説明

密着剤及び複合体

【課題】 金属と樹脂層との密着性が高く、この高い密着性を長期間に渡って維持することができる金属と樹脂層との密着に好適な密着剤および複合体を提供する。
【解決手段】 金属の表面の少なくとも一部に、下記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物の群より選択される少なくとも一種と、上記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物とからなる密着剤としての接着層が形成され、該接着層を介して前記金属と樹脂とが接着されていることを特徴とする複合体。
【化16】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば多層プリント配線板等に用いられる金属と樹脂とを密着させる密着剤及びこの密着剤を用いてなる複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複合体や接着剤が適用される一例として、ビルドアップ多層プリント配線板は、例えば、特開平9−130050号公報等に開示された方法により製造されている。即ち、まず、銅箔が貼り付けられた銅張積層板に貫通孔を形成し、続いて無電解銅めっき処理を施すことによりスルーホールを形成する。続いて、基板の表面をフォトリソグラフィーの手法を用いて導体パターン状にエッチング処理して導体回路を形成する。次に、形成された導体回路の表面に、無電解めっきやエッチング等により粗化層を形成し、その粗化層の上に絶縁樹脂の層を形成した後、露光、現像処理を行ってバイアホール用開口を形成し、その後、UV硬化、本硬化を経て層間樹脂層を形成する。
【0003】
さらに、層間樹脂層に酸や酸化剤などにより粗化処理を施した後、薄い無電解めっき層を形成し、この無電解めっき層上にめっきレジストを形成した後、電解めっきにより厚付けを行い、めっきレジスト剥離後にエッチングを行って導体回路を形成する。これを繰り返した後、最外層として導体回路を保護するためのソルダーレジスト層を形成し、その後、ソルダーレジスト層に開口を形成し、該開口の下に存在する導体回路にめっき等を施して半田バンプ形成用パッドとした後、ICチップ等の電子部品やマザーボード等との接続のための半田バンプを形成することにより、ビルドアップ多層プリント配線板を製造する。
【0004】
近年、多層プリント配線板の小型化、高密度化が要求され、多層プリント配線板における導体回路の幅や導体回路間の距離が短くなってきている。そのため、上記した製造方法にあるように、エッチング液を用いて粗化層を形成した場合、導体回路側面の凹凸が導体回路上面の凹凸に比べて小さくなったり、導体回路がアンダーカット形状になってしまうことがあった。これは、導体回路間の距離の長い部分と短い部分とでは、エッチング液の入り込み易さが異なり、導体回路間の距離の短い部分では、エッチング液が入り込みにくいためであると考えられる。即ち、エッチング液の入り込み易さの違いに起因して、エッチング処理時間が短すぎると、側面の凹凸が小さい導体回路が存在することとなり、エッチング処理時間が長すぎるとアンダーカット形状の導体回路が存在することとなる。
【0005】
また、めっきにより粗化層を形成した場合にも、導体回路間の距離が短いところでは、導体回路間にめっき液が入りこみにくいことに起因して、導体回路側面で金属が析出しにくく、導体回路側面の凹凸が導体回路上面の凹凸に比べて小さくなってしまうことがあった。このように導体回路表面に十分な大きさの凹凸を有する粗化層が形成できないと、導体回路と樹脂層との密着性が不十分となり、導体回路と樹脂層との間で剥離が発生したり、樹脂層にクラックが発生したりするという問題があった。特に、導体回路の側面に粗化面が形成できなかった場合に、この問題が発生しやすかった。
【0006】
また、導体回路と樹脂層との密着性を確保するために導体回路表面に大きな凹凸を有する粗化層を形成すると、GHz帯域の高周波信号を使用する電子部品を使用した場合、以下のような理由により、信号遅延や信号エラー等が発生するという問題があった。即ち、電気信号は表皮効果により導体回路の表層付近に沿って伝達されるため、導体回路表面に粗化層を形成した場合、この粗化層に沿って伝達され、その結果、電気信号の実際の伝達距離が、導体回路の距離から予想される見かけの伝達距離よりも長くなってしまい信号遅延や信号エラーが発生する。
【0007】
このような導体回路表面に形成された粗化層に起因する信号遅延や信号エラー等の不都合を回避するためには、粗化層の凹凸を小さくする必要がある。しかしながら、粗化層の凹凸を小さくすると、既に述べたように、導体回路と樹脂層との密着性が低下するため、導体回路と樹脂層との間で剥離が発生したり、樹脂層にクラックが発生したりするという問題があった。
【0008】
そこで、導体回路と樹脂層とをより強力に密着させることが必要となるが、この方法として、例えば、特開昭64−53495号公報、特開平10−335782号公報、特開平1−246894、特開平4−59242号公報等において、導体回路表面にトリアジン化合物を含む層を形成する方法が開示されている。
【0009】
具体的に、特開昭64−53495号公報では、内層板とプリプレグと銅箔とを積層し、加熱加圧成形してなる多層プリント配線板であって、該内層板と該プリプレグとが該内層板の表面に形成されたトリアジンチオール化合物の層を介して成形一体化された多層プリント配線板が開示されている。
【0010】
しかしながら、ここに開示されている6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオールのシクロヘキサン溶液に導体回路を形成した基板を浸漬した後、該導体回路上に層間樹脂層を形成することにより導体回路と樹脂層の形成された基板を得、この基板について、ピールテスト(引っ張りテスト)を行ってみたところ、約0.1kgf/cmのピール力で樹脂層が剥離してしまい、多層プリント配線板に要求される導体回路と樹脂層との密着力としては不十分であった。また、上記方法により導体回路と樹脂層とが形成された基板に信頼性試験(高温高湿下におけるヒートサイクル試験)を行ったところ、信頼性試験後の導体回路と樹脂層との密着性はさらに低下していた。即ち、このような方法では、両層との密着性に優れた層を形成することはできない。
【0011】
また、特開平10−335782号公報では、導体金属体の上面にトリアジンチオール化合物の表面処理層が形成され、該表面処理層上にトリアジンチオール化合物と化学結合可能な合成樹脂(ABS樹脂、SPS樹脂)による成形部が形成され、さらに、この成形部の上面に導体金属体が形成され、上下の導体金属体が直接導通する導電体部が形成された成形回路部品が開示されている。
【0012】
しかしながら、この成形回路部品で使用しうる樹脂層を形成するための樹脂は、ABS樹脂、SPS樹脂等のトリアジンチオール化合物と化学結合可能な樹脂に限定されており、一般に多層プリント配線板で汎用されるエポキシ樹脂やポリオレフィン樹脂は検討されておらず、また、これらの樹脂はトリアジンチオール化合物と反応しにくく、樹脂層として使用することは難しかった。
【0013】
特開平1−246894号公報では、レジストを施して回路パターンを形成し、粗化層を設けた接着剤層にトリアジン化合物等を水や溶液に溶解又は懸濁させた溶液に、回路パターンの形成された基板を浸漬処理し、無電解めっき処理を施すことにより、接着剤界面の銅の溶解や溶出の抑制、または、溶出したイオンを補足して不活性化させることにより絶縁劣化を抑制させる方法が開示されている。
【0014】
しかしながら、この方法で製造したプリント配線板の導体回路と樹脂層との密着性を評価するために、ピールテスト(引っ張りテスト)試みたところ、約0.1kgf/cmのピール力で樹脂層が剥離してしまい、多層プリント配線板に要求される導体回路と樹脂層との密着力としては不十分であった。
【0015】
特開平4−59242号公報では、金属板あるいは銅箔にトリアジン誘導体、トリアゾール誘導体またはヒドラジン誘導体からなるキレート剤を添加した熱硬化性樹脂溶液を塗布、乾燥することにより、絶縁層を有する金属板ベース銅張積層板を得る製造方法が開示されている。しかしながら、この方法で得られる銅張積層板は、銅イオンのマイグレーションが抑制されるため、絶縁性能の低下はないものの、導体回路と樹脂層との密着性が高くなく、導体回路と層間樹脂層との間で剥離が発生したり、樹脂層にクラックが発生したりし易かった。
【0016】
【特許文献1】特開平9−130050号公報
【特許文献2】特開昭64−53495号公報
【特許文献3】特開平10−335782号公報
【特許文献4】特開平1−246894号公報
【特許文献5】特開平4−59242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
このように、従来の製造方法を用いて、導体回路の表面にトリアジン化合物を含む層を形成する場合、導体回路と層間樹脂層との密着性は、十分とはいえなかった。これは、トリアジン化合物を含む層を形成する方法として、例えば、予め、トリアジン化合物と有機化合物とを反応させた6−ジブチルアミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール等の化合物を含む溶液中に導体回路の形成された基板を浸漬することにより行っていたからではないかと考えられる。即ち、導体回路表面にトリアジン化合物と有機化合物とを反応させた化合物が結合しない部分があると、その部分は、酸素や炭酸ガス等にさらされやすいため酸化されやすく、これが、導体回路と層間樹脂層との間で十分な密着性を得ることができない原因ではないかと考えられる。また、トリアジン化合物と有機化合物とを反応させた化合物が多層プリント配線板の製造工程で酸素や炭酸ガス等により酸化される場合があり、これに起因して、導体回路と層間樹脂層との密着性が低下することも考えられる。
【0018】
上記したようにトリアジン化合物はその特有の性質を利用してプリント基板に用いられているが、プリント基板に限らず、複合体として、また接着剤としても用いられている。例えば、接着剤を使用しないで、ニトリル基含有高飽和強重合ゴムとニッケルめっきした金属板とが強固に接着されたゴム積層体が特開平9−57897号公報に、三次元の分子間結合をできるようにしたトリアジンジチオール誘導体を提供するとともに、これを用いて物体の表面処理を行い、被膜強度を高め耐久性を向上させることが特開平10−237047号公報に、そしてニッケルめっきスチールコードに特別の処理を施すことなく、良好なゴム接着性を示すニッケルめっきスチールコード−ゴム接着複合体が特開平10−245440号公報にそれぞれ記載されているが、上記理由と同様に問題点を有しており、いずれも密着剤として、また複合体としての機能が、十分に発揮されているとはいえない。
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、密着性の高い密着剤および金属と樹脂との間に高い密着性のある複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願発明者らはこの課題について鋭意検討し、特定のトリアジン化合物とこれと反応または吸着可能な有機化合物との反応物または吸着物を用いることにより、所望の密着剤及び複合体を製造することができることを見い出し、以下に示す内容を要旨構成とする本発明を完成するに至った。
【0020】
本発明の密着剤は、下記一般式(1)
【0021】
【化5】

【0022】
(式中、A1 、A2 、A3 は、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、または、置換若しくは無置換のアンモニウムを表し、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。)
で表されるトリアジン化合物、
下記一般式(2)
【0023】
【化6】

【0024】
(式中、A4 、A5 は、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、または、置換若しくは無置換のアンモニウムを表し、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。)
で表されるトリアジン化合物、および、
下記一般式(3)
【0025】
【化7】

【0026】
(式中、A6 は、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、または、置換若しくは無置換のアンモニウムを表し、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。)
で表されるトリアジン化合物からなる群より選択される少なくとも一種と、
前記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物との反応物または吸着物を含んでなる構成としている。
【0027】
このような密着剤は、例えば、金属をトリアジン化合物と有機化合物とを含む溶液中に浸漬するか、または、トリアジン化合物を含む溶液中に浸漬した後、該金属を有機化合物を含む溶液中に浸漬することによりトリアジン化合物を含む層を形成し、その後、樹脂層を形成することにより、金属と樹脂層との間に形成される。
【0028】
また、本発明の複合体は、上記の密着剤を接着層とし、該接着層を介して金属と樹脂とが接着されている構成としている。具体的には、例えば、金属をトリアジン化合物と有機化合物とを含む溶液中に浸漬するか、または、トリアジン化合物を含む溶液中に浸漬した後、該金属を有機化合物を含む溶液中に浸漬することによりトリアジン化合物を含む層を形成し、その後、樹脂層を形成することにより、金属と樹脂層との間に密着剤を形成し、金属と樹脂層とを密着させる。密着剤による密着性が高く、この高い密着性を長期間に渡って維持することができる。
【0029】
本発明の密着剤及び複合体において、上記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物は、下記一般式(4)
NHR2 −R1 −NHR3 ・・・(4)
(式中、R1 は、置換または無置換のフェニレン基、キシリレン基、アゾ基、アゾ基を有する有機基、2価のベンゾフェノン残基、2価のフェニルエーテル残基、アルキレン基、シクロアルキレン基、ピリジレン基、エステル残基、スルフォン基、または、カルボニル基を表す。また、R2 、R3 は、水素またはアルキル基を表し、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。)で表される有機化合物が望ましい。
【0030】
また、上記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物は、下記一般式(5)
4 −NH2 ・・・(5)
(式中、R4 は、フェニル基、ビフェニリル基、置換または無置換のベンジル基、アゾ基を有する有機基、ベンゾイルフェニル基、置換または無置換のアルキル基、シクロアルキル基、アセタール残基、ピリジル基、アルコキシカルボニル基、または、アルデヒド基を有する有機基を表す。)で表される有機化合物が望ましい。
【0031】
また、上記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物は、下記一般式(6)
5 −NH−R6 ・・・(6)
(式中、R5 、R6 は、フェニル基、アゾ基を有する有機基、ベンゾイルフェニル基、アルキル基、ピリジル基、アルコキシカルボニル基、アルデヒド基、ベンジル基、または、不飽和基を表し、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。)で表される有機化合物が望ましい。
【0032】
また、上記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物は、下記一般式(7)
【0033】
【化8】

【0034】
(式中、R7 、R8 、R9 は、フェニル基、ベンジル基、アゾ基を有する有機基、ベンゾイルフェニル基、置換または無置換のアルキル基、ピリジル基、アルコキシカルボニル基、アルデヒド基、ニトロソ基を表し、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。)で表される有機化合物が望ましい。
【0035】
また、上記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物は、下記一般式(8)
OH−R10−OH・・・(8)
(式中、R10は、置換または無置換のフェニレン基、アゾ基を有する有機基、2価のベンゾフェノン残基、アルキレン基、シクロアルキレン基、ピリジレン基、または、アルコキシカルボニル基を表す。)で表される有機化合物が望ましい。
【0036】
また、上記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物は、下記一般式(9)
11−X1 −R12・・・(9)
(式中、R11、R12は、不飽和基を表し、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、X1 は、2価のマレイン酸残基、2価のフタル酸残基、または、2価のアジピン酸残基を表す。)で表される有機化合物が望ましい。
【0037】
また、上記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物は、下記一般式(10)
13−X2 ・・・(10)
(式中、R13は、不飽和基を表し、X2 は、置換または無置換のフェニル基、アルキル基、アミノ酸残基、水酸基を有する有機基、シアヌル酸残基、または、アルコキシカルボニル基を表す。)で表される有機化合物が望ましい。
【0038】
また、上記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物は、下記一般式(11)
14−N=CO・・・(11)
(式中、R14は、置換または無置換のフェニル基、ナフチル基、置換または無置換のアルキル基、ベンジル基、ピリジル基、または、アルコキシカルボニル基を表す。)で表される有機化合物が望ましい。
【0039】
また、上記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物は、下記一般式(12)
15−X3 ・・・(12)
(式中、R15は、フェニル基、置換または無置換のアルキル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、または、ビニル基を表し、X3 は、アクリル酸残基を表す。)で表される有機化合物が望ましい。
【0040】
また、上記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物は、カルボニル基を有する化合物が望ましい。
【0041】
また、上記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物は、ビニル基含有化合物、エポキシ基含有化合物、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤およびアルミニウム系カップリング剤の中から選ばれる少なくとも1種の有機化合物が望ましい。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、特定のトリアジン化合物とこれと反応または吸着可能な有機化合物との反応物または吸着物を用いることにより、金属と樹脂との間に高い密着性を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明の複合体は、金属の表面の少なくとも一部に、
上記一般式(1)で表されるトリアジン化合物、上記一般式(2)で表されるトリアジン化合物、および、上記一般式(3)で表されるトリアジン化合物からなる群より選択される少なくとも一種と、
前記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物とならなる接着層が形成され、
該接着層を介して金属と樹脂とが接着されていることを特徴とする。
本発明の複合体によれば、金属と樹脂との間の密着性が高く、この高い密着性を長期間にわたって維持することができる。
【0044】
本発明の密着剤は、上記一般式(1)で表されるトリアジン化合物、上記一般式(2)で表されるトリアジン化合物、および、上記一般式(3)で表されるトリアジン化合物からなる群より選択される少なくとも一種と、
前記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物との反応物または吸着物を含んでなることを特徴とする。
本発明の密着剤によれば、被接着体間の密着性が高く、この高い密着性を長期間にわたって維持することができる。
【0045】
これは、一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と金属とが反応し、その後、上記トリアジン化合物と有機化合物との反応等が行われるため、以下のような理由により、上記特性を有する複合体、密着剤を製造できるのではないかと考えられる。
【0046】
即ち、本発明の複合体、密着剤においては、まず、一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と金属とが反応するが、上記トリアジン化合物は極めて活性であるため金属と反応しやすく、金属層上に高密度の上記トリアジン化合物を含む層が形成される。
【0047】
このように上記トリアジン化合物と金属との結合が形成されると、続いて、上記トリアジン化合物と上記有機化合物との反応や上記有機化合物の上記トリアジン化合物への吸着が進行し、この反応等によってトリアジン化合物が安定化されるとともに、金属層もトリアジン化合物を介して供給される電子を受容してマイナスに帯電することにより安定化され、金属と上記トリアジン化合物との結合は切断されにくくなり、金属と上記トリアジン化合物とは安定した密着層を形成する。
【0048】
また、金属層上にこのような高密度の上記トリアジン化合物の層が形成され、かつ、金属層も安定化するため、金属表面は、酸素や炭酸ガス等により酸化されにくくなる。さらに、用いた有機化合物が上記トリアジン化合物のほかに金属表面に吸着することも考えられ、これにより、金属層は一層酸素等により酸化されにくくなる。
【0049】
一方、このようにトリアジン化合物に上記有機化合物が反応、吸着した層は、有機物からなる層であり、この層は、樹脂層と反応して化学結合を形成するか、または、樹脂層と高い親和性を有する。そのため、樹脂層との密着性にも優れるのである。
【0050】
本発明に係る複合体と密着剤の共通する用途として、具体的に多層プリント配線板の製造方法を例に挙げて説明する。
【0051】
ここでは、まず、本発明の複合体または密着剤用の溶液の調製方法について説明し、次に、基板上に導体回路と層間樹脂層とを順次形成する方法について説明することにする。
【0052】
上記トリアジン化合物を含む層の形成は、上記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物の少なくとも一種と、上記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物とを含む溶液中に、最外層に導体回路の形成された基板を浸漬することにより行う。
【0053】
そのためには、まず、(1)上記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物の少なくとも一種と、上記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物とを含む溶液を調製する。上記一般式(1)で表されるトリアジン化合物は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール、または、その塩である。式中、A1 、A2 、A3 は、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、または、置換若しくは無置換のアンモニウムであり、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。これらのなかでは、入手が容易で、安定性に優れる点からナトリウム塩が望ましい。
【0054】
上記一般式(2)で表されるトリアジン化合物は、1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール−6−チオン、または、その塩であり、式中、A4 、A5 は、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、または、置換若しくは無置換のアンモニウムであり、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。これらのなかでは、入手が容易で、安定性に優れる点からナトリウム塩が望ましい。
【0055】
上記一般式(3)で表されるトリアジン化合物は、1,3,5−トリアジン−2−チオール−4,6−ジチオン、または、その塩であり、式中、A6 は、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、または、置換若しくは無置換のアンモニウムである。これらのなかでは、入手が容易で、安定性に優れる点からナトリウム塩が望ましい。
【0056】
トリアジン化合物として、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール、1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール−6−チオン、1,3,5−トリアジン−2−チオール−4,6−ジチオンからなる群より選択される少なくとも一種のトリアジン化合物の塩を用いる場合、トリアジン化合物と有機化合物との混合溶液を調製する前に、上記トリアジン化合物の塩を調製しておく。
【0057】
上記トリアジン化合物の塩は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオン(以下、単にトリアジントリチオンという)と水酸化アルカリ金属若しくはアルカリ金属ボロンハイドライドとを水若しくは有機溶媒に溶解するか、または、トリアジントリチオンとアミンとを水若しくは有機溶媒に溶解することにより調製する。
【0058】
上記水酸化アルカリ金属やアルカリ金属ボロンハイドライドにおけるアルカリ金属としては、Li、Na、K、Rb、Cs、Frが挙げられる。これらのなかでは、入手が容易で、安定した塩を形成することができる点からNaが望ましい。上記アミンとしては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルヒドラジン、ヒドラジン等のトリアジントリチオンを溶解するものが挙げられる。
【0059】
トリアジントリチオンと水酸化アルカリ金属またはアルカリ金属ボロンハイドライドを用いてモノナトリウム塩を調製する具体的な方法としては、例えば、以下の方法を用いることができる。即ち、水酸化ナトリウムをメタノールに溶解し、0.1mol水酸化ナトリウム−メタノール溶液200mlを調製し、さらに、同濃度量のトリアジントリチオンを添加し、40℃で攪拌して溶解し、モノナトリウム塩溶液を得る。次に、得られたモノナトリウム塩溶液からメタノールをエバポレーター等を用いて除去して得られる固形物をジエチルエーテルで洗浄、乾燥することにより高純度のモノナトリウム塩を得る。さらに、得られたモノナトリウム塩を水または有機溶媒に溶解して密着剤または複合体用の溶液として調製する。また、上記調製方法において、水酸化ナトリウムの使用量を2倍または3倍にすることにより、ジナトリウム塩またはトリナトリウム塩の溶液を調製することができる。
【0060】
また、トリアジントリチオンとアミンを用いてモノアミン塩を調製する具体的な方法としては、例えば、以下の方法を用いることができる。即ち、モノエタノールアミンをメタノールに溶解し、0.1molモノエタノールアミン−メタノール溶液200mlを調製し、さらに、同濃度量のトリアジントリチオンを添加し、40℃で攪拌して溶解し、モノエタノールアミン塩溶液を得る。次に、得られたモノエタノールアミン塩溶液からメタノールをエバポレーター等を用いて除去して得られるものをジエチルエーテルで洗浄、乾燥することにより高純度のモノエタノールアミン塩を得る。さらに、得られたモノエタノールアミン塩を水または有機溶媒に溶解して密着剤または複合体用の溶液として調製する。また、上記調製方法において、モノエタノールアミンの使用量を2倍または3倍にすることにより、ジエタノールアミン塩またはトリモノエタノールアミン塩の溶液を調製することができる。
【0061】
上記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物としては、下記一般式(4)〜(12)で表される化合物や、カルボニル基を有する化合物、ビニル基含有化合物、エポキシ基含有化合物、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。
【0062】
下記一般式(4)
NHR2 −R1 −NHR3 ・・・(4)
(式中、R1 は、置換または無置換のフェニレン基、キシリレン基、アゾ基、アゾ基を有する有機基、2価のベンゾフェノン残基、2価のフェニルエーテル残基、アルキレン基、シクロアルキレン基、ピリジレン基、エステル残基、スルフォン基、または、カルボニル基を表す。また、R2 、R3 は水素またはアルキル基を表し、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。)で表される有機化合物の具体例としては、例えば、ジアミノベンゼン、ジアミノアゾベンゼン、ジアミノ安息香酸、ジアミノベンゾフェノン、ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ジアミノジフェニルエーテル、N,N′−ジメチルテトラメチレンジアミン、ジアミノピリジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、m−ヘキサメチレン−トリアミン、エポメート(ジャパンエポキシレジン(株)製の商品名)、ベンジジン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、メタアミノベンジルアミン等が挙げられる。
【0063】
下記一般式(5)
4 −NH2 ・・・(5)
(式中、R4 は、フェニル基、ビフェニリル基、置換または無置換のベンジル基、アゾ基を有する有機基、ベンゾイルフェニル基、置換または無置換のアルキル基、シクロアルキル基、アセタール残基、ピリジル基、アルコキシカルボニル基、または、アルデヒド基を有する有機基を表す。)で表される有機化合物の具体例としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−ノニルアミン、ステアリルアミン、シクロプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、o−アミノジフェニル、1−メチルブチルアミン、2−エチルブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、2−フェニルエチルアミン、ベンジルアミン、o−メトキシベンジルアミン、アミノアセトアルデヒドジメチルアセタール、アミノアセトアルデヒドジエチルアセタール、アミノフェノール等が挙げられる。
【0064】
下記一般式(6)
5 −NH−R6 ・・・(6)
(式中、R5 、R6 は、フェニル基、アゾ基を有する有機基、ベンゾイルフェニル基、アルキル基、ピリジル基、アルコキシカルボニル基、アルデヒド基、ベンジル基、または、不飽和基を表し、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。)で表される有機化合物の具体例としては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジプロピルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジラウリルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ジアリルアミン、N−メチルプロピルアミン、N−エチルアニリン、N−エチルイソプロピルアミン、N−エチルヘキシルアミン、N−メチルイソプロピルアミン、N−メチルブチルアミン、N−メチルアリルアミン、N−メチルベンジルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、ピペリジン、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0065】
下記一般式(7)
【0066】
【化9】

【0067】
(式中、R7 、R8 、R9 は、フェニル基、ベンジル基、アゾ基を有する有機基、ベンゾイルフェニル基、置換または無置換のアルキル基、ピリジル基、アルコキシカルボニル基、アルデヒド基、ニトロソ基を表し、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。)で表される有機化合物の具体例としては、1,1−ジメトキシトリメチルアミン、1,1−ジエトキシトリメチルアミン、N−エチルジイソプロピルアミン、N−メチルジフェニルアミン、N−ニトロソジエチルアミン、N−ニトロソジフェニルアミン、N−フェニルジベンジルアミン、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、アミノエチルピペラジン、2,4,6−トリスジメチルアミンメチルフェノール、テトラメチルグアニジン、2−メチルアミノメチルフェノール等が挙げられる。
【0068】
下記一般式(8)
OH−R10−OH・・・(8)
(式中、R10は、置換または無置換のフェニレン基、アゾ基を有する有機基、2価のベンゾフェノン残基、アルキレン基、シクロアルキレン基、ピリジレン基、または、アルコキシカルボニル基を表す。)で表される有機化合物の具体例としては、例えば、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシアゾベンゼン、ジヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシベンゾフェノン、1,2−ジヒドロキシエタン、1,4−ジヒドロキシブタン、1,3−ジヒドロキシプロパン、1,6−ジヒドロキシヘキサン、1,7−ジヒドロキシペンタン、1,8−ジヒドロキシオクタン、1,9−ジヒドロキシノナン、1,10−ジヒドロキシデカン、1,12−ジヒドロキシドデカン、1,2−ジヒドロキシシクロヘキサン等が挙げられる。
【0069】
下記一般式(9)
11−X1 −R12・・・(9)
(式中、R11、R12は、不飽和基を表し、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、X1 は、2価のマレイン酸残基、2価のフタル酸残基、または、2価のアジピン酸残基を表す。)で表される有機化合物の具体例としては、例えば、クロレンド酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル等が挙げられる。
【0070】
下記一般式(10)
13−X2 ・・・(10)
(式中、R13は、不飽和基を表し、X2 は、置換または無置換のフェニル基、アルキル基、アミノ酸残基、水酸基を有する有機基、シアヌル酸残基、または、アルコキシカルボニル基を表す。)で表される有機化合物の具体例としては、例えば、アリルメタクリレート、1−アリル−2−メトキシベンゼン、2−アリルオキシ−エタノール、3−アリルオキシ−1、2−プロパンジオール、4−アリル−1、2−ジメトキシベンゼン、酢酸アリル、アリルアルコール、アリルグリシジルエーテル、ヘプタン酸アリル、イソフタル酸アリル、イソ吉草酸アリル、アリルメタクリレート、n−酪酸アリル、n−カプリン酸アリル、フェノキシ酢酸アリル、プロピオン酸アリル、アリルベンゼン、o−アリルフェノール、シアヌル酸トリアリル、トリアリルアミン等が挙げられる。
【0071】
下記一般式(11)
14−N=CO・・・(11)
(式中、R14は、置換または無置換のフェニル基、ナフチル基、置換または無置換のアルキル基、ベンジル基、ピリジル基、または、アルコキシカルボニル基を表す。)で表される有機化合物の具体例としては、例えば、イソシアン酸−1−ナフチル、イソシアン酸−4,4′−ジフェニルメタン、イソシアン酸ベンジール、ジイソシアン酸ヘキサメチレン、イソシアン酸イソプロピル、イソシアン酸−n−ブチル、イソシアン酸フェニル、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート等が挙げられる。
【0072】
下記一般式(12)
15−X3 ・・・(12)
(式中、R15は、フェニル基、置換または無置換のアルキル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、または、ビニル基を表し、X3 は、アクリル酸残基を表す。)で表される有機化合物の具体例としては、例えば、アクリル酸−2−(ジメチル)アミノエチル、2−アセトアミドアクリル酸、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸、3−メトキシアクリル酸メチル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ビニル、3−アクリルアミド−N、N−ジメチルプロピルアミン等が挙げられる。
【0073】
カルボニル基を有する有機化合物としては、例えば、下記一般式(13)
16−CO−R17・・・(13)
(式中、R16、R17は、フェニル基、アルキル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、または、ビニル基を表し、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。)で表される有機化合物、酸無水物等が挙げられる。これらの具体例としては、例えば、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、2−クロロマレイン酸無水物、4−メチルフタル酸無水物、安息香酸無水物、酪酸無水物、シュウ酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ピロメット酸無水物、トリメット酸無水物、トリメット酸無水物ドリコール、メチルナジック酸無水物クロトン酸無水物、ドデシルコハク酸無水物、ジクロルマレイン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物、ポリセバシン酸無水物等が挙げられる。
【0074】
上記ビニル基含有化合物の具体例としては、例えば、2−ビニル−4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、2−ビニルピリジン、3−ブテン−2−オン、4−ペンテン酸、アクリル酸、ブチルビニルエーテル、エチルビニルケトン、酢酸イソプロペニル、p−メチルスチレン、ヘキサン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、酪酸ビニル、デカン酸ビニル、メタクリル酸ビニル、オクタン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ブニル、アジピン酸ビニル等が挙げられる。
【0075】
上記エポキシ基含有化合物の具体例としては、例えば、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシエチルベンゼン、2,3−エポキシ−1−プロパノール、2,3−エポキシプロピルメチルエーテル、メタクリル酸グリシジル、ジグリシドキシフェニルプロパン、アリルグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0076】
上記シラン系カップリング剤の具体例としては、例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(2−メトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0077】
上記チタネート系カップリング剤の具体例としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ−n−ドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルトリ(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシ−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルバイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルバイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチルアミノエチル)チタネート等が挙げられる。
【0078】
上記アルミニウム系カップリング剤の具体例としては、例えば、アセトメトキシアルミニウムジイソプロピレート、アセトエトキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0079】
これらの有機化合物は、導体回路の上に形成する樹脂層の種類に応じて選択すればよく、上記樹脂層に用いる樹脂と反応するか、または、親和性の高い有機化合物を選択することが望ましい。特に、熱または紫外線等により樹脂層に用いる樹脂を硬化させる際に、該樹脂と反応する有機化合物を選択することが望ましい。
【0080】
また、これらの有機化合物は、電子リッチであるため、後述する工程により、トリアジン化合物と反応又は吸着した後もマイナスに帯電する性質を有している。そのため、上記有機化合物が反応または吸着した上記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と導体回路を構成する金属との反応物(トリアジン化合物を含む層)はプラスに帯電し、導体回路表面はマイナスに帯電すると考えられる。その結果、導体回路表面が酸素や炭酸ガスによって酸化されにくくなっており、導体回路とトリアジン化合物との結合が長期間に渡って維持されるため、導体回路と層間樹脂層との密着性が長期間に渡って維持されるものと考えられる。
【0081】
(2) 次に、このようにして得られた密着剤、複合体用の混合溶液中に、最外層に導体回路の形成された基板を浸漬することにより導体回路表面の少なくとも一部にトリアジン化合物を含む層を形成する。
この工程では、上記基板を上記混合溶液中に浸漬する前に、上記基板に以下のような前処理を施すことが望ましい。即ち、まず、導体回路およびそれ以外の樹脂絶層の表面に付着した異物や汚れを除去する。上記導体回路表面等に汚れ等が存在していると、トリアジン化合物を含む層の形成を阻害するからである。
【0082】
上記異物や汚れの除去は、酸性脱脂液、アルカリ性脱脂液若しくはその両方の脱脂液、または、アセトン、ベンゼン等の有機溶剤を用いて行うことができる。また、その条件は、脱脂液を用いる場合、導体回路の形成された基板を20〜60℃の脱脂液に1〜5分間浸漬することが望ましい。また、脱脂液に浸漬した後、低濃度の中和液(例えば、アルカリ性脱脂液を用いた場合は、硫酸等の酸)に浸漬することが望ましい。また、有機溶剤を用いる場合は、常温で行うことが望ましい。
【0083】
次に、導体回路表面の電位を調整し、導体回路表面を活性化することにより、トリアジン化合物を含む層の形成を助長する。上記活性化は、活性化液を用いて行うことが望ましい。上記活性化液としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、酢酸、蟻酸、塩酸、リン酸等を含む溶液等が挙げられる。これらのなかでは、硫酸、酢酸、蟻酸、または、リン酸を含む溶液が望ましく、硫酸を含む溶液がより望ましい。これは、導体層への損傷が少なく、電位の調整を確実に行うことができるからである。
【0084】
具体的には、温度20〜50℃の温度で、濃度10重量%程度の溶液に、1〜5分間浸漬することが望ましい。浸漬時間が1分未満では、導体回路表面の活性化が不十分なことがあり、5分間を超えると、導体回路表面の状態はほとんど変わらないからである。また、導体回路の表面状態に応じて、ソフトエッチングを行った後、活性化処理を行ってもよい。
【0085】
次に、上記混合溶液中に、上記前処理を施した基板を浸漬することにより上記導体回路を構成する金属とトリアジン化合物とを反応させるとともに、上記有機化合物を上記トリアジン化合物に反応または吸着させる。なお、上記有機化合物と上記トリアジン化合物との反応等は、銅と結合したトリアジン化合物との間でのみ進行する。
【0086】
上記混合溶液の濃度、反応温度、基板の浸漬時間等は特に限定されず、上記有機化合物の種類に応じて適宜選択すればよいが、通常、混合溶液の濃度は0.001〜10mM、反応温度は10〜90℃、浸漬時間は1秒〜120分が望ましい。特に、導体層表面に均一なトリアジン化合物の層を形成することができ、トリアジン化合物を含む層が重なり合うことに起因して、導体回路と樹脂層との密着性を確保することができないことがない点から、混合溶液の濃度は0.01〜1mM、反応温度は40〜60℃、浸漬時間は15秒〜5分がより望ましい。重なり合うことがなく、均一な層を形成することにより導体回路と樹脂層との密着性が向上するからである。
【0087】
また、上記導体回路を構成する金属としては、例えば、銅、ニッケル等が挙げられる。これらのなかでは、銅が望ましい。
【0088】
この工程においては、下記反応式に示す反応が進行することにより、導体回路表面に、樹脂と反応することが可能な、または、高い親和性を有するトリアジン化合物を含む層が形成される。例えば、トリアジン化合物と反応可能な有機化合物として、上記一般式(4)で表される1,10−ジアミノデカンを用い、銅からなる導体回路表面にトリアジン化合物を含む層を形成する場合には、下記反応式(14)に示す反応が進行する。
【0089】
【化10】

【0090】
また、例えば、トリアジン化合物と反応可能な有機化合物として、上記一般式(12)で表されるN−メチロールアクリルアミドを用い、銅からなる導体回路表面にトリアジン化合物を含む層を形成する場合には、下記反応式(15)に示す反応が進行する。
【0091】
【化11】

【0092】
また、例えば、トリアジン化合物と反応可能な有機化合物として、エポキシ基含有化合物であるジグリシドキシフェニルプロパンを用い、銅からなる導体回路表面にトリアジン化合物を含む層を形成する場合には、下記反応式(16)に示す反応が進行する。
【0093】
【化12】

【0094】
この場合、反応式(16)に示すように、有機化合物がトリアジン化合物間に架橋を形成するように反応が進行する場合がある。その結果、層間樹脂層を形成した際に、架橋を形成した有機化合物と層間樹脂層を構成する樹脂とが立体構造上絡み合い、導体回路と層間樹脂層との密着性がより向上する。
【0095】
また、例えば、トリアジン化合物と反応可能な有機化合物として、上記一般式(10)で表されるメチルメタクリレートを用い、銅からなる導体回路表面にトリアジン化合物を含む層を形成する場合には、下記反応式(17)に示す反応が進行する。
【0096】
【化13】

【0097】
このような反応が進行することにより、銅等からなる導体回路の表面にトリアジン化合物を含む層が形成される。なお、上記反応式(14)〜(17)に示した反応は、上記トリアジン化合物が有する3個の硫黄原子のうち、2個の硫黄原子が銅原子と結合し、1個の硫黄原子を介してトリアジン化合物と有機化合物が結合するか、または、1個の硫黄原子と有機化合物とが置換してトリアジン化合物と有機化合物が結合するものであるが、上記トリアジン化合物が有する3個の硫黄原子のうち、1個の硫黄原子が銅原子と結合し、2個の硫黄原子を介してトリアジン化合物と有機化合物が結合するか、または、2個の硫黄原子と有機化合物とが置換してトリアジン化合物と有機化合物が結合する反応も進行する。
【0098】
上記したような反応により、導体回路を構成する銅等とトリアジン化合物とが結合し、トリアジン化合物に結合した有機化合物と樹脂とは高い親和性を有する。その結果、導体回路表面と樹脂層との間に高い密着性が得られる。
【0099】
(3) 次に、導体回路表面やそれ以外の部分に過剰に付着したトリアジントリチオンおよびその塩や有機化合物を除去するためにアルコール洗浄を行う。このとき用いるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。これにより、均一な化合物の層を形成することができる。このような(1) 〜(3) の工程を経て、導体回路表面にトリアジン化合物を含む層を形成する工程を終了する。
【0100】
上記した方法により、トリアジン化合物を含む層を形成する際に、該トリアジン化合物を含む層は、導体回路表面の少なくとも一部に形成すればよいが、導体回路上面の少なくとも一部と導体回路側面の少なくとも一部に形成することが望ましい。導体回路側面にトリアジン化合物を含む層を形成することにより導体回路と層間樹脂層との密着性が向上するからである。また、上記トリアジン化合物を含む層は、上記導体回路の全表面に形成することがより望ましい。
【0101】
次に、基板上に導体回路と層間樹脂層とを順次積層し、多層プリント配線板とする方法について工程順に説明する。
【0102】
(1)まず、絶縁性基板の表面に導体回路が形成された基板を作製する。上記絶縁性基板としては、樹脂基板が望ましく、具体的には、例えば、ガラスエポキシ基板、ポリエステル基板、ポリイミド基板、ビスマレイミド−トリアジン樹脂基板、熱硬化性ポリフェニレンエーテル基板、フッ素樹脂基板、セラミック基板、銅張積層板、RCC基板などが挙げられる。このとき、この絶縁性基板に貫通孔を設けてもよい。この場合、貫通孔は直径100〜300μmのドリル、レーザ光等を用いて形成することが望ましい。
【0103】
(2) 次に、無電解めっきを施した後、基板上に導体回路形状のエッチングレジストを形成し、エッチングを行うことにより導体回路を形成する。無電解めっきとしては銅めっきが望ましい。また、絶縁性基板に貫通孔を設けた場合には、該貫通孔の壁面にも同時に無電解めっきを施してスルーホールを形成することにより、基板の両面の導体回路間を電気的に接続してもよい。
【0104】
さらに、この無電解めっきの後、通常、無電解めっき層表面とスルーホールを形成した場合にはスルーホール内壁との粗化形成処理を行う。粗化形成処理方法としては、例えば、黒化(酸化)−還元処理、有機酸と第二銅錯体の混合水溶液によるスプレー処理、Cu−Ni−P針状合金めっきによる処理等が挙げられる。
【0105】
上記黒化(酸化)−還元処理の具体的な方法としては、NaOH(10〜20g/L)、NaClO2 (40〜50g/L)、Na3 PO4 (6〜15g/L)を含む水溶液を黒化浴(酸化浴)とする黒化処理、および、NaOH(2.7〜10g/L)、NaBH4 (1.0〜6.0g/L)を含む水溶液を還元浴とする還元処理を行う方法等が挙げられる。
【0106】
上記エッチング処理に用いるエッチング液としては、有機酸と第二銅錯体との混合溶液が望ましい。上記有機酸としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、アクリル酸、クロトン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、安息香酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、スルファミン酸等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。上記エッチング液において、上記有機酸の含有量は、0.1〜30重量%が望ましい。酸化された銅の溶解性を維持し、かつ触媒安定性を確保することができるからである。
【0107】
上記第二銅錯体としては、アゾール類の第二銅錯体が望ましい。このアゾール類の第二銅錯体は、金属銅等を酸化する酸化剤として作用する。アゾール類としては、例えば、ジアゾール、トリアゾール、テトラゾール等が挙げられる。これらのなかでも、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾールが望ましい。上記エッチング液において、上記第二銅錯体の含有量は、1〜15重量%が望ましい。溶解性および安定性に優れ、また、触媒核を構成するPd等の貴金属をも溶解させることができるからである。
【0108】
上記めっき処理としては、例えば、硫酸銅(1〜40g/L)、硫酸ニッケル(0.1〜6.0g/L)、クエン酸(10〜20g/L)、次亜リン酸ナトリウム(10〜100g/L)、ホウ酸(10〜40g/L)および界面活性剤(日信化学工業社製、サーフィノール465)(0.01〜10g/L)を含むPH=9の無電解めっき浴にて無電解めっきを施し、Cu−Ni−P合金からなる粗化層を形成する方法等が挙げられる。この範囲で析出するめっき被膜の結晶構造は、針状構造となるため、アンカー効果に優れるからである。上記無電解めっき浴には、上記化合物を加えて錯化剤や添加剤を加えてもよい。このような粗化層の形成は必要に応じて行えばよく、導体回路表面に粗化層を形成することなく、次の工程を行ってもよい。
【0109】
(3) 次に、上記した方法を用いて、導体回路表面の少なくとも一部にトリアジン化合物を含む層を形成し、さらに、層間樹脂層を形成する。上記層間樹脂層の材料としては、粗化面形成用樹脂組成物、ポリフェニレンエーテル樹脂、熱可塑性エラストマー樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、トリアジン樹脂等が挙げられる。上記層間樹脂層は、未硬化の樹脂をロールコーター、カーテンコーター等により塗布して成形してもよく、また、未硬化の樹脂フィルムを熱圧着して形成してもよい。さらに、未硬化の樹脂フィルムの片面に銅箔等の金属層が形成された樹脂フィルムを貼付してもよい。
【0110】
上記粗化面形成用樹脂組成物としては、例えば、酸、アルカリおよび酸化剤から選ばれる少なくとも1種からなる粗化液に対して難溶性の未硬化の耐熱性樹脂マトリックス中に、酸、アルカリおよび酸化剤から選ばれる少なくとも1種からなる粗化液に対して可溶性の物質が分散されたもの等が挙げられる。なお、上記「難溶性」および「可溶性」という語は、同一の粗化液に同一時間浸漬した場合に、相対的に溶解速度の早いものを便宜上「可溶性」といい、相対的に溶解速度の遅いものを便宜上「難溶性」と呼ぶ。
【0111】
上記耐熱性樹脂マトリックスとしては、層間樹脂層に上記粗化液を用いて粗化面を形成する際に、粗化面の形状を保持できるものが好ましく、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、これらの複合体等が挙げられる。また、感光性樹脂を用いることにより、層間樹脂層に露光、現像処理を用いてバイアホール用開口を形成してもよい。
【0112】
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。また、上記熱硬化性樹脂を感光化する場合は、メタクリル酸やアクリル酸等を用い、熱硬化基を(メタ)アクリル化反応させる。特にエポキシ樹脂の(メタ)アクリレートが望ましい。さらに、1分子中に、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂がより望ましい。上述の粗化面を形成することができるばかりでなく、耐熱性等にも優れているため、ヒートサイクル条件下においても、金属層に応力の集中が発生せず、金属層の剥離等が起きにくいからである。
【0113】
上記エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。それにより、耐熱性等に優れるものとなる。
【0114】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリエーテルイミド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0115】
上記酸、アルカリおよび酸化剤から選ばれる少なくとも1種からなる粗化液に対して可溶性の物質は、無機粒子、樹脂粒子、金属粒子、ゴム粒子、液相樹脂および液相ゴムから選ばれる少なくとも1種であることが望ましい。
【0116】
上記無機粒子としては、例えば、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、カリウム化合物、マグネシウム化合物、ケイ素化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0117】
上記アルミニウム化合物としては、例えば、アルミナ、水酸化アルミニウム等が挙げられ、上記カルシウム化合物としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等が挙げられ、上記カリウム化合物としては、例えば、炭酸カリウム等が挙げられ、上記マグネシウム化合物としては、例えば、マグネシア、ドロマイト、塩基性炭酸マグネシウム、タルク等が挙げられ、上記ケイ素化合物としては、例えば、シリカ、ゼオライト等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0118】
上記アルミナ粒子は、ふっ酸で溶解除去することができ、炭酸カルシウムは塩酸で溶解除去することができる。また、ナトリウム含有シリカやドロマイトはアルカリ水溶液で溶解除去することができる。
【0119】
上記樹脂粒子としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等からなるものが挙げられ、酸、アルカリおよび酸化剤から選ばれる少なくとも1種からなる粗化液に浸漬した場合に、上記耐熱性樹脂マトリックスよりも溶解速度の早いものであれば特に限定されず、具体的には、例えば、アミノ樹脂(メラミン樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂等)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂等挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0120】
なお、上記エポキシ樹脂は、酸や酸化剤に溶解するものや、これらに難溶性のものを、オリゴマーの種類や硬化剤を選択することにより任意に製造することができる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂をアミン系硬化剤で硬化させた樹脂はクロム酸に非常によく溶けるが、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂をイミダゾール硬化剤で硬化させた樹脂は、クロム酸には溶解しにくい。
【0121】
上記樹脂粒子は予め硬化処理されていることが必要である。硬化させておかないと上記樹脂粒子が樹脂マトリックスを溶解させる溶剤に溶解してしまうため、均一に混合されてしまい、酸や酸化剤で樹脂粒子のみを選択的に溶解除去することができないからである。
【0122】
上記金属粒子としては、例えば、金、銀、銅、スズ、亜鉛、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、鉄、鉛等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。また、上記金属粒子は、絶縁性を確保するために、表層が樹脂等により被覆されていてもよい。
【0123】
上記ゴム粒子としては、例えば、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ポリクロロプレンゴム、ポリイソプレンゴム、アクリルゴム、多硫系剛性ゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ABS樹脂等が挙げられる。
【0124】
また、上記ゴム粒子として、例えば、ポリブタジエンゴム、エポキシ変性、ウレタン変性、(メタ)アクリロニトリル変性等の各種変性ポリブタジエンゴム、カルボキシル基を含有した(メタ)アクリロニトリル・ブタジエンゴム等を使用することもできる。これらのゴム粒子を使用することにより、該ゴム粒子が酸あるいは酸化剤に溶解しやすくなる。つまり、酸を用いてゴム粒子を溶解する際には、強酸以外の酸でも溶解することができ、酸化剤を用いてゴム粒子を溶解する際には、比較的酸化力の弱い過マンガン酸でも溶解することができる。また、クロム酸を用いた場合でも、低濃度で溶解することができる。そのため、酸や酸化剤が層間樹脂層表面に残留することがなく、後述するように、粗化面形成後、塩化パラジウム等の触媒を付与する際に、触媒が付与されなたかったり、触媒が酸化されたりすることがない。これらは、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0125】
上記可溶性の物質を、2種以上混合して用いる場合、混合する2種の可溶性の物質の組み合わせとしては、樹脂粒子と無機粒子との組み合わせが望ましい。両者とも導電性が低くいため、層間樹脂層の絶縁性を確保することができるとともに、難溶性樹脂との間で熱膨張の調整が図りやすく、粗化面形成用樹脂組成物からなる層間樹脂層にクラックが発生せず、層間樹脂層と導体回路との間で剥離が発生しないからである。
【0126】
上記液相樹脂としては、上記熱硬化性樹脂の未硬化溶液を使用することができ、このような液相樹脂の具体例としては、例えば、未硬化のエポキシオリゴマーとアミン系硬化剤の混合液等が挙げられる。上記液相ゴムとしては、例えば、上記したポリブタジエンゴム、エポキシ変性、ウレタン変性、(メタ)アクリロニトリル変性等の各種変性ポリブタジエンゴム、カルボキシル基を含有した(メタ)アクリロニトリル・ブタジエンゴム等の未硬化溶液等を使用することができる。
【0127】
上記液相樹脂や液相ゴムを用いて上記感光性樹脂組成物を調製する場合には、耐熱性樹脂マトリックスと可溶性の物質とが均一に相溶しない(つまり相分離するように)ように、これらの物質を選択する必要がある。上記基準により選択された耐熱性樹脂マトリックスと可溶性の物質とを混合することにより、上記耐熱性樹脂マトリックスの「海」の中に液相樹脂または液相ゴムの「島」が分散している状態、または、液相樹脂または液相ゴムの「海」の中に、耐熱性樹脂マトリックスの「島」が分散している状態の感光性樹脂組成物を調製することができる。
【0128】
そして、このような状態の感光性樹脂組成物を硬化させた後、「海」または「島」の液相樹脂または液相ゴムを除去することにより粗化面を形成することができる。
【0129】
上記粗化液として用いる酸としては、例えば、リン酸、塩酸、硫酸、硝酸や、蟻酸、酢酸等の有機酸等が挙げられるが、これらのなかでは有機酸を用いることが望ましい。粗化処理した場合に、バイアホールから露出する金属導体層を腐食させにくいからである。上記酸化剤としては、例えば、クロム酸、クロム硫酸、アルカリ性過マンガン酸塩(過マンガン酸カリウム等)の水溶液等を用いることが望ましい。また、上記アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液が望ましい。
【0130】
上記可溶性の物質の平均粒径は、10μm以下が望ましい。また、平均粒径が2μm以下の平均粒径の相対的に大きな粗粒子と平均粒径が相対的に小さな微粒子とを組み合わせて使用してもよい。即ち、平均粒径が0.1〜0.5μmの可溶性の物質と平均粒径が1〜2μmの可溶性の物質とを組み合わせる等である。このように、平均粒子と相対的に大きな粗粒子と平均粒径が相対的に小さな微粒子とを組み合わせることにより、無電解めっき膜の溶解残渣をなくし、めっきレジスト下のパラジウム触媒量を少なくし、さらに、浅くて複雑な粗化面を形成することができる。さらに、複雑な粗化面を形成することにより、粗化面の凹凸が小さくても実用的なピール強度を維持することができる。上記粗粒子は平均粒径が0.8μmを超え2.0μm未満であり、微粒子は平均粒径が0.1〜0.8μmであることが望ましい。
【0131】
上記粗粒子と微粒子とを組み合わせることにより、浅くて複雑な粗化面を形成することができるのは、使用する粒子径が粗粒子で平均粒径2μm未満であると、これらの粒子が溶解除去されても形成されるアンカーは浅くなり、また、除去される粒子は、相対的に粒子径の大きな粗粒子と相対的に粒子径の小さな微粒子の混合粒子であるから、形成される粗化面が複雑になるのである。このような複雑な粗化面を形成することにより、浅い粗化面でも実用的なピール強度を維持することができる。また、この場合、使用する粒子径が、粗粒子で平均粒径2μm未満であると、粗化が進行しすぎて空隙を発生させることはなく、層間絶縁性に優れている。なお、上記層間面形成用樹脂組成物において、可溶性の物質の粒径とは、可溶性の物質の一番長い部分の長さである。
【0132】
また、粗粒子は平均粒径が0.8μmを超え2.0μm未満であり、微粒子は平均粒径が0.1〜0.8μmであると、粗化面の深さは概ねRmax=3μm程度となり、セミアディテイブ法では、無電解めっき膜をエッチング除去しやすいだけではなく、無電解めっき膜下のPd触媒をも簡単に除去することができ、また、実用的なピール強度1.0〜1.3kg/cmを維持することができる。
【0133】
上記可溶性の物質の形状は特に限定されず、球状、破砕状等が挙げられる。また、上記可溶性の物質の形状は、一様な形状であることが望ましい。均一な粗さの凹凸を有する粗化面を形成することができるからである。
【0134】
上記粗化面形成用樹脂組成物は基板上等に塗布することができるように有機溶剤を含有するものであってもよいし、基板上等に圧着することができるようにフィルム状に成形されたもの(以下、粗化面形成用樹脂フィルムともいう)でもよい。上記粗化面形成用樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合、その含有量は、10重量%以下であることが望ましい。
【0135】
上記粗化面形成用樹脂フィルムにおいて、上記可溶性の物質は、上記耐熱性樹脂マトリックス中にほぼ均一に分散されていることが望ましい。均一な粗さの凹凸を有する粗化面を形成することができ、樹脂フィルムにバイアホールやスルーホールを形成しても、その上に形成する導体回路の金属層の密着性を確保することができるからである。また、上記粗化面形成用樹脂フィルムは、粗化面を形成する表層部だけに可溶性の物質を含有するよう形成されていてもよい。それによって、粗化面形成用樹脂フィルムの表層部以外は酸または酸化剤にさらされることがないため、層間樹脂層を介した導体回路間の絶縁性が確実に保たれる。
【0136】
上記粗化面形成用樹脂フィルムにおいて、難溶性樹脂中に分散している可溶性の物質の配合量は、粗化面形成用樹脂フィルムに対して、3〜40重量%が望ましい。可溶性の物質の配合量が3重量%未満では、所望の凹凸を有する粗化面を形成することができない場合があり、40重量%を超えると、酸または酸化剤を用いて可溶性の物質を溶解した際に、樹脂フィルムの深部まで溶解してしまい、樹脂フィルムからなる層間樹脂層を介した導体回路間の絶縁性を維持できず、短絡の原因となる場合がある。
【0137】
上記粗化面形成用樹脂フィルムは、上記可溶性の物質、上記耐熱性樹脂マトリックス以外に、硬化剤、その他の成分等を含有していることが望ましい。上記硬化剤としては、例えば、イミダゾール系硬化剤、アミン系硬化剤、グアニジン系硬化剤、これらの硬化剤のエポキシアダクトやこれらの硬化剤をマイクロカプセル化したもの、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレート等の有機ホスフィン系化合物等が挙げられる。
【0138】
上記硬化剤の含有量は、粗化面形成用樹脂フィルムに対して0.05〜10重量%であることが望ましい。0.05重量%未満では、粗化面形成用樹脂フィルムの硬化が不十分であるため、酸や酸化剤が粗化面形成用樹脂フィルムに侵入する度合いが大きくなり、粗化面形成用樹脂フィルムの絶縁性が損なわれることがある。一方、10重量%を超えると、過剰な硬化剤成分が樹脂の組成を変性させることがあり、信頼性の低下を招いたりしてしまうことがある。
【0139】
上記その他の成分としては、例えば、粗化面の形成に影響しない無機化合物あるいは樹脂等のフィラーが挙げられる。上記無機化合物としては、例えば、シリカ、アルミナ、ドロマイト等が挙げられ、上記樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレン樹脂、メラニン樹脂、オレフィン系樹脂等が挙げられる。これらのフィラーを含有させることによって、熱膨脹係数の整合や耐熱性、耐薬品性の向上等を図りプリント配線板の性能を向上させることができる。
【0140】
また、上記粗化面形成用樹脂フィルムは、溶剤を含有していてもよい。上記溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテートやトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0141】
上記ポリフェニレンエーテル樹脂としては、例えば、下記化学式(18)で表される繰り返し単位を有する熱可塑性ポリフェニレンエーテル樹脂や下記化学式(19)で表される繰り返し単位を有する熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられる。
【0142】
【化14】

【0143】
(式中、nは、2以上の整数を表す。)
【0144】
【化15】

【0145】
(式中、mは、2以上の整数を表す。また、R1 、R2 は、メチレン基、エチレン基または−CH2 −O−CH2 −を表し、両者は同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
【0146】
また、上記化学式(18)で表される繰り返し単位を有する熱可塑性ポリフェニレンエーテル樹脂は、ベンゼン環にメチル基が結合した構造を有しているが、本発明で用いることのできるポリフェニレンエーテル樹脂としては、上記メチル基が、エチル基等の他のアルキル基等で置換された誘導体や、メチル基の水素がフッ素で置換された誘導体等であってもよい。
【0147】
上記熱可塑性エラストマー樹脂としては特に限定されず、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、1,2−ポリブタジエン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらのなかでは、電気特性に優れる点からオレフィン系熱可塑性エラストマーやフッ素系熱可塑性エラストマーが望ましい。
【0148】
上記ポリオレフィン系樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、シクロオレフィン系樹脂、これらの樹脂の共重合体等が挙げられる。
【0149】
上記ポリオレフィン系樹脂の市販品としては、例えば、住友スリーエム社製の商品名:1592等が挙げられる。また、融点が200℃以上の熱可塑型ポリオレフィン系樹脂の市販品としては、例えば、三井石油化学工業社製の商品名:TPX(融点240℃)、出光石油化学社製の商品名:SPS(融点270℃)等が挙げられる。これらのなかでは、誘電率および誘電正接が低く、GHz帯域の高周波信号を用いた場合でも信号遅延や信号エラーが発生しにくく、さらには、剛性等の機械的特性にも優れている点からシクロオレフィン系樹脂が望ましい。
【0150】
上記シクロオレフィン系樹脂としては、2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネンまたはこれらの誘導体からなる単量体の単独重合体または共重合体等が望ましい。上記誘導体としては、上記2−ノルボルネン等のシクロオレフィンに、架橋を形成するためのアミノ基や無水マレイン酸残基あるいはマレイン酸変性したもの等が結合したもの等が挙げられる。上記共重合体を合成する場合の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン等が挙げられる。
【0151】
上記シクロオレフィン系樹脂は、上記した樹脂の2種以上の混合物であってもよく、シクロオレフィン系樹脂以外の樹脂を含むものであってもよい。また、上記シクロオレフィン系樹脂が共重合体である場合には、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0152】
また、上記シクロオレフィン系樹脂は、熱硬化性シクロオレフィン系樹脂であることが望ましい。加熱を行って架橋を形成させることにより、より剛性が高くなり、機械的特性が向上するからである。上記シクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、130〜200℃であることが望ましい。
【0153】
上記シクロオレフィン系樹脂は、既に樹脂シート(フィルム)として成形されたものを使用してもよく、単量体もしくは一定の分子量を有する低分子量の重合体が、キシレン、シクロヘキサン等の溶剤に分散した未硬化溶液の状態であってもよい。また、樹脂シートの場合には、いわゆるRCC(RESIN COATED COPPER:樹脂付銅箔)を用いてもよい。
【0154】
上記シクロオレフィン系樹脂は、フィラー等を含まないものであってもよく、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、リン酸エステル等の難燃剤を含むものであってもよい。
【0155】
また、上記ポリオレフィン樹脂を用いる場合、該ポリオレフィン樹脂に有機フィラーを配合してもよい。上記有機フィラーを配合することにより、例えば、層間樹脂層にレーザ光を照射することによりバイアホール用開口を形成する際に、所望の形状のバイアホール用開口を良好に形成することができる。
【0156】
即ち、炭酸ガスレーザ等の赤外線レーザを照射して非貫通孔等を形成する場合には、上記有機フィラーは、熱に対する緩衝剤の役割を果たし、発生した熱や導体回路より反射した熱を一部吸収する。また、上記有機フィラーは、樹脂組成物が所定の形状を維持するための機械的な強化剤の役割を果たし、その結果、周囲の樹脂の形状を維持することができ、目的の形状の非貫通孔等を形成することができる。
【0157】
また、紫外線レーザを照射して非貫通孔等を形成する場合、有機フィラーが紫外線を吸収し、このため、紫外線レーザが照射された部分の層間樹脂層が分解、消失し、目的とする形状の非貫通孔等を形成することができる。
【0158】
従って、上記レーザの照射によりバイアホール用開口を形成し、この開口に金属層を形成することによりバイアホールを形成すると、該金属層は下の導体回路に密着して剥がれにくくなり、得られる多層プリント配線板の接続性、信頼性が向上する。
【0159】
上記有機フィラーとしては特に限定されるものではないが、例えば、メラミン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂、PPO、PPE等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0160】
上記有機フィラーの含有量は、5〜60重量%が好ましい。上記有機フィラーの含有量が5重量%未満であると、有機フィラーの含有量が少なすぎるため、レーザ光照射の際に上記した役割を果たすことができず、目的とする形状の非貫通孔等を形成することができない場合がある。一方、有機フィラーの含有量が60重量%を超えると、ポリオレフィン系樹脂の特性が失われ、例えば、誘電率が高くなりすぎること等があるため好ましくない。より好ましい有機フィラーの配合量は、14〜60重量%である。
【0161】
上記有機フィラーの形状は特に限定されず、例えば、球状、多面形状等が挙げられるが、これらのなかでは、クラックが発生しにくく、熱や熱衝撃によって層間樹脂層に応力が発生しても、その応力が緩和されやすい点から、球状が好ましい。
【0162】
また、上記有機フィラーの粒径は、0.05〜0.2μmが好ましい。上記有機フィラーの粒径が0.05μm未満であると、粒径が小さすぎるため、均一に有機フィラーを配合することが困難となる場合があり、一方、上記有機フィラーの粒径が0.2μmを超えると、有機フィラーの粒径が大きすぎるため、レーザ光を照射した際に完全に分解除去されない場合が発生する。
【0163】
上記有機フィラーを配合する場合、その粒径が異なる2種以上の有機フィラーを配合してもよいが、余り多種類の粒径の異なる有機フィラーを配合すると、有機フィラーが凝集しやすくなり、凝集物の径が0.2μmを超え、0.2μmを超えるものを使用した場合と同様の不都合が発生する場合があるので、径が異なる有機フィラーを配合する場合には、2種類の配合に留めることが望ましい。
【0164】
上記層間樹脂層を形成する際に用いるフッ素樹脂としては、例えば、エチル/テトラフルオロエチレン共重合樹脂(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)等が挙げられる。
【0165】
上記樹脂フィルムを貼り付けることにより層間樹脂層を形成する場合、該層間樹脂層の形成は、真空ラミネーター等の装置を用い、減圧下または真空下において、2.0〜10kgf/cm2 の圧力、60〜120℃の温度で圧着し、その後、樹脂フィルムを熱硬化することにより行うことが望ましい。なお、上記熱硬化は、後述するバイアホール用開口および貫通孔を形成した後に行ってもよい。また、上記した層間樹脂層の材料とトリアジン化合物を含む層とが化学結合により強固に密着する場合は、未硬化の層間樹脂層を形成した後、熱や紫外線等により未硬化の層間樹脂層を硬化させるとともに、上記化学結合を形成することが望ましい。
【0166】
本発明の製造方法を用いて形成される層間樹脂層の厚さとしては特に限定されないが、5〜50μmが望ましい。上記厚さが5μm未満であると、上下に隣合う導体回路間の絶縁性が維持できない場合があり、一方、50μmを超えると、非貫通孔等を形成した際に、その底部に樹脂残りが発生したり、その非貫通孔等の形状が底部に向かって先細り形状になることがある。
【0167】
上記層間樹脂層は、その1GHzにおける誘電率が3.0以下であり、誘電正接が0.01以下であることが望ましい。上記誘電率は、2.4〜2.7がより好ましい。このような誘電率を有する樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。このような低誘電率のものを使用することにより、信号伝搬の遅延や信号の電送損失等に起因する信号エラーを防止することができる。
【0168】
(4) 次に、層間樹脂層を形成した基板に、バイアホール用開口と必要に応じて貫通孔とを形成する。上記バイアホール用開口は、レーザ処理により形成することが望ましい。また、感光性樹脂からなる層間樹脂層を形成した場合には、露光、現像処理を行うことにより、バイアホール用開口を設けてもよい。このとき、使用するレーザとしては、例えば、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザ、UVレーザ、YAGレーザ等が挙げられる。これらのレーザは、形成するバイアホール用開口や貫通孔の形状等を考慮して使い分けてもよい。
【0169】
上記バイアホール用開口を形成する場合、マスクを介して、ホログラム方式のエキシマレーザによるレーザ光照射することにより、一度に多数のバイアホール用開口を形成することができる。また、短パルスの炭酸ガスレーザを用いて、バイアホール用開口を形成すると、開口内の樹脂残りが少なく、開口周縁の樹脂に対するダメージが小さい。
【0170】
また、光学系レンズとマスクとを介してレーザ光を照射することにより、一度に多数のバイアホール用開口を形成することができる。光学系レンズとマスクとを介することにより、同一強度で、かつ、照射角度が同一のレーザ光を複数の部分に同時に照射することができるからである。
【0171】
上記マスクに形成された貫通孔は、レーザ光のスポット形状を真円にするために、真円であることが望ましく、上記貫通孔の径は、0.1〜2mm程度が望ましい。また、上記炭酸ガスレーザを用いる場合、そのパルス間隔は、10-4〜10-8秒であることが望ましい。また、開口を形成するためのレーザを照射する時間は、10〜500μ秒であることが望ましい。
【0172】
レーザ光にてバイアホール用開口を形成した場合、特に炭酸ガスレーザを用いた場合には、デスミア処理を行うことが望ましい。上記デスミア処理は、クロム酸、過マンガン酸塩等の水溶液からなる酸化剤を使用して行うことができる。また、酸素プラズマ、CF4 と酸素の混合プラズマやコロナ放電等で処理してもよい。また、低圧水銀ランプを用いて紫外線を照射することにより、表面改質することもできる。また、層間樹脂層を形成した基板に、貫通孔を形成する場合には、直径50〜300μmのドリル、レーザ光等を用いて貫通孔を形成する。
【0173】
(5) 次に、バイアホール用開口の内壁を含む層間樹脂層の表面と上記工程で貫通孔を形成した場合には貫通孔の内壁とに、必要に応じて、酸または酸化剤を用いて粗化面を形成する。上記酸としては、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸、蟻酸等が挙げられ、上記酸化剤としては、クロム酸、クロム硫酸、過マンガン酸ナトリウム等の過マンガン酸塩等が挙げられる。この粗化面は、層間樹脂層とその上に形成する薄膜導体層との密着性を高めるために形成するものであり、上記層間樹脂層と上記薄膜導体層との間に十分な密着性がある場合には形成しなくてもよい。
【0174】
その後、酸を用いて粗化面を形成した場合はアルカリ等の水溶液を用い、酸化剤を用いて粗化面を形成した場合は中和液を用いて、バイアホール用開口内や貫通孔内を中和する。この操作により酸や酸化剤を除去し、次工程に影響を与えないようにする。
【0175】
(6) 次に、形成された粗化面に、必要により、触媒を付与する。上記触媒としては、例えば、塩化パラジウム等が挙げられる。このとき、触媒を確実に付与するために、酸素、窒素等のプラズマ処理やコロナ処理等のドライ処理を施すことにより、酸または酸化剤の残渣を除去するとともに層間樹脂層の表面を改質することにより、触媒を確実に付与し、無電解めっき時の金属の析出、および、無電解めっき層の層間樹脂層への密着性を向上させることができ、特に、バイアホール用開口の底面において、大きな効果が得られる。
【0176】
(7) ついで、形成された粗化面に、必要により、スズ、亜鉛、銅、ニッケル、コバルト、タリウム、鉛等からなる薄膜導体層を無電解めっき、スパッタリング、蒸着等により形成する。上記薄膜導体層は単層であってもよいし、2層以上からなるものであってもよい。これらのなかでは、電気特性、経済性等を考慮すると銅や銅およびニッケルからなる薄膜導体層が望ましい。また、上記層間樹脂層に粗化面を形成しなかった場合は、上記薄膜導体層をスパッタリングにより形成することが望ましい。
【0177】
上記薄膜導体層の形成方法は、層間樹脂層の材質に応じて選択することが望ましい。具体的には、粗化面形成用樹脂組成物からなる層間樹脂層に薄膜導体層を形成する場合は、無電解めっきにより形成することが望ましく、その厚さは0.6〜1.2μmが望ましい。また、シクロオレフィン系樹脂等の低誘電樹脂フィルムからなる層間樹脂層に薄膜導体層を形成する場合は、スパッタリングや蒸着により形成することが望ましく、その厚さは0.1〜1.0μmが望ましい。また、このとき形成する薄膜導体層は、ニッケルと銅との二層からなるものが望ましい。また、スパッタリング等により形成した薄膜導体層の上に無電解めっきからなる層を形成してもよい。
【0178】
また、上記(4) の工程で貫通孔を形成した場合は、この工程で貫通孔の内壁面にも金属からなる薄膜導体層を形成することにより、スルーホールとしてもよい。
【0179】
上記(7) の工程で、スルーホールを形成した場合には、以下のような処理工程を行うことが望ましい。即ち、無電解めっき層表面とスルーホール内壁とを黒化(酸化)−還元処理、有機酸と第二銅錯体の混合水溶液によるスプレー処理、Cu−Ni−P針状合金めっきによる処理等を用いて粗化形成処理を行う。この後、さらに、樹脂充填剤等を用いてスルーホール内を充填し、ついで、樹脂充填剤の表層部と無電解めっき層表面とをバフ研磨等の研磨処理方法を用いて、平坦化する。さらに、無電解めっきを行い、既に形成した金属からなる薄膜導体層と樹脂充填剤の表層部とに無電解めっき層を形成することにより、スルーホールの上に蓋めっき層を形成する。
【0180】
(8) 次に、上記層間樹脂層上の一部にドライフィルムを用いてめっきレジストを形成し、その後、上記薄膜導体層をめっきリードとして電気めっきを行い、上記めっきレジスト非形成部に電気めっき層を形成する。上記電気めっきとしては、銅めっきを用いることが望ましい。このとき、バイアホール用開口を電気めっきで充填してフィールドビア構造としてもよく、バイアホール用開口に導電性ペースト等を充填した後、その上に蓋めっき層を形成してフィールドビア構造としてもよい。フィールドビア構造を形成することにより、バイアホールの直上にバイアホールを設けることができる。
【0181】
(9) 電気めっき層を形成した後、めっきレジストを剥離し、めっきレジストの下に存在していた金属からなる薄膜導体層をエッチングにより除去し、独立した導体回路とする。上記電気めっきとしては、銅めっきを用いることが望ましい。エッチング液としては、例えば、硫酸−過酸化水素水溶液、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩水溶液、塩化第二鉄、塩化第二銅の水溶液、塩酸、硝酸、熱希硫酸等が挙げられる。また、前述した第二銅錯体と有機酸とを含有するエッチング液を用いて、導体回路間のエッチングと同時に粗化面を形成してもよい。さらに、必要により、酸または酸化剤を用いて層間樹脂層上に触媒を除去してもよい。触媒を除去することにより、触媒に用いたパラジウム等の金属がなくなるため、電気特性の低下を防止することができる。
【0182】
(10)この後、上記した本発明の方法により、導体回路表面にトリアジン化合物を含む層を形成し、さらに、必要により、(3)〜(9)の工程を繰り返すことにより、導体回路と層間樹脂層とが順次積層された基板を作製する。
【0183】
(11)次に、最上層の導体回路を含む基板面にソルダーレジスト層を形成し、さらに、該ソルダーレジスト層を開口して半田パッドを形成した後、上記半田パッドに半田ペーストを充填し、リフローすることにより半田バンプを形成する。その後、外部基板接続面に、ピンを配設したり、半田ボールを形成したりすることにより、PGA(Pin Grid Array)やBGA(Ball Grid Array) とする。
【0184】
上記ソルダーレジスト層は、例えば、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等からなるソルダーレジスト組成物を用いて形成することができ、これらの樹脂の具体例としては、例えば、層間樹脂層に用いた樹脂と同様の樹脂等が挙げられる。
【0185】
また、上記以外のソルダーレジスト組成物としては、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂の(メタ)アクリレート、イミダゾール硬化剤、2官能性(メタ)アクリル酸エステルモノマー、分子量500〜5000程度の(メタ)アクリル酸エステルの重合体、ビスフェノール型エポキシ樹脂等からなる熱硬化性樹脂、多価アクリル系モノマー等の感光性モノマー、グリコールエーテル系溶剤などを含むペースト状の流動体が挙げられ、その粘度は25℃で1〜10Pa・sに調整されていることが望ましい。
【0186】
上記ノボラック型エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェノールノボラックやクレゾールノボラックのグリシジルエーテルをアクリル酸やメタクリル酸等と反応させたエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0187】
上記2官能性(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては特に限定されず、例えば、各種ジオール類のアクリル酸やメタクリル酸のエステル等が挙げられ、市販品としては、日本化薬社製のR−604、PM2、PM21等が挙げられる。
【0188】
また、上記ソルダーレジスト組成物はエラストマーや無機フィラーが配合されていてもよい。エラストマーが配合されていることにより、形成されるソルダーレジスト層は、エラストマーの有する柔軟性および反発弾性により、ソルダーレジスト層に応力が作用した場合でも、該応力を吸収したり緩和したりすることができ、その結果、多層プリント配線板の製造工程や製造した多層プリント配線板にICチップ等の電子部品を搭載した後のソルダーレジスト層にクラックや剥離が発生することを抑制でき、さらに、クラックが発生した場合でも該クラックが大きく成長することがない。
【0189】
上記ソルダーレジスト層を開口する方法としては、例えば、バイアホール用開口を形成する方法と同様に、レーザ光を照射する方法等が挙げられる。
【0190】
また、ソルダーレジスト組成物として、感光性のソルダーレジスト組成物を使用した場合には、ソルダーレジスト層を形成した後、該ソルダーレジスト層上にフォトレジストを載置し、露光、現像処理を施すことにより、ソルダーレジスト層を開口することができる。
【0191】
上記ソルダーレジスト層を開口することにより露出した導体回路部分は、通常、ニッケル、パラジウム、金、銀、白金等の耐食性金属により被覆することが望ましい。具体的には、ニッケル−金、ニッケル−銀、ニッケル−パラジウム、ニッケル−パラジウム−金等の金属により被覆層を形成することが望ましい。上記被覆層は、例えば、めっき、蒸着、電着等により形成することができるが、これらのなかでは、被覆層の均一性に優れるという点からめっきが望ましい。
【0192】
なお、製品認識文字などを形成するための文字印刷工程やソルダーレジスト層の改質のために、酸素や四塩化炭素などのプラズマ処理を適時行ってもよい。以上の方法は、セミアディティブ法によるものであるが、フルアディティブ法を採用してもよい。
【0193】
このような本発明の密着剤や複合体を用いることにより、導体回路と層間樹脂層との密着性が高く、この高い密着性を長期間に渡って維持することができる多層プリント配線板を製造することができる。上記多層プリント配線板もまた、本発明の1つである。
【0194】
次に、多層プリント配線板の他の製造方法について説明する。この製造方法は、上記(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物の少なくとも一種を含む溶液中に、最外層に導体回路の形成された基板を浸漬し、次に、上記基板を上記(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物とを含む溶液中に浸漬することにより形成する。
【0195】
この製造方法は、最外層に導体回路の形成された基板を、上記トリアジン化合物を有する溶液に浸漬した後、上記有機化合物を含む溶液に浸漬する点で前記した第一の多層プリント配線板の製造方法と異なるほかは、同様であるので、異なる部分のみを説明し、同一部分については、説明を省略する。
【0196】
即ち、第二の多層プリント配線板の製造方法では、トリアジントリチオンのナトリウム塩を水または有機溶剤に添加した溶液(トリアジン塩溶液)等のトリアジン化合物を有する溶液と、上記トリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物を水または有機溶剤に添加した溶液(有機化合物溶液)とを別々に調製する。
【0197】
これらの溶液を調製する際に用いる、上記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物、および、上記有機化合物としては、第一の多層プリント配線板の製造方法で用いるものと同様のものが挙げられる。
【0198】
そして、上記溶液を調製した後、まず、第一の多層プリント配線板の製造方法と同様の前処理を施した導体回路が形成された基板を上記トリアジン塩溶液、または、トリアジントリチオンを水若しくは有機溶媒に溶解した溶液に浸漬し、次に、上記有機化合物溶液に浸漬する。
【0199】
これらそれぞれの溶液に浸漬する際の条件も特に限定されないが、第一の多層プリント配線板の製造方法と同様の理由で、トリアジン溶液の濃度は0.1mmol〜1mol、反応温度は25〜80℃、浸漬時間は1秒〜120分が望ましく、有機化合物溶液の濃度は5〜55体積%、反応温度は25〜80℃、浸漬時間は1秒〜30分が望ましい。
【0200】
第二の多層プリント配線板の製造方法を用いても、導体回路と層間樹脂層との密着性が高く、この高い密着性を長期間に渡って維持することができる多層プリント配線板を製造することができる。上記多層プリント配線板もまた、本発明の1つである。
【0201】
また、上記第一および第二の多層プリント配線板の製造方法で用いたトリアジン化合物を含む層を形成する方法に代えて、以下のような方法を用いても樹脂層との密着性に優れたトリアジン化合物を含む層を形成することができる。すなわち、上記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と、該トリアジン化合物と反応可能な有機化合物とを反応させることにより、この有機化合物由来の官能基を有するトリアジン化合物(以下、有機基含有トリアジン化合物という)を得た後、上記有機基含有トリアジン化合物を水または有機溶媒に溶解した溶液を調整し、次に、上記溶液に最外層に導体回路の形成された基板を浸漬することにより、樹脂層との密着性に優れたトリアジン化合物を含む層を形成することができる。
【0202】
従って、この方法(以下、第三の多層プリント配線板の製造方法という)により導体回路表面の少なくとも一部に、トリアジン化合物を含む層を形成した場合にも、導体回路と樹脂層との間の密着性が高く、この高い密着性を長期間に渡って維持することのできる多層プリント配線板を製造することができる。
【0203】
上記第三の多層プリント配線板の製造方法は、上記したトリアジン化合物を含む層を形成する方法のみが、第一および第二の多層プリント配線板の製造方法と異なる。上記有機化合物としては、例えば、第一の多層プリント配線板で用いる有機化合物と同様のもの等が挙げられるが、今までに用いられていない化合物が好ましい。また、上記有機化合物とトリアジン化合物とを反応させる方法としては特に限定されず、有機化合物とトリアジン化合物との組み合わせを考慮して、適宜選択すればよい。
【実施例】
【0204】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
A.上層の粗化面形成用樹脂組成物の調製
1)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製、分子量:2500)の25%アクリル化物を80重量%の濃度でジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)に溶解させた樹脂液35重量部、感光性モノマー(東亜合成社製、アロニックスM315)3.15重量部、消泡剤(サンノプコ社製 S−65)0.5重量部およびN−メチルピロリドン(NMP)3.6重量部を容器にとり、攪拌混合することにより混合組成物を調製した。
【0205】
2)ポリエーテルスルフォン(PES)12重量部、エポキシ樹脂粒子(三洋化成社製、ポリマーポール)の平均粒径1.0μmのもの7.2重量部および平均粒径0.5μmのもの3.09重量部を別の容器にとり、攪拌混合した後、さらにNMP30重量部を添加し、ビーズミルで攪拌混合し、別の混合組成物を調製した。
【0206】
3)イミダゾール硬化剤(四国化成社製、2E4MZ−CN)2重量部、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュア I−907)2重量部、光増感剤(日本化薬社製、DETX−S)0.2重量部およびNMP1.5重量部をさらに別の容器にとり、攪拌混合することにより混合組成物を調製した。そして、1)、2)および3)で調製した混合組成物を混合することにより粗化面形成用樹脂組成物を得た。
【0207】
B.下層の粗化面形成用樹脂組成物の調製
1)クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製、分子量:2500)の25%アクリル化物を80重量%の濃度でDMDGに溶解させた樹脂液35重量部、感光性モノマー(東亜合成社製、アロニックスM315)4重量部、消泡剤(サンノプコ社製 S−65)0.5重量部およびNMP3.6重量部を容器にとり、攪拌混合することにより混合組成物を調製した。
【0208】
2)ポリエーテルスルフォン(PES)12量部、および、エポキシ樹脂粒子(三洋化成社製、ポリマーポール)の平均粒径0.5μmのもの14.49重量部を別の容器にとり、攪拌混合した後、さらにNMP30重量部を添加し、ビーズミルで攪拌混合し、別の混合組成物を調製した。
【0209】
3)イミダゾール硬化剤(四国化成社製、2E4MZ−CN)2重量部、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガキュア I−907)2重量部、光増感剤(日本化薬社製、DETX−S)0.2重量部およびNMP1.5重量部をさらに別の容器にとり、攪拌混合することにより混合組成物を調製した。そして、1)、2)および3)で調製した混合組成物を混合することにより無電解めっき用接着剤を得た。
【0210】
C.樹脂充填剤の調製
1)ビスフェノールF型エポキシモノマー(油化シェル社製、分子量:310、YL983U)100重量部、表面にシランカップリング剤がコーティングされた平均粒径が1.6μmで、最大粒子の直径が15μm以下のSiO2 球状粒子(アドテック社製、CRS 1101−CE)170重量部およびレベリング剤(サンノプコ社製 ペレノールS4)1.5重量部を容器にとり、攪拌混合し、その粘度が23±1℃で45〜49Pa・sの樹脂充填剤を調製した。なお、硬化剤として、イミダゾール硬化剤(四国化成社製、2E4MZ−CN)6.5重量部を用いた。
【0211】
D.多層プリント配線板の製造方法
(1) 厚さ1mmのガラスエポキシ樹脂またはBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂からなる基板1の両面に18μmの銅箔8がラミネートされている銅張積層板を出発材料とした(図1(a)参照)。まず、この銅張積層板をドリル削孔し、無電解めっき処理を施し、パターン状にエッチングすることにより、基板1の両面に下層導体回路4とスルーホール9を形成した。
【0212】
(2) スルーホール9および下層導体回路4を形成した基板を水洗いし、乾燥した後、NaOH(10g/L)、NaClO2 (40g/L)、Na3 PO4 (6g/L)を含む水溶液を黒化浴(酸化浴)とする黒化処理、および、NaOH(10g/L)、NaBH4 (6g/L)を含む水溶液を還元浴とする還元処理を行い、そのスルーホール9を含む下層導体回路4の全表面に粗化面4a、9aを形成した(図1(b)参照)。
【0213】
(3) 上記Cに記載した樹脂充填剤を調製した後、下記の方法により調製後24時間以内に、スルーホール9内、および、基板1の片面の導体回路非形成部と導体回路4の外縁部とに樹脂充填剤10の層を形成した。即ち、まず、スキージを用いてスルーホール内に樹脂充填剤を押し込んだ後、100℃、20分の条件で乾燥させた。次に、導体回路非形成部に相当する部分が開口したマスクを基板上に載置し、スキージを用いて凹部となっている導体回路非形成部に樹脂充填剤10の層を形成し、100℃、20分の条件で乾燥させた(図1(c)参照)。
【0214】
(4) 上記(3) の処理を終えた基板の片面を、#600のベルト研磨紙(三共理化学製)を用いたベルトサンダー研磨により、内層銅パターン4の表面やスルーホール9のランド表面に樹脂充填剤10が残らないように研磨し、次いで、上記ベルトサンダー研磨による傷を取り除くためのバフ研磨を行った。このような一連の研磨を基板の他方の面についても同様に行った。次いで、100℃で1時間、150℃で1時間の加熱処理を行って樹脂充填剤10を硬化した。
【0215】
このようにして、スルーホール9や導体回路非形成部に形成された樹脂充填材10の表層部および下層導体回路4の表面を平坦化し、樹脂充填材10と下層導体回路4の側面4aとが粗化面を介して強固に密着し、またスルーホール9の内壁面9aと樹脂充填材10とが粗化面を介して強固に密着した絶縁性基板を得た(図1(d)参照)。この工程により、樹脂充填剤10の表面と下層導体回路4の表面が同一平面となる。
【0216】
(5) 次に、下層導体回路4の形成された基板1の両面をアルカリ脱脂してソフトエッチングした後、10体積%硫酸からなる活性化液に浸漬することにより導体回路表面の電位を調整した。これとは別に、トリアジントリチオンのモノナトリウム塩を有機溶剤に溶解し、さらに、2−メチルアミノメチルフェノールを添加することにより、モノナトリウム塩と有機化合物とを含む溶液を調製した。なお、混合液の濃度は5体積%である。
【0217】
得られた溶液の温度を55℃に調整した後、該溶液中に上記導体回路表面の電位を調整した基板を1分間浸漬することにより、導体回路表面にトリアジン化合物を含む層(図示せず)を形成し、その後、基板をメタノールで洗浄した。
【0218】
(6) 次に、トリアジン化合物を含む層を形成してから10分間経過した後、基板の両面に、調製後24時間以内の上記Bの粗化面形成用樹脂組成物(粘度:1.5Pa・s)をロールコータで塗布し、水平状態で20分間放置してから、60℃で30分の乾燥(プリベーク)を行い、粗化面形成用樹脂層2aを形成した。さらに、この粗化面形成用樹脂層2aの上に調製後24時間以内の上記Aの粗化面形成用樹脂組成物(粘度:7Pa・s)をロールコータを用いて塗布し、水平状態で20分間放置してから、60℃で30分の乾燥(プリベーク)を行い、粗化面形成用樹脂層2bを形成し、厚さ35μmの粗化面形成用樹脂層を形成した(図2(a)参照)。
【0219】
(7) 上記(6) で粗化面形成用樹脂層を形成した基板1の両面に、直径85μmの黒円が印刷されたフォトマスクフィルムを密着させ、超高圧水銀灯により500mJ/cm2 強度で露光した後、DMDG溶液でスプレー現像した。この後、さらに、この基板を超高圧水銀灯により3000mJ/cm2 強度で露光し、100℃で1時間、120℃で1時間、150℃で3時間(ポストベーク)の加熱処理を施し、フォトマスクフィルムに相当する寸法精度に優れた直径85μmのバイアホール用開口6を有する厚さ35μmで2層構造の層間樹脂層2を形成した(図2(b)参照)。
【0220】
(8) バイアホール用開口6を形成した基板を、800g/lのクロム酸を含む70℃の溶液に19分間浸漬し、層間樹脂層2の表面に存在するエポキシ樹脂粒子を溶解除去することにより、層間樹脂層2の表面を粗面とした(図2(c)参照)。
【0221】
(9) 次に、上記処理を終えた基板を、中和溶液(シプレイ社製)に浸漬してから水洗いした。さらに、粗面化処理(粗化深さ6μm)した該基板の表面に、パラジウム触媒(アトテック製)を付与することにより、層間樹脂層2の表面およびバイアホール用開口6の内壁面に触媒核を付着させた。
【0222】
(10)次に、以下の組成の無電解銅めっき水溶液中に基板を浸漬して、粗面全体に厚さ0.6〜1.2μmの無電解銅めっき層12を形成した(図2(d)参照)。
〔無電解めっき水溶液〕
EDTA 0.08 mol/l
硫酸銅 0.03 mol/l
HCHO 0.05 mol/l
NaOH 0.10 mol/l
痾、畚c1′−ビピリジル 80 mg/l
ポリエチレングリコール(PEG) 0.10 g/l
〔無電解めっき条件〕
65℃の液温度で20分
【0223】
(11)市販の感光性ドライフィルムを無電解銅めっき層12に貼り付け、マスクを載置して、100mJ/cm2 で露光し、0.8%炭酸ナトリウム水溶液で現像処理することにより、厚さ25μmのめっきレジスト3を設けた(図3(a)参照)。
【0224】
(12)ついで、基板を50℃の水で洗浄して脱脂し、25℃の水で水洗後、さらに硫酸で洗浄してから、以下の条件で電解銅めっきを施し、電解銅めっき層13を形成した(図3(b)参照)。
〔電解めっき水溶液〕
硫酸 2.24 mol/L、
硫酸銅 0.26 mol/L、
添加剤 19.5 ml/L
(アトテックジャパン社製、カパラシドGL)
〔電解めっき条件〕
電流密度 1 A/dm2
時間 65 分
温度 22±2 度
【0225】
(13)さらに、めっきレジストを5%KOH水溶液で剥離除去した後、そのめっきレジスト下の無電解めっき膜を硫酸と過酸化水素の混合液でエッチング処理して溶解除去し、無電解銅めっき膜と電気銅めっき膜とからなる厚さ18μmの独立の上層導体回路5(バイアホール7を含む)とした(図3(c)参照)。
【0226】
(14)上記 (5)〜(13)の工程を繰り返すことにより、さらに上層の導体回路を形成し、多層配線板を得た(図3(d)〜図3(b)参照)。
【0227】
(15)次に、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)に60重量%の濃度になるように溶解させた、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬社製)のエポキシ基50%をアクリル化した感光性付与のオリゴマー(分子量:4000)46.67重量部、メチルエチルケトンに溶解させた80重量%のビスフェノールA型エポキシ樹脂(油化シェル社製、商品名:エピコート1001)15.0重量部、イミダゾール硬化剤(四国化成社製、商品名:2E4MZ−CN)1.6重量部、感光性モノマーである多価アクリルモノマー(日本化薬社製、商品名:R604)3.0重量部、同じく多価アクリルモノマー(共栄化学社製、商品名:DPE6A)1.5重量部、分散系消泡剤(サンノプコ社製、S−65)0.71重量部を容器にとり、攪拌、混合して混合組成物を調製し、この混合組成物に対して光重合開始剤としてベンゾフェノン(関東化学社製)2.0重量部、光増感剤としてのミヒラーケトン(関東化学社製)0.2重量部を加え、粘度を25℃で1.4±0.3Pa・sに調整したソルダーレジスト組成物を得た。なお、粘度測定は、B型粘度計(東京計器社製、DVL−B型)で60rpmの場合はローターNo.4、6rpmの場合はローターNo.3によった。
【0228】
(16)次に、多層配線基板の両面に、上記ソルダーレジスト組成物を20μmの厚さで塗布し、70℃で20分間、70℃で30分間の条件で乾燥処理を行った後、半田パッドのパターンが描画された厚さ5mmのフォトマスクをソルダーレジスト層に密着させて1000mJ/cm2 の紫外線で露光し、DMTG溶液で現像処理し、直径200μmの開口を形成した。そして、さらに、80℃で1時間、100℃で1時間、120℃で1時間、150℃で3時間の条件でそれぞれ加熱処理を行ってソルダーレジスト層を硬化させ、開口を有し、その厚さが20μmのソルダーレジスト層14を形成した。なお、上記ソルダーレジスト組成物としては、市販のソルダーレジスト組成物を使用することもできる。
【0229】
(17)次に、過硫酸ナトリウムを主成分とするエッチング液を、そのエッチング能が毎分2μm程度になるように調製し、このエッチング液中にソルダーレジスト層14が形成された基板を1分間浸漬し、導体回路表面に平均粗度(Ra)が1μm以下の粗化面を形成した。さらに、この基板を、塩化ニッケル(2.3×10-1mol/L)、次亜リン酸ナトリウム(2.8×10-1mol/L)、クエン酸ナトリウム(1.6×10-1mol/L)を含むpH=4.5の無電解ニッケルめっき液に20分間浸漬して、開口部に厚さ5μmのニッケルめっき層15を形成した。さらに、その基板をシアン化金カリウム(7.6×10-3mol/L)、塩化アンモニウム(1.9×10-1mol/L)、クエン酸ナトリウム(1.2×10-1mol/L)、次亜リン酸ナトリウム(1.7×10-1mol/L)を含む無電解金めっき液に80℃の条件で7.5分間浸漬して、ニッケルめっき層15上に、厚さ0.03μmの金めっき層16を形成し、半田パッドとした。
【0230】
(18)この後、ソルダーレジスト層14の開口に半田ペーストを印刷して、200℃でリフローすることにより半田バンプ17を形成し、半田バンプ17を有する多層プリント配線板を製造した(図4(c)参照)。
【0231】
(実施例2)実施例1の(6) の工程において、トリアジン化合物を含む層を形成してから1時間経過した後、粗化面形成用樹脂層を形成した以外は実施例1と同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0232】
(実施例3)実施例1の(6) の工程において、トリアジン化合物を含む層を形成してから24時間経過した後、粗化面形成用樹脂層を形成した以外は実施例1と同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0233】
(実施例4)
A.層間樹脂層用樹脂フィルムの作製ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量469、油化シェルエポキシ社製 エピコート1001)30重量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量215、大日本インキ化学工業社製 エピクロンN−673)40重量部、トリアジン構造含有フェノールノボラック樹脂(フェノール性水酸基当量120、大日本インキ化学工業社製 フェノライトKA−7052)30重量部をエチルジグリコールアセテート20重量部、ソルベントナフサ20重量部に攪拌しながら加熱溶解させ、そこへ末端エポキシ化ポリブタジエンゴム(ナガセ化成工業社製 デナレックスR−45EPT)15重量部と2−フェニル−4、5−ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール粉砕品1.5重量部、微粉砕シリカ2重量部、シリコン系消泡剤0.5重量部を添加しエポキシ樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物を厚さ38μmのPETフィルム上に乾燥後の厚さが50μmとなるようにロールコーターを用いて塗布した後、80〜120℃で10分間乾燥させることにより、層間樹脂層用樹脂フィルムを作製した。
【0234】
B.樹脂充填剤の調製
1)ビスフェノールF型エポキシモノマー(油化シェル社製、分子量:310、YL983U)100重量部、表面にシランカップリング剤がコーティングされた平均粒径が1.6μmで、最大粒子の直径が15μm以下のSiO2 球状粒子(アドテック社製、CRS 1101−CE)170重量部およびレベリング剤(サンノプコ社製 ペレノールS4)1.5重量部を容器にとり、攪拌混合することにより、その粘度が23±1℃で45〜49Pa・sの樹脂充填剤を調製した。なお、硬化剤として、イミダゾール硬化剤(四国化成社製、2E4MZ−CN)6.5重量部を用いた。
【0235】
C.プリント配線板の製造方法
(1) 厚さ0.8mmのガラスエポキシ樹脂またはBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂からなる基板1の両面に18μmの銅箔8がラミネートされている銅張積層板を出発材料とした(図5(a)参照)。まず、この銅張積層板をドリル削孔し、無電解めっき処理を施し、パターン状にエッチングすることにより、基板1の両面に下層導体回路4とスルーホール9を形成した。
【0236】
(2) スルーホール9および下層導体回路4を形成した基板を水洗いし、乾燥した後、NaOH(10g/L)、NaClO2 (40g/L)、Na3 PO4 (6g/L)を含む水溶液を黒化浴(酸化浴)とする黒化処理、および、NaOH(10g/L)、NaBH4 (6g/L)を含む水溶液を還元浴とする還元処理を行い、そのスルーホール9を含む下層導体回路4の全表面に粗化面4a、9aを形成した(図5(b)参照)。
【0237】
(3) 上記Bに記載した樹脂充填剤を調製した後、下記の方法により調製後24時間以内に、スルーホール9内、および、基板1の片面の導体回路非形成部と導体回路4の外縁部とに樹脂充填剤10の層を形成した。即ち、まず、スキージを用いてスルーホール内に樹脂充填剤を押し込んだ後、100℃、20分の条件で乾燥させた。次に、導体回路非形成部に相当する部分が開口したマスクを基板上に載置し、スキージを用いて凹部となっている導体回路非形成部に樹脂充填剤10の層を形成し、100℃、20分の条件で乾燥させた(図5(c)参照)。
【0238】
(4) 上記(3) の処理を終えた基板の片面を、#600のベルト研磨紙(三共理化学製)を用いたベルトサンダー研磨により、内層銅パターン4の表面やスルーホール9のランド表面に樹脂充填剤10が残らないように研磨し、次いで、上記ベルトサンダー研磨による傷を取り除くためのバフ研磨を行った。このような一連の研磨を基板の他方の面についても同様に行った。次いで、100℃で1時間、150℃で1時間の加熱処理を行って樹脂充填剤10を硬化した。
【0239】
このようにして、スルーホール9や導体回路非形成部に形成された樹脂充填材10の表層部および下層導体回路4の表面を平坦化し、樹脂充填材10と下層導体回路4の側面4aとが粗化面を介して強固に密着し、またスルーホール9の内壁面9aと樹脂充填材10とが粗化面を介して強固に密着した絶縁性基板を得た(図5(d)参照)。即ち、この工程により、樹脂充填剤10の表面と下層導体回路4の表面とが同一平面となる。
【0240】
(5) 次に、下層導体回路4の形成された基板1の両面をアルカリ脱脂してソフトエッチングした後、10体積%硫酸からなる活性化液に浸漬することにより導体回路表面の電位を調整した。これとは別に、トリアジントリチオンのモノナトリウム塩を有機溶剤に溶解し、さらに、ジエチレントリアミンを添加することにより、モノナトリウム塩と有機化合物とを含む溶液を調製した。なお、混合液の濃度は5体積%である。
【0241】
得られた溶液の温度を55℃に調整した後、該溶液中に上記導体回路表面の電位を調整した基板を1分間浸漬することにより、導体回路表面にトリアジン化合物を含む層を形成し、その後、基板をメタノールで洗浄した。
【0242】
(6) 基板の両面に、上記Aで作製した層間樹脂層用樹脂フィルムを、以下の方法により真空ラミネーター装置を用いて貼り付けることにより層間樹脂層を形成した(図6(a)参照)。即ち、層間樹脂層用樹脂フィルムを基板上に載置し、真空度0.5Torr、圧力4kgf/cm2 、温度80℃、圧着時間60秒の条件で貼り付け、その後、170℃で30分間熱硬化させた。
【0243】
(7) 次に、層間樹脂層2上に、厚さ1.2mmの貫通孔が形成されたマスクを介して、波長10.4μmのCO2 ガスレーザにて、ビーム径4.0mm、トップハットモード、パルス幅8.0μ秒、マスクの貫通孔の径1.0mm、1ショットの条件で層間樹脂層2に、直径80μmのバイアホール用開口6を形成した(図6(b)参照)。
【0244】
(8) バイアホール用開口6を形成した基板を、60g/lの過マンガン酸を含む80℃の溶液に10分間浸漬し、層間樹脂層2の表面に存在するエポキシ樹脂粒子を溶解除去することにより、バイアホール用開口6の内壁を含む層間樹脂層2の表面を粗面とした(図6(c)参照)。
【0245】
(9) 次に、上記処理を終えた基板を、中和溶液(シプレイ社製)に浸漬してから水洗いした。さらに、粗面化処理(粗化深さ3μm)した該基板の表面に、パラジウム触媒(アトテック社製)を付与することにより、層間樹脂層2の表面およびバイアホール用開口6の内壁面に触媒核を付着させた。
【0246】
(10)次に、以下の組成の無電解銅めっき水溶液中に基板を浸漬して、粗面全体に厚さ0.6〜3.0μmの無電解銅めっき層12を形成した(図6(d)参照)。
〔無電解めっき水溶液〕
NiSO4 0.003 mol/L、
酒石酸 0.200 mol/L、
硫酸銅 0.030 mol/L、
HCHO 0.050 mol/L、
NaOH 0.100 mol/L、
痾、畚c1′−ビピリジル 40 mg/L、
ポリエチレングリコール(PEG) 0.10 g/lL
〔無電解めっき条件〕
35℃の液温度で40分
【0247】
(11)市販の感光性ドライフィルムを無電解銅めっき層12に貼り付け、マスクを載置して、100mJ/cm2 で露光し、0.8%炭酸ナトリウム水溶液で現像処理することにより、厚さ30μmのめっきレジスト3を設けた(図7(a)参照)。
【0248】
(12)ついで、基板を50℃の水で洗浄して脱脂し、25℃の水で水洗後、さらに硫酸で洗浄してから、以下の条件で電解銅めっきを施し、電解銅めっき層13を形成した(図7(b)参照)。
〔電解めっき水溶液〕
硫酸 2.24 mol/L、
硫酸銅 0.26 mol/L、
添加剤 19.5 ml/L(
アトテックジャパン社製、カパラシドHL)
〔電解めっき条件〕
電流密度 1 A/dm2
時間 65 分
温度 22±2℃
【0249】
(13)さらに、めっきレジスト3を5%NaOH水溶液で剥離除去した後、そのめっきレジスト3下の無電解めっき膜12を硫酸と過酸化水素の混合液でエッチング処理して溶解除去し、無電解銅めっき膜12と電解めっき膜13からなる厚さ18μmの独立の上層導体回路5(バイアホール7を含む)とした(図7(c)参照)。
【0250】
(14)上記(5) 〜(13)の工程を繰り返すことにより、さらに上層の導体回路を形成し、多層配線板を得た(図7(d)〜図8(b)参照)。
【0251】
(15)次に、実施例1と同様にして粘度を25℃で1.4±0.3Pa・sに調整したソルダーレジスト組成物を得、さらに、実施例1と同様にして、開口を有し、その厚さが20μmのソルダーレジスト層14を形成した。
【0252】
(16)次に、ソルダーレジスト層14を形成した基板を、塩化ニッケル(2.3×10-1mol/L)、次亜リン酸ナトリウム(2.8×10-1mol/L)、クエン酸ナトリウム(1.6×10-1mol/L)を含むpH=4.5の無電解ニッケルめっき液に20分間浸漬して、開口部に厚さ5μmのニッケルめっき層15を形成した。さらに、その基板をシアン化金カリウム(7.6×10-3mol/L)、塩化アンモニウム(1.9×10-1mol/L)、クエン酸ナトリウム(1.2×10-1mol/L)、次亜リン酸ナトリウム(1.7×10-1mol/L)を含む無電解めっき液に80℃の条件で7.5秒間浸漬して、ニッケルめっき層15上に、厚さ0.03μmの金めっき層16を形成し、半田パッドとした。
【0253】
(17)この後、基板のICチップを載置する面のソルダーレジスト層14に形成した開口に、スズ−鉛を含有する半田ペーストを印刷し、さらに、他方の面のソルダーレジスト層14の開口にスズ−アンチモンを含有する半田ペーストを印刷した後、200℃でリフローすることにより半田バンプ17を形成し、半田バンプ17を有する多層プリント配線板を製造した(図8(c)参照)。
【0254】
(実施例5)
実施例4の(6) の工程において、トリアジン化合物を含む層を形成してから1時間経過した後、層間樹脂層用樹脂フィルムを貼り付けることにより層間樹脂層を形成した以外は、実施例4と同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0255】
(実施例6)
実施例4の(6) の工程において、トリアジン化合物を含む層を形成してから24時間経過した後、層間樹脂層用樹脂フィルムを貼り付けることにより層間樹脂層を形成した以外は、実施例4と同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0256】
(実施例7)
(1) 厚さ0.8mmのガラスエポキシ樹脂またはBT(ビスマレイミド−トリアジン)樹脂からなる基板1の両面に18μmの銅箔8がラミネートされている銅貼積層板を出発材料とした(図9(a)参照)。まず、この銅貼積層板をドリル削孔し、続いてめっきレジストを形成した後、この基板に無電解銅めっき処理を施してスルーホール9を形成し、さらに、銅箔を常法に従いパターン状にエッチングすることにより、基板の両面に内層銅パターン(下層導体回路)4を形成した。
【0257】
(2) 下層導体回路4を形成した基板を水洗いし、乾燥した後、エッチング液を基板の両面にスプレイで吹きつけて、下層導体回路4の表面とスルーホール9のランド表面と内壁とをエッチングすることにより、下層導体回路4の全表面に粗化面4a、9aを形成した(図9(b)参照)。エッチング液として、イミダゾール銅(II)錯体10重量部、グリコール酸7重量部、塩化カリウム5重量部およびイオン交換水78重量部を混合したものを使用した。
【0258】
(3) シクロオレフィン系樹脂を主成分とする樹脂充填剤10を、下記の方法によりスルーホール9内、および、基板1の片面の導体回路非形成部と導体回路4の外縁部とに樹脂充填剤10の層を形成した。即ち、まず、スキージを用いてスルーホール内に樹脂充填剤を押し込んだ後、加熱乾燥させた。次に、導体回路非形成部に相当する部分が開口したマスクを基板上に載置し、スキージを用いて凹部となっている導体回路非形成部に樹脂充填剤10の層を形成し、加熱乾燥させた(図9(c)参照)。
【0259】
(4) 上記(3) の処理を終えた基板の片面を、ベルト研磨紙(三共理化学社製)を用いたベルトサンダー研磨により、下層導体回路4の表面やスルーホール9のランド表面に樹脂充填剤10が残らないように研磨し、ついで、上記ベルトサンダー研磨による傷を取り除くためのバフ研磨を行った。このような一連の研磨を基板の他方の面についても同様に行った。そして、充填した樹脂充填剤10を加熱硬化させた(図9(d)参照)。
【0260】
このようにして、スルーホール9等に充填された樹脂充填剤10の表層部および下層導体回路4上面の粗化層4aを除去して基板両面を平坦化し、樹脂充填剤10と下層導体回路4の側面とが粗化面4aを介して強固に密着し、またスルーホール9の内壁面と樹脂充填剤10とが粗化面9aを介して強固に密着した配線基板を得た。
【0261】
(5) 次に、上記(2) で用いたエッチング液と同じエッチング液をスプレイで吹きつけ、一旦平坦化された下層導体回路4の表面とスルーホール9のランド表面とをエッチングすることにより、下層導体回路4の全表面に粗化面4a、9aを形成した(図10(a)参照)。
【0262】
さらに、下層導体回路4の形成された基板1の両面をアルカリ脱脂してソフトエッチングした後、10体積%硫酸からなる活性化液に浸漬することにより導体回路表面の電位を調整した。これとは別に、トリアジントリチオンのモノナトリウム塩を有機溶剤に溶解し、さらに、アクリルメタアクリレートを添加することにより、モノナトリウム塩と有機化合物とを含む溶液を調製した。なお、混合液の濃度は5体積%である。
【0263】
得られた溶液の温度を55℃に調整した後、該溶液中に上記導体回路表面の電位を調整した基板を1分間浸漬することにより、導体回路表面にトリアジン化合物を含む層(図示せず)を形成し、その後、基板をメタノールで洗浄した。
【0264】
(6) 次に、上記工程を経た基板の両面に、厚さ50μmの熱硬化型シクロオレフィン系樹脂シートを温度50〜150℃まで昇温しながら圧力5kg/cm2 で真空圧着ラミネートし、シクロオレフィン系樹脂からなる層間樹脂層2を設けた(図10(b)参照)。真空圧着時の真空度は、10mmHgであった。
【0265】
(7) 次に、波長10.4μmのCO2 ガスレーザにて、ビーム径5mm、トップハットモード、パルス幅50μ秒、マスクの穴径0.5mm、3ショットの条件でシクロオレフィン系樹脂からなる層間樹脂層2に直径80μmのバイアホール用開口6を設けた(図10(c)参照)。この後、酸素プラズマを用いてデスミア処理を行った。
【0266】
(8) 次に、日本真空技術株式会社製のSV−4540を用いてプラズマ処理を行い、層間樹脂層2の表面を粗化した(図10(d)参照)。この際、不活性ガスとしてはアルゴンガスを使用し、電力200W、ガス圧0.6Pa、温度70℃の条件で、2分間プラズマ処理を実施した。
【0267】
(9) 次に、同じ装置を用い、内部のアルゴンガスを交換した後、Ni−Cu合金をターゲットにしたスパッタリングを、気圧0.6Pa、温度80℃、電力200W、時間5分間の条件で行い、Ni−Cu合金層12をポリオレフィン系層間樹脂層2の表面に形成した。このとき、形成されたNi−Cu合金層12の厚さは0.2μmであった(図11(a)参照)。
【0268】
(10)上記処理を終えた基板の両面に、市販の感光性ドライフィルムを貼り付け、フォトマスクフィルムを載置して、100mJ/cm2 で露光した後、0.8%炭酸ナトリウムで現像処理し、厚さ15μmのめっきレジスト3のパターンを形成した(図11(b)参照)。
【0269】
(11)次に、以下の条件で電解銅めっきを施して、厚さ15μmの電解銅めっき膜13を形成した(図11(c)参照)。なお、この電解銅めっき膜13により、後述する工程で導体回路5となる部分の厚付けおよびバイアホール7となる部分のめっき充填等が行われたことになる。なお、電気めっき水溶液中の添加剤は、アトテックジャパン社製のカパラシドHLである。
【0270】
〔電気めっき水溶液〕
硫酸 2.24 mol/l
硫酸銅 0.26 mol/l
添加剤 19.5 ml/l
〔電気めっき条件〕
電流密度 1 A/dm2
時間 65 分
温度 22±2 ℃
【0271】
(12)ついで、めっきレジスト3を5%NaOHで剥離除去した後、そのめっきレジスト3の下に存在していたNi−Cu合金層12を硝酸および硫酸と過酸化水素との混合液を用いるエッチングにて溶解除去し、電気銅めっき膜13等からなる厚さ16μmの導体回路5(バイアホール7を含む)を形成した(図11(d)参照)。
【0272】
(13)続いて、上記(5) 〜(12)の工程を、繰り返すことにより、さらに上層の導体回路を形成した。(図12(a)〜図13(b)参照)。
【0273】
(14)次に、実施例1と同様にして粘度を25℃で1.4±0.3Pa・sに調整したソルダーレジスト組成物を得、さらに、実施例1と同様にして、開口を有し、その厚さが20μmのソルダーレジスト層14を形成した。
【0274】
(15)次に、ソルダーレジスト層14を形成した基板を、塩化ニッケル(2.3×10-1mol/l)、次亜リン酸ナトリウム(2.8×10-1mol/l)、クエン酸ナトリウム(1.6×10-1mol/l)を含むpH=4.5の無電解ニッケルめっき液に20分間浸漬して、開口部に厚さ5μmのニッケルめっき層15を形成した。さらに、その基板をシアン化金カリウム(7.6×10-3mol/l)、塩化アンモニウム(1.9×10-1mol/l)、クエン酸ナトリウム(1.2×10-1mol/l)、次亜リン酸ナトリウム(1.7×10-1mol/l)を含む無電解めっき液に80℃の条件で7.5秒間浸漬して、ニッケルめっき層15上に、厚さ0.03μmの金めっき層16を形成し、半田パッドとした。
【0275】
(16)この後、ソルダーレジスト層14の開口に半田ペーストを印刷して、200℃でリフローすることにより半田バンプ17を形成し、半田バンプ17を有する多層プリント配線板を製造した(図13(c)参照)。
【0276】
(実施例8)
実施例7の(6) の工程において、トリアジン化合物を含む層を形成してから1時間経過した後、熱硬化型シクロオレフィン系樹脂シートを貼り付けることにより層間樹脂層を形成した以外は、実施例7と同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0277】
(実施例9)
実施例7の(6) の工程において、トリアジン化合物を含む層を形成してから24時間経過した後、熱硬化型シクロオレフィン系樹脂シートを貼り付けることにより層間樹脂層を形成した以外は、実施例7と同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0278】
(実施例10)
実施例1の(5) の工程において、トリアジントリチオンのモノナトリウム塩を水に溶解した溶液(モノナトリウム塩溶液)と、1mMの2−メチルメタクリレートを含む有機化合物溶液を別々に調製し、導体回路表面の電位を調整した基板を、まず、モノナトリウム塩溶液に0.5分間浸漬し、次に、有機化合物溶液に10分間浸漬することによりトリアジン化合物を含む層を形成した以外は、実施例1と同様にして多層プリント配線板を得た。
【0279】
(実施例11)
トリアジン化合物を含む層を形成してから1時間経過した後、粗化面形成用樹脂層を形成した以外は、実施例10と同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0280】
(実施例12)
トリアジン化合物を含む層を形成してから24時間経過した後、粗化面形成用樹脂層を形成した以外は、実施例10と同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0281】
(実施例13)
実施例4の(5) の工程において、トリアジントリチオンのモノナトリウム塩を水に溶解した溶液(モノナトリウム塩溶液)と、1mMのジエチレントリアミンを含む有機化合物溶液を別々に調製し、導体回路表面の電位を調整した基板を、まず、モノナトリウム塩溶液に0.5分間浸漬し、次に、有機化合物溶液に10分間浸漬することによりトリアジン化合物を含む層を形成した以外は、実施例4と同様にして多層プリント配線板を得た。
【0282】
(実施例14)
トリアジン化合物を含む層を形成してから1時間経過した後、層間樹脂層を形成した以外は、実施例13と同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0283】
(実施例15)
トリアジン化合物を含む層を形成してから24時間経過した後、層間樹脂層を形成した以外は、実施例13と同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0284】
(実施例16)
実施例7の(5) の工程において、トリアジントリチオンのモノナトリウム塩を水に溶解した溶液(モノナトリウム塩溶液)と、1mMのアクリルメタアクリレートを含む有機化合物溶液を別々に調製し、導体回路表面の電位を調整した基板を、まず、モノナトリウム塩溶液に1.0分間浸漬し、次に、有機化合物溶液に10分間浸漬することによりトリアジン化合物を含む層を形成した以外は、実施例7と同様にして多層プリント配線板を得た。
【0285】
(実施例17)
トリアジン化合物を含む層を形成してから1時間経過した後、層間樹脂層を形成した以外は、実施例16と同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0286】
(実施例18)
トリアジン化合物を含む層を形成してから24時間経過した後、層間樹脂層を形成した以外は、実施例16と同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0287】
(比較例1)
実施例1の(5) の工程において、トリアジン化合物を含む層を形成せずに、基板を水洗、酸性脱脂した後、ソフトエッチングし、次いで、エッチング液を基板の両面にスプレイで吹きつけた後、搬送ロールで送ることにより導体回路表面に粗化面を形成した以外は実施例1と同様にして多層プリント配線板を得た。なお、エッチング液として、硫酸と過酸化水素水とを含むエッチング液を使用した。
【0288】
(比較例2)
実施例2の(5) の工程において、トリアジン化合物を含む層を形成せずに、基板を水洗、酸性脱脂した後、ソフトエッチングし、次いで、エッチング液を基板の両面にスプレイで吹きつけた後、搬送ロールで送ることにより導体回路表面に粗化面を形成した以外は実施例2と同様にして多層プリント配線板を得た。なお、エッチング液として、硫酸と過酸化水素水とを含むエッチング液を使用した。
【0289】
(比較例3)
実施例3の(5) の工程において、トリアジン化合物を含む層を形成せずに、基板を水洗、酸性脱脂した後、ソフトエッチングし、次いで、エッチング液を基板の両面にスプレイで吹きつけた後、搬送ロールで送ることにより導体回路表面に粗化面を形成した以外は実施例3と同様にして多層プリント配線板を得た。なお、エッチング液として、硫酸と過酸化水素水とを含むエッチング液を使用した。
【0290】
(比較例4)
実施例1の(5) の工程において、トリアジントリチオンモノナトリウム塩からなるトリアジン化合物の溶液に基板を0.5分間浸漬することによりトリアジン化合物を含む層を形成した以外は、実施例1と同様にして多層プリント配線板を得た。
【0291】
(比較例5)
トリアジン化合物を含む層を形成してから1時間経過した後、層間樹脂層を形成した以外は、比較例4と同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0292】
(比較例6)
トリアジン化合物を含む層を形成してから24時間経過した後、層間樹脂層を形成した以外は、比較例4と同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0293】
(比較例7)
実施例4の(5) の工程において、トリアジントリチオンモノナトリウム塩からなるトリアジン化合物の溶液に基板を0.5分間浸漬することによりトリアジン化合物を含む層を形成した以外は、実施例4と同様にして多層プリント配線板を得た。
【0294】
(比較例8)
トリアジン化合物を含む層を形成してから1時間経過した後、層間樹脂層を形成した以外は、比較例7と同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0295】
(比較例9)
トリアジン化合物を含む層を形成してから24時間経過した後、層間樹脂層を形成した以外は、比較例7と同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0296】
(比較例10)
実施例7の(5) の工程において、トリアジントリチオンモノナトリウム塩からなるトリアジン化合物の溶液に基板を0.5分間浸漬することによりトリアジン化合物を含む層を形成した以外は、実施例7と同様にして多層プリント配線板を得た。
【0297】
(比較例11)
トリアジン化合物を含む層を形成してから1時間経過した後、層間樹脂層を形成した以外は、比較例10と同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0298】
(比較例12)
トリアジン化合物を含む層を形成してから24時間経過した後、層間樹脂層を形成した以外は、比較例10と同様にして多層プリント配線板を製造した。
【0299】
次に、実施例1〜18および比較例1〜12の多層プリント配線板の一部について、130℃で3分、−65℃で3分を1サイクルとする信頼性試験を1000サイクル行った後、信頼性試験前後のピール強度、導通試験、断面の形状を評価し、結果を表1に示した。なお、導通試験および断面の形状は、以下のようにして評価した。
【0300】
(1) 導通試験多層プリント配線板の導通試験を行い、モニターに表示された結果から導通状態を以下の評価基準で評価した。即ち、短絡、断線等が無いものを○、短絡、断線等があったものを×とした。
【0301】
(2) 断面の形状多層プリント配線板をクロスカットし、導体回路と層間樹脂層との間の剥離の有無、および、層間樹脂層にクラックが発生しているか否かをその断面を顕微鏡観察することにより調べ、以下の評価基準で評価した。即ち、剥離およびクラックの観察されないものを○、剥離および/またはクラックが観察されたものを×とした。
【0302】
【表1】

【0303】
表1に記載したように、実施例1〜18で製造した多層プリント配線板は、ピール強度が1.0kgf/cm以上と、導体回路と層間樹脂層との密着性は充分であった。また、信頼性試験前後に導体回路と層間樹脂層との間の剥離が発生したり、層間樹脂層にクラックが発生したりしているものはなく、導通試験において、短絡や断線が生じているものもなかった。
【0304】
これに対して、比較例1〜3の多層プリント配線板では、ピール強度が0.5kgf/cm以下と、導体回路と層間樹脂層との密着性が低くかった。また、信頼性試験後に導体回路と層間樹脂層との間の剥離が発生したり、層間樹脂層にクラックが発生していた。さらに、導通試験においては、信頼性試験後に一部に短絡や断線が生じているものがあった。
【0305】
また、比較例4〜12の多層プリント配線板では、トリアジン化合物を含む層を形成した後、1時間および24時間経過してから層間樹脂層を形成した多層プリント配線板(比較例5、6、8、9、11および12)で特にピール強度が低かった。また、信頼性試験後に導体回路と層間樹脂層との間の剥離が発生したり、層間樹脂層にクラックが発生していた。さらに、導通試験においては、信頼性試験後に一部に短絡や断線が生じているものがあった。
【図面の簡単な説明】
【0306】
【図1】(a)〜(d)は、本発明が適用される多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図2】(a)〜(d)は、本発明が適用される多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明が適用される多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図4】(a)〜(c)は、本発明が適用される多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図5】(a)〜(d)は、本発明が適用される多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図6】(a)〜(d)は、本発明が適用される多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図7】(a)〜(d)は、本発明が適用される多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図8】(a)〜(c)は、本発明が適用される多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図9】(a)〜(d)は、本発明が適用される多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図10】(a)〜(d)は、本発明が適用される多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図11】(a)〜(d)は、本発明が適用される多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図12】(a)〜(c)は、本発明が適用される多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【図13】(a)〜(c)は、本発明が適用される多層プリント配線板の製造工程の一部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0307】
1 基板
2 層間樹脂層
3 めっきレジスト
4 下層導体回路
4a 粗化面
5 上層導体回路
7 バイアホール
8 銅箔
9 スルーホール
9a 粗化面
10 樹脂充填剤
12 無電解めっき層
13 電解めっき層
14 ソルダーレジスト層
15 ニッケルめっき層
16 金めっき層
17 半田バンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、A1 、A2 、A3 は、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、または、置換若しくは無置換のアンモニウムを表し、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。)
で表されるトリアジン化合物、
下記一般式(2)
【化2】

(式中、A4 、A5 は、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、または、置換若しくは無置換のアンモニウムを表し、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。)
で表されるトリアジン化合物、および、
下記一般式(3)
【化3】

(式中、A6 は、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Fr、または、置換若しくは無置換のアンモニウムを表し、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。)
で表されるトリアジン化合物からなる群より選択される少なくとも一種と、
前記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物との反応物または吸着物を含んでなることを特徴とする密着剤。
【請求項2】
前記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物は、下記一般式(4)
NHR2 −R1 −NHR3 ・・・(4)
(式中、R1 は、置換または無置換のフェニレン基、キシリレン基、アゾ基、アゾ基を有する有機基、2価のベンゾフェノン残基、2価のフェニルエーテル残基、アルキレン基、シクロアルキレン基、ピリジレン基、エステル残基、スルフォン基、または、カルボニル基を表す。また、R2 、R3 は、水素またはアルキル基を表し、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
で表される有機化合物である請求項1記載の密着剤。
【請求項3】
前記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物は、下記一般式(5)
4 −NH2 ・・・(5)
(式中、R4 は、フェニル基、ビフェニリル基、置換または無置換のベンジル基、アゾ基を有する有機基、ベンゾイルフェニル基、置換または無置換のアルキル基、シクロアルキル基、アセタール残基、ピリジル基、アルコキシカルボニル基、または、アルデヒド基を有する有機基を表す。)
で表される有機化合物である請求項1記載の密着剤。
【請求項4】
前記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物は、下記一般式(6)
5 −NH−R6 ・・・(6)
(式中、R5 、R6 は、フェニル基、アゾ基を有する有機基、ベンゾイルフェニル基、アルキル基、ピリジル基、アルコキシカルボニル基、アルデヒド基、ベンジル基、または、不飽和基を表し、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
で表される有機化合物である請求項1記載の密着剤。
【請求項5】
前記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物は、下記一般式(7)
【化4】

(式中、R7 、R8 、R9 は、フェニル基、ベンジル基、アゾ基を有する有機基、ベンゾイルフェニル基、置換または無置換のアルキル基、ピリジル基、アルコキシカルボニル基、アルデヒド基、ニトロソ基を表し、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
で表される有機化合物である請求項1記載の密着剤。
【請求項6】
前記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物は、下記一般式(8)
OH−R10−OH・・・(8)
(式中、R10は、置換または無置換のフェニレン基、アゾ基を有する有機基、2価のベンゾフェノン残基、アルキレン基、シクロアルキレン基、ピリジレン基、または、アルコキシカルボニル基を表す。)
で表される有機化合物である請求項1記載の密着剤。
【請求項7】
前記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物は、下記一般式(9)
11−X1 −R12・・・(9)
(式中、R11、R12は、不飽和基を表し、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。また、X1 は、2価のマレイン酸残基、2価のフタル酸残基、または、2価のアジピン酸残基を表す。)
で表される有機化合物である請求項1記載の密着剤。
【請求項8】
前記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物は、下記一般式(10)
13−X2 ・・・(10)
(式中、R13は、不飽和基を表し、X2 は、置換または無置換のフェニル基、アルキル基、アミノ酸残基、水酸基を有する有機基、シアヌル酸残基、または、アルコキシカルボニル基を表す。)
で表される有機化合物である請求項1記載の密着剤。
【請求項9】
前記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物は、下記一般式(11)
14−N=CO・・・(11)
(式中、R14は、置換または無置換のフェニル基、ナフチル基、置換または無置換のアルキル基、ベンジル基、ピリジル基、または、アルコキシカルボニル基を表す。)
で表される有機化合物である請求項1記載の密着剤。
【請求項10】
前記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物は、下記一般式(12)
15−X3 ・・・(12)
(式中、R15は、フェニル基、置換または無置換のアルキル基、アルコキシカルボニル基、アミド基、または、ビニル基を表し、X3 は、アクリル酸残基を表す。)
で表される有機化合物である請求項1記載の密着剤。
【請求項11】
前記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物は、カルボニル基を有する化合物である請求項1記載の密着剤。
【請求項12】
前記一般式(1)〜(3)で表されるトリアジン化合物と反応または吸着可能な有機化合物は、ビニル基含有化合物、エポキシ基含有化合物、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤およびアルミニウム系カップリング剤の中から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の密着剤。
【請求項13】
上記請求項1乃至12何れかに記載の密着剤を接着層とし、該接着層を介して金属と樹脂とが接着されていることを特徴とする複合体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2007−221099(P2007−221099A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−333545(P2006−333545)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【分割の表示】特願2000−9443(P2000−9443)の分割
【原出願日】平成12年1月18日(2000.1.18)
【出願人】(591117206)株式会社東亜電化 (6)
【出願人】(504165591)国立大学法人岩手大学 (222)
【Fターム(参考)】