説明

容量素子具有配線板、容量素子具有配線板の製造方法

【課題】薄板化することが可能な容量素子具有配線板を提供すること。
【解決手段】第1の方向に厚みを有し、該第1の方向に直交しかつ互いに直交する第2、第3の方向に広がりを有する絶縁層と、絶縁層を貫通して形成された、絶縁層の横断面における形状が線状である第1の電極と、第1の電極に対向するように絶縁層内に埋設された、絶縁層の比誘電率より大きな比誘電率を有する誘電体と、この誘電体の第1の電極に対向する側とは反対の側に対向して位置するように絶縁層を貫通して形成された、絶縁層の横断面における形状が線状である第2の電極と、第1の電極に電気的に導通するように絶縁層上に設けられた第1の金属箔パターンと、第2の電極に電気的に導通するように絶縁層上に設けられた第2の金属箔パターンとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁板中に容量素子が形成された容量素子具有配線板およびその製造方法に係り、特に、薄板化を目指した構成の容量素子具有配線板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁板中に容量素子部品を備えた配線板の例として、特開2003−197849号公報に記載されたものがある。同文献に開示された配線板では、容量素子部品としてチップコンデンサ(チップキャパシタ)が埋設で絶縁板中に実装されている。
【0003】
チップコンデンサのサイズは一般に規格化されており、例えば比較的小さい0603サイズや0402サイズの場合で、それぞれ、横0.6mm×縦0.3mm×厚さ0.3mm、横0.4mm×縦0.2mm×厚さ0.2mmである。したがって、チップコンデンサを内蔵する配線板においては、この厚みに対応する厚さ方向の内蔵領域を少なくとも用意することが必須になる。この事情を半導体チップを内蔵する場合と比較すると、半導体チップはバックグラインドによって厚さを50μm程度まで薄くすることが可能であることから、チップコンデンサ内蔵のほうがむしろ厚い領域確保を要する。すなわち、チップコンデンサを絶縁板中に埋設する配線板は、半導体チップを内蔵の場合より薄板化が制限されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−197849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情を考慮してなされたもので、絶縁板中に容量素子が形成された容量素子具有配線板およびその製造方法において、薄板化することが可能な容量素子具有配線板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の一態様である容量素子具有配線板は、第1の方向に厚みを有し、該第1の方向に直交しかつ互いに直交する第2、第3の方向に広がりを有する絶縁層と、前記絶縁層を貫通して形成された、前記絶縁層の横断面における形状が線状である第1の電極と、前記第1の電極に対向するように前記絶縁層内に埋設された、前記絶縁層の比誘電率より大きな比誘電率を有する誘電体と、前記誘電体の前記第1の電極に対向する側とは反対の側に対向して位置するように前記絶縁層を貫通して形成された、前記絶縁層の横断面における形状が線状である第2の電極と、前記第1の電極に電気的に導通するように前記絶縁層上に設けられた第1の金属箔パターンと、前記第2の電極に電気的に導通するように前記絶縁層上に設けられた第2の金属箔パターンとを具備することを特徴とする。
【0007】
すなわち、この配線板は、一の絶縁層の厚みの中に容量素子を作り込んでいる構成を有している。ここで、容量素子としての主要構成は、絶縁層を貫通して形成された、この絶縁層の横断面における形状が線状である第1の電極と、この第1の電極に対向するように絶縁層内に埋設された、絶縁層の比誘電率より大きな比誘電率を有する誘電体と、この誘電体の第1の電極に対向する側とは反対の側に対向して位置するように絶縁層を貫通して形成された、絶縁層の横断面における形状が線状である第2の電極とである。
【0008】
第1の電極、誘電体、第2の電極により容量素子が構成されており、その厚さ方向のサイズは絶縁層の厚みに等しくできる。よって、配線板として通常用いられる絶縁層を使って容量素子を具有させることができ、薄板化可能な容量素子具有配線板となる。なお、この容量素子は、厚みを抑えているものの、平面方向には線状の形状に近く(=細長い形状)、平面方向の面積をとらないように構成できる点も利点である。すなわち、配線板としてデッドスペースを活用できる。
【0009】
また、本発明の別の態様である容量素子具有配線板の製造方法は、絶縁層を有し該絶縁層の両面に銅箔が張られた積層体に、貫通孔と、細長い横断面形状を有する貫通開口部とを形成する工程と、前記貫通孔の内壁面上および前記貫通開口部の内壁面上にそれぞれ第1、第2の導電体層を形成する工程と、前記絶縁層の前記両面上の前記銅箔をパターニングする工程と、前記貫通開口部の前記内壁面上に形成された前記第2の導電体層が互いに向かい合う、電気的に独立の2つの導電体層になるように加工する工程と、前記加工のあとに、前記絶縁層を貫通する前記貫通孔の、前記第1の導電体層を介した内部に前記絶縁層が有する比誘電率より大きな比誘電率を有するペースト状誘電体組成物を充填し、かつ、前記貫通開口部の、前記第2の導電体層を介した内部に、前記ペースト状誘電体組成物と同一組成のペースト状誘電体組成物を充填する工程と、前記ペースト状誘電体組成物の両者を硬化する工程とを具備することを特徴とする。
【0010】
また、本発明のさらに別の態様である容量素子具有配線板の製造方法は、絶縁層を有し該絶縁層の両面に銅箔が張られた積層体に、貫通孔と、細長い横断面形状を有する貫通開口部とを形成する工程と、前記貫通孔の内壁面上および前記貫通開口部の内壁面上にそれぞれ第1、第2の導電体層を形成する工程と、前記貫通開口部の前記内壁面上に形成された前記第2の導電体層が互いに向かい合う、電気的に独立の2つの導電体層になるように該第2の導電体層をエッチングし、かつ前記絶縁層の前記両面上の前記銅箔を前記第2の導電体層のエッチングと同時のエッチングによりパターニングする工程と、前記エッチングのあとに、前記絶縁層を貫通する前記貫通孔の、前記第1の導電体層を介した内部に前記絶縁層が有する比誘電率より大きな比誘電率を有するペースト状誘電体組成物を充填し、かつ、前記貫通開口部の、前記第2の導電体層を介した内部に、前記ペースト状誘電体組成物と同一組成のペースト状誘電体組成物を充填する工程と、前記ペースト状誘電体組成物の両者を硬化する工程とを具備することを特徴とする。
【0011】
これらの製造方法は、上記の配線板が有する主要部と同一の主要部を少なくとも有する配線板を製造するそれぞれひとつの方法である。これらの製造方法によれば、薄板化され得る容量素子具有配線板を製造できる。特に、配線板として必要な、貫通孔および貫通孔内壁に形成された導電体層による層間接続体の形成とほとんど同じ工程で同時に容量素子を形成できる利点がある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、絶縁板中に容量素子が形成された容量素子具有配線板およびその製造方法において、薄板化することが可能な容量素子具有配線板およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る容量素子具有配線板の構造を模式的に示す断面図および平面図。
【図2A】図1に示した容量素子具有配線板の製造過程の一部を模式的断面で示す工程図。
【図2B】図2Aの続図であって、図1に示した容量素子具有配線板の製造過程の一部を模式的断面で示す工程図。
【図2C】図2Bの続図であって、図1に示した容量素子具有配線板の製造過程の一部を模式的断面で示す工程図。
【図2D】図2Cの続図であって、図1に示した容量素子具有配線板の製造過程の一部を模式的断面で示す工程図。
【図3】本発明の別の実施形態に係る容量素子具有配線板の構造を模式的に示す断面図および平面図。
【図4】図3に示した容量素子具有配線板の製造過程の一部を模式的断面で示す工程図。
【図5】本発明のさらに別の実施形態に係る容量素子具有配線板の構造を模式的に示す断面図。
【図6】図5に示した容量素子具有配線板の製造過程の一部を模式的断面で示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一態様である容量素子具有配線板の実施態様として、前記絶縁層の一方の面を第1の面として、該第1の面上に設けられた第1の配線パターンと、前記絶縁層の前記第1の面に対向する面を第2の面として、該第2の面上に設けられた第2の配線パターンと、前記絶縁層を貫通する孔の内壁面上に設けられた、前記第1の配線パターンと前記第2の配線パターンとを電気的に導通させる導電体層と、前記絶縁層を貫通する前記孔の、前記導電体層に囲まれる内部を充填するように設けられた孔埋め樹脂部とをさらに具備する、とすることができる。
【0015】
これは、配線板として表裏面に配線パターンを有しており、それらの配線パターンがいわゆるスルーホール導電体により電気的導通し得る構成のものである。スルーホール内部が孔埋め樹脂部になっており、よって、この配線板を部材に用いて配線板として多層化する場合に空隙が必然的にできず信頼性劣化を防止できる。
【0016】
ここで、前記第1の電極と、前記第2の電極と、前記導電体層とが、同じ材料である、とすることができる。この場合、製造過程において、これらの導電体を同じ工程で形成することができ、製造効率を向上する上で好ましい。
【0017】
また、ここで、前記誘電体と、前記孔埋め樹脂部とが、同じ材料である、とすることができる。この場合、製造過程において、これらの部位を同じ工程で形成することができ、製造効率を向上する上で好ましい。
【0018】
また、ここで、前記絶縁層の前記第1の面上に積層された第2の絶縁層と、前記第2の絶縁層の、前記絶縁層に対向する側とは反対の側の面上に設けられた第3の配線パターンと、前記第2の絶縁層を貫通して、前記第1の配線パターンの面と前記第3のパターンの面との間に挟設された第1の層間接続体と、前記絶縁層の前記第2の面上に積層された第3の絶縁層と、前記第3の絶縁層の、前記絶縁層に対向する側とは反対の側の面上に設けられた第4の配線パターンと、前記第3の絶縁層を貫通して、前記第2の配線パターンの面と前記第4のパターンの面との間に挟設された第2の層間接続体とをさらに具備する、とすることができる。これは、配線板として多層化した構成である。このように、多層化する場合に対応できる。
【0019】
ここで、前記第1の層間接続体および前記第2の層間接続体が、導電性組成物からなり、かつ積層方向に一致する軸を有し該軸の方向に径が変化している形状である、とすることができる。このような層間接続体は、例えば導電性組成物をスクリーン印刷して得られる導電性バンプを由来とするものであり、高効率に形成し、また高密度に形成できるので配線板としてファイン化する場合に向いている。
【0020】
以上を踏まえ、以下では本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る容量素子具有配線板の構造を模式的に示す断面図(図1(a))および平面図(図1(b))である。図1(a)は、図1(b)中のA−Aa位置での矢視方向の断面図である。
【0021】
図1に示すように、この容量素子具有配線板10は、絶縁層11、配線層(配線パターン)21、配線層(金属箔パターン、配線パターン)22、内壁導電体層(スルーホール導電体)31、電極32a、同32b、孔埋め樹脂部41、誘電体42を有する。
【0022】
絶縁層11は、例えば、ガラスエポキシ樹脂の板であり、第1の方向に厚みを有し、この第1の方向に直交しかつ互いに直交する第2、第3の方向に広がりを有する。ガラスエポキシ樹脂のようなリジッドな材料だけでなく、例えば、ポリイミド樹脂のようなフレキシブルな材料も利用できる。配線層21、22は、それぞれ、絶縁層11の上面、下面に設けられた金属箔を所定にパターニングして得られた導電パターンである。内壁導電体層31は、絶縁層11を貫通する貫通孔(丸穴)の内壁面上にめっきで形成された導電体層(スルーホール導電体)である。内壁導電体層31により、配線層21と同22とは電気的に導通可能になっている。
【0023】
電極32a、32bは、容量素子の両電極として機能する導電体層であり、絶縁層11を貫通する、細長い横断面形状の貫通開口部の内壁面上にめっきで形成された導電体層を由来とする。電極32a、32bは、それぞれ、絶縁層11上に設けられたパターン22に電気的に導通する。孔埋め樹脂部41は、内壁導電体層31に囲まれる内部を充填するように設けられた樹脂部である。誘電体42は、電極32aと同32bとの間に挟設された、絶縁層11の面内において線状に延長する形状の誘電材料である。誘電体42の材料としては、具体的には、例えば、エポキシ樹脂中にチタン酸バリウムの微粉末を分散させた組成のものを使用できる。なお、孔埋め樹脂部41は、誘電体42と同じ材料とすることが可能である。
【0024】
この配線板は、一の絶縁層11の厚みの中に容量素子を作り込んでいる構成を有している。すなわち、容量素子としての主要構成は、絶縁層11を貫通して形成された、この絶縁層11の横断面における形状が線状である電極32aと、この電極32aに対向するように絶縁層11内に埋設された、絶縁層11の比誘電率より大きな比誘電率を有する誘電体42と、この誘電体42の電極32aに対向する側とは反対の側に対向して位置するように絶縁層11を貫通して形成された、絶縁層11の横断面における形状が線状である電極32bとである。
【0025】
電極32a、誘電体42、電極32bにより容量素子が構成されており、その厚さ方向のサイズは絶縁層11の厚みに等しくできる。よって、配線板として通常用いられる絶縁層11を使って容量素子を具有させることができ、薄板化可能な容量素子具有配線板となる。なお、この容量素子は、厚みを抑えているものの、平面方向には線状の形状に近く(=細長い形状)、平面方向の面積をとらないように構成できる。すなわち、配線板としてデッドスペースを活用し、図示するような一直線状、U字状のほか、L字状、コの字状、ジグザグ形状やスラローム形状など、配線板としてほかの要素が位置しないところを選んでレイアウト上、比較的自由に作り込むことができる。
【0026】
次に、図1に示した容量素子具有配線板の製造過程について図2Aないし図2Dを参照して説明する。図2Aないし図2Dは、図1に示した容量素子具有配線板の製造過程を模式的断面で示す、一続きの工程図である。それぞれ、(a)は断面図、(b)は平面図であり、これらの断面図と平面図との関係は、図1に準ずる。また、図2Aないし図2Dにおいて、図1中に示した部位と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。
【0027】
まず、図2Aに示すように、絶縁層11(厚さは例えば薄くて100μm)の両面に金属箔(銅箔;厚さは例えば18μm)21A、22Aが張られた積層体に、貫通孔(丸穴;直径は例えば100μm)310と、細長い横断面形状を有する貫通開口部(幅は例えば100μm)320とを形成する。貫通孔310の形成には、例えば、ドリル加工やレーザ加工を利用することができる。貫通開口部320の形成には、例えば、ドリル加工に加えてルータを利用することができる。
【0028】
次に、図2Bに示すように、貫通孔310の内壁面上、および貫通開口部320の内壁面上に、それぞれ、内壁導電体層31、内壁導電体層32を形成する(厚さ例えば15μm)。内壁導電体層31、32の形成には、例えば、はじめに無電解めっきでこれらの内壁面上に銅のシード層を形成し、そのあとめっき液浴槽で、金属箔21A、22Aを給電路に用いてシード層上に電解めっきを行う。これにより、内壁導電体層31、32は、一度に、効率的に形成することができる。
【0029】
続いて、図2Cに示すように、絶縁層11の両面の金属箔21A、22Aをそれぞれ所定にパターニングして、これらを配線層21、22に加工する。このパターニング工程には、周知のフォトリソグラフィを利用できる。パターニングが終了した状態で、貫通孔310および貫通開口部320の両内壁面上に形成された内壁導電体層31、32は、すべてそのまま残る。また、内壁導電体層31、32が少なくとも、絶縁層11上に設けられたパターン22に電気的に導通するように、金属箔(配線)パターン22はパターニングされている。
【0030】
続いて、図2Dに示すように、貫通開口部320の両端の位置に、それぞれ追加加工孔321を例えばドリルを用いて明ける。この追加加工孔321により、貫通開口部320の内壁面上に形成された導電体層32が、互いに向かい合う、電気的に独立の2つの導電体層(電極32a、同32b)に分離される。そして、この加工のあとで、絶縁層11を貫通する貫通孔310の、導電体層31を介した内部に、孔埋め樹脂部41とすべきペースト状誘電体組成物を充填し、かつ、貫通開口部320の、電極32a、同32bを介した内部に、誘電体42とすべきペースト状誘電体組成物を充填する。これらの充填されたペースト状誘電体組成物を硬化することで、図1に示したような、容量素子具有配線板を得ることができる。
【0031】
孔埋め樹脂部41、誘電体42の形成については、より具体的に、例えば、以下のようにすることができる。まず、ペースト状誘電体組成物を充填には、例えば、スクリーン印刷を用いることができる。これにより効率的な充填が可能である。このとき使用のスクリーンマスクには、充填すべき孔や溝の位置に対応してピットを設けておき、印刷対象である絶縁層11の側は、例えば、上記孔や溝の位置に対応して凹部が設けられた支持板上に載置する。この凹部により、ペースト状誘電体組成物は、絶縁層11の孔または溝を貫通し十分な充填がなされた状態になる。充填のあと例えば加熱してこれを硬化させる。そして、絶縁層11の両面上にはみ出した硬化部分を除去し、整面する。
【0032】
なお、変形例として、孔埋め樹脂部41については、これを設けず中空のままとしてもよい。孔埋め樹脂部41を設けてもこれを取り囲むように内壁導電体層31が存在するため、孔埋め樹脂部41は絶縁体であることを除けば電気的に何らの機能も有していない。ただし、後述するように、さらに多層の配線板のコア板として利用する場合には、孔埋め樹脂部41を設けることで空隙が生じにくくなり信頼性向上に好ましい。
【0033】
次に、本発明の別の実施形態に係る容量素子具有配線板について図3を参照して説明する。図3は、別の実施形態に係る容量素子具有配線板の構造を模式的に示す断面図(図3(a))および平面図(図3(b))である。この断面図と平面図との関係は、図1に準ずる。また、図3において、図1中に示した部位と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。その部分については加えて説明する事項がない限り説明を省略する。
【0034】
この実施形態の容量素子具有配線板10Aは、金属箔(配線)パターン22を加工で得るときの方法が図1に示したものでの場合と多少異なることに由来して、各容量素子の両端での構成が図1に示したものと異なっている。すなわち、電極32aと同32bとを電気的に分離、独立にするために、これらをつないでいた内壁導電体層32(図2B参照)を貫通開口部320(図2A参照)の両端の内壁面上から除去した構成になっている。この構成では、追加加工孔321(図2D参照)は形成されない。
【0035】
図4は、図3に示した容量素子具有配線板の製造過程の一部を模式的断面で示す工程図であり、上述した、先の実施形態における図2Cの段階に相当する過程を示している。なお、図2A、図2Bに示した工程については、変わりない。この実施形態では、金属箔(配線)パターン22を形成するためのエッチング工程において、貫通開口部320の両端の内壁面上の内壁導電体層32を同時にエッチングし、内壁導電体層32を電極32aと32bとに分離、独立するようにしている。
【0036】
このように貫通開口部320の内壁面上の内壁導電体層32の一部を、金属箔22Aのエッチングと同時にエッチングするには、フォトリソグラフィのためのレジストとして、孔や溝の内壁面をも覆うタイプのものを使用し、露光には、光を散乱させ光が斜めに届く露光方法を採れば可能である。これによれば、追加加工孔321を形成する必要がなく、製造効率が向上できる。
【0037】
次に、本発明のさらに別の実施形態について図5を参照して説明する。図5は、さらに別の実施形態に係る容量素子具有配線板の構成を模式的に示す断面図である。この実施形態は、図1に示した配線板10をコア板に用いて多層化した配線板の一構成例である。このように、図1に示した容量素子具有配線板10は、さらに複雑な構成を備える多層配線板の素材として有用である。
【0038】
図5に示すように、この多層配線板は、コア板である配線板10のほか、絶縁層51、同52、同54、同55、配線層(配線パターン)61、同62、同65、同66、層間接続体71、同72、同74、同75、はんだレジスト81、82を有する。コア板である配線板10についてはすでに説明しているので、以下ではこの部分を除いて構成を説明する。
【0039】
配線層61、66は、多層配線板としての両主面上の配線層であり、その上に各種の部品(不図示)が実装され得る。実装ではんだ(不図示)が載るべき配線層61、66のランド部分を除いて両主面上には、はんだ接続時に溶融したはんだをランド部分に留めかつその後は保護層として機能するはんだレジスト81、82が形成されている(厚さはそれぞれ例えば20μm程度)。ランド部分の表層には、耐腐食性の高いNi/Auのめっき層(不図示)を形成するようにしてもよい。
【0040】
配線層62、65は、それぞれ、配線板10の両主面上の配線層とともに内層の配線層であり、順に、配線層61と配線層62の間に絶縁層51が、配線層62と配線板10の間に絶縁層52が、配線板10と配線層65との間に絶縁層54が、配線層65と配線層66との間に絶縁層55が、それぞれ位置しこれらの配線層61、62、65、66、または配線板10を隔てている。各配線層61、62、65、66は、例えばそれぞれ厚さ18μmの金属(銅)箔からなっている。
【0041】
各絶縁層51、52、54、55は、例えばそれぞれ厚さ100μmで、それぞれ例えばガラスエポキシ樹脂からなるリジッドな素材である。
【0042】
配線層61と配線層62とは、それらのパターンの面の間に挟設されかつ絶縁層51を貫通する層間接続体71により導通し得る。同様に、配線層62と配線板10とは、それらの配線パターンの面の間に挟設されかつ絶縁層52を貫通する層間接続体72により導通し得る。配線板10と配線層54とは、それらの配線パターンの面の間に挟設されかつ絶縁層54を貫通する層間絶縁体74により導通し得る。配線層65と配線層66とは、それらのパターンの面の間に挟設されかつ絶縁層55を貫通する層間接続体75により導通し得る。
【0043】
層間接続体71、72、74、75は、それぞれ、導電性組成物のスクリーン印刷により形成される導電性バンプを由来とするものであり、その製造工程に依拠して軸方向(図1の図示で上下の積層方向)に径が変化している。その直径は、太い側で例えば200μmである。
【0044】
図6は、図5に示した容量素子具有配線板の製造過程の一部を模式的断面で示す工程図であり、図1に示した配線板10を素材に用いて行う最終の積層工程を示している。図6において、すでに説明した図中に示した構成要素と同一または同一相当のものには同一符号を付してある。
【0045】
図6における配線板10の下側に位置している素材と上側に位置している素材とは、同じ工程により形成されたものである。以下では、まず、下側のものについて概略的に形成工程を説明する。
【0046】
はじめに、厚さ例えば18μmの、配線層62とすべき金属箔(電解銅箔)上に例えばスクリーン印刷により、層間接続体71となるペースト状の導電性組成物をほぼ円錐形のバンプ状(底面径例えば200μm、高さ例えば160μm)に形成する。導電性組成物の導電性バンプをスクリーン印刷で形成することにより、ごく小さな領域内に収まる導電性バンプを生産性よく効率的に形成することができる。このような小さな領域に収まる導電性バンプは、配線板としてのパターンの高密度化に向いている。この導電性組成物は、ペースト状の樹脂中に銀、金、銅などの金属微細粒または炭素微細粒を分散させたものである。
【0047】
次に、上記金属箔上に厚さ例えば公称100μmのFR−4の、絶縁層51とすべきプリプレグを積層して層間接続体71を貫通させ、その頭部が露出するようにする。露出に際してあるいはその後その先端を塑性変形でつぶしてもよい。続いて、上記プリプレグ上に金属箔(電解銅箔)61Aを積層配置して加圧・加熱し全体を一体化する。このとき、金属箔61Aは層間接続体71と電気的導通状態となり、上記プリプレグは完全に硬化して絶縁層51になる。
【0048】
次に、片側の金属箔に例えば周知のフォトリソグラフィによるパターニングを施し、これを、配線層62に加工する。そして、この配線層62上の所定の位置に層間接続体72となる導電性バンプ(底面径例えば200μm、高さ例えば160μm)をペースト状導電性組成物のスクリーン印刷により形成する。続いて、絶縁層52とすべきFR−4のプリプレグ52A(公称厚さ例えば100μm)を配線層62側にプレス機を用い積層する。この積層工程では、層間接続体72の頭部をプリプレグ52Aに貫通させる。なお、図6における層間接続体72の頭部の破線は、この段階でその頭部を塑性変形させてつぶしておく場合と塑性変形させない場合の両者あり得ることを示す。
【0049】
以上により、図6に示す配線板10の下側に位置する素材が形成できる。上側の素材については、金属箔(電解銅箔)66A、絶縁層55、層間接続体75、配線層65、プリプレグ54A、層間接続体74が、それぞれ、下側の素材の、金属箔61A、絶縁層51、層間接続体71、配線層62、プリプレグ52A、層間接続体72に相当していて、形成方法は上記説明したとおりである。
【0050】
そして、図6に示すような配置で各配線板の素材を積層配置してプレス機で加圧・加熱する。これにより、プリプレグ52A、54Aが完全に硬化し全体が積層・一体化する。このとき、配線板10の両主面上の配線層は、層間接続体72、74にそれぞれ電気的に接続される。ここで、配線板10に孔埋め樹脂部41(図1参照)があることにより、積層時に空隙が生じにくくなっており、信頼性劣化を防止できる。図6に示す積層工程の後、上下両面の金属箔61A、66Aを周知のフォトリソグラフィを利用して所定にパターニングし、さらにはんだレジスト81、82の層を形成することにより、図5に示したような容量素子具有配線板を得ることができる。
【0051】
図5、図6に示したような、配線板の多層化は一例であり、容量素子具有配線板10をコア板に用いて、公知の種々の多層化方法を採用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10,10A…容量素子具有配線板、11…絶縁層、21…配線層(配線パターン)、21A…金属箔(銅箔)、22…配線層(金属箔パターン、配線パターン)、22A…金属箔(銅箔)、31…内壁導電体層(スルーホール導電体)、32…内壁導電体層、32a…電極、32b…電極、41…孔埋め樹脂部、42…誘電体、51,52,54,55…絶縁層、52A,54A…プリプレグ、61,62,65,66…配線層(配線パターン)、61A,66A…金属箔(銅箔)、71,72,74,75…層間接続体(導電性組成物印刷による導電性バンプ)、81,82…はんだレジスト、310…貫通孔、320…貫通開口部、321…追加加工孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に厚みを有し、該第1の方向に直交しかつ互いに直交する第2、第3の方向に広がりを有する絶縁層と、
前記絶縁層を貫通して形成された、前記絶縁層の横断面における形状が線状である第1の電極と、
前記第1の電極に対向するように前記絶縁層内に埋設された、前記絶縁層の比誘電率より大きな比誘電率を有する誘電体と、
前記誘電体の前記第1の電極に対向する側とは反対の側に対向して位置するように前記絶縁層を貫通して形成された、前記絶縁層の横断面における形状が線状である第2の電極と、
前記第1の電極に電気的に導通するように前記絶縁層上に設けられた第1の金属箔パターンと、
前記第2の電極に電気的に導通するように前記絶縁層上に設けられた第2の金属箔パターンと
を具備することを特徴とする容量素子具有配線板。
【請求項2】
前記絶縁層の一方の面を第1の面として、該第1の面上に設けられた第1の配線パターンと、
前記絶縁層の前記第1の面に対向する面を第2の面として、該第2の面上に設けられた第2の配線パターンと、
前記絶縁層を貫通する孔の内壁面上に設けられた、前記第1の配線パターンと前記第2の配線パターンとを電気的に導通させる導電体層と、
前記絶縁層を貫通する前記孔の、前記導電体層に囲まれる内部を充填するように設けられた孔埋め樹脂部と
をさらに具備することを特徴とする請求項1記載の容量素子具有配線板。
【請求項3】
前記第1の電極と、前記第2の電極と、前記導電体層とが、同じ材料であることを特徴とする請求項2記載の容量素子具有配線板。
【請求項4】
前記誘電体と、前記孔埋め樹脂部とが、同じ材料であることを特徴とする請求項2記載の容量素子具有配線板。
【請求項5】
前記絶縁層の前記第1の面上に積層された第2の絶縁層と、
前記第2の絶縁層の、前記絶縁層に対向する側とは反対の側の面上に設けられた第3の配線パターンと、
前記第2の絶縁層を貫通して、前記第1の配線パターンの面と前記第3のパターンの面との間に挟設された第1の層間接続体と、
前記絶縁層の前記第2の面上に積層された第3の絶縁層と、
前記第3の絶縁層の、前記絶縁層に対向する側とは反対の側の面上に設けられた第4の配線パターンと、
前記第3の絶縁層を貫通して、前記第2の配線パターンの面と前記第4のパターンの面との間に挟設された第2の層間接続体と
をさらに具備することを特徴とする請求項2記載の容量素子具有配線板。
【請求項6】
前記第1の層間接続体および前記第2の層間接続体が、導電性組成物からなり、かつ積層方向に一致する軸を有し該軸の方向に径が変化している形状であることを特徴とする請求項5記載の容量素子具有配線板。
【請求項7】
絶縁層を有し該絶縁層の両面に銅箔が張られた積層体に、貫通孔と、細長い横断面形状を有する貫通開口部とを形成する工程と、
前記貫通孔の内壁面上および前記貫通開口部の内壁面上にそれぞれ第1、第2の導電体層を形成する工程と、
前記絶縁層の前記両面上の前記銅箔をパターニングする工程と、
前記貫通開口部の前記内壁面上に形成された前記第2の導電体層が互いに向かい合う、電気的に独立の2つの導電体層になるように加工する工程と、
前記加工のあとに、前記絶縁層を貫通する前記貫通孔の、前記第1の導電体層を介した内部に前記絶縁層が有する比誘電率より大きな比誘電率を有するペースト状誘電体組成物を充填し、かつ、前記貫通開口部の、前記第2の導電体層を介した内部に、前記ペースト状誘電体組成物と同一組成のペースト状誘電体組成物を充填する工程と、
前記ペースト状誘電体組成物の両者を硬化する工程と
を具備することを特徴とする容量素子具有配線板の製造方法。
【請求項8】
絶縁層を有し該絶縁層の両面に銅箔が張られた積層体に、貫通孔と、細長い横断面形状を有する貫通開口部とを形成する工程と、
前記貫通孔の内壁面上および前記貫通開口部の内壁面上にそれぞれ第1、第2の導電体層を形成する工程と、
前記貫通開口部の前記内壁面上に形成された前記第2の導電体層が互いに向かい合う、電気的に独立の2つの導電体層になるように該第2の導電体層をエッチングし、かつ前記絶縁層の前記両面上の前記銅箔を前記第2の導電体層のエッチングと同時のエッチングによりパターニングする工程と、
前記エッチングのあとに、前記絶縁層を貫通する前記貫通孔の、前記第1の導電体層を介した内部に前記絶縁層が有する比誘電率より大きな比誘電率を有するペースト状誘電体組成物を充填し、かつ、前記貫通開口部の、前記第2の導電体層を介した内部に、前記ペースト状誘電体組成物と同一組成のペースト状誘電体組成物を充填する工程と、
前記ペースト状誘電体組成物の両者を硬化する工程と
を具備することを特徴とする容量素子具有配線板の製造方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−49255(P2011−49255A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194743(P2009−194743)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】