説明

対象体座標を推定する方法

本発明は、速度モデルを使用して対象体座標を推定する方法に関する。本発明では、相対速度および相対加速度に基づく2次の速度モデルを使用する。この速度モデルに対して車速(vFahrzeug)および車両加速度(aFahrzeug)を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術
本発明は請求項1の上位概念に記載された対象体座標を推定する方法を出発点とする。
【0002】
車両周囲をセンシングする公知のシステムは、その目的のため、対象体を追跡する。すなわち、1,2または3次元の対象体座標の時間的な経過を決定するのである。使用される追跡アルゴリズムは、多くの場合、いわゆる仮定に基づいている。すなわちつぎの測定サイクルまでの推定したないしは予想した対象体座標に基づいているのである。つぎのサイクルにおいてこのような対象体座標を推定するため、いわゆる速度モデル(Geschwindigkeitsmodell)を使用する。ここでは時間tについての種々異なる次数(Ordnung)のモデルが区別される。1次のシステムは、式(1)によって定められる。
【0003】
S(t) = Vrel * t (1)
2次のシステムは、式(2)によって定められる。
【0004】
S(t) = Vrel * t + 0,5 * arel * t2 (2)
対象体軌跡s(t)を計算するのに必要なパラメタ、すなわち相対速度vrelおよび相対加速度arelは、ふつう未知であり、測定データから推定される。安定したアルゴリズムを保証するため、公知のシステムでは、ただ1つのパラメタだけを推定すればよい1次の速度モデルを選択される。
【0005】
発明の利点
これに対し、請求項1の特徴部分に記載された特徴的構成を有する対象体座標を推定する本発明の方法は、車速および車両加速度を考慮することによって、改善された速度モデルを使用することができ、このため、対象体座標を推定する際に車両の制動過程を考慮できるという利点を有する。これによって、対象体座標の一層精確な仮定ないしは推定が可能になり、ひいては対象体を一層良好に追跡することができる。これによって例えば歩行者保護の枠内において、実際の状況で、例えば歩行者が運転者の視界に突然現れた際に強い制動が行われる間に、一層ロバストな追跡アルゴリズム、すなわち一層ロバストな対象体追跡が得られることになるのである。
【0006】
本発明による方法により、2次の速度モデルが使用されることによって有利にも車両が強く制動される場合にも対象体を追跡することができる。それは2次の速度モデルは、1次の速度モデルと異なり、大きな相対加速度も考慮できるからである。
【0007】
従属請求項に記載した手段および発展形態により、請求項1に示した対象体座標推定方法の有利な改善が可能である。
【0008】
殊に有利であるのは、車両バスシステム、例えばCANバスシステムによって車速を供給することである。最新の車速は、上記の車両バスシステムにおいてつねに供給されるため、車速は有利にもいつでも、相応するバスインタフェースから読み出すことができる。
【0009】
対応する車両加速度は、有利には上記の車速から簡単かつ高速に推定することができる。
【0010】
択一的には上記の車両加速度を有利には加速度センサによって測定することができる。ここでこの加速度センサは、歩行者保護システムの一部または別のシステム、例えばクラッシュセンサの一部とすることが可能である。上記の加速度センサが別のシステムの一部である場合、加速度情報は、例えば上記の車両バスを介して本発明の方法に供給される。
【0011】
本発明の方法により、2次の速度モデルの相対速度は、個別の成分、すなわち車速と対象体速度とに分解される。ここで車速はすでに説明したように、バスインタフェースから簡単に読み出すことができる。さらに本発明の方法により、2次の速度モデルの相対加速度は、個別の成分、すなわち車両加速度および対象体加速度に分解される。
【0012】
対象体の速度が遅く、またひいては加速度も緩慢な場合、対象体速度および対象体加速度を無視することができるため、上記の速度モデルに対して関係式(4)を使用する。ここで車速および計算した車両加速度をすでに説明したように読み出すことによって一層良好な2次の速度モデルが得られて、対象体座標が推定される。
【0013】
S(t)≒Vrel*t+0.5*aFahrzeug*t2≒(vobj-VFahrzeug)*t+0.5*(ΔvFahrzeug/Δt)*t2 (4)
停止している対象体および運動している車両に対して関係式(4)の近似は精確であり、また速度の遅い対象体に対しては関係式(4)から極めて良好な近似が得られる。
【0014】
対象体速度および対象体加速度は、上記の追跡過程中に推定することができる。本発明の利点は、相対速度を車速と対象体速度に分解することによって、ならびに相対加速度を車両加速度および対象体加速度に分解することにより、推定すべき対象体速度および対象体加速度が車速および車両加速度に対して比較的小さいために、上記のアルゴリズムがロバストになることである。
【0015】
対象体座標を推定する本発明の方法は、例えば歩行者保護システムに使用してトリガアルゴリズムを改善することができる。
【0016】
図面
本発明の実施例を図面に示し、以下の説明において詳述する。
【0017】
ここで、
図1は、対象体座標推定方法の第1実施例の流れ図を示しており、
図2は、対象体座標推定方法の第2実施例の流れ図を示しており、
図3は、対象体座標推定方法の第3実施例の流れ図を示している。
【0018】
実施例の説明
公知のシステムでは、車両周囲をセンシングするために対象体座標の推定が行われ、ここではこの推定に対していわゆる速度モデルが使用される。安定したアルゴリズムを保証するため、公知のシステムでは、ただ1つのパラメタだけを推定すればよい1次の速度モデルが使用される。それはふつう相対速度も相対加速度も共に未知だからである。
【0019】
本発明では対象体座標推定方法が提案され、この方法では2次の速度モデルが使用され、この速度モデルに対して車速および車両加速度が求められる。車両加速度は、求めた車速から推定できるか、または加速度センサによって測定することができる。この加速度センサは、付属の歩行者保護システムの一部または別のシステムの一部とすることが可能である。この加速度センサが別のシステムの一部である場合、加速度情報は車両バスを介して供給される。
【0020】
図1からわかるように、第1実施例による本発明の対象体座標推定方法では、ステップ100におけるスタートの後、バスインタフェース、例えばCANバスインタフェースから車速vFahrzeugが読み出される。ステップ200では車速vFahrzeugの変化から、車両加速度aFahrzeugを式(3)
Fahrzeug = ΔvFahrzeug/Δt (3)
にしたがって計算する。
【0021】
ステップ300では対象体軌跡s(t)を関係式(4)にしたがって推定する。
【0022】
S(t)≒Vrel*t+0.5*aFahrzeug*t2≒(vobj-VFahrzeug)*t+0,5*(ΔvFahrzeug/Δt)*t2 (4)
関係式(4)によって、車両の制動過程が考慮され、また停止している対象体および運動している車両に対して、対象体の軌跡S(t)の精確な近似が得られる。速度が遅く、ひいては緩慢に加速する対象体に対しては、対象体の軌跡S(t)の極めて良好な近似が得られる。したがってバスインタフェースを介して得られる車速の知識を利用することによって容易に、歩行者との衝突状況における車両の制動過程を考慮することができ、またこれをひいては歩行者保護手段のトリガアルゴリズムに対して考慮することができるのである。
【0023】
関係式(4)からわかるように、2次の速度モデルの相対速度vrelは、車速vFahrzeugおよび対象体速度vObjの個々の成分に分解され、また2次の速度モデルの相対加速度arelは、車両加速度aFahrzeugおよび対象体加速度に分解される。ここで対象体加速度は、対象体軌跡S(t)を推定する際には無視される。
【0024】
図2からわかるように、本発明による対象体座標推定方法の第2実施例では図1の第1実施例とは異なり、車両加速度aFahrzeugは、車速から推定されるのではなく、ステップ210において、歩行者保護システムの一部である加速度センサから直接読み出される。
【0025】
図3からわかるように、本発明の対象体座標推定方法の第3実施例では図2の第2実施例におけるステップ210とは異なり、車両加速度aFahrzeugは、加速度センサから読み出されるのではなく、ステップ220においてバスインタフェースから読み出される。すなわち、加速度センサは別のシステム、例えばクラッシュセンサシステムの一部であり、加速度情報は車両バスシステム、例えばCANバスシステムを介して供給されるのである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明による対象体座標推定方法の第1実施例の流れ図である。
【図2】本発明による対象体座標推定方法の第2実施例の流れ図である。
【図3】本発明による対象体座標推定方法の第3実施例の流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
速度モデルを使用して対象体座標を推定する方法において、
2次の速度モデルを使用し、
当該の2次の速度モデルに対して、車速(vFahrzeug)および車両加速度(aFahrzeug)を求めることを特徴とする、
速度モデルを使用して対象体座標を推定する方法。
【請求項2】
前記の車速(vFahrzeug)を車両バスシステムによって供給する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の車両加速度(aFahrzeug)を車速(vFahrzeug)から推定する、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記の車両加速度(aFahrzeug)を加速度センサによって測定する、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記の車両バスを介して、前記の加速度センサによって測定した車両加速度(aFahrzeug)を読み出す、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記の2次の速度モデルの相対速度(vrel)を、個別の成分である車速(vFahrzeug)および対象体速度(vObj)に分解する、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記の2次の速度モデルの相対加速度を、個別の成分である車両加速度(aFahrzeug)および対象体加速度に分解する、
請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記の速度モデルに対して関係式
S(t)≒Vrel*t+0.5*aFahrzeug*t2≒(vobj-VFahrzeug)*t+0,5*(ΔvFahrzeug/Δt)*t2
を使用し、
ここでvrelは相対速度、aFahrzeugは車両加速度、vobjは対象体速度およびvFahrzeugは車速を表す、
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
歩行者保護システムにおいて、
対象体座標を推定するために請求項1から8までのいずれか1項に記載された方法を使用することを特徴とする、
歩行者保護システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−533563(P2008−533563A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556503(P2007−556503)
【出願日】平成17年12月30日(2005.12.30)
【国際出願番号】PCT/EP2005/057226
【国際公開番号】WO2006/092181
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】