説明

容器

【課題】収容された内容物を容器ごと加熱するに際し、電磁調理器と電子レンジのいずれでも加熱することができ、しかも、電子レンジで加熱しても容器の損傷をより確実に防止することができる容器を提供する。
【解決手段】高周波磁界により渦電流が誘起されて発熱する金属からなる金属層10と、金属層10を覆って積層された樹脂層11とを少なくとも備えたシート材を所定形状の容器1に成形するとともに、所定の周波数のマイクロ波が照射されたときに金属層10が過剰に発熱して樹脂層11を損傷してしまうおそれのある部位に誘電体層6を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容された内容物を容器ごと加熱するにあたり、電磁調理器と電子レンジのいずれでも加熱することができる容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電磁調理器と称される誘導加熱を利用した加熱調理機器が、安全性、清潔性、利便性、経済性などの観点から、飲食業などにおける業務用のみならず、一般家庭においても広く普及するようになってきている。
このような状況下、例えば、特許文献1は、電磁誘導により発熱する発熱シートが積層された多層シートから構成されている誘導加熱調理用容器を開示する。
【特許文献1】特開2004−344410号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、調理品を再加熱して暖めたり、加熱によって完成する半調理品を加熱調理したりするための加熱調理機器としては、電子レンジがより一般的に利用されている。このため、電磁調理器が広く普及してきているとはいっても、未だ電子レンジには及ばないのが現状であり、電磁調理機器は所有しないが、電子レンジなら所有しているというユーザーも多い。そのようなユーザーでも利用できるように、電磁調理器用の加熱調理容器とはいっても、電子レンジでも使用可能であることが望まれ、特許文献1の容器は、電子レンジにも使用できるとされている。
【0004】
しかしながら、本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、電磁調理器で使用できるようにするために、高周波磁界により渦電流が誘起されて発熱する金属層を備えた容器を電子レンジで使用すると、金属が容器表面に露出しないようにしてあったとしても、マイクロ波の照射によって局所的に過剰に発熱し、容器を損傷してしまうことが稀に起こり得ることを見出した。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、再加熱によって暖めてから食するようにされた調理品や、加熱によって完成する半調理品などが収容される容器であって、収容された内容物を容器ごと加熱するに際し、電磁調理器と電子レンジのいずれでも加熱することができ、しかも、電子レンジで加熱しても容器の損傷をより確実に防止することができる容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る容器は、金属層と、前記金属層を挟んで積層された樹脂層とからなり、マイクロ波が照射されたときに前記金属層が過剰に発熱して前記樹脂層を損傷してしまうおそれのある部位に誘電体層を設けた構成としてある。
【0007】
本発明においては、
(1)容器が開口部、胴部、底部を有し、容器開口部の周辺に誘電体層が設けられたこと、
(2)容器開口部の周縁に沿ってフランジ部が形成され、フランジ部に誘電体層が設けられたこと、
(3)金属層が、スチール箔からなること、
(4)誘電体層を形成する誘電体の比誘電率が5以上であること、
(5)誘電体層を形成する誘電体が、セラミックであること、
が好適である。
【発明の効果】
【0008】
このような構成とした本発明に係る容器は、収容された内容物を容器ごと加熱するに際し、電磁調理器と電子レンジのいずれでも加熱することができる。しかも、所定の周波数のマイクロ波が照射されたときに金属層が過剰に発熱して樹脂層を損傷してしまうおそれのある部位に予め設けた誘電体層により、当該部位及びその近傍のマイクロ波磁界を弱めることができるので、電子レンジで使用する際の局所的な過剰発熱をより確実に防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
ここで、図1は、本実施形態に係る容器の概略断面図である。
なお、作図上、図1では容器1の肉厚などは誇張してある。
【0010】
図1に示す容器1は、平坦な底部2と、底部2の周りを囲むように立ち上がる胴部3と、容器開口部の周縁に沿って形成されたフランジ部4とからなる容器形状を備えている。フランジ部4は、胴部3の上端縁からほぼ水平に張り出すように形成されており、図中二点鎖線で示す蓋材5をフランジ部4の天面にヒートシールすることで、容器1に収容された内容物が密封されるようになっている。
【0011】
容器1に収容される内容物としては、再加熱によって暖めてから食するようにされた調理品や、加熱によって完成する半調理品などを例示することができる。容器1の具体的な形状は、図示するものに限らず、このような内容物に応じた使い勝手などを考慮して種々の形状とすることができる。また、容器1の容量も内容物に応じて適宜変更することができる。
なお、容器1に収容された内容物を密封するためにフランジ部4にヒートシールされる蓋材5としては、この種の容器に利用可能なヒートシール性を有する単層又は多層構成のフィルム材を用いることができる。このような蓋材5は、通常、内容物を電子レンジで加熱するに際して容器1から取り外される。
【0012】
本実施形態において、容器1は、高周波磁界により渦電流が誘起されて発熱する金属層10と、このような金属層10を覆って積層された樹脂層11とを少なくとも備えたシート材を、公知の成形技術により所望の容器形状に成形することによって製造することができる。金属層10を覆う樹脂層11は、金属層10を形成する金属が容器表面に露出しないように、金属層10の表裏両面を覆う被覆層として形成される。
なお、図2に、図1中鎖線で囲む部分を拡大して示す。
【0013】
樹脂層11を形成する樹脂としては、例えば、ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されない。樹脂層11の厚みは、金属層10を保護するという観点から、20〜100μm程度とするのが好ましい。
【0014】
金属層10に樹脂層11を積層するには、例えば、ヒートシール、押出ラミネート、ドライラミネート、ウェットラミネート、ホットメルトラミネートなどによることができる。また、図2に示すように、接着剤層12を介して積層する場合には、耐熱性の接着剤を用いるのが好ましく、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、オレフィン系ホットメルト接着剤などを用いることができる。接着剤層12の厚みは、十分な接着力が発揮できるように、1〜10μm程度とするのが好ましい。
【0015】
金属層10には、電磁調理器などが備える電磁誘導加熱コイルから発生する高周波磁界により渦電流が誘起され、その電気抵抗によりジュール熱が生じて発熱し得る導電性の金属が用いられる。このような金属層10としては、通常の電磁調理器によって適切に発熱する抵抗値を持ち、磁束を通しやすい大きな比透磁率を持っているという理由から、スチール箔を用いるのが好ましいが、アルミニウム箔、スズメッキスチール箔などの他の金属箔を用いてもよい。また、金属層10は、金属蒸着膜層として形成することもできる。金属層10の厚みは、効率のよい誘導加熱が可能となるように、7〜100μm程度とするのが好ましい。
【0016】
本実施形態にあっては、このような金属層10を備えたシート材を所望の容器形状に成形することで、電磁調理器による誘導加熱によって、容器1に収容された内容物を加熱できるようにしている。また、樹脂層11が金属層10の表裏両面を覆って金属層10を形成する金属が容器表面に露出しないようになっているため、収容された内容物を容器1ごと電子レンジで加熱することもできる。
【0017】
しかしながら、前述したように、金属からなる金属層10を備えた容器1を電子レンジで使用すると、金属が容器表面に露出しないようにしてあったとしても、マイクロ波の照射によって局所的に過剰に発熱し、容器1を損傷してしまうことが稀に起こり得る。本発明者らの検討によれば、このような不具合が生じるのは、マイクロ波磁界に長時間晒されると、金属層10の金属に局所的に渦電流が誘起されてしまい、そのような部位が過剰に発熱してしまうためであると推測される。特に、図1に示す容器1のようなフランジ部4が形成された容器形状のものにあっては、フランジ部4の一部が局所的に過剰に発熱してしまうことがある。
【0018】
このため、本実施形態では、所定の周波数のマイクロ波(例えば、電子レンジで通常利用される2.45GHzのマイクロ波)が照射されたときに、金属層10が過剰に発熱して樹脂層11を損傷してしまうおそれのある部位に誘電体層6を予め設けることとし、図1に示す容器1では、フランジ部4の全周にわたって誘電体層6を設けている。これにより、電子レンジで使用するに際し、フランジ部4及びその近傍のマイクロ波磁界を弱めることができ、フランジ部4に位置する金属層10の局所的な過剰発熱をより確実に防ぐことが可能となる。
なお、図1に示す容器1において、誘電体層6を設ける部位は、蓋材5のヒートシールを阻害しないように、フランジ部4の裏面側としている。誘電体層6は、容器1の内面側と外面側のいずれか一方、又は両方に設けてもよく、誘電体層6を設ける部位に応じて任意に選択することができる。
【0019】
誘電体層6を形成する誘電体としては、比誘電率が5以上のものを用いるのが好ましく、比誘電率が大きい誘電体を用いることで、誘電体層6の厚みを薄くしても十分な効果が得られるようになる。誘電体層6の厚みは、用いる材料の比誘電率にもよるが、重量を軽くし、アプリケーションをしやすく、また、低コストという理由から、50〜1000μm程度とするのが好ましい。
【0020】
また、誘電体として用いる具体的な材料としては、耐熱性のある酸化チタン、アルミナ、チタン酸バリウムなどのセラミックを挙げることができる。これらの中でも、コストが安価という理由から、酸化チタンを用いるのが好ましい。
【0021】
このような誘電体層6を設けるにあたっては、上記材料を所定形状に焼結したものを樹脂層11に貼り付けたり、上記材料を樹脂層11にコーティングしたりしてもよい。また、上記材料を樹脂層11に部分的に練り込んで、樹脂層11と一体となるように誘電体層6を設けることもできる。
【実施例】
【0022】
次に、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
【0023】
75μmのスチール箔を金属層とし、これを挟んで内面に70μm、外面に40μmのポリプロピレンからなる樹脂層をラミネートしたカップ状容器を用意した。用意した容器の形状は、胴部の深さが30mm、内径が65mm、フランジの外径が78mmであった。
この容器の開口部の周縁に沿って形成されたフランジ部の裏面に、厚さ0.5mm、幅5mmのアルミナリングを誘電体層として設けた。
このようにした容器に内容物を入れ、電子レンジにて出力950Wで30秒間加熱したところ、内容物は温まり、フランジ部には焦げなどの異常加熱は認められなかった。
【0024】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
【0025】
例えば、前述した実施形態にあっては、金属層10の表裏両面を覆うように樹脂層11を積層しているが、金属層10を形成する金属が容器表面に露出しないようになっていれば、酸素吸収剤を混入した酸素吸収層、水分吸収材を混入した水分吸収層などの層をさらに積層することもできる。
【0026】
また、前述した実施形態にあっては、容器開口部の周縁に沿ってフランジ部4が形成された例を挙げて説明したが、本発明は、このようなフランジ部4が形成されているか否かに関わらず、種々の容器に適用できる。すなわち、フランジ部4が形成されているか否かに関わらず、容器開口部の周辺に誘電体層6を予め設けておくことで、前述した実施形態と同様の効果が奏される。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上説明したように、本発明は、収容された内容物を容器ごと加熱するにあたり、電磁調理器と電子レンジのいずれでも加熱することができる容器を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る容器の実施形態の概略断面図である。
【図2】本発明に係る容器の実施形態の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 容器
4 フランジ部
6 誘電体層
10 金属層
11 樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属層と、前記金属層を挟んで積層された樹脂層とからなり、
マイクロ波が照射されたときに前記金属層が過剰に発熱して前記樹脂層を損傷してしまうおそれのある部位に誘電体層を設けたことを特徴とする容器。
【請求項2】
前記容器が開口部、胴部、底部を有し、前記開口部の周辺に前記誘電体層が設けられた請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記開口部の周縁に沿ってフランジ部が形成され、前記フランジ部に前記誘電体層が設けられた請求項2に記載の容器。
【請求項4】
前記金属層が、スチール箔からなる請求項1〜3のいずれか一項に記載の容器。
【請求項5】
前記誘電体層を形成する誘電体の比誘電率が5以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載の容器。
【請求項6】
前記誘電体層を形成する誘電体が、セラミックである請求項1〜5のいずれか一項に記載の容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−83524(P2010−83524A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−254077(P2008−254077)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】