阻害することを示した。未処置対照サンプル(n=4)に関する対照の羽化率は66.3%であり、これは予想より低かった。(これらは野原で集めたサンプルであるので、病原体または寄生虫が幾らかサンプル中にあったのかもしれない)。
【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
この結果は、サイロマジンを経口投与されたウマから得られた厩肥サンプル中に含まれるサイロマジンに起因し得る高度な殺虫活性をはっきりと示している。全てのサンプルは迅速に集め、処置したウマからの糞便と尿とが混ざらないようにした。従って、このバイオアッセイで検出された殺虫活性は、処置したウマの糞便中のサイロマジンに直接起因する。
【0072】
本発明を実施し且つ使用するために当業者に対して本発明を記載し、十分に詳細を例示してきたが、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく種々の代替案、変形及び改善が可能であることは明らかである。本発明は、目的を達成し、目的物及び記載の有利な点、並びにその中の特有なものを得るために十分に適合される。
【0073】
本明細書で提供された実施例は、好ましい態様の代表例であり、例示的なものであって、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書における変形及び他の利用は、当業者には思いつくだろう。これらの変形は、本発明の趣旨の中に含まれ、且つ特許請求項の範囲によって限定される。
【0074】
上記に引用した全ての刊行物の開示は本明細書中、それぞれが参照によって含まれるのと同一程度に、その全体が参照として含まれる。
【0075】
本明細書中で例示的に記載した本発明は、本明細書中に具体的に開示されていない、任意の単数若しくは複数の成分、単数若しくは複数の限定がない場合に適切に実施することができる。かくして、たとえば「含む」、「本質的に〜からなる」及び「からなる」なる用語のいずれも、他の二つの用語のいずれかで置き換えることができる。
【0076】
使用された用語及び表現は、記載の用語として使用され、限定するものではなく、示され及び記載された特徴の全ての等価物またはその部分を除外するそのような用語及び表現の使用において、請求された本発明の範囲内で種々の変形が可能であることが理解されよう。かくして、本発明を好ましい態様及び任意選択の特徴によって具体的に開示してきたが、本明細書に開示の概念の修正及び変形は、当業者によって用いられること並びに、そのような修正及び変形は、付記される特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内であるとみなされることを理解すべきである。
【0077】
他の態様は、付記される特許請求の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜の糞便周辺における害虫を防除する方法であって、
前記方法は、前記家畜にサイロマジンを経口投与することを含み、
前記投与によって前記糞便中に殺虫量のサイロマジンを含ませる、方法。
【請求項2】
前記家畜が哺乳類である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記家畜がウマである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記家畜が、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、フェレット、ミンク、イヌ及びネコからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記害虫がハエである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ハエが、サシバエ、ノサシバエ、イエバエ、顔バエ及びこれらの二種以上の組み合わせからなる群から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記殺虫量のサイロマジンが、前記糞便または厩肥におけるハエの幼虫の成長を抑制する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記害虫がブヨである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記経口投与は、カプセル、丸薬、錠剤、液体または飼料添加剤の投与によって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記飼料添加剤は、サイロマジンを飼料表層に添加することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記飼料添加剤は、サイロマジンと飼料とを混合することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記飼料添加剤は、サイロマジンを含有する飼料を配合することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記飼料添加剤は、サイロマジンを前記家畜動物の給水に補充することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記飼料添加剤は、前記家畜動物のサプリメント飼料とサイロマジンとを混合することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記経口投与は、ハエの季節の間にサイロマジンを毎日投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記経口投与は、ハエの季節の間にサイロマジンを一日おきに投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記経口投与は、約0.5mg/体重kg以上のサイロマジンを毎日投与することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記経口投与は、約0.75mg/体重kg以上のサイロマジンを毎日投与することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記経口投与は、約1.0mg/体重kg以上のサイロマジンを毎日投与することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記経口投与は、約1.25mg/体重kg以上のサイロマジンを毎日投与することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
家畜の糞便または厩肥上のハエの幼虫の成長を阻害する方法であって、
前記方法は、サイロマジンを前記家畜動物に経口投与することを含み、
前記投与によって前記糞便中に殺虫量のサイロマジンを含ませる、方法。

【公開番号】特開2012−31171(P2012−31171A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167260(P2011−167260)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【分割の表示】特願2004−531650(P2004−531650)の分割
【原出願日】平成15年8月27日(2003.8.27)
【出願人】(507154228)トライアド スペシャルティ プロダクツ,エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】