説明

容器の製造方法及び製造装置

【課題】 効率的な手段による堅牢かつ美粧性の高い容器の製造方法及び製造装置を提供すること
【解決手段】 主たる厚みを占める層20と、従たる厚みを占める層10との少なくとも2層を接着層16により貼着して基材を形成する構成において、基材の屈折位置において、不貼着領域15を形成する。層20の屈折位置において所定間隔で層の厚みと略同一な深度の切り込み30の加工をする。その後、該切り込み間領域を除去して、溝部を開穿すると共に溝部を内面にして屈折し、容器を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の製造方法及び装置に関し、特に板状の基材を屈折することにより形成された容器状体又は多重基材からなる板状体の製造方法及び装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
肉厚の箱を生産する際、板紙を180度折り曲げたり、90度折り曲げることが必要となる。180度折り曲げる目的は主として、材質の厚みを2倍にすることにより箱に堅牢性を与えることと、折り曲げられる材質の美粧面側が折り曲げられる外周部分を被覆することにより箱の美粧性を高めること、の2点に集約される。
また90度折り曲げる目的は、直方体としての箱の4側面およびそのうち1面から連繋する底面を形成したり、底面の4辺から連繋する4側面を形成することである。
【0003】
以上のような折り曲げを可能ならしめるには、美粧面とは反対側の面すなわち折り曲げられる内側において、折り曲げる箇所の板紙の体積を溝状に減少させて、折り曲げたとき板紙が干渉しないようにすることが必要である。
【0004】
その溝部を開穿する従来の手段として、以下のものがあげられる。
まず第1に、箱の美粧面と反対の面において、折り曲げ線に沿って丸鋸等によってV字型の溝を切削加工する方法があり、このときV字の開き角度は概ね直角になっており、180度折り曲げるためにはこのV字型溝が2本隣接して平行に配される。また90度折り曲げる場合は同様の溝を1本切削する。
【0005】
第2に、特許文献1に開示されるような、木質系材質を利用する場合には熱間(冷間)プレスによって、美粧面と反対の面において折り曲げ線に沿って同様のV字型の溝をつける方法がある。
【特許文献1】特表2004-501798号公報
【0006】
第3に、特許文献2に開示されるような、あらかじめ面に対し垂直方向に溝穴を刃型で打抜いた肉厚のシートを容器の美粧面を形成する溝のない別のシートに貼合した上でこれを断裁する方法がある。
【特許文献2】特開平08-244141号公報
【0007】
ところで第1の方法によると、幾条もの切削加工を各条毎におこなうこととなり、多大な時間を費やしてしまう。第2の方法は加工対象が木材系材質に限定される上に、熱間プレスの設備は比較的大掛かりなものとなる。第3の方法では溝穴を打抜いたシートにおいて、外周を全て肉厚の箱の組立てに要する溝部で取り囲む設計の場合には、その取り囲まれた部分自身が該シートから脱落してしまう。
【0008】
さらに第1、第2の方法について共通する問題点として以下の点もある。すなわち、隣接平行する2条のV字型の溝によってシートを180度折り曲げた中間加工材について、これをさらに90度折り曲げて4側面を形成する場合の折り曲げ箇所におけるV字型の溝は、180度折り曲げて接着する前には、天地方向が正逆2方向のV字型の溝をあらかじめ設けるかあるいは180度折り曲げ接着後に別途これを開穿加工しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、肉厚の箱において板紙を90度や180度折り曲げて組み立てるために必要な幾条ものタテ・ヨコ方向の溝部を形成する際に、上記第1の方法によるところのV字型の溝を形成するために丸鋸等を使用して溝を各条ごとに切削することによる冗長な加工時間の解消を図る。
また、上記第2の方法によるところの木材系材質に加工対象が限定されてしまう難点および設備が比較的大掛かりになる難点の解消を図る。
【0010】
さらに、第1または第2の方法によりながらシートを180度折りたたみ接着した中間加工材に対してさらに90度の折り曲げをする構造の実現には、V字型溝を部分的に天地正逆に開穿するか、ないしはそれぞれの折り曲げ加工の前に別々に開穿加工しなければならない手間を解消する。
加えて、上記第3の方法によるところの、外周を全て溝で取り囲むことによりその取り囲まれた部分自身がシートから脱落してしまう不都合の解消を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような容器の製造方法を提供する。
請求項1の記載の発明は、板状の基材を屈折することにより容器状体又は多重基材からなる板状体を製造する容器の製造方法を提供する。
基材の厚みのうち主たる厚みを占める第1層と、第1層よりも薄い従たる厚みを占める第2層との少なくとも2層を接着層により貼着して基材を形成する。該構成において、次の各工程を含む。
【0012】
まず、第1層又は第2層の屈折位置において、接着層を形成しない所定幅の不接着帯、若しくは接着層を形成した上で屈折位置の貼着作用を無効にする所定幅の接着無効帯の少なくともいずれかを形成する不貼着領域形成工程を行う。すなわち、接着層を全体に形成する前後に貼着作用を無効にする材料を帯状に塗布又は貼着させる。
【0013】
その後、少なくとも第1層と第2層とを貼着して屈折位置において不貼着領域を有する基材を形成する基材形成工程を行う。
続いて、第1層の屈折位置において所定間隔で少なくとも2本の、第1層の厚みと略同一な深度の切り込み加工をする切り込み加工工程を行う。
【0014】
さらに該切り込み間領域の第1層を除去して、基材上の屈折位置に第1層の厚みに相当する溝部を開穿する溝部開穿工程を行った後、該溝部において第1層側を内面にして屈折加工する屈折工程を行う。
以上の工程により容器を製造する方法を提供する。
【0015】
請求項2に係る発明は、前記切り込み加工工程において、基材の外形形状を形成する外形裁断加工を同時に行うことを特徴とするものである。
【0016】
請求項3に係る発明は、上記製造方法の1回目の屈折工程において、180度の屈折加工により多重基材からなる板状体を形成すると共に、2回目の屈折工程において、所定角度の屈折加工により容器状体を形成するものである。
【0017】
請求項4に係る発明は、第2層の表層面に美粧印刷又は表面保護加工を施すことによって、最終的に完成した容器表面に予め美粧印刷又は表面保護加工を施すことを特徴とするものである。
【0018】
本発明は以上の請求項1ないし4に開示した容器の製造方法を実現するための容器の製造装置を提供することもできる。
またこのような製造方法や製造装置によって製造された容器として提供することもできる。
【発明の効果】
【0019】
以上の発明により次の効果を奏する。
すなわち、本発明によれば、肉厚の箱の製造工程で、貼合された部材を90度や180度折り曲げて組み立てるために必要なタテ・ヨコ方向の溝部を形成する際に、(第1の方法)丸鋸を使用してV字型の溝を各条ごとに切削するために要する加工作業の冗長性、または(第2の方法)熱間プレスによって同様のV字型の溝を形成するときの加工対象の木質系材質への限定およびそのために要する設備の高度化の問題が解消できる。
【0020】
あるいはまた第1および第2の方法による場合、貼合された部材を180度折りたたんでこれを接着したあとに、90度の折り曲げをするときに要するV字型の溝の当該箇所は、180度折りたたむ前には、天地方向が正逆2方向のV字型の溝をあらかじめ設けるか、あるいは90度折り曲げのための溝は180度折り曲げ接着後に別途開穿加工しなければならぬ手間の回避を解消することができる。
以上から本発明は、肉厚の箱の従来からの製造工程に比較してより効率的な製造手段を提供するものである。
【0021】
さらに従来の製造方法のなかに、あらかじめ面に対し垂直方向に溝穴を刃型で溝を打抜いた肉厚のシートを容器の美粧面を形成する溝のない別のシートに貼合した上でこれを断裁する方法があるが、この方法によると型抜きをした単体を多重に折り曲げるだけで箱としての4側面や底面を形成し、これを完成させられるような複雑な構造を実現したい場合は、外周を全て溝で取り囲む肉厚部分が不可避的に発生し、結果的に取り囲まれた部分自身が肉厚のシートから脱落してしまうという不都合の解消ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に示しながら説述する。なお、本発明の実施においては、以下に限定されることなく、任意に変形等を行うことが可能である。
本発明は、箱を容積減少方法において切削でなく、積層する2層の基材のうち主たる厚みを有する方の層(第1層)の一部分を瞬時に剥離せしめることによって、肉厚の箱の組立てに要する溝部の開穿加工効率を向上する。
また、溝部によって外周をすべて囲まれた島状の深層部を複雑に配置設計することによって、180度折り曲げをした中間加工材に対してさらに90度折曲げをするという、多重折り曲げを可能ならしめる溝部の形成を単一の開穿加工工程で達成できるものとした。これらの改良のために以下のような構成を提供する。
【0023】
容器の部材は美粧性ないし表面保護を目的とする第2層である表層部と、容器に重厚性・堅牢性を与える肉厚の第1層である深層部の2層が中心構造となっており、該2層はその間にある接着剤の層によって貼合される。
さらに接着剤の層に直接して積層するように、特定平面領域に接着作用を無効にする材質を塗布する。この材質は製造工程の性格からして表層部の印刷等を施す美粧面(つまり容器の仕上り表面)とは反対面に印刷工程の一環として印刷塗布されるのが合理的である。
【0024】
この特定領域内において閉じたかたちで、肉厚の箱の組立てに要する溝部の外周を形成するのは、深層部側から表層部の厚み以上かつ上記の貼合された部材全体の厚み未満の深度で圧入されるハーフカット刃ないし深層部側から表層部の美粧面の表面まで到達して上記の貼合された部材を打抜く通常の抜き刃である。
ハーフカット刃と通常の抜き刃を1基の刃型板に共存させて1度の型抜き工程で溝部を完成させるか、または刃の配置の複雑度等による加工の難度に応じて、2枚以上の刃型板にハーフカット刃と通常の抜き刃を分散して、複次にわたる型抜き工程を経て溝部を完成させる。
【0025】
以上の構成において型抜き作業を実施すると、特定領域で囲まれた内側では接着作用を無効にする材質によって表層部と深層部は接着されていないため、上記のハーフカット刃および通常の抜き刃によって閉じられた深層部は容易に剥離をし、肉厚の箱の組立てに要する溝部が形成される。
【0026】
図1に示すように、深層部(20)は箱の強度や重厚感を増大させるために相当程度の厚みを有するチップボール紙などを材質に使用する。通常の場合であればこの厚みは1mm〜5mm程度が現実には想定される。
一方、コートボール紙などを材質とした表層部(10)における箱の完成外観表面(10a)に、美粧性を目的とした印刷および表面保護等を目的とした表面光沢加工を施す。印刷方式はオフセット印刷が一般的であるが特に限定しない。
【0027】
次に表層部(10)と深層部(20)の接着作用を無効にする材質(15)を、表層部貼合面(10b)における無接着の特定領域(15a)にオフセット印刷する。このとき箱の完成外観表面(10a)に施される印刷模様の見当に正確に対応した折り曲げをする必要があれば、肉厚の箱の組立てに要する溝部(40)を形成するために接着作用を無効にする材質(15)を印刷する無接着の特定領域(15a)も表裏正しい見当に印刷される必要がある。
【0028】
接着作用を無効にする材質(15)としてはたとえばオーバープリントニスを用い、その印刷方式はたとえばオフセット印刷方式を用いる。また接着剤にはエマルジョン系のものを使用する。接着作用を無効にする材質(15)はエマルジョン系の接着剤の浸透を阻止するために、接着剤の層(16)と接着作用を無効にする材質(15)は接着しない。
【0029】
次に深層部貼合面(20b)に接着剤を一様に塗布して表層部貼合面(10b)と貼合する。貼合された部材(G)の無接着の特定領域(15a)内において、貼合された部材の裏側(20a)側からハーフカット加工をする。
図2に示すように、この加工をするためのハーフカット刃(30)を圧入する深度は、表層部(10)の厚み以上かつ貼合された部材の厚み(T)に満たないものとする。
【0030】
この結果として、ハーフカット刃(30)によって囲まれた深層部(20)は接着作用を無効にする材質(15)によって、表層部(10)と接着されていないので容易に剥離を起こし、図3に示すように箱組立に必要な溝部(40)が開穿される。
箱組立に必要な溝部(40)を利用した具体的実施例に関する説明は以下のようになる。
【0031】
すなわち
i) 貼合された部材(G)を箱の完成外観表面(10a)側から180度折り曲げることによって、完成した箱には貼合された部材(G)の2倍の厚みを与えて箱に堅牢性を与えるとともに、折り曲げた部分の外周部を表層部(10)が被覆することによって、箱に美粧性を与える基本的構造。
ii) 貼合された部材(G)を上記のi)で示した基本的構造を利用して180度折り曲げたあと、さらに90度折り曲げることによって実際に箱の4側面を形成する構造。
iii) 上記ii)で示した構造を発展させて、4側面のうちの一辺から連繋した面を設けた箱の底面を形成することなどによって容器としての箱を形成する構造。
の3つの構造について以下説明する。
【0032】
i)の構造を具体化する手段としては、刃型板において、ハーフカット刃(30)を貼合された部材の厚み(T)の概ね2倍に相当する間隔で2本平行に設置する。
ところで箱の展開状態としての外周を型抜きするためには、貼合された部材の厚み(T)以上の深度で到達する通常の型抜き刃(31)が刃型板に埋設されるが、これを上記ハーフカット刃(30)の平行線の両端に接するように設置する。
【0033】
以上のような刃型板を貼合された部材の裏側(20a)から圧入する。図4のように、上記の2本平行するハーフカット刃の圧入ライン(30a)と通常の型抜き刃の圧入ライン(31a)で閉じられた区域は無接着の特定領域(15a)の中に包含されているので、ハーフカット刃(30)と通常の型抜き刃(31)によって囲まれて型抜きされた深層部(20)が貼合された部材(G)から剥離する。
【0034】
このときの箱組立に必要な溝部(40)の幅はおおむね貼合された部材の厚み(T)の2倍となっているため、図5のように、貼合された部材(G)を表層部(10)側からの180度折り曲げることが可能となる。
このように180度折り曲げて接着をすると、厚みが増大して箱が堅牢になるばかりか、折り曲げ部分に表層部(10)が被覆するので、箱の美粧性も増す。
【0035】
尚、刃が複雑に配置される等によって作業が高難度になる場合は、ハーフカット刃(30)と通常の抜き刃(31)を2枚の刃型板に散在させて2度の型抜き作業をすることによって、微細箇所の仕上り精度を高める方法がとられてもよい。
以上の構造を基本にすると、折り曲げ部分が表層部(10)に被覆されることによって、図6に示されるような断面部分が露出していない概観を呈する板状の部材(P)が容易に製造できる。
【0036】
かくのごとき板状の部材(P)は、しかるべき通常の抜き刃(31)箇所を追加的に施すことによって、勘合のための切りこみ(Q1)および(Q2)を形成することで相互に組み合わせる箱の収納物を仕切る部品ともなり得る。
あるいはまた板状の部材(P)個々をそれぞれ接着することによるだけでも、これは箱の4側面を形成する部品となり得るが、それを可能ならしめるような箱組み立て設備のない場合において箱を製造するためにはii)に示すような構造が要求される。
【0037】
また、このような工程におけるハーフカットを実現するための刃の高さ精度を実現する手段は次のようなものである。
ハーフカット刃(30)は通常の抜き刃(31)に比べて刃高が低くなっているが、両者の刃高の差が表層部(10)の厚みと等しいないしこれをわずかに下回る程度のものとなるようなハーフカット刃(30)と通常の抜き刃(31)を選択して型抜き作業をおこなう。
このような望ましい刃高差を実現するのに適切な高さを有するハーフカット刃(30)は市販されており、本発明の製造装置ではこれを用いることができる。
【0038】
その上でさらに刃の高さを高く微調整させるには、そのようにする必要のある箇所の刃型の背面に薄い紙などを貼り付けるなどすることによって、剥離現象をさらに容易に発生させることが技術的に可能である。
【0039】
ii)の構造を具体化する手段としては以下のようになる。以下、図7を中心にして説述する。
すなわち、上記i)の手段により180度の折り曲げを可能ならしめる溝部2条(40a1)、(40a2)が形成される。このとき該2条の溝部の間隔(L)が、180度の折り曲げを可能ならしめる溝部(40a1)と通常の型抜き刃の圧入ライン(31a)との間隔(L1)と180度の折り曲げを可能ならしめる溝部(40a2)と通常の型抜き刃の圧入ライン(31a)との間隔(L2)の和と等しくなるようにする。
【0040】
これによって該2条の溝部でそれぞれ180度折り曲げたときの両端が、間隙なく接するようになる。また当然ながらこのときには両端部の折り曲げ部分は表層部(10)が被覆するので側面の上下端縁部の美粧性が損なわれないような中間加工材ができる。
【0041】
次にこれを90度折り曲げて箱の4側面を形成するには、以下のようにする。 すなわち180度折り曲げた状態でさらに90度曲げるための溝部を形成するためには、180度折り曲げた結果、続く90度折り曲げに要する溝部に両者が合致するような位置に、一方はハーフカットによる深層部が剥離した溝部、他方は表層部までも抜けた窓状になって抜けた溝を貼合された部材(G)に予め開穿しておく。
【0042】
90度折り曲げる際の外側に位置する方はハーフカットによる深層部が剥離した溝の状態、同内側に位置する方は表層部までも抜けた窓の状態にする。これによって180度折り曲げて接着すると、90度折り曲げを可能ならしめる溝部(40b1)および(40b2)が結果的に形成されることになる。(図8を参照)
この溝の幅は貼合された部材の厚み(T)のおおむね2倍とすることによって、側面を90度折り曲げる角部において、貼合された部材の厚み(T)の2倍に相当する厚みをもつ側面部が精度よく勘合する。
【0043】
以上のような構成を考える場合に、あらかじめ面に対し垂直方向に溝穴を打抜いた肉厚のシートを容器の美粧面を形成する溝のないシートに貼合した上でこれを断裁する方法(特許文献2)が従来用いられていた。溝穴を打抜いた肉厚のシートにおいて、箱組立に必要な溝部(40)によって周囲すべてを囲まれた領域が不可避的に発生し、該シートから脱落するために、その作業はきわめて困難になってしまう問題があったが、これを解消している。
【0044】
尚、90度折り曲げる側面の角部において強度を向上させるには、箱組立に必要な溝部(40)を、90度の折り曲げを可能ならしめる溝部(40b1)と同溝部(40b2)に2分割して側面の折り曲げ線(F)に対して左右交互に配することが有効であり、技術的に可能であるならば、同様の手段で3分割以上にすることも設計されてよい。
【0045】
ついで上記iii)の構造について図9を用いて説述する。
上記ii)で示した構造を利用しながら、4側面のうちの一辺から連繋した面を設けて箱の底面(B)を形成することによって容器としての箱が実際に完成される手段は以下のようになる。
【0046】
すなわちii)で示す4側面のうちの3側面は180度の折り曲げを可能ならしめる溝部2条(40a1)、(40a2)によって、2方向からの180度折り曲げられ、その両端が間隙なく接することによって形成される。一方、残る1つの側面は180度の折り曲げを可能ならしめる溝部(40a1)で折り曲げる際に、180度の折り曲げを可能ならしめる溝部(40a1)と通常の型抜き刃の圧入ライン(31a)との間隔(L1)を2条の溝部の間隔(L)と等しくさせることによって、折り曲げたときの端部が180度の折り曲げを可能ならしめる溝部(40a2)に合致するようになる。
【0047】
他方、180度の折り曲げを可能ならしめる溝部(40a2)からは連繋するように箱の底面(B)を設ける。このとき180度の折り曲げを可能ならしめる溝部(40a1)の幅は貼合された部材の厚み(T)のおおむね2倍であり、貼合された部材の厚み(T)の2倍に相当する側面部(D)に勘合しながら90度折り曲げに供される。
図10のように、箱の底面(B)における他の3辺は深層部(20)が剥離した表層縁辺面(C)が連繋して設けられるようになっており、これを側面の内面側に接着すると箱の底が形成される。
【0048】
尚、箱の底部を形成する手段の別例としては、図11及び図12に示すように、箱の底面(B)を180度の折り曲げを可能ならしめる溝部(40a2)から連繋せずに分離して型抜きして、これを接着する方法がある。
すなわち上記のii)によってなる4側面構造物に対して、別途分離された箱の低部(B1)を接着する。分離された箱の低部(B1)の4辺から深層部(20)が剥離した表層縁辺面(C)が連繋しており、これはハーフカット刃(30)と通常の型抜き刃(31)によって囲まれて型抜きされることによって製造できる。これを4側面構造物の内面側に接着することによって箱の低部を形成するものである。
【0049】
この手段のすぐれている点は、分離された箱の低部(B1)の高さを自由に設計できるので、以下のような利点がある。
すなわち、分離された箱の底面(B1)を4側面の下端縁から少し突出させると美粧性を高められ、また逆に分離された箱の底面(B1)を4側面の下端縁から逆に後退させると該底面が直接接地しないので、美粧性を高めるのみならず、この面の汚損を防ぐ利点も追加される。
【0050】
以上の構造により単に上面に蓋がない肉厚の箱の容器としての基本機能が完成されるが、これを応用すると、身蓋一対の重ね箱になったり、箱の内側面にガイド壁を立ち上げることによって印籠式箱や金属製ヒンジを付設することで開閉式箱など他にも多様な形式の箱の製造が可能となる。
【0051】
以上説述した本発明によって、従来の製造手段よりも効率的な手段による堅牢かつ美粧性の高い肉厚の箱の製造が実現する。
すなわち各側面や容器内部の仕切板といった箱を構築する個々の構成部品を製造するための比較的単純な構造から、各部品の接着によらずにあくまでも単体としての加工品を多重に折り曲げ加工を施すだけで1個の肉厚の箱が完成できる複雑な構造にいたるまでの実現をさせるものである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】貼合の積層構成図
【図2】刃の圧入断面図
【図3】剥離状態の斜視図
【図4】刃の圧入線の斜視図
【図5】180度折り曲げた断面図
【図6】板状の部材の斜視図
【図7】4側面を形成する溝部を設計した平面図
【図8】側面を90度折り曲げた斜視図
【図9】4側面中の1面から底部が連繋する構造を設計した平面図
【図10】4側面中の1面から底部が連繋する構造の斜視図
【図11】分離した底部の平面図
【図12】分離した底部を接着する斜視図
【符号の説明】
【0053】
10 表層部
10a 箱の完成外観表面
10b 表層部貼合面
15 接着作用を無効にする材質
15a 無接着の特定領域
16 接着剤の層
20 深層部
20a 貼合された部材の裏側
20b 深層部貼合面
T 貼合された部材の厚み
G 貼合された部材
30 ハーフカット刃
30a ハーフカット刃の圧入ライン
31 通常の抜き刃
31a 通常の型抜き刃の圧入ライン
P 板状の部材
Q1 勘合の切りこみ
Q2 勘合の切りこみ
40 肉厚の箱の組立てに要する溝部
40a1 180度の折り曲げを可能ならしめる溝部
40a2 180度の折り曲げを可能ならしめる溝部
40b1 90度の折り曲げを可能ならしめる溝部
40b2 90度の折り曲げを可能ならしめる溝部
50a 側面
50b 側面
F 側面の折り曲げ線
L 2条の溝部の間隔
L1 180度の折り曲げを可能ならしめる溝部(40a1)と通常の型抜き 刃の圧入ライン(31a)との間隔
L2 180度の折り曲げを可能ならしめる溝部(40a2)と通常の型抜き刃の圧入ライン(31a)との間隔
B 箱の底面
B1 分離された箱の底面
C 深層部(20)が剥離した表層縁辺面
D 側面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の基材を屈折することにより容器状体又は多重基材からなる板状体を製造する容器の製造方法であって、
基材の厚みのうち主たる厚みを占める第1層と、第1層よりも薄い従たる厚みを占める第2層との少なくとも2層を接着層により貼着して基材を形成する構成において、
第1層又は第2層の屈折位置において、接着層を形成しない所定幅の不接着帯、若しくは接着層を形成した上で屈折位置の貼着作用を無効にする所定幅の接着無効帯の少なくともいずれかを形成する不貼着領域形成工程、
少なくとも第1層と第2層とを貼着して屈折位置において不貼着領域を有する基材を形成する基材形成工程、
第1層の屈折位置において所定間隔で少なくとも2本の、第1層の厚みと略同一な深度の切り込み加工をする切り込み加工工程、
該切り込み間領域の第1層を除去して、基材上の屈折位置に第1層の厚みに相当する溝部を開穿する溝部開穿工程、
該溝部において第1層側を内面にして屈折加工する屈折工程
を含むことを特徴とする容器の製造方法。
【請求項2】
前記切り込み加工工程において、
基材の外形形状を形成する外形裁断加工を同時に行う
ことを特徴とする請求項1に記載の容器の製造方法。
【請求項3】
前記容器の製造方法が、
1回目の屈折工程において、180度の屈折加工により多重基材からなる板状体を形成すると共に、2回目の屈折工程において、所定角度の屈折加工により容器状体を形成する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の容器の製造方法。
【請求項4】
前記第2層の表層面に、美粧印刷又は表面保護加工を施した
請求項1ないし3のいずれかに記載の容器の製造方法。
【請求項5】
板状の基材を屈折することにより容器状体又は多重基材からなる板状体を製造する容器の製造装置において、
基材の厚みのうち主たる厚みを占める第1層と、第1層よりも薄い従たる厚みを占める第2層との少なくとも2層を接着層により貼着して基材を形成する容器の製造装置であって、
第1層又は第2層の屈折位置において、接着層を形成しない所定幅の不接着帯、若しくは接着層を形成した上で屈折位置の貼着作用を無効にする所定幅の接着無効帯の少なくともいずれかを形成する接着層塗布手段と、
少なくとも第1層と第2層とを貼着して屈折位置において不貼着領域を有する基材を形成する基材貼着手段と、
第1層の屈折位置において所定間隔で少なくとも2本の、第1層の厚みと略同一な深度の切り込み加工をするハーフカット手段と、
該切り込み間領域の第1層を除去して、基材上の屈折位置に第1層の厚みに相当する溝部を開穿する切り込み間領域除去手段と、
該溝部において第1層側を内面にして屈折加工する屈折加工手段と
を備えたことを特徴とする容器の製造装置。
【請求項6】
前記容器の製造装置において、
ハーフカット手段と同時に基材の加工を行い、基材の外形形状を形成する外形裁断加工が可能な型抜き手段を備えた
ことを特徴とする請求項5に記載の容器の製造装置。
【請求項7】
板状の基材を屈折することにより形成された容器状体又は多重基材からなる板状体であって、
基材の厚みのうち主たる厚みを占める第1層と、第1層よりも薄い従たる厚みを占める第2層との少なくとも2層を接着層により貼着して基材が形成され、
第1層又は第2層の屈折位置において、接着層を形成しない所定幅の不接着帯、若しくは接着層を形成した上で屈折位置の貼着作用を無効にする所定幅の接着無効帯の少なくともいずれかが形成されていると共に、
少なくとも第1層と第2層とを貼着して屈折位置において不貼着領域を有する基材が構成され、
第1層の屈折位置において所定間隔で少なくとも2本の、第1層の厚みと略同一な深度の切り込み加工を施した後に、該切り込み間領域の第1層を除去して、基材上の屈折位置に第1層の厚みに相当する溝部が開穿され、
該溝部において第1層側を内面にして屈折加工することにより形成された
ことを特徴とする容器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−272680(P2006−272680A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93170(P2005−93170)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(505112679)富士印刷株式会社 (3)
【Fターム(参考)】