説明

家屋異動判読支援装置、家屋異動判読支援方法及び家屋異動判読支援プログラム

【課題】DSMデータ及び航空写真に基づく家屋の異動を目視判読する際の作業効率の向上を図る。
【解決手段】異動候補検出部24は、新/旧の2時期におけるDSMデータ及び空中撮影画像からなる空間情報計測データに基づいて両時期間での家屋異動を検出し当該異動が検出された場所を候補領域として抽出する。実体視画像生成部22は、空間情報計測データに基づいて対象領域の実体視画像を生成する。表示画面生成部26は、平面視画像取得部20による平面視画像上に異動候補検出部24による検出結果を示した画像と実体視画像生成部22による実体視画像とを表示部14の画面に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋異動判読支援装置、家屋異動判読支援方法及び家屋異動判読支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
固定資産の異動の判定等を空中写真測量技術を利用して行うことが下記特許文献に提案されている。従来は、航空機等から高分解能の画像やDSM(Digital Surface Model:数値表層モデル)データを異なる2時期について取得し、それら2時期の画像やデータを比較して、当該2時期間での家屋の異動を判定している。この判定処理の一つの方法として2時期のデータをピクセル毎に比較する方法がある。他の方法として、DSMに現れる起伏に基づいて個々の家屋に対応する家屋オブジェクトを抽出し、家屋オブジェクト単位で2時期相互の対比を行う方法がある。従来、これらの方法で家屋異動判読の自動化を図る装置が提案されているが、現状では精度の向上が課題となっている。そのため、固定資産の把握のように精度が必要とされる場合には、それら装置による異動個所の検出結果を目視判読により確認する作業が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−117245号公報
【特許文献2】特開2007−3244号公報
【特許文献3】国際公開第2009/051258号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2009/057619号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人による目視判読においては作業の効率化が課題となる。この点、異なる時期に撮影された空中写真は基本的に撮影条件が相違し、これに起因して画像の色合い、コントラスト、影の位置・大きさ、及び季節に応じた植生等に相違が生じる。判読作業では2時期間でのこれらの要因による画像の変化の中から、家屋異動による画像の変化を弁別する必要があり、そのため判読が容易でない場合も生じ得る。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、判読作業の効率向上が図られる家屋異動判読支援装置、家屋異動判読支援方法及び家屋異動判読支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る家屋異動判読支援装置は、第1及び第2時期における対象領域内の家屋の形状が示された判定対象データに基づいて作業者が前記両時期間での家屋異動を判読する作業を支援し、前記両時期のうち少なくとも一方の前記判定対象データとして、数値表層モデルデータ及び空中撮影画像からなる空間情報計測データを用いる装置であって、前記空間情報計測データに基づいて前記対象領域の実体視画像を生成する実体視画像生成手段と、表示装置に表示させる表示画面として、前記実体視画像を含む第1表示画面を生成する画面表示手段と、を有する。
【0007】
他の本発明に係る家屋異動判読支援装置は、前記判定対象データに基づいて前記対象領域の平面視画像を取得する平面視画像取得手段を有し、前記画面表示手段が、前記第1表示画面にて前記実体視画像に並べて前記平面視画像を表示する。
【0008】
さらに他の本発明に係る家屋異動判読支援装置は、前記判定対象データに基づいて前記対象領域の平面視画像を取得する平面視画像取得手段を有し、前記画面表示手段が、前記表示画面として前記第1表示画面と、前記平面視画像を含む第2表示画面とを生成し、前記第1表示画面及び第2表示画面を前記作業者の指示に応じて選択的に前記表示装置に表示させる。
【0009】
別の本発明に係る家屋異動判読支援装置は、前記両時期における前記判定対象データに基づいて当該両時期間での家屋異動を検出し当該異動が検出された場所を候補領域として抽出する異動候補検出手段を有し、前記画面表示手段が、前記表示画面上の前記平面視画像にて前記候補領域に対応する位置を前記作業者に識別可能に表示する。
【0010】
本発明において、前記画面表示手段は、前記第2表示画面にて前記平面視画像に並べて前記実体視画像を表示するものであってもよい。また、本発明において、前記画面表示手段は、前記平面視画像を表示する前記表示画面に前記両時期の前記平面視画像を並べて表示するものであってもよい。
【0011】
本発明の好適な態様は、前記平面視画像が、前記空間情報計測データから生成されたトゥルーオルソ画像、又は前記判定対象データとして与えられた家屋ポリゴンデータに基づく画像である家屋異動判読支援装置である。
【0012】
また、本発明において、前記画面表示手段は、前記実体視画像を表示する前記表示画面に前記両時期の前記実体視画像を並べて表示するものであってもよい。
【0013】
別の本発明に係る家屋異動判読支援装置においては、前記画面表示手段は、前記作業者のマウス操作により状態を切り替えられ前記第1及び第2時期のいずれの前記実体視画像を前記表示画面に表示するかを選択するスイッチを前記実体視画像の表示領域に隣接して当該表示画面上に表示させる。
【0014】
本発明に係る家屋異動判読支援方法は、第1及び第2時期における対象領域内の家屋の形状が示された判定対象データとして、少なくとも一方時期について数値表層モデルデータ及び空中撮影画像からなる空間情報計測データを入力される装置によって行われ、前記判定対象データに基づいて作業者が前記両時期間での家屋異動を判読する作業を支援する方法であって、前記空間情報計測データに基づいて前記対象領域の実体視画像を生成する実体視画像生成ステップと、表示装置に表示させる表示画面として、前記実体視画像を含む第1表示画面を生成する画面表示ステップと、を有する。
【0015】
本発明に係る家屋異動判読支援プログラムは、コンピュータを、第1及び第2時期における対象領域内の家屋の形状が示された判定対象データに基づいて作業者が前記両時期間での家屋異動を判読する作業を支援する家屋異動判読支援装置として機能させるためのプログラムであって、前記両時期のうち少なくとも一方の前記判定対象データとして、数値表層モデルデータ及び空中撮影画像からなる空間情報計測データを用い、当該コンピュータを、前記空間情報計測データに基づいて前記対象領域の実体視画像を生成する実体視画像生成手段、及び、表示装置に表示させる表示画面として、前記実体視画像を含む第1表示画面を生成する画面表示手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、判読作業者は画面に表示された実体視画像を観察することで、判定対象領域における高さの情報を立体画像から容易に把握することができ、新築や滅失等の高さ変化を伴う家屋の異動を効率的に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る家屋異動判読支援装置の概略のブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る家屋異動判読支援装置の表示部における、判定対象領域の2ビューの画像を含む画面の例を示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係る家屋異動判読支援装置の表示部における、アナグリフ画像の表示領域を有する3ビューの画面の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)について、図面に基づいて説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
図1は、実施形態に係る家屋異動判読支援装置10の概略のブロック図である。家屋異動判読支援装置10は、処理部12、表示部14、記憶部16及び操作部18を含んで構成される。
【0020】
処理部12は、平面視画像取得部20、実体視画像生成部22、異動候補検出部24及び表示画面生成部26を含んで構成される。例えば、家屋異動判読支援装置10は、コンピュータを用いて構成することができ、そのCPUが処理部12を構成し、平面視画像取得部20、実体視画像生成部22、異動候補検出部24及び表示画面生成部26は当該CPUにより実行されるプログラムによって実現できる。
【0021】
記憶部16は、コンピュータに内蔵されるROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクなどの記憶装置である。記憶部16は、平面視画像取得部20、実体視画像生成部22、異動候補検出部24及び表示画面生成部26の処理プログラムを含む各種プログラムや各種データを記憶し、処理部12との間でこれらの情報を入出力する。
【0022】
表示部14は液晶モニタ等の画像表示装置であり、操作部18はキーボードやマウスなどで構成される。
【0023】
家屋異動判読支援装置10は、2つの時期に航空機や人工衛星等から撮影された地上の画像、及びこれら画像あるいは航空レーザ計測により取得されたDSMデータからなる空間情報計測データに基づいて、当該2時期の間での家屋異動を検出する。ここでは、2時期のうち先の時期であることを「旧」、後の時期であることを「新」と表す。異動検出に用いる地上の画像として、地形に起因して元の航空写真や衛星画像に生じる歪みを補正(オルソ補正)したオルソ画像が用いられる。オルソ補正には地形データが必要となる。ここで、DSMデータが得られている場合には、これを用いてオルソ補正を行うことでトゥルーオルソ画像が得られる。トゥルーオルソ画像は家屋の高さに伴う歪みも除去されるので、一般的なオルソ画像より家屋異動判定の精度向上が図られる。そこで以下の説明ではトゥルーオルソ画像を用いる構成を述べるが、家屋の高さに伴う歪みを無視し得る場合などには、本実施形態を一般的なオルソ画像を用いた構成とすることもできる。
【0024】
また、航空計測に基づく地上の画像及びDSMデータが新旧の一方時期(一般には新時期)についてしか得られない場合であっても、他方時期について判定対象領域における家屋形状データが存在すれば、家屋異動判読支援装置10はそれら新旧の2時期のデータの対比により家屋異動を検出することができる。これにより、例えば、航空計測実施の初年度に当たる対象領域についても、旧年度の家屋ポリゴンデータを用いて家屋異動の判定が可能となる。
【0025】
平面視画像取得部20は、対象領域を平面視した画像(平面視画像)を家屋異動判読支援装置10に入力される判定対象データに基づいて取得する。平面視画像取得部20は、判定対象データから平面視画像データを生成する。具体的には、対象領域の航空写真等の画像、その撮影位置・方向等の標定要素、及びDSMデータから平面視画像としてトゥルーオルソ画像を生成する。また、平面視画像取得部20は、DSMデータの値を画素値とした画像(DSM画像)も平面視画像として生成することができる。一方、判定対象データが平面視画像を表すものである場合には、平面視画像取得部20は当該判定対象データから当該平面視画像のデータを得る。例えば、判定対象データが家屋ポリゴンデータである場合がこの場合に当たる。
【0026】
実体視画像生成部22は、空間情報計測データとして得られる航空写真等に基づいて対象領域の実体視画像のデータを生成する。本実施形態では実体視画像としてアナグリフを生成する。観察者は左右に赤と青のカラーフィルタの付いた眼鏡を用いてアナグリフを観察することで実体視を得ることができる。例えば、DSMが表す三次元形状上に航空写真の画素値を対応付けた三次元モデルからステレオペア画像を求め、アナグリフを生成することができる。また、対象領域を2方向から撮影した航空写真をステレオペア画像としてアナグリフを生成することもできる。また、本実施形態ではアナグリフを例に説明するが、実体視画像はこれに限られるものではない。例えば、眼鏡方式であれば、左右異なる角度から撮影した映像をそれぞれ赤と青の光で重ねて表示し、これを左右に赤と青のカラーフィルタの付いた眼鏡で見る方式(上述したアナグリフ方式)の他に、左右の映像に直交する直線をかけて重ねて表示し、これを偏光フィルタの付いた眼鏡により分離する方式(偏光眼鏡方式)、左右異なる角度から撮影した映像を交互に表示し、左右の視界が交互に遮蔽されるシャッターを備えた眼鏡で見る方式(液晶シャッター眼鏡方式)などを用いることができる。また裸眼方式であれば、遮蔽板やレンチキュラーレンズ等により左右眼に別々の光線を入射させる方式(視差障壁方式)や、ホログラフィック・ディスプレイやインテグラル・フォトグラフィを用いたディスプレイのように光線の波面を再生することにより観察者に視差画像を提示する方式(光線再生方式)などを用いることができる。
【0027】
異動候補検出部24は、新旧の2時期における判定対象データに基づいて当該両時期間での家屋異動を検出し当該異動が検出された場所を候補領域として抽出する。旧時期T1及び新時期T2のトゥルーオルソ画像及びDSMデータが得られる場合、候補領域の抽出は、画素単位又は家屋オブジェクト単位での比較に基づいて行うことができる。ここでは画素単位での比較を差分検出モード、また、家屋オブジェクト単位での比較をオブジェクト検出モードと称する。例えば、オブジェクト検出モードでは、異動候補検出部24は時期T1,T2それぞれにおける家屋オブジェクトを抽出する。そして、時期T1の家屋オブジェクトと時期T2の家屋オブジェクトとを照合、対比し、2時期間にて家屋オブジェクトに変化があった個所を異動が生じた候補領域として抽出する。抽出された候補領域は異動候補ファイルとして記憶部16に記憶される。
【0028】
家屋オブジェクトの抽出は例えば、DSMが表す地上表層面の起伏に基づいて、家屋に対応した凸部を内包する凸部領域を定め、各凸部領域から家屋の輪郭を抽出することにより行うことができる。DSMが表す高さは地表面の標高とその上の地物(家屋)の高さとの合計となるので、家屋抽出に際しては、DSMに含まれるDTM(Digital Terrain Model:数値地形モデル)の影響を除去する正規化処理を行うことが好適である。また、家屋輪郭の決定に際しては、トゥルーオルソ画像から得られる色、エッジなどの情報を考慮することができる。家屋オブジェクトは、当該輪郭と当該輪郭内の各点での高さとの情報を含むデータで定義される。家屋オブジェクトの抽出結果は記憶部16に家屋オブジェクトファイルとして記憶される。
【0029】
家屋オブジェクトの2時期間での照合・対比においては、一方時期のオブジェクトと同じ位置に他方時期のオブジェクトが存在するか否かが調べられる。具体的には旧時期T1のオブジェクトと同じ位置に新時期T2のオブジェクトが存在しない場合は、家屋の滅失として検出し、逆に新時期T2のオブジェクトと同じ位置に旧時期T1のオブジェクトが存在しない場合は、家屋の新築として検出される。また、時期T1,T2の同じ位置にオブジェクトが存在する場合は、家屋異動なしとすることができる。なお、この場合に、さらにオブジェクトの面積、高さ、色などの属性を比較して、家屋の増築、改築を検出するように構成することも可能である。
【0030】
新時期においてのみ判定対象データとして地上の画像及びDSMデータが得られている場合には、旧時期の判定対象データとして家屋ポリゴンデータを用いて候補領域を抽出することができる。この場合、例えば、一方時期について家屋ポリゴンデータから得られる家屋領域と、他方時期についてDSMデータを閾値判定して得た家屋領域とを照合して異動候補領域が抽出される。
【0031】
表示画面生成部26は、平面視画像取得部20にて得られる平面視画像、実体視画像生成部22にて生成される実体視画像を含む表示画面のデータを生成して表示部14へ出力し、表示部14に当該画面を表示させる画面表示手段である。図2、図3は表示画面生成部26により表示部14に表示された画面の例を示す模式図である。
【0032】
図2に示す画面30は、そのほぼ上半分に横並びに同じ形状・大きさの2つの画像表示領域32,34を有する2ビューの画面例である。ここでは左側の画像表示領域32は新年度画像の表示領域に設定され、右側の画像表示領域34は旧年度画像の表示領域に設定されている。これら画像表示領域32,34には対象領域に対応したトゥルーオルソ画像、又はDSMデータを画素値とした画像を表示することができる。
【0033】
図3に示す画面40は、そのほぼ上半分に横並びに同じ形状・大きさの3つの画像表示領域42,44,46を有する3ビューの画面例である。ここでは左側の2つの画像表示領域42,44はそれぞれ図2の画像表示領域32,34と同じくトゥルーオルソ画像又はDSM画像の表示領域であり、左側の領域42が新年度画像、右側の領域44が旧年度画像の表示領域である。図3にはこれら領域42,44と並んで右側にもう一つの画像表示領域46が設けられる。この画像表示領域46は判読結果画像の表示領域であり、背景画像として新年度画像、旧年度画像、新年度アナグリフ画像、旧年度アナグリフ画像のいずれかを表示することができる。この結果、同一の画像表示領域46において新年度画像と新年度アナグリフ画像、あるいは旧年度画像と旧年度アナグリフ画像を切り替えながら家屋異動箇所を判定することができる。
【0034】
図2に示す2ビューの画面と図3に示す3ビューの画面とは、画面右上のボタン48を押すことで相互に切り替えられる。
【0035】
表示画面生成部26は、図3に示す画面40のほぼ下半分のうち、画像表示領域46に隣接する位置に、操作者のマウス操作により状態を切り替えられ、画像表示領域46に新年度のアナグリフ画像、旧年度のアナグリフ画像、新年度画像、及び旧年度画像のいずれを表示するかを選択するラジオボタン50〜53を表示させる。画像表示領域46に表示する画像の「新」、「旧」を切り替えるスイッチとなるラジオボタンを当該領域に隣接配置していることで、操作者は画像表示領域46を視野に捉えたまま、又は視線を大きく動かすことなく当該ラジオボタンを操作できる。これにより、画像表示領域46の表示内容の切り替え操作を容易・迅速に行える。また、切り替え操作時の視線の動きが小さいので、操作者は画像表示領域46における「新」、「旧」での表示内容の変化を認識し易く、家屋異動個所の判定が容易となる。
【0036】
本実施形態では3ビューの画面40における上記ラジオボタン50〜53以外は、画面30,40の下半分の表示構成を基本的に互いに同じにしている。
【0037】
家屋異動判読支援装置10にて操作者は処理対象とする図郭を指定する。当該図郭を縦横にマトリクス状に分割して複数の「タイル」が定義され、当該各タイルを判定対象領域として設定することができる。図郭の縦方向及び横方向の分割数は操作者が指定することができる。
【0038】
画面30,40に設定されるタイル表示領域54は、図郭を構成する複数のタイル55の配列を表示する。操作者はこのタイル表示領域54にて判定対象領域とするタイル55を指定する。タイルの指定はタイル表示領域54にて目的とするタイル55をマウス操作でクリックすることで行われる。またタイル表示領域54の脇に設けたボタン56(「次のタイル」)を押す毎に、所定の順序で選択タイルを移動させることができる。例えば、所定の順序はタイルのマトリクス配列にて左から右への走査を上から下へ順次行うように設定される。選択されたタイル55Aは色を変えるなどして他のタイルとは区別して表示される。また、選択しているタイル55Aの判読作業が終了した場合には、操作者はボタン57(「終了チェック」)を押して、タイル表示領域54での当該タイルを「チェック済み」であることが分かる表示に変更する。
【0039】
チェックボックス60,61は画像表示領域32,34,42,44に、判定対象領域のトゥルーオルソ画像とDSM画像とのいずれを表示するかを設定する。
【0040】
画像表示領域32,34,42,44には、上述した異動候補検出部24のオブジェクト検出モードでの異動候補の抽出結果を重畳表示することができる。当該表示のオン/オフはチェックボックス62により設定される。表示を設定した場合、画像表示領域32,34,42,44に表示されたトゥルーオルソ画像等にて異動候補の家屋オブジェクトに対応する位置に例えば、“□”印が表示される。
【0041】
チェックボックス63は、新年度の航空計測結果に基づく家屋オブジェクトの抽出結果を新年度に関する画像表示領域32,42に重畳表示するか否かを設定する。同様に、チェックボックス64は、旧年度の航空計測結果に基づく家屋オブジェクトの抽出結果を旧年度に関する画像表示領域34,44に重畳表示するか否かを設定する。上述したように、当該家屋オブジェクトは異動候補検出部24により抽出され、記憶部16の家屋オブジェクトファイルに記憶されている。表示画面生成部26は、各画像表示領域に表示されたトゥルーオルソ画像又はDSM画像において当該家屋オブジェクトファイルに示される位置に例えば、“□”印を表示する。
【0042】
チェックボックス65は、画像表示領域32,34,42,44の画像に、旧年度の家屋ポリゴンデータを利用した場合の家屋領域の抽出結果を重畳表示するか否かを設定する。また、チェックボックス66は、画像表示領域32,34,42,44の画像に、差分検出モードでの判読による自動抽出結果を重畳表示するか否かを設定する。
【0043】
全体リスト表示欄70には図郭全体での異動候補のリストが表示される。未確定リスト表示欄71には表示中のタイルにて検出されている異動候補のうち、操作者による判読結果が確定していないもののリストが表示される。一方、確定リスト表示欄72には判読結果が確定したもののリストが表示される。
【0044】
家屋異動判読支援装置10は、異動候補検出部24により候補領域を抽出し、操作者による家屋異動判読を支援する。当該判読作業にて操作者が表示中のタイルの未確定リスト表示欄71から異動箇所を1つ選択すると、画像表示領域32等にてその異動箇所が枠線で囲む等の方法で強調表示される。操作者は画像表示領域32と画像表示領域34、又は画像表示領域42と画像表示領域44における選択異動箇所の画像を目視により対比し異動を判読する。
【0045】
また、3ビューの画面40での異動判読では、画像表示領域42,44の画像の対比に際して画像表示領域46の画像から得られる情報を参照することができる。例えば、撮影条件の相違等のせいで画像表示領域42,44に表示されたトゥルーオルソ画像によっては候補領域にて家屋の異動が生じているのか判別が容易でない場合でも、画像表示領域46にアナグリフを表示させ、高さ方向の相違を知ることで異動判読が容易となる。
【0046】
また3ビューの画面40では画像表示領域46の近傍の配置されるラジオボタン50〜53を操作し当該画像表示領域46に表示される画像の「新」、「旧」を切り替えることで、「新」、「旧」の画像の相違を同一の領域46内での画像の時間的な変化として目視することができる。特に、画像表示領域46にアナグリフを表示する場合、ラジオボタン50,51を操作すれば、異動箇所ではその部分の高さの変化が視覚的・直感的に認識され異動判読を容易とする。
【0047】
未確定リスト表示欄71にて異動箇所の選択を行うと、異動属性表示73がアクティブ状態(選択可能状態)に変わる。操作者は上述の画像表示領域32等の表示に基づいて判読した結果に該当する属性を異動属性表示73の中から選択し、ボタン74(「決定」)を押す。これにより、選択した候補領域に属性が付与され、当該候補領域は未確定リスト表示欄71から確定リスト表示欄72に移動される。
【0048】
上記実施形態では、家屋異動判読支援装置10が判定対象データとして入力されたDSMデータ及び空中撮影画像から生成したトゥルーオルソ画像及びアナグリフを用いて処理を行うが、判定対象データとして空中撮影画像に代えて予め作成したトゥルーオルソ画像を家屋異動判読支援装置10に入力してもよい。実体視画像生成部22はDSMが表す三次元形状上にトゥルーオルソ画像の画素値を対応付けた三次元モデルからステレオペア画像を求め、アナグリフを生成する。なお、トゥルーオルソ画像の代わりにオルソ画像を用いることもできるが、以下の点からトゥルーオルソ画像を用いることが好ましい。トゥルーオルソ画像には家屋の側面の画像情報が含まれていないので、生成されるアナグリフにおいても側面の画像が省略される。この簡略化されたアナグリフは、家屋部分では屋根・屋上部分が地上から浮いているような視覚を観察者に与え現実の実体視との相違を有するが、その相違が却って家屋の存在やその高さを把握する上で一種の強調効果をもたらし、家屋異動判読を容易とし得る。
【0049】
[第2の実施形態]
以下の実施形態に係る家屋異動検出装置は上述の第1の実施形態とほぼ同様であり、同様の構成には同一の符号を付し、また図1〜3を援用する。以下、本発明の他の実施形態について、第1の実施形態との相違点に焦点を当てて説明する。
【0050】
第2の実施形態の家屋異動判読支援装置10は、平面視画像取得部20を省略した構成である。表示画面生成部26は、DSMデータ及び予め作成され入力されたトゥルーオルソ画像、あるいは航空写真のステレオペア画像を基に実体視画像生成部22が生成するアナグリフを含む表示画面を生成し、操作者は表示されるアナグリフを参照して家屋異動を判読する。アナグリフは時期T1,T2について生成することができる。表示画面生成部26は2時期のうち操作者が選択した一方時期のみのアナグリフを含む表示画面を生成し表示し、操作者の指示に応じていずれの時期のアナグリフを表示するかを切り替える構成とすることができる。この切り替えのスイッチは、第1の実施形態で述べたように、表示画面上にてアナグリフの表示領域に隣接して表示させることが好適である。また、表示画面生成部26は2時期のアナグリフを例えば、横並びに同時に表示画面に表示する構成とすることができる。
【0051】
なお、第1の実施形態では、異動候補を平面視画像に表示したが、第2の実施形態では平面視画像を表示しないので、異動候補検出部24も省略することが可能である。一方、異動候補検出部24を備えて、アナグリフにて異動候補の位置を表示する構成とすることもできる。
【0052】
[第3の実施形態]
第3の実施形態の家屋異動判読支援装置10は、表示画面生成部26が平面視画像と実体視画像とを同じ表示画面に並べて表示する。
【0053】
例えば、表示画面には図2の2ビューの画面の画像表示領域32,34のように2つの画像表示領域が設定され、それらの一方に平面視画像が表示され、他方にアナグリフが表示される。例えば、表示画面生成部26は、操作者が選択した時期のトゥルーオルソ画像等の平面視画像と、同じ時期・対象領域のアナグリフとを並べて表示する。表示する平面視画像の種類(トゥルーオルソ画像またはDSM画像)は例えば、上述のチェックボックス60,61のような手段で切り替えることが可能である。また、操作者の指示に応じていずれの時期の画像を表示するかを切り替える構成とすることができる。このとき、時期T1に対応した表示画面と時期T2に対応した表示画面とで、画像表示領域の配置、及び各画像表示領域に表示する画像の種類(平面視画像またはアナグリフ)を共通とすることにより、操作者が表示画面を切り替えて家屋異動を判読する作業が容易となる。また、これら異なる時期に対応した表示画面の切り替えのスイッチは表示画面上にて、例えば、ボタン48やラジオボタン50〜53のように画像表示領域の近傍に配置することが好適である。
【0054】
なお、同一画面に表示する平面視画像を2時期に対応する2画像とすることや、同様にアナグリフを2時期に対応する2画像とすることも可能である。この構成において平面視画像を2時期の2画像とし、これに一方時期のアナグリフを並べて表示する場合の例は第1の実施形態の3ビューの画面40である。また、この構成の他の例は、同一画面に2時期の平面視画像及び2時期のアナグリフの4つの画像を並べて表示する4ビューの画面表示である。
【0055】
本実施形態の家屋異動判読支援装置10は異動候補検出部24を省略した構成とすることもできる。
【0056】
[第4の実施形態]
第4の実施形態の家屋異動判読支援装置10は、表示画面生成部26がアナグリフを表示した第1の表示画面と、平面視画像を表示した第2の表示画面とを生成し、第1表示画面及び第2表示画面を操作者の指示に応じて選択的に表示部14に表示させるものである。表示画面生成部26は、同じ時期・対象領域のアナグリフ及び平面視画像を生成し、それらを第1、第2の表示画面に表示する。ここで、第1の表示画面に表示するアナグリフ及び第2の表示画面に表示する平面視画像は操作者が選択した1時期のものとすることもできるが、2時期を対比して異動判読を行う上では、第1の表示画面に2時期のアナグリフを表示し、第2の表示画面に2時期の平面視画像を表示する構成が好適である。
【0057】
なお、第1の表示画面においてアナグリフに並べて平面視画像を表示してもよい。ここで、上記第1の実施形態は、3ビューの画面40が1時期のアナグリフに2時期の平面視画像を並べて表示した第1の表示画面に、また2ビューの画面30が2時期の平面視画像を表示した第2の表示画面に相当し、第4の実施形態として説明した上述の構成の1つの例と解することもできる。
【0058】
同様に、第2の表示画面において平面視画像に並べて1時期、又は2時期のアナグリフを表示してもよい。
【0059】
表示画面内に1時期のアナグリフを表示する場合には、当該時期を切り替える構成とすることができ、その切り替えのスイッチは、第1の実施形態で述べたように、表示画面上にてアナグリフの表示領域に隣接して表示させることが好適である。
【0060】
また、本実施形態の家屋異動判読支援装置10においても異動候補検出部24を省略した構成とすることができる。
【符号の説明】
【0061】
10 家屋異動判読支援装置、12 処理部、14 表示部、16 記憶部、18 操作部、20 平面視画像取得部、22 実体視画像生成部、24 異動候補検出部、26 表示画面生成部、30,40 画面、32,34,42,44,46 画像表示領域、50〜53 ラジオボタン、54 タイル表示領域、55 タイル、56,57 ボタン、60〜66 チェックボックス、70 全体リスト表示欄、71 未確定リスト表示欄、72 確定リスト表示欄、73 異動属性表示。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2時期における対象領域内の家屋の形状が示された判定対象データに基づいて作業者が前記両時期間での家屋異動を判読する作業を支援し、前記両時期のうち少なくとも一方の前記判定対象データとして、数値表層モデルデータ及び空中撮影画像からなる空間情報計測データを用いる家屋異動判読支援装置であって、
前記空間情報計測データに基づいて前記対象領域の実体視画像を生成する実体視画像生成手段と、
表示装置に表示させる表示画面として、前記実体視画像を含む第1表示画面を生成する画面表示手段と、
を有することを特徴とする家屋異動判読支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の家屋異動判読支援装置において、
前記判定対象データに基づいて前記対象領域の平面視画像を取得する平面視画像取得手段を有し、
前記画面表示手段は、前記第1表示画面にて前記実体視画像に並べて前記平面視画像を表示すること、
を特徴とする家屋異動判読支援装置。
【請求項3】
請求項1に記載の家屋異動判読支援装置において、
前記判定対象データに基づいて前記対象領域の平面視画像を取得する平面視画像取得手段を有し、
前記画面表示手段は、前記表示画面として前記第1表示画面と、前記平面視画像を含む第2表示画面とを生成し、前記第1表示画面及び第2表示画面を前記作業者の指示に応じて選択的に前記表示装置に表示させること、
を特徴とする家屋異動判読支援装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の家屋異動判読支援装置において、
前記両時期における前記判定対象データに基づいて当該両時期間での家屋異動を検出し当該異動が検出された場所を候補領域として抽出する異動候補検出手段を有し、
前記画面表示手段は、前記表示画面上の前記平面視画像にて前記候補領域に対応する位置を前記作業者に識別可能に表示すること、
を特徴とする家屋異動判読支援装置。
【請求項5】
請求項3に記載の家屋異動判読支援装置において、
前記画面表示手段は、前記第2表示画面にて前記平面視画像に並べて前記実体視画像を表示すること、を特徴とする家屋異動判読支援装置。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれか1つに記載の家屋異動判読支援装置において、
前記画面表示手段は、前記平面視画像を表示する前記表示画面に前記両時期の前記平面視画像を並べて表示すること、を特徴とする家屋異動判読支援装置。
【請求項7】
請求項2から請求項6のいずれか1つに記載の家屋異動判読支援装置において、
前記平面視画像は、前記空間情報計測データから生成されたトゥルーオルソ画像、又は前記判定対象データとして与えられた家屋ポリゴンデータに基づく画像であること、を特徴とする家屋異動判読支援装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の家屋異動判読支援装置において、
前記画面表示手段は、前記実体視画像を表示する前記表示画面に前記両時期の前記実体視画像を並べて表示すること、を特徴とする家屋異動判読支援装置。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の家屋異動判読支援装置において、
前記画面表示手段は、前記作業者のマウス操作により状態を切り替えられ前記第1及び第2時期のいずれの前記実体視画像を前記表示画面に表示するかを選択するスイッチを前記実体視画像の表示領域に隣接して当該表示画面上に表示させること、を特徴とする家屋異動判読支援装置。
【請求項10】
第1及び第2時期における対象領域内の家屋の形状が示された判定対象データとして、少なくとも一方時期について数値表層モデルデータ及び空中撮影画像からなる空間情報計測データを入力される装置によって行われ、前記判定対象データに基づいて作業者が前記両時期間での家屋異動を判読する作業を支援する家屋異動判読支援方法であって、
前記空間情報計測データに基づいて前記対象領域の実体視画像を生成する実体視画像生成ステップと、
表示装置に表示させる表示画面として、前記実体視画像を含む第1表示画面を生成する画面表示ステップと、
を有することを特徴とする家屋異動判読支援方法。
【請求項11】
コンピュータを、第1及び第2時期における対象領域内の家屋の形状が示された判定対象データに基づいて作業者が前記両時期間での家屋異動を判読する作業を支援する家屋異動判読支援装置として機能させるためのプログラムであって、
前記両時期のうち少なくとも一方の前記判定対象データとして、数値表層モデルデータ及び空中撮影画像からなる空間情報計測データを用い、
当該コンピュータを、
前記空間情報計測データに基づいて前記対象領域の実体視画像を生成する実体視画像生成手段、及び、
表示装置に表示させる表示画面として、前記実体視画像を含む第1表示画面を生成する画面表示手段、
として機能させるための家屋異動判読支援プログラム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−146050(P2012−146050A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2783(P2011−2783)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000135771)株式会社パスコ (102)
【Fターム(参考)】