説明

密閉した容器における液体の滅菌

本発明は、滅菌すべき液体を含む密封された容器の滅菌方法であって、容器を処理区域に移送し、そこで該容器を外部流体のフラックス中に浸漬すること、滅菌すべき該液体を全体的に、電磁波により、毎秒28℃を超える速度で、20℃〜66℃の処理温度Tで加熱すること、該液体を加熱する時、該容器を攪拌すること、および該処理温度Tの値に応じて、該液体の加熱直後または僅かに後で、該液体をパルス状の交番電界に露出することを含んでなる、方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉した容器における液体の滅菌方法およびその方法を行うための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業界で一般的に使用されている滅菌方法の一つは、オートクレーブによる方法であり、そこでは、容器を一まとめ(「バッチ」)にし、典型的には90℃〜130℃の温度で数分間、毎時数千個の容器の速度で処理する。しかし、これらの温度における滅菌は、処理された製品の特性(色、味、香り、生物物理的、生物化学的、および他の品質)を大幅に変化させることがある。従来の熱的滅菌方法では、温度上昇を徐々に行うので、微生物は温度増加に適合し、耐え易くなる。
【0003】
水性液体の滅菌に必要な温度閾を電界の印加により下げることを目的とする方法が、米国特許第4,695,472号およびヨーロッパ特許第1328167号に記載されている。しかし、米国特許第4,695,472号に記載されている方法は、液体のフラックスの滅菌だけを問題としており、液体で満たしたビンまたは他の容器の滅菌には使用できない。提案されている、直径約10センチメートルのビンに印加される電界の振幅では、均質に発生および印加するのが困難な非常に高い電圧を必要とする。
【0004】
ヨーロッパ特許第1328167号では、液体を満たしたビンまたは他の容器の滅菌方法を記載している。電界による加熱および超音波振動の作用に製品を同時にさらすことにより、滅菌閾温度Tを制限することが提案されている。しかし、この技術は、一方で、異なった微生物は超音波振動に対して、周波数および振幅の関数として、異なった感受性を有するので、他方、容器の体積全体にわたって超音波振動を均質に作用させることは困難なので、実用には適していないことが立証されている。
【0005】
また、公知の電気穿孔法(electroporation)による滅菌方法では、急速な加熱および容器の形態のために、液体を含む気密容器の良好な、均質な処理を達成するのが困難であり、滅菌すべき液体の体積中で温度および電界の不均質性を引き起こす。これらの不均質性を相殺し、液体の体積全体にわたって微生物を信頼性良く、不可逆的に、確実に死滅させるために、平均温度および/または電界の振幅もしくは印加時間を増加させることができよう。しかし、このために、液体の特性変化が増大することになろう。
【0006】
加熱の際、容器内側の圧力が増加し、特にプラスチック材料から製造されたビンまたは他の容器では、容器の不可逆的な変形を伴うことがある。電界による滅菌方法の利点は、従来の低温殺菌方法と比較して、滅菌の温度が低く、時間が短いことである。温度を下げ、処理時間を短くすることの利点は、さらに内側圧力の上昇による影響を小さくすることにある。
【0007】
容器の高温滅菌の分野で圧力を相殺するための装置は、英国特許第390768号、米国特許第2909436号、仏国特許第1436405号、および第2035678号に記載されている。これらのシステムでは、内側圧力が、容器を取り囲む液体の、容器が浸漬されている液体柱の高さにより決定される圧力により相殺される。この液体は、容器の内容物を加熱することにも役立ち、滅菌工程を比較的遅くし、容器中にある食品の特性をあまり変化させない。そのような方法は、PETボトルまたは他の、従来の熱的低温殺菌温度でクリープ抵抗が急速に低下するプラスチックから製造された容器の滅菌には、意図していないし、適してもいない。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、工業的速度の処理量で、効率的であり、効果的であり、信頼性があり、プラスチックまたは他の、高温に耐えられない材料から製造された、食品工業で通常のサイズおよび形状の容器を包含する、気密容器中に含まれる液体を滅菌または低温殺菌する能力がある、滅菌または低温殺菌方法を提供することにある。そのような方法を行うための装置を提供することも目的の一つである。
【0009】
本発明の別の目的は、食品工業で通常のサイズおよび形状の容器を包含する、気密容器中に含まれる液体を工業的速度で滅菌または低温殺菌するための、液体の特性を変化させないか、または僅かしか変化させない、滅菌方法または低温殺菌方法を提供することにある。
【0010】
液体を、局所的にも、70℃より上に、好ましくは65℃より上に加熱しない、液体の滅菌方法を提供するのが有利である。
【0011】
本発明の別の目的は、食品工業で通常の様々なサイズおよび形状の気密容器中に含まれる液体を滅菌または低温殺菌するための装置を提供することにある。気密容器中に含まれる液体を工業的速度で、低コストで処理できる装置を提供するのが有利である。
【0012】
本発明の目的は、請求項1に記載の滅菌方法により、および請求項11〜21のいずれかに記載の装置により、達成される。
【0013】
本発明の、滅菌すべき液体を含む密封された容器の滅菌方法は、容器を処理区域に移送し、そこで該容器を外部流体のフラックス中に浸漬すること、滅菌すべき該液体を全体的に(in volume)、電磁波により、毎秒28℃を超える速度で、20℃〜66℃の処理温度Tで加熱すること、該液体を加熱する際に該容器を攪拌すること、および該処理温度Tの値に応じて、該液体加熱の直後または僅かに後で、該液体をパルス状の電界に露出し、V/cmで表す電界の振幅Eを、式:
C(T) ≦ log (E+1) ≦ B(T)
が、値:
B(T) = -2.340×10-5 T3+1.290×10-3 T2−3.110×10-2 T+5.0
C(T) = -4.503×10-5 T3+2.888×10-3 T2−5.900×10-2 T+4.0
(式中、Tは摂氏度で表す温度である)
に対して満たすように選択することを含んでなる。
【0014】
非常に驚くべきことに、本発明者らは、液体を非常に急速に、毎秒28℃を超える速度で再加熱することにより、微生物を死滅させるために印加する電界を、公知の方法と比較して、明らかに低下できることを見出した。処理温度値64〜66℃では、電界の振幅をゼロにすることさえ可能である。言い換えると、液体を全体的に、全ての部分で毎秒28℃を超える速度で加熱する場合、液体の効果的で信頼性のある低温殺菌は、64℃を超える処理温度ではいずれの場合も、電界に露出する必要が全く無く、より低い温度では、従来提案されている振幅よりはるかに低い振幅の電界に露出することにより、低温殺菌を行うことができる。
【0015】
低温殺菌の効能に対する加熱速度の重要性により、液体の体積全体を確実に急速加熱するには、全体的に一様に加熱することが非常に重要である。このためには、液体を攪拌または攪乱し、全体的な再加熱を高周波またはマイクロ波により行う。HF波またはマイクロ波により加熱することにより、電流によるオーム熱を最少に抑え、水分子の攪拌により加熱することができ、不均質な加熱を引き起こす「ピンチ」効果の問題を回避することができる。この放射線の周波数は、1000kHzを超えるのが好ましい。
【0016】
電気穿孔法による処理のための電界は、好ましくは交番であり、パルスにより供給し、交番電界の周波数は、好ましくは100kHz〜1000kHzである。
【0017】
食品、特に飲料、ならびに薬学的および医学的製品に対する危険性を代表する大多数の微生物に対して、微生物の温度上昇に対する適応性メカニズムは、加熱工程全体を通して、毎秒28℃を超える加熱速度では機能しない。
【0018】
液体温度の非常に急速な上昇による微生物メンブランに対する熱的応力が、交番電界の効果による応力に加わり、交番電界の周波数は、メンブランに対する応力の効果を変動させ、その結果、これらのメンブランが受ける局所的な最大応力を増幅するように選択される。この組合せにより、電気的エネルギーの熱形態における損失、従って、微生物の不可逆的破壊に必要な電力の損失が最少に抑えられることにより、電界のエネルギーが、電気穿孔法による微生物の破壊に、より効果的に集中する。これによって、より大量の処理が可能になり、滅菌すべき液体の特性低下につながる破壊および局所的加熱の問題をより容易に回避することができる。
【0019】
該電界パルスにより処理すべき液体に供給される総熱エネルギーは、有利なことに、非常に低く、特に0.05J/cm未満である。
【0020】
従って、本発明の利点は、特に密封容器の内側にある水溶液中に大量に見られる細胞に対する不可逆的な破壊操作または総合的な電気穿孔法を、非常に急速に、66℃未満の温度で、比較的弱い、ゼロになることもある電界で実行できることである。この場合、微生物、例えば成長状態および胞子の形態にあるカビおよび酵母、の不可逆的破壊を、65℃を超えない温度で、1〜2秒間を超えない処理時間で実行できることが立証されている。
【0021】
これによって、熱的安定性に関する最高温度が70℃のオーダーにあるプラスチック材料、主としてPET、製の容器に入れた水系製品または水を含む製品、特に飲料(例えば、単純な鉱水、味を付けた水、茶、果物ジュースおよび関連製品、ミルクおよび関連製品、ビール)の長期間の効果的な滅菌が可能になる。
【0022】
全体的な加熱は、高周波数電磁波またはマイクロ波により行うことができる。容器の周囲を流れる加熱された流体のフラックスが、対流熱交換により、容器の内側に一様な温度場の形成を改善する。さらに、容器およびその内容物の加熱と共に、静圧を漸進的に上昇させることにより、製品の加熱に関連する容器内側の圧力増加を相殺し、従って、容器の塑性変形を防止することができる。
【0023】
容器中に収容された製品を全体的に急速加熱することにより、容器材料の誘電特性が、含水製品の誘電特性と大幅に異なるので、温度の不釣り合いが生じる。これは、製品中で生じる電力の密度が、容器の材料中で生じる電力の密度より、さらに大きくなることを意味する。毎秒30℃を超える加熱速度では、温度差が10℃を超え、勾配が1センチメートルあたり1,000℃を超えることがある。不均一性は、容器壁の厚くなった区域、例えばビンの口および底部、で増大する。滅菌方法が不完全になる危険性があるのは、これらの箇所である。
【0024】
壁の加熱がほとんど熱伝導および対流によってのみ起こると仮定して、温度場における不均一性は、一方で、加熱の際に容器を攪拌することにより、他方、容器を、容器の内側で液体に望ましい温度と等しいか、または僅かに(例えば1〜2℃)高い温度に加熱した外部の流体フラックス(液体または気体)中に浸漬することにより、熱伝導および対流による熱交換を強化することにより、低減される。
【0025】
容器に対する流体フラックスの相対的速度は、容器に対する流体の熱フラックスの強度、および液体とそれを含む容器の壁との間の局所的温度差を決定する。例えば、茶を満たした1/2リットルPETボトルを67℃の水流中に浸漬し、マイクロ波により(平均して)毎秒28℃で20℃から65℃に加熱し、滅菌区域におけるビンの通過速度毎秒0.42メートルおよび67℃での水流速度毎秒1.2メートルで、一様な温度場(±0.5℃)が1秒間近くで得られた。
【0026】
好ましくは、容器が浸漬されている流体フラックスを攪乱し、これが同時に、容器を攪拌する。
【0027】
有利なことに、同じ滅菌区域を使用して、容器の内容物および外部の液体フラックスを加熱することができる。
【0028】
好ましくは、交番電界は、加熱工程に続いて1〜2秒間のオーダーの休止時間後に印加する。この休止時間は、熱伝導および対流により温度を均質化するのに役立つ。本発明の滅菌方法では、液体の加熱を電界パルスと同時に行うことができる。
【0029】
熱的パルスの作用区域を、電界パルスの作用区域から間隔を置いて配置するのが有利である。例えば、これら二つの区域間に移行区域を挿入し、そこで電界をゼロまたは無視できる程度にし、液体の中央と周辺部との間の温度差が1度を超えないように、液体体積中に温度場を造り出すことができる。処理すべき液体は、上記の、液体加熱と電界印加との間の休止時間の間に、この移行区域を通過する。
【0030】
本発明の他の目的および有利な特徴は、請求項、および添付の図面を参照しながら行う下記の詳細な説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の処理温度と電界振幅の関係を例示するグラフである。
【図2】本発明の電界パルスを例示するグラフである。
【図3】本発明の一実施態様により滅菌方法を行うための装置を示す。
【図4a】第一の実施態様による電界分配装置を示す。
【図4b】第二の実施態様による電界分配装置を示す。
【図5】本発明の別の実施態様により滅菌方法を行うための装置を示す。
【図6a】密封装置(ここでは非円形断面を有するビンの場合)を含んでなる導管の一部を示す。
【図6b】図6aの線A−Aに沿った断面図である。
【図6c】本発明の一実施態様による密封装置を含んでなる導管の一部を示す。
【図6d】本発明の一実施態様による密封装置の壁を示す。
【図6e】本発明の一実施態様による密封装置の一部を示す。
【図7】本発明の一変形による、容器のための移送導管の一部の断面図である。
【図8a】本発明の別の実施態様による滅菌方法を行うための装置における、密封容器の通路を模式的に示す。
【図8b】本発明の別の実施態様による滅菌方法を行うための装置における、密封容器の通路を模式的に示す。
【図8c】本発明の別の実施態様による滅菌方法を行うための装置における、密封容器の通路を模式的に示す。
【図8d】本発明の別の実施態様による滅菌方法を行うための装置における、密封容器の通路を模式的に示す。
【図8e】本発明の別の実施態様による滅菌方法を行うための装置における、密封容器の通路を模式的に示す。
【図8f】本発明の別の実施態様による滅菌方法を行うための装置における、密封容器の通路を模式的に示す。
【図8g】本発明の別の実施態様による滅菌方法を行うための装置における、密封容器の通路を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の滅菌方法は、処理すべき液体を、周波数が1MHzを超える電界により、毎秒28℃を超える速度で、20℃〜65℃の処理温度Tに加熱することを含んでなる。処理温度Tの値に応じて、液体は、液体加熱の直後または僅かに後に、パルス状の交番電界に露出され、V/cmで表す電界の振幅Eを、実験式:
C(T) ≦ log (E+1) ≦ B(T)
が、いずれの場合も、値:
B(T) = -2.340×10-5 T3+1.290×10-3 T2−3.110×10-2 T+5.0
C(T) = -4.503×10-5 T3+2.888×10-3 T2−5.900×10-2 T+4.0
(式中、Tは摂氏度で表す温度である)
に対して満たすように選択される。
【0033】
この関係は図1のグラフに例示される。
【0034】
B(T)は、本発明により水系液体を、製品の工業的低温殺菌条件下で、低温殺菌または滅菌するのに必要な、妥当な電界の振幅の上限を表す。
【0035】
C(T)は、電界振幅の下限を表し、それより下では、製品の品質および保存または消費者もしくは個人の健康に対する危険性を代表する典型的な微生物の全てが死滅しない。
【0036】
A(T)は、本発明による電界振幅の下限を表し、それより下では、製品の品質および保存または消費者もしくは個人の健康に対する危険性を代表する典型的な微生物を含む水系製品の低温殺菌が起こらない。
【0037】
例えば、A(T)により液体を低温殺菌するのに必要な電界の値は、
T=65℃の場合、E=約0V/cm、
T=60℃の場合、E=約10V/cm、
T=50℃の場合、E=約10V/cm、
T=40℃の場合、E=約5.10V/cm、
T=30℃の場合、E=約10V/cm、
T=20℃の場合、E=約5.10V/cm
である。
【0038】
この関係が、死滅させるべき微生物と液体の特性との関数として実験的に特定できる第一の概算を与えるだけであることは、明らかである。
【0039】
交番電界パルスの外観を、時間t、t、およびtと共に、図2に示す。
【0040】
電界の振動は、好ましくは実質的に正弦波であるが、別の形態をとることもできる。
【0041】
交番電界パルスの特徴および形態は、微生物メンブランの電気穿孔を最大にし、熱への電流損失を下げるように形成する。この目的には、電界振動の時間tが、好ましくは値
>1μs(10−6秒)
を有する。
【0042】
この持続時間未満では、微生物は、電界の振動に対する感受性を持たない。
【0043】
電界の一定振幅では、媒体の有限電気抵抗を仮定して、tが大きい程、加熱された媒体を通る振動電流の通過に伴うオーム加熱のために、電流損失がより大きい。飲料で満たされたプラスチック製の容器を高周波電流で加熱する場合、これらの損失を最少に抑えるには、周波数を100kHzに、またはtを10μsに、好ましくは5μsに制限するのが非常に有利である。
【0044】
従って、これはtに対する制限条件である。
1μs<t<10μs
【0045】
振動電界パルスの持続時間tは、電界の振動の期間tより大きい。
>t
【0046】
のより高い値は、電解質−飲料は特別な例である−の電気抵抗は温度上昇と共に低下するために、熱的摂動(perturbations)区域の全体的な加熱により決定される。この場合、電流は、常に、多かれ少なかれ、電界ベクトルに沿って向けられた円筒形区域中に集中する。次いで、これらの区域は、「ピンチ」効果により刺激され、急速に収縮する。これらの区域における温度は指数関数的に上昇し、許容できない局所的加熱を、または破壊さえ、引き起こす。
【0047】
これらの応力は、tに対する制限関係をもたらす。
<c.dT.R/E
(式中、c、dT、R、Eは、それぞれ比熱、限界温度ギャップ、媒体の抵抗、および電界の振幅を表す。)
【0048】
水性媒体、例えば飲料、の電気抵抗は、10オーム・mを超えず、dT<5度およびE=1000kV/mに対してc=4メガジュール/m度であるという実験的事実により、
<20μs
である。
【0049】
期間tは、電界の2個のパルス間の時間ラップである。この期間は、流体力学的乱流のパルスによるオーム加熱摂動の相殺時間より大きいのが好ましい。
【0050】
vが流体力学的不安定性の特徴的な速度であり、Lがそれらの振幅である場合、相殺条件は、
>L/v
である。
【0051】
本発明により、飲料で満たされた密封ビンを低温殺菌する場合、L>0.003mおよびv<1m/sであり、t>0.001sを与える。
【0052】
に対する上限は、処理される容器1個あたり、少なくとも1パルスを有する条件により与えられる。この場合、t<LL/vvであり、ここでLLは容器の、電界を横切る移動方向における特徴的な寸法であり、vvは、その速度である。
【0053】
0.5L、LL=0.3m、およびvv>1m/sのビンを低温殺菌する典型的な場合、
<0.3s
である。
【0054】
液体流t<LLL/vvvを処理する場合、LLLが電界を印加する区域の長さであり、vvvがこの区域を通る流れの速度である。
【0055】
LLL=0.3mで、vvv>1m/sである典型的な場合、
<0.3s
である。
【0056】
本発明の滅菌方法では、液体の加熱は、電界のパルスと同時に、行うことができる。実際には、液体を先ず加熱パルスにさらし、次いで電界のパルスを印加するのが、より有利である。この休止時間は、容器の液体−固体界面と境界を接する層の区域を含む、全ての液体区域が、電界を印加する前に、実質的に同じ温度を得るように、滅菌すべき液体中の温度場を、より均等にならすのに有用である。
【0057】
xが境界層(最大0.3mm)の特徴的な厚さである場合、休止時間tは、好ましくは
=(d.c.x)/z
より大きく、ここでd、c、およびzは、それぞれ滅菌すべき液体の密度、熱容量、および熱伝導率である。大多数の用途には、この休止時間は1または2秒間を超えない。
【0058】
幾つかの用途には、熱パルスの作用区域を、電界パルスの作用区域から間隔を置いて配置するのが有利である。例えば、2つの区域間に、電界がゼロまたは無視できる程度であり、液体の中央と周辺部との間の温度差が1度を超えないように、温度場が液体の体積中で均等である、移行区域を挿入することができる。処理すべき液体は、上記の、液体加熱と電界印加の間の休止時間の際に、この移行区域を通過する。
【0059】
図3および5は、本発明の異なった実施態様による方法を行うための装置を模式的に示す。
【0060】
装置1は、処理すべき液体3の移送システム2、処理すべき液体の体積4を加熱する区域、および電界をパルスで印加する区域5を含んでなる。
【0061】
移送システム2は、入口区域6、移送導管7、および出口区域8を含んでなる。容器は、標準的なコンベヤ33により導かれ、導管7の柱部分7a中にあるバケットチェーン(または他の同等のシステム)の上に配置される。
【0062】
移送システムは、処理すべき液体3を含む密封容器11が浸漬されている移送液体10を循環させるためのポンプシステム9a、9bも含むことができる。移送システムは、それぞれ移送液体をポンプ移送し、循環させるためのシステム9a、9bを備えた、高温回路12aおよび低温回路12bを包含するのが有利である。高温回路は、容器を、加熱および電界印加区域を横切って移送し、移送液体を、戻り導管13aを通して、入口区域の近くにある移送導管7に戻す。低温回路12bも、出口区域8に近い位置と、高温および低温回路を分離している界面14との間に、ポンプシステム9bおよび移送導管7と相互接続する戻り導管13bを有する。
【0063】
界面14は、一個(以上)の密封装置15(図6aおよび6b参照)を含んでなり、その密封装置15は、複数の、導管7の一部分で並列した、例えばゴムから製造された、たわみ性で弾性の、開口部15bを含んでなる壁15aを含んでなり、複数の並列したたわみ性壁(15a)は、変形した時に、処理すべき容器の輪郭に適合するように設計された中央開口部を有するのが有利である。このようにして、容器は、高温および低温回路間の密封形成に関与する。
【0064】
壁15aは、複数の、自由に変形し得る、容器の形態および/または寸法におけるあらゆる不規則性に容易に適合し得るペタル54を含んでなるのが有利であり、6〜12個のペタル、例えば約8個のペタルが有利である。ペタルは、輪状壁中の軸方向のスロット55により、あるいは複数の個別断片により、変形し得る。
【0065】
壁の中央開口部15bは、形状が実質的に円形であり、処理すべき容器の様々な輪郭に壁が容易に適合できるのが有利である。このようにして、壁の形態を容器の外側形状に合わせる必要がなくなる。中央開口部の直径は、容器本体の最も小さい横方向断面の最小寸法未満にするのが有利であり、これによって、密封部の最大限の密封性を確保する。
【0066】
本発明の一実施態様による密封装置を図6cに示す。この変形では、密封装置15は、導管7中にある密封装置15の長さ全体にわたって間隔を置いて配置された、たわみ性で弾性の密封壁15aの幾つかの群50を含んでなる。各壁群50は、複数の、2〜6が有利であり、好ましくは3または4個の、たわみ性密封壁15a(図6dおよび6e参照)を含んでなる。密封壁50の群の壁15aは、それらの周辺部により、相互に、容器が中を移動するケースに固定されており、金属または他の剛性材料から製造された分離リング51により互いに間隔を置いて配置されている。群50における壁間の間隔は、壁の厚さと同等であり、例えば0.5mm〜3mm、例えば約1mmのオーダーにあるのが有利である。この壁間の間隔により、壁15aのたわみ性下部の自由運動が容易になる。
【0067】
ある群の密封壁50のたわみ性壁は、隣接する壁に対して半径方向でシフトしているので、壁(図6dの壁2参照)のペタル54は、隣接する壁(図6dの壁1および3参照)のペタル54に対して、半径方向でシフトしている。好ましい実施態様では、これらの壁は、隣接する壁に対して、ペタル54を形成するスロット55が、方位面で、互いに最大間隔で位置するように、半径方向でシフトしている。容器が、ある群の密封壁50のたわみ性壁を通過する時、容器はペタルを湾曲させ、ペタルが容器の横方向断面の形態に適合する。壁のペタルは、導管中の液体の圧力により、ならびにペタルの屈曲作用により発生した力により、容器の表面に押し付けられる。ペタルを形成するスロット同士は一致していないので、ある群50の、互いに対して、容器の表面に対してきつく圧迫されている壁は、非常に高い流体力学的抵抗を与える。従って、群になった壁のペタルは、容器と壁15aとの間に効果的な密封部を形成し、密封装置を通した移送液体10の移動を阻止し、同時に、導管に沿った容器の移動に対する抵抗を最少に抑える。
【0068】
互いに対して、容器の表面に対して圧迫されている壁のペタルにより造り出される流体力学的抵抗は、密封装置の対向する側(導管7中にある装置の入口および出口)における流体間の総圧力差およびペタルの弾性力の増加と共に増加する。従って、密封の効果は、従来の密封と異なり、自己調整される。
【0069】
図6cに示す変形では、密封装置が、少なくとも3つの、たわみ性で弾性の密封壁15aの群50、例えば3〜20群の壁、好ましくは5〜10群の壁を含んでなるのが有利である。たわみ性で弾性の壁の群50は、例えば金属または他の材料から製造されたリングの形態にあるセパレータ52により分離され、ボルト58または他の固定システムにより所定の位置に保持される。2つの壁群間の間隔は、5mm〜40mm、例えば5mm〜20mmが有利である。
【0070】
たわみ性密封壁15aの幾つかの群を密封装置15の長さ全体にわたって間隔を置いて配置した密封装置の構造により、容器の長さ全体にわたって横方向断面が異なっている容器でも、高温および低温回路間に適切な密封が確保され、同時に、導管に沿って容器を容易に移動させることができる。
【0071】
さらに、複数のペタルを含んでなるたわみ性で弾性の壁は、容器の形状および寸法におけるあらゆる不規則性に自動的に適合し、あらゆる容器輪郭、例えば様々な形態を有する容器、例えば丸形、長円形、正方形、多角形、または他の形態、軸方向の対称性が無い形態でも、あるいは横方向断面が容器の長さ全体にわたって一様ではない容器(例えば円錐形、波形、レリーフ形状)に対しても、適切な密封部を確保する。
【0072】
本発明の密封装置は、様々な形状を有する様々な容器で、容器の各形状に対して密封壁のシステムを交換する必要無しに、使用することができる。
【0073】
本発明の密封装置は、簡素で、効果的であり、低コストで製造することができる。
【0074】
当然、密封装置は、移送導管に沿ったどの箇所にでも挿入することができ、導管の区域を分離することができる。密封装置は、圧力が全く異なった液体区域を分離することも、異なった流体を含む導管区域を分離する、例えばガス、例えば空気、および加圧された液体、または2種類の異なった液体を分離することもできる。
【0075】
密封装置15は、移送導管7に沿った他の位置、例えば加熱区域4の上流、に配置することもできる。
【0076】
低温および高温回路は、戻り導管上に、移送液体から、および/または処理すべき液体から熱を回収するための熱交換機31、32も含むことができる。
【0077】
低温回路は、処理すべき液体の温度を急速に下げ、液体の特性を保存し、必要であれば、プラスチック製容器の変形問題を軽減することができる。
【0078】
加熱区域4は、熱エネルギー発生器37により供給される熱パルスを発生するためのシステム35を含んでなる。熱発生器は、例えば1MHzを超える周波数で作動する高周波電界の発生器またはマイクロ波発生器の形態でよい。エネルギーは、発生器37からシステム35に、同軸ケーブルまたは導波管16を使用して送られる。移送導管7に沿って並列様式で配置された幾つかの発生器を備えることができる。
【0079】
電界を印加する区域5は、双極性振動電界パルス発生器18に同軸ケーブル19を使用して接続された双極性振動電界パルス分配装置17を含んでなる。上記のように、64℃を超える処理温度には、電界印加区域無しにそれが可能であることを指摘すべきである。
【0080】
熱パルス4および電界印加区域5は、導管20の熱的に絶縁された移行部分により分離され、熱処理と電気的パルス処理の間の休止時間を造り出す。この休止時間は、処理すべき液体の中および液体と接触する固体物体の表面上で、温度場を一様に配分できるので有利である。
【0081】
図3の実施態様では、滅菌すべき液体は、容器を移送するために導管7中を流れる移送液体10の中に浸漬された容器の中に収容されている。容器は、例えば飲料または液体食品で満たされた、例えばプラスチックビンでよい。
【0082】
滅菌すべき液体を含む容器を、加熱区域および電界印加区域を経由して、導管中の液体以外の手段、例えば導管中の加圧されたガス流(ガスの圧力は、容器内側の圧力を相殺し、加熱による容器のあらゆる変形を回避するように選択される)により、または機械的移送システム、例えばコンベヤシステム、により、移送することができる。しかし、流体による移送システムには、加熱中および電界印加前の休止時間中に、容器周囲の温度を良く一様に配分できるという利点がある。滅菌すべき液体の誘電特性と類似した誘電特性を有する移送液体を使用することにより、滅菌すべき液体の加熱ならびに滅菌すべき液体中の局所的電界印加を効果的に制御することができる。
【0083】
誘電性材料から製造された容器は、剛性の容器、例えばガラスまたはプラスチック(例えばPETまたは他の重合体)から製造されたビン、の形態でよい。
【0084】
一基以上の攪拌装置21を本システムに加え、移送液体および移送液体中にある容器を攪拌することができる。一変形では、攪拌装置が、導管の壁上に配置された一基以上のジェット(ノズル)(図示せず)および導管の内側中への開口部を含んでなり、流体を噴射して、導管中を流れる移送流体中に乱流を造り出し、それによって、液体中の温度場を均等にならす。導管中を移送される容器は、容器内側の処理すべき液体を均質化するために、例えば移送液体における渦巻流中の制御流により攪拌または回転されることもできる。攪拌装置21は、低温回路部分12bに配置されて、滅菌または低温殺菌処理の後で、容器中にある液体の冷却を促進することもできる。
【0085】
誘電性材料(例えば石英)製のチューブ22を導管に取り付けて、導管内にある液体を加熱するための電界を確実に通過させる。
【0086】
温度センサー23を、全て導管に沿って配置し、熱パルスを発生する区域の入口、加熱区域、この区域の出口、および導管の移行区域20の出口における液体の温度を測定する。
【0087】
電界センサー24を、電界印加区域に配置する。
【0088】
本装置の一実施態様では、固体物体が導管を通って通過するにつれて、固体物体が様々な移動速度を確保するための機構、例えば導管の断面(直径)を変えることにより、移送液体フラックスの速度を変える機構を備える。
【0089】
第一変形による、電界分配装置を図4aに示す。この変形では、分配装置は、導管の両側に配置した電極25a、25bを含んでなり、周波数100kHz〜1000kHzの交番電界パルスを、電界線26により示すように、導管7(図3)を通して確実に通過させる。
【0090】
特に、電界は上側電極25aから下側電極25bに通過し、2個の電極は、チューブ27(例えば石英製)の内側に設置されており、導管と気密に一体化されている。電極間の間隔≪a≫は、容器11の体積中で横方向電界の、可能な最良の一様性を確保するように、実験的に最適化することができる。この間隔aが例えば4cmのオーダーにある場合、1〜3kV/cmの電界の有効振幅を得るためには、電極間に400〜1200kVのオーダーの電位差が必要である。
【0091】
図4bは、第二変形による、電界分配装置を示す。この変形では、電界のパルスは、誘導システムにより造り出され、電界線26’は実質的に縦方向である。容器11、例えば滅菌すべき液体を含むビン、を移送する移送液体10としての水で満たした導管7が、誘導システム25の本体を通過する。電界分配装置は、コア28、および接続部30a、30bを経由して供給部に取り付けた一個以上の一次巻線29を備えている。一次巻線の量は、実験的に、例えば移送液体中に存在する電界の測定により、決定することができる。
【0092】
図3の実施態様では、容器11は、移送液体10で満たした移送導管7の柱部分7a中に深さHに浸漬されている。
【0093】
移送液体の柱は、処理すべき液体を加熱する際に内部圧力を相殺する傾向がある外部圧力を式(2)に従って作用させ、この式は、温度T>Tに対する柱の高さHを決定する。
(2)H×d×g=(T/T)×P−C+V+V
式中、
「H」は、処理すべき容器が浸漬されている液体の柱の高さである。
「d」は、外部液体の密度である。
「g」は、重力の局所的加速度である。
「P」は、装置中に入る時の容器中の圧縮可能な液体の初期圧力である。
「V」は、温度TおよびTにおける、圧縮不可能な液体の飽和蒸気圧の差である。水に関して、例えばT=20℃である場合、飽和蒸気圧は最小であり、Vは、温度Tにおける水の飽和蒸気圧に実質的に等しい。例えば、T=65℃である場合、V=0.25barである。
「C」は、(k×V)であり、ここでkは、温度Tにおける容器の材料の体積弾性率であり、Vは体積変形である。
「V」は、圧縮可能な液体による圧縮不可能な液体の飽和における変動による、内部圧力の変動である。Vは、処理される容器と同じ形態および体積を有する変形しない容器(例えばガラス製)で、温度tにおける真の圧力計による圧力と、圧力P=P×(T/T)との圧力差として測定される。COで飽和されていない飲料、例えば味を付けた水またはミルク、では、Vはゼロに近い。相殺は、C=0である場合の合計である。
【0094】
深さHは、容器が浸漬されている外部液体媒体の密度dを増加することにより、減少させることができる。特に、寸法p(pは、容器の特徴的な寸法より、はるかに小さい必要がある)は小さいが、密度が液体の密度より大きい、例えば粉末の形態にある、固体物体をこの液体に加えることができる。この手段は、固体物体により加えられる圧力があらゆる方向で等しい場合にのみ有効である。これには、固体物体に、平均速度がgpの平方根より大きいカオス運動を与える必要があり、その際、
「g」は、重力の局所的加速度であり、
「p」は、固体物体の寸法であり、
それらの比の量n(単位体積あたりの固体物体の量)は、所望の密度dの増加に対応する。
【0095】
この条件を満たすには、質量mの固体物体の重力、すなわちmg、が、この物体により、この物体の慣性のためにあらゆる壁に作用する力Fより小さくなければならない。vがカオス運動の速度である場合、Fに対して、下記の指標を得ることができる、すなわちF=m×(v/t)であり、ここでt=d/vであり、F=(mv)/dとなる。従って、F>>mgが必要であり、従って、v>>(gd)(1/2)である。
【0096】
ビンを連続的に、それらの長さ方向で、次々に処理する場合、ラム34がビンを導管の水平部分7cに送る。
【0097】
ビンが導管の出口柱部分7bに取り付けられると、容器はラムまたは他のシステムによりコンベヤ33上に排出される。
【0098】
図7に示す変形では、移送導管7’が、ビンを、それらの長さ方向で、導管の入口部分7a’の中に挿入し、ビンを低温回路部分にある導管の出口に導くチューブの形態にある。これを行うために、チューブが、導管の垂直部分と水平部分との間を確実に移行させるのに十分に大きい曲率半径を有する。容器の移動方向における移送液体の循環により、移動方向で作用する圧力によるのみならず、容器の周囲に存在する液体により造り出される浮力(アルキメデス力)および潤滑性によっても、容器が導管に沿って移動するのを促進する。
【0099】
図8a〜8gは、本発明の様々な実施態様による方法を行うための装置の移送システムの変形を模式的に示す。
【0100】
図8aに示す変形では、容器11は標準的なコンベヤ33により導かれ、標準的なエレベータシステム40、例えばバケットチェーン、または他のいずれかの同等のシステムにより、移送導管7の入口41に引き上げられる。容器は移送導管7の垂直柱7dの内側に摩擦装置、例えばローラー、もしくは他のラムシステム(図示せず)により押し込まれる。容器は、移送導管に入り、導管7の中を流れる移送液体10の中に浸漬され、それらの長さ方向で次々に押され、移送導管7を通って進行する。容器は、導管7の出口柱7eから、別の摩擦装置、例えばローラー、もしくは他のラムシステム(図示せず) または他の、導管43の出口に向かう容器の流れを制御し、さらには遅くするように設計された、いずれかの同等のシステムにより、排出され、排出コンベヤ33の上に配置される。
【0101】
図8b〜8cに示す変形では、処理すべき液体を含む容器11が、コンベヤ33の上で、移送導管7の入口41に直接到達する。容器は、移送導管の入口41に位置する摩擦装置、例えばローラー、もしくは他のラムシステムまたは同等の機構(図示せず)により、移送導管7の内側に押し込まれる。容器は、移送導管の第一垂直部分7dに、容器の長さ方向で次々に入り、導管の入口41にある摩擦装置または他のラムシステムにより発生する力により、導管の垂直部分7bの上部に上昇する。
【0102】
導管の第一垂直部分7bは、潤滑させる、例えば導管の壁に配置された一基以上のジェット(ノズル)(図示せず)および導管の内側への開口部により、流体、一般的に水、を導管の内側に噴射して、容器と導管壁との間の摩擦を下げ、容器の移動を促進するのが有利である。ジェットは、導管の柱部分7dに接するように上向きにするのが有利である。水ジェットを柱7bの上部に向けることにより、容器を回転させ、重力に抗して柱7bの上部に向けて押し上げ、容器が柱7dの中で垂直に移動するのを促進する。
【0103】
移送導管7の出口43には、別の摩擦装置、例えばローラー、もしくは他のラムシステムまたは同等の機構(図示せず)が、容器を導管からコンベヤ33の上に排出する。
【0104】
移送導管7aおよび7bの垂直柱は、本システムのパラメータにより規定されるレベル46まで、移送液体で満たされている。導管の延長された出口部分7eが存在することにより、容器中の液体をさらに冷却することができる。
【0105】
出口導管7eの垂直部分は、導管の壁に配置された一基以上のジェット(ノズル)(図示せず)および導管の内側への開口部を含んでなり、流体、一般的に水、を導管の中に噴射して、ビンと導管との間の摩擦を下げるのが有利である。ジェットは、導管の部分7eの中にある容器の移動方向と反対方向に向けるのが有利である。密封された容器の移動方向と反対方向に向けられた液体のジェットにより、導管の出口43に向かう容器の移動が遅くなり、したがって、導管の出口43における摩擦装置またはラムシステムにより作用させる必要があるブレーキ力が低減される。
【0106】
図8bに示す移送システムの変形を図8cに示す。移送システム2のこの変形では、導管の入口41および出口43の配置により、装置全体のサイズを縮小することができ、これは、装置の、ある種の工業的使用には有用である。
【0107】
図8dに示す移送システム2の変形では、移送導管7の入口41が、導管の実質的に水平な部分7f上にある。コンベヤ33の上で導管41の入口に到達する容器11は、標準的な取扱装置(図示せず)により、それらの側部が回転し、それらの長さ方向で、導管の水平部分7fの中に入る。
【0108】
図8dに示す移送システムの変形を図8eに模式的に示す。本発明の方法を行うための装置の移送システムの他の変形を、図8e、8f、および8gに模式的に示す。図8fおよび8gに示す移送システムの変形では、出口導管7eが延長されており、容器が装置から出る前に、容器中に含まれる液体の冷却時間を長くすることができる。
【0109】
しかし、移送流体は、2個の機械的エアロックを経由して、または2個のエアロックにより、容器が来る環境から分離された加圧されたガスでもよく、その際、圧力が漸進的に変化して、内部圧と外部圧の差を相殺し、したがって、特に容器中の液体を冷却する際の、容器の変形を無くす。まとめると、この特別な場合では、高さHおよび密度dの浸漬区域がエアロックで置き換えられ、このエアロックが、容器が来る環境から加圧区域への容器の通路を与え、この圧力Pは、加熱の際に容器中で発達する内部圧力Pに等しい。
【0110】
図5の実施態様に関して、加熱の際に容器中で増加する圧力を相殺するための導管の垂直柱部分の高さは、導管7cが処理区域4、5および冷却回路を通過する部分で、導管7cの該部分中にガスまたは移送液体を噴射するポンプ36a、36bにより、圧力を発生させることにより、低くすることができる。上に説明したような密封装置15を、導管7cの加圧区域の両側に配置する。
【0111】
圧力計を回路全体に配置して、導管中の圧力を制御することができ、システムから空気を排除するか、または液体を導管から排出するために、パージバルブも設けることができる。
【0112】
容器を通過させ、加熱される容器の外側にある液体区域を、液体が低温である区域から分離することができる機械的エアロック、あるいはあらゆる他のシステムのエアロック、または圧力に対してバリヤーとして作用するが、容器を通過させる古典的システムを、密封操作15の代わりに使用することができる。
【実施例】
【0113】
1.絞ったばかりのオレンジジュースで満たし、「Byssochlamys nivea」微生物で汚染された、密封された0.5LPETボトルの汚染除去。
図3に示す型の装置で処理を行った。
−微生物の初期濃度:3.6〜4.2×10単位/ml
−各サイクルで処理したビンの量:10
−初期温度:20℃
−処理の持続時間:3s(水平導管の通過)
−加熱:マイクロ波1GHz、電力180kW(35℃/s)および45kW(9℃/s)
−電界の印加
・電界の振動周波数:180kHz
・振動のバッチの持続時間:約0.02ms
・振動のバッチの周波数:15Hz
・t=6μs、t=20μs、t=0.05s
・パルスの量:180kWで12および45kWでそれぞれ35および48パルス
−生産性、ビンの線速度:180kWで0.4m/sおよび45kWで0.1m/s。電界印加区域の長さ:0.3m。電界パルス印加の持続時間0.75s。
【0114】
【表1】

【0115】
2.アップルジュースで満たし、Saccharomyces cerevisiae酵母およびAspergillus nigerカビで汚染された、0.5LPETボトルの汚染除去。
図2に示す型の装置で処理を行った。
−Saccharomyces cerevisiaeの初期濃:1.2〜3.1×10単位/ml
−Aspergillus nigerの初期濃度:1.5〜4.2×10単位/ml
−各サイクルで処理したビンの量:10
−初期温度:20℃
−処理の持続時間:3s(水平導管の通過)
−加熱:マイクロ波1GHz、電力180kW(35℃/s)および45kW(9℃/s)
−電界の印加
・電界の振動周波数:180kHz
・振動のバッチの持続時間:約0.02ms
・振動のバッチの周波数:15Hz
・t=6μs、t=20μs、t=0.05s
・パルスの量:180kWで12および45kWでそれぞれ35および48パルス
−生産性、ビンの線速度:180kWで0.4m/sおよび45kWで0.1m/s。電界印加区域の長さ:0.3m。電界パルス印加の持続時間0.75s。
【0116】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
密封された容器中に含まれる、処理すべき液体を滅菌または低温殺菌する方法であって、前記容器を処理区域に移送し、前記処理区域で前記容器を外部移送流体のフラックス中に浸漬すること、前記処理すべき液体を全体的に、毎秒28℃を超える速度で、20℃〜66℃の処理温度Tに加熱すること、前記液体を加熱する際に前記容器を攪拌すること、および前記処理温度Tの値に応じて、前記液体加熱の直後または僅かに後で、電気穿孔法により処理するための電界に前記液体を露出し、V/cmで表す前記電界の振幅Eを、式:
C(T) ≦ log (E+1) ≦ B(T)
が、値:
B(T) = -2.340×10-5 T3+1.290×10-3 T2−3.110×10-2 T+5.0
C(T) = -4.503×10-5 T3+2.888×10-3 T2−5.900×10-2 T+4.0
(式中、Tは摂氏度で表す温度である)
に対して満たすように選択することを含んでなる、方法。
【請求項2】
前記電気穿孔法による処理のための電界が、100kHz〜1000kHzの振動周波数で交番し、パルスで供給されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電界パルスにより、前記処理すべき液体に供給される総熱エネルギーが、0.05J/cm未満であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記電界パルス印加の持続時間が10〜100マイクロ秒間であり、前記電界パルスの反復周波数が10〜100Hzであることを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記電気穿孔法による処理のための前記電界印加が、前記液体の加熱工程の後に行われ、続いて前記電界をゼロまたは無視できる程度にする休止時間が置かれることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記加熱速度が毎秒30℃を超えることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記移送流体が水または水系液体であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記移送液体が、前記容器の周囲で回転攪乱されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記処理区域で発生する静圧が、ポンプおよびエアロックシステムにより造り出されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記処理区域で発生する前記静圧が、前記容器処理区域の上に立ち上がる、前記外部流体を構成する液体の柱により造り出されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
密封された容器中に含まれる、水系の、または水を含む、処理すべき液体を滅菌または低温殺菌する方法を行うための装置であって、前記処理すべき液体(3)の移送システム(2)と、1MHzを超える周波数で作動する波発生器および電界をパルスで印加するための区域(5)を含んでなる、前記処理すべき液体を全体的に加熱するための区域(4)と、移送流体のフラックスが中で循環する移送導管(7、7’)を含んでなる移送システムと、前記移送流体を前記加熱区域の近くで攪拌または攪乱するための手段とを含んでなり、前記加熱区域が、前記加熱区域を通過する前記容器中の前記液体を20℃〜66℃の処理温度Tで、毎秒28℃を超える速度で加熱するように設計されており、前記電界をパルスで印加するための区域(5)が、前記液体加熱の直後または僅かに後で、式:
C(T) ≦ log (E+1) ≦ B(T)
が、値:
B(T) = -2.340×10-5 T3+1.290×10-3 T2−3.110×10-2 T+5.0
C(T) = -4.503×10-5 T3+2.888×10-3 T2−5.900×10-2 T+4.0
(式中、Tは摂氏度で表す温度である)
に対して満たすような、V/cmで表した振幅Eの、電気穿孔法により処理するための電界を発生するように設計されている、装置。
【請求項12】
前記電界をパルスにより発生するための区域が、振動周波数100kHz〜1000kHzの交番電界を、持続時間10〜100マイクロ秒間のパルスで発生するように設計されていることを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記電界をパルスにより発生するためのシステムが、0.05J/cm未満の総熱エネルギーを前記処理すべき液体に供給するように設計されていることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記移送流体が水または水系液体であることを特徴とする、請求項11〜13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記移送システムが、それぞれポンプシステムおよび流体戻り回路を有する、高温回路部分および低温回路部分を含んでなることを特徴とする、請求項11〜14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記電界パルスを発生するシステムが、前記導管の通路部分の両側に配置された、前記部分に対して横方向に電界を発生することができる電極を含んでなることを特徴とする、請求項11〜14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記電界パルスを発生するシステムが、前記導管の通路部分の周囲に円環状に配置された、前記部分に対して実質的に縦方向で電界を発生することができる、一個以上の一次巻線を含むインダクタを含んでなることを特徴とする、請求項11〜14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記電界印加区域に少なくとも一個の電界センサーおよび前記移送導管に沿って温度センサーを含んでなることを特徴とする、請求項11〜17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記容器処理区域の上に立ち上がる移送液体柱を含んでなり、前記移送液体柱が、前記処理すべき液体を加熱する際に容器内側で発生する最大圧力と実質的に等しい圧力を発生するための高さを有することを特徴とする、請求項11〜18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記加熱区域の両側にある導管中に密封装置、および前記導管の、前記密封装置間の部分で、前記処理すべき液体を加熱する際に容器内側で発生する最大圧力と実質的に等しい圧力を発生するポンプ装置を含んでなることを特徴とする、請求項11〜20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
密封された容器中に含まれる、処理すべき液体を滅菌または低温殺菌する方法を行うための装置であって、移送流体のフラックスが中で循環する移送導管(7)を含んでなる前記処理すべき液体(3)の移送システム(2)と、処理区域(45)と、前記移送導管中に配置された一基以上の密封装置(15)とを含んでなり、各密封装置が、複数の並列した、たわみ性壁(15a)を含んでなり、前記たわみ性壁が、変形した時に、容器の形態に適合するための中央開口部を有する、装置。
【請求項22】
前記密封装置が、前記密封装置の長さ全体にわたって間隔を置いて配置された複数の密封壁群(50)を含んでなることを特徴とする、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記密封装置が、5〜10群の密封壁を含んでなることを特徴とする、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
各密封壁群(50)が、2〜5個のたわみ性壁(15a)を含んでなることを特徴とする、請求項22または23に記載の装置。
【請求項25】
前記たわみ性壁(15a)が、前記壁の中央開口部(15b)で終端する幾つかのペタル(54)を含んでなることを特徴とする、請求項21〜24のいずれか一項に記載の装置。
【請求項26】
たわみ性密封壁の群の中で、1個のたわみ性壁のペタルが、隣接する壁のペタルに対して半径方向でシフトしていることを特徴とする、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記移送システムが、一基以上の前記密封装置により分離された高温回路部分および低温回路部分を含んでなることを特徴とする、請求項21〜26のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図6e】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図8e】
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【図8f】
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【図8g】
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【公表番号】特表2011−515063(P2011−515063A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−500378(P2010−500378)
【出願日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【国際出願番号】PCT/IB2008/000671
【国際公開番号】WO2008/114136
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(509265081)オプス、インダストリー、ソシエテ、アノニム (1)
【氏名又は名称原語表記】OPUS INDUSTRY SA
【Fターム(参考)】