説明

容器反転機構を備えたロータリーリンサー

【課題】 信頼性、保全性が高く、容器を汚染する可能性がある摺動面を限定した、簡潔で、組立、調整の容易な容器反転機構を備えたロータリーリンサーを提供すること。
【解決手段】 反転するグリッパを、基台の両縁から前方上方向に突出した二本の平行なアーム端に固定したピン軸(支点ピン)で回転自在に保持し、また、当該グリッパの中ほどに設けた、前記支点ピンに平行なピン軸(力点ピン)の両突出端に、フック軸の上端に固定されたフックを係合させ、当該フック軸を滑動自在に案内するブッシュ軸受を、前記基台から下方に突出し前方向に湾曲した板先端部に設けられた一対の突出ボスに、一対の短ピンで揺動自在に保持して形成した、連接棒、クランク(グリッパをクランクアームと見做し、フック軸を連接棒と見做す)機構を、反転の主機構とする容器反転機構を備えたロータリーリンサー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清涼飲料や医薬の壜詰め製品の製造ラインにおける、回転式容器洗浄装置(以後、ロータリーリンサーと称す)の容器反転機構に関する。特に、洗浄後の容器内部を洗浄し濯ぐために、搬送されてきた正立容器の首部をグリッパで把持し、グリッパごと反転、倒立させ、次いで、下から無菌水の噴射とその後の排出を能率良く行わせた後に、再びグリッパを復転させ、容器を正立にして把持を解除し、搬送を可能にさせる容器反転機構を備えたロータリーリンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の容器反転機構には、基本的に二通りの機構が採用されていた。第一の機構は、グリッパの回転軸にピニオンを付設しておき、円形固定台上の同心円形溝カム、或いは固定円板の周近傍を一周する溝カムにより、当該ピニオンに噛み合うラックを駆動して、反転或いは復転を行わせる機構である。第二の機構は、グリッパにアームを付設しておき、その先端にあるガイドを、固定台を一周する反転、復転カムレールに係合させる機構である。いずれの機構も、円形の固定台を一周する連続した立体カムを利用することが、当該装置の加工、組立、調整等に多大な工数と労力を要する問題を含み、且つカムとカムフォロワー間のガタや、ラック、ピニオンのバックラッシに起因する不円滑な作動等の問題を提起していた。
【0003】
従来のラック、ピニオン機構による反転グリッパは、円形回転台の周縁部に等間隔に設けられた容器反転装置のフレームに、回転軸を持ったグリッパを水平に保持させ、軸端に固定したピニオンと、当該フレームに案内されて昇降運動をする、ラックを噛み合わせる構造になっており、当該ラックの昇降運動は、円形回転台の回転に伴い、固定円板の外周に付設した一周連続溝カムが、ラックに直結した駆動ロッドの先端のカムフォロワーを案内して行わせる機構である(特許文献1参照方)。前記の一周連続溝カムは、比較的大直径の固定円板の外周に付設される立体カムであるため、加工、組立共に精度を出すことが難しく、多大な工数と労力を費やしても、カムフォロワーとの適合精度には不満が残ることが多い。
【0004】
前記カムフォロワーは、円形回転台の周縁部に等間隔に設けられた複数の容器回転装置の一部であり、駆動ロッド、ラック、滑りガイド、フレーム等を経由して円形回転台に連結している複雑な部品組立体の入力端と見なされ、前記一周連続溝カムとの係合精度は、カムフォロワー個体ごとに異なるのが普通である。カムとカムフォロワーの係合精度を、全ての容器反転装置について、所定の範囲内に収めるための調整にも大きな工数と労力を必要とする。
また、前記のカムとカムフォロワーの係合精度の許容範囲、或いはピニオンとラックを噛み合わせる際のバックラッシの値如何では、容器反転装置の円滑な作動を妨げ、ラックや駆動ロッド等質量系の往復運動が招く慣性力及び速度変動、更には、ピニオン、ラック間の潤滑及び潤滑剤による汚染の問題等、装置の信頼性を損なう要因が多い。
【0005】
また、従来のカムレール方式は、円形回転体の周辺部に、等間隔に直立する支持柱の頂部穴に嵌入されたピンを支点として、水平から水平へと180度往復回転するグリッパを設け、当該グリッパの主アーム下部にカムレールを挟むように一対のカムフォロワーを付設した機構である(特許文献2参照方)。容器反転機構では、支持柱とグリッパの主アームをピンで止めた二リンク構造に、カムフォロワーを付設した精度の出し易い構成であり、加工、組立、調整は容易で、滑らかな作動が得られる。カムレールは、固定台から直立する複数本の支柱によって固定され、前記円形回転体の外周部に沿って無端状に形成された丸棒であり、容器の正立ゾーンと倒立ゾーンとで前記の支点ピンを中心としてグリッパが180度回転するように捻ってある。円環状の丸棒を曲げ或いは捻って立体的に加工し、尚且つ、固定台から直立する複数の支柱によって、カムレールの形態を固定し、精度を維持するための加工、組み付け、調整は、歪み易い板金部品の組み合わせ構成のため、多大な工数と熟練労力を必要とする。
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第2512024号公報(図3)
【特許文献2】特公平5−85227号公報(第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ロータリーリンサーは、容器に飲料等を充填するに先立って洗浄、水切りの工程を行う装置であるので、処理を受ける容器は、いずれも工程の所要時間以上に装置内に留まる必要があり、多数の容器反転装置を備えた比較的大直径の円形回転装置となる。従って、本発明は、信頼性、保全性が高く、容器を汚染する可能性がある摺動面を限定した、簡潔で、組立、調整の容易な容器反転機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題点に対し、本発明は以下の各手段により課題の解決を図る。
(1)第1の手段の容器反転を備えたロータリーリンサーは、容器を円形回転台の周縁部に等間隔に配置したグリッパで把持して前記回転台の回転にともない前記容器を速やかに反転倒立させ、洗浄液を下から噴射する洗浄工程、及び洗浄液を排出する水切り工程を行うロータリーリンサーにおいて、前記グリッパを回転可能に軸支する基台を前記回転台に固定し、同基台の回転台周縁より突出する部分を上方向に突出する二股状のアームと下方向前方に突出する二股状の湾曲板とで構成し、前記アームの先端部に水平な支点ピンを挿入するとともにグリッパを保持するグリッパフレームを同支点ピンに回転自在に保持し、同グリッパフレームの反回転台側に前記支点ピンに平行な力点ピンを挿入するとともに同力点ピンの両突出端にU字形状のフックを回転自在に支持し、同フックの下部にフック軸を固定するとともに同フック軸からの力及び変位をグリッパフレームに伝達するよう構成し、同フック軸の上部に円筒状の軸受を外挿し、同軸受の上部に前記湾曲板の下端を回転自在に軸支し、同フック軸の下部にワッシャーを介してフック軸を軸中心とする第1ローラーを回転可能に取付け、同フック軸の最下端にフック軸の軸中心に直交する軸中心を有する第2ローラーを取付け、前記ワッシャーと前記軸受の間に圧縮ばねを装填し、前記第1ローラーを水平方向から案内する2個の横カムを設け、前記第2ローラーを下方から案内する板カムと、前記フック軸を同板カムにより押し上げ、力点ピンに支点ピン周りの回転力を与えてグリッパを支点ピンの周りに回転させ、次いで、水平位置のグリッパが相当程度上方に回転して、押し上げカムの作用が弱くなると、横カムがフック軸を横に押すことにより、グリッパに横方向の回転力を加え、さらに回転を継続させつつ180度まで反転させるように構成したものである。
【0009】
(2)第2の手段の容器反転機構を備えたロータリーリンサーは、上記(1)の手段において、前記圧縮ばねによりフック軸を常に引き下げることにより、グリッパを反転前の水平姿勢と反転後の水平姿勢において、ストッパに圧接するようにして安定させるものである。
【0010】
(3)第3の手段の容器反転機構を備えたロータリーリンサーは、上記(2)の手段において、反転して水平姿勢に到達する前に補助カムを作用させ、前記フック軸に付設した圧縮ばねによる圧接加速度を緩和させるように制御するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の容器反転機構は、加工、組立、調整に多大な工数と労力を要する無端状の立体カムを廃し、扇形の板カムの組み合わせで対処することにより、装置全体の製作、納入費用を切り下げる効果がある。また、運転、保全費においても、不具合を生じた板カムのみを修理或いは交換するだけで良く、従来のカム全体の修理、交換に比較して、停台時間、補修費用ともに縮減することができる効果がある。
【0012】
本発明の容器反転機構では、組み立て後であっても、カムと係合していない位置のグリッパが多数あるので、グリッパ単独での寸度調整が容易にできる効果がある。また、それぞれのカムについても、相互に直接の結びつきが無いので、単独に調整することが可能であり、微調整が容易になる効果がある。
【0013】
本発明の容器反転機構は、加工、組み立てに精度を出し易く、滑らかな作動が特徴のリンク機構であり、板カムの加工、仕上げの容易さとの相乗効果で、ガタの少ない滑らかな反転と復転が得られる効果がある。また、グリッパの開閉動作位置(容器が正立時)或いは反転位置(容器が倒立時)の何れにおいても、フック軸に仕込まれた圧縮ばね及びフック、フック軸、カムフォロワー等の自重による下向きの力の作用で、グリッパはストッパに圧接されていてガタつくことが無く、容器を定位置に保持し、工程の確実な実行を助ける効果がある。
【0014】
本発明の容器反転機構では、容器の汚染源となる潤滑剤を使う摺動面が、フック軸とその軸受のみであり、場所も常に容器口より下に位置しているために、汚染の可能性を最小にする効果がある。リンクのジョイントについては、潤滑剤を必要としないブッシュ軸受を使用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施形態例を図に基づいて説明する。図1は反転グリッパが正立容器を把持したときの側面図、図2は図1におけるA矢視図、図3は図1のC−C断面図、図4は図1のD−D断面図、図5は押し上げ用の板カム、横カム及び補助用の板カム等の板カムの円形固定板上の配置や関連工程、装置を示す模式平面図、図6、図7、図8、図9は、それぞれ容器が垂直(正立状態)から60度、90度、120度、180度(倒立状態)回転したときの側面図を示す。
【0016】
図1、図2、図3及び図9におけるグリッパ1の基台は、ロータリーリンサーの円形回転台30の周縁部にボルト締めされる長方形板1aと、長方形板1aの両縁から前方の上方向に突出する平行な二本のアーム1b、及び分岐して下方向の前方に突出する湾曲板1cから成り立っている。図4に示すように、湾曲板1cの先端部の幅が広がった中央部分を、先端から方形に切り欠いて両側に形成されるアーム形突起1dには、長方形板1aの長さ方向の中心線に直角な軸ピン穴H2を開け、平行な二本のアーム1bの先端にも同一中心線の軸ピン穴H1を開けて、上、下の軸ピン穴H1、H2の中心線が互いに平行、且つ、一つの垂直平面D−D(図1参照方)内にあるように構成しておく。
【0017】
グリッパ1は、グリッパフレーム2、抑え板3、一対のネックホルダー4、5及びばね26他の付属部品から組み立てられた装置である。グリッパフレーム2には、グリッパ1の基台に設けた軸ピン穴H1(図1及び図4に示す)に相応する支点ピン穴2aが設けてあり、軸ピン穴H1を通して挿入、固定された支点ピン6の周りに、グリッパフレーム2が180度以上の角度に亙って回転し得るように構成されている。また、グリッパフレーム2の長手方向のほぼ中央で、前記軸ピン穴H1と同じ高さに力点ピン穴H3を設けておき、挿入される力点ピン7に力を加えることによって、支点ピン6の周りに回転力を発生させるよう構成されている。
なお、グリッパフレーム2には、当たり面2fが、抑え板3にはストッパ3aが夫々付設されており、容器Yの正立及び倒立の位置調整が可能にしてあるが、詳細説明は後述する。
【0018】
前記の力点ピン7の両端を把持、固定し、力を加えてグリッパ1に回転力を与えるのは、フック軸10の上端に結合、固定されているフック8であり、丁度、グリッパフレーム2をクランクアームと見做したときの滑り子クランク機構における連接棒のような作用をする。なお、フック軸10の上部には、フック軸受11が付設されており、フック軸10を直線滑動自在に支持しながらも自体は、グリッパ1の下部の湾曲板1cのアーム形突起1dに設けた軸ピン穴H2に挿入される一対のねじ付きピン20によって、揺動回転可能に取り付けられている。
フック軸10の下部には、回転軸をフック軸中心とする第1ローラー14が、下端には、回転軸をフック軸10及び前記軸ピン穴H2とそれぞれ直交させる第2ローラー16が付設されており、フック軸受11と下部ローラー用のワッシャー15の間には、圧縮ばね25が設けてあるので、フック軸10及びフック8は、常に下向きに引かれている。フック軸10の下部とワッシャー15の外周には軸受17が組み付けられている。
【0019】
図1に示すように、正立する容器Yを把持したときのグリッパ1は、前記の圧縮ばね25、フック8、フック軸10、容器Y及びグリッパ1自体の重量等により下向きに引かれるので、ストッパ3aがグリッパ1の基台に固定されている調節ボルト55の頭に圧接されて水平姿勢を保つ。グリッパが反転して容器Yを倒立姿勢に把持したときも同様に下向きの力が作用し、図9に示す通り、グリッパフレーム2の上部の当たり面2fがグリッパ1の基台に固定されている調節ボルト53の頭に圧接され、水平姿勢で安定する。調節ボルト53、55は、頭の位置を調節することによって、グリッパ1の把持位置と容器の倒立姿勢を微調整することができる。
【0020】
グリッパ1に作用している下向きの力を上向きの力に切り替え、反転運動を開始させるには、円形固定板40上に配置された板カム41(図5に位置を示す)から、円形回転台30と共に旋回するフック軸10の下端の第2ローラー16に押し上げ力を与えれば良い。グリッパ1が、支点ピン6を回転の中心として相当程度反転運動を進めると(図6参照方)、フック8から力点ピン7を経由して、グリッパフレーム2に伝達される力の回転方向成分は急速に小さくなり、遂には、グリッパフレーム2の直立姿勢(図7参照)で回転力が零になる。この中立状態では、フック軸受11が圧縮ばね25を圧縮して下降する。このとき、第2ローラー16は、板カム41からはフリーの状態で、第1ローラー14が横カム12、13により挟持される。グリッパ1に90度を超えて反転運動を継続させるためには、板カム41からの押上げ力を、横カム13から第1ローラー14、フック軸10、フック8、力点ピン7と経由して、グリッパフレーム2に伝えられる回転力に切り替える必要がある。図6、図7、図8、図9は反転運動の過程で、押し上げ用の板カム41及び横カム12、13等がフック軸10の第1ローラー14、16等に作用する状態を示したものである。なお、横カム12、13は、図5、図6に示すように、第1ローラー14を挟んで配置される。
【0021】
図8、図9においては、円形固定板40に付設される補助板カム42が使用されているが、グリッパ1が90度を越えて反転運動を継続すると、間もなくフック軸10に作用する下向きの力の影響が顕著になり、グリッパフレーム2は横カム12、13の規制から逸脱して回転を加速させ、前出の当たり面2fを調節ボルト53の頭に衝突させる。この際、補助板カム42のリフトによる押上げ力で釣り合わせて、グリッパフレーム2の上部当たり面2fを、調節ボルト53の頭に、緩やかに圧接させる。
【0022】
図5は、前記の押し上げ用の板カム41、横カム12、13及び補助板カム42等を円形固定板40の上に配置した場合の模式平面図であるが、同時にロータリーリンサー50が司る工程の割り当てと入口、出口及び搬送コンベア等を示したものである。
入り口のスターホイール45からロータリーリンサー50に入った容器Yは、グリッパ1のネックホルダー4、5によって把持され、直ちに反転し(反転区間ア)、倒立状態に置かれる。
倒立した容器Yは、円形回転台30によってグリッパ1と共に次の洗浄区間イへ搬送され、下に設けられた無菌水噴出ノズル60から噴射される液により、容器Y内面の洗浄を受ける。同ノズル60から噴出した無菌水は、容器Yの内面を濯いで次々と下へ落ちて行き、容器Yの口から排出され滞留が無いので、効率の良い洗浄ができる。
【0023】
次いで、倒立した容器Yが水切り区間ウに搬送されると、前記ノズル60からの噴出水が無くなり、残留した無菌水が重力の作用で急速に流出して行って水切りが行われる。容器Y内面の無菌水の残存量が規定値以下になるころ、倒立した容器Yは次の復転区間エに入る。
復転区間エにおいて、倒立した容器Yは、グリッパフレーム2、フック8、フック軸10、フック軸受11等からなるリンク機構と板カム41、横カム12、13、補助板カム42等の板カムからの作用を、反転区間アと逆の順序で受けて復転し、正立姿勢に戻って出口スターホイール46に係合すると同時に、グリッパのネックホルダー4、5が把持を解除して、容器Yを出口スターホイール46経由搬送コンベア47へ送り出す。
【0024】
本発明に係る上記実施例の特徴点は以下のようなものである。
(1)反転するグリッパを、基台の両縁から前方上方向に突出した二本の平行なアーム端に固定したピン軸(支点ピン)で回転自在に保持し、また、当該グリッパの中ほどに設けた、前記支点ピンに平行なピン軸(力点ピン)の両突出端に、フック軸の上端に固定されたフックを係合させ、当該フック軸を滑動自在に案内するブッシュ軸受を、前記基台から下方に突出し前方向に湾曲した板先端部に設けられた一対の突出ボスに、一対の短ピンで揺動自在に保持して形成した、連接棒、クランク(グリッパをクランクアームと見做し、フック軸を連接棒と見做す)機構を、反転の主機構とする。
【0025】
(2)フック軸のフックと反対側の下端部には、前記の二本のピン軸に直角且つ水平な回転軸を持つローラー(カムフォロワー)が付設されており、その上部の軸上には、回転の中心軸をフック軸の中心とする別ローラーが付設されている。フック軸には、圧縮ばねが仕込まれており、フック及びフック軸は、重力とばね力によって、常に下方向に引かれている。グリッパを、前記下向き力に抗して水平に保つために、当該グリッパにはストッパが、また、基台の前下部には調節ボルトが付設される。前記下向き力は、当該グリッパが反転した場合にも作用するので、基台の長方形板部に調節ボルトを付設し、当該グリッパの上部の加工面に当てるように構成する。
【0026】
(3)前記フック軸の下端のローラーをカムリフトで押し上げると、当該グリッパの中ほどに保持された力点ピンに、フックを経由して上向きの力が加わり、グリッパは前記の支点ピンを中心として回転を始める。回転角度が直角に近付くと、カムからフック及び力点ピンを経由して当該グリッパに加わる力は、回転モーメント成分の少ない効率の悪いものに変化していく。反転運動を継続させるためには、前記フック軸の下部に横向きの力を加えて、前記のフック軸及び力点ピンにグリッパの回転モーメント成分を与えればよい。フック軸の下部には、回転の中心軸をフック軸の中心とするローラーが付設されているので、当該グリッパが、水平位置から相等程度上方に回転したときに、横カムが前記ローラーに当たり横力を与えるように構成する。
【0027】
(4)当該グリッパが、前記の押し上げ用の板カム及び横カム等の作用により、水平位置から反転を始めて、円滑に回転を継続し垂直姿勢を通り過ぎると程なく、フック軸に仕込まれた前記圧縮ばねと自重による下向き力が、横力に優越するようになる。この状態では、回転は加速しグリッパのストッパが前記水平位置調節ボルトに当接するので、それを防ぐために押し上げ用の補助板カムを付設する。
【0028】
(5)押し上げ用板カム、押し上げ用補助板カム及び横カム等は、全て、円形回転台の下に平行に設置される円形固定板の上の正確な位置に付設される扇形の板カムである。付設位置は、図5に示される通り、容器の反転区間ア(正立から水平を経て倒立に至る)と復転区間エ(倒立から水平を経て正立に至る)の二領域内であり、入り口スターホイール近くと出口スターホイールの近くになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る容器反転機構で、正立容器を把持して反転運動を開始する直前の側面図である。
【図2】図1のA矢視図である。
【図3】図1のC−C断面図である。
【図4】図1のD−D断面図である。
【図5】円形固定板の模式平面図で、グリッパの反転運動を制御する押し上げ用の板カム、横カム、補助板カム等の板カムの配置や、ロータリーリンサーが司る工程の割り当て区間と入口、出口及び搬送コンベア等を示したもの。
【図6】容器を正立状態から60度回転したときの反転機構の側面図である。
【図7】容器を正立状態から90度回転したときの反転機構の側面図である。
【図8】容器を正立状態から120度回転したときの反転機構の側面図である。
【図9】容器を正立状態から180度回転して倒立状態にしたときの反転機構の側面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 グリッパ
1a 長方形板
1b アーム
1c 湾曲板
2 グリッパフレーム
2a 支点ピン穴
2f 当たり面
3 抑え板
3a ストッパ
4 ネックホルダー
5 ネックホルダー
6 支点ピン
7 力点ピン
8 フック
10 フック軸
11 フック軸受(軸受)
12 横カム
13 横カム
14 第1ローラー
15 ワッシャー
16 第2ローラー
20 ねじ付きピン
25 圧縮ばね
30 円形回転台
40 円形固定板
41 板カム
42 補助板カム
50 ロータリーリンサー
53 調節ボルト
55 調節ボルト
60 無菌水噴出ノズル
H1 軸ピン穴
H2 軸ピン穴
H3 力点ピン穴
ア 反転(正立→倒立)区間
イ 洗浄区間
ウ 水切り区間
エ 復転(倒立→正立)区間
Y 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器を円形回転台の周縁部に等間隔に配置したグリッパで把持して前記回転台の回転にともない前記容器を速やかに反転倒立させ、洗浄液を下から噴射する洗浄工程、及び洗浄液を排出する水切り工程を行うロータリーリンサーにおいて、前記グリッパを回転可能に軸支する基台を前記回転台に固定し、同基台の回転台周縁より突出する部分を上方向に突出する二股状のアームと下方向前方に突出する二股状の湾曲板とで構成し、前記アームの先端部に水平な支点ピンを挿入するとともにグリッパを保持するグリッパフレームを同支点ピンに回転自在に保持し、同グリッパフレームの反回転台側に前記支点ピンに平行な力点ピンを挿入するとともに同力点ピンの両突出端にU字形状のフックを回転自在に支持し、同フックの下部にフック軸を固定するとともに同フック軸からの力及び変位をグリッパフレームに伝達するよう構成し、同フック軸の上部に円筒状の軸受を外挿し、同軸受の上部に前記湾曲板の下端を回転自在に軸支し、同フック軸の下部にワッシャーを介してフック軸を軸中心とする第1ローラーを回転可能に取付け、同フック軸の最下端にフック軸の軸中心に直交する軸中心を有する第2ローラーを取付け、前記ワッシャーと前記軸受の間に圧縮ばねを装填し、前記第1ローラーを水平方向から案内する2個の横カムを設け、前記第2ローラーを下方から案内する板カムと、前記フック軸を同板カムにより押し上げ、力点ピンに支点ピン周りの回転力を与えてグリッパを支点ピンの周りに回転させ、次いで、水平位置のグリッパが相当程度上方に回転して、押し上げカムの作用が弱くなると、横カムがフック軸を横に押すことにより、グリッパに横方向の回転力を加え、さらに回転を継続させつつ180度まで反転させるように構成したことを特徴とする容器反転機構を備えたロータリーリンサー。
【請求項2】
請求項1に記載する容器反転機構を備えたロータリーリンサーにおいて、前記圧縮ばねによりフック軸を常に引き下げることにより、グリッパを反転前の水平姿勢と反転後の水平姿勢において、ストッパに圧接するようにして安定させることを特徴とする容器反転機構を備えたロータリーリンサー。
【請求項3】
請求項2に記載する容器反転機構を備えたロータリーリンサーにおいて、反転して水平姿勢に到達する前に補助カムを作用させ、前記フック軸に付設した圧縮ばねによる圧接加速度を緩和させるように制御することを特徴とする容器反転機構を備えたロータリーリンサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−326454(P2006−326454A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152251(P2005−152251)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(505193313)三菱重工食品包装機械株式会社 (146)
【Fターム(参考)】