説明

密接一体化構造体及びその製造方法

【課題】独立した形状を有する2つの部材を密接させて一体化させた構造体であって、長期的信頼性や耐環境性に優れ、低コストで生産性よく製造できる密接一体化構造体、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】縮小化処理によって形状を実質的に保存しながら不可逆的に収縮する性質をもつ物体Aαを、物体Bとの間にわずかな隙間を残して物体Bを挟み得る形状に形成する工程と、物体Aαを、物体Bとの間にわずかな隙間を残して物体Bを挟む位置に配置する工程と、前記縮小化処理によって物体Aαを収縮させ、物体Bに密接して物体Bを狭持する物体Aに変化させる工程とを順に行い、物体Aと物体Bとが一体に固定されている構造体を形成する。この際、非結晶化部分を有する熱可塑性結晶性高分子樹脂によって物体Aαを形成し、ガラス転移温度以上の温度に加熱することによって非結晶化部分を結晶化させ、物体Aαを収縮させるのがよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立した形状を有する2つの部材を密接させて一体化させた密接一体化構造体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの部材を一体に固定する方法として、融着、溶接、接着、はめ込み、およびねじ止めなどの方法がある。
【0003】
融着や溶接による方法は、少なくとも接合部が融解状態になるので、部材が変形したり、熱歪みが生じたりするおそれが多い。接着剤を用いる方法は、接着剤に起因する様々な問題が生じる場合がある。例えば、2つの部材と接着剤とは親和性を有している必要があり、接着できる部材の組合せが制限される場合がある。また、使用環境中に存在するガス状または液体状の物質によって接着剤が変質したり、熱や光によって接着剤が老朽化したりするなど、耐環境性や長期的信頼性に不安がある場合がある。また、接着剤に含まれる成分が周辺の部材や環境を汚染する場合もある。
【0004】
はめ込みやねじ止めなどの機械的な方法は、上記のような問題点がない。また、一体化と分離とを繰り返し行うことができる利点がある。しかし、はめ込みによる方法は、緩みなく一体化させるには高い加工精度が必要で、コスト高になりやすい。ねじ止めによる方法は、ねじ自体はねじ山とねじ溝との摩擦力によって固定されているので、使用中に振動などで緩み、外れてしまうおそれがある。また、部材の材質や形状によっては、ねじ部を設けることが難しい場合や、ねじ部の強度を十分に確保できない場合もある。
【0005】
そこで、上記とは異なる原理で2つの部材を一体に固定する方法が求められている。例えば、後述の特許文献1には、プレス加工によって成形した金属板を熱可塑性樹脂の射出成形金型内に取り付け、熱可塑性樹脂を金型内へ射出し、樹脂と金属板とを張り合わせる方法において、熱可塑性樹脂の溶融後の収縮を利用して、樹脂と金属板との張り合わせ状態を強固にする方法が提案されている。
【0006】
図8は、特許文献1に提案されている張り合わせ方法の一例を示す断面図(a)と、部分拡大図(b)および(c)とである。射出成形金型は上部100aと下部100bとからなり、金属板110は、上部100aと下部100bとの間の空間内に、上部100aに接するように配置される。部分拡大図(b)に示すように、金属板110の周縁部111の先には、熱可塑性樹脂120が張り合わされる側に向けて湾曲する折り返し部112が設けられている。周縁部111および折り返し部112に対向する射出成形金型上部100aの壁面101は少し窪んで作られており、周縁部111および折り返し部112との間に空隙が残るようになっている。なお、射出成形金型上部100aには、真空排気によって金属板110を密着させるためのOリング102および吸引孔103が設けられている。
【0007】
射出成形金型下部100bの注入孔104から、断面図(a)に矢印で示す方向に射出された熱可塑性樹脂120の一部は、周縁部111と折り返し部112との間の空間113に加圧注入され、部分拡大図(b)に矢印で示すように、周縁部111と折り返し部112とを金型壁面101に接するところまで押し広げる。この結果、部分拡大図(c)に示すように、空間113を占める熱可塑性樹脂120は断面が円形になるように膨らみ、周縁部111と折り返し部112との間に挟み込まれ、これらに密着する。
【0008】
このため、熱可塑性樹脂120が硬化する際に、部分拡大図(c)に矢印で示す方向に収縮しようとしても、熱可塑性樹脂120が金属板110から剥がれることがない。また、熱可塑性樹脂120が収縮しようとする力が、熱可塑性樹脂120と金属板110との密着を強化する力として作用する。このように、周縁部111に折り返し部112を設けた構造によって、熱可塑性樹脂120が硬化する際に収縮する性質を、熱可塑性樹脂120と金属板110との密着を強化する手段として利用することができる。
【0009】
【特許文献1】WO 00/46007号公報(第1及び2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したように、融着、溶接、接着、はめ込み、およびねじ止めなどの方法には、それぞれ欠点があり、これらとは異なる原理で2つの部材を一体に固定する方法または構造が求められている。特許文献1に示されている方法および構造は、熱可塑性樹脂の溶融後の収縮を利用する点が注目されるが、融解した熱可塑性樹脂を対象物の表面に融着させる場合に限定され、独立した形状を有する2つの部材を一体に固定する方法として応用できるものではない。
【0011】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、独立した形状を有する2つの部材を密接させて一体化させた構造体であって、長期的信頼性や耐環境性に優れ、低コストで生産性よく製造できる密接一体化構造体、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
即ち、本発明は、物体Aαが形状を実質的に保存しながら不可逆的に収縮して生じた物体Aが、物体Bに密接し、物体Bを狭持することによって、物体Aと物体Bとが一体に固定されている、密接一体化構造体に係わるものである。
【0013】
また、
縮小化処理によって形状を実質的に保存しながら不可逆的に収縮する性質をもつ物体 Aαを、物体Bとの間にわずかな隙間を残して物体Bを挟み得る形状に形成する工程と 、
物体Aαを、物体Bとの間にわずかな隙間を残して物体Bを挟む位置に配置する工程 と、
前記縮小化処理によって物体Aαを収縮させ、物体Bに密接して物体Bを狭持する物 体Aに変化させる工程と
を順に行い、物体Aと物体Bとが一体に固定されている構造体を形成する、密接一体化構造体の製造方法に係わるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の密接一体化構造体及びその製造方法において、物体Aが物体Aαの形状を実質的に保存していることが重要である。「形状を実質的に保存する」とは、物体Bに接する接触部に関しては、物体Aは物体Aαと異なる形状に変形している可能性があるが、それ以外の、構造部材や機能部材としての物体Aの性能に関わる部分に関しては、わずかに小型化していることを除けば、物体Aは物体Aαと同じ形状を有しており、その結果として、そのままで構造部材や機能部材として用いられる性能を有しているという意味である。また、必要なら、収縮分を考慮して物体Aαを設計したり、収縮後に仕上げ加工したりすることによって、物体Aを精密部品用途に用いることもできるという意味である。この点で、物体Aαは、元の形状を失うことによってその役割をはたすシュリンクフィルムなどとは、本質的に異なっている。
【0015】
また、物体Aが物体Bの少なくとも一部を挟持しており、物体Aαがそれを可能にする位置に配置されることも重要である。これによって、物体Aαもしくは物体Aが収縮しようとする力が、物体Aが物体Bを挟持する力として作用し、物体Aと物体Bとを一体に固定する力として作用する。
【0016】
この際、物体Aαの収縮は不可逆的であるため、形状記憶樹脂や形状記憶合金などのように変形が可逆的に起こる材料を用いる場合と異なり、温度などの環境条件の変化によって物体Aと物体Bとの一体化構造が壊れることがない。また、ねじ止めにおけるねじの緩みのような問題も生じない。また、物体A及び物体B以外の第三の物質を用いないので、接着剤を用いる接着法と異なり、第三の物質の導入によって生じる問題がない。以上の結果、耐環境性や長期的信頼性に優れた一体化構造体が得られる。
【0017】
また、物体Aαは収縮して物体Bに密接する大きさであればよいので、物体Aαの加工精度は、はめ込みに用いられる部材ほど高い加工精度は必要ではない。また、ねじ止めによる機械的な組み立てに比べ、工程数が減少する。以上の結果、製造歩留まりや生産性が向上し、製造コストが低下する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の密接一体化構造体及びその製造方法において、物体Aの外形形状は、物体Aαの外形形状を実質的に保存する一方、物体Bに接する物体Aの面の形状は、物体Bの面の形状に追従するように形成され、物体Aは物体Bに対する合わせ構造を有しているのがよい。前述したように、本発明の特徴は、物体Bに接する接触面を除けば、物体Aが物体Aαの形状を実質的に保存していることにあるが、物体Bに接する接触面に関しては、物体Aに接する物体Bの面に追従するように変形し、物体Bの面に対する合わせ構造を有しているのがよい。これによって、物体Aと物体Bとの一体化がより緊密になる。この点に関してはシュリンクフィルムに類似しているが、シュリンクフィルムと異なり、この変形が、物体Aの構造部材や機能部材としての性能に関わる外形形状に影響を与えることはない。
【0019】
この際、物体Aに接する物体Bの面の一部に凹部が形成されており、この凹部と、前記収縮によって前記凹部に侵入して形成された物体Aの凸部との間に、凹凸はめ合わせ構造が形成されているのがよい。この場合、物体Aと物体Bとの一体化がより強化され、特に凹部と凸部にずれを生じさせようとする外力に対する耐性が著しく向上する。従って、この密接一体化構造体は、ローラーとその回転軸のように、可動部に用いられる部材に特に適している
【0020】
また、物体Aαは、物体Bの外周面との間にわずかな隙間を残して、物体Bを環状又はほぼ環状に取り囲み得る形状を有し、物体Aは、物体Bの前記外周面の少なくとも一部と密接しているのがよい。前述したように、物体Aは物体Bの少なくとも一部を狭み込む形状を有しているが、それを徹底させた一例がこの場合である。例えば、ローラーとその回転軸のように、物体Bが棒状で、物体Aがその周囲を取り囲むように配置される部材である場合に好適である。
【0021】
また、前記収縮が加熱によって生じるのがよい。前記収縮を引き起こす処理方法はとくに限定されるものではないが、加熱処理は、物体Aαの全体を均一に収縮させることができるので好ましい。
【0022】
また、物体Aαが、少なくとも一部に非結晶化部分を有する熱可塑性結晶性高分子樹脂を含有する材料によって形成され、前記加熱によって前記非結晶化部分が結晶化することによって収縮し、物体Aとなるのがよい。以下、この点について説明する。
【0023】
物質が温度上昇によって収縮する現象の1つに、その物質がある温度で相転移を起こし、密度がより大きい状態に変化する現象がある。例えば、0℃で氷が融解して液体の水を生じる変化もその1つの例である。このような相転移が不可逆的であることを特徴とする現象として、熱可塑性結晶性高分子樹脂の結晶化が挙げられる。
【0024】
結晶状態とは、分子同士が規則正しく整列している状態のことである。熱可塑性高分子樹脂には、高分子鎖が整列しやすい分子構造を有する結晶性高分子樹脂と、高分子鎖が整列しにくい非結晶性高分子樹脂とがある。結晶性高分子樹脂といえども、樹脂のすべての部分が必ず結晶化しているということではなく、一般的には、整列している結晶化部分と整列していない非結晶化部分とが混在している。全体に対する結晶化部分の割合を結晶化度という。結晶化度は、同種の結晶性高分子樹脂であっても、製造工程での樹脂の履歴などによって変化する。
【0025】
熱可塑性結晶性高分子樹脂はガラス転移点をもつ。ガラス転移点をもつ高分子樹脂の非結晶化部分は、温度が低くて分子の熱運動が低調である場合には、高分子鎖の分子内回転が高分子鎖間の分子間力によって束縛されて凍結されている状態、すなわちガラス状態にある。一方、温度が上昇して分子運動が激しさを多少増した場合には、高分子鎖の分子内回転が高分子鎖間の分子間力による束縛に抗して可能である状態、すなわちゴム状態をとる。ガラス転移温度は、ガラス転移点をもつ高分子樹脂のガラス転移が起こる温度であり、高分子樹脂の非結晶化部分がガラス状態からゴム状態へ転移する温度である。
【0026】
ガラス転移温度は融点より低い温度である。熱可塑性結晶性高分子樹脂の温度がガラス転移温度をこえても、融点未満であれば、結晶化部分は結晶状態を保ち、硬いままである。このため、この温度領域では高分子樹脂の変形は可能になるものの、高分子樹脂を変形させる力を加えない限り、樹脂はおおもとの形状を保つことができる。そして、この温度領域におかれた熱可塑性結晶性高分子樹脂は、非結晶化部分の高分子鎖が徐々に整列して結晶化する。いったん、結晶化した部分は、融点以上の温度にならなければ結晶状態を維持する。従って、熱可塑性結晶性高分子樹脂の温度をガラス転移温度以上、且つ融点未満の温度に保つことによって、高分子樹脂の形状を保存しながら、高分子樹脂を不可逆的に結晶化させることができる。
【0027】
熱可塑性結晶性高分子樹脂は、一般に、結晶化状態の方が非結晶化状態よりも密度が大きく、結晶化すると体積が減少する。これは、結晶化すると、高分子鎖の整列によって、高分子鎖間にある隙間が減少するからである。以上のことから、物体Aαを構成する材料として熱可塑性結晶性高分子樹脂を含有する材料を用い、物体Aαをガラス転移温度以上、且つ融点未満の温度で加熱処理して結晶化させることによって、本発明を実現できることがわかる。この場合、融着や溶接と異なり、高分子樹脂は融解しないので物体Aは物体Aαの形状を実質的に保存することができる。なお、物体Aαを構成する材料はこれに限られるものではなく、例えば、比較的重合度の低い熱硬化性高分子樹脂であってもよい。この場合、加熱処理によって重合反応が進み、重合度が高くなり、体積が減少する。
【0028】
さて、前記熱可塑性結晶性高分子樹脂を結晶化させずに成形物を得るには、溶融状態からガラス転移温度より低い温度まで短時間のうちに急速に冷却すればよい。冷却のために許容される時間は、樹脂の結晶核生成速度および結晶成長速度によって決まる。前記熱可塑性結晶性高分子樹脂を成形する一般的な方法として、射出成形、圧縮成形、真空成形、プレス成形、カレンダー成形、押出成形、およびブロー成形などがある。これらのうち、物体Aαを射出成形によって形成するのがよく、その金型温度をガラス転移温度よりも低くしておくのがよい。射出成形は、他の方法に比べて内部の残留応力が少なく、熱処理をすることにより形状の歪みを小さくすることができるので好ましい。射出成形で成形された物体Aαは等方的に収縮し、形状を実質的に保存する。
【0029】
これに対して、高分子鎖を一定方向に配向させる作用をもつ成形方法は、収縮に際して異方性が生じるので、好ましくない。特に、延伸方向における大きな収縮を期待して、1軸延伸処理または2軸延伸処理を施したフィルムを用いるシュリンクパッケージは、本発明における物体Aαと、目的およびその実現方法が全く異なっている。
【0030】
また、生産性の観点から、前記熱可塑性結晶性高分子樹脂のガラス転移温度が60℃〜150℃であるのがよい。前述したように、前記熱可塑性結晶性高分子樹脂の前記非結晶化部分を結晶化させるには、ガラス転移温度以上、且つ融点未満の温度で加熱処理することが必要である。従って、樹脂のガラス転移温度が実用上問題ない温度以上である必要がある。また、電子部品などに用いる場合には、加熱処理温度の上限は半田の融点(220℃前後)以下であることが望ましい。
【0031】
また、前記熱可塑性結晶性高分子樹脂が、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリブチレンテレフタラート樹脂、及びポリ乳酸樹脂のうちの少なくとも1種を主成分として含有するのがよい。前記熱可塑性結晶性高分子樹脂のうち、結晶化が起こりにくいポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリブチレンテレフタラート樹脂、及びポリ乳酸樹脂は、溶融状態から急冷することにより、結晶化度の小さい状態を作り出すことができるので、物体Aαを構成する材料として好適である。他方、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などのポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、及びポリフェニレンスルフィド樹脂は、結晶化度の小さい状態を作り出すことが難しい。
【0032】
例えば、ポリ乳酸樹脂の場合、溶融状態から急速に冷却することにより、ほぼ非結晶の状態を作り出すことができる。ポリ乳酸樹脂のガラス転移温度は、分子量などにより異なるが、概ね60℃前後である。また、ポリエチレンテレフタラート樹脂も、ポリ乳酸樹脂と同様、溶融状態から急速に冷却することにより、ほぼ非結晶の状態を作り出すことができる。ポリエチレンテレフタラート樹脂のガラス転移温度は、分子量などにより異なるが、概ね70℃前後である。
【0033】
また、本発明の密接一体化構造体及びその製造方法において、前記収縮による物体Aαの収縮率が0.5%以上であるのがよい。収縮率は、下記の式
収縮率 =((収縮前の寸法−収縮後の寸法)/収縮前の寸法)×100
で定義される。「はめあい」のJIS規格による公差の基準では、例えば、基準寸法が8mmの軸孔の場合、「ゆるい」はめあい状態の孔径の最大値は8.036mmであるので、この状態から0.45%収縮すれば、基準寸法通りの孔径になる。従って、収縮率が0.5%以上であれば、物体Bに対して「ゆるい」はめあい状態で作られた物体Aαを収縮させ、基準寸法の物体Bに密接し、適度な力で物体Bを挟み込む物体Aを形成することができる。
【0034】
また、基準寸法が8mmの軸の場合、「ゆるい」はめあい状態の軸の直径の最小値は7.939mmであるので、収縮率が1.21%以上であれば、物体Aは「ゆるゆる」のはめあい状態に作られた物体Bであっても挟み込むことができる。但し、用途にもよるが、収縮率が大き過ぎると、物体Aをそのまま構造部材や機能部材として用いることができなくなるなどの問題が生じることもあるので、収縮率を適度な大きさに抑えることが望ましい。
【0035】
また、物体Aαが前記結晶化を促進する結晶核剤を含有しているのがよい。結晶核剤とは、結晶性高分子の一次結晶核となり、結晶性高分子の結晶成長を促進するものである。また、広義には結晶性高分子の結晶化を促進するものとされ、高分子の結晶化速度そのものを速くするものも結晶核剤と呼ぶことがある。いずれの結晶核剤でも、結晶化の速度を速めることができるので、結晶化に要する時間を短縮する効果がある。
【0036】
物体Aαを構成する材料としてポリ乳酸樹脂が特に好ましい。ポリ乳酸樹脂は射出成形に好適な樹脂であり、金型温度をガラス転移温度よりも低い温度にすることにより結晶化度が十分に小さく、結晶化による収縮率が0.5%以上、概ね1%前後の成形体を得ることができる。結晶化させるには60〜150℃の温度に加熱すればよく、100℃以下の温度で処理できるので好都合である。ポリ乳酸樹脂に有効な結晶核剤としては、例えば、タルクなどが公知である。また、特許公開番号WO 04/022649および特開2005−264147号公報に記載されているものや、各研究機関、企業、大学などにおいて発明されたものなどを用いることができる。また、必要に応じて難燃剤やフィラー、他の樹脂などを加えることも可能である。
【0037】
収縮率を調べた参考データとして、射出成形により得られた平板(縦50mm、横50mm、厚さ2mm)を、80℃で2時間、加熱処理し、結晶化による収縮を起こさせたときの収縮率を下記の表に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
上記の例のうち、ポリ乳酸樹脂のみが十分大きな収縮率を有し、外形形状の変形もなく、物体Aαを構成する材料として好ましいことがわかる。なお、延伸によって形成されたポリ乳酸樹脂シート(厚さ35μm)についても同様の試験を行ったが、変形量が大きすぎ、元の形状を維持できなかった。
【0040】
ポリ乳酸樹脂は資源および環境保全の立場からも有用である。従来用いられてきた多くの合成樹脂の原料は、石油や石炭や天然ガスなどの化石資源である。これらの合成樹脂には、近い将来、原料である化石資源が枯渇すること、廃棄された合成樹脂が自然界で分解されずに蓄積されること、焼却処理されるとその際排出される二酸化炭素が地球温暖化の一因になることなど、様々なことが懸念されている。
【0041】
このため、化石資源を原料としない合成樹脂として、植物や微生物などから得られる原料を用いる樹脂が注目されている。バイオマス原料は、大気中の二酸化炭素が光合成によって固定されたものであるので、資源が枯渇するということがない。また、自然界で生分解されるので、廃棄された樹脂が自然界で分解されずに蓄積されるおそれが少ない。また、焼却処理されても、もともと大気中に二酸化炭素として含まれていた炭素が、樹脂として一時的に利用された後、再び二酸化炭素として大気中に戻されるのであるから、大気中の二酸化炭素濃度の増加の原因になることはない。バイオマス原料を用いる樹脂のうち、ポリ乳酸樹脂は加工性および機械物性などが優れており、商業的に生産され、容易かつ安価に入手することができるので好ましい。
【0042】
また、本発明の密接一体化構造体は、回転体とその回転軸とが一体化されている機構部材、手動の回転体とその回転軸とが一体化されているダイヤル回転式機構部材、ねじ部、筐体、蓋材付き容器、又は保護材カバー付きの構造部材として構成されているのがよい。
【0043】
次に、本発明の好ましい実施の形態を図面参照下に説明する。
【0044】
実施の形態1
実施の形態1では、主として請求項1、2、4に関わる密接一体化構造体、および請求項11、12、14に関わる密接一体化構造体の製造方法の例について説明する。
【0045】
図1は、実施の形態1に基づく密接一体化構造体10の構造を示す斜視図(a)および断面図(b)である。密接一体化構造体10は、例えば、回転軸と一体化されたローラーである。形状を実質的に保存しながら不可逆的に収縮して生じた物体A1は、物体B2の外周面に密接しており、物体A1が物体B2を環状に取り囲み、挟持することによって、物体A1と物体B2とが一体に固定されている。
【0046】
図2は、実施の形態1に基づく密接一体化構造体10の作製工程のフローを示す斜視図および断面図である。
【0047】
まず、図2(a)に示すように、公知の方法で物体Aα11および物体B2を作製する。この際、物体Aα11は、縮小化処理によって形状を実質的に保存しながら不可逆的に収縮する性質をもつように形成する。例えば、物体Aα11を、非結晶化部分を有する熱可塑性結晶性高分子樹脂を含有する材料を用い、ガラス転移温度よりも低い温度に保たれた金型を用いて、射出成形によって形成する。また、物体Aα11を、物体B2との間にわずかな隙間を残して物体B2を環状に取り囲み得る形状に形成する。物体Aα11と物体B2とは、「はめあい」のJIS規格において、「ゆるい」はめあい状態の関係を満たすことが望ましい。すなわち、物体B2の外径が、物体Aα11の内径の99.5〜99%程度であるようにする。
【0048】
次に、図2(b)に示すように、物体Aα11が所定の位置で物体B2を環状に取り囲むように、物体Aα11と物体B2とを配置する。このとき、物体Aα11と物体B2との間にはわずかな隙間があるので容易に組み立てることができる。
【0049】
次に、図2(c)に示すように、物体Aα11を縮小化処理によって収縮させ、物体A1に変化させる。この際、物体Aα11は形状を実質的に保存しながら収縮し、物体A1に変化する。物体A1は物体B2に密接し、物体A1が物体B2を狭持することによって、物体A1と物体B2とが一体化する。物体Aα11が非結晶化部分を有する熱可塑性結晶性高分子樹脂を構成材料とする場合には、ガラス転移温度以上、且つ融点未満の温度に加熱することにより、物体Aα11の非結晶化部分を結晶化させ、物体Aα11を収縮させ、物体A1に変化させる。
【0050】
物体A1の外形形状は、物体Aα11の外形形状を実質的に保存する一方、物体B2に接する物体A1の面の形状は、物体B2の面の形状に追従するように形成され、物体A1は物体B2に対する合わせ構造を有しているのがよい。一般に、物体B2の表面は完全に平らではなく、微小な凹凸がある。物体B2に接する物体A1の面が、物体B2の表面にある微小な凹凸に追従するように変形し、物体B2の表面にある微小な凹凸に対する合わせ構造を形成することによって、物体A1と物体B2との一体化がより緊密になる。必要なら、意図的に物体B2の表面をざらつかせ、物体B2に接する物体A1の面にこの凹凸に対する合わせ構造を形成するようにしてもよい。
【0051】
実施の形態2
実施の形態2では、主として請求項3に関わる密接一体化構造体、および請求項13に関わる密接一体化構造体の製造方法の例について説明する。
【0052】
図3は、実施の形態2に基づく密接一体化構造体20の構造を示す斜視図(a)および断面図(b)である。密接一体化構造体20は、例えば、回転軸と一体化されたローラーである。形状を実質的に保存しながら不可逆的に収縮して生じた物体A21は、物体B22の外周面に密接しており、物体A21が物体B22を環状に取り囲み、挟持することによって、物体A21と物体B22とが一体に固定されている。
【0053】
密接一体化構造体20が密接一体化構造体10と異なるのは、物体A21と接する物体B22の外周面の一部に凹部23が形成されており、凹部23と、収縮によって凹部23に侵入して形成された物体A21の凸部24との間に、凹凸はめ合わせ構造が形成されていることである。この場合、物体A21と物体B22との一体化がより強化され、特に凹部23と凸部24にずれを生じさせようとする外力に対する耐性が著しく向上する。従って、この密接一体化構造体20は、ローラーとその回転軸のように、可動部に用いられる部材に特に適している。これ以外は密接一体化構造体10と同じであるので、相違点に重点をおいて、以下、製造方法を説明する。
【0054】
図4は、実施の形態2に基づく密接一体化構造体20の作製工程のフローを示す斜視図および断面図である。
【0055】
まず、図4(a)に示すように、公知の方法で物体Aα11および物体B22を作製する。この際、物体A21と接することになる物体B22の外周面の一部に、凹部23を形成する。図4(a)には環状に凹部23を形成する例を示したが、これに限られることはなく、任意の形状で設けることができる。但し、耐性を向上させたい外力が作用する方向を考慮して、その外力が強く作用すると凹部23と凸部24にずれが生じる形状に配置するのが効果的である。
【0056】
次に、図4(b)に示すように、物体Aα11が所定の位置で物体B22を環状に取り囲むように、物体Aα11と物体B22とを配置する。
【0057】
次に、図4(c)に示すように、物体Aα11を縮小化処理によって収縮させ、物体A21に変化させる。この際、物体A21の外形形状は、物体Aα11の外形形状を実質的に保存する一方、物体B22に接する物体A21の面の形状は、物体B22の面の形状に追従するように形成される。このため、物体A21の一部が凹部23に侵入し、物体A21の凸部24が形成される。このようにして、物体A21と物体B22とは、物体B22の凹部23と物体A21の凸部24との凹凸はめ合わせ構造を形成する。
【0058】
一例として、物体Aαを、貫通部の形状が直径3mm、厚さ2mmの円筒形になるように、ポリ乳酸樹脂を用いて作製し、物体Bを環状の凹部をもつようにステンレス鋼を用いて作製し、物体Aαに物体Bをはめ込んだ後、80℃に保たれたオーブン中にて2時間加熱処理を行ったところ、冷却後、物体Aと物体Bとは一体になっており、可動部分に用いても物体Aと物体Bとが外れることがなかった。
【0059】
図5および図6は、実施の形態2に基づく密接一体化構造体20の種々の例を示す斜視図である。物体Aα、物体B、および物体Bに設けられる凹部の形状は特に限定されず、密接一体化構造体20の用途に応じて適宜選択するのがよい。例えば、物体Aαおよび物体Bの水平方向の断面形状は円形であってもよいし(図5(a〜c))、四角形や三角形などの角形であってもよい(図5(d、e))。物体Bに設ける凹部の底面は、平滑であってもよいし(図5(a))、歯車状の山谷が形成されていてもよい(図5(b、c))。凹部の水平方向の断面形状は円形であってもよいし(図5(a〜c))、四角形や三角形などの角形であってもよい(図5(d、e))。また、凹部の中心軸が物体Bの中心軸と一致していなくてもよい。物体Bに形成する凹部の径の、物体Bの主部の径に対する比は、物体Aαの収縮率、物体Aαおよび物体Bの構造、並びに一体化構造体の用途などに合わせて最適な値を選択すればよい。
【0060】
また、図6(a)に示すように、物体Bの一部が物体Aαに差し込まれる形状でもよい。さらに、図6(b)および(c)に示すように、物体Bを物体Aにはめ込むことができれば、物体Aαに貫通孔が形成されていなくてもよい。
【0061】
実施の形態3
実施の形態1および2では、可動部に用いられる密接一体化構造体の例を示したが、実施の形態3では、容器や筐体の一部または全部として用いられる密接一体化構造体の例について説明する。
【0062】
図7(a)〜(c)は、実施の形態3に基づく密接一体化構造体の構造を示す断面図および部分拡大図である。断面図および左側の部分拡大図は収縮前の物体Aαと物体Bを示し、右側の部分拡大図は収縮後に形成される密接一体化構造体の一部(物体Aと物体Bとの接触部)を示している。密接一体化構造体の全体形状は、収縮前と実質的に同じであるので、図示は省略した。容器または筐体の水平方向における断面形状は特に制限されるものではなく、円形や、楕円形や、四角形などの角形などである。
【0063】
図7(a)は、実施の形態1に類似しており、物体B32に比してわずかに大きめに作られた物体Aα33が収縮することによって、収縮後の物体A31が物体B32に密接し、物体A31が物体B32を狭持することによって、物体A31と物体B32とが一体化する例である。
【0064】
図7(b)は、実施の形態2に類似している。図7(a)に示した例と同様、物体B42の側壁先端部43に比してわずかに大きめに作られた物体Aα46が収縮することによって、収縮後の物体A41が物体B42の側壁先端部43に密接し、物体A41が物体B42を狭持することによって、物体A41と物体B42とが一体化する。この際、物体B42に接する物体A41の面の形状は、物体B42の側面形状に追従するように形成されるが、物物体B42の側壁は先端部43以外の部分が先端部43に比べて凹んで形成されているため、物体A41の一部が凹部44に侵入し、物体A41の凸部45が形成される。このようにして、物体A41と物体B42とは凹凸はめ合わせ構造を形成する。
【0065】
図7(c)は、密閉性を高めるためにパッキング54を設けた例を示している。これ以外は、図7(a)に示した例と同じであるので、説明は省略する。
【0066】
図7(a)〜(c)に示した物体Aと物体Bとの密接構造を、物体Bの外周を完全に取りまくように形成すると、物体Aと物体Bとの一体化は強固になるが、その反面、物体Aと物体Bとを分離することは難しくなる。一方、例えば、四角形の対向する2辺には密接構造を形成し、残りの2辺では物体Aと物体Bとの間に隙間が残るようにするなど、物体Bの外周の一部に密接構造を形成しないようにすると、物体Aと物体Bとの分離が容易になり、物体Aを自在に着脱可能な蓋材として用いることができる。一般に物体Aと物体Bの一体化の強固さと着脱の容易さとは相反する要求になる傾向があるが、本発明によれば、物体Bの外周に形成する密接構造の割合を変更することによって、これら2つの要求を容易に調整することができる。この結果、密接一体化構造体の用途に応じて、一体化の強固さと着脱の容易さとを、ともに高いレベルで満足できるようにすることができる。
【0067】
上述した、本発明の実施の形態に基づく密接一体化構造体は、異なる部材の一体化が必要なすべての分野に応用できるが、可動部がある部材としては、例えば、電気電子機器および精密機器に用いられ、モーターで駆動される回転体(歯車やローラーなど)とその回転軸とからなる機構部材や、手動の回転体とその回転軸とからなる機構部材(ダイヤル回転式の可変抵抗やロータリースイッチなど)や、ねじ部などがあり、可動部がない部材としては、例えば、筐体(金属製シャーシと樹脂製構造材との複合構造体)や、蓋材付き容器や、保護材カバー付きの各種構造部材複合体などがある。
【0068】
特許文献1に示されている方法および構造は、先述したように、融解した熱可塑性樹脂を対象物の表面に融着させる場合に限定され、独立した形状を有する2つの部材を一体に固定する方法として応用できるものではない。さらに、熱可塑性樹脂を融着させた構造体の形状に合わせて、構造体ごとに専用の金型を作らねばならず、また、金型内で2つの部材を一体化させるので、金型が大型化するなどの問題点がある。これに対し、本発明では、物体Aαと物体Bとをそれぞれ作製した後に、両者を一体化するので、一体化構造体の形状や大きさに合わせた個別の金型を用意する必要がなく、一体化構造体の形状は両者の組合せとして自在に選択できる。
【0069】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によると、長期的信頼性や耐環境性に優れた一体化構造体(回転体とその回転軸とからなる機構部材や、筐体、容器、保護材で被覆された各種構造部材複合体などの構造部材)が、簡易に、生産性よく、低コストで得られるので、これらのさらなる性能向上と普及に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の形態1に基づく密接一体化構造体の構造を示す斜視図(a)および断面図(b)である。
【図2】同、密接一体化構造体の作製工程のフローを示す斜視図および断面図である。
【図3】本発明の実施の形態2に基づく密接一体化構造体の構造を示す斜視図(a)および断面図(b)である。
【図4】同、密接一体化構造体の作製工程のフローを示す斜視図および断面図である。
【図5】同、密接一体化構造体の例を示す斜視図である。
【図6】同、密接一体化構造体の例を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態3に基づく密接一体化構造体の構造を示す断面図および部分拡大図である。
【図8】特許文献1に提案されている張り合わせ方法の一例を示す断面図(a)と、部分拡大図(b)および(c)とである。
【符号の説明】
【0072】
1…物体A、2…物体B、10…密接一体化構造体、11…物体Aα、21…物体A、
22…物体B、20…密接一体化構造体、23…物体Bの凹部、24…物体Aの凸部、
31…物体A、32…物体B、33…物体Aα、41…物体A、42…物体B、
43…物体Bの側壁先端部、44…物体Bの側壁凹部、45…物体Aの凸部、
46…物体Aα、51…物体A、52…物体B、53…物体Aα、54…パッキング、
100a…射出成形金型上部、100b…射出成形金型下部、101…金型上部の壁面、
102…Oリング、103…吸引孔、104…注入孔、110…金属板、
111…金属板周縁部、112…金属板折り返し部、113…空間、
120…熱可塑性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体Aαが形状を実質的に保存しながら不可逆的に収縮して生じた物体Aが、物体Bに密接し、物体Bを狭持することによって、物体Aと物体Bとが一体に固定されている、密接一体化構造体。
【請求項2】
物体Aの外形形状は、物体Aαの外形形状を実質的に保存する一方、物体Bに接する物体Aの面の形状は、物体Bの面の形状に追従するように形成され、物体Aは物体Bに対する合わせ構造を有している、請求項1に記載した密接一体化構造体。
【請求項3】
物体Aに接する物体Bの面の一部に凹部が形成されており、この凹部と、前記収縮によって前記凹部に侵入して形成された物体Aの凸部との間に、凹凸はめ合わせ構造が形成されている、請求項2に記載した密接一体化構造体。
【請求項4】
物体Aαは、物体Bの外周面との間にわずかな隙間を残して、物体Bを環状又はほぼ環状に取り囲み得る形状を有し、物体Aは、物体Bの前記外周面の少なくとも一部と密接している、請求項1に記載した一体化複合構造体。
【請求項5】
前記収縮が加熱によって生じる、請求項1に記載した密接一体化構造体。
【請求項6】
物体Aαが、少なくとも一部に非結晶化部分を有する熱可塑性結晶性高分子樹脂を含有する材料によって形成され、前記加熱によって前記非結晶化部分が結晶化することによって収縮し、物体Aとなる、請求項5に記載した密接一体化構造体。
【請求項7】
物体Aαが射出成形によって形成される、請求項6に記載した密接一体化構造体。
【請求項8】
前記熱可塑性結晶性高分子樹脂が、そのガラス転移温度が60℃〜150℃である熱可塑性結晶性高分子樹脂である、請求項6に記載した密接一体化構造体。
【請求項9】
前記熱可塑性結晶性高分子樹脂が、ポリ乳酸樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、及びポリブチレンテレフタラート樹脂のうちの少なくとも1種を主成分として含有する、請求項6に記載した密接一体化構造体。
【請求項10】
物体Aαが前記結晶化を促進する結晶核剤を含有している、請求項6に記載した密接一体化構造体。
【請求項11】
前記収縮による物体Aαの収縮率が0.5%以上である、請求項1に記載した密接一体化構造体。
【請求項12】
回転体とその回転軸とが一体化されている機構部材、手動の回転体とその回転軸とが一体化されているダイヤル回転式機構部材、ねじ部、筐体、蓋材付き容器、又は保護材カバー付きの構造部材として構成されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載した密接一体化構造体。
【請求項13】
縮小化処理によって形状を実質的に保存しながら不可逆的に収縮する性質をもつ物体 Aαを、物体Bとの間にわずかな隙間を残して物体Bを挟み得る形状に形成する工程と 、
物体Aαを、物体Bとの間にわずかな隙間を残して物体Bを挟む位置に配置する工程 と、
前記縮小化処理によって物体Aαを収縮させ、物体Bに密接して物体Bを狭持する物 体Aに変化させる工程と
を順に行い、物体Aと物体Bとが一体に固定されている構造体を形成する、密接一体化構造体の製造方法。
【請求項14】
物体Aの外形形状は、物体Aαの外形形状を実質的に保存させる一方、物体Bに接する物体Aの面の形状は、物体Bの面の形状に追従するように形成し、物体Aに物体Bに対する合わせ構造を生じさせる、請求項13に記載した密接一体化構造体の製造方法。
【請求項15】
物体Aに接する物体Bの面の一部に凹部を形成しておき、この凹部と、前記収縮によって前記凹部に侵入するように形成させた物体Aの凸部との間に、凹凸はめ合わせ構造を形成する、請求項14に記載した密接一体化構造体の製造方法。
【請求項16】
物体Aαを、物体Bの外周面との間にわずかな隙間を残して、物体Bを環状又はほぼ環状に取り囲み得る形状に形成し、物体Aを、物体Bの前記外周面の少なくとも一部に密接させる、請求項13に記載した密接一体化構造体の製造方法。
【請求項17】
前記縮小化処理として加熱処理を行う、請求項13に記載した密接一体化構造体の製造方法。
【請求項18】
物体Aαを、少なくとも一部に非結晶化部分を有する熱可塑性結晶性高分子樹脂を含有する材料によって形成し、前記加熱処理によって前記非結晶化部分を結晶化させることによって収縮させ、物体Aに変化させる、請求項17に記載した密接一体化構造体の製造方法。
【請求項19】
物体Aαを射出成形によって形成する、請求項18に記載した密接一体化構造体の製造方法。
【請求項20】
前記熱可塑性結晶性高分子樹脂として、ポリ乳酸樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、及びポリブチレンテレフタラート樹脂のうちの少なくとも1種を主成分として含有する樹脂を用いる、請求項18に記載した密接一体化構造体の製造方法。
【請求項21】
物体Aαに結晶化を促進する結晶核剤を含有させる、請求項18に記載した密接一体化構造体の製造方法。
【請求項22】
前記加熱処理を60℃〜150℃で行う、請求項17に記載した密接一体化構造体の製造方法。
【請求項23】
前記収縮による物体Aαの収縮率を0.5%以上とする、請求項13に記載した密接一体化構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−292037(P2009−292037A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147866(P2008−147866)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】