説明

密封容器入り調理栗、調理栗の変色防止方法及び密封容器入り調理栗の製造方法

【課題】調理栗の製造方法に拘わらず、特に生の皮付き栗を剥皮してから焼成する調理栗においても、加熱調理直後の色調を長期間保持することができる密封容器入り調理栗、調理栗の変色防止方法及び密封容器入り調理栗の製造方法を提供する。
【解決手段】皮付き生栗を剥皮した後焼成した焼栗を、下記容器(A)に収容密封後、加熱殺菌してなることを特徴とする密封容器入り調理栗により達成する。
(A)酸素バリア層及び酸素吸収層を有する多層構造の容器であって、上記酸素バリア層が上記酸素吸収層よりも容器外側に形成されている容器

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適宜の製法で製造された調理栗を密封容器に収容した密封容器入り調理栗、調理栗の変色防止方法及び密封容器入り調理栗の製造方法に関し、更に詳しくは、加熱調理直後の色調を長期間保持できる密封容器入り調理栗、調理栗の変色防止方法及び密封容器入り調理栗の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、密封容器入り焼栗としては、原料である天津栗の皮付き生栗を、水飴と共に石焼き釜で加熱し、冷却して鬼皮、渋皮を剥いて、急速冷凍し、その後蒸煮して放冷したものを耐熱性包装袋に入れて内部に窒素ガスを充填して密封し、加熱殺菌した袋入り皮むき天津甘栗が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、このようにして得られる袋入り皮むき天津甘栗は、長期保存中に、甘栗表面が変色し、緑色を帯びた黒褐色になって、カビが生えているかのような外観を呈するという問題があった。
【0003】
そこで、生栗の段階において、特定の糖度、総フェノール量とした後、加熱加工処理することで問題を解決することが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
また、剥き栗を加熱加圧殺菌する際に、剥き栗表面に、誘導蛋白質もしくは繊維状蛋白質や、水分や、水溶性多糖類を施与することが知られている(例えば、特許文献3〜5参照。)。
しかしながら、このような方法は、天津甘栗のような、皮付き生栗を焼いてから剥皮する調理栗に対しては有効であるが、皮付き生栗を剥皮してから焼く調理栗には変色防止効果が不十分であり、調理栗全般に亘って有効な変色防止方法ではなかった。
すなわち、皮付き生栗を焼いてから剥皮する調理栗の場合、皮が密着した状態の栗に、先に焼成を施しているため、焼成時点で、栗の果肉表面に接する皮の色素が栗の果肉表面に移行し、その結果、栗の果肉は黄色〜茶色の色調を帯びる。従って、剥皮時にはすでに上記色調を呈しているため、長期保存しても、上記色調が濃くなっていく程度であり、色調の変化が比較的目立たない。
これに対し、先に剥皮してから焼成する調理栗では、皮付き生栗を剥皮する際に、栗の果肉表面が若干削られて露出している状態で焼成するので、栗の果肉表面は、焦げ目がついている程度で、白色〜淡黄色の色調に近いため、長期保存中に茶色味が加わると、非常に変色しているような外観を呈する。
【0004】
【特許文献1】登録実用新案3051612号公報
【特許文献2】国際公開WO2002/074108号公報
【特許文献3】特開2000−125800号公報
【特許文献4】特開2001−204381号公報
【特許文献5】特開2003−203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情に鑑みなされたものであって、その目的とするところは、調理栗の製造方法に拘わらず、特に生の皮付き栗を剥皮してから焼成する調理栗においても、加熱調理直後の色調を長期間保持することができる密封容器入り調理栗、調理栗の変色防止方法及び密封容器入り調理栗の製造方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、調理栗を、下記容器(A)に収容密封後、加熱殺菌してなることを特徴とする密封容器入り調理栗によって上記目的を達成する。
(A)酸素バリア層及び酸素吸収層を有する多層構造の容器であって、上記酸素バリア層が上記酸素吸収層よりも容器外側に形成されている容器
【0007】
好ましくは、調理栗が、皮付き生栗を剥皮した後焼成して得られた調理栗である。
【0008】
また、本発明は、調理栗を、下記容器(A)に収容密封後、加熱殺菌することを特徴とする調理栗の変色防止方法によって上記目的を達成する。
(A)酸素バリア層及び酸素吸収層を有する多層構造の容器であって、上記酸素バリア層が上記酸素吸収層よりも容器外側に形成されている容器
【0009】
好ましくは、調理栗が、皮付き生栗を剥皮した後焼成して得られた調理栗である。
【0010】
また、本発明は、下記工程を順次備えてなることを特徴とする密封容器入り調理栗の製造方法によって上記目的を達成する。
(1)皮付き生栗を、剥皮する工程
(2)上記剥皮した生栗を、焼成する工程
(3)上記焼成した栗を、下記容器(A)に収容密封後、加熱殺菌する工程。
(A)酸素バリア層及び酸素吸収層を有する多層構造の容器であって、上記酸素バリア層が上記酸素吸収層よりも容器外側に形成されている容器
【0011】
好ましくは、工程(3)において、密封する際に、不活性ガスによる酸素置換をする。
【0012】
すなわち、本発明者らは、調理栗の製造方法に拘わらず、加熱調理後の色調を長期間保持することができる密封容器入り調理栗、特に長期保存中の変色の目立つ、生の皮付き栗を剥皮してから焼成して得た調理栗に好適な、焼成直後の淡い黄色を長期間保持することができる密封容器入り調理栗について検討を行った。
その結果、調理栗の包装容器に着目し、種々検討を続けたところ、酸素バリア層及び酸素吸収層を有する多層構造の容器であって、上記酸素バリア層が上記酸素吸収層よりも容器外側に形成されている容器を用いると、外側からの酸素侵入を上記酸素バリア層が防止すると共に、容器内に残留している酸素を上記酸素吸収層が吸収することにより、調理栗の酸素吸収量を低減し得るため、調理栗を容器内で長期保存しても、調理栗の加熱調理直後の色調が保持され、変色が防止できることを見出した。
【発明の効果】
【0013】
本発明の密封容器入り調理栗によれば、調理栗の製造方法に拘わらず、焼成後剥皮して得られた調理栗はもちろんのこと、特に変色が目立ちやすい、剥皮後焼成して得られた調理栗であっても、加熱調理後の色調が長期保存中に変色することを防止でき、外観に優れた密封容器入り調理栗が得られる。
また、本発明によれば、変色防止剤を使用しなくてもよいので、栗のみを原料とする安全性の高い密封容器入り調理栗を提供することができる。
更に、本発明によれば、特殊な製造工程や製造装置が不要で、従来の製造設備を用いての量産化が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を詳しく説明する。
まず、本発明の調理栗とは、加熱調理された剥皮済みの栗であれば特に限定されるものではない。
上記加熱調理とは、焼成、蒸煮、煮熟等が挙げられる。この中でも、特に焼成は、長期保存中の変色が深刻な問題となる点で本発明に好適に用いられる。
具体的な調理栗としては、焼成後剥皮する調理栗や、剥皮後焼成する調理栗等が挙げられるが、特に、剥皮後焼成する調理栗は、長期保存中の変色が深刻な問題となる点で本発明に好適に用いられる。
【0015】
上記調理栗の原料となる皮付き生栗は、特に品種や大きさを限定するものではないが、例えば、日本栗(丹沢栗・利平栗・筑波栗・銀寄栗・国見栗・岸見栗等)、中国栗(天津栗、丹東栗等)、ヨーロッパ栗、アメリカ栗、朝鮮栗、オーストラリア栗等が挙げられる。特に、日本栗系統であって、比較的大粒で、渋皮が栗の果肉に密着して皮付きのまま加熱しても遊離しにくい栗品種である日本栗、丹東栗が、特に本発明の効果を好適に発揮する点で好適である。
【0016】
また、上記生栗は、鬼皮、渋皮を剥皮した後の栗果肉中の総フェノール量が1〜25mg%、あるいは糖度8〜23°に調整されていることが、変色防止の点で好適である。
このような条件は、例えば0〜10℃の範囲で4〜6ヶ月間、好適には通気性の良い包装体に収容して保管することにより得られる。通気性のよい包装体としては、例えば、綿、麻、不織布等が挙げられる。
【0017】
本発明に係る容器(A)は、酸素バリア層及び酸素吸収層を有する多層構造の容器であって、上記酸素バリア層が上記酸素吸収層よりも容器外側に形成されている容器であるが、この容器について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明に係る容器の一例を示す斜視図である。また、図2は、その正面縦中央端面図とその部分拡大図である。
【0018】
容器1は、調理栗10(図1にのみ図示)を収容するためのスタンディングパウチである。図2に示すように、この容器1の上方はヒートシール部2であり、この部分2を開口させて、収容部3に充填された調理栗10を取出すようになっている。
上記容器1は、4層構造となっており、外側から順に、12μmのポリエチレンテレフタレート(熱可塑性ポリエステル)層(符号4)、15μmのナイロン層(符号5)、7μmのアルミ箔層(符号6)、85μmの酸素吸収剤含有ポリプロピレン層(符号7)が接着剤(図示せず)を介して接合されて多層構造を形成している。なお、上記4層構造のうち、アルミ箔層6が酸素バリア層であり、酸素吸収剤含有ポリプロピレン層7が酸素吸収層となっている。
上述の通り、各層の厚みはそれぞれ異なるものであるが、図2においては、便宜上、厚みを均等に示している。
【0019】
このような多層構造とすることにより、容器1の外からの酸素を遮断すると共に、容器1内に残存する酸素を吸収するため、容器1の収容部3において、収容物である調理栗10の酸素吸収量を低減させることができ、調理栗10の品質劣化を防止し得、加熱調理直後の調理栗10の色調を長期間保持し得るのである。また、容器1内の残存酸素を酸素吸収層である酸素吸収剤含有プロピレン層7が吸収する際に、収容部3中の調理栗10の表面に残留する水分、もしくは高温で長期保存した場合や加圧加熱殺菌によって生じた結露由来の水分をも吸収するため、調理栗10表面がべたつかず、また、調理栗10表面がふやけて食感が軟らかくなることを防止するのである。
すなわち、本発明に係る容器は、酸素バリア層が酸素吸収層よりも容器外側に形成されるように設計することが、外からの酸素の遮断と収容部内の残存酸素の吸収を行い、調理栗の変色を防止する点及びべたつきを防止する点で重要である。
【0020】
なお、上記ポリエチレンテレフタレート(熱可塑性ポリエステル)層4は、熱可塑性で
あれば、その原料は、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂及びこれらの混合物等であってもよい。
【0021】
上記ナイロン層5は、落下の衝撃を吸収したり、柔軟性を付与したり、金属箔の腐食を防止するものであって、後述するアルミ箔層6と隣接して設けられることにより、上記作用を好適に発揮するように設計されている。
上記ナイロン層5は、落下の衝撃を吸収したり、柔軟性を付与したり、金属箔の腐食を防止する作用を有する素材であれば、例えばポリエステル等の延伸性を有する素材であってもよい。
【0022】
上記酸素バリア層であるアルミ箔層6は、外層を通過してくる酸素を遮断し、容器内に侵入することを防止するものである。
本発明に係る酸素バリア層としては、アルミ箔層に限定されず、例えば、エチレン含有量が20ないし60モル%、特に25ないし50モル%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を、ケン化度が96モル%以上、特に99モル%以上となるようにケン化して得られる共重合体ケン化物であってもよい。
【0023】
上記酸素吸収層である酸素吸収剤含有ポリプロピレン層7は、容器内の酸素を主に吸収するものであるが、上記アルミ箔層6を通過してきた酸素も吸収する。
酸素吸収剤としては、従来この種の用途に使用されている酸素吸収剤は全て使用可能であるが、一般的には還元性でしかも実質上水に不溶なものが好ましく、例えば還元性鉄、還元性亜鉛、還元性錫粉等の還元性を有する金属粉や、酸化第一鉄、四三酸化鉄等の金属低位酸化物や、炭化鉄、ケイ素鉄、鉄カルボニル、水酸化鉄等の還元性金属化合物等を単数もしくは複数組合わせたものが挙げられ、これ等は必要に応じてアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、第三リン酸塩、第二リン酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物等と組み合わせて使用することができる。
【0024】
更に、本発明に係る容器は、上記実施形態のスタンディングパウチに限定されるものではなく、密封し得れば例えば袋、箱、缶等の容器であればよい。また、容器の形状も特に限定するものではなく、カップ型、パウチ型等適宜設定すればよい。特に、携帯に優れた製品とするには、スタンディングパウチや、更にはパウチの開封部にジッパーなどの再封止可能な手段が設けられている容器とすることが好適である。
また、各層の厚みも上記実施形態に限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
更に、上記実施形態のスタンディングパウチは4層構造であったが、酸素バリア層が酸素吸収層よりも容器外側に形成されるように設計されていれば、積層数は特に限定するものではない。また、上記実施形態において、ナイロン層5とアルミ箔層6とを入れ替えたり等、本発明の範囲内で、積層順を設定すればよい。
【0025】
本発明に係る容器としては、上記実施形態の他に、特開2003-118778号公報記載のレトルト用パウチや、特開2000−7047号公報記載の包装材料を用いた容器や、特開平11−314305号公報記載の食品用包装材を用いた容器等が挙げられる。
また、具体的な商品名としては、例えば、東洋製罐(株)製の「オキシガードパウチ」(「オキシガード」は登録商標)等が挙げられる。
【0026】
次に、本発明の密封容器入り調理栗(剥皮後焼成する調理栗)は、例えば次のようにして製造される。
まず、好ましくは上記の総フェノール量、あるいは糖度に調整した皮付き生栗を、水洗し、浮き栗(腐った栗や虫喰い栗)や異物を除いた後、剥皮する。
剥皮方法は、手で包丁などによって剥皮する方法や、公知の剥皮装置等が挙げられる。
剥皮は、鬼皮と渋皮を取り除いて栗果肉のみを取り出すようにすれば良いが、渋皮を完
全に栗果肉から切除するように栗果肉表層部を削るように渋皮を剥くことが、調理栗の変色防止の点で好ましい。
このようにして得られる剥き栗は、黄色味を帯びた白色の色調を呈している。
【0027】
次いで、上記剥き栗を焼成する。
焼成方法は、特に限定するものではなく、従来用いられている焼成方法を適宜用いればよいが、特に、栗をオーブンのような乾熱加熱、もしくは熱風ローストのような流体加熱する方法が、表面に高温短時間で程よい焦げ色をつけ、また香ばしい風味を付与し、栗果肉内部まで加熱できる点で好適である。
上記流体加熱とは、流体(好ましくは空気などの気体)が加熱された状態で流動しているか、もしくは流体と熱源とが共存した状態で、流体が流動し、栗を熱交換しながら加熱するものである。中でも、流体が加熱された状態で流動する熱風通気処理が好ましい。
具体的には、ジェットゾーンシステム(連続式)、ジェットロースト(バッチ式)(共に、荒川製作所製)などの熱風乾燥やコーヒー豆の焙煎などに用いられる、熱風が滞留する装置を用いると好適である。
また、焼成条件は、例えば、オーブン加熱の場合、170〜230℃10〜30分程度である。このようにして焼成した栗果肉は、全体に淡い黄色を呈し、表面に狐色の焦げ目がつき、生栗で糖度12〜13°程度であったものが糖度16°程度となっており、香ばしく、そのままでも食することができる。
なお、上記の例では、栗果肉内部にまで火を通すことを前提とした条件を記したが、後述する加熱殺菌として加熱加圧殺菌を施す場合は、焼成温度を低くするか、焼成時間を短くして、加熱加圧殺菌時に栗果肉内部にまで熱を通すようにしてもよい。
【0028】
次に、焼成した剥き栗を容器に収容し、密封する。
容器は、上述の酸素バリア層及び酸素吸収層を有する多層構造の容器であって、上記酸素バリア層が上記酸素吸収層よりも容器外側に形成されている容器を用いる。
なお、好適には、不活性ガスによる酸素置換をしてから密封することが、変色防止の点で好適である。不活性ガスとしては、窒素、アルゴン等が挙げられる。
【0029】
また、焼成した剥き栗を容器に収容する際に、剥き栗表面に、水、水溶性多糖類、誘導蛋白質及び繊維状蛋白質から選ばれた少なくとも一方を施与すると、後工程の加熱加圧による剥き栗の変色防止の点で好適である。
上記水は、通常の上水道等から供給される水(飲料水、飲用水)等が挙げられる。
上記水溶性多糖類は、植物もしくは微生物由来の多糖類で、例えばアラビアガム、キサンタンガム、グアーガム、ジェランガム、タマリンドシーガム、寒天等が挙げられる。
上記誘導蛋白質は、天然蛋白質から誘導生成された非天然蛋白質で、ゼラチン、プロテオース、ペプトン等が挙げられる。
上記繊維状蛋白質は、ケラチン、コラーゲン、フィブロイン等が挙げられる。
剥き栗表面に施与する方法は、水の場合、浸漬する(どぶ漬け)方式、スプレーコーティング、回転釜、恒温高湿機、高湿度条件に設定したチャンバー等を用いる方法が挙げられる。また、水溶性多糖類は、水溶液化してコーティングする方法や、栗表面にまぶす方法等が挙げられる。
剥き栗に対する施与量は、水、水溶性多糖類の場合、好ましくは剥き栗全体重量中0.5〜10重量%、更に好ましくは、0.5〜2.5重量%とすることが、また、誘導蛋白質、繊維状蛋白質の場合は、好ましくは剥き栗全体重量中0.01〜0.05重量%となるようにすることが、変色を防止し、栗表面のべたつきを防止し得る点で好適である。
【0030】
次いで、上記容器内に収容密封された焼成剥き栗を、加熱殺菌することにより、密封容器入り調理栗が得られる。
殺菌方法は、長期保存と品質保持の観点から、レトルト殺菌(加熱加圧殺菌)を施すこ
とが望ましい。
レトルト殺菌条件としては、例えば、115〜125℃、1.7〜2.5Kg/cmで20〜60分とすることが、栗の形状を維持しながら殺菌できるという点で望ましい。
【0031】
上記のようにして得られた調理栗は、6ヶ月以上もの長期保存後であっても、加熱調理直後の好ましい色調を保持し、香ばしい風味を有するものである。
また、この調理栗は、そのままつまんで食しても、手が汚れず、連食性に優れている。また、調理栗表面のべたつきや栗同士の付着がない風味外観の良好な焼栗である。
【0032】
本発明の密封容器入り調理栗は、上述のようにそのまま食してもよいが、あるいは、栗ご飯、栗きんとんなど、各種栗調理食品の原料としても用いることができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例に基づき例示する。
【0034】
<実施例1>
中国丹東省産の皮付きの生栗を、水洗して、浮き栗や夾雑物、異物(小石や砂、金属、毛髪、糸くず、虫など)を除去した後、包丁で鬼皮、渋皮を完全に除去した。このときの栗果肉の糖度は12°、色調は黄色味を帯びた白色であった。
次いで、オーブンで170℃20分焼成し、表面に焦げ目をつけると共に、栗果肉内部まで熱を通した。このときの糖度は16°、色調は淡い黄色であった。
その後、この焼成した剥き栗を、図1及び2で示した、外側から順に、12μmのポリエチレンテレフタレート(熱可塑性ポリエステル)層(符号4)、15μmのナイロン層(符号5)、7μmのアルミ箔層(符号6)、85μmの酸素吸収剤含有ポリプロピレン層(符号7)が接着剤(図示せず)を介して接合されたスタンディングパウチ(東洋製罐(株)製「オキシガードパウチ」(「オキシガード」は登録商標))に、6個充填し、窒素ガスの封入によって残存酸素率2.0%未満とした後、ヒートシールによって密封後、121℃で30分間、熱水レトルトにて加熱加圧殺菌処理し、密封容器入り調理栗を得た。
【0035】
<比較例1>
調理栗を収容する容器として、ポリプロピレン及びアルミ箔の混合層から構成されるレトルトパウチを用いる他は、実施例1と同様にして密封容器入り調理栗を得た。
【0036】
上記のようにして得られた密封容器入り調理栗を、製造直後を基準とし、常温(25℃)3ヶ月保存後と、常温(25℃)6ヶ月保存後のそれぞれの色調変化(目視評価)、風味、食感を、専門パネラー10名にて官能比較した。その結果を、表1に示す。
また、色差計にて、製造直後を基準とした色差ΔEを測定した。
【0037】
【表1】

【0038】
上記の結果から、実施例1品は、製造直後と比べても、3ヶ月保存後では、風味、食感、外観のいずれもほぼ変化なく、6ヶ月保存後であっても、いずれも変化の度合いが小さく、特に色差は感知しうるほどの変化であったため、確実に変色防止がなされていると判断できる。また、風味は、香ばしさを維持し、食感は、歯入りの良いホックリとした良好な食感に変化していた。
これに対し、比較例1品は、3ヶ月保存後の時点から変色の度合いが大きく、特に色差が大きく、変色防止がなされていないと判断できる。また、風味は、香ばしさを維持していたが、食感に関しては、経時と共にべたつきが生じ、その結果、ふやけたような軟らか
な食感に変化した。
食感に関しては、実施例1品も比較例1品も変化を生じたが、その変化内容が異なるものであった。
【0039】
<実施例2>
中国産天津栗を、水洗して、浮き栗や夾雑物、異物(小石や砂、金属、毛髪、糸くず、虫など)を除去した後、流動層式ドライヤーオーブン(荒川製作所、ジェットゾーンシステム)を用いて、120℃の熱風(風速52m/秒)にて15分間加熱し(栗表面温度109℃)、渋皮、鬼皮を遊離させ、更に亀裂を生じさせ、自然冷却後、手で渋皮、鬼皮を同時に剥離し、剥き甘栗を得た。このときの色調は、黄〜薄い茶色であった。
次に、この剥き甘栗を、実施例1と同様に、東洋製罐(株)製「オキシガードパウチ」(「オキシガード」は登録商標)に6個充填し、窒素ガスの封入によって残存酸素率2.0%未満とした後、ヒートシールによって密封して、121℃で30分間、熱水レトルトにて加熱加圧殺菌処理し、密封容器入り調理栗を得た。
【0040】
<比較例2>
調理栗を収容する容器として、ポリプロピレン及びアルミ箔の混合層から構成されるレトルトパウチを用いる他は、実施例2と同様にして密封容器入り調理栗を得た。
【0041】
上記のようにして得られた密封容器入り調理栗を、製造直後を基準とし、40℃4週間保存後のそれぞれの色調変化を目視評価した。
その結果、実施例2品は、殆ど変色がなく、調理栗の好ましい色調の範疇である黄〜薄い茶の色調であったのに対し、比較例2品は、全体的に茶〜濃い茶褐色を帯びていたり、表面が緑色に変色しているものがあり、調理栗の好ましい色調の範疇からは逸脱したものであった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る容器の一例を示す斜視図
【図2】図1に示す容器の正面縦中央端面図とその部分拡大図
【符号の説明】
【0043】
1 容器
2 ヒートシール部
3 収容部
4 ポリエチレンテレフタレート(熱可塑性ポリエステル)層
5 ナイロン層
6 アルミ箔層
7 酸素吸収剤含有ポリプロピレン層
10 調理栗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理栗を、下記容器(A)に収容密封後、加熱殺菌してなることを特徴とする密封容器入り調理栗。
(A)酸素バリア層及び酸素吸収層を有する多層構造の容器であって、上記酸素バリア層が上記酸素吸収層よりも容器外側に形成されている容器
【請求項2】
調理栗が、皮付き生栗を剥皮した後焼成して得られた調理栗である請求項1記載の密封容器入り調理栗。
【請求項3】
調理栗を、下記容器(A)に収容密封後、加熱殺菌することを特徴とする調理栗の変色防止方法。
(A)酸素バリア層及び酸素吸収層を有する多層構造の容器であって、上記酸素バリア層が上記酸素吸収層よりも容器外側に形成されている容器
【請求項4】
調理栗が、皮付き生栗を剥皮した後焼成して得られた調理栗である請求項3記載の調理栗の変色防止方法。
【請求項5】
下記工程を順次備えてなることを特徴とする密封容器入り調理栗の製造方法。
(1)皮付き生栗を、剥皮する工程
(2)上記剥皮した生栗を、焼成する工程
(3)上記焼成した栗を、下記容器(A)に収容密封後、加熱殺菌する工程。
(A)酸素バリア層及び酸素吸収層を有する多層構造の容器であって、上記酸素バリア層が上記酸素吸収層よりも容器外側に形成されている容器
【請求項6】
工程(3)において、密封する際に、不活性ガスによる酸素置換をする請求項5記載の調理栗の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−73022(P2008−73022A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−258974(P2006−258974)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(393029974)クラシエフーズ株式会社 (64)
【Fターム(参考)】