説明

対地作業機の検出装置

【課題】作業機フレームに吊下げ状に設ける検出橇の変形破損の防止を図る。
【解決手段】走行機体の後部ヒッチ13に対して昇降調整自在に作業機フレーム7を設け、該作業機フレーム7に対地作業機1を装着し、前記作業機フレーム7に対して上下位置変更調節自在に2対の平行リンク27,28で折り畳み可能な支持機構部25を取り付け、この支持機構部25には圃場面に接地して対地作業機1の対地作用深さ又は高さを検出するための検出橇24を設け、上記対地作業機1を上昇操作するとこの上昇動作に連動して検出橇24の後部側が持上がる姿勢に切り替える連携手段34を設ける。なお、前記支持機構部25と走行機体後部との間に連携手段としてのワイヤ38を連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、走行機体の後部に昇降自在に作業機フレームを設け該作業機フレームに装着する対地作業機の対地姿勢を検出するための検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、複数のディスクロータを備えて耕耘する耕耘装置において、耕耘深さの不均一を防止するため、該ディスクロータを複数備えたロータ軸等からなる作業機を作業機フレームに支持し、この作業機フレームをトラクタの後部ヒッチに昇降可能に装着して耕深制御を行うように構成した耕耘装置において、作業中の耕耘深さの状態を検出する検出センサを上記作業機フレームの下部に設けた構成がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62−116601号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の特許文献1には、圃場面に接地して対地作業機の耕耘深さを検出する構成の検出手段として作業機フレームにつりさげて設ける構成の開示があるが、作業機フレームを後部ヒッチに装着する際、検出センサが接地して破損の恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記に鑑み、請求項1に記載の発明は、走行機体の後部ヒッチ13に対して昇降調整自在に作業機フレーム7を設け、該作業機フレーム7に対地作業機1を装着し、前記作業機フレーム7に対して上下位置変更調節自在に支持機構部25を取り付け、この支持機構部25には圃場面に接地して対地作業機1の対地作用深さ又は高さを検出するための検出橇24を設け、上記対地作業機1を上昇操作するとこの上昇動作に連動して検出橇24の後部側が持上がる姿勢に切り替える連携手段34を設けてなる対地作業機の検出装置とする。
【0006】
このように構成すると、対地作業機1により対地作業を行うときは、昇降シリンダ機構10へのバルブを切換えて対地作業機1を下げ作業開始する。検出橇24の上下の動きに連動してポテンショメータ26から角度検出情報が出力され、昇降シリンダ機構10への圧油の供給又は排出を行わせ作業機フレーム7の昇降制御を行う。
【0007】
隣接作業の途中で畦際での旋回を行うなど、作業機フレーム7を上昇させるとき、連携手段34が作動してワイヤ38が引かれ支持機構部25は上昇し、検出橇24は尻上がり状態に高く上昇される。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、作業機フレーム7に2対の平行リンク27,28で折り畳み可能な支持機構部25を構成し、該支持機構部25の下端部に検出橇24を接続構成し、該支持機構部25と角度検出用ポテンショメータ26とを連携し、前記ポテンショメータ26を連動するアクチュエータ26aを上方向きに付勢し、該アクチュエータ26aに前記支持機構部25から延出する連結リンク32を係合し、前記支持機構部25と走行機体後部との間に連携手段としてのワイヤ38を連結する構成とした。
【0009】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、後部ヒッチ13に上下可動リンク36を設け、該可動リンク36に連携手段としてのワイヤ38の一端を連結し、作業時には可動リンク36が垂れ下がり状態で前記支持機後部25の下降を許容し、昇降シリンダ機構10による作業機フレーム7上昇動作に連動してワイヤ38を作動して該可動リンク36をストッパ37に当たるまで回動させ、その後の作業機フレーム7上昇動作に連動して前記支持機構部25を折り畳む構成とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明は、作業機フレーム7を後部ヒッチ13に装着する際、検出橇24が接地して破損の恐れがあるが、後部側を持上げることができ、破損を防止し得る。
また、請求項2に記載の発明は、2対の平行リンク27,28で折り畳み可能な支持機構部25としたから、地上における引き上げ量を大きくとることができ、一層破損防止を図ることができる。
【0011】
さらに、請求項3に記載の発明は、作業時には可動リンク36が垂れ下がり状態で支持機構部25の下降を許容し、昇降シリンダ機構10による作業機フレーム7上昇動作に連動してワイヤ38を作動して該可動リンク36をストッパ37に当たるまで回動させ、その後の作業機フレーム7上昇動作に連動して支持機構部25を折り畳むから、検出橇24の作業域を十分に確保でき作業を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】中耕除草装置を装着した乗用管理機の作業状態側面図
【図2】中耕除草装置を装着した乗用管理機の非作業状態側面図
【図3】作業機フレーム及び中間枠部の分解側面図
【図4】作業機フレーム及び中間枠部の斜視図
【図5】作業機フレーム及び検出橇の作業状態側面図(A)、及び非作業状態側面図(B)
【図6】検出橇の作用説明側面図(A)、(B)、(C)
【図7】別実施例を示す検出橇の斜視図
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づいてこの発明の実施態様について説明する。
中耕除草装置1は、乗用管理機2の後部に装着される。前部にエンジン3を搭載し、エンジン回転を適宜に変速して前後車輪4,5を伝動する乗用管理機2機体の後部には、作業機フレーム7を装着する。この作業機フレーム7は左右一対のフレーム枠からなり、前側下部の支軸8によって機体の後車軸ケース9の前側に上下回動自在に設けられる。この作業機フレーム7は側面視L型に形成されて後車軸9上側を迂回するよう構成される。
【0014】
前記作業機フレーム7と機体適所との間に、昇降シリンダ機構10を連結し、この昇降シリンダ機構10を圧油の供給・排出によって伸縮する構成とし、作業機フレーム7を支軸8周りに回動させる構成である。すなわち、昇降シリンダ機構10のピストンロッド10a側端部を作業機フレーム7の縦フレーム部に連結し、シリンダ10b側基端部を機体に連結するとともに、シリンダ機構10は複動型に構成して図外昇降バルブの切替作動に伴いピストンロッド10aをシリンダ10bに対し伸び出し、又は収納させて伸縮することで、作業機フレーム7の後端側が上下すべく支軸8周りに回動するよう構成する。
【0015】
前記作業機フレーム7の後端には、平面視コ型の被連結枠7aを備え、この被連結枠7aには上側にピン受フック部7bを、下側にピン挿通孔7cを形成している。中間枠12 側には、上側に固定ピン11aを、下側に着脱自在に挿通する着脱ピン孔11bを備え、着脱ピン11cの挿通によって該中間枠12を被連結枠7aに着脱自在に装着できる構成である。
【0016】
前記中間枠12の後部にヒッチ13を構成し、対地作業機としての中耕除草装置1の作業機ヒッチ部14を連結する構成である。即ち、該作業機ヒッチ部14には上下に係止ロッド14a,14bを平行状態に設け、このうち上側の係止ロッド14aを前記中間枠12のヒッチ部13上部の係止凹部13aに係止すると共に、この係止ロッド14a中心に回動しながら接近する下側の係止ロッド14bをロックカム13bで着脱自在にロックする構成としている。
【0017】
対地作業機としての中耕除草装置1は、作業機ヒッチ部14から後方に延出すべくアーム部15を設け、該アーム部15に対して上下に調整ハンドル16によって角度調整自在に作業機枠17を設け、この作業機枠17には後方に延出する角筒状の延出フレーム18を構成し、前ディスク19、後ディスク20及び複数のチゼル21を装着してなる。
【0018】
中耕除草装置1の前ディスク19及び後ディスク20は左右一対に設けられ、前側が閉じ後方側が開いた状態に支持されており下端は土壌中を進行して畝間の培土を行い、チゼル21も左右一対に設けられ中耕の補助的役割を行う中耕用と、左右中間にあって前ディスク19の残耕部を処理する残耕用とを備えている。
【0019】
前記作業機フレーム7の後部に検出橇24と該検出橇24を支持する支持機構部25と検出橇24の上下動の変位を角度変化に変換して電気的に検出するポテンショメータ26とからなる検出部を構成している。すなわち、支持機構部25は、2対の平行リンク27,28を屈曲自在に構成し、その下端側に検出橇24を前後2点で枢着支持している。前記作業機フレーム7の被連結枠7aのピン受フック部7bに中間枠12の上側固定ピン11aが係合する状態においてフック係合して垂下保持されるフック部7cを設ける。該フック部7cに固着される大小角筒部29,30から下方に吊り下げ状に支持される支持アーム31に、前記上側平行リンク27の上端が枢着連結されている。
【0020】
なお、大角筒部29は、小角筒部30に嵌合して上下にスライド調節可能に設けられ、小角筒部30の調節孔と大角筒部29の固定孔を一致させてピンを介して両者を連結固定する構成であり、調節孔の選択によって上下に位置調節できる構成である。
【0021】
上側の平行リンク27の途中部には該平行リンク27の上下動に連動して長手方向上下に移動する連結リンク32を接続し、前記大角筒部29に着脱自在に固定したポテンショメータ26の作動アーム型のアクチュエータ26aを連動する構成である。詳細には、該アクチュエータ26aは図外のスプリングによって先端側が上方に付勢されており、上記連結リンク32との係合によって上方向きの付勢に抗して作動アーム26aを平行リンク27,28の屈曲状況に応じて、即ち検出橇24の接地状況に応じて連結リンク32を上下動させる。連結リンク32がアクチュエータ26aを係合する状態によってポテンショメータ26は大小に角度検出値が変動し、検出橇24の上下回動姿勢に連動した角度検出値を出力する構成である。
【0022】
なお、前記検出橇24は、下側平行リンク28の下端を連結する連結片33の前面に形成した取付面33aに、該検出橇24の前側立上部24aをもって固着する構成である。したがって、前記のように検出橇24は、上下2対の平行リンク27,28に連結される構成と相まって、平行リンク27,28の屈折により、下側平行リンク28と連結片33との2つの枢着点S1,S2を繋ぐ直線の延長上に検出橇24の仮想回動支点Pが存在することとなる。このため最上昇状態では、仮想回動支点Pが検出橇24の下方に位置する関係にあって、尻上がりの検出橇が支軸を中心に回動する従来構成に比較して大きく上昇させることができる。
【0023】
なお、前記アクチュエータ26aは、連結リンク32との連携構成がアクチュエータ26a側にフック部を形成し、連結リンク32のピン部を受け止める構成としている。このため、最上昇状態(図6(C))では、連結リンク32はアクチュエータ26aから脱して該アクチュエータ26aを連動できない構成となって、不測に検出橇24が突き上げられることになっても破損を防止できる。
【0024】
検出橇24の形状は、単なる平帯板状鉄板を前後複数個所で折曲形成する単純な橇体に形成するものでもよいが、実施例のように、前後中央部及び後端立上部を左右三角状に切り欠き該切り欠き部に三角状の鉄板を立てて船底状に形成する(図7)形態では、左右接地幅が狭くなるため土の付着を少なくできる効果がある。
【0025】
次に対地作業機を上昇操作するとこの上昇動作に連動して検出橇24を前記横軸芯回りに回動して後部側を持上げる姿勢に切り替える連携手段34について説明する。
本機側フレームとしての車軸ケース9に、横軸P2周りに回動でき基端平面部36aは本機側ストッパ37面に接触し得て略水平姿勢に保持される上下可動リンク36を設け、この可動リンク36の先端にワイヤ38の一端を連結し、他端は前記2対の平行リンクのうち上側の平行リンク27部、実施例では前記連結リンク32との枢着部に連結している。このように構成することにより、上下可動リンク36は、作業時には該可動リンク36が垂れ下がり状態で支持機構部25の下降を許容し、昇降シリンダ機構10による作業機フレーム7上昇動作に連動してワイヤ38を作動して該可動リンク36をストッパ37に当たるまで回動させ、その後の作業機フレーム7上昇動作に連動して平行リンク27,28を折り畳むことができる。
【0026】
40は、前記支持アーム31部の前面を覆うカバーである。なお、前記支持アーム31は前記大角筒部29に固定状態に設けるが、その構成は該大角筒部29と一体的でもよく、縦軸芯回りに左右に所定範囲で回動できる構成でもよい。左右に回動できる構成の場合には、接地橇24側に偏った接地反力が作用するなどしても左右方向に退避動することができ、破損防止の効果がある。
【0027】
前記ポテンショメータ26の検出値と図外耕深設定ダイヤルの設定値との比較によって、その偏差を求め、所定不感帯の範囲に収まるように、昇降シリンダ機構10に作動油を給排することによって作業機フレーム7を昇降制御する構成である。
【0028】
前記のように構成した中耕除草装置1により耕耘作業を行うときは、昇降シリンダ機構10へのバルブを切換えて中耕除草装置1を下げ、耕深設定ダイヤルを所定深さに設定して前進作業開始する。検出橇24の上下の動きに連動してポテンショメータ26から角度検出情報が出力され、所定時間毎に前記耕深設定ダイヤルの設定値からの偏差を算出し、この偏差が所定範囲である不感帯に入るよう、昇降シリンダ機構10への圧油の供給又は排出を行わせ作業機フレーム7の昇降制御を行う。
【0029】
隣接作業の途中で畦際での旋回を行うため、昇降シリンダ機構10を図外昇降レバー操作によって作業機フレーム7を上昇させるが、このとき、連携手段34が作動してワイヤ38が引かれ2対の平行リンク27,28は折り畳み姿勢になって上昇し、検出橇24は尻上がり状態に高く上昇することができる。
【符号の説明】
【0030】
7作業機フレーム
13後部ヒッチ
24検出橇
25支持機構部
26ポテンショメータ
26aアクチュエータ
27,28平行リンク
32連結リンク
34連携手段
36可動リンク
38ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後部ヒッチ(13)に対して昇降調整自在に作業機フレーム(7)を設け、該作業機フレーム(7)に対地作業機(1)を装着し、前記作業機フレーム(7)に対して上下位置変更調節自在に支持機構部(25)を取り付け、この支持機構部(25)には圃場面に接地して対地作業機(1)の対地作用深さ又は高さを検出するための検出橇(24)を設け、上記対地作業機(1)を上昇操作するとこの上昇動作に連動して検出橇(24)の後部側が持上がる姿勢に切り替える連携手段(34)を設けてなる対地作業機の検出装置。
【請求項2】
作業機フレーム(7)に2対の平行リンク(27,28)で折り畳み可能な支持機構部(25)を構成し、該支持機構部(25)の下端部に検出橇(24)を接続構成し、該支持機構部(25)と角度検出用ポテンショメータ(26)とを連携し、前記ポテンショメータ(26)を連動するアクチュエータ(26a)を上方向きに付勢し、該アクチュエータ(26a)に前記支持機構部(25)から延出する連結リンク(32)を係合し、前記支持機構部(25)と走行機体後部との間に連携手段としてのワイヤ(38)を連結する構成とした請求項1記載の対地作業機の検出装置。
【請求項3】
後部ヒッチ(13)に上下可動リンク(36)を設け、該可動リンク(36)に連携手段としてのワイヤ(38)の一端を連結し、作業時には可動リンク(36)が垂れ下がり状態で前記支持機後部(25)の下降を許容し、昇降シリンダ機構(10)による作業機フレーム(7)上昇動作に連動してワイヤ(38)を作動して該可動リンク(36)をストッパ(37)に当たるまで回動させ、その後の作業機フレーム(7)上昇動作に連動して前記支持機構部(25)を折り畳む構成とする請求項2記載の対地作業機の検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−135779(P2011−135779A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295824(P2009−295824)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】