説明

密封容器の内圧検査装置および内圧検査方法

【課題】密封容器の内圧に基づく変形量を計測して内圧の良否を正確かつ簡単に判定する。
【解決手段】胴部4の上端部と下端部との少なくともいずれか一方に蓋部5を有し、内圧によってその蓋部5が変形する密封容器1の内圧検査装置において、前記蓋部5にレーザービームを照射して前記蓋部との間の距離を測定するレーザー式変位センサー13が、前記蓋部5と平行な平面に沿う方向に前記蓋部5に対して相対移動可能に配置され、前記蓋部5を前記胴部4に対して一体化させている結合部よりも前記蓋部5の中心側の部分の複数箇所のうち前記レーザー式変位センサー13との距離が短い所定の基準箇所および長い所定の基準箇所のいずれか一方の基準箇所と他の箇所との相対変位量の積分値を求め、その積分値に基づいて前記内圧の良否を判定するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スリーピース缶やボトル型缶などの密閉された容器の内圧を検査する装置および方法に関し、特に金属缶を対象とする内圧検査装置および内圧検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品や飲料を充填した缶詰などの容器は内容物の充填後に気密状態に封止されるのが通常であり、したがってピンホールや巻締め不良あるいは内容物の変敗などの異常があると、外気の侵入やガスの発生などによって容器の真空度が低下したり、あるいは内部のガスの漏洩などによって内圧が低下するなどの事態が生じる。そこで従来、内容物を充填した缶詰などの密封容器の内圧を検査し、いわゆる不良品をラインから排除している。この内圧検査方法として、例えば特許文献1や特許文献2あるいは特許文献3などに記載されているように、密封容器に打撃力を与えて音もしくは振動を生じさせ、その音もしくは振動の周波数を解析して内圧の異常、すなわち密封容器の異常を検出する方法が知られている。
【0003】
一方、最近では、固形分のある内容物あるいはコーンスープのように粘度の高い内容物を充填した缶詰製品も多量に流通するようになってきている。この種の密封容器にあっては、打撃力を付与される缶蓋(天蓋もしくは底蓋)の内面に内容物が付着し、あるいはその成分である固形分が付着し、しかもその量や位置が一定しない。そのために、上記のいわゆる打検によって生じる音もしくは振動の振動数やその分布が、缶蓋に対する内容物もしくはこの固形分の付着の態様によって異なってしまい、内圧が正常であるにも拘わらず、不良の判定を行ってしまう不都合があった。
【0004】
このような不都合を解消できる検査方法あるいは検査装置として、内圧による容器の変形を検出する方法あるいは装置が提案されている。例えば特許文献4には、箱詰めされて搬送されている缶における缶蓋の中心部の一点と、その缶蓋の巻締部上の二点との位置を、これら三点の上方に配置された渦電流式距離センサーによって計測し、その計測値に基づいて缶蓋の中心部の変形量を算出し、その変形量と基準値とを比較して缶内圧の良否を判定する装置が記載されている。また、特許文献5には、カートンケースに入れられてコンベヤによって搬送されている缶詰の上端から開封タブまでの距離であるトップデプスと、下端からボトムパネルまでの距離であるボトムデプスとを、渦電流式の変位センサーによって計測し、それらのデプスの合計値を判定基準値と比較して内圧の良否を判定するように構成された装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭63ー67845号公報
【特許文献2】特開平6−213748号公報
【特許文献3】特開2002−148133号公報
【特許文献4】特開平8ー219915号公報
【特許文献5】特開2009ー210451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献4や特許文献5に記載された装置は、密封容器の形状の変化に基づいて内圧の良否を判定するように構成されているので、内容物の性状や種類などによる影響を殆ど受けずに内圧の良否を判定することができる。しかしながら、特許文献4に記載された装置は、巻締部の平均距離を先ず求め、その巻締部の平均距離と缶蓋中央部の距離との差を変形量としているので、変形量の計測精度が必ずしも高くなく、そのため良否判定のしきい値を小さくせざるを得ないので、内圧が正常であるにも拘わらず、不良の判定を行ってしまう可能性がある。すなわち、缶蓋の形状あるいは缶蓋の表面の加工の状態などが要因となって缶蓋中央部以外の変形量が大きくなると、缶蓋中央部の変形量が最も大きくなるものの、正常な状態からの変形量が小さくなるので、良否判定のしきい値を小さくせざるを得なくなる。
【0007】
また、特許文献5に記載された装置では、缶の上端側と下端側との両方にセンサーを配置し、上述したトップデプスおよびボトムデプスとを計測する必要があり、そのため設備コストが嵩む不都合がある。特に、缶をコンベヤで搬送している途中で内圧検査を行う場合、ボトムデプスを計測するためのセンサーをそのコンベヤの内部に組み込むことになるので、設備全体の構成が複雑になる上に、既存の設備に内圧検査装置を追加するとした場合、コンベヤを含むライン全体の改造が必要になるので、既存設備に組み込むことは実用上、困難であるなどの課題があった。
【0008】
さらに、特許文献4に記載された装置および特許文献5に記載された装置のいずれも渦電流式のセンサーによって距離を測定しているので、距離の検出精度あるいは内圧の良否判定精度を向上させることが困難であった。例えば特許文献4に記載された装置は、巻締部の上端の位置を計測するように構成されているが、その上端は幅が狭く、上側から見た場合の投影面積の小さい部分であり、これに対して渦電流式のセンサーは、ある程度広い面積の部分で渦電流を生じさせ、それに伴って間隔(距離)を計測するものであるから、巻締部の位置もしくは距離を正確に計測することが困難であり、これが内圧の判定精度に影響を及ぼし、その判定精度が低くならざるを得ない。なお、特許文献4には、缶蓋パネルの中心部とその両側との合計三点の位置もしくは距離を計測して缶蓋パネルの中心部の変形量を計測することが記載されているが、このような装置では、缶蓋パネルの中央部の変形方向と、その両側の二点の変形方向とが同じであるために、正確な計測や内圧判定を行うことができない、とされている。
【0009】
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、密封容器の変形を利用した内圧の判定を容易かつ精度良く行うことのできる密封容器の内圧検査装置および検査方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、胴部の上端部と下端部との少なくともいずれか一方に蓋部を有し、内圧によってその蓋部が変形する密封容器の内圧検査装置において、前記蓋部にレーザービームを照射して前記蓋部との間の距離を測定するレーザー式変位センサーが、前記蓋部と平行な平面に沿う方向に前記蓋部に対して相対移動可能に配置され、前記蓋部を前記胴部に対して一体化させている結合部よりも前記蓋部の中心側の部分の複数箇所のうち前記レーザー式変位センサーとの距離が短い所定の基準箇所および長い所定の基準箇所のいずれか一方の基準箇所と他の箇所との相対変位量の積分値を求め、その積分値に基づいて前記内圧の良否を判定するように構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記複数箇所は、前記蓋部の中心箇所と、その中心箇所を通り前記蓋部の直径方向に引いた直線上の複数箇所であることを特徴とする密封容器の内圧検査装置である。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1または2の発明において、前記蓋部は、前記結合部の内周側に連続して形成されかつ前記密封容器の内部に窪んでいる環状溝部と、その環状溝部の内周側傾斜壁における前記密封容器の外側への突出端と、その突出端より前記蓋部の中心側の部分であるパネル部とを有し、前記基準箇所は、前記突出端を含み、前記他の箇所は、前記パネル部における複数箇所を含むことを特徴とする密封容器の内圧検査装置である。
【0013】
さらに、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記基準箇所と前記他の箇所との合計数は700以上であることを特徴とする密封容器の内圧検査装置である。
【0014】
他方、請求項5の発明は、胴部の上端部と下端部との少なくともいずれか一方に蓋部を有し、内圧によってその蓋部が変形する密封容器の内圧検査方法において、前記蓋部を前記胴部に対して一体化させている結合部よりも前記蓋部の中心側の部分の複数箇所の相対変位量をレーザー式変位センサーによって測定するとともに、それらの相対変位量の積分値を求め、その積分値に基づいて前記内圧の良否を判定することを特徴とする方法である。
【0015】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、前記複数箇所は、前記蓋部の中心箇所と、その中心箇所を通り前記蓋部の直径方向に引いた直線上の複数箇所であることを特徴とする密封容器の内圧検査方法である。
【0016】
請求項7の発明は、請求項5または6の発明において、前記蓋部は、前記結合部の内周側に連続しかつ前記密封容器の内部に窪んでいる環状溝部と、その環状溝部の内周側傾斜壁における前記密封容器の外側への突出端と、その突出端より前記蓋部の中心側の部分であるパネル部とを有し、前記相対変位量は、前記突出端に対する前記パネル部における複数箇所の変位量を含むことを特徴とする密封容器の内圧検査方法である。
【0017】
請求項8の発明は、請求項5ないし7のいずれかの発明において、前記相対変位量は、700箇所以上での相対変位量であることを特徴とする密封容器の内圧検査方法である。
【発明の効果】
【0018】
この発明に係る内圧検査装置あるいは内圧検査方法によれば、蓋部を胴部に連結している結合部より内周側の部分における複数箇所の変位量もしくは相対変位量をレーザー式変位センサーによって計測するので、微小箇所の変位量もしくは相対変位量を正確に求めることができ、特に上記の結合部より内周側の部分の複数箇所についての相対変位量を求めるので、レーザー式変位センサーに対して密封容器もしくはその蓋部が傾いて相対移動する場合であっても、その傾きによる相対変位量に対する影響を抑制でき、この点でも相対変位量を正確に求めることが可能になる。また、相対変位量を積分するので、その相対変位量に正常値からのズレがあれば、そのズレも積算されるので、各箇所での正常状態もしくは正常形状からのズレが僅かであっても、蓋部全体としての形状の変化を確実に判定することができる。言い換えれば、ズレが積算されるので、判定のためのしきい値を大きくすることができ、こうすることにより内圧が不良であることの誤判定を可及的に少なくすることができる。特に蓋部の中心部分での変形が小さく、その周囲での変形によって内圧の増大もしくは減少が吸収されている場合であっても、相対変位量の計測が、当該周囲の部分にも及んでいるので、確実に内圧の異常を判定することができる。そして、この発明では、レーザー式変位センサーの検出値を演算処理することにより内圧の良否を判定できるので、装置の構成を簡素化でき、また既存設備への追加が容易である。
【0019】
また、この発明では、その中心部を通る直線上の複数箇所について相対変位量を求めるように構成すれば、内圧による変形が最も大きい中心部の変形を含んで内圧の良否を判定することになるので、確実かつ正確に内圧の良否を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明に係る内圧検査装置の一例を模式的に示す図である。
【図2】この発明で求められる積分値もしくは面積を説明するための模式図である。
【図3】(a)はこの発明による面積データと内圧との計測結果を示す図であり、(b)はレーザー式センサーで計測した変位データと内圧との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
先ず、この発明に係る内圧検査装置を具体的に説明すると、この発明で対象とする密封容器は、内容物を充填する胴部を蓋部によって気密状態に封止した容器であり、胴部の上端部に天蓋を取り付けるとともに下端部に底蓋を取り付けたいわゆるスリーピースタイプの容器、底部を一体に形成した胴部の上端部に天蓋を取り付けたいわゆるツーピースタイプの容器、胴部の下端部に底蓋を取り付け、かつ上端部にネジ部を有する口頸部を一体に形成するとともにその口頸部にキャップを螺合させたボトル型の容器などであってよい。また、容器の素材は特には限定されないが、この発明は、アルミニウムやその合金、もしくはスチールなどの金属を素材とした金属缶を対象とする内圧検査に適用することができる。また、密封容器は、内圧が大気圧より低い負圧容器であってもよく、あるいは大気圧より高い陽圧容器であってもよい。
【0022】
図1には、ボトル型缶1の内圧を検査するように構成した例を示してあり、ここに示す例では、内容物を充填したボトル型缶1を、そのキャップ2が下側となる倒立状態でコンベヤ3上に設置し、その状態で搬送しつつ内圧検査を行うように構成されている。そのボトル型缶1について更に具体的に説明すると、金属製の胴部4の一方の端部(図1では上端部)に底蓋5が取り付けられている。その底蓋5はほぼ円板状に形成され、その外周部のフランジ部6を胴部4の開口端に巻締めて胴部4に取り付けられている。この巻締部分がこの発明における結合部に相当している。底蓋5における上記のフランジ部6の内周側にはカウンタシンクと称される環状溝部7が形成されており、その環状溝部7の内周縁すなわち環状溝部7における内周側傾斜壁8の突出端(ボトル型缶1の底部側への突出端)9から内周側に続けてパネル部10が形成されている。図1に示す例では、このパネル部10は、前記突出端9を起点としてボトル型缶1の内部に向けてドーム状に撓んでいる。すなわち、図1に示す例におけるボトル型缶1は内圧が大気圧より低圧の負圧容器として構成されている。また、胴部4の他方の端部(図1では下端部)には、ネジ部を外周面に設けた口頸部11が形成され、その口頸部11にキャップ2が螺合させられている。
【0023】
コンベヤ3は上記のボトル型缶1を倒立状態で連続的に搬送するものであって、例えばベルトコンベヤを採用することができる。その搬送速度は、適宜に設定でき、例えば70m/min程度であってもよい。このコンベヤ3における駆動側あるいは従動側のローラもしくは駆動モータ軸にはロータリーエンコーダ(それぞれ図示せず)が取り付けられ、このロータリーエンコーダによってコンベヤ3の走行速度や走行位置を検出できるように構成されている。したがって、コンベヤ3上のボトル型缶1を、その走行位置情報に基づいて特定できるように構成されている。
【0024】
コンベヤ3の上方で、そのコンベヤ3に倒立状態で載せられて搬送されるボトル型缶1における底蓋5のパスライン(通過位置)より上側、より具体的には蓋部5と平行な平面上に、レーザー式変位センサー(以下、単に変位センサーと記す)13が配置されている。この変位センサー13は、コンベヤ3によって搬送されているボトル型缶1の底蓋5に向けてレーザービームを照射し、その反射光を捕捉して距離を計測するように構成された公知の構成のものであり、そのレーザービームの照射面での径すなわちスポット径は30μmもしくはこれに近い径であることが好ましい。また、そのレーザービームは高速で繰り返し照射され、したがって底蓋5における多数の箇所(多数の点)の位置あるいはその距離を連続的に計測するように構成されている。すなわち、上記の変位センサー13は、レーザーパルスを出力するように構成され、その繰り返し速度(パルス間隔)は、底蓋5が変位センサー13の下方を通過する間に700回もしくはそれ以上、底蓋5に対してレーザービームを照射できる速度に設定されている。さらに、変位センサー13は、その下方をボトル型缶1が通過することにより、その底蓋5の中心を通る直線に沿って、すなわち底蓋5の直径方向に沿う直線に沿ってレーザービームを照射する位置に配置されている。
【0025】
上記のコンベヤ3の上方には、ボトル型缶1が内圧の検査開始位置に到達したことを検出するセンサーが配置されている。図1に示す例では、非接触でボトル型缶1を検出する光電センサー14が、上記の胴部4が通過する領域の側方に配置され、照射した光をボトル型缶1が遮ることにより、ボトル型缶1が内圧検査開始位置に到達したことを検出し、その検出信号を出力するように構成されている。この光電センサー14と上述した変位センサー13との相対位置は、胴部4が光電センサー14の照射光を最初に遮った位置で、ボトル型缶1における巻締部の搬送方向での前端部もしくはそれより僅か外側にレーザービームが照射される位置に設定されている。すなわち、光電センサー14がボトル型缶1を検出すると同時にボトル型缶1の搬送方向での前端側の部分の位置、もしくは変位センサー13からの距離を計測し始めるように構成されている。なお、この光電センサー14の検出信号と、前記ロータリーエンコーダの検出信号とによって、コンベヤ3上のボトル型缶1を特定できる。
【0026】
上記のロータリーエンコーダおよび変位センサー13ならびに光電センサー14は、コントローラ15に接続されている。このコントローラ15は、マイクロコンピュータを主体にして構成されており、これらロータリーエンコーダおよび変位センサー13ならびに光電センサー14に制御信号を出力するとともに、検出信号を受信し、その検出信号に基づいて所定の演算を行い、各ボトル型缶1の内圧の良否の判定や、内圧不良と判定されたボトル型缶1の特定などの制御を行うように構成されている。その制御の内容すなわちこの発明に係る内圧検査方法を以下に説明する。
【0027】
検査の対象であるボトル型缶1は、図1に示す倒立状態でコンベヤ3上に連続して載せられ、各ボトル型缶1同士の間に所定の間隔を空けてコンベヤ3によって搬送される。所定のボトル型缶1が前述した光電センサー14の設置位置にまで進行すると、変位センサー13で検出された底蓋5までの距離が取り込まれる。以降、ボトル型缶1が一定速度で搬送されるとともに、変位センサー13が断続的にレーザーパルスを出力して距離の計測を行って底蓋5における多数箇所(700箇所以上)の距離が計測される。そして、これらの計測値のうち、所定の基準箇所と他の箇所との距離の偏差(相対変位量)が演算され、かつその演算値が積分もしくは積算される。
【0028】
その基準箇所は、この発明では、前述したパネル部10の変形の基点となる前記突出端9とされており、その突出端9の計測値とそれよりも中心側の各点の計測値との偏差が積分もしくは積算される。このような基準箇所は、例えば前記光電センサー14を感応させる胴部4における搬送方向での前進端と突出端9との搬送方向での距離(胴部3の半径方向に計った間隔)を予め求めておき、光電センサー14が検出信号を出力した時点から、突出端9が変位センサー13により計測される位置に到るまでの時間を求め、その時間が経過した時点の計測値を生じさせる箇所とすればよい。あるいは、前述した環状溝部7についての計測値が極大となり、その後、計測値が小さくなって突出端9で極小となるから、このようにして極小値を生じさせる箇所を基準箇所としてもよい。
【0029】
なお、計測の終了は、パネル部10の直径とコンベヤ3による搬送速度とから求められる時間の経過によって決定してもよく、あるいは上記の突出端9でのデータが極小値として現れるので、この極小値を検出することにより計測あるいはデータの取り込みを終了することとしてもよい。
【0030】
前述したように、変位センサー13による距離の計測箇所は、底蓋5の中心を通る直線に沿う多数箇所であり、したがってその計測値の偏差の積分値もしくは積算値は、前記突出端9のうち直径上で対向する二点を結んだ直線と、ボトル型缶1の内側に窪んでいるパネル部10の表面の母線(表面の窪み形状に沿う円弧状の輪郭線)とによって囲まれた部分の面積Aを実質的に意味することになる。これを図2に模式的に示してある。このようにして求められる面積Aの値は、ボトル型缶1の内圧が正常な範囲内にあれば、内圧に応じた所定の範囲内に入る。これに対して、ピンホールや内容物の変敗によるガスの発生などによって内圧が高くなっていれば(負圧が不足していれば)、パネル部10の変形量が少なくなるので、計測された面積Aの値が、正常範囲を規定している下限値より小さくなる。また反対にボトル型缶1の内圧が過度に低圧であれば、パネル部10の変形量が大きくなって計測された面積Aの値が正常範囲を規定している上限値より大きくなる。
【0031】
したがって、この発明では、上述のようにして求められた面積Aを予め定めた上下限の各値と比較し、正常範囲を超えている場合には、内圧が不良であることの判定を行う。前述したように、コンベヤ3上のボトル型缶1は、ロータリーエンコーダの検出値と光電センサー14の検出信号とによって特定されるから、上記のようにして内圧不良と判定されたボトル型缶1を特定することができ、したがって内圧不良のボトル型缶1はコンベヤ3での搬送方向での下流側で、所定の排斥機構(図示せず)によって搬送ラインから取り除かれる。
【0032】
ここで、上記の面積Aと内圧との相関関係を測定した結果を示す。図3の(a)は、前述したボトル型缶1における底蓋5の内圧に応じた変形による面積Aを、内圧を0kPaから10kPaずつ下げて各内圧毎に複数、計測した結果を示している。この測定結果から、内圧と上記の面積Aとの間に強い相関関係があることが認められた。なお、図3の(a)中「R」は確率分布である。
【0033】
一方、図3の(b)は、レーザー式変位センサーを使用し、巻締部を基準箇所として、その基準箇所からパネル部10の複数点までの距離を、複数の内圧毎に測定した結果を示している。なお、その計測の対象は上述した図3の(a)で計測したボトル型缶1である。図3の(b)に示すように、変位データが大きい値にずれる頻度が高く、確率分布Rの値が示すようにデータのバラツキが、図3の(a)に示す場合よりも大きくなった。すなわち、変位データと内圧との相関関係が弱く、変位データに基づく内圧の良否の判定の正確さが欠ける可能性がある。
【0034】
この発明によれば、上述したように、蓋部の変形量の積分値もしくは積算値と内圧とが強い相関関係を示すので、その積分値もしくは積算値を予め用意した基準値と比較することにより、内圧の良否を正確に判定することができる。特に、多数箇所の変位量を積分もしくは積算するので、各計測箇所での正常値からのズレが僅かであっても、積分もしくは積算した場合のズレ量が大きくなるので、正確なズレ量の計測もしくは正確な内圧の判定が可能になる。また、この発明では、スポット径が小さいレーザービームを使用して変位量を計測するから、蓋部の多数の箇所の変位量を正確に測定することができ、この点においても正確な内圧判定を行うことができる。さらに、変位量の測定基準箇所を前述した突出端9としているので、搬送中のボトル型缶1が傾くなど、その姿勢にズレが生じても、内圧で変形するパネル部10のうちの被計測点と基準箇所とが接近していることにより、姿勢のズレによる計測誤差が小さくなる。そして、この発明では、レーザー式変位センサーで得られた計測データを演算処理することにより内圧の良否を判定できるので、装置の構成を簡素化することができ、また既存の設備に追加設置することが容易である。
【0035】
なお、この発明は上述した具体例に限定されないのであって、検査対象である密封容器はボトル型缶以外の缶容器や合成樹脂容器であってもよく、また内圧によって窪み変形が生じる負圧容器に限らず、内圧によって膨張変形が生じる正圧(陽圧)容器であってもよい。正圧容器を対象とする場合、蓋部の中心部が最も膨出し、その膨出に伴う変位量を求めることになるから、基準箇所は蓋部のうち変位センサーから最も遠い箇所とすることになる。さらに、変位センサーと検査対象である密封容器とは変位の計測の際に相対的に移動すればよいので、密封容器を固定し、変位センサーを移動させることとしてもよい。そして、この発明における相対変位量を測定もしくは算出するための基準箇所は、上記の突出端9に限られず、前記パネル部10内の適宜な箇所であってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1…ボトル型缶、 3…コンベヤ、 4…胴部、 5…底蓋、 8…内周側傾斜壁、 9…突出端、 10…パネル部、 13…レーザー式変位センサー、 14…光電センサー、 15…コントローラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部の上端部と下端部との少なくともいずれか一方に蓋部を有し、内圧によってその蓋部が変形する密封容器の内圧検査装置において、
前記蓋部にレーザービームを照射して前記蓋部との間の距離を測定するレーザー式変位センサーが、前記蓋部と平行な平面に沿う方向に前記蓋部に対して相対移動可能に配置され、
前記蓋部を前記胴部に対して一体化させている結合部よりも前記蓋部の中心側の部分の複数箇所のうち前記レーザー式変位センサーとの距離が短い所定の基準箇所および長い所定の基準箇所のいずれか一方の基準箇所と他の箇所との相対変位量の積分値を求め、
その積分値に基づいて前記内圧の良否を判定するように構成されている
ことを特徴とする密封容器の内圧検査装置。
【請求項2】
前記複数箇所は、前記蓋部の中心箇所と、その中心箇所を通り前記蓋部の直径方向に引いた直線上の複数箇所であることを特徴とする請求項1に記載の密封容器の内圧検査装置。
【請求項3】
前記蓋部は、前記結合部の内周側に連続しかつ前記密封容器の内部に窪んでいる環状溝部と、その環状溝部の内周側傾斜壁における前記密封容器の外側への突出端と、その突出端より前記蓋部の中心側の部分であるパネル部とを有し、
前記基準箇所は、前記突出端を含み、
前記他の箇所は、前記パネル部における複数箇所を含む
ことを特徴とする請求項1または2に記載の密封容器の内圧検査装置。
【請求項4】
前記基準箇所と前記他の箇所との合計数は700以上であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の密封容器の内圧検査装置。
【請求項5】
胴部の上端部と下端部との少なくともいずれか一方に蓋部を有し、内圧によってその蓋部が変形する密封容器の内圧検査方法において、
前記蓋部を前記胴部に対して一体化させている結合部よりも前記蓋部の中心側の部分の複数箇所の相対変位量をレーザー式変位センサーによって測定するとともに、
それらの相対変位量の積分値を求め、
その積分値に基づいて前記内圧の良否を判定する
ことを特徴とする密封容器の内圧検査方法。
【請求項6】
前記複数箇所は、前記蓋部の中心箇所と、その中心箇所を通り前記蓋部の直径方向に引いた直線上の複数箇所であることを特徴とする請求項5に記載の密封容器の内圧検査方法。
【請求項7】
前記蓋部は、前記結合部の内周側に連続しかつ前記密封容器の内部に窪んでいる環状溝部と、その環状溝部の内周側傾斜壁における前記密封容器の外側への突出端と、その突出端より前記蓋部の中心側の部分であるパネル部とを有し、
前記相対変位量は、前記突出端に対する前記パネル部における複数箇所の変位量を含む
ことを特徴とする請求項5または6に記載の密封容器の内圧検査方法。
【請求項8】
前記相対変位量は、700箇所以上での相対変位量であることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の密封容器の内圧検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−96709(P2013−96709A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236610(P2011−236610)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【Fターム(参考)】