説明

容器の充填方法、容器を製造するためのプロセス、及び製造された容器

本発明は、充填ラインにおいて複数の容器を製品で充填する方法であって、容器が側壁領域、変形可能パネル領域、及びピボット領域の3領域を含み、ピボット領域が、側壁領域と変形可能パネル領域との間にあり、充填ラインにおいて充填された容器の少なくとも2つが、異なる第1及び第2の内部体積を有し、充填ラインが、第1の体積の容器から第2の体積の容器に変更するのに中断時間を実質的に必要としない方法を更に提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充填ラインにおいて複数の容器を製品で充填する方法に関する。本発明は、金型キャビティ内で容器を製造するためのプロセスであって、容器が、側壁、凹状変形可能パネル、及びピボット部分を備えるプロセスにも関する。
【背景技術】
【0002】
消費財のメーカーは、例えば平均充填体積の±20%の充填体積の範囲で、液体充填包装ラインを運転する柔軟性を要求する。通常製品と同じ販売価格で、例えば消費者に20%多い製品を提供する販売促進のための実施では、より高い充填体積が必要とされることが多い。そのような販売促進は、パッケージ化された製造量全体の一部分でしかなく、通常は任意の特定の包装ライン(packing line)で比較的短期間実施される。あるいは、消費財のメーカーは、販売される製品を消費者にカスタマイズするために、異なる最終消費者にいくらか異なるパッケージのサイズを提供することを望む場合がある。
【0003】
商業的包装作業において、異なるサイズのボトルを充填する毎に、時間のかかる切り換え手順を包装ラインに必要とせずに、既存の包装ラインをボトルのサイズの範囲(即ち、異なる体積)に使用することが有利である。そのような切り換え手順は、包装機器の生産性を低減させ、費用がかかる。
【0004】
この成果を得るための一番簡単な方法は、望ましい範囲の上端のボトルサイズ/体積で稼動するように包装ラインを設定し、低減させた体積にはボトルを少なく充填することである。しかしながら、例えば20%又は更に40%少なく充填されたパッケージにより、消費者は満たされていない大きなヘッドスペースのあるボトルを購入するため、消費者は金額に対して価値が低いと感じる。更に、満たされていない大きなヘッドスペースは、特定の状況において、消費者保護法又は例えば、製品安定性などの技術的要件により阻止される場合がある。
【0005】
本発明は、容器の主要寸法(高さ、幅、深さ)及び容器の主要な特徴(首部、向き、機能、ラベル機能など)に影響を与えずに、したがって容器の主要な外側寸法への変更を回避して、内部体積の範囲で複数の容器、一般的にはボトルを充填する方法を提供する。これにより、異なる内部体積を有する容器を、切り換えにより生じるいかなる中断時間の必要もなしに、同じ包装ラインで稼動させることができる。
【0006】
吹込み成形により作製され、凹状底部を組み込むボトルは、先行技術において開示されている。
【0007】
米国特許第3,843,005号(1974年10月22日発行)及び同第4,036,926号(1977年7月19日発行)はともに、凹状底部を有する容器を吹込み成形するための方法について記載する。両方の案件において、これは、伸縮自在に移動可能な部分を有する吹込み成形用金型に容器を吹き込むことにより得られる。これらの特許の主要目的は、炭酸飲料のように、容器の内容物が圧力下でパッケージ化される場合に有用な、内側に凸状の底部を有するボトルを提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第3,843,005号
【特許文献2】米国特許第4,036,926号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、伸縮自在に移動可能な部分を回避し、ピボット部分の周りで反転された変形可能なパネルを提供する、異なるプロセスも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、充填ラインにおいて複数の容器を製品で充填する方法であって、容器が側壁領域、変形可能パネル領域、及びピボット領域の3領域を含み、ピボット領域が、側壁領域と変形可能パネル領域との間にあり、充填ラインにおいて充填された容器のうち少なくとも2つが、異なる第1及び第2の内部体積を有し、充填ラインが、第1の体積の容器から第2の体積の容器に変更するのに中断時間を実質的に必要としない、方法を更に提供する。
【0011】
金型キャビティ内で容器を製造するためのプロセスであって、金型キャビティの内部が、側壁領域、変形可能パネル領域、及びピボット領域の3領域を備え、ピボット領域が、側壁領域と変形可能パネル領域との間にあり、
i)金型キャビティ内で加熱されたかたまりを保持する工程と、
ii)かたまりを内圧下で膨張させて、先行体を形成し、先行体が、金型キャビティの対応する領域に側壁、変形可能パネル、及びピボット部分を備える工程と、
iii)先の先行体を形成する工程の内圧を実質的に維持しながら、変形可能パネルが側壁により画定される領域内にあるように、金型の移動部分を内側に変形させ、変形可能パネルをピボット部分の周りで反転させる工程と、
iv)金型の移動部分を内側に変形したパネルから取り出す工程と、
v)金型キャビティから容器を押し出す工程と、を含むプロセスも提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、充填ラインにおいて複数の容器を製品で充填する方法に関する。各容器は変化するくぼみを備え、その体積は、容器が作製される吹込み成形プロセス中に容易に変化し、その結果、同じ金型キャビティで作製された容器が、様々な内部体積の範囲を有する。更に、これらの容器は、それらの内部体積にかかわらず、包装ラインをほとんど又は全く調整せずに、同じ包装ラインにおいて稼動させることができる。容器は、好ましくは吹込み成形プロセス、より好ましくは射出延伸吹込み成形プロセスにより作製され、これは凹状であり、側壁により画定される領域内にある変化可能パネルを容器に提供するようになされる。
【0013】
「金型」は、本明細書で記載されるとき、2つ以上の部分を通常含み、これは、「金型キャビティ」を形成するために閉じ、加熱されたかたまりを金型に挿入させるため及び/又は完成した容器を金型から取り外すために開けることができる。本発明では、金型キャビティの内側は、側壁領域、変形可能パネル領域、及びピボット領域の3領域を含む。ピボット領域は、側壁領域と変形可能パネル領域との間にある。商業的な事業においては、複数の金型キャビティを連続高速機械に組み込むことができる。
【0014】
「加熱されたかたまり」とは、本明細書では、完成した物体を形成するために膨張する前に製造された成形品を意味する。かたまりは、完成した物体よりも必然的にいくらか小さい。特に好ましいかたまりは、溶解温度を超える高温で、例えば射出成形により通常製造された母材である。
【0015】
「吹込み成形」とは、本明細書では、かたまりが最初に吹き込まれるプロセスを意味する。
【0016】
「延伸吹込み成形」とは、本明細書では、母材がまず長手方向に延伸され、その後吹込み工程が続くプロセスを意味する。一般的に、母材は、先行体を金型キャビティの底部まで又は少なくとも金型キャビティの底部の非常に近くまで延伸する延伸ピン若しくはプランジャにより延伸される。吹込み工程は、好ましくはガラス転移温度を超える温度で、延伸された母材内の内圧を増大させることにより行われ、これは、得られる構成が「2軸配向」であるように吹込み方向に向きを維持することを意図する。
【0017】
「先行体」とは、本明細書では、金型キャビティ内で加熱され吹き込まれて形成されたかたまり、延伸吹込み成形の場合には、加熱され延伸され吹き込まれて形成されたかたまりを意味する。
【0018】
本発明の吹込み成形プロセスは、金型キャビティの対応する領域に側壁、変更可能パネル、及びピボット部分を備える先行体の形成を含む。金型の内側に移動する部分は、変形可能パネルが側壁により画定される領域内にあるように、変形可能パネルをピボット部分の周りで反転させる。この変形の結果として、変形可能パネルは、容器の外側寸法に対して凹状形体をとる。
【0019】
内側に移動部分がずれる距離は、金型で素早く容易に調整することができ、これにより異なる寸法の凸状変形可能パネルが形成され、その結果、様々なボトルが同じ金型で作製され、様々なボトルは、同じ外側寸法であるが異なる内部体積を有する。これらのボトルのいずれも、包装ラインへの調整をほとんど又は全く必要とせずに、同じ包装ラインにおいて稼動させることができる。
【0020】
変形可能部分をピボット部分の周りで反転させる工程が、変形可能パネルの再加熱又は側壁の冷却のいずれかを伴わずに行えることがわかった。本プロセスにおけるこの段階で、側壁の望ましくない変形を避けるために、先行体の形成中に到達する内圧が維持される又は実質的に維持されるのが好ましい。内圧を実質的に維持するとは、本明細書において、変形可能部分の反転工程の開始時の内圧が、先行体の形成中に到達する圧力の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%であり、変形工程の終了時に少なくとも10%になることを意味する。
【0021】
次に、更なる工程において、完成した容器が金型から押し出される。
【0022】
本発明の容器は、好ましくは熱可塑性ボトルである。好適な熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、及びポリプロピレンが挙げられる。
【0023】
本発明のプロセスは、高度な透明性及び清澄性などの望ましい特性を有する2軸配向のポリプロピレン容器を作り出すため、ポリプロピレンが特に好ましい。ポリプロピレンは、市販銘柄を容易に入手できる。溶融強度、再加熱特性、透明度、加工ウィンドウサイズの好適な組み合わせを備えている材料は、ボレアリス社(Borealis)、BP社(BP)、及びトータル社(Total)などの供給元から入手可能であり、例えばトータル社(Total)のPPR7225である。ポリプロピレンの適切な延伸温度は、例えば約140℃〜150℃である。
【0024】
あるいは、好ましいポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、即ちPETである。好適な材料は、0.8dL/gの固有粘度を有するイクイポリマー(Equipolymer)C93である。
【0025】
本発明の関連において、完成した容器は、変形可能パネルの反転により形成された凹状領域を有し、凹状領域の境界はピボット部分により形成される。凹状領域は、美的又は機能的な特長を提供することができる。凹状の部分は、ハンドル又はグリップとして機能することができ、あるいは本発明の好ましい実施形態では、ピボット部分内の区域は、「シャンパンボトム(champagne bottom)」と呼ばれることがある、容器の反転した基部を提供する。
【0026】
本発明の好ましい実施形態では、容器の内部体積は、先行体の側壁により画定される内部体積より5%〜30%、好ましくは8%〜20%小さい。
【0027】
本発明の更に好ましい実施形態では、容器の内側に変形したパネルの単位区域あたりの平均重量は、容器の側壁の単位区域あたりの平均重量より少ない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填ラインにおいて複数の容器を製品で充填する方法であって、前記容器が側壁領域、変形可能パネル領域、及びピボット領域の3領域を含み、前記ピボット領域が、前記側壁領域と前記変形可能パネル領域との間にあり、前記充填ラインにおいて充填された前記容器の少なくとも2つが、異なる第1及び第2の内部体積を有し、前記充填ラインが、前記第1の体積の容器から前記第2の体積の容器に変更するのに中断時間を実質的に必要としない、方法。
【請求項2】
前記ピボット部分内の区域が、前記容器の基部を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記容器の前記内部体積が、先行体の側壁により画定される内部体積より5%〜30%小さい、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記容器の前記内部体積が、前記先行体の前記側壁により画定される前記内部体積より8%〜20%小さい、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記容器の前記内側に変形したパネルの単位区域あたりの平均重量が、前記容器の前記側壁の単位区域あたりの平均重量より少ない、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
金型キャビティ内で容器を製造するためのプロセスであって、前記金型キャビティの内部が、側壁領域、変形可能パネル領域、及びピボット領域の3領域を備え、前記ピボット領域が、前記側壁領域と前記変形可能パネル領域との間にあり、
i)前記金型キャビティ内で加熱されたかたまりを保持する工程と、
ii)前記かたまりを内圧下で吹き込んで、先行体を形成し、前記先行体が、前記金型キャビティの対応する領域に側壁、変形可能パネル、及びピボット区域を備える工程と、
iii)前記先の先行体を形成する工程の前記内圧を実質的に維持しながら、前記変形可能パネルが前記側壁により画定される前記領域内にあるように、前記金型の移動区域を内側に変形させ、前記変形可能パネルを前記ピボット部分の周りで反転させる工程と、
iv)前記金型の前記移動部分を前記内側に変形したパネルから取り出す工程と、
v)前記金型キャビティから前記容器を押し出す工程と、
を含む、プロセス。
【請求項7】
側壁、変形可能パネル、及びピボット部分を備える容器であって、前記変形可能パネルが凹状であり、かつ前記側壁により画定される前記領域内にあり、前記容器の前記内部体積が、先行体の側壁により画定される内部体積より5%〜30%小さい、容器。
【請求項8】
前記容器の前記内部体積が、前記先行体の前記側壁により画定される内部体積より8%〜20%小さい、請求項7に記載の容器。
【請求項9】
前記容器の前記内側に変形したパネルの単位区域あたりの平均重量が、前記容器の前記側壁の単位区域あたりの平均重量より少ない、請求項7又は8に記載の容器。

【公表番号】特表2010−513157(P2010−513157A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542377(P2009−542377)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際出願番号】PCT/IB2007/055257
【国際公開番号】WO2008/075314
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】