説明

容器のガス置換方法及びその装置

【課題】容器口部の口径がヘッドスペースの広さに比べて可なり小さい場合でも、確実にガス置換できて、ガス置換率を大幅に向上できる容器のガス置換方法を提供する。
【解決手段】容器1に液体を所定量充填した後、キャッピング位置で容器1の口部2にキャップ4をキャッパー5によって取り付ける前に容器ヘッドスペースSのガスを置換する方法であり、キャッピング位置の上方に、内径がキャップ4の外径より大きく且つその内周側に複数の内向きノズル13を有する置換ガス噴射用の筒状体9を配置しておいて、容器口部3を筒状体9内に下方より突入させた状態で、容器1の胴締めを開始して、液面Loを押し上げることにより容器ヘッドスペースS内の空気を押し出しながら、内向きノズル13からの置換ガスの噴射を開始し、容器口部3から液体Lが溢れる寸前で前記胴締めを少し戻して液面Loを少し下げた状態で、容器口部3をキャッピングする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に液体を所定量充填した後、容器口部をキャッピングする前に容器ヘッドスペースの空気等のガスを、窒素等の不活性ガスや炭酸ガス、あるいはこれらの混合ガスに置換する方法及びその装置に関するもので、特に本発明は、容器として、ブリキ缶やブラスチック容器のように変形可能なものを使用する場合のガス方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、食品を充填密封した容器は、飲料等の内容物を缶、ボトル等の容器に充填した後、殺菌処理されて密封する工程を経て製造されるが、このとき、容器内上部にはヘッドスペースが生じる。このヘッドスペースに空気が残留していると、時間を経過する中で当該空気中の酸素と内容物が酸化反応し、色が変わったり、風味が変わってしまう等の品質の劣化を来すことになる。そこで、この問題を解決する方法として、従来からヘッドスペースの空気を不活性ガス、一般には窒素ガスに置換して密封することが行われている。
【0003】
従来のガス置換方法として、例えば特許文献1に記載されたものがある。これは、チャックに取り付けた第一覆体と、グリッパーに取り付けた第二覆体との組み合わせによってガス置換室を形成し、このガス置換室内へ置換ガスを供給させつつ、容器口元へのキャップの取り付けを行うようにしたものである。
【特許文献1】特開平11−59792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のガス置換方法は、瓶などのようにヘッドスペースが容器口部の口径に比べてそれ程小さくない容器の場合には有効であるが、一斗缶のように口部の横断面積が缶本体の横断面積に比べて非常に小さく、従ってヘッドスペースが容器口部に比べて可なり大きい容器の場合には、上記従来の方法は、容器ヘッドスペース内に空気が残留するおそれがあって、ガス置換率の大幅な向上は期待できない。
【0005】
本発明は、ブリキ缶やプラスチック容器のように変形可能な容器であれば、一斗缶のように容器口部の口径がヘッドスペースの広さに比べて可なり小さい場合でも、確実にガス置換できて、キャッピング時のガス置換率を大幅に向上できる容器のガス方法及びその装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明は、ブリキ缶等の変形可能な容器1に液体を所定量充填した後、キャッピング位置で容器1の口部2にキャップ4をキャッパー5によって取り付ける前に容器ヘッドスペースSのガスを置換する方法であって、
キャッピング位置の上方に、内径がキャップ4の外径より大きく且つその内周側に複数の内向きノズル13を有する置換ガス噴射用の筒状体9を配置し、この筒状体9内に下方より容器口部3を突入させた状態で、容器1の胴締めを開始して液面Loを押し上げることにより容器ヘッドスペースS内の空気を押し出しながら、前記内向きノズル13からの置換ガスの噴射を開始し、容器口部3から液体Lが溢れる寸前で前記胴締めを少し戻して液面Loを少し下げた状態で、容器口部3をキャッピングするようにしたことを特徴とする。
【0007】
請求項2は、請求項1に記載の容器のガス置換方法において、一斗缶のように容器1の口部3が容器上壁部2aの一つの角部近くに設けてある容器1にあっては、キャッピング位置において当該一つの角部側が他の3つの角部側より少し高くなるようにした状態で容器口部3を置換ガス噴射用の筒状体9内に突入させ、斯かる状態で、容器1の胴締めを開始して容器ヘッドスペースS内の空気を押し出しながら、前記筒状体9内周側の内向きノズル13により置換ガスを噴射すると共に、筒状体9内周側に設けた斜め下向きノズル14によって、前記高くなった一つの角部側の容器ヘッドスペースSに置換ガスを噴射するようにしたことを特徴とする。
【0008】
請求項3は、ブリキ缶等の変形可能な容器に液体を所定量充填した後、キャッピング位置で容器1の口部2にキャップ4をキャッパー5によって取り付ける前に容器ヘッドスペースSのガスを置換するようにした装置であって、
キャッピング位置の上方に設置され、内径がキャップ4の外径より大きくてその内周側に複数の内向きノズル13を有する置換ガス噴射用の筒状体9と、キャッピング位置において容器口部2が筒状体9内に突入しない下降位置と筒状体9内に突入する上昇位置との間で容器1を昇降させる容器昇降手段8と、前記上昇位置で容器1を胴締めする胴締め手段11とからなることを特徴とする。
【0009】
請求項4は、請求項3に記載の容器のガス置換装置において、ブリキ製の一斗缶のように容器口部2が容器上壁部2aの一つの角部近くに設けてある容器1の場合に、前記上昇位置で当該一つの角部側が他の3つの角部より少し高くなるようにすると共に、前記置換ガス噴射用筒状体9の内周側には前記複数の内向きノズル13の他に、前記高くなった一つの角部側の容器ヘッドスペースS内に置換ガスを噴射するための斜め下向きノズル14を設けてなることを特徴とする。
【0010】
請求項5は、請求項3又は4に記載の容器のガス置換装置において、前記置換ガス噴射用の筒状体9は、円筒状に形成されていると共に、その内周面9aが下窄まり状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明のガス置換方法によれば、容器1の口部3を置換ガス噴射用筒状体9内に下方より突入させた状態で、容器1の胴締めを開始し、液面Loを押し上げることによって容器ヘッドスペースS内の空気を押し出しながら、内向きノズル13からの置換ガスの噴射を行ってガスを置換するから、ガス置換率の大幅な向上をはかることができる。また、この方法では、容器口部3から液体Lが溢れる寸前で胴締めを少し戻して液面Loを少し下げた状態で容器口部3をキャッピングするから、キャッピング時に容器口部3から液体Lが溢れ出ることがない。
【0012】
請求項2に係る発明のガス置換方法によれば、一斗缶のように容器1の口部3が容器上壁部2aの一つの角部近くに設けてある容器1では、当該一つの角部側が他の3つの角部側より少し高くなるようにした状態で容器口部3を置換ガス噴射用の筒状体9内に突入させ、斯かる状態で胴締めを開始して容器ヘッドスペースS内の空気を押し出しながら、内向きノズル13により置換ガスを噴射すると共に、斜め下向きノズル14によって、高くなった一つの角部側の容器ヘッドスペースSに置換ガスを噴射するから、胴締めによって液面Loを押し上げる時に容器1内のヘッドスペースSが当該一つの角部側にの収束されて、空気の押し出しが容易となり、しかも斜め下向きノズル14により、高くなった一つの角部側のヘッドスペースSを狙って不活性ガスNを噴射するから、ヘッドスペースSのガス置換をより有効に行わせることができ、ガス置換率のより一層の向上をはかることができる。
【0013】
請求項3に係る発明のガス置換装置によれば、キャッピング位置の上方に設置され、内径がキャップ4の外径より大きくてその内周側に複数の内向きノズル13を有する置換ガス噴射用の筒状体9と、キャッピング位置において容器口部2が筒状体9内に突入しない下降位置と筒状体9内に突入する上昇位置との間で容器1を昇降させる容器昇降手段8と、前記上昇位置で容器1を胴締めする胴締め手段11とからなるため、請求項1に係る発明の方法を有効に実施できて、ガス置換率の大幅な向上をはかることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明のように、ブリキ製の一斗缶のように容器口部2が容器上壁部2aの一つの角部近くに設けてある容器1の場合に、前記上昇位置で当該一つの角部側が他の3つの角部より少し高くなるようにすると共に、前記置換ガス噴射用筒状体9の内周側には前記複数の内向きノズル13の他に、前記高くなった一つの角部側の容器ヘッドスペースS内に置換ガスを噴射するための斜め下向きノズル14を設けることにより、胴締めによって液面Loを押し上げる時に容器1内のヘッドスペースSが当該一つの角部側にの収束されて、空気の押し出しが容易となり、しかも斜め下向きノズル14により、高くなった一つの角部側のヘッドスペースSを狙って不活性ガスNを噴射するから、ヘッドスペースSのガス置換を有効に行わせることができ、ガス置換率のより一層の向上をはかることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明のように、置換ガス噴射用の筒状体9を円筒状に形成すると共に、その内周面9aを下窄まり状に形成することにより、筒状体9の内向きノズル13から噴射される置換ガスが筒状体9内に有効に保持されると共に、容器口部3に的確に供給されて、ヘッドスペースSのガス置換をより有効に行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の好適な一実施形態を図面に基づいて説明すると、図1の(a) は本発明に係るガス置換方法を実施するためのガス置換装置を備えたキャッパー装置全体を概略的に示す正面図、(b) は概略側面図であり、図2は容器としての一斗缶を示す斜視図であり、また図3の(a) はガス置換装置の一部を構成する置換ガス噴射用筒状体の平面図、(b) は(a) のX−X線断面図、(c) は(a) のY−Y線拡大断面図、(d) は前記筒状体に取り付けられる斜め下向きノズルの平面図である。
【0017】
図1において、1はガス置換装置10におけるキャッピング位置の下降位置にある状態の一斗缶(容器)で、この缶1は、図2から分かるように、直方体からなる缶本体2の上壁部2aには4つの角部のうちの一つの角部の近くに缶口部(液体充填及び取出口)3が設けられ、この缶口部3に、図1に概略示すキャッパー5によってキャップ4が取り付けられるようになっている。キャッパー5は、周知構造のもので、下記キャップ供給部22からキャップ4を受け取って缶口部3に挿着封止するようになっている。
【0018】
図1に示されるキャッパー装置は、架台6上にローラコンベヤ7を設置して、このコンベヤ7上の一端側(図1の(a) の左端側)に搬入された缶1を他端側(図1の(a) の右端側)のキャッピング位置まで搬送し、このキャッピング位置で本発明に係るガス置換装置10の缶昇降手段8によって、缶口部3が置換ガス噴射用筒状体9に未だ突入していない下降位置から筒状体9内に突入する上昇位置まで缶1を昇降させ、その状態でガス置換装置10によってガス置換を行わせた後、キャッパー5によりキャップ4を缶口部3に取り付けるようにしたもので、このキャッパー5には、キャップストックマガジン21にストックされたキャップ4がマガジン21下端部のキャップ供給部22から自動供給されるようになっている。尚、缶1には、上記コンベヤ7へ搬入される前の充填工程で所要の液体が所定量充填されるが、液体としては、各種飲料水の他に、練乳や生クリーム等が使用される。
【0019】
ガス置換装置10は、図1の(b) に概略示すようにキャッピング位置の上方に設置された置換ガス噴射用の筒状体9と、キャッピング位置にある缶1を、缶口部3が置換ガス噴射用筒状体9に未だ突入していない下降位置(図1の(b) の実線示位置)から筒状体9内に突入する上昇位置(同図の仮想線図示位置)との間で昇降させる缶昇降手段8と、この缶昇降手段8によってキャッピング位置の上昇位置まで上昇した状態の缶1を胴締めする胴締め手段11とから構成される。
【0020】
置換ガス噴射用の筒状体9は、図3の(a) ,(b) に示すように、内径が缶口部3の外径よりも大きいリング状又は短円筒状に形成されていると共に、その内周面9aが下窄まりテーパ状に形成されていて、下部側の肉厚部内に環状ガス通路12が設けられ、しかしてこの環状ガス通路12には、筒状体内周面9aに開口する内向きノズル13が周方向に一定ピッチで多数配設されている。そして、この環状ガス通路12には窒素等の不活性ガス(置換ガス)を導入するためのガス導入用ソケット23が筒状体9の外周面9b側に突設され、このソケット23にはガス供給ホース24が接続されている。尚、各内向きノズル13は、図3の(a) に破線の矢印で示すように、筒状体9の中心に向かってその径方向にガスを噴射するものとする。また、不活性ガス(置換ガス)は、窒素の他に、アルゴンやヘリウム、更には炭酸ガス及びこれらの混合ガスを含むものとする。
【0021】
また置換ガス噴射用筒状体9には、内周面9aの1箇所に斜め下向きの所定方向に前記不活性ガスを噴射するための斜め下向きノズル14が設けられ、このノズル14は、筒状体9の外周面9b側に取り付けられるガス導入用ソケット25の先端部に突設されており、このソケット25にはガス供給ホース26が接続されている。
【0022】
この置換ガス噴射用筒状体9は、図1の(b) に概略示すように、架台6上の支柱15に水平に支持された取付アーム16に所定高さ位置で固定されている。
【0023】
缶昇降手段8は、図1の(a) ,(b) に示すように、ローラコンベヤ7の他端側(図1の(a) の右端側)のキャッピング位置でローラ7a,7a間に昇降自在に挿通される複数組の昇降リフト27と、これらの昇降リフト27を、ローラ7a,7a間の下方で待機する待機位置と、ローラ7a,7a間を通ってその上方へ突出する突出位置との間で所定ストローク昇降駆動する駆動機構28とからなるもので、ローラコンベヤ7の一端側から他端側のキャッピング位置まで搬送されてきた缶1を、ローラコンベヤ7と分離して缶口部3が置換ガス噴射用筒状体9に未だ突入していない下降位置から筒状体9内に突入する上昇位置へと持ち上げるようになっている。
【0024】
この缶昇降手段8には、ローラコンベヤ7上のキャッピング位置においてキャッピング位置に位置決めするストッパー29が設けられている。
【0025】
上記缶昇降手段8によって上昇位置へ持ち上げた缶1を胴締めする胴締め手段11は、図1の(b) に示すように、直方体からなる缶本体2の対向する両側壁部の一方を押圧する押圧部材17と、固定位置で他方の側壁部をバックアップするバックアップ部材18と、押圧部材17を缶1の対面する側壁部に対して進退駆動する駆動機構19とからなるもので、バックアップ部材18は架台6上に立設された支持枠31に取り付けられ、駆動機構19は、架台6上の支柱15に設置されている。図1において、32はキャッパー装置の制御ボックスを示す。
【0026】
上記のように構成されるガス置換装置の使用による缶1のガス置換方法について図4〜図7を参照しながら以下に説明する。
【0027】
図4は液体Lを所定量充填した缶1がローラコンベヤ7によってキャッピング位置に搬送されてきた状態を示し、このキャッピング位置の上方には置換ガス噴射用筒状体9を介してキャッパー5が配置されている。この缶1の位置はまた、キャッピング位置における下降位置を示す。図において、Sは缶1内の上部空間であるヘッドスペースを示す。この実施形態では、液体Lとして練乳を使用し、缶(容器)1として1斗缶を使用した。
【0028】
このキャッピング位置においてストッパー29で缶1を位置決めし、前記缶昇降手段8により缶1をローラコンベヤ7上の下降位置から上昇位置へ上昇させて、缶口部3を置換ガス噴射用筒状体9内に突入させる。この時、缶1は、一つの角部近くにある缶口部3が他の3つの角部よりも少し高くなるように上昇させて、缶口部3を筒状体9内に突入させる。この状態を図5の(a) に示す。尚、缶口部3のある一つの角部側を他より高くするには、缶昇降手段8における複数組の昇降リフト27・・・の一部の昇降リフト27の高さを他の昇降リフト27より所定寸法だけ高くしておけばよい。
【0029】
次に、胴締め手段11を作動させて缶1の胴締めを開始して、液面Loを押し上げることによりヘッドスペースS内の空気を缶口部3より押し出す。この胴締めは、最初高速である程度まで押圧した後、予め設定した押し量の低速で押圧してゆく。そして、この胴締めの開始と同時に、置換ガス噴射用筒状体9による不活性ガスN(置換ガス)の噴射を開始する。
【0030】
この不活性ガスN(置換ガス)の噴射に際しては、筒状体9の内周面9aに多数設けられた夫々中心に向かう内向きノズル13と、内周面9aの1箇所に設けられた斜め下方の所定方向に斜め下向きノズル14とからの噴射を同時に開始する。内向きノズル13からの噴射により、図5の(b) に示すように、筒状体9の内部全体に不活性ガスNが充満すると共に、缶口部3も不活性ガスNが充満した状態となる。この場合、筒状体9が円筒状に形成されにと共に、その内周面9aが下窄まり状に形成されているから、筒状体9の内向きノズル13から噴射される置換ガスが筒状体9内に有効に保持されると共に、容器口部3に的確に供給されて、ガス置換をより有効に行わせることができる。
【0031】
また、斜め下向きノズル14からの不活性ガスNの噴射は、図5の(b) に破線で示すように、缶口部3のある高くなった一つの角部側のヘッドスペースSを狙ったもので、この一つの角部側のヘッドスペースS内の空気を不活性ガスNと積極的に置換するようになっている。
【0032】
上記のように、缶口部3に近い一つの角部側が他の3つの角部側より少し高くなるようにした状態でガス置換を行うのは、次のような理由による。即ち、ブリキ製の一斗缶のような容器では、胴締めを行う時に缶本体2の上壁部2aの中央側が下向きに凹んだ状態に変形して、ヘッドスペースSは中央部側が浅く、周辺部側が深い状態になり易いために、胴締めにより液面Loを押し上げていっても、ヘッドスペースSの周辺部に空気が残留し易く、確実にガスの置換を行い難いことから、缶口部3に近い一つの角部側を他の3つの角部側を高くすることにより、胴締めにより液面Loを押し上げる時にヘッドスペースSが当該一つの角部側にの収束されて、空気の押し出しが容易となるからである。しかも、この場合、斜め下向きノズル14により、缶口部3のある高くなった一つの角部側のヘッドスペースSを狙って不活性ガスNを噴射するから、このヘッドスペースSのガス置換を有効に行わせることができる。
【0033】
上記のように胴締めによって液面Loを押し上げながら図6の(a) に示すように液体Lが缶口部3に満杯状態になるまで缶1を押圧したならば、押圧部材17を少し後退させて胴締めを少し戻し、液面Loを下げて図6の(b) に示すような状態で、キャッパー5を作動させることにより、同じ図6の(b) に示すようにキャップ4を缶口部3に押し込んで変形させながら封着する。
【0034】
この場合、液面センサー20により、図6の(a) に示すように液体Lが缶口部3に満杯状態になるのを検知する。この液面センサー20は、どのようなタイプのものでもよく、図1の(a) に示すように架台6上の支柱15によって支持されたガイドフレーム30に水平方向移動調整自在に設けられていて、液面Loが缶口部3に満杯状態となった位置を検知し、その信号により胴締め手段11の押圧部材17を前進移動から後退移動に切り換えて、胴締めを少しだけ戻すようになっている。
【0035】
上記のように液体Lが缶口部3に満杯になる寸前で胴締めを少し戻して液面Loを少し下げるた状態でキャッパー5によるキャッピングを行うのは、満杯状態でキャッピングすると、液体Lが缶口部3から溢れ出てしまって、容器口部3からの液体Lの溢出による充填量不足や充填後の容器3の洗浄等の問題を生じるから、このような問題を回避するためである。
【0036】
キャッパー5によるキャッピングが終了すると、置換ガス噴射用筒状体9の内向きノズル13及び斜め下向きノズル14からき不活性ガスNの噴射を停止し、胴締め手段11による缶1の胴締めを戻して、図7の(a) に示す状態とし、ガスの置換を終了する。この時、缶1内のヘッドスペースSには不活性ガスN(置換ガス)である窒素のみが封入された状態となる。
【0037】
こうしてガスの置換を終えたならば、缶昇降手段8を再び作動させて、上昇位置にあるガス置換済み缶1をローラコンベヤ7上の下降位置まで下降させる。ローラコンベヤ7上の下降位置では、缶1は、図7の(b) に示すように元の水平姿勢に戻る。このガス置換済み缶1はローラコンベヤ7上のキャッピング位置から取り出された後、そのキャッピング位置に次の缶1が搬送されてくるのを待つことになる。
【0038】
以上説明したような実施形態のガス置換装置を使用すれば、ガス置換率の大幅な向上をはかることができる。具体的には、この実施形態の装置を使用した場合に、一斗缶の窒素置換率(酸素残量)は、酸素濃度が1.0〜3.0%と非常に少なく、従ってガス置換率が非常に大きい。またこの装置では、容器口部3から液体Lが溢れる寸前で胴締めを少し戻して液面Loを少し下げた状態で容器口部3をキャッピングするから、キャッピング時に容器口部3から液体Lが溢れ出ることがなく、従って容器口部3からの液体Lの溢出による充填量不足や充填後の容器3の洗浄等の問題がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】(a) は本発明に係るガス置換方法を実施するためのガス置換装置を備えたキャッパー装置を概略的に示す正面図、(b) はその概略側面図である。
【図2】容器としての一斗缶を示す斜視図である。
【図3】(a) はガス置換装置の一部を構成する置換ガス噴射用筒状体の平面図、(b) は(a) のX−X線断面図、(c) は(a) のY−Y線拡大断面図、(d) は前記筒状体に取り付けられる斜め下向きノズルの平面図である。
【図4】缶がキャッピング位置にある状態を示す断面図である。
【図5】(a) は缶がキャッピング位置でその下降位置から上昇位置へ上昇して、缶口部が置換ガス噴射用筒状体内に突入した状態を示す断面図、(b) は胴締め及び不活性ガスの供給を開始した段階を示す断面図である。
【図6】(a) は液体が缶口部に満杯状態となるまで液面を押し上げた状態を示す断面図、(b) は液面を少し下げた状態でキャッピングを行った状態を示す断面図である。
【図7】(a) はキャッピングを終えた状態の缶を示す断面図、キャッピングを終えた後、ローラコンベヤ上の下降位置まで下降した状態の缶を示す断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 缶(容器)
2 缶本体(容器本体)
3 缶口部(容器口部)
4 キャップ
5 キャッパー
S ヘッドスペース
L 液体
Lo 液面
9 置換ガス噴射用の筒状体
13 内向きノズル
14 斜め下向きノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリキ缶等の変形可能な容器に液体を所定量充填した後、キャッピング位置で容器の口部にキャップをキャッパーによって取り付ける前に容器ヘッドスペースのガスを置換する方法であって、
キャッピング位置の上方に、内径がキャップの外径より大きく且つその内周側に内向きノズルを有する置換ガス噴射用の筒状体を配置し、この筒状体内に下方より容器口部を突入させた状態で、容器の胴締めを開始して液面を押し上げることにより容器ヘッドスペース内の空気を押し出しながら、前記内向きノズルからの置換ガスの噴射を開始し、容器口部から液体が溢れる寸前で前記胴締めを少し戻して液面を少し下げた状態で、容器口部をキャッピングするようにした容器のガス置換方法。
【請求項2】
ブリキ製の一斗缶のように容器口部が容器上壁部の一つの角部近くに設けてある容器にあっては、キャッピング位置において当該一つの角部側が他の3つの角部側より少し高くなるようにした状態で容器口部を置換ガス噴射用の筒状体内に突入させ、斯かる状態で、容器の胴締めを開始して容器ヘッドスペース内の空気を押し出しながら、前記筒状体内周側の内向きノズルにより置換ガスを噴射すると共に、筒状体内周側に設けた斜め下向きノズルによって、前記高くなった一つの角部側の容器ヘッドスペースに置換ガスを噴射するようにした請求項1に記載の容器のガス置換方法。
【請求項3】
ブリキ缶等の変形可能な容器に液体を所定量充填した後、キャッピング位置で容器の口部にキャップをキャッパーによって取り付ける前に容器ヘッドスペースのガスを置換するようにした装置であって、
キャッピング位置の上方に設置され、内径がキャップの外径より大きくてその内周側に複数の内向きノズルを有する置換ガス噴射用の筒状体と、キャッピング位置において容器口部が筒状体内に突入しない下降位置と筒状体内に突入する上昇位置との間で容器を昇降させる容器昇降手段と、前記上昇位置で容器を胴締めする胴締め手段とからなる容器のガス置換装置。
【請求項4】
ブリキ製の一斗缶のように容器口部が容器上壁部の一つの角部近くに設けてある容器の場合に、前記上昇位置で当該一つの角部が他の3つの角部より少し高くなるようにすると共に、前記置換ガス噴射用筒状体の内周側には前記複数の内向きノズルの他に、前記高くなった一つの角部側の容器ヘッドスペース内に置換ガスを噴射するための斜め下向きノズルを設けてなる請求項3に記載の容器のガス置換装置。
【請求項5】
前記置換ガス噴射用の筒状体は、円筒状に形成されていると共に、その内周面が下窄まり状に形成されている請求項3又は4に記載の容器のガス置換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−126247(P2010−126247A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306444(P2008−306444)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(390016551)株式会社ナカキン (8)
【Fターム(参考)】