説明

対物レンズ駆動装置,対物レンズ駆動装置の弾性支持部材形成方法,光ピックアップ装置および光ディスク装置

【課題】3軸駆動の対物レンズ駆動装置において薄型化を可能にする。
【解決手段】6本のワイヤばね7を配置し、そのワイヤばね7を、フォーカシング方向に垂直な第1の平面P1上と第2の平面P2上とに、それぞれ3本ずつ略タンジェンシャル方向を長手方向として配置し、第1の平面P1上のワイヤばね7を、対物レンズ保持部材2を含む可動体のトラッキング方向における第1の側面S1側に2本配置し、かつ第1の側面S1と反対側の第2の側面S2側に1本配置し、また第2の平面P2上のワイヤばね7を、第1の側面S1側に1本配置し、かつ第2の側面S2側に2本配置する。これによって、可動部の中心(重心,慣性中心)と駆動中心と支持中心とを容易に一致させることができるため、精度のよい動作を行うことが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的記録媒体である光ディスクに対して記録/再生のために光ビームを集光させる対物レンズをフォーカシング方向とトラッキング方向に駆動させるための対物レンズ駆動装置、およびその対物レンズ駆動装置に用いられる弾性支持部材の形成方法、ならびに,その対物レンズ駆動装置を搭載する光ピックアップ装置,光ディスク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置では、レーザから出射した光束を光ディスクに照射し、その反射光を識別することによって情報を読み取っている。ここで、光ディスク装置に搭載されている対物レンズ駆動装置では、反射光から得られる制御信号を用いて対物レンズを、光ディスクの面振れや偏芯などの動きに追従するように制御することにより、フォーカシング方向とトラッキング方向に駆動し、光ディスクの記録面上にスポットを適正に形成するように構成されている。
【0003】
近年の光ディスクの高密度化に対応するためには、小さなスポットを形成することが必要であり、このためには対物レンズのNAを大きくするか、レーザの波長を短くする必要がある。
【0004】
しかし、NAを大きくしたり、レーザの波長を短くすると、対物レンズの光軸と光ディスクの垂直度がずれることによるコマ収差が発生し易くなり、スポットの品質が劣化する。これによって、記録/再生品質が劣化してしまうという問題が生じる。そのため、光ディスクと対物レンズの傾き精度を向上させることが必要となる。
【0005】
したがって、対物レンズ駆動装置にはフォーカシングやトラッキングしたときに、可動部(対物レンズ)が傾かないようにすることが望まれている(特許文献1,2参照)。
【0006】
最近では、特に傾きに対する精度が厳しくなり、光ディスクと対物レンズの傾き(チルト)を、対物レンズを含む対物レンズ駆動装置の可動部を光ディスクの傾きに合わせてチルト駆動(傾斜動作)を行う3軸駆動の対物レンズ駆動装置を搭載したシステムも提案されている(特許文献3〜5参照)。
【0007】
また一方では、光ディスク装置は、ノートパソコンなど、モバイル用途にも需要があるため、装置を薄く構成することが望まれている。
【0008】
以下、図面を参照して従来の対物レンズ駆動装置について説明する。
【0009】
図15はチルト駆動が可能な対物レンズ駆動装置の従来例を示す斜視図である。
【0010】
図15において、対物レンズ1が対物レンズ保持部材2に保持されており、対物レンズ保持部材2のタンジェンシャル方向における両側の側面には、フォーカシング用とトラッキング用の駆動コイル3が設けられ、さらに、対物レンズ保持部材2のトラッキング方向における両側の側面には中継基板4が設けられて、可動部が構成されている。中継基板4のランド部には駆動コイル3の端子(図示せず)が接続されている。
【0011】
また、磁性体の板金を折り曲げてなるベース5の折り曲げ部はヨーク部5aになっており、ヨーク部5aに駆動磁石6が駆動コイル3と所定のギャップを隔てた位置に対向設置されて設けられ、磁気回路が構成されている。
【0012】
さらに、タンジェンシャル方向を長手方向として、真直なワイヤばね7−1が前記可動部におけるトラッキング方向の両側に、それぞれ3本がフォーカシング方向に並んで配置されており、ワイヤばね7−1の一端は可動部上の中継基板4のランド部に固定され、かつワイヤばね7−1の他端はベース5上に設けられた固定部材8に固定されている。
【0013】
ワイヤばね7−1は、導電性であり、その両端は電気的にも接続されていて、固定部材8側から駆動コイル3に電流を供給することによって、前記磁気回路を作動させ可動部をフォーカシング/トラッキング駆動することができるようになっている。
【0014】
図16はチルト駆動が可能な対物レンズ駆動装置の他の従来例を示す斜視図であり、図15にて説明した部材に対応する部材には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0015】
図16に示すフォーカシング/トラッキング2軸駆動の対物レンズ駆動装置は、ワイヤばねとして、板ばね7−2を樹脂製の対物レンズ保持部材2の側部に突設した突出部10,固定部材8にインサート成型した構成のものである。
【0016】
このような構成では、図17に示すように、3枚の薄い板材9を打ち抜いて棒状の板ばね7−2を精度良く形成することができ、そのまま樹脂部分(対物レンズ保持部材2の突出部,固定部材8)でインサート固定してしまうため、図15に示すようなワイヤばね7−1を半田固定するよりも、支持系の組付け精度を高くすることができる。
【特許文献1】特開2004−13997号公報
【特許文献2】特開2004−95133号公報
【特許文献3】特開2000−149292号公報
【特許文献4】特開2001−118269号公報
【特許文献5】特許第3583074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、図15に示すような対物レンズ駆動装置のようにワイヤばね7−1を配置する場合、中継基板4上では半田接続部のランドのスペースを確保するために、フォーカシング方向の外形が大きくなってしまうため薄型化が難しく、またランド間でショートするなどのおそれがある。
【0018】
薄型にするために、4本のワイヤばねに2本のワイヤばねを追加し、ワイヤばねを2つの平面上に配置する構成の特許文献3,4では、4本のワイヤばねに追加する2本のワイヤばねの剛性を極端に小さくするために、コイル状などの製造上難しい形状にする必要がある。
【0019】
また、特許文献3では、支持中心が光ディスク設置側に寄り過ぎてしまうため、光ディスクを駆動するスピンドルモータを、対物レンズ保持部材などからなる可動部の上方部分にしか配置することができないため、推力が不足するという問題があった。
【0020】
図16に示すような3軸駆動構造の対物レンズ駆動装置では、図17に示すように、板ばね7−2を6本確保するために3枚の板材9が必要になる。このため、板ばね成型が非常に困難になりコストが増加してしまう。また、3枚の板材9の組み付け位置ずれが積み上がるため、フォーカシング/トラッキング動作時にチルトが発生しやすいという問題がある。
【0021】
本発明は、前記従来技術の問題を解決し、3軸駆動の対物レンズ駆動装置において薄型にすることを可能にし、また、一体成型の構成を簡易化し、コストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、光ディスクに対して光ビームを集光させる対物レンズと、対物レンズを保持する対物レンズ保持部材と、該対物レンズ保持部材をフォーカシング方向とトラッキング方向に駆動する電磁駆動部材と、前記対物レンズ保持部材を固定部に対して移動可能に支持する棒状弾性支持部材からなる対物レンズ駆動装置において、前記棒状弾性支持部材を、フォーカシング方向に垂直な第1の平面上と第2の平面上とにそれぞれ3本ずつ略タンジェンシャル方向を長手方向として配置し、前記第1の平面上の前記棒状弾性支持部材を、前記対物レンズ保持部材のトラッキング方向における第1の側面側に2本配置すると共に、前記第1の側面と反対側の第2の側面側に1本配置し、かつ前記第2の平面上の前記棒状弾性支持部材を、前記第1の側面側に1本配置すると共に、前記第2の側面側に2本配置したことを特徴とし、この構成によって、3軸駆動の対物レンズ駆動装置を薄型にすることができ、対物レンズ保持部材などからなる可動部のフォーカシング方向の略中心に支持中心が配置され、例えば光ディスクを駆動するモータの配置面積を増やし推力を大きくすることができる。
【0023】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の対物レンズ駆動装置において、2本配置されている部分の棒状弾性支持部材を、1本配置されている部分の棒状弾性支持部材よりも細く形成し、該棒状弾性支持部材2本で棒状弾性支持部材1本と略同等のばね定数を有するように設定したことを特徴とし、この構成によって、対物レンズ保持部材などからなる可動部を支持する4箇所のばね定数を略等しくすることにより、フォーカシング/トラッキング動作時に発生する対物レンズの傾きを低減することができる。
【0024】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の対物レンズ駆動装置において、2本配置されている部分の棒状弾性支持部材を、1本配置されている部分の棒状弾性支持部材よりも長く形成し、該棒状弾性支持部材2本で1本と略同等のばね定数を有するように設定したことを特徴とし、この構成によって、対物レンズ保持部材などからなる可動部を支持する4箇所のばね定数を略等しくすることにより、フォーカシング/トラッキング動作時に発生する対物レンズの傾きを低減することができる。
【0025】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3いずれか1項記載の対物レンズ駆動装置において、2本配置されている部分の棒状弾性支持部材における対物レンズ保持部材側の端部を、該対物レンズ保持部材の第1の側面と第2の側面とに取り付けられた中継基板を挟んで両側に固定したことを特徴とし、この構成によって、棒状弾性支持部材を中継基板に固定する構成であっても、部品数を減らし、構成を簡単にして、コストを低減することができる。また、隣接した線材が互いに干渉しないようにすることができる。
【0026】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4いずれか1項記載の対物レンズ駆動装置において、2本配置されている部分の棒状弾性支持部材における固定部側の端部の間隔を、対物レンズ保持部材側の端部の間隔よりも広くなるように傾斜させて配置したことを特徴とし、この構成によって、棒状弾性支持部材における固定部側の端部の半田用ランドなどのスペースを確保することができる。
【0027】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5いずれか1項記載の対物レンズ駆動装置において、棒状弾性支持部材を板状体とし、該板状体の端部を対物レンズ保持部材と固定部との少なくとも一方に一体に埋設したことを特徴とし、この構成によって、棒状弾性支持部材の支持構成が簡素化される。
【0028】
請求項7に記載の発明は、請求項6記載の棒状弾性支持部材を形成する方法であって、フォーカシング方向に垂直な2枚の幅広の板ばね部材を前記対物レンズ保持部材と固定部との少なくとも一方に一体に成型し、不要部を除去して複数の幅狭の板状体を形成し、前記棒状弾性支持部材とすることを特徴とし、この方法によって、板ばね部材2枚から棒状弾性支持部材6本からなる3軸駆動の対物レンズ駆動装置を構成することができる。
【0029】
請求項8に記載の発明は、光ピックアップ装置において、光ディスクに対して照射光を発する光源と、前記光ディスクからの反射光を受光する受光光学系と、請求項1〜6いずれか1項記載の対物レンズ駆動装置とを備えたことを特徴とし、この構成によって、光ディスクと対物レンズの傾きずれを小さくすることにより、良好な信号を得ることができ、かつ薄型の対物レンズ駆動装置を搭載することにより、薄型化が可能になる。
【0030】
請求項9に記載の発明は、光ピックアップ装置において、光ディスクに対して照射光を発する光源と、前記光ディスクからの反射光を受光する受光光学系とを備え、請求項1記載のフォーカシング方向に垂直な第1の平面と第2の平面とにおいて、前記第1の平面をフォーカシング方向において前記第2の平面よりも光ディスク側に設定し、前記第2の平面とフォーカシング方向で重なる位置において、請求項1記載の第1の側面の方向から請求項3記載の対物レンズ駆動装置に対して前記光源から光ビームを入射させたことを特徴とし、この構成によって、光ディスクと対物レンズの傾きずれを小さくすることにより、良好な信号を得ることができ、かつ対物レンズ駆動装置と光学系をフォーカシング方向に重なった位置にレイアウトすることにより、さらなる薄型化が可能になる。
【0031】
請求項10に記載の発明は、光ディスク装置において、光ディスクを回転駆動する回転駆動部材と、前記光ディスクの半径方向に移動自在に設けられた請求項8または9記載の光ピックアップ装置とを備えたことを特徴とし、この構成によって、良好な信号が得られる光ピックアップを用いることにより、データの読み書きを良好に行うことが可能になる。
【0032】
請求項11に記載の発明は、光ディスク装置において、光ディスクを回転駆動する回転駆動部材と、前記光ディスクの半径方向に移動自在に設けられた光ピックアップ装置とを備え、請求項1記載のフォーカシング方向に垂直な第1の平面と第2の平面とにおいて、前記第1の平面をフォーカシング方向において前記第2の平面よりも光ディスク側に設定し、請求項1記載の第2の側面側が前記光ディスクの内周側となるように請求項3記載の対物レンズ駆動装置を配置したことを特徴とし、この構成によって、良好な信号が得られる光ピックアップ装置を用いることにより、データの読み書きを良好に行うことが可能になり、また、例えば光ピックアップ装置がディスク最内周に移動したときに、光ディスクのターンテーブルと対物レンズ駆動装置の棒状弾性支持部材とが干渉し難くなる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、3軸駆動の対物レンズ駆動装置を、対物レンズ保持部材などからなる可動部のフォーカシング方向の略中心に支持中心を配置することができ、しかも、薄型に構成することが可能になる。
【0034】
また、3軸駆動の対物レンズ駆動装置における棒状弾性支持部材を一体成型して、構成を簡易化し、コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0036】
図1は本発明の実施形態1を説明するための対物レンズ駆動装置の斜視図、図2は実施形態1の対物レンズ駆動装置の一部断面図である。
【0037】
図1において、対物レンズ1が対物レンズ保持部材2に保持されており、対物レンズ保持部材2のタンジェンシャル方向における両側の側面には、対物レンズ保持部材2をフォーカシング,トラッキング,チルト制御するための駆動コイル3が設けられ、さらに、対物レンズ保持部材2のトラッキング方向における両側の側面には中継基板4が設けられて、可動部が構成されている。中継基板4のランド部には駆動コイル3の端子(図示せず)が接続されている。
【0038】
また、磁性体の板金を折り曲げてなるベース5の折り曲げ部はヨーク部5aになっており、ヨーク部5aに駆動磁石6が駆動コイル3と所定のギャップを隔てた位置に対向配置されて設けられ、磁気回路が構成されている。
【0039】
さらに、タンジェンシャル方向を長手方向として、棒状弾性支持部材である真直なワイヤばね7がタンジェンシャル方向からみて前記可動部の4隅のうち1つの対角部には2本ずつ、他方の対角部には1本ずつ、合計6本が配置されている。
【0040】
ワイヤばね7の一端は可動部上の中継基板4のランド部に固定され、ワイヤばね7の他端はベース5の固定部材8に固定されている。本実施形態では、中継基板4の裏面(可動部側)に空間を有するようにしており、隣接した2本のワイヤばね7における可動部側の一端を中継基板4を挟んで両側に固定することができるようになっている。
【0041】
対物レンズ保持部材2および駆動コイル3などの可動部と、ワイヤばね7と、中継基板4との位置関係を、タンジェンシャル方向から見た図が図2である。ただし、図2では半田は省略している。
【0042】
ワイヤばね7は、導電性であり、その両端は各部に電気的に接続されている。可動部に取り付けられている駆動コイル3は、フォーカシングコイル3a,トラッキングコイル3b,ラジアルチルトコイル3cであって、固定部材8からそれぞれの駆動コイル3に電流を流すことによって、前記磁気回路を作動させて、フォーカシング,トラッキング,チルトの各制御のために可動部を駆動するようになっている。
【0043】
実施形態1では、図2に示すように、6本のワイヤばね7が配置され、そのワイヤばね7が、フォーカシング方向に垂直な第1の平面P1上と第2の平面P2上とに、それぞれ3本ずつ略タンジェンシャル方向を長手方向として配置され、第1の平面P1上のワイヤばね7は、対物レンズ保持部材2を含む可動体のトラッキング方向における第1の側面S1側に2本配置され、かつ第1の側面S1と反対側の第2の側面S2側に1本配置され、また第2の平面P2上のワイヤばね7は、第1の側面S1側に1本配置され、かつ第2の側面S2側に2本配置されている。
【0044】
このため実施形態1において、可動部の中心(重心,慣性中心)と駆動中心と支持中心とを容易に一致させることができるため、精度のよい動作を行うことが可能である。
【0045】
図3は実施形態1の変形例1を示す斜視図であり、図1,図2に示すような構成では、ワイヤばね7の固定部材8側の端部を固定するランドのスペースが狭くなってしまうので、変形例1では、隣接する2本のワイヤばね7の一方について、固定部材8側における端部の間隔Gが可動部の中継基板4における端部の間隔よりも広くなるように傾斜させてている。
【0046】
図4は実施形態1の変形例2を示す斜視図であり、図1,図2に示す構成のように、ワイヤばね7において、2本隣接する部分(図4ではA部のワイヤばね)と、1本の部分(図4ではB部のワイヤばね)とにおいて同じ線径にしておくと、タンジェンシャル方向からみて対角方向の線を軸として、可動部が傾いてしまう場合がある。変形例2では、これを防ぐために、2本が隣接する部分Aのワイヤばね7の線径を、1本単独の部分Bよりも細く形成することにより、バランスをとるようにしている。
【0047】
図5は本発明の実施形態2を説明するための対物レンズ駆動装置の斜視図、図6は実施形態2の対物レンズ駆動装置の一部断面図である。なお、以下の説明において、図1〜図4にて説明した部材に対応する部材には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0048】
実施形態2は、実施形態1とは可動部を支持している棒状弾性支持部材の構成が異なる。
【0049】
図5において、対物レンズ保持部材2のトラッキング方向の側面には突出部10が形成されており、この突出部10と固定部材8とに、タンジェンシャル方向を長手方向とした棒状弾性支持部材である棒状板ばね11がインサート成型されている。6本の棒状板ばね11の配置は、図5に示すように、実施形態1と同じである。
【0050】
なお、棒状板ばね11(あるいはワイヤばね7)の端部は両端でなく、突出部10と固定部材8とのいずれか一方にインサート成型して一体化するようにしてもよい。
【0051】
図7は実施形態2の棒状板ばね11の製造方法を説明するための斜視図であり、6本の棒状板ばね11は、もともと薄く幅広の弾性を有する板材12を打ち抜いた形状をしており、この板材12を、成型金型上に2枚所定の間隔を隔てて位置決めした上で、対物レンズ保持部材2の突出部10と固定部材8の形成部位に、樹脂を流し込んで成型することにより、図7に示すような部品となる。
【0052】
実施形態2の対物レンズ駆動装置は、前記板材12における不要部(枠の部分)を除去したものを使用して組み付けられている。除去されずに残った棒状板ばね11部分は、図6に示すように、タンジェンシャル方向からみて、可動部の4隅のうち1つの対角部に2本ずつ、他方の対角部には1本ずつ、合計6本が配置される。
【0053】
また、図示していないが、棒状板ばね11のばね機能を果たさない部分を、インサートされた樹脂部分から僅かに突出させ、この突出部位において駆動コイル3の端子と接続させることにより、固定部材8から駆動コイル3への電流供給を行う構成にすることも可能である。
【0054】
図8は実施形態2の変形例1を示す斜視図であり、図5〜図7に示す構成のように、棒状板ばね11が2本隣接する部分(図8ではA部の棒状板ばね)と、1本の部分(図8ではB部の棒状板ばね)とにおいて、棒状板ばね11の長手方向の長さを同じにしておくと、タンジェンシャル方向からみて対角方向の線を軸とした回転方向に可動部が傾いてしまう場合がある。これを防ぐために、本変形例1では、2本が隣接する部分Aのワイヤばね11の長さを、1本単独の部分Bよりも長く形成することによってバランスをとるようにしている。
【0055】
このとき、棒状板ばね11の可動部側の固定端を、対物レンズ保持部材2のトラッキング方向の側面に、タンジェンシャル方向にオフセットされた状態で突設した一対の突出部10a,10bに固定することにより、固定部材8側における棒状板ばね11の端部の長さが一致することになるので、対物レンズ駆動装置をコンパクトに構成することができる。
【0056】
図9は本発明に係る対物レンズ駆動装置を搭載した光ピックアップ装置の実施形態1の概略構成図である。
【0057】
図9において、21は光ディスクDに対向するように対物レンズ1が備えられている対物レンズ駆動装置、22は光ピックアップ装置であって、光ピックアップ装置22は、光源23、コリメートレンズ24、ビームスプリッタ25、立上げミラー26、集光レンズ27、シリンドリカルレンズ28、受光素子29から構成される光学系30を具備している。
【0058】
光ピックアップ装置22に搭載されている光源23から出射した拡散光は、コリメートレンズ24によって略平行光にされ、その後、ビームスプリッタ25を通り、立上げミラー26により偏向される。立上げミラー26によって偏向された平行光は、当該光ピックアップ装置22に搭載された対物レンズ駆動装置21の対物レンズ1に入射して集光されて、光ディスクD上にスポットSを形成する。スポットSの反射光は、ビームスプリッタ25によって、入射した方向と向きを変えて、集光レンズ27とシリンドリカルレンズ28を通り、その後、受光素子29に入射する。
【0059】
光ディスクD上のスポットSの反射光が受光素子29に入射するように光学系が構成され、受光素子29で光電変換されて得られた信号を基にして、対物レンズ駆動装置21のフォーカシングコイル,トラッキングコイルを駆動することによって、光ディスクDに対して対物レンズ1を追従させることにより、光ディスクDに対する適正な記録/再生が行われる。
【0060】
光ピックアップ装置22に搭載されている対物レンズ駆動装置21は、前記対物レンズ駆動装置の実施形態1,2で説明したチルト補正が可能な対物レンズ駆動装置が搭載されているため、良好な信号を得られる光ピックアップ装置を提供することができる。
【0061】
また対物レンズ駆動装置は、前記対物レンズ駆動装置の実施形態1,2で説明した構成のように、フォーカシング方向の寸法が小さい構成であるため、光ピックアップ装置全体としても薄型に構成することができる。
【0062】
図10は図8に示すような棒状弾性支持部材(ワイヤばね7,棒状板ばね11)がオフセットした構成の対物レンズ駆動装置を搭載した光ピックアップ装置の実施形態2を示す斜視図であり、可動部におけるトラッキング方向の側面から、光源23より出射した光ビームLを入射させることにより、対物レンズ駆動装置21と図9に示すような光学系30とを、フォーカシング方向に重なった位置に設置することにより、さらなる薄型化が可能な光ピックアップ装置を提供することが可能になる。
【0063】
ただし、図10に示す実施形態2の構成では、光ビームLを遮らないように、対物レンズ駆動装置21のベース5は、図8に示す対物レンズ駆動装置の構成とは上下逆に設置されている。
【0064】
図11は本発明に係る図9,図10に示す光ピックアップ装置を搭載可能な光ディスク装置の実施形態1の概略構成を示す平面図、図12は図11の光ディスク装置の側面図である。なお、以下の説明において、図9にて説明した光ピックアップ装置の構成部材と対応する部材には同一符号を付して詳しい説明は省略する。
【0065】
図11において、31は光ディスク装置、32は、光ピックアップ装置22を支持するベース33と光ディスク装置31の筺体の下面との間に設置された防振ゴム、34は光ディスクDを回転駆動するスピンドルモータ、35は光ピックアップ装置22をシークモータ(図示せず)の駆動によりシーク方向にガイドするシークレールである。
【0066】
図11,図12に示す実施形態1の光ディスク装置に搭載されている光ピックアップ装置22は図9,図10に示す実施形態にて説明したように、良好なスポットSを維持し、かつ良好な信号を得ることができる光ピックアップ装置であるため、記録/再生性能が優れた光ディスク装置を提供することができる。また、図9,図10にて説明した光ピックアップ装置は、そのフォーカシング方向の寸法が小さいため、光ディスク装置全体を薄型に構成することが可能である。
【0067】
図13は図8に示すような棒状弾性支持部材(ワイヤばね7,棒状板ばね11)がオフセットした構成の対物レンズ駆動装置21を搭載した光ディスク装置の実施形態2を示す斜視図,図14は図13の光ディスク装置の要部を示す斜視図である。
【0068】
図13,図14において、フォーカシング方向の光ディスクに近く、可動部内周側に配される棒状板ばね11が短いものである構成にしており、これにより、光ピックアップ装置22がディスク最内周に位置するときの、スピンドルモータ34のターンテーブル36との干渉を防ぐことができる(図14のA部が通常の構成では干渉を生じやすい部位である)。
【0069】
なお、上述した対物レンズ駆動装置,光ピックアップ装置,光ディスク装置の各実施形態の構成を、適宜組合わせて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、CD,DVDなどの光学的記録媒体である各種光ディスクに対する記録/再生装置に用いられる3軸駆動の対物レンズ駆動装置に適用され、その対物レンズ駆動装置を搭載する光ピックアップ装置,光ディスク装置に実施して有効である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施形態1を説明するための対物レンズ駆動装置の斜視図
【図2】実施形態1の対物レンズ駆動装置の一部断面図
【図3】実施形態1の変形例1を示す斜視図
【図4】実施形態1の変形例2を示す斜視図
【図5】本発明の実施形態2を説明するための対物レンズ駆動装置の斜視図
【図6】実施形態2の対物レンズ駆動装置の一部断面図
【図7】実施形態2の棒状板ばねの製造方法を説明するための斜視図
【図8】実施形態2の変形例1を示す斜視図
【図9】本発明に係る対物レンズ駆動装置を搭載した光ピックアップ装置の実施形態1の概略構成図
【図10】図8に示すような棒状弾性支持部材がオフセットした構成の対物レンズ駆動装置を搭載した光ピックアップ装置の実施形態2
【図11】本発明に係る図9,図10に示す光ピックアップ装置を搭載可能な光ディスク装置の実施形態1の概略構成を示す平面図
【図12】図11の光ディスク装置の側面図
【図13】図8に示すような棒状弾性支持部材がオフセットした構成の対物レンズ駆動装置を搭載した光ディスク装置の実施形態2を示す斜視図
【図14】図13の光ディスク装置の要部を示す斜視図
【図15】チルト駆動が可能な対物レンズ駆動装置の従来例を示す斜視図
【図16】チルト駆動が可能な対物レンズ駆動装置の他の従来例を示す斜視図
【図17】棒状の板ばねの製造方法を説明するための斜視図
【符号の説明】
【0072】
1 対物レンズ
2 対物レンズ保持部材
3 駆動コイル
4 中継基板
5 ベース
6 駆動磁石
7 ワイヤばね
8 固定部材
10 突出部
11 棒状板ばね
12 板材
21 対物レンズ駆動装置
22 光ピックアップ装置
23 光源
24 コリメートレンズ
25 ビームスプリッタ
26 立上げミラー
27 集光レンズ
28 シリンドリカルレンズ
29 受光素子
30 光学系
31 光ディスク装置
32 防振ゴム
33 ベース
34 スピンドルモータ
35 シークレール
36 ターンテーブル
P1 第1の平面
P2 第2の平面
S1 第1の側面
S2 第2の側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに対して光ビームを集光させる対物レンズと、対物レンズを保持する対物レンズ保持部材と、該対物レンズ保持部材をフォーカシング方向とトラッキング方向に駆動する電磁駆動部材と、前記対物レンズ保持部材を固定部に対して移動可能に支持する棒状弾性支持部材からなる対物レンズ駆動装置において、
前記棒状弾性支持部材を、フォーカシング方向に垂直な第1の平面上と第2の平面上とにそれぞれ3本ずつ略タンジェンシャル方向を長手方向として配置し、前記第1の平面上の前記棒状弾性支持部材を、前記対物レンズ保持部材のトラッキング方向における第1の側面側に2本配置すると共に、前記第1の側面と反対側の第2の側面側に1本配置し、かつ前記第2の平面上の前記棒状弾性支持部材を、前記第1の側面側に1本配置すると共に、前記第2の側面側に2本配置したことを特徴とする対物レンズ駆動装置。
【請求項2】
前記2本配置されている部分の棒状弾性支持部材を、前記1本配置されている部分の棒状弾性支持部材よりも細く形成し、該棒状弾性支持部材2本で棒状弾性支持部材1本と略同等のばね定数を有するように設定したことを特徴とする請求項1記載の対物レンズ駆動装置。
【請求項3】
前記2本配置されている部分の棒状弾性支持部材を、前記1本配置されている部分の棒状弾性支持部材よりも長く形成し、該棒状弾性支持部材2本で1本と略同等のばね定数を有するように設定したことを特徴とする請求項1記載の対物レンズ駆動装置。
【請求項4】
前記2本配置されている部分の棒状弾性支持部材における前記対物レンズ保持部材側の端部を、該対物レンズ保持部材の前記第1の側面と前記第2の側面とに取り付けられた中継基板を挟んで両側に固定したことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の対物レンズ駆動装置。
【請求項5】
前記2本配置されている部分の棒状弾性支持部材における前記固定部側の端部の間隔を、前記対物レンズ保持部材側の端部の間隔よりも広くなるように傾斜させて配置したことを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の対物レンズ駆動装置。
【請求項6】
前記棒状弾性支持部材を板状体とし、該板状体の端部を前記対物レンズ保持部材と前記固定部との少なくとも一方に一体に埋設したことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の対物レンズ駆動装置。
【請求項7】
請求項6記載の棒状弾性支持部材を形成する方法であって、フォーカシング方向に垂直な2枚の幅広の板ばね部材を対物レンズ保持部材と固定部との少なくとも一方に一体に成型し、不要部を除去して複数の幅狭の板状体を形成し、前記棒状弾性支持部材とすることを特徴とする対物レンズ駆動装置の弾性支持部材形成方法。
【請求項8】
光ディスクに対して照射光を発する光源と、前記光ディスクからの反射光を受光する受光光学系と、請求項1〜6いずれか1項記載の対物レンズ駆動装置とを備えたことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項9】
光ディスクに対して照射光を発する光源と、前記光ディスクからの反射光を受光する受光光学系とを備え、請求項1記載のフォーカシング方向に垂直な第1の平面と第2の平面とにおいて、前記第1の平面をフォーカシング方向において前記第2の平面よりも光ディスク側に設定し、前記第2の平面とフォーカシング方向で重なる位置において、請求項1記載の第1の側面の方向から請求項3記載の対物レンズ駆動装置に対して前記光源から光ビームを入射させたことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項10】
光ディスクを回転駆動する回転駆動部材と、前記光ディスクの半径方向に移動自在に設けられた請求項8または9記載の光ピックアップ装置とを備えたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項11】
光ディスクを回転駆動する回転駆動部材と、前記光ディスクの半径方向に移動自在に設けられた光ピックアップ装置とを備え、請求項1記載のフォーカシング方向に垂直な第1の平面と第2の平面とにおいて、前記第1の平面をフォーカシング方向において前記第2の平面よりも光ディスク側に設定し、請求項1記載の第2の側面側が前記光ディスクの内周側となるように請求項3記載の対物レンズ駆動装置を配置したことを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−323916(P2006−323916A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−145205(P2005−145205)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】