説明

密閉型圧縮機及び冷凍サイクル装置

【課題】安価で簡単な構造によって圧縮機構部の摺動部分の潤滑を行い、さらに、摺動部分へ導く潤滑油が不足して焼付きが発生することを防止する。
【解決手段】密閉型圧縮機2は、密閉ケース7内の作動流体を圧縮機構部9に導く作動流体吸込通路28が設けられ、一端が作動流体吸込通路28に連通されて他端が密閉ケース7内の底部に貯留された潤滑油に浸漬される潤滑油吸込通路が設けられ、圧縮機構部で圧縮された作動流体に含まれる潤滑油が油分離器3で分離された後に圧縮機構部9に導かれてこの圧縮機構部9内の摺動部分を潤滑する。この密閉型圧縮機2には、圧縮機構部9の運転が第1運転周波数以下の運転周波数で第1運転時間継続された場合、圧縮機構部9の運転を第1運転周波数より周波数が高い第2運転周波数で第2運転時間継続させる制御部15が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、密閉型圧縮機及びこの密閉型圧縮機を用いた冷凍サイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
底部に潤滑油を貯留した密閉ケース内に電動機部とこの電動機部により駆動される圧縮機構部とを収容し、循環するガス冷媒(作動流体)を密閉ケース内に一旦流入させ、密閉ケース内に流入したガス冷媒を圧縮機構部に導いて圧縮する密閉型圧縮機として、例えば、下記特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載された密閉型圧縮機では、圧縮機構部の下部に容積型給油ポンプを設け、この容積型給油ポンプを用いて密閉ケースの底部に貯留された潤滑油を圧縮機構部に供給している。圧縮機構部に供給された潤滑油は圧縮機構部で圧縮されたガス冷媒と共に油分離器に導かれ、油分離器で分離された後に圧縮機構部に導かれ、圧縮機構部内の摺動部分を潤滑する。
【0004】
油分離器で分離された後に圧縮機構部に導かれた潤滑油は、密閉ケース内の圧力に比べて高圧であり、密閉ケース内の圧力と潤滑油の圧力との差圧により摺動部分を通過し、密閉ケース内に排出される。密閉ケース内に排出された潤滑油は、密閉ケース内の底部に貯留される潤滑油の一部となり、再び、容積型給油ポンプを用いて圧縮機構部に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−58472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された密閉型圧縮機は、容積型給油ポンプを使用しているため、コストが高くなっている。
【0007】
本発明の実施形態の目的は、安価で簡単な構造によって圧縮機構部の摺動部分の潤滑を行うことができ、さらに、摺動部分へ導かれる潤滑油が不足して焼付きが発生することを防止することができる密閉型圧縮機及びこの密閉型圧縮機を用いた冷凍サイクル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の密閉型圧縮機によれば、底部に潤滑油が貯留される密閉ケース内に電動機部とこの電動機部により駆動される圧縮機構部とが収容され、密閉ケース内の空間に導かれる作動流体を圧縮機構部に導く作動流体吸込通路が設けられ、一端が作動流体吸込通路に連通されて他端が密閉ケース内の底部に貯留された潤滑油に浸漬される潤滑油吸込通路が設けられ、圧縮機構部で圧縮された作動流体に含まれる潤滑油が油分離器で分離された後に圧縮機構部に導かれてこの圧縮機構部内の摺動部分を潤滑する密閉型圧縮機において、圧縮機構部の運転が第1運転周波数以下の運転周波数で第1運転時間継続された場合、圧縮機構部の運転を第1運転周波数より周波数が高い第2運転周波数で第2運転時間継続させる制御部が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態の密閉式圧縮機を含む冷凍サイクル装置の概略図である。
【図2】圧縮機構部の運転周波数とシリンダ室内への潤滑油の吸込量との関係を示すグラフである。
【図3】制御部による運転周波数の制御内容を示すグラフである。
【図4】第2の実施形態における、摺動部分からの潤滑油の排出量と差圧との関係を示すグラフである。
【図5】制御部による運転周波数の制御内容を示す表である。
【図6】第3実施形態における、制御部による運転周波数の制御内容を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について、図1ないし図3に基づいて説明する。図1に示すように、冷凍サイクル装置1は、密閉型圧縮機2と、密閉型圧縮機2に接続された油分離器3と、油分離器3に接続された凝縮器4と、凝縮器4に接続された膨張装置5と、膨張装置5と密閉型圧縮機2との間に接続された蒸発器6とを有している。この冷凍サイクル装置1では、作動流体である冷媒が気体状のガス冷媒と液体状の液冷媒とに相変化しながら循環し、ガス冷媒から液冷媒に相変化する過程で放熱され、液冷媒からガス冷媒に相変化する過程で吸熱され、これらの放熱や吸熱を利用して暖房、冷房、加熱、冷却等が行われる。
【0012】
密閉型圧縮機2は、略円筒状に形成された気密状態の密閉ケース7を有し、この密閉ケース7内に電動機部8とガス冷媒を圧縮する圧縮機構部9とが収容されている。密閉ケース7は、円筒の中心を上下方向に向けて設置され、密閉ケース7内の上方側に電動機部8が配置され、その下方に圧縮機構部9が配置されている。密閉ケース7内の底部には、潤滑油が貯留されている。密閉ケース7内の空間は、圧縮機構部9で圧縮される前のガス冷媒で満たされている。
【0013】
電動機部8は、固定子10と回転子11と回転軸12と接続端子部13とを有している。固定子10は円筒状に形成され、密閉ケース7の内周部に焼嵌めや圧入又は溶接等により固定されている。回転子11は、固定子10の内側に回転可能に挿入され、回転子11の中心部に回転軸12が嵌合されている。回転軸12は、圧縮機構部9に設けられた後述する軸受(主軸受22、副軸受23)により回転可能に軸支され、回転軸12と回転子11とが一体に回転する。接続端子部13には、図示しないリード線と、圧縮機構部9の運転周波数を可変させるインバータ14と、インバータ14を駆動させる制御部15とが接続されている。
【0014】
回転軸12には、この回転軸12の外周側に向けて偏心して張り出した二つの偏心部16、17が形成されている。これらの偏心部16、17は、回転軸12の軸方向に沿って設定寸法離間した位置に形成されるとともに、回転軸12の回転方向に沿って180°離間した位置に形成されている。
【0015】
圧縮機構部9は、低圧のガス冷媒を圧縮して高圧・高温のガス冷媒とする部分であり、上下に配置された一対のシリンダ18、19と、シリンダ18、19の間に配置された上下一対の仕切板20、21と、一方のシリンダ18の上方に配置された主軸受22と、他方のシリンダ19の下方に配置された副軸受23とを有している。
【0016】
一方のシリンダ18内には、上端側を主軸受22により閉止されて下端側を仕切板20により閉止されたシリンダ室24が形成されている。他方のシリンダ19内には、上端側を仕切板21により閉止されて下端側を副軸受23により閉止されたシリンダ室25が形成されている。
【0017】
シリンダ室24、25には回転軸12が挿通され、回転軸12に形成された一方の偏心部16がシリンダ室24内に位置し、回転軸12に形成された他方の偏心部17がシリンダ室25内に位置している。偏心部16にはローラ26が嵌合され、偏心部17にはローラ27が嵌合されている。これらのローラ26、27は、回転軸12の回転に伴い外周部の一部をシリンダ室24、25の内周面に当接させながらシリンダ室24、25内を転動する。
【0018】
さらに、シリンダ室24、25内には、スライド可能にブレード(図示せず)が設けられており、ブレードの先端部がスプリング等の付勢体により付勢されてローラ26、27の外周面に当接されている。シリンダ室24、25の内周面にローラ26、27の外周面の一部が当接され、ローラ26、27の外周面にブレードの先端部が当接されることにより、シリンダ室24、25内はローラ26、26の転動に伴って容積が変動する二つの空間に仕切られている。一方の空間にガス冷媒が流入し、その空間の容積がローラ26、27の転動に伴って小さくなることにより、その空間内のガス冷媒が圧縮される。
【0019】
シリンダ室24、25と密閉ケース7内の空間との間には、密閉ケース7内の空間のガス冷媒をシリンダ室24、25内に吸込んで導く作動流体吸込通路であるガス冷媒通路28が設けられている。副軸受23とシリンダ19と仕切板20、21とシリンダ18とには、一端がガス冷媒通路28に連通されて他端が密閉ケース7内に貯留された潤滑油に浸漬される潤滑油吸込通路29が形成されている。
【0020】
仕切板20、21には、シリンダ室24、25内で圧縮されたガス冷媒が吐出される吐出室30が形成されている。シリンダ室24、25と吐出室30との間には、シリンダ室24、25内のガス冷媒の圧力が所定値に上昇した場合に開弁される吐出弁31が設けられている。吐出室30と油分離器3との間には、シリンダ室24、25で圧縮された後に吐出室30に吐出されたガス冷媒を油分離器3に導く吐出管32が接続されている。油分離器3では、シリンダ室24、25で圧縮されたガス冷媒中に含まれる潤滑油が分離される。
【0021】
さらに、仕切板20、21には、油分離器3で分離された潤滑油が導かれる潤滑油戻し室33が形成されている。この潤滑油戻し室33と油分離器3の下部との間には、油分離器3内でガス冷媒中から分離された潤滑油を潤滑油戻し室33に導く油戻し管34が接続されている。油戻し管34を経由して潤滑油戻し室33に導かれた潤滑油は、圧縮機構部9の摺動部分の潤滑に用いられる。
【0022】
凝縮器4では、油分離器3において潤滑油を分離されたガス冷媒が凝縮され、液冷媒となる。
【0023】
膨張装置5では、凝縮器4で凝縮された液冷媒が減圧される。
【0024】
蒸発器6では、膨張装置5で減圧された液冷媒が蒸発し、ガス冷媒となる。
【0025】
蒸発器6で蒸発したガス冷媒は、蒸発器6と密閉型圧縮機2とを接続する吸込管35を経由し、密閉ケース7内の空間に導かれる。
【0026】
このような構成において、電動機部8が駆動されて回転軸12が回転することにより、密閉ケース7内の空間のガス冷媒がガス冷媒通路28を流れてシリンダ室24、25内に吸込まれ、吸込まれたガス冷媒はシリンダ室24、25で圧縮される。ガス冷媒がガス冷媒通路28を流れる場合、密閉ケース7内の底部に貯留されている潤滑油が潤滑油吸込通路29内を通ってガス冷媒通路28内に吸込まれ、吸込まれた潤滑油はガス冷媒と共にシリンダ室24、25内に吸込まれる。
【0027】
シリンダ室24、25内に吸込まれた潤滑油は、シリンダ室24、25内で圧縮されたガス冷媒と共に油分離器3内に導かれ、潤滑油は油分離器3内でガス冷媒から分離される。油分離器3内で分離された潤滑油は高圧であり、この高圧の潤滑油は油戻し管34を通って油戻し室33に導かれ、油戻し室33から圧縮機構部9の摺動部分、例えば、主軸受22や副軸受23と回転軸12との摺動部分の潤滑に用いられる。摺動部分の潤滑に用いられる潤滑油は密閉ケース7内圧力より高圧であり、摺動部分を潤滑する潤滑油は、潤滑油の圧力と密閉ケース7内の圧力との差圧“ΔP(MPa)”により摺動部分を通過して密閉ケース7内の空間に向けて移動し、摺動部分を潤滑した後に密閉ケース7内の空間に排出される。密閉ケース7内の空間に排出された潤滑油は密閉ケース7内の底部に貯留され、潤滑油吸込通路29内を通って再びシリンダ室24、25内に吸込まれる。
【0028】
したがって、一端がガス冷媒通路28に連通されて他端が密閉ケース7内の底部に貯留された潤滑油に浸漬される潤滑油吸込通路29を設けるという簡単で安価な構成により、密閉ケース7内の底部に貯留された潤滑屋を用いて圧縮機構部9の摺動部分を潤滑することができる。
【0029】
ここで、図2は、圧縮機構部9の運転周波数と、潤滑油吸込通路29内を通ってシリンダ室24、25内に吸込まれる潤滑油の吸込量との関係を示すグラフである。圧縮機構部9の運転周波数が上昇すると、シリンダ室24、25内に吸込まれる潤滑油の量は二次関数的に上昇する。これは、圧縮機構部9の運転周波数の上昇に伴い、ガス冷媒通路28を流れるガス冷媒の流速が速くなり、これに伴って潤滑油吸込通路29内を通って吸込まれる潤滑油の量が多くなるためである。
【0030】
このようなことから、圧縮機構部9が低い運転周波数で運転されている場合には、潤滑油吸込通路29内を通ってガス冷媒通路28内に吸込まれ、さらに、シリンダ室24、25内に吸込まれる潤滑油の量が少なくなる。
【0031】
シリンダ室24、25内に吸込まれる潤滑油の量が少ないと、圧縮されたガス冷媒と共に油分離器3内に導かれる潤滑油の量が少なくなり、油分離器3内で分離される潤滑油の量が少なくなる。それに伴い、油分離器3内で分離された後に潤滑油戻し室33に導かれる潤滑の量が少なくなるとともに圧縮機構部9の摺動部分に導かれる潤滑油の量が少なくなり、摺動部分で焼付を生じる場合がある。
【0032】
そこで、図3に示すように、制御部15により圧縮機構部9の運転周波数の制御を行い、圧縮機構部9の運転が第1運転周波数“X”以下の運転周波数で第1運転時間“T1”継続された場合、第1運転周波数“X”より高い運転周波数である第2運転周波数“Y”で第2運転時間“T2”圧縮機構部9を運転する。これにより、第1運転周波数“X”以下の運転周波数での運転中に潤滑油吸込通路29内を通ってシリンダ室24、25内に吸込まれる潤滑油の量が少ない場合でも、第2運転周波数“Y”での運転中に潤滑油吸込通路29内を通ってシリンダ室24、25内に吸込まれる潤滑油の量を多くすることができ、シリンダ室24、25内から油分離器3内に導かれる潤滑油の量を多くすることができる。したがって、油分離器3内で分離される潤滑油の量を多くすることができ、油分離器3内で分離された後に圧縮機構部9の摺動部分に導かれる潤滑油が不足するという事態の発生を防止することができ、圧縮機構部9の摺動部分が潤滑油の不足により焼付を起こすという事態の発生を防止することができる。
【0033】
ここで、第1運転周波数“X”、第2運転周波数“Y”、第1運転時間“T1”、第2運転時間“T2”は、密閉型圧縮機2の大きさや性能等に応じて適宜設定される値である。
【0034】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態を図4及び図5に基づいて説明する。なお、第2の実施形態及びそれ以降の実施形態において、第1の実施形態で説明した構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付け、重複する説明は省略する。また、第2の実施形態の密閉型圧縮機2及び冷凍サイクル装置1の外観構成については、図1を援用して説明する。
【0035】
圧縮機構部9の摺動部分を潤滑した後に密閉ケース7内の空間に排出される潤滑油の排出量と、油分離器3から導かれて摺動部分を潤滑する潤滑油の圧力と密閉ケース7内の圧力との差圧“ΔP(MPa)”との関係は、図4のグラフに示すようになる。図4のグラフによれば、差圧“ΔP”が大きくなるほど、摺動部分を潤滑した後に密閉ケース7内の空間に排出される潤滑油の量が多くなることがわかる。
【0036】
そこで、この第2の実施形態の制御部15では、図5の表に示すように、第1運転周波数“X”以下の運転周波数で運転する第1運転時間“T1”を、差圧“ΔP”により変化させる制御が行われる。
【0037】
具体的には、差圧“ΔP”が0〜1未満の場合には、“T1”を15分とし、差圧“ΔP”が1以上〜2未満の場合には、“T1”を10分とし、差圧“ΔP”が2以上の場合には、“T1”を5分としている。
【0038】
また、差圧“ΔP”は、凝縮器4の温度を測定する温度センサの測定結果と、蒸発器6の温度を測定する温度センサの測定結果とに基づいて制御部15において推定される。
【0039】
このような構成において、第2の実施形態では、差圧“ΔP”に応じて、第1運転周波数“X”以下の運転周波数での第1運転継続時間“T1”を変化させ、差圧“ΔP”が大きくなるにつれて第1運転時間“T1”を短くしている。これにより、差圧“ΔP”が大きくなった場合には、潤滑油吸込通路29内を通ってシリンダ室24、25内への潤滑油の吸込量が少ない第1運転周波数“X”以下の運転周波数で運転される第1運転時間“T1”が短くなり、シリンダ室24、25内への潤滑油の吸込量が多い第2運転周波数“Y”で運転される第2運転時間“T2”の割合が高くなる。このため、差圧“ΔP”が大きいために摺動部分から密閉ケース7内の空間に排出される潤滑油の排出量が多い場合でも、第1運転周波数“X”以下の運転周波数で運転される第1運転時間“T1”を短くすることにより、油分離器3内で分離された後に圧縮機構部9の摺動部分に導かれる潤滑油が不足するという事態の発生を防止することができる。このため、圧縮機構部9の摺動部分が潤滑油の不足により焼付を起こすという事態の発生を防止することができる。
【0040】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態を図6に基づいて説明する。第3の実施形態では、図6の表に示すように、差圧“ΔP”に応じて、第1運転周波数“X”の値を変化させている。
【0041】
具体的には、差圧“ΔP”が0〜1未満の場合には、第1運転周波数を“Xa”とし、差圧“ΔP”が1以上〜2未満の場合には、第1運転周波数を“Xb(但し、Xa<Xb)”とし、差圧“ΔP”が2以上の場合には、第1運転周波数を“Xc(但し、Xb<Xc)”としている。なお、第1運転周波数“Xa”、“Xb”、“Xc”は、密閉型圧縮機2の大きさや性能等に応じて適宜設定される値である。
【0042】
このような構成において、第3の実施形態では、差圧“ΔP”に応じて第1運転周波数を“Xa”、“Xb”、“Xc”と変化させ、差圧“ΔP”が大きくなるにつれて第1運転周波数“X”を高くしている。このため、差圧“ΔP”が大きいために摺動部分から密閉ケース7内の空間に排出される潤滑油の排出量が多い場合でも、潤滑油吸込通路29内を通ってシリンダ室24、25内に吸込まれる潤滑油の量を多くすることができ、シリンダ室24、25内から油分離器3内に導かれる潤滑油の量を多くすることができる。したがって、油分離器3内で分離される潤滑油の量を多くすることができ、油分離器3内で分離された後に圧縮機構部9の摺動部分に導かれる潤滑油が不足するという事態の発生を防止することができる。このため。圧縮機構部9の摺動部分が潤滑油の不足により焼付を起こすという事態の発生を防止することができる。
【0043】
以上説明した各実施形態によれば、制御部15によって圧縮機構部9の運転周波数を制御し、圧縮機構部9の運転が第1運転周波数“X”以下の運転周波数で第1運転時間“T1”継続された場合、圧縮機構部9の運転を第1運転周波数“X”より周波数が高い第2運転周波数“Y”で第2運転時間“T2”継続させている。これにより、第1運転周波数“X”以下の運転周波数での運転時に潤滑油吸込通路29内を通ってシリンダ室24、25内に吸込まれる潤滑油の量が少ない場合であっても、第2運転周波数“Y”での運転時に潤滑油吸込通路29内を通ってシリンダ室24、25内に吸込まれる潤滑油の量を多くすることができ、シリンダ室24、25から油分離器3内に導かれる潤滑油の量を多くすることができる。したがって、一端がガス冷媒通路28に連通されて他端が密閉ケース7内の底部に貯留された潤滑油に浸漬される潤滑油吸込通路29を設けるという簡単で安価な構成であっても、圧縮機構部の摺動部分に導かれる潤滑油が不足するという事態の発生を防止することができ、圧縮機構部9の摺動部分が潤滑油不足により焼付を起こすという事態の発生を防止することができる。
【0044】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、様々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1…冷凍サイクル装置、2…密閉型圧縮機、3…油分離器、4…凝縮器、5…膨張装置、6…蒸発器、7…密閉ケース、8…電動機部、9…圧縮機構部、15…制御部、28…ガス冷媒通路(作動流体吸込通路)、29…潤滑油吸込通路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に潤滑油が貯留される密閉ケース内に電動機部とこの電動機部により駆動される圧縮機構部とが収容され、前記密閉ケース内の空間に導かれる作動流体を前記圧縮機構部に導く作動流体吸込通路が設けられ、一端が前記作動流体吸込通路に連通されて他端が前記密閉ケース内の底部に貯留された潤滑油に浸漬される潤滑油吸込通路が設けられ、前記圧縮機構部で圧縮された作動流体に含まれる潤滑油が油分離器で分離された後に前記圧縮機構部に導かれてこの圧縮機構部内の摺動部分を潤滑する密閉型圧縮機において、
前記圧縮機構部の運転が第1運転周波数以下の運転周波数で第1運転時間継続された場合、前記圧縮機構部の運転を前記第1運転周波数より周波数が高い第2運転周波数で第2運転時間継続させる制御部が設けられていることを特徴とする密閉型圧縮機。
【請求項2】
前記制御部は、前記密閉ケース内の圧力と前記油分離器で分離されて前記圧縮機構部に導かれる潤滑油の圧力との差圧に基づいて前記第1運転時間を変化させ、前記差圧が大きくなるにつれて前記第1運転時間を短くすることを特徴とする請求項1記載の密閉型圧縮機。
【請求項3】
前記制御部は、前記密閉ケース内の圧力と前記油分離器で分離されて前記圧縮機構部に導かれる潤滑油の圧力との差圧に基づいて前記第1運転周波数を変化させ、前記差圧が大きくなるにつれて前記第1運転周波数を高くすることを特徴とする請求項1記載の密閉型圧縮機。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の密閉型圧縮機と、前記密閉型圧縮機に接続される凝縮器と、前記凝縮器に接続される膨張装置と、前記膨張装置と前記密閉型圧縮機との間に接続される蒸発器とを備えた冷凍サイクル装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−76332(P2013−76332A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215086(P2011−215086)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(505461072)東芝キヤリア株式会社 (477)
【Fターム(参考)】