説明

密閉型圧縮機

【課題】 駆動軸を軸支する副軸受を備えたサブフレームを軽量化し、密閉容器に圧入して溶接することにより、十分な固定力の確保と軸心のずれ防止、及び組立性を向上させたサブフレームを備えた密閉型圧縮機を提供する。
【解決手段】 密閉容器1内に圧縮部と、圧縮部を駆動する電動機と、電動機の駆動軸の一端側を軸支する主軸受を有するメインフレームと、駆動軸の他端側を軸支する副軸受10を有するサブフレーム9とからなる密閉型圧縮機において、サブフレームを、副軸受を保持する環状の軸受部12と、密閉容器の内周面に固定される複数の円弧状の固定部13と、軸受部と複数の固定部とを連結する放射状の脚部14とから構成して、密閉容器に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉型圧縮機に係わり、より詳しくは、駆動軸を軸支する副軸受を備えたサブフレームを軽量化し、密閉容器に圧入して溶接することにより、十分な固定力の確保と軸心のずれ防止および組立性を向上させたサブフレームの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のサブフレームを圧縮機のシェル(密閉容器)に焼きばめ、または圧入して溶接する構成の圧縮機として、図4、図5及び図6に示すようなものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
図4は一体型サブフレームを用いたスクロール圧縮機を示す部分断面図で、図5はサブフレームの平面図である。
図5に示した一体型サブフレーム24Aは、ホルダ部24aと、フレーム部24bと、フレーム部24bとホルダ24aを連結する3本のリブ24dとから一体に構成されている。ここで、3本のリブ24dは、フレーム部24b外周面の接線方向にリブ軸心方向を配した状態でそれぞれ配備されており、平面視正三角形に配置されている。
【0003】
上記構成の一体型サブフレーム24Aは、図4に示すように、スクロール圧縮機のシェル11’内下部に配備されるものであるが、まずシェル11’にメインフレーム7’と電動機ステータ9’が順次焼きばめ固定される。別途、一体型サブフレーム24Aのフレーム部24bには副軸受15’が圧入されており、駆動軸6’にも電動機ロータ8’が焼きばめ固定されている。そして、駆動軸6’の一端がメインフレーム7’の軸受7a’に挿入された状態のワークに対して、ホルダ部24aを焼きばめすると同時に駆動軸6’の他端を副軸受15’に挿入することにより、一体型サブフレーム24Aがシェル11’の位置決め段部11a’に固着支持されるようになっている。
【0004】
しかしながら、サブフレーム24Aは、フレーム部24bとホルダ部24aを連結するため、副軸受15’を中心とする円の接線方向に延びる複数のリブ24dを設けるものとなっているが、これではホルダ部24aの部分によりサブフレーム24Aの全体の部品重量が重くなる。
【0005】
そこで、図6では軽量化のためホルダ部をなくしたものである。しかしながら、シェル11’を基準に、圧縮部とサブフレーム24Aをシェル11’に圧入して溶接する組立方法において、図6のサブフレーム24Eを適用した場合、シェル11’に対するホルダ部24iの周方向の幅が狭くなるという問題がある。具体的には、図6の形状では圧入してもシェル11’が三角形に変形して逃げてしまい圧入による十分な固定力が得られず、その状態で溶接すると溶接歪みによりサブフレーム24Eが傾き、圧縮部側とサブフレーム24E側の軸芯を良好に組立てることができない。
そこで、サブフレームの部品重量が軽量化されたものであって、シェル(密閉容器)に圧入した際に、十分な固定力が得られるサブフレームの構造が望まれている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−299681号公報(第4〜7頁、第6、8、18図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑み、駆動軸を軸支する副軸受を備えたサブフレームを軽量化し、密閉容器に圧入して溶接することにより、十分な固定力の確保と軸心のずれ防止及び組立性を向上させたサブフレームを備えた密閉型圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上述の課題を解決するため、密閉容器内に圧縮部と、同圧縮部を駆動する電動機と、同電動機の駆動軸の一端側を軸支する主軸受を有するメインフレームと、前記駆動軸の他端側を軸支する副軸受を有するサブフレームとからなる密閉型圧縮機において、
前記サブフレームを、前記副軸受を保持する環状の軸受部と、前記密閉容器の内周面に周方向に固定される複数の円弧状の固定部と、前記軸受部と前記複数の固定部とを放射状に連結する複数の脚部とから構成して、前記密閉容器に固定してなる構成となっている。
【0009】
また、前記固定部の周方向の幅を、前記脚部の幅より大きくしてなる構成となっている。
【0010】
また、前記複数の固定部の前記電動機と反対側の端面を平坦面とし、この各平坦面を面一にしてなる構成となっている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、サブフレームを、副軸受を保持する軸受部と、密閉容器の内周面に固定される複数の固定部と、軸受部と複数の固定部とを連結する脚部とから構成し、固定部の周方向の幅を大きくする一方、脚部の幅を狭くすることにより軽量化できると同時に、サブフレームを密閉容器に圧入した際の圧入による固定力を十分確保できる。これにより、密閉容器に圧縮部とサブフレームを圧入して溶接することで、主軸受と副軸受の芯出しを行う組立方法の場合、サブフレームの溶接時の溶接歪みによる軸芯のずれを防止でき、組立性が向上すると共に、圧縮機の性能、信頼性を向上することができる密閉型圧縮機となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。
図1は本発明におけるスクロール式の密閉型圧縮機の縦断面図である。
図1において、スクロール式の密閉型圧縮機は、密閉容器1内の上方に圧縮部2を配設し、下方に密閉容器1の内部に固定された固定子3bと、同固定子3bにより駆動され回転する回転子3aとを有する電動機3が配設され、同電動機3により前記圧縮部2が駆動される。
【0013】
前記圧縮部2は、鏡板の内面に渦捲き状のラップを立設させた固定スクロール4と、同固定スクロール4と鏡板の内面のラップを互いに噛み合わせ複数の圧縮室5を形成する旋回スクロール6と、同旋回スクロール6の背面の旋回軸受6aとにより構成されている。また、先端の旋回軸7aを前記旋回軸受6aに挿入し、前記電動機3の回転力を前記旋回スクロール6に伝達する駆動軸7と、同駆動軸7の前記旋回軸7a下部に設けられた主軸7bをラジアル方向に支承する主軸受8aを備え、前記圧縮部2を支持するメインフレーム8と、前記駆動軸7の下部に形成された副軸7cをラジアル方向に支承する副軸受10を備えたサブフレーム9とにより密閉型圧縮機が構成されている。
【実施例1】
【0014】
図2は本発明における実施例1を示すサブフレームの図で、(A)は平面図で、(B)はその断面図である。図2(A)、(B)において、前記サブフレーム9には、前記副軸受10が一体に形成され、ラジアル方向に対する摩擦係数を小さくし、摺動損失を低減する鋳物やカーボン材のブッシュからなるすべり軸受11が圧入により挿着されている。
そして、前記サブフレーム9は、前記副軸受10を保持する環状の軸受部12と、前記密閉容器1の内周面に周方向に固定される複数の円弧状の固定部13と、前記軸受部12と前記複数の固定部13とを連結する放射状の複数の脚部14とから一体に形成され、前記密閉容器1に圧入して溶接される構成となっている。
【0015】
前記固定部13は、圧入による前記サブフレーム9の前記密閉容器1に対する固定力を確保するため、周方向に延出したものとなっていて、周方向の幅Lを前記脚部14の幅Mより大きくしてなる構成となっている。
また、前記固定部13の幅Lは、前記密閉容器1の内径を前記脚部14の脚数3で割った値の60%から140%の間に設定することが望ましい。
そして、前記固定部13の外径は、前記密閉容器1の内径より若干大きい寸法とし、前記サブフレーム9を前記密閉容器1に圧入可能なものとする。前記サブフレーム9を前記密閉容器1に圧入した後、図2の3箇所の前記固定部13で3点溶接を行う。
【0016】
図2(B)に示すように、前記複数の固定部13の前記電動機3と反対側の端面13aを高精度な平坦面とし、3箇所の平坦面を面一になるように加工する。
これにより、前記密閉容器1に前記サブフレーム9を圧入する際、端面13aを押すことにより良好な圧入を行うことができる。
【実施例2】
【0017】
図3は本発明における実施例2を示す図で、固定部13Aを4箇所設けたものである。図2に示す上記実施例1と同様に、サブフレーム9Aは、環状の軸受部12Aと複数の円弧状の固定部13Aを複数の放射状の脚部14Aによって連結して一体に構成し、前記複数の固定部13Aの前記電動機3と反対側の端面13b(図2Bに示す)を、上記実施例1と同様に高精度な平坦面とし、4箇所の平坦面を面一になるように加工する。
前記固定部13Aを4箇所にすることにより、固定部が3箇所の上記実施例1に比べ前記密閉容器1に対する固定力が得られ、これにより前記固定部13Aの周方向の幅L’を狭くできる。
【0018】
上記実施例1および2において、前記サブフレーム9、9Aの材料は鋳物材とし、副軸受10、固定部13、13A、端面13a,13bと、その他必要な箇所のみ仕上げ加工を施すものとし、加工コストを低減する。また、副軸受10は安価なすべり軸受11としコスト的に有利なものとしている。
また、前記圧縮部2と前記サブフレーム9、9Aの芯出し性を良好とするため、副軸受10と固定部13、13Aの外径の同軸度、及び固定部13、13Aの外径に対する端面13a,13bの直角度を精度良く加工する。
【0019】
次に上記構成における組立方法について説明する。まず、前記電動機3の固定子3bが焼嵌された前記密閉容器1内に、前記メインフレーム8に支持された圧縮部2を圧入し、メインフレーム8に溶接する。次に、前記サブフレーム9、9Aを密閉容器1に圧入して固定部13、13Aに溶接する。組立は密閉容器1を基準に圧入により、圧縮部2とサブフレーム9、9Aの芯出しを行うものであり、圧縮部2の溶接時に電動機3の回転子3aと固定子3b間のエアギャップに隙間ゲージを挿入する必要がなくなり、副軸受10を調芯して溶接したり、ボルトで固定したりする必要がなくなり組立性が向上する。
【0020】
以上に説明したように、前記サブフレーム9を、前記副軸受10を保持する軸受部12と、前記密閉容器1の内周面に固定される複数の固定部13と、前記軸受部12と前記複数の固定部13とを連結する脚部14とから構成し、固定部13の周方向の幅Lを大きくする一方、脚部14の幅Mを狭くすることにより軽量化できると同時に、サブフレーム9を密閉容器1に圧入した際の圧入による固定力を十分確保できる。これにより、密閉容器1に圧縮部2とサブフレーム9を圧入して溶接することで、主軸受8aと副軸受10の芯出しを行う組立方法の場合、サブフレーム9の溶接時の溶接歪みによる軸芯のずれを防止でき、組立性が向上すると共に、圧縮機の性能、信頼性を向上することができる密閉型圧縮機となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明におけるスクロール密閉型圧縮機の縦断面図である。
【図2】(A)は本発明における実施例1を示すサブフレームの平面図で、(B)は横断面図である。
【図3】本発明における実施例2を示すサブフレームの平面図である。
【図4】従来例によるスクロール圧縮機の部分断面図である。
【図5】従来例によるサブフレームの平面図である。
【図6】従来例による他のサブフレームの平面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 密閉容器
2 圧縮部
3 電動機
3a 回転子
3b 固定子
4 固定スクロール
5 圧縮室
6 旋回スクロール
6a 旋回軸受
7 駆動軸
7a 旋回軸
7b 主軸
7c 副軸
8 メインフレーム
8a 主軸受
9 サブフレーム
10 副軸受
11 すべり軸受
12,12A 軸受部
13,13A 固定部
13a 端面
14,14A 脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器内に圧縮部と、同圧縮部を駆動する電動機と、同電動機の駆動軸の一端側を軸支する主軸受を有するメインフレームと、前記駆動軸の他端側を軸支する副軸受を有するサブフレームとからなる密閉型圧縮機において、
前記サブフレームを、前記副軸受を保持する環状の軸受部と、前記密閉容器の内周面に周方向に固定される複数の円弧状の固定部と、前記軸受部と前記複数の固定部とを放射状に連結する複数の脚部とから構成して、前記密閉容器に固定してなることを特徴とする密閉型圧縮機。
【請求項2】
前記固定部の周方向の幅を、前記脚部の幅より大きくしてなることを特徴とする請求項1記載の密閉型圧縮機。
【請求項3】
前記複数の固定部の前記電動機と反対側の端面を平坦面とし、この各平坦面を面一にしてなることを特徴とする請求項1記載の密閉型圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−200363(P2006−200363A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−9783(P2005−9783)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】