説明

対物レンズホルダおよびそれを用いた対物レンズ駆動装置、光ピックアップ装置

【課題】 対物レンズのフォーカス制御において、対物レンズホルダにフォーカス方向以外の力の成分が加わることによって、その形状や材質等に固有な共振が励起されて不要な共振が誘発される。これを防ぐために、フォーカシングコイルや、マグネットを追加することにより、フォーカス方向以外の力の成分の発生を防止している。しかし、部品点数が増加し、組立工数の増加やコストが高騰する問題があった。
【解決手段】 対物レンズの保持部が設けられた矩形状の保持面と、保持面の対向する長辺側の端部にそれぞれ設けられた2つの平板状脚部と、2つの平板状脚部の間に設けられてこれらを接続する連結壁とを備える対物レンズホルダ、およびこれを用いた対物レンズ駆動装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置の対物レンズが取り付けられる対物レンズホルダ、および対物レンズホルダがアクチュエータフレームに変位可能に支持される対物レンズ駆動装置、および光ピックアップ装置に関し、特に、対物レンズホルダの共振を低減した対物レンズホルダおよびそれを用いた対物レンズ駆動装置、光ピックアップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクに対して光学的に信号の読み取り、あるいは書き込みを行う光学ヘッドにおける対物レンズ駆動装置においては、周知のように、対物レンズ(Objective lens)が取り付けられた対物レンズホルダ(以下、OBLホルダと称する)をアクチュエータフレームに対して変位可能に支持し、フォーカシングコイル及びトラッキングコイル、あるいは必要に応じてチルトコイルをOBLホルダに装着すると共に、これらの駆動コイルの有効領域を磁気回路により形成される所定の磁界内に配置することにより各駆動コイルに供給する信号に応じて対物レンズを駆動する構成となっている。
【0003】
また、対物レンズ駆動装置においては、単一のOBLホルダに記録密度が相違する各光ディスクにそれぞれ対応する異なる開口数の二つの対物レンズをトラッキング方向に並べて配置した構成が知られている。
【0004】
ところで、このような二つの対物レンズを保持するOBLホルダを備えた光ピックアップ装置にあっては、例えばフォーカス制御を行う場合に、共振の発生が懸念されていた。光ピックアップ装置における共振とは、例えば、10kHz程度までの周波数帯域にて甚だしくOBLホルダに不要な共振が生じることを意味する。
【0005】
OBLホルダのフォーカス制御における不要な共振は、光ディスクに保持される情報の読み出し込みや書き込みの動作においてOBLホルダがフォーカス方向にシフトされる場合、磁気回路に発生される所定の磁界中をフォーカシングコイルが変位することでコイルへの有効磁束の印加され方が変化し、フォーカス方向以外の力の成分(例えばトラッキング方向の力の成分や前後方向の成分)がOBLホルダに加わることによって生ずることが知られている。
【0006】
光ピックアップ装置のOBLホルダに共振が生じると、それに保持される二つの対物レンズも振動する。このため、例えば、光ピックアップ装置を備える光ディスク装置において光ディスクのランダムアクセスが行われる場合、光ディスクに対する光ピックアップ装置のシーク時に、光ピックアップ装置が暴走して正常にシークが行われないなどの問題がある。シークとは、ディスク上の指定された位置にピックアップ装置を移動させることを意味する。
【0007】
そこで、フォーカス方向への移動に伴い、フォーカス方向以外の力の発生を防止して、OBLホルダの固有な共振が励起されることを防止する構成が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0008】
図14は、従来のOBLホルダ521(例えば特許文献1に記載のレンズホルダ)をトラッキング方向からみた側面概略図である。
【0009】
光ピックアップ装置の小型化、軽量化および低コスト化に伴い、OBLホルダも簡素化、軽量化が進み、現在では樹脂射出金型を用いて、保持面522に2つの平板状脚部525、526を設けて略U字状(門型)構造に成形されたものが提供されている。
【0010】
このような構造では、対向する2つの平板状脚部525、526が図14におけるフォーカス方向(Df方向)上端部のみで保持面522に接続しており、フォーカス方向以外の力の成分が、OBLホルダ521の腹(特に変形しやすい個所)に作用すると、OBLホルダ521の平板状脚部525、526が例えばタンジェンシャル方向(Dt方向)に開閉する変形が生じやすくなる。そしてこの開閉が繰り返される振動モードには、OBLの上下振動成分も含まれており、フォーカス方向の正規の振動以外の、いわゆる、不要な共振が誘発される。
【0011】
これを防ぐために、特許文献1では、フォーカシングコイルを追加するなどして磁気回路を改良し、フォーカス方向以外の力の成分の発生を防止している。
【0012】
また、図15は、OBLホルダ521の共振特性の変化を抑制する、従来の他の構成を示す図である。図15は対物レンズ駆動装置の、主にOBLホルダ521とマグネット部分を抜き出して示した、斜視図である。
【0013】
OBLホルダ521は、図14に示すものと同様の略U字状構造体であり、平板状脚部525、526にはそれぞれ、トラッキング方向(Dr方向)に沿って並ぶ不図示の3つの駆動コイル(第1フォーカシングコイル、トラッキングコイル、第2フォーカシングコイル)が配置されている。これらの駆動コイルを挟むように、それぞれの平板状脚部525、526に対向してそれぞれ2組の第1マグネット534a、534b、535a、535bが配置される。更に第1マグネット534a、534bに対向して第2マグネット536が配置され、第1マグネット535a、535bに対向して第2マグネット537が配置される。第1マグネット534a、534b、535a、535bおよび第2マグネット536、537はそれぞれ単極に着磁されている。
【0014】
この場合、第1マグネットは、フォーカス方向のシフトによる共振特性に対して変化が少ない形状とし、第2マグネットによって共振特性の変化を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2010−135021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記の如く、軽量化した略U字状構造のOBLホルダ521における不要な共振の誘発を防ぐため、特許文献1や図15に示す従来構造では、フォーカシングコイルや、マグネットを追加することにより磁気回路を改良し、フォーカス方向以外の力の成分の発生を防止している。
【0017】
しかし、フォーカシングコイルやマグネットを追加する方法では、これらを制御する磁気回路が複雑になる問題があった。また、従来の方法では、フォーカシングコイルやマグネットなど部品点数が増加し(例えば図15に示す従来構造では計6個のマグネットが必要である)、組立工数の増加や製造コストが高騰する問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明はかかる課題に鑑みてなされ、第1に、光ピックアップ装置の対物レンズ駆動装置に移動可能に支持され、第1対物レンズと第2対物レンズとを保持する対物レンズホルダが、前記第1対物レンズの第1保持部と前記第2対物レンズの第2保持部とが長辺に沿って並んで設けられた矩形状の保持面と、該保持面の対向する2つの長辺の端部にそれぞれ設けられた2つの平板状脚部と、該2つの平板状脚部の間で、前記保持面の長辺方向における中心より、いずれか一方の保持部に近接して設けられた連結壁と、を具備することにより解決するものである。
【0019】
第2に、上記の対物レンズホルダと、該対物レンズホルダの前記2つの平板状脚部にそれぞれ設けられたコイルと、該コイルを挟んで前記2つの平板状脚部にそれぞれ対向して設けられた2つのマグネットと、前記対物レンズホルダを変位可能に支持するアクチュエータフレームと、を具備する対物レンズ駆動装置を提供することにより解決するものである。
【0020】
第3に、上記の対物レンズ駆動装置をハウジングに搭載する光ピックアップ装置を提供することにより解決するものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば以下の効果が得られる。
【0022】
第1に、OBLホルダの平板状脚部の間に連結壁を設け、連結壁を一方の対物レンズ側に寄せて配置することで、OBLホルダの連結壁付近(一方の対物レンズ側)の剛性を高め、平板状脚部が開閉する振動モードの発生を抑制でき、あるいは振動モードの周波数を対物レンズ駆動装置に一般的に使用される周波数帯域より高い周波数帯域にシフトできる。
【0023】
第2に、磁気回路による共振の制御は、他方の対物レンズ側についてのみ行えばよく、磁気回路の構成を簡素にでき、制御も容易となる。これにより具体的には、1組(2枚)の多極着磁のマグネットと、それぞれに対応した3つの駆動コイル(計6個)で磁気回路を構成でき、部品点数の削減によってコストを低減できる。
【0024】
第3に、連結壁を、OBLホルダに入射されるレーザ光の入射側から遠い対物レンズ側に寄せて設けることで、立ち上げミラーと連結壁が干渉(接触)することを防止できる。
【0025】
第4に、連結壁を剛性の高い材料(金属、スチールなど)で設けることにより、連結壁の厚みを薄くでき、連結壁と、立ち上げミラーやレーザ光の光束との干渉を回避できる。
【0026】
また、OBLホルダの樹脂成形時に連結壁を埋め込むことで、OBLホルダ成形後に連結壁を接着する工程が不要となり、製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態の対物レンズ駆動装置を説明するための平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の対物レンズ駆動装置を説明する斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の(A)磁気回路および対物レンズホルダを説明する斜視図、(B)磁気回路を説明するための斜視図、(C)駆動コイルを説明するための斜視図、(D)マグネットを説明するための斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の対物レンズホルダを説明するための斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の対物レンズホルダを説明するための特性図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の対物レンズホルダを説明するための斜視図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の対物レンズホルダを説明するための特性図である。
【図8】本発明の第1の実施形態の磁気回路を説明するための(A)平面図、(B)平面図、(C)断面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態の対物レンズホルダを説明するための断面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態の対物レンズホルダを説明するための断面図である。
【図11】本発明の第1の実施形態の対物レンズホルダを説明するための断面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態の対物レンズホルダを説明するための断面図である。
【図13】本発明の第3の実施形態の対物レンズホルダを説明するための斜視図である。
【図14】従来技術を説明する断面図である。
【図15】従来技術を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1から図13を参照して、本発明の実施形態について詳述する。
【0029】
図1から図11を参照して、本発明の第1の実施形態を説明する。まず、図1は本実施形態の対物レンズ駆動装置50が備えられる光ピックアップ装置100の概略を示す平面図である。
【0030】
光ピックアップ装置100は、一例としてCD(Compact Disc)規格、DVD(Digital Versatile Disc)規格、およびBD(Blu−ray Disc)規格の各光ディスクに対応する構成となっており、対物レンズ駆動装置50および各種光学部品がハウジング51に設置されて構成されている。
【0031】
対物レンズ駆動装置(アクチュエータ)50は、対物レンズ(Objective lens)ホルダ(以下、OBLホルダ)21を移動可能に保持する。OBLホルダ21は、BD規格に対応する第1対物レンズ31とDVD及びCD規格にそれぞれ対応する第2対物レンズ32とが光ディスク(ターンテーブルTに装着される状態の光ディスク)における径方向(いわゆるトラッキング方向(Dr方向))に沿って、それぞれ内周側及び外周側に並べて装着される。
【0032】
第1対物レンズ31は、例えば、BD規格適合波長のレーザ光に対するNA(Numerical Aperture)が0.85に設計されている。第2対物レンズ32は、入射面に光軸を中心とした輪帯状回折構造(図示せず)が形成され、この回折構造による回折作用により所定次数の回折光がDVD規格、CD規格の各光ディスクの透明基板層の厚みに対して球面収差を適切に補正して集光されるように設計された2波長対応となっており、例えば、DVD規格適合波長のレーザ光に対するNAが0.65に、CD規格適合波長のレーザ光に対するNAが0.51にそれぞれ設計されている。
【0033】
BD用レーザ光源となる第1レーザユニット1はBDに適した青紫色(青色)波長帯395nm〜420nm(例えば405nmの波長)のレーザ光を発光する発光点を有するレーザダイオードにより構成される。
【0034】
DVD及びCD用レーザ光源となる第2レーザユニット3は同一半導体基板上にDVDに適した赤色波長帯645nm〜675nm(例えば650nmの波長)のレーザ光を発光するDVDレーザ用発光点と、CDに適した赤外波長帯765nm〜805nm(例えば780nmの波長)のレーザ光を発光するCDレーザ用発光点とを有するレーザダイオードにより構成され、例えば単一のレーザユニットでCD記録再生及びDVD記録再生に適合する2波長のレーザ光を発光するマルチレーザユニットになっている。
【0035】
第1レーザユニット1の発光点から出射されるBD適合波長のレーザ光の光路は周知のものと同様であるので詳細な説明は省略するが、一例として概略を説明すると以下の通りである。すなわち、BD適合波長のレーザ光は、回折格子6、1/2波長板7、偏光ビームスプリッタ8、コリメータレンズ9、反射ミラー11、1/4波長板12、ビームスプリッタ13を介して、OBLホルダ21のトラッキング方向の開口部分からOBLホルダ21内部の空間に導かれる。
【0036】
OBLホルダ21内部の空間には、第1対物レンズ31及び第2対物レンズ32のそれぞれ直下に第1立ち上げミラー及び第2立ち上げミラー(いずれも不図示)が配置されている。OBLホルダ21内部の空間に導かれるBD適合波長のレーザ光は、第1立ち上げミラーにより反射されて第1対物レンズ31に入射される。第1対物レンズ31は対物レンズ駆動装置50によりOBLホルダ21が駆動されることによりフォーカス方向、トラッキング方向及びラジアルチルト方向にそれぞれ制御され、レーザ光は第1対物レンズ31によりBDに適合するNA0.85で集光されてBDの信号層に照射される。
【0037】
BDの信号層により反射されたレーザ光は第1対物レンズ31に戻り、ビームスプリッタ13、1/4波長板12、反射ミラー11、コリメータレンズ9を介して偏光ビームスプリッタ8を透過し、アナモフィックレンズ16によりフォーカスエラー成分となる非点収差が付与されると共に、焦点距離が調整されてBD用光検出器17に導かれる。
【0038】
BD用光検出器17において得られたフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号に応じて、第1対物レンズ31は、対物レンズ駆動装置50により駆動され、フォーカス制御、トラッキング制御及びラジアルチルト制御される。
【0039】
一方、第2レーザユニット3のDVDレーザ用発光点から出射されるDVD適合波長のレーザ光、あるいはCDレーザ用発光点から出射されるCD適合波長のレーザ光の光路の一例も、既知のものと同様であり、概略を説明すると以下の通りである。すなわち、DVD適合波長及びCD適合波長のレーザ光は、1/2波長板が設けられた回折格子4、偏光ビームスプリッタ5、1/4波長板18、反射ミラー15、コリメータレンズ14、ビームスプリッタ13を介して、OBLホルダ21のトラッキング方向の開口部分からOBLホルダ21内部の空間に導かれる。DVD適合波長あるいはCD適合波長のレーザ光は、その空間内に配置される第2立ち上げミラー(不図示)により反射されて第2対物レンズ32に入射される。
【0040】
入射されるDVD適合波長またはCD適合波長のレーザ光に応じて、第2対物レンズ32は対物レンズ駆動装置50によりOBLホルダ21が駆動され、フォーカス方向、トラッキング方向及びラジアルチルト方向にそれぞれ制御される。レーザ光は第2対物レンズ32によりDVDに適合するNA0.65またはCDに適合するNA0.51で球面収差が補正されるように集光されて、DVDまたはCDの信号層に照射される。
【0041】
DVDあるいはCDの光ディスクの信号層により反射されたレーザ光は第2対物レンズ32に戻り、ビームスプリッタ13、コリメータレンズ14、反射ミラー15、1/4波長板18を介して偏光ビームスプリッタ5により反射され、シリンドリカルレンズ10により光ディスクの信号層に対するレーザ光の焦点ズレを示すフォーカスエラー成分となる非点収差が付与された後、DVD及びCD共用の光検出器19に導かれる。
【0042】
DVD及びCD共用の光検出器19において得られたフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号に応じて、第2対物レンズ32対物レンズ駆動装置50により駆動され、フォーカス制御、トラッキング制御及びラジアルチルト制御される。
【0043】
図2は、対物レンズ駆動装置50の構成を説明するための斜視図である。
【0044】
対物レンズ駆動装置(アクチュエータ)50は、アクチュエータ可動部40とアクチュエータフレーム41とからなり、アクチュエータ可動部40はOBLホルダ21と、駆動コイル36、37、38と、マグネット34、35と、支持ワイヤ45とを有する。
【0045】
アクチュエータ可動部40は、支持ワイヤー45によりアクチュエータフレーム41に対してフォーカス方向(Df方向)、トラッキング方向(Dr方向)及びラジアルチルト方向(Drt方向)に変位可能に弾性的に支持される。支持ワイヤー45は、一端がOBLホルダ21の端部に固定され、他端が補助部材43を介して固定基板44に固定されて、アクチュエータフレーム41の1つの側面に対して例えば3本ずつ架設される。この場合、各支持ワイヤー45は、OBLホルダ21側の間隔を固定基板44側の間隔よりわずかに狭まるようにハの字状に架設され、アクチュエータ可動部40のローリング固有振動数を高くしている。また、各支持ワイヤー45は補助部材43に形成されている各孔に片側3本ずつ貫通され、その各孔に充填されるダンプ剤(不図示)に囲繞されて制振が図られている。
【0046】
OBLホルダ21は、長辺と短辺を有する矩形状の保持面22と、その2つの長辺側の端部にそれぞれ設けられた平板状脚部25、26を有し、保持面22は、長辺方向に沿って、第1対物レンズ31と第2対物レンズ32が並んで保持される。
【0047】
平板状脚部25、26には、それぞれ、駆動コイル36、37、38が設けられ、これらに対向して、マグネット34、35が配置される。マグネット34、35はそれぞれ、各駆動コイル36、37、38の有効領域に有効磁束を発生させる。各駆動コイル36、37、38はアクチュエータ可動部を駆動するのに有効に作用する。つまりこれらによって、対物レンズ駆動装置50の磁気回路が構成される。各駆動コイルへ36、37、38の駆動信号の供給は支持ワイヤー45を経由して行われる。
【0048】
BD、DVDおよびCDの各適合波長のレーザ光Lは、矢印のごとく、OBLホルダ21の、第2対物レンズ32側のトラッキング方向の開口部分から入射される。
【0049】
図3を参照して、対物レンズ駆動装置50の磁気回路について説明する。図3(A)は、対物レンズ駆動装置50における本実施形態の磁気回路の主要部を示す斜視図であり、図3(B)はマグネット34、35と駆動コイル36、37、38の形態を示す斜視図であり、図3(C)は各駆動コイル36、37、38の斜視図であり、図3(D)マグネット34、35の斜視図である。
【0050】
図3(A)を参照して、OBLホルダ21は、保持面22と、保持面22の端部に沿って設けられた対向する二つの平板状脚部25、26とを有し、保持面22には第1対物レンズ31と第2対物レンズ32が保持される。またOBLホルダ21の内部空間には、二つの平板状脚部25、26の間を接続する連結壁27が設けられているが、これについては後に詳述する。
【0051】
図3(A)(B)を参照して、OBLホルダ21の外側面を構成する平板状脚部25、26の主面には、それぞれ、トラッキングコイル36、第1フォーカシングコイル37および第2フォーカシングコイル38の各駆動コイルが装着される。
【0052】
トラッキングコイル36は、中央部に配置され、トラッキング方向(Dr方向)と直交するタンジェンシャル方向(Dt方向)に巻回軸を有して角を丸めた矩形状に巻回される。第1フォーカシングコイル37及び第2フォーカシングコイル38はトラッキングコイル36の両側に設けられ、それぞれ、タンジェンシャル方向に巻回軸を有して角を丸めた矩形状に巻回される。これらの各駆動コイルは、第1対物レンズ31(あるいは第2対物レンズ32)の光軸LZを通るトラッキング方向の仮想線Pに対して線対称に配置されている。
【0053】
尚、本実施形態では第1、第2フォーカシングコイル37、38に別の駆動信号を付与することで、チルトコイルの代替にしている。
【0054】
そして一対のマグネット34、35が、OBLホルダ21を挟んで対向させて配置される。具体的には、平板状脚部25側では、トラッキングコイル36、第1フォーカシングコイル37および第2フォーカシングコイル38を挟んでこれらと対向するマグネット34が設けられ、平板状脚部26側では、トラッキングコイル36、第1フォーカシングコイル37および第2フォーカシングコイル38を挟んでこれらと対向するマグネット35が設けられる。
【0055】
図3(B)(C)を参照して、一対のマグネット34、35はそれぞれ、多極に着磁される。具体的には、トラッキングコイル36の、第1対物レンズ31(あるいは第2対物レンズ32)の光軸LZ方向の各有効辺領域にそれぞれ互いに逆極性の磁極面を相対させるべく、トラッキング方向の中央に磁極境界が形成されるように着磁され、その磁極境界を境に図中右側がN極に、図中左側がS極に設定されている。ここで、トラッキングコイル36の有効辺とは、矩形状のトラッキングコイル36の各辺のうち、トラッキング方向に駆動力を発生させるのに有効な向きに駆動電流が流れる辺をいう。
【0056】
同時に、一対のマグネット34、35はそれぞれ、第1フォーカシングコイル37及び第2フォーカシングコイル38の第1対物レンズ31(あるいは第2対物レンズ32)の光軸LZ方向と直交する方向となる各有効辺領域にそれぞれ互いに逆極性の磁極面を相対させるべく、トラッキング方向およびフォーカス方向に延びるL字状に磁極境界が形成されるように着磁され、図中右側のN極部分の右下方が矩形状にS極に設定され、図中左側のS極部分の左下方が矩形状にN極に設定されている。そして、一対のマグネット34、35のそれぞれの磁極は、各駆動コイルと同様に仮想線Pに対して線対称に設定されている。
【0057】
平板状脚部25と平板状脚部26において、それぞれのトラッキングコイル36は、実線の矢印の如く、同一方向から見て互いに巻回方向が逆向きに設定されている。同様にそれぞれの第1フォーカシングコイル37および第2フォーカシングコイル38も、同一方向から見て互いに巻回方向が逆向きに設定されている。このように同一方向から見て互いに巻回方向が逆向きになることで、対応する各マグネット34、35の磁極面からそれぞれ見た場合に巻回方向が同一となる。
【0058】
一対のマグネット34、35のそれぞれの磁極は、仮想線Pに対して線対称に設定されているので、トラッキングコイル36の縦方向(第1対物レンズ31の光軸LZ方向)の有効辺領域にそれぞれ流されるトラッキング駆動信号に対してマグネット34、35により発生される磁束が各トラッキングコイル36に有効に作用するようになっている。その為、各トラッキングコイル36にトラッキング駆動信号が供給されると、そのトラッキング駆動信号の向きに応じてアクチュエータ可動部が対物レンズの光軸方向と直交するトラッキング方向に駆動される。
【0059】
また、一対のマグネット34、35のそれぞれの磁極は、第1フォーカシングコイル37および第2フォーカシングコイル38の横方向(第1対物レンズ31の光軸LZ方向と直交する方向)の有効辺領域にそれぞれ流されるフォーカス駆動信号に対してマグネット34、35により発生される磁束が有効に作用するようになっている。第1フォーカシングコイル37、第2フォーカシングコイル38のそれぞれの有効辺とは、矩形状の各フォーカシングコイルの各辺のうち、フォーカス方向に駆動力を発生させるのに有効な向きに駆動電流が流れる辺である。
【0060】
しかも、平板状脚部25側において、第1フォーカシングコイル37と第2フォーカシングコイル38は、巻回方向が逆向きに設定されている。第1フォーカシングコイル37と第2フォーカシングコイル38とでは相対されるマグネット34、35の磁極が逆極性になっているので、第1フォーカシングコイル37と第2フォーカシングコイル38とは同時に供給されるフォーカス駆動信号に対して同一方向のフォーカス方向に駆動力が発生する。このことは、平板状脚部26側についても同様である。
【0061】
図4は、OBLホルダ21を示す斜視図である。図4(A)はOBLホルダ21をフォーカス方向の下方から見た斜視図であり、図4(B)はOBLホルダ21に第1対物レンズ31および第2対物レンズ32を搭載した状態で、フォーカス方向の上方から見た斜視図である。
【0062】
OBLホルダ21は、例えば液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer(Plastic);LCP)などの樹脂材料により樹脂成形金型を用いて成形され、OBLホルダ21の保持面22は、トラッキング方向(Dr方向)に沿う長辺と、タンジェンシャル方向(Dt方向)に沿う短辺を有する矩形状であり、その主面にトラッキング方向に沿って並ぶ第1保持部23と第2保持部24を有する。第1保持部23には第1対物レンズ31が搭載され、第2保持部24には第2対物レンズ32が保持される。
【0063】
平板状脚部25は、トラッキング方向(Dr方向)に沿う長辺と、フォーカス方向(Df方向)に沿う短辺を有する矩形状で、その長辺を保持面22の一つの長辺と一致させるように保持面22の端部に沿って設けられる。
【0064】
同様に、平板状脚部26は、トラッキング方向(Dr方向)に沿う長辺と、フォーカス方向(Df方向)に沿う短辺を有する矩形状で、その長辺を保持面22の他の長辺と一致させるように保持面22の端部に沿って設けられ、平板状脚部25と対向する。
【0065】
このように本実施形態のOBLホルダ21は、保持面22の主面と、これに対してその主面がそれぞれ略直交するように対向配置された2つの平板状脚部25、26によって、タンジェンシャル方向に沿う断面において略U字状(門型構造)を構成する構造体である。
【0066】
更に、本実施形態では、OBLホルダ21に連結壁27を設ける。連結壁27は、2つの平板状脚部25、26の間に設けられてこれらを接続する。
【0067】
連結壁27は、フォーカス方向に延びる辺Efと、タンジェンシャル方向に延びる辺Etによって構成される主面を有する平板状であり、当該主面が、2つの平板状脚部25、26及び保持面22のいずれに対しても略直交するように配置される。つまり、連結壁27の一つの辺Etが保持面22と当接し、連結壁27の対向する2つの辺Efがそれぞれ平板状脚部25、26とそれぞれ当接する。
【0068】
連結壁27の辺Etの対向位置にある下端部27aは、例えば所定の曲率を有する円弧状に切欠きが設けられている。この切欠きは、BD適合波長のレーザ光の光束(第1保持部23の瞳径(アパーチャ径)+マージン分の大きさ)を遮らない形状および大きさとする。尚、BD適合波長のレーザ光の光束を遮らなければ、切欠きの形状は例えば台形状などであってもよい。
【0069】
更に、連結壁27は、第1保持部23と第2保持部24の間に設けられ、詳細には、保持面22のトラッキング方向における中心より第1保持部23側により近接して設けられる。ここで、第1保持部23と第2保持部24において、第1保持部23は、レーザ光Lの入射側から遠い位置にある。
【0070】
すなわち、図4(A)において、OBLホルダ21のトラッキング方向の左端部から連結壁27までの距離L1は、OBLホルダ21のトラッキング方向の右端部(レーザ光Lの入射側)から連結壁27までの距離L2よりも小さい。尚、連結壁27は第1保持部23の内側まで入りこむことはない。
【0071】
連結壁27は、例えば、保持部22および平板状脚部25、26と一体に、すなわち、OBLホルダ21の成形金型により一体で樹脂成形され、その厚みDは例えば、OBLホルダ21の最薄部と同等である。
【0072】
このように本実施形態のOBLホルダ21は、トラッキング方向から見ると、保持面22、平板状脚部25、26で構成される逆向きの略U字状(門型)構造体の内壁にアーチ状の連結壁27が設けられた構成となっている。
【0073】
トラッキング方向を長辺とし、フォーカス方向を短辺として対向配置される平板状脚部25、26の間を、これらの主面に直交するように連結壁27で接続することにより、連結壁27が設けられた近傍の、OBLホルダ21の剛性を高めることができる。
【0074】
つまり、第1対物レンズ31が装着される第1保持部23近傍の、平板橋脚部25、26が開閉する変形を抑制でき、第1対物レンズ31近傍におけるOBLホルダ21の振動モードの発生を抑制するか、振動モードの周波数帯域(共振する周波数帯域)を、一般的な光ディスクの駆動に使用される周波数帯域(例えば5kHz)より高い帯域にシフトすることができる。
【0075】
これについて図5を参照して更に説明する。図5は、従来構造(図14)のOBLホルダ521と本実施形態のOBLホルダ21のそれぞれに、第1対物レンズ(BD用OBL)31と第2対物レンズ(DVD/CD用OBL)を装着した場合の、それぞれのOBLのフォーカス制御における高次共振のゲインについて周波数応答特性をシミュレーションした結果であり、縦軸がゲイン[dB]、横軸が対物レンズ駆動装置50の駆動電流の振動数(周波数)[Hz]である。
【0076】
本実施形態のOBLホルダ21の第1対物レンズ31の場合を実線、第2対物レンズ32を破線で示す。また従来構造のOBLホルダ521の第1対物レンズを一点鎖線、第2対物レンズ32を二点鎖線で示す。
【0077】
このグラフにおいて、ゲインが増減するように変化する部分が、共振振動している状態を示す。これより、従来構造のOBLホルダでは、第1対物レンズ(一点鎖線)および第2対物レンズ(二点鎖線)のいずれについても、約4kHzと約10kHz付近で共振振動(細実線丸印)が確認できる。
【0078】
これに対し、本実施形態のOBLホルダ21では、第1対物レンズ(実線)および第2対物レンズ(破線)のいずれについても、太実線丸印の如く、約4kHz付近の共振振動を約9kHz付近まで高めることができ、約10kHz付近の共振振動を約16kHz付近まで高めることができる。
【0079】
特に、9kHz付近においては、殆ど共振していないことがわかる。また、光ディスクの高速回転で使用する振動数は、一般的に10kHz程度(又はそれ以下)であるので、OBLホルダ21の共振振動(振動モードの周波数)を16kHz程度まで高める(シフトする)ことで、通常の光ディスクの駆動に影響を及ぼすことを回避できる。
【0080】
特に、連結壁27の位置を、保持面22のトラッキング方向における中心位置よりも第1保持部23側にシフトすることにより、第1保持部23で保持される第1対物レンズ31の主点付近を平板橋脚部25、26が開閉する振動モードの節にすることができる。
【0081】
図6は、振動モードにおけるOBLホルダ21を示す斜視図である。
【0082】
連結壁27と、第1保持部23近傍の平板状脚部25、26とで区画された領域においては、第1対物レンズ31の第1保持部23付近が、振動振幅が小さい部分になる。つまりこの場合、第1対物レンズ31の主点付近が振動モードの節となり、図の如く、第1保持部23側の平板状脚部25、26が開閉する変形は少ない。
【0083】
これに対し、振幅が大きいままの第2対物レンズ32(第2保持部24)側は、平板状脚部25、26が開閉する変形が生じやすい。
【0084】
つまり、この振動モードに対しては、第2対物レンズ32側のみについて、OBLホルダ21の共振抑制のための磁気回路での調整を行えばよく、これにより磁気回路を簡素にできる。
【0085】
図7は、OBLホルダ21に、第1対物レンズ(BD用OBL)31と、第2対物レンズ(DVD/CD用OBL)32を装着した場合の、フォーカス制御における高次共振の位相について、周波数応答特性をシミュレーションした結果であり、縦軸が位相[deg]、横軸が対物レンズ駆動装置50の駆動電流の振動数(周波数)[Hz]である。
【0086】
これらはすなわち、磁気回路を構成する駆動コイル36、37、38およびマグネット34、35の磁極境界が所定の位置関係にある場合において、これに対する第1対物レンズ31と第2対物レンズ32の所定位置をシミュレーションの基準位置とし、その基準位置から第1対物レンズ31と第2対物レンズ32の位置を変位させた場合の、周波数応答での位相の変化の様子を示している。
【0087】
図7(A)が第1対物レンズの場合であり、シミュレーションにおける基準位置からフォーカス方向に、第1対物レンズ31の位置を+0.3mm(二点鎖線)、+0.4mm(一点鎖線)、+0.5mm(破線)、+0.6mm(実線)変位させた場合の位相を示す。
【0088】
また、図7(B)が第2対物レンズの場合であり、シミュレーションにおける基準位置からフォーカス方向に、第2対物レンズ32の位置を−0.2mm(二点鎖線)、0.1mm(一点鎖線)、0.0mm(実線)、0.1mm(破線)変位させた場合の位相を示す。
【0089】
つまり、第1対物レンズ31は、連結壁27によって付近のOBLホルダ21の剛性が高められているため、フォーカス制御によって、フォーカス方向に例えば0.3mmから0.6mmの間で変位した場合であっても、それらの位置における高次共振の位相の変化はほとんどないといえる。
【0090】
これに対し、第2対物レンズ32では、フォーカス制御によって、例えば−0.2mmから0.1mmの間で変位すると、それらの位置における高次共振の位相の変化が大きく、又位置によりばらつきがある。
【0091】
従って、第2対物レンズ32側についてのみ、共振が小さくなるように磁気回路を調整する。すなわち、図7(B)においては、シミュレーションにおける基準位置からの距離が0.0mm(実線)の場合が共振による位相の変化が小さいと判断できるので、実際の、第2対物レンズ32のフォーカス方向の動作の(フォーカス制御の設計の)基準点をシミュレーションの基準位置(基準位置から0.0mmの位置))にあわせる。つまり、実線の特性が得られるように、磁気回路と第2対物レンズ32の動作の基準点の位置とを適切に調整する。
【0092】
図8は、磁気回路の調整の一例を説明するための概略図であり、図8(A)(B)が一つの平板状脚部25における、マグネット34と第2フォーカシングコイル38の位置関係を重ねて示す平面図であり、平板状脚部26側も同様である。また、図8(C)は、第2対物レンズ32部分のタンジェンシャル方向における断面図である。
【0093】
磁気回路は、図8(A)の如く、第2フォーカシングコイル38の有効領域に有効磁束を発生させるマグネット34の磁極境界の位置をフォーカス方向(Df方向)に変位させることで調整できる。
【0094】
あるいは、磁気回路は、図8(B)の如くOBLホルダ21の、第2フォーカシングコイル38の装着位置をフォーカス方向(Df方向)に変位させることで調整できる。
【0095】
マグネット24と第2フォーカシングコイル38は一方のみを調整してもよく、両方を同時に調整してもよい。
【0096】
そして、図7(B)の実線で示すような周波数応答特性が得られるマグネット34、35と第2フォーカシングコイル38の位置関係が図8(C)の状態であった場合、その第2対物レンズ32の位置を、当該第2対物レンズ32の動作の基準点としてフォーカス制御のための各種設計を行う。
【0097】
このように本実施形態では、連結壁27を設けることにより、第2対物レンズ32側についてのみ共振が抑制できるように、磁気回路を調整すればよく、磁気回路の構成を簡素にすることができる。具体的には、図3に示すように、OBLホルダ21の平板状脚部25、26に設ける計6個の駆動コイル36、37、38と、平板状脚部25、26のそれぞれに対向配置する多極着磁の一対(2枚)のマグネット34、35のみで磁気回路を構成でき、低コスト化が実現する。マグネット34、35を多極着磁とすることで部品点数を削減でき、各駆動コイル36、37、38もサイズを小さくできる。
【0098】
また、磁気回路の調整(設計)も、第2対物レンズ32側のみについて行えばよく、調整が容易となる。
【0099】
次に、図9から図11を参照して、連結壁27の位置について更に説明する。これらは図4(B)のa−a線の断面図である。
【0100】
OBLホルダ21の内部空間には、第1対物レンズ31の直下に第1立ち上げミラーML1が設けられ、第2対物レンズ32直下に第2立ち上げミラーML2が設けられる。そして、第1立ち上げミラーML1および第2立ち上げミラーML2は、OBLホルダ21に対して移動し、これらの位置関係は、図9から図11で示す6つの状態がある。
【0101】
図9(A)は状態1(初期位置)を示し、BD適合波長のレーザ光L(矢印)が入射する場合に、第1対物レンズ31が下方(下位置)に動作する状態である。レーザ光Lは、第2立ち上げミラーML2を透過し、第1立ち上げミラーML1によって、フォーカス方向(Df方向)に反射され、第1対物レンズ31で集光される。
【0102】
図9(B)は、状態2(DVD/CD下移動位置)を示し、DVD/CD適合波長のレーザ光L(矢印)が入射する場合に、第2対物レンズ32が最も下方(最下限位置)に動作する状態である。レーザ光Lは、第2立ち上げミラーML2によって、フォーカス方向(Df方向)に反射され、第2対物レンズ32で集光される。
【0103】
図10(A)は、状態3(BD上移動位置)を示し、BD適合波長のレーザ光L(矢印)が入射する場合に、第1対物レンズ31が上方(上位置)に動作する状態である。レーザ光Lは、第2立ち上げミラーML2を透過し、第1対物レンズ31直下に設けられた第1立ち上げミラーML1によって、フォーカス方向(Df方向)に反射され、第1対物レンズ31で集光される。
【0104】
図10(B)は、状態4(BD中央位置)を示し、BD適合波長のレーザ光L(矢印)が入射する場合に、第1対物レンズ31が、上位置(図10(A))と下位置(図9(A)の中間の位置に動作する状態である。レーザ光Lは、第2立ち上げミラーML2を透過し、第1対物レンズ31直下に設けられた第1立ち上げミラーML1によって、フォーカス方向(Df方向)に反射され、第1対物レンズ31で集光される。
【0105】
図11(A)は、状態5(DVD/CD横移動位置)を示し、DVD/CD適合波長のレーザ光(矢印)が入射する場合に、第2対物レンズ32が横(トラッキング方向(Dr方向))に動作する状態である。レーザ光は、第2立ち上げミラーML2によって、フォーカス方向(Df方向)に反射され、第2対物レンズ32で集光される。
【0106】
図11(B)は、状態6(BD横動位置)を示し、BD適合波長のレーザ光L(矢印)が入射する場合に、第1対物レンズ31が横(トラッキング方向)に動作する状態である。レーザ光Lは、第2立ち上げミラーML2を透過し、第1対物レンズ31直下に設けられた第1立ち上げミラーML1によって、フォーカス方向(Df方向)に反射され、第1対物レンズ31で集光される。
【0107】
第1対物レンズ31は、光ディスクまでの距離が小さく、フォーカス方向の可動範囲は上側である。これに対し、第2対物レンズ32は光ディスクまでの距離が大きく、フォーカス方向の可動範囲は下側である。
【0108】
特に、光ディスクに、直接、レーザ光でラベルをレーザーエッチングできるライトスクライブ機能に対応したDVD規格またはCD規格の光ディスクがあるが、これに対応した対物レンズ駆動装置50の場合、第2対物レンズ32の可動範囲は大きくなる(例えば1mm)。又この場合、第1対物レンズ31と第2対物レンズ32の配置は一般的に、図9から図11に示す並び(第1対物レンズ31がレーザ光Lの入射側から遠い位置)となる。
【0109】
従って、第1対物レンズ31と第2対物レンズ32の間に連結壁27を設ける場合には、第2対物レンズ32の下方に設けられる第2立ち上げミラーML2との干渉(接触)が問題となる。加えて、第1立ち上げミラーML1、第2立ち上げミラーML2は、レーザ光Lの光束80との関係で、これ以上小さくすることはできない。
【0110】
このため、本実施形態では、OBLホルダ21のトラッキング方向の中心より第1対物レンズ31に近接した位置に連結壁27を設ける。第1対物レンズ31は、OBLホルダ21に入射されるレーザ光Lの入射側から遠い位置に配置され、この場合の第1立ち上げミラーML1、第2立ち上げミラーML2は、レーザ光Lの入射側が低くなるように傾斜している。従って、第1対物レンズ31側に寄せることで、OBLホルダ21のサイズを変える(大きくする)ことなく、あるいは第1立ち上げミラーML1、第2立ち上げミラーML2のサイズ形態を小さくすることなく連結壁27を配置できる。
【0111】
更に、連結壁(OBLホルダーと一体)が移動する各状態において、連結壁27と第1立ち上げミラーML1、第2立ち上げミラーML2とが干渉しないような形状と位置を、適宜選択する。
【0112】
具体的には、第1立ち上げミラーML1および/または第2立ち上げミラーML2と、連結壁27との干渉(接触)が懸念されるのは、状態2(図9(B))と状態5(図11(A))が同時に生じる場合である。
【0113】
また、状態5が(単独で)生じる場合も、第2立ち上げミラーML2と、連結壁27との干渉(接触)が懸念される。
【0114】
従って、これらのいずれの状態においても、第1立ち上げミラーML1および第2立ち上げミラーML2と干渉しないような位置および形状に、連結壁27が設けられる。
【0115】
次に、レーザ光の光束80との関係においては、連結壁27は、BD適合波長のレーザ光の光束80(第1保持部23の瞳径(アパーチャ径))を遮らないような形状(高さh)および位置に設ける。
【0116】
すなわち、状態1(図9(A))、状態3および状態4(図10)、状態6(図11(B)において、光束80が連結壁27に遮られなければよく、このため、たとえば連結壁27の下端部27aには、例えば光束80を遮らないような形状および大きさの切欠きが設けられる。切欠きの形状と大きさはたとえば、光束80の外周部に沿ってこれより大きい円弧状とする(図9(A)、図4(A)参照)。尚ここでは一例として、連結壁27の高さhは、第1対物レンズ31側および第2対物レンズ32側のいずれの主面においても同等である。
【0117】
ここで、状態2(図9(B))において、連結壁27は、BD適合波長のレーザ光の光束80を遮るが、第2対物レンズ32の駆動時には、BD適合波長のレーザ光が入射されないので、光束80との位置関係としては問題はない。つまり、状態2(図9(B))では連結壁27と第1立ち上げミラーML1および第2立ち上げミラーML2との干渉を避ければ、BD適合波長のレーザ光Lの光束80を遮っても問題ない。
【0118】
連結壁27は、タンジェンシャル方向において平板状脚部25、26の開閉を防ぐよう配置されれば共振の抑制に効果はある。しかしその周囲の剛性を増加させるためには、第1立ち上げミラーML1、第2立ち上げミラーML2およびレーザ光の光束80と干渉しない範囲でできる限り大きい面積を確保すると良い。
【0119】
図12は、第2の実施形態の連結壁27を示す側面図であり、図11に対応した概略断面である。
【0120】
第2の実施形態において、連結壁27はOBLホルダ21と樹脂成形により一体的に形成されている。
【0121】
樹脂成形で連結壁27をOBLホルダ21と一体的に形成する場合は、連結壁27の厚みDを薄くするにも限界がある(図4(A)参照)ので、OBLホルダ21(第2対物レンズ32)が最下限位置まで変位された際に連結壁27の下端部27aが第2立ち上げミラーML2と干渉する場合、連結壁27の下端部27aは、トラッキング方向の断面において、連結壁27の両主面sf1、sf2の高さが異なるように、すなわち第2対物レンズ32側の主面sf2の高さが第1対物レンズ31側の主面sf1の高さより短く(浅く)なるように、傾斜する形状としてもよい。
【0122】
図12の如く下端部27aにテーパを形成することで、第2立ち上げミラーML2との距離を確保できる場合がある。
【0123】
尚、逆向きのテーパを形成すれば、第1立ち上げミラーML1との距離を確保できる場合がある。これ以外の構成は第1の実施形態と同様であるので、説明は省略する。
【0124】
図13を参照して、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0125】
第3の実施形態は、連結壁27を、OBLホルダ21より剛性が高い別の材料で設ける場合である。連結壁27の材料としては例えば金属やスチールなどである。これにより、樹脂成形で一体的に形成する場合と比較して、同等の剛性であっても連結壁27の厚みDを薄くできる。これ以外の構成は、第1の実施形態度同様であるので説明は省略する。
【0126】
連結壁27の厚みDを薄くすることで、低コスト化が実現でき、軽量化も進む。また、厚みDが薄くなると、上記の如く第1立ち上げミラーML1、第2立ち上げミラーML2との干渉も少なくでき、連結壁27の配置の自由度を向上できる。
【0127】
連結壁27をOBLホルダ21と別の材料で設ける場合、OBLホルダ21は、樹脂成型品であるので、樹脂成型時に金属又はスチールの板を埋め込むことで、連結壁27を設けられる。このようにすることで、OBLホルダ21と別の材料であっても、OBLホルダ21の成形後の接着が不要となり、コスト増加を抑制できる。
【符号の説明】
【0128】
21 OBLホルダ
22 保持面
23 第1保持部
24 第2保持部
25、26 平板状脚部
27 連結壁
31 第1対物レンズ
32 第2対物レンズ
34、35 マグネット
36 トラッキングコイル
37 第1フォーカシングコイル
38 第2フォーカシングコイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ピックアップ装置の対物レンズ駆動装置に移動可能に支持され、第1対物レンズと第2対物レンズとを保持する対物レンズホルダであって、
前記第1対物レンズの第1保持部と前記第2対物レンズの第2保持部とが長辺に沿って並んで設けられた矩形状の保持面と、
該保持面の対向する2つの長辺の端部にそれぞれ設けられた2つの平板状脚部と、
該2つの平板状脚部の間で、前記保持面の長辺方向における中心より、いずれか一方の保持部に近接して設けられた連結壁と、を具備することを特徴とする対物レンズホルダ。
【請求項2】
前記連結壁は、前記保持面の下方に入射されるレーザ光の入射側から遠い位置に設けられることを特徴とする請求項1に記載の対物レンズホルダ。
【請求項3】
前記連結壁は、前記保持部および前記平板状脚部と一体に設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の対物レンズホルダ。
【請求項4】
前記連結壁は、前記保持部および前記平板状脚部と異なる材料で設けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の対物レンズホルダ。
【請求項5】
前記連結壁は、前記第1対物レンズのフォーカス方向の駆動時に該第1対物レンズに入射されるレーザ光の光束を妨げない位置に設けられることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の対物レンズホルダ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の対物レンズホルダと、
該対物レンズホルダの前記2つの平板状脚部にそれぞれ設けられたコイルと、
該コイルを挟んで前記2つの平板状脚部にそれぞれ対向して設けられた2つのマグネットと、前記対物レンズホルダを変位可能に支持するアクチュエータフレームと、
を具備する対物レンズ駆動装置。
【請求項7】
前記連結壁は、前記対物レンズホルダの内部空間に配置され、レーザ光を前記第1対物レンズに導く第1立ち上げミラー、およびレーザ光を前記第2対物レンズに導く第2立ち上げミラーのいずれにも接触しない位置に設けられることを特徴とする請求項6に記載の対物レンズ駆動装置。
【請求項8】
前記マグネットはそれぞれ平板状で多極に着磁され、前記2つの平板状脚部にそれぞれ、他のコイルが設けられることを特徴とする請求項7に記載の対物レンズ駆動装置。
【請求項9】
前記第2対物レンズのフォーカス方向の駆動時における高次共振の変化が最も小さい位置が該第2対物レンズのフォーカス方向の駆動の中立位置となるように、前記マグネットと前記コイルの位置が調整されることを特徴とする請求項6から請求項8のいずれかに記載の対物レンズ駆動装置。
【請求項10】
請求項6から請求項9のいずれかに記載の対物レンズ駆動装置をハウジングに搭載した光ピックアップ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−164371(P2012−164371A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21910(P2011−21910)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】