説明

密閉型圧縮機

【課題】ガラス絶縁端子の耐圧強度を向上させることにより、圧縮機の小型化および飽和圧力の高い冷媒にも適した信頼性の高いガラス絶縁端子と密閉型圧縮機を提供すること。
【解決手段】密閉容器101内にモータ部105と圧縮機構部112とを収容した密閉型圧縮機において、前記密閉容器101は、一方が密閉された円筒状容器119と上蓋部102および上蓋部102に取り付けているガラス絶縁端子103から形成され、そのガラス絶縁端子103のハウジング109のガラス絶縁部110と端子ピン部111の保持面を曲面形状とすることによりハウジング109の変形量を抑え漏れ耐力を向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍用,空調用、給湯用等に用いられる密閉型圧縮機等で、特に耐圧強度を求められるものに関する。
【背景技術】
【0002】
CFC12冷媒やHCFC22冷媒を用いた密閉型圧縮機の密閉容器101aは、図4に示すような形状であり、特に上蓋部102に取り付けているガラス絶縁端子103aは、過負荷保護器の配置およびモータ部105のステータ106のコイルエンド107からのリード線108との結線位置等の関係から、上蓋部102の中心からずれた位置(ステータ106の外周近傍のコイルエンド107寄り)に設けられることが多かった。
【0003】
また、ガラス絶縁端子103aを取り付けている付近の上蓋部102の形状はガラス絶縁端子103aを溶接固定する容易さや過負荷保護機との密着性(温度検知精度向上のため)の観点から平坦形状とすることが多かった。
【0004】
ここで、地球環境の観点より近年採用されてきたHFC410A冷媒のような代替冷媒は、飽和圧力が前述の冷媒より高くなる(約1.7倍)ため、上蓋部102が前述のような平坦形状では変形し易く、溶接等により上蓋部102に固定されているガラス絶縁端子103aのハウジング部109aの変形要因となり、間接的にガラス絶縁端子103aのガラス絶縁部110の割れやハウジング部109aや端子ピン部111aとの剥離が発生し、密封性を低下させ、内部漏れが発生し易いと言う課題が有った。
【0005】
このため、従来は、この上蓋部の変形に伴うガラス絶縁端子の漏れを防止する観点から上蓋部の形状を略球形状としたり、上蓋部が変形し難い位置(中央部近傍)にガラス絶縁端子を配置したりする(例えば特許文献1参照)ことが考えられている。
【0006】
図5は、特許文献1に記載された従来の密閉型圧縮機の上蓋部201a廻りの構成を示すものである。図5に示すように、漏れを防止する手段として、略球形状とした上蓋部201aと、その中央部近傍に取り付けられたガラス絶縁端子103aから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−022679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の構成では、元々平坦形状で構成されていた密閉容器に対して、上蓋部が略球形状であるがために、従来から使用していた過負荷保護器が取り付けられず、特殊な部品を追加して取り付けられるよう構成したり、過負荷保護器自体を特殊な形状にしたり、密閉容器内部に予め取り付けたり、リード線位置の変更に伴う結線工程の変更が必要となる等、新形状を要する部品や製造工程の大幅なレイアウト変更が必要となり、コスト増となる課題が発生する。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、元々採用されていた平坦な密閉容器の上蓋部形状を変更することなく、漏れの発生を防止し、新規に設備投資等を必要とせず、安価で容易な構成により信頼性の高いガラス絶縁端子を有する密閉型圧縮機を提供すること
を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明の密閉型圧縮機は、ガラス絶縁端子のハウジング部におけるガラス絶縁部と端子ピン部の保持面を曲面形状としたものである。これによって、上蓋部が多少変形した場合でも、ガラス絶縁端子のガラス絶縁部と端子ピン部の保持面の変形が殆ど無くなり、ガラス絶縁部の割れやガラス絶縁部とハウジング部、またはガラス絶縁部と端子ピン部との剥離等の発生も防止でき、元々採用されていた平坦な密閉容器の上蓋部形状を変更することなく、漏れが発生せず、設備投資等も新規に必要としない、安価で信頼性の高いガラス絶縁端子と密閉型圧縮機を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の密閉型圧縮機は、ガラス絶縁端子のハウジング部におけるガラス絶縁部と端子ピン部の保持面を曲面形状とすることにより、密閉容器の耐圧特性の信頼性向上を図ると共に既存の設備工程での製造を可能とすることができ、このガラス絶縁端子を用いることにより、安価な密閉型圧縮機を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1におけるガラス絶縁端子の断面図
【図2】本発明の実施の形態1における密閉型圧縮機の断面図
【図3】従来のガラス絶縁端子の断面図
【図4】従来の上蓋形状が平坦な密閉型圧縮機の断面図
【図5】従来の上蓋部を略球形状とした密閉型圧縮機の断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明は、ガラス絶縁端子のハウジング部におけるガラス絶縁部と端子ピン部の保持面を曲面形状とすることにより、密閉容器内部の圧力が上昇した場合に、上蓋部が多少変形した場合でも、ガラス絶縁端子のガラス絶縁部と端子ピン部の保持面の変形を抑制することができ、ガラス絶縁部の割れやガラス絶縁部とハウジング部、またはガラス絶縁部と端子ピン部との剥離等の発生を防止することができる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるガラス絶縁端子の断面図を示すものである。
【0016】
図1において、ハウジング部109はガラス絶縁部110と端子ピン部111との保持面を曲面形状としたものであり、図2はこれを平坦形状な上蓋部102に取り付けられたロータリー型圧縮機の断面図を示している。
【0017】
以上のように構成されたガラス絶縁端子とロータリー型圧縮機について以下その動作、作用について、説明する。
【0018】
まず、ロータリー型圧縮機は密閉容器101内にモータ部105とこのモータ部105により駆動される圧縮機構部112とが収容され、モータ部105は上部に、圧縮機構部112は下部にそれぞれ設置されている。
【0019】
モータ部105は密閉容器101内上部に圧入されるステータ106とこのステータ1
06に回転駆動されるロータ113とを有し、ロータ113には回転シャフト114が一体的に設けられている。
【0020】
回転シャフト114はロータ113より下方向に突出して延び、圧縮機構部112のメインベアリング115及びサブベアリング116により回転自在に支持される。
【0021】
圧縮機構部112はシリンダ117を有し、シリンダ117の圧縮室内にピストンローラ118が収容される。
【0022】
ピストンローラ118は回転シャフト114のクランク部に軸装され、この回転シャフト114の回転により偏心回転せしめられるようになっている。
【0023】
そして、この圧縮機構部112は、シリンダ117を密閉容器101内周部に溶接することにより、密閉容器101内に固定支持される。
【0024】
一方、ロータリー型圧縮機の密閉容器101は一方が密閉されている円筒状容器119と、この円筒状容器119を覆う上蓋部102と上蓋部102に取り付けているガラス絶縁端子103から形成され、上蓋部102を円筒状容器119に全周溶接にて取り付け、またガラス絶縁端子103を上蓋部102に全周溶接にて取り付けることにより密閉構造となっている。
【0025】
この上蓋部102に取り付けられているガラス絶縁端子103のハウジング部109におけるガラス絶縁端子103と端子ピン部111との保持面形状は、プレス成型等による曲面形状となっている。
【0026】
例えばここで、密閉容器101の内部圧力が圧縮機の運転に伴い上昇した場合、その圧力で上蓋部102および円筒状容器119は密閉容器101の中心付近より外側に向かって膨らもうとする。この時、ガラス絶縁端子103のハウジング部109も、上蓋部102の変形と自らが受ける内部圧力上昇に伴い、ハウジング部109の中央付近より外に膨らむ荷重を受ける。
【0027】
このとき、ガラス絶縁端子103のハウジング部109の保持面が予め曲面形状であると、内圧面側から受ける圧力が保持面に対してほぼ均等にかかることとなり、上蓋部102が多少変形した場合でも、ガラス絶縁部110や端子ピン部111に偏った力がかかることを防止でき、ガラス絶縁部110の割れやガラス絶縁部110とハウジング部109、またはガラス絶縁部110と端子ピン部111との剥離等の発生を防止することができ、元々採用していた平坦形状の上蓋部102を用いたロータリー型圧縮機でも、その密閉容器101の耐圧強度を向上して使用することを可能とする。
【0028】
以上のように、本実施の形態においては、ハウジング部109のガラス絶縁端子103と端子ピン部111との保持面を曲面形状とすることにより、ガラス絶縁端子103自体の耐圧強度を向上させられるため、元々採用していた平坦形状な上蓋部102をそのまま用いて密閉型圧縮機も耐圧強度を容易に向上させることができ、新規に設備投資などを必要としない、安価で信頼性に長けた密閉型圧縮機を構成することができる。
【0029】
また、本実施の形態では、別にハウジング部109の保持面を密閉容器に対して外に凸な曲面形状(略球形状)とすることにより、圧縮機の温度が実使用時に低下して、ガラス絶縁端子部近傍に結露が発生して水滴等が付着しかけた場合でも、外周部に排除させることができ、感電等の防止効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上のように、本発明にかかる密閉型圧縮機は、ガラス絶縁端子のハウジング形状の変更のみにより、ガラス絶縁部と端子ピン部との密着性を損なうことなく取り付けられた密閉容器内部の耐圧強度自体を向上させることが可能となるので、近年採用が急拡大している、自然冷媒(CO2)等を用いた、更に高圧な密閉型圧縮機等の用途にも容易に適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
101 密閉容器
102 上蓋部(平坦形状)
103 ガラス絶縁端子
105 モータ部
106 ステータ
107 コイルエンド
108 リード線
109 ハウジング部
110 ガラス絶縁部
111 端子ピン部
112 圧縮機構部
113 ロータ
114 回転シャフト
115 メインベアリング
116 サブベアリング
117 シリンダ
118 ピストンローラ
119 円筒状容器
201 上蓋部(略球形状)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器内部にモータ部と圧縮機構部とを収容した密閉型圧縮機において、前記密閉容器には、ガラス絶縁端子を介してモータ部に導通を行う構成であり、そのガラス絶縁端子のハウジング部におけるガラス絶縁部と端子ピンとの保持面が曲面形状であることを特徴としたガラス絶縁端子とこれを用いた密閉型圧縮機。
【請求項2】
ガラス端子のハウジング部におけるガラス絶縁部と端子ピンとの保持面が密閉容器に対して外に凸な曲面形状であることを特徴とした、請求項1に記載の密閉型圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−149378(P2011−149378A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12714(P2010−12714)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】