説明

対象液体の小滴を表面上に分配する方法

本発明は特に、活性表面(Sa)上に対象液体の小滴を局在的に分配させる方法に関する。方法は、対象液体(E)を上記活性表面を含むボックス(B)内に導入する工程と、対象液体を上記ボックスから取り出す工程とを含み、上記活性表面並びにボックス内の他の表面は、上記活性表面上に局在化され且つ対象液体の小滴を捕捉するのにそれぞれ好適な複数の捕捉区域(Zc)を除いて対象液体に対して実質的に非湿潤性である。捕捉区域は作用区域(Zt)を囲んでいてもよい。本発明はまた、対象液体中の少なくとも1つの検体の電気化学検出及び光学検出のための方法、並びに電解重合法にも関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性表面上における対象液体の小滴の局在的な分配のためのプロセス、及びラボオンチップ又は化学もしくは生物学に関するマイクロシステムにおけるこのプロセスの使用に関する。また本発明は、対象液体の小滴中に存在し得る少なくとも1つの化合物の電気、電気化学、化学及び光学検出のためのプロセス、及び対象液体中に存在する分子の電解重合のためのプロセスに関する。
【0002】
本発明は、対象液体を用いて、表面上に高密度で局在化された小滴マトリクスの製造を可能にする。本発明は、対象液体が上記流体チャンバから排出される場合、ボックスと称され且つ対象液体で満たされる流体チャンバからの容易な移行を可能にし、小滴マトリクス、すなわち微量体(microvolumes)を上記流体チャンバに設けられる表面上に完全に局在化させる。
【0003】
「小滴マトリクス」という用語は、上記配置の特定の幾何学的形状を必要としない、上記小滴の所定の配置を意味する。小滴マトリクスは、円形、正方形、多角形又は無作為であってもよく、必要不可欠な要素は、形成される小滴が、本発明により達成される目的に応じて、表面上に局在的且つ所定の方法で配置されていることである。「局在的(局在化された)」という用語は、本発明のプロセスによって上記表面上に故意に取り込まれる他の小滴から区切られ、個別化され、且つ区別されることを意味する。
【0004】
各小滴に、対象液体中に存在するか又は存在する可能性のある1つ又は複数の検体、例えば、分子、オリゴヌクレオチド、タンパク質等を定性的及び/又は定量的に分析するよう意図される1つ又は複数の操作を行ってもよい。小滴中の検体の分析は、分析を行うための、当業者に既知の任意の手法により、特に小滴ほどの少ない液量で分析され得る。それらは、生物学的チップに用いられる分析手法であってもよい。分析は、本発明の実施の形態に応じて、小滴で覆われる本発明の装置の表面を伴っても、伴わなくてもよい。
【0005】
各小滴は、化学反応又は生化学反応が実行され得る容積を形成する。当業者に既知の任意の化学反応又は生化学反応がこの容積で実行され得る。これらの反応は、本発明の実施の形態に応じて、小滴で覆われる本発明の装置の表面を伴っても、伴わなくてもよい。これらの反応が小滴で覆われる本発明の装置の表面を伴う場合、1つの小滴のみ又はこの表面上に連続して付着される複数の小滴で行われてもよく、これらの連続小滴は、本発明の実施の形態に応じて、1つの又は複数の異なる対象液体から成る。本発明の装置上で2つの異なる対象液体を伴う化学反応の1つの例としては、以下、第1の対象液体の小滴を使用して該小滴により覆われる表面上の有機ポリマーフィルムの局在的な堆積、及び次いで、第2の対象液体の小滴を使用してこの表面上に堆積される有機ポリマーフィルムの官能化が挙げられる。
【0006】
本発明によると、1つまたは複数の分析及び1つまたは複数の化学/生化学反応は、本発明による装置上で排他的に(分析又は反応)、又は相補的に実行されてもよい。後者の場合、分析及び反応は、同時(反応及び分析)、又は連続的(反応に続いて分析、又は分析に続いて反応)であってもよい。さらに、数種の分析及び/又は数種の反応が連続して実行されてもよい。例えば、本発明の装置は、一方で、流体の取り扱い、化学反応及び/又は生化学反応、光学、電気及び/又は化学検出チップ等の、対象液体の定性分析及び定量分析に必要な全ての工程が組み込まれるカード、又は(例えば、化学反応を介してポリマーを堆積させ、その後官能化する)ラボオンチップの製造に好適に関与し、他方で、分析対象である対象液体の小滴における定性分析及び/又は定量分析(化学/生化学反応及び分析)を実行するための該カード、又は該ラボオンチップの使用に好適に関与する。
【0007】
本明細書において、角括弧[]内の参考文献は添付される参考文献リストを表す。
【背景技術】
【0008】
[従来技術]
検討された出願によると、本発明は、小滴形成、微量体における作用、及び高密度の小滴マトリクスの一般分野と類似する。
【0009】
液相を分離する局在化された区域の形成は、生物学的チップ、特にDNAチップの分野に普及している。これらの用途に関して、反応量は、生物学的産物及び試薬を節約するため非常に少ないことがよくある。
【0010】
局在化された小滴、及び高密度を有する小滴マトリクスの形成に関して、プロトジーン・ラボラトリーズ・インコーポレーテッド(Protogene Laboratories Inc.)[1]及びアフィメトリックス インコーポレイテッド(Affymetrix Inc.)[2]は、自動分配システムを用いた手法を使用している。これらのシステムは、小滴の形成、及び表面上に高密度のポイント又は小滴を有するマトリクスの形成をもたらす。
【0011】
しかしながら、小滴分配システムに加えて、これらの手法は全て、このシステムの移動及び正確な整列のための機器、並びに液体を供給する機器も必要とする。この装置は高価である。さらに、形成され得る小滴マトリクスの最大密度は、分配される小滴サイズと分配システムのポイント間の最小間隔との組み合わせにより限定される。
【0012】
高密度を有する微小凹部のマトリクスの形成に関して、2系統の主なプロセスが示され得る。すなわち、シリコンウェハ上にエッチングすることにより微細加工される凹部のネットワークの形成を用いて、数ピコリッターという微量でPCRによりDNA増幅を行うプロセスの系統、及びプラスチック基板に堆積される感光性樹脂上のフォトリソグラフィによる窪み又はチャネルの形成を用いるプロセスの系統である[3]。これらの手法に関して、窪みの数は100〜9,600個の範囲であり、これらの窪みは60〜500μmの直径及び5〜300μmの深さを有する。
【0013】
しかしながら、これらの凹部の縁は、凹部中の液相と外側の液相との間にいかなる物理的分離も残さないので、凹部間の連接及びそれらの間の汚染を許してしまう。さらに、それら使用に関し、これらの装置は、小滴分配システム、このシステムの移動及び正確な配列のための機器、並びに液体を供給する機器も必要とする。これにより、上記と同様な欠点及び問題が生じる。
【0014】
生物学的試験における電気検出又は電気化学検出に関して、文献に記載される多数の電気検出システム又は電気化学検出システムは、検出限界の観点からナノモル以下に下げることができず、この限界は各ハイブリッドにより生成される少数の電子にしばしば起因する。
【0015】
酵素の蓄積を伴う手法は、反応媒体において存在し、検出される酸化還元種の数の大幅な増幅によってこの検出限界を約1ピコモル程度まで下げることを可能にする[4]。しかしながら、この増幅法によって、酸化還元化合物が拡散し、それゆえ隣接ポイントを汚染する可能性があるため、現在既知のマルチポイントシステムに問題が生じる。
【0016】
この目的のために、ほとんどの場合、三次元構造の使用(区画の使用)が、文献で推奨されている。例えば、インフィネオン(Infineon)[6]は、ポイントを規定容量に制限し、それによりポイント間汚染を防止するための、ポリマー壁及び電力による分子移動用システムを提案している。残念ながら、例えば、非常に細かい液脈において作用することが所望される場合、この種のアプローチは流体充填の問題に直面する可能性がある。この場合は、小滴分配装置も必要不可欠となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
それゆえ、対象液体を用いて高密度の小滴マトリクスを容易に得るプロセスであって、いかなる小滴分配装置も用いずに使用することが可能で、使用し易く、小滴間の汚染を有効的に避け、且つ、当業者にとって現在既知である、例えばラボオンチップ上で微量体を集合的又は個別的に分析する全ての方法に関して、それが化学、電気若しくは光学プロセス又はこれらのプロセスの組み合わせのいずれかであろうと非常に柔軟に使用し得るプロセスが真に求められている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
[発明の記述]
本発明は、基板の活性表面上に対象液体の小滴を局在的に分配させるプロセスであって、
対象液体を導入手段によってボックス内へ導入する工程であって、該ボックスは前記活性表面を取り囲んでいる、導入する工程と、
前記対象液体を前記ボックスから取り出し手段によって取り出す工程と
を含み、
前記活性表面及び前記ボックス内部の他の表面は、活性表面上に所与(所定)の方法で形成され且つ対象液体の小滴を取り込む(捕捉する)のに好適であるいくつかの局在的な取り込み(捕捉)区域を除いて、前記対象液体に対して実質的に非湿潤性であり、
前記対象液体を前記ボックス内に導入する手段及び取り出す手段は、前記対象液体が前記ボックス内へ導入される際に、前記取り込み区域を覆うように、且つ前記対象液体がボックスから取り出される際に、前記対象液体の小滴が各取り込み区域に分配され且つ局在化された状態で捕捉されるように配置される、基板の活性表面上に対象液体の小滴を局在的に分配させるプロセスを提供することによって、前述の要求、及び下記に概説される他の要求も的確に満たす。
【0019】
本発明の状況において、液体の小滴マトリクスを形成するため、液体が本発明によるプロセスにおいて取り込み区域によって取り込まれるよう意図される場合、この液体は「対象」となるものであると考えられる。
【0020】
「対象液体」という用語は、例えば、分析目的、並びに/又は化学的目的及び/若しくは生化学的目的のための、支持体上の小滴マトリクスである配置を要求する可能性のある任意の液体を意味する。「化学的目的及び/若しくは生化学的目的」という用語は、液体中で実行され得る任意の化学反応及び/又は生化学反応を意味する。「分析目的」という用語は、液体中で実行され得る任意の定性分析及び/又は定量分析を意味する。
【0021】
対象液体は、有機又は水性であってもよい。それは、実験室又は産業界、例えばラボオンチップにおいて現在取り扱われる液体のいずれか1つであってもよい。それは、例えば、溶液、溶媒、試薬、試料、細胞抽出液、動物生体又は植物生体から取り出される検体、自然又は産業から取り出される検体等から選択される液体であってもよい。それは、生物学的又は化学的な液体、例えば生物学的な識別(例えば、タンパク質/タンパク質、核酸のハイブリダイゼーション、抗原/抗体等)を実施及び/又は検出する必要のある溶液であってもよい。この対象液体は、ラボオンチップで実施される場合、本発明の装置と共に使用するために、必要であれば、希釈される液体であってもよい。固体産物を溶液中に溶解して、本発明の趣旨の範囲内で対象液体を構成し得る。この固体産物は、例えば、化学産物又は生化学産物、試薬、分析対象材料、動物生体又は植物生体から取り出される検体、自然又は産業から取り出される検体等から選択されてもよい。当業者は、このような産物及び対象液体の取り扱いを理解している。
【0022】
一般的に、本発明のプロセスは、ラボオンチップ、分析マイクロシステム等の化学若しくは生物学マイクロシステム、又は、例えばDNA(デオキシリボ核酸)若しくはRNA(リボ核酸)チップ、タンパク質チップ、抗体チップ、抗原チップ、細胞チップ等から成る群より選択されるバイオチップに用いられてもよい。
【0023】
本発明のプロセスはボックスを使用する。このボックスは開放であっても密閉されていてもよい。それを単一で使用して、本発明のプロセスに従って活性表面上に対象液体の小滴の局在的な分配を得てもよい。それを使用して、活性表面上に局在的に分配される小滴を制限し、且つ/又はこれらの小滴上に又は小滴中に、化学若しくは生物学的反応並びに/又は定性及び/若しくは定量分析を実施してもよい。このボックスはこのため紛れもない小型ラボ(ラボオンチップ)を構成し得る。
【0024】
このボックスの寸法は、特に本発明の実施の態様のために選択される活性表面を備える基板の寸法に応じるが、適切であれば、本発明の実施の態様のために上記ボックスと組み合わされ得る付加的なマイクロシステム又は分析機器、例えば他のラボオンチップの存在にも応じる。これらの寸法は、ボックスの最長の辺の長さに関してセンチメートルレベル以下となり得る。
【0025】
ボックスは、例えば、有機ポリマー、弾性プラスチック材料、ガラス、金属、シリコン、感光性樹脂又は当業者にとって既知であり且つ本発明の実施態様を可能にする任意の材料から成る群より選択される材料から成ってもよい。例えば、材料は、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルメタクリレート、ポリクロロビフェニル及びシクロオレフィンコポリマーから成る群より選択されるポリマーであってもよい。
【0026】
ボックスの材料は一般的に、小滴として分配される対象液体の種類、ボックスの使用(単に浸漬、又は浸漬及び分析)及び製造コスト設計との関係に応じて選択される。
【0027】
使用し得るボックスは好ましくは十分に耐漏洩性であり、例えば、ボックス内における活性表面の浸漬時の漏洩、ボックス外部から生じ得る汚染、例えば細菌若しくは化学物質等の汚染、並びに、ボックスからの対象液体の取り出し後の取り込み区域により取り込まれた小滴の蒸発を避ける。
【0028】
使用し得るボックスは、ボックスを載せるために、また特定の用途においてボックスを開閉するために、特に、活性表面を対象液体と接触させて設けた後に且つ/又は小滴における分析又は反応後に、ボックスからその活性表面を有する基板を除去することを可能にするために蓋を備えていてもよい。それゆえボックスは基板を取り付けるための着脱式手段を備えていてもよい。ボックスが蓋を備えていれば、ボックスは好ましくは十分に耐漏洩性であり、その結果、活性表面の浸漬を妨げない。
【0029】
蓋は、ボックス用の上述されるような材料から成ってもよい。蓋は、例えば成形、延伸、エッチング又は機械的侵食等によって製造されてもよい。したがって、蓋は、接着、加圧、めっき、又は蓋の使用に必要な作用及び耐漏洩性を保証する当業者に既知のその他の任意の手段によって、ボックスに永久的に取り付けられてボックスを密閉してもよい。また、蓋は、その使用に必要とされる作用及び耐漏洩性を保証しながら、このように構成される同様のボックスが異なる活性表面を有する異なる基板の連続的な浸漬に役立ち、その結果いくつかの小滴マトリクスを形成することを可能にするために、ボックスに着脱可能に取り付けられてもよい。
【0030】
好ましくは、ボックス及び適切であれば蓋の材料は、ボックスの内側で対象液体に対して実質的に非湿潤性である。特に、このことは、対象液体を取り出した後に小滴がボックスの内部表面へ付着すること、及び活性表面上へ落下して活性表面上に局在的に分配される小滴における分析及び反応を阻害することを妨げるのを可能とする。表面処理、例えば活性表面に関して以下に記載されるものが、こうした結果を得るために必要となるかもしれない。
【0031】
使用され得る密閉ボックスは、対象液体を導入する手段及びボックスから取り出す手段を備える。下記のもの以外、これらの手段の位置、形状及び機能に関する制限はない。この手段は、対象液体の導入、及びその後のボックスからの取り出しを可能としなければならず、これらの手段は、対象液体がボックス内へ導入される際に取り込み区域を覆うように、且つ対象液体がボックスから取り出される際に対象液体が取り込み区域によって捕捉された状態であるように配置されなければならない。これらの手段は、ボックス上に形成される開口を備えていてもよい。これらの開口は、蓋又はボックスの上部又は側面、あるいは基板のどこに配置されていてもよい。対象液体は、2つの異なる開口、つまり対象液体をボックス内へ導入する1つの開口及び対象液体をボックスから取り出す1つの開口を介してボックスに入り、その後出ることが可能である。また、対象液体は、2つの開口の1つのみを介してボックスに入り、その後出ることも可能であり、取り出すことにより引き出される空気の通過を可能にすることによって、又は、対象液体がボックスから押し出されることを可能にするガス流体を第2の開口を介して注入することによって、この第2の開口は対象液体の取り出しを可能とするように機能する。これらの開口は、例えば、エッチング、延伸、成形、感光性樹脂の場合には露光、機械的な穴開け等によって、蓋、又はボックスの壁に配置されてもよい。
【0032】
また、対象液体をボックス内へ導入する手段は、当業者にとって既知である、液体をボックス内へ注入する任意の好適な手段、特にラボオンチップ及びマイクロシステムの分野で用いられる手段を備えていてもよい。それは例えば、シリンジ、ピペット、マイクロピペット、注入ポンプ等であってもよい。
【0033】
対象液体をボックスから取り出す手段は、当業者にとって既知である、対象液体をボックスから取り出す任意の好適な手段であり得る。重要なことは、取り込み区域によって取り込まれる小滴が、対象液体の取り出し中に運び去られないことである。例えば、取り出し手段は、吸引によって対象液体をボックスから吸い出すポンプを備えてもよく、それゆえ取り出し工程は、吸引によって対象液体を上記ボックスから吸い出すことから成る。例えばまた、取り出し手段は、ガス流体をボックス内へ注入するポンプを備えてもよく、それゆえ取り出し工程は、ガス流体をボックス内へ注入して、それによって対象液体を上記ボックスから追い出すことから成る。好適には、注入されるガス流体は、当業者に既知の任意の手法によって対象液体の蒸気で飽和されてもよい。さらに、通常、開口又はボックスの外部への連通部は、好適には対象液体の液相の蒸気で飽和されたガスの貯蔵室と連通されていてもよく、このことは、特に使用されるボックス及び基板のサイズが非常に小さい場合に、一旦形成された小滴の蒸発を防止するという利点を有する。ガス又はガス流体は、必要であれば空気又は中性ガスであってもよい。
【0034】
基板は、本発明を実施するのに好適な任意の材料から成り得る。材料は、例えば、ラボオンチップ、バイオチップ、マイクロシステム等の製造に使用される基材の1つであってもよい。材料は、例えば、シリコン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、ガラス、有機ポリマー、及び金属又は合金から成る群より選択される材料であってもよい。有機ポリマーは、例えば、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルメタクリレート、ポリクロロビフェニル及びシクロオレフィンコポリマーから成る群より選択されてもよい。金属は、例えば、Au、Ti、Pt、Al及びNiから成る群より選択されてもよく、合金はステンレス鋼であってもよい。
【0035】
基板はボックスの壁の1つを構成してもよい。活性表面がボックス内にあるならば、ボックスを構成する壁は後で、例えば接着又は加圧によって基板を用いて据えられてもよい。
【0036】
活性表面は、対象液体に対して実質的に非湿潤性であり且つ本発明を実施するのに好適な任意の材料から成ってもよい。具体的には、本発明のプロセスの機能は、活性表面が対象液体を非常に少量保持するか又は全く保持しないという事実にある程度基づいており、これにより、表面上に対象液体を保持せず且つ乾燥させることなく、容易で完全な非湿潤を可能にする。したがって、対象液体の小滴は、取り込み区域によって選択的且つ排他的に取り込まれてこれらの区域に区切られるので、取り込まれた小滴間の汚染のいかなる問題も回避される。
【0037】
活性表面の材料はそのため、特に小滴マトリクスが形成される対象液体との関係に応じて、基板及び取り込み区域との関係に応じて、並びに適切であれば、これらの取り込み区域と共に配置される作用区域(作用区域は以下に規定される)との関係に応じて選択される。活性表面の材料は化学変性又は堆積によって基板上に配置されてもよい。活性表面の材料はまた、対象液体に対して実質的に非湿潤性である材料から成るのであれば、基板本体であってもよい。
【0038】
例えば、対象液体が水性である場合、活性表面を形成する材料は好適には疎水性である。例えば、基板を構成する上述される材料の例では、基板表面は、化学変性、例えば疎水性官能基を有するシラン、例えば1H,1H,2H,2H−ペルフルオロデシルトリクロロシランを用いたシラン処理により、非湿潤性、つまりこの場合には疎水性とされてもよい。化学変性はまた、例えば、回転盤上の液体テフロン(登録商標)の堆積、疎水性シランの気相シラン処理、ハイドロカーボン系シラン、例えばオクタデシルトリクロロシラン型の使用であってもよい。このような化学変性を実施するのに使用され得る材料及びプロセスは、当業者にとって既知である。実施態様の例を以下に示す。
【0039】
基板表面を対象液体に対して非湿潤性とする処理は、取り込み区域及び/又は対応する作用区域の形成前又は形成後に行われてもよい。処理が作用区域の形成後に行われる場合、作用区域は任意に保護されるであろう。
【0040】
この活性表面、したがってまた活性表面が形成される基板の形及びサイズは、本発明のプロセスの機能と関係ない。それらは一般的に、この表面上に形成される対象液体の小滴の区域の数、及びコスト設計との関係に応じて確定される。しかしながら、表面上の対象液体の不測の保持を避けるために、好ましくは平面が選択される。例えば、活性表面は、ラボオンチップ、並びに当業者にとって既知である分析マイクロシステム及び検出マイクロシステムの製造に使用されるウェハに相当する形及びサイズを有し得る。
【0041】
本発明のプロセスで使用される基板の表面(活性表面)は、対象液体に対して湿潤性である、すなわち対象液体に対して高い親和力を有するか、又は対象液体が毛管力によって保持され得る局在的な区域を作成するために、変性(構造化)される。これらの区域は、「取り込み区域」として知られている。「局在的」という用語は上記に規定される。少量の対象液体を活性表面上に少しずつ流すことによって、取り込み区域は、対象液体の小滴を取り込むか又は保持するのに対して、対象液体に対して実質的に非湿潤性である活性表面は、対象液体を非常に少量保持するか又は保持しない。細流を止めることによって、取り込み区域によって局在的に保持される対象液体の小滴のみが、活性表面上に残る。
【0042】
多数の解決策がこれらの取り込み区域を基板の活性表面上に形成するために予見され得る。対象液体に対する親和力を局在的に上げるための、例えば分子を特定の基でグラフト化することによる表面の化学処理、微小電極による局在的なエレクトロウェッティング、表面上の起伏におけるクラウンによって形成されるマイクロキュベット、ディープエッチングマイクロキュベット等である。具体的には、少なくとも1つの取り込み区域は、対象液体の小滴の化学的、電気的又は物理的取り込み区域であってもよい。取り込み区域は、この区域と対象液体との単なる接触によって対象液体の小滴の取り込みを可能にする任意のタイプの局在化区域であってもよい。
【0043】
一例として、取り込み区域はウェッティングによって取り込むための区域であってもよい。具体的には、取り込み区域は、所定の方法で活性表面又は基板に配置される支持材料から成っていてもよい。この支持材料は、必要であれば、例えば、上記対象液体に対して湿潤性である化学官能基を支持材料上にグラフト化することによって、化学的に変性して対象液体に対して湿潤性とされてもよい。
【0044】
例えば、この支持材料は、シリコン;酸化ケイ素(SiO);ガラス;窒化ケイ素(Si);ポリマー、例えば、ポリカーボネート、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルメタクリレート、ポリクロロビフェニル及びシクロオレフィンコポリマーから成る群より選択される有機ポリマー:並びに例えばAl、Au及びステンレス鋼から選択される金属又は金属又は合金から成る群より選択される材料から成り得る。
【0045】
例えば、水性の対象液体に対して湿潤性である化学官能基は、アルコール、アルコキシド、カルボン酸、カルボキシレート、スルホン酸、スルホネート、オキシアミン、ヒドラジン、アミン及びアンモニウム官能基から成る群より選択され得る。
【0046】
例えば、文献[9]又は[10]に記載されるプロセスは、この種の取り込み区域を製造するのに使用され得る。
【0047】
また一例として、特に、本発明のプロセスが水性の対象液体の小滴を分配させるために意図される場合、及び活性表面又は基板がシリコンベースである場合、取り込み区域は親水性ブラックシリコンから成り、このような表面上にエッチングによって大変容易に形成され得る。エッチングされた区域は、水性の対象液体に対して特に湿潤性となる。エッチングされた区域は、水溶液に対して湿潤性であるために、他のどのような化学変性も必要としない。それゆえこの実施形態の例は、非常に経済的である。例えば、文献[11]は、この種の取り込み区域を製造するのに用いられ得る実験室用プロトコルを概説している。
【0048】
また一例として、取り込み区域は、ウェッティングによる取り込みのための電極であってもよい。この例によると、取り込み区域、この場合電極は、例えば、貴金属、例えばAu,Pt、Pd、Ti、Ni、Al等、又は貴金属の合金;カーボン;グラファイト;及びインジウム錫酸化物(ITO)から成る群より選択される材料から成り得る。上記材料は、対象液体に対して湿潤性である化学官能基と結合する導電性ポリマーの、材料上の電着によって湿潤性となる。導電性ポリマーは、ラボオンチップの製造に使用されるポリマーの1つであってもよい。導電性ポリマーは、例えば、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアズレン、ポリチオフェン、ポリインドール、ポリフラン又はポリフルオレンから成る群より選択されてもよい。湿潤性化学官能基は、例えば、上述の湿潤性化学官能基の1つであってもよい。重合前のモノマーへの、又はポリマーが形成されたポリマーへの官能基の結合は、標準的な化学手法で行われ得る。本発明のプロセスを実施するのに用いられ得るこの種の取り込み区域を製造するプロセスの例は、文献[4]に見出され得る。
【0049】
また一例として、取り込み区域は、毛管力による対象液体の小滴の取り込みのための区域であってもよい。取り込み区域は、例えば、毛管力によって小滴を取り込むことを可能にする活性表面のエッチング又は活性表面上の凸部であってもよい。これらのエッチング又は凸部は、例えば、基板の直接エッチングによって;例えば、コーティング、蒸発、噴霧又は電気化学付着による平面基板の表面における材料の堆積、次いで例えば、樹脂コーティング、パターンの絶縁及び確定、又はエッチングによる標準フォトリソグラフィ法と組み合わせたエッチングによって;例えば感光性樹脂の場合には、感光性ポリマーにおけるフォトリソグラフィによるパターンの直接的な確定によって;プラスチック材料の成形又は延伸によって製造され得る。これらのプロセスは当業者にとって既知である。重要なことは、これらの取り込み区域を形成するこれらのエッチング又は凸部が、毛管作用によって対象液体の小滴を局在的に取り込むことを可能にすることである。
【0050】
また一例として、取り込み区域は、基板上でキュベットの形態、すなわち上記活性表面上に縁を形成するように構成される凸部の形態をとってもよい。好ましくは、縁は互いに接触せず、共通の縁を有さず、且つそれぞれ、基板の表面上に、対象液体を取り込むよう意図されるキュベットを形成する。添付の図11は、本発明のプロセスで使用され得る2種類のキュベットの断面における図示である。左側は基板(Sa)中に「埋没される」キュベット(c)であり、右側は基板(S)上に縁(b)によって形成されるキュベット(c)である。右側では、空き空間がキュベット(c)間で、対象液体の流れに利用可能な状態である。縁又はキュベットの製造は、例えば、基板の直接エッチングによって;例えば、コーティング、蒸発、噴霧又は電気化学付着による平面基板の表面における材料の堆積、次いで例えば、樹脂コーティング、パターンの絶縁及び確定、又はエッチングによる標準フォトリソグラフィ法と組み合わせたエッチングによって;例えば感光性樹脂の場合には、感光性ポリマーにおけるフォトリソグラフィによるパターンの直接的な確定によって;例えば活性表面を形成するプラスチック又は基板の成形又は延伸によって行われ得る。これらの方法は当業者にとって既知である。これらの方法は特に、基板上でいくつかの層をスタックする手法の最終工程時に形成され得る。より低い層は、例えばMEMS(「微小電子機械システム」)型又は光学MEMS型の、あるいは作用区域を形成するよう意図される化学的又は生物学的な関心を有するグラフト化分子の、機械、光学又は電気アクチュエータ又は検出器を含有し得る。
【0051】
上記対象液体が水性である場合、取り込み区域は最も好ましくは親水性区域であり、実質的に非湿潤性である活性表面は最も好ましくは疎水性である。したがって、取り込み(捕捉)区域は、対象液体との親水性/疎水性型の相互作用によって対象液体の小滴を取り込む(捕捉する)ことができる。一般的に、取り込み区域は、活性表面の湿潤性よりも大きい、対象液体に対する取り込み区域の湿潤性によって(化学作用、又は毛管作用によって)対象液体の小滴を局在的に取り込む。
【0052】
本発明によると、局在的な取り込み区域は、活性表面上に所定の方法で分配されており、マトリクスを形成することができる。「小滴マトリクス」という用語は、配置の特定の幾何学的形状を必要としない上記小滴の所定の配置を意味する。小滴マトリクスは、円形、正方形、多角形及び無作為であってもよく、必要不可欠な要素は、形成された小滴が、本発明により達成される目的に応じて、表面上に局在的且つ所定の方法で配置されることである。「局在的(局在化された)」という用語は、本発明のプロセスによって活性表面上に故意に取り込まれた他の小滴と区切られ、個別化され、且つ区別されることを意味する。
【0053】
本発明によると、取り込み区域が対象液体の小滴を取り込むのであれば、取り込み区域は任意の形状を有し得る。この区域は、例えば、リング状、星型、矩形、正方形、三角形、楕円形若しくは4〜20個の辺を有する多角形、又は本発明を実施するのに好適な他の任意の形状から選択されてもよい。一般的に、それは帯状である。
【0054】
さらに、各取り込み区域は、上記活性表面上に形成される少なくとも1つの(以下に規定される)作用区域と共に配置され、対象液体の小滴が取り込み区域によって取り込まれる際、この作用区域は対象液体の小滴と接触し得る。好ましくは、少なくとも1つの取り込み区域は開放リング形状又は閉リング形状を有し、このリング形状は共に配置される少なくとも1つの作用区域を取り囲む。なお、対象液体の小滴の取り込みのための区域は、対象液体が取り込み区域によって取り込まれる場合、この小滴が少なくとも部分的に、取り込み区域によって取り囲まれる全ての作用区域を覆うならば、複数の作用区域、例えば2〜4又はそれ以上を取り囲んでいてもよい。
【0055】
「作用区域」という用語は、物理操作及び/又は化学操作及び/又は光学操作が、共に配置される取り込み区域によって取り込まれる小滴において行われ得る区域を意味する。したがって、本発明によると、少なくとも1つの作用区域は、対象液体の上記捕捉された小滴との電気的、化学的、機械的又は光学的相互作用から選択される相互作用を有する区域、又は、これらの相互作用のいくつかが同時に又は連続的に用いられる区域から選択される相互作用を有する区域であってもよい。
【0056】
一例として、作用区域は、電気化学マイクロセルを有して又は有さずに、対象液体の捕捉された小滴との化学的相互作用を有する区域であってもよい。作用区域は、例えば、対象液体中に存在する、これらの官能基又はこれらの試薬の標的と直ちに反応し得る、化学若しくは生物学官能基又は試薬を含む。この作用区域は、バイオチップ(アジレント社(AGILENT)、サイファージェン社(CIPHERGEN)、ユーロジェンテック社(EUROGENTEC)により販売されるチップ)の分野における当業者に既知のものから選択され得る。本発明の装置とこれらの従来技術のチップとの相違点はとりわけ、上記作用区域と共に配置される対象液体の小滴を取り込む区域の存在にある。この作用区域は、例えば文献[12]に記載されるような、シラン処理及びその後の生物学的プローブの固定化によって製造され得る。
【0057】
この作用区域は、例えば、対象液体中に存在し得る標的と相互作用するよう意図される化学分子(「プローブ」)によって官能化される区域であってもよい。化学分子(「プローブ」)は、例えば、シラノール官能基を有する分子、有機金属錯体(例えば水素化反応に関わるBINAP(商品名)又はDUPHOS(商品名)等のキラルホスフィンと結合されるロジウム、あるいは例えば不飽和ケトン合成に関わるルテニウム錯体)、及び金属ベースの触媒(例えばシリカ上に担持されるパラジウム、又は塩化アルミニウム)から成る群より選択され得る。これらの化学官能基(「プローブ」)のそれぞれに対応する「標的」は、例えば、シラン(例えばトリ−、ジ−、若しくはモノエトキシシラン、又はトリ−、ジ−若しくはモノクロロシラン)、アルケン(例えばデヒドロアミノ酸)、アリル型アルコール誘導体(例えば3−ブテン−2−オール)、塩素化芳香族化合物(例えばモノ−、ジ−又はトリクロロフェノール)、又は芳香族化合物とハロゲン化試薬との混合物(例えばベンゼンとブロミン、又はベンゼンと塩化アセチル)から成る群より選択され得る。
【0058】
作用区域は、例えば、対象液体中に存在する可能性のある対応する標的と結合して、例えば光学的にそれを検出する目的で、上述されるような生物学的プローブによって官能化されるポリマーを含んでいてもよい。例えば、上述されるような基板上に、文献[13]に記載される方法に従ってこの作用区域を得ることが可能である。
【0059】
また一例として、本発明によると、作用区域は、電気的相互作用を有する区域、例えば電気化学マイクロセルであってもよい。電気化学マイクロセルは、少なくとも2つの電極を含む装置であり、これらの電極は好ましくは同一平面上にあり、作用電極及び対電極を形成する。電気化学マイクロセルは、参照電極も含有し得る。これらの構成要素は当業者にとって既知であり、当業者に既知の製造方法、例えば参考文献[8]に記載される方法が、この作用区域を製造するために用いられ得る。このため、作用区域は、反応媒体、より具体的には電気化学媒体として、縁によって取り込まれる対象液体の小滴を用いる紛れもない電気化学マイクロリアクタを構成する。本発明のこの第1の実施形態による各電気化学リアクタ(縁+電気化学マイクロセルの形態をとる作用区域+対象液体の捕捉された小滴)を使用して、当業者にとって既知である任意の電気化学反応及び/又は分析を行い得る。
【0060】
これらの電気化学リアクタを使用する本発明のプロセスは、例えば、マイクロセルの電極の1つ上における、対象液体の小滴中に存在する1つ又は複数のモノマーの局在的電解重合反応(重合又は共重合)、及び/又は小滴中に存在する1つ又は複数の化学分子の局在的電解グラフト反応を実行するように機能し得る。この例では、対象液体は、所望の電解重合又は電解グラフトに必要な試薬を含有する液体であってもよい。そのため好適には、重合及びグラフトは、各取り込み区域により取り込まれる対象液体の各小滴に局在化され得る。このような局在的なグラフト反応又は電解重合反応は、例えば、バイオチップ又は分析システムの製造に用いられ得る。
【0061】
本発明のプロセスを実施する1つの特定の例では、電気化学マイクロセルを使用して、まず、作用区域を「製造」し、次いで例えばこれらの作用区域を、分析対象である対象液体の小滴の分析に用いることが可能である。例えば、作用区域が、プローブ、例えば生物学的プローブによって官能化される有機ポリマーを含まなければならない場合、作用区域は、プローブによって官能化される導電性ポリマーの電解重合、例えば参考文献[5]に記載されるプロセスに従って製造され得る。本発明のプロセスの使用に関連する特別な特徴は、取り込み区域を使用して、電解重合に必要な試薬(有機モノマー)を含有する第1の対象液体の第1の小滴を、各作用区域上に局在的に取り込むことである。プローブによる官能化を電解重合と同時に行ってもよく、それゆえ第1の対象液体はプローブも含有する(例えば、モノマーはこのプローブによって官能化される)。官能化はまた、電解重合の後に、同一の取り込み区域により取り込まれ且つ結果として同一の作用区域上に局在化される(プローブを含有する)第2の対象液体の第2の小滴を用いて実行し得る。さらに、このように製造された作用区域をその後乾燥させて、再び、作用区域を囲む取り込み区域によって、プローブ(例えば、相補的オリゴヌクレオチド)と相互作用する標的を含有する、分析対象である第3の対象液体の小滴を取り込むように機能し得る。また、第4の対象液体を使用して、作用区域上のプローブ/標的相互作用等を分析(検出及び/又はアッセイ)し得る。
【0062】
本発明のプロセスに使用され得る電気化学マイクロリアクタは、例えば、取り込み区域によって取り込まれる小滴中に存在する検体の定性的及び/又は定量的な電気化学分析を行うようにも機能し得る。電気化学マイクロリアクタはまた、プローブ/標的分子相互作用の定性的及び/又は定量的な電気化学分析を行うようにも機能し得る。この際、プローブは作用区域に結合されており、標的は対象液体の捕捉された小滴中に存在する。
【0063】
1つの特定の例では、電気化学マイクロセルを使用して、液体試料に存在する標的を、例えば検出対象である標的と作用区域に結合された特定のプローブとの相互作用を用いて検出し、例えば、各作用区域を囲む取り込み区域により取り込まれる酵素基質を含有する、対象液体の小滴中の酵素的な蓄積によるシグナル増幅によって、上記の相互作用を電気化学的に検出することが可能である。文献[4]は、本発明のプロセスを用いる、この種の検出に使用し得る操作プロトコルを概説している。
【0064】
作用区域上のプローブ/標的相互作用の検出は、電気化学セル、例えば本明細書で概説されるうちの1つ、例えば光学プロセス以外の、当業者にとって既知である手段を伴ってもよい。それゆえ電気化学マイクロセルは、この場合、作用区域を「製造」するためのみに機能して、プローブ/標的相互作用の検出はその後、別の手段によって実行されるか、あるいは、プローブ/標的相互作用を分析するためのみに機能して、作用区域の製造は別のプロセス、例えばバイオチップの分野における当業者にとって既知であるプロセスの1つによって行われてもよい。
【0065】
一般的に、本発明によると、作用区域上にプローブが用いられる場合、プローブは例えば、酵素、酵素基質、オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、タンパク質、真核細胞又は原核細胞の膜受容体、抗体、抗原、ホルモン、生体の代謝物、生体の毒、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオシド、相補的DNA、又はそれらの混合物から成る群より選択され得る。むろん、プローブは相互作用すべき標的との関係に応じて選択される。
【0066】
また一例として、作用区域は、センサ又はアクチュエータ等の活性装置又は測定装置を含有してもよい。これらの装置は上述される作用区域に追加されてもよく、又は、本発明の実施態様で対象とされる目的に応じて排他的である場合もある。活性装置又は測定装置は好適には取り込み区域の中心に局在化される。作用区域がセンサを備える場合、センサは例えば、電気センサ、磁気センサ、静電気センサ、機械センサ(例えば圧力センサ)、熱センサ(例えば温度センサ)、光学センサ(例えば光検知装置)及び化学センサから成る群より選択され得る。作用区域がアクチュエータを備える場合、アクチュエータは例えば、光学アクチュエータ(光源)、電気アクチュエータ、磁気アクチュエータ、静電気アクチュエータ、機械アクチュエータ(機械的変位)、熱アクチュエータ(発熱エレメント(heating resitor))及び化学アクチュエータから成る群より選択され得る。本発明の実施態様に使用され得るこのようなセンサ及びアクチュエータ、並びにそれらを製造するプロセスもまた、特にラボオンチップ分野における当業者にとって既知である。
【0067】
本発明のプロセスの実施態様に関して、少なくとも1つの作用区域は、対象液体に対して実質的に非湿潤性の区域であってもよい。本発明者等は実際に、それらの実験の過程において、作用区域の湿潤性は本発明のプロセスの作用に影響を及ぼす要素ではないことを確認した。具体的には、本発明者等は、全く予想に反して、取り込まれる小滴が少なくとも部分的に作用区域を覆うならば、作用区域が対象液体に対して非湿潤性であっても本発明のプロセスは作用し得ることも観察した。
【0068】
取り込み(捕捉)区域の寸法は、それが意図される使用及びその性質(取り込み区域の種類、取り込み区域当たり1つ又は複数の作用区域、活性表面上の1つ又は複数の作用区域等)との関係に応じて、大きく変化し得る。例えば、ラボオンチップ又はマイクロシステムに関して、取り込み区域は5μm〜5mmの範囲の直径を有し得る。取り込み区域が帯状である場合、この帯は1〜500μmの幅であり、且つ活性表面と相関する0〜500μmの厚みを有し得る。作用区域のサイズは特に取り込み区域によって決定され(取り込まれる小滴は少なくとも部分的にこの作用区域を覆う必要がある)、この作用区域は、例えば、取り込み区域の上述される寸法に関して、作用区域がそれを囲む取り込み区域と接するか又は接しないような直径を有し得る。例えば、作用区域は5μm〜5mmの直径を有し得る。
【0069】
本発明によると、活性表面はまた、取り込み区域が縁の形態をとる場合、以下のように定義され得る(符号に関する案内は図11を参照のこと)。
D: 例えば15μm≦D≦5mmである小滴の内部直径
L: 小滴間隔
e: 例えば20μm≦e≦100μmである壁の最も広域な断面
h: 例えば5μm≦h≦20μmである壁の高さ
ここでh/D<0.15、e/D<0.33、及びh/L<0.3である。
【0070】
したがって、一例として、縁は好適にはリングの形態をとり、任意に上述される幾何学的形状の1つを有し、活性表面からの縁の高さ(h)は5〜20μmであり、活性表面でのリングの断面(e)は20〜100μmであり、且つ作用区域の範囲を定める縁内部の直径(D)は15μm〜5mmである。
【0071】
ラボオンチップ及びマイクロテクノロジーの分野において、取り込み区域の特徴的なサイズは100μmに近く、重力は短い範囲の相互作用に起因する取り込み区域による小滴の取り込み力と相対して取るに足らなくなるため、ボックスの配向は重要ではない。他方で、本発明の実施態様に関してより大きなサイズスケールを目的とする用途に関して、使用されるボックスはむろん好ましくは、活性表面の構造化に関して、水平に設けられ、上方を向く取り込み区域及び作用区域を形成する。
【0072】
本発明のプロセスは、以下のような2つの工程、
取り込み区域を覆うための、ボックス、すなわち流体チャンバの対象液体による完全な又は部分的な充填、及び次に
ボックスからの液体の取り出し
で概略的に示され得る。
【0073】
活性表面は非湿潤性であり、取り出し区域のみがそれぞれ、対象液体の小滴を保持する。
【0074】
それゆえ、様々な用途における本発明のプロセスの実施態様は、集合的に進行する操作、次いで形成される各小滴における個別的な操作を連続的に含み得る。このため、集合的な操作とみなされる第1の操作において、本発明のプロセスは、例えば上記ボックス内へと注入される対象液体の流体流れの移行を可能とし、互いに独立した小滴すなわち微小体のマトリクスを有する。次に、当業者とって既知である、検出プロセス、及び/又は化学反応若しくは生化学反応は、取り込み区域により取り込まれる各小滴において、個別的に(個別的な操作)、並行して又は連続的に実施され、対象液体中に存在する標的を検出及び分析し得る。
【0075】
しがって、本発明は、ラボオンチップ及び化学又は生物学に関するマイクロシステムにおける本発明のプロセス、例えば分析対象である対象液体中に存在する標的検体の分析及び/又は検出の使用にも関する。ラボオンチップ及びマイクロシステム自体を本発明のプロセスを実施することによって得ることができる。このことは、本明細書を読むことで当業者には明らかである。
【0076】
また、本発明は、対象液体中に存在し得る少なくとも1つの分子を検出するプロセスであって、
本発明のプロセスに従って、ボックス内の活性表面上に対象液体の小滴を局在的に分配する工程と、
上記ボックス内に存在し得る少なくとも1つの分子の上記小滴において電気化学検出を行う工程と
を含む、対象液体中に存在し得る少なくとも1つの分子を検出するプロセスに関する。
【0077】
このプロセスで使用されるボックスは、基板と、活性表面と、電気化学マイクロセルである作用区域と共に配置される取り込み区域とを備える。基板、作用区域を形成する構造化、実質的に表面を非湿潤性とするように意図される基板表面の処理、及び対象液体の小滴の取り込みのための区域を形成するように意図される表面の構造化は、上記に規定される。
【0078】
また、本発明は、対象液体中に存在し得る少なくとも1つの分子を光学的に検出するプロセスであって、
本発明のプロセスに従って、ボックス内の活性表面上に対象液体の小滴を局在的に分配させる工程と、
上記ボックス内に存在し得る少なくとも1つの分子の上記小滴において、光検知器を用いて検出を行う工程と
を含む、対象液体中に存在し得る少なくとも1つの分子を光学的に検出するプロセスに関する。
【0079】
このプロセスにおいて使用されるボックスは、基板と、活性表面と、作用区域と共に配置される取り込み区域とを備え、作用区域は光検知器である。基板、作用区域を形成する構造化、光検知器、実質的に表面を非湿潤性とするよう意図される基板表面の処理、及び対象液体の小滴の取り込みのための区域を形成するように意図される表面の構造化は、上記に規定される。
【0080】
光学検出は、(作用区域が、光検知器に加えて電気化学セルから成る場合には)取り込まれた小滴における電気化学反応、又は取り込まれた小滴における化学反応若しくは生物学反応(例えば、対象液体の小滴で覆われる作用区域におけるプローブ/標的相互作用を実証する酵素反応)を行った後に実施されてもよい。
【0081】
本発明によると、対象液体中に存在し得る様々な分子の検出は並行して、同時に又は連続的に、ボックス内の上記活性表面上に捕捉された対象液体の異なる小滴において実施されてもよい。
【0082】
本発明によると、検出対象である少なくとも1つの検体は、例えば生物学的分子又は化学分子から選択されてもよい。生物学的分子は、例えば酵素、酵素基質、オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、タンパク質、真核細胞又は原核細胞の膜受容体、ウィルス、抗体、抗原、ホルモン、生体の代謝物、生体の毒、ヌクレオチド、ヌクレオシド又は相補的DNAから成る群より選択されてもよい。化学分子は、定性的及び/又は定量的に分析される任意の分子であってもよい。
【0083】
本発明によると、対象液体中に存在し得る様々な検体の検出は並行して、同時に又は連続的に、ボックス内の上記活性表面上に捕捉された対象液体の異なる小滴において実施されてもよい。
【0084】
本発明はまた、対象液体中に存在する分子の電解重合(electropolymerization)のためのプロセスであって、
本発明のプロセスに従って、ボックス内の活性表面上に対象液体の小滴を局在的に分配させる工程と、
上記ボックス内で、上記対象液体の小滴において、重合対象の分子を電解重合する工程と
を含む、対象液体中に存在する分子の電解重合のためのプロセスに関する。
【0085】
このプロセスに使用されるボックスは、基板と、活性表面と、作用区域と共に配置される取り込み区域とを備え、作用区域は電気化学マイクロセルである。基板、この作用区域を形成する構造化、実質的に表面を非湿潤性とするように意図される基板表面の処理、及び対象液体の小滴の取り込みのための区域を形成するように意図される表面の構造化は、上記に規定される。ポリマーは例えばバイオチップの製造に使用される任意のポリマーであってもよく、例えばポリピロール、ポリアニリン、ポリアズレン、ポリチオフェン、ポリインドール、ポリフラン又はポリフルオレンである。
【0086】
したがって本発明の主題は、流体チャンバ(ボックス)内の表面上に高密度を有する対象液体の小滴マトリクスを形成するプロセスであり、この流体チャンバ(ボックス)は好ましくは密閉されており、流体の連通のみを有する。流体チャンバ(ボックス)はこのため、小滴を分配させる外部システム(小滴分配機器)を使用する必要がない。本発明のプロセスは、このような小滴マトリクスを非常に容易且つ迅速に、(分配装置がないため)非常に低いコストで製造することを可能にする。本発明のプロセスの可能性のある用途は全てこれらの利点の恩恵を受けている。
【0087】
本発明のプロセスのほとんどの基本的用途は、ラボオンチップ又は分析マイクロシステムの製造である。具体的に、対象液体はラボ及びマイクロシステムの製造に必要な全ての化学成分を含んでいてもよい。この化学成分は、例えば、プローブによって官能化されるモノマー等の活性表面上の各小滴部分における局在的な重合のためのモノマー、ポリマーと局在的に対象液体の各小滴部分において結合されるプローブ、表面上に局在的に付着される化学及び/又は生物学試薬、マーカー等である。
【0088】
本発明のプロセスを用いる複数の工程を有する化学若しくは生物学プロセス、及び/又は分析プロセスでは、全ての工程が小滴形成を導く必要は無い。具体的に、全ての取り込み区域を液体で覆い、次いで(例えば加圧ガスのボックス内への注入又は強力な攪拌等で)取り込み区域により捕捉された小滴が残らないようにこの液体のボックスを空にすることによって、特定の工程は何にも妨げられずに実行される。
【0089】
同一作用区域上に、作用区域を囲む取り込み区域によって、1つ又は複数の対象液体の異なる小滴を連続的に取り込むことがさらに可能である。各対象液体は、例えば化学的又は生化学的プロセスの複数の工程の1つを実行するために、例えば作用区域を製造するために且つ/又は分析を実行するために必要な1つ又は複数の試薬を含有し得る。同一作用区域上の一連の様々な小滴は、実施されるプロセスの異なる連続工程を、取り込み区域で囲まれる作用区域上で本発明のプロセスによって実施することを可能とする。これらのプロセス工程は全体として、それゆえ好適には作用区域上に局在化される。
【0090】
本発明は、非常に多様な分野に適用され得る。したがって、ラボオンチップ(LOC)又は全分析マイクロシステム(μTAS)として一般に知られている化学及び生物学に関するマイクロシステムは、表面上で高部分密度で作用し、且つ2段階(集合的工程及びその後の個別的工程)で実施する必要がある全ての場合に、本発明を利用し得る。例えば、DNA又はタンパク質チップは本発明に関連する。また、本発明は、小滴又は生成物の制御されるマトリクスを形成する必要のあるどのような場合、例えば医薬品の局在的な乾燥、着色スポットの形成、定性的及び/又は定量的に分析される分子の局在的グラフト化にも適用され得る。なお、この新規のプロセスは非常に少量で作用し、そのため試薬、例えば均一系触媒、薬化学の高付加価値分子に関して節約する必要のある用途を検討することを可能にする。
【0091】
本発明の他の特徴及び利点はまた、添付される図面を参照して、限定されない例示として与えられる以下の実施例を読むことで当業者にとって明らかとなるであろう。
【実施例】
【0092】
これらの実施例において、対象液体の小滴の取り込みのための区域を形成する基板の構造化は一般的にリングの形をとり、それにより各取り込み区域の中心に作用区域を空ける。
【0093】
実施例1:水性の対象液体に対して非湿潤性である活性表面の製造例
300nmの酸化ケイ素(SiO)の上層を有するシリコン(Si)基板を疎水性シラン(1H,1H,2H,2H−ペルフルオロデシル−トリクロロシラン)で処理して、表面を疎水性とする。
【0094】
プロトコルは以下の通りである。シラノール部位を生成するため、3.5Mの水酸化ナトリウム/水/エタノールの混合物中で2時間、室温で処理後、基板を9mMのシラン濃度を有する無水トルエン/疎水性シランの混合物中に10分間、室温で放置する。それを次にトルエン、次いでアセトン、次いでエタノールで洗浄し、最後にエタノール中で5分間超音波処理により洗浄する。基板をその後、110℃のオーブン内に1時間置く。水に対して測定される接触角は110°である。
【0095】
実施例2:本発明のプロセスの実施態様に使用され得る、活性表面上に設けられる支持材料から成る取り込み区域の製造
300nmのSiO層を有するSi基板上で、マイクロエレクトロニクス分野の熟練者にとっては基本的な工程、すなわち、
噴霧による白金(Pt)の300nmの堆積、
電流インレットストリップと連結する円形パターンの穴形状(opening)を有する感光性樹脂を用いるフォトリソグラフィ、
プラズマリアクタにおける、樹脂の無い区域でのPtの完全なイオンエッチング、
硝酸浴中での樹脂の除去、
プラズマリアクタにおける、SiOの500nmの化学気相蒸着、
円形パターンの穴形状を有する感光性樹脂を用いるフォトリソグラフィ、
プラズマリアクタにおける、樹脂の無い区域でのSiOの500nmの完全なイオンエッチング、及び
硝酸浴中での樹脂の除去
が実行される。
【0096】
図7aは、支持材料から成り且つ得られる作用区域を囲む円形取り込み区域の図示である。
【0097】
実施例3:本発明のプロセスの実施態様に使用され得る、ブラックシリコンから成る取り込み(「捕捉」)区域の製造
Si基板上で、以下の工程(これらの工程は全てマイクロエレクトロニクス分野の熟練者にとって既知である)、
クラウンの形をとるパターンの穴形状を有する感光性樹脂を用いるフォトリソグラフィ、
プラズマリアクタにおける、ブラックシリコンを形成するための、文献[11]に記載されるプロトコルによるシリコンの約3μmのイオン反応性エッチング、
Plassys MDS 150プラズマリアクタ(Plassis社製(フランス))における以下の条件、すなわち、電力500W、反応時間4分、圧力21.33Pa(160mTorr)、酸素流速25cm/min.、室温での処理による、エッチングの最後における表面の洗浄、及び
硝酸浴中での樹脂の除去
が実行される。
【0098】
これらの所定区域に形成されるブラックシリコンは高い親水性を示すが、このシリコンは水性の対象液体(試料)に対して実質的に非湿潤性である。
【0099】
図5及び図6は、作用区域の周囲に形成される種々の取り込み区域を図式的に示す。微細構造が作成され、作用区域(Zt)を形成するよう意図される区域の周囲に、取り込み区域(Zc)を構成するブラックシリコンの開放型又は閉型の帯を作成した。図6において、取り込み区域は、2つ(右側)又は4つ(左側)の作用区域の周囲に設けられる。
【0100】
エッチングされた区域は他のどのような化学変性も必要としない。本発明のこの装置は、水性の対象液体と共に使用されるよう意図される。
【0101】
実施例4:本発明のプロセスの実施態様に使用され得る、ウェッティングによる捕捉のための電極の形態をとる取り込み区域の製造
4.1 取り込み電極の形態をとる取り込み区域:
300nmのSiO層を有するSi基板上で、以下の工程が実行される。
α)実施例2と同様の工程が実行され、電極(支持材料)を活性表面上に設ける。
β)対象液体に対して非湿潤性である活性表面を基板全体に準備して、実施例1と同様に基板全体を疎水性とする。電極は続いて化学的に水酸化ナトリウム/水/エタノールの溶液によって洗浄される。これを行うために、3.5Mの水酸化ナトリウム/水/エタノールの混合物の小滴を電極上に2時間、室温で放置する。電極は次に水によって洗浄され、その後乾燥される。
γ)付加実験では、親水性障壁を電極上に、3位にアルコール官能基(水性の対象液体に対して湿潤性である官能基)を有するピロールの定電圧下での電解重合によって製造した。このポリピロールはピロール−3−エタノールと0.5Mの過塩素酸リチウム(LiClO)との100mMの溶液から生成される。Ag/AgCl/Clに対して1Vの電位が5秒間印加される。電極上の水に対して測定される接触角は53°である。
【0102】
図7aは、本実施例のプロトコルを用いて得られる本発明による装置の図示である。この図において、作用区域(Zt)を囲む取り込み区域(Zc)は湿潤性官能基(アルコール官能基)を有するポリピロールによって被覆された電極で形成される。
【0103】
4.2 湿潤性の帯の形態をとる取り込み区域:
300nmのSiO層を有するSi基板上で、以下の工程が実行された。
α)対象液体に対して非湿潤性である活性表面を基板全体に準備して、実施例1と同様に表面を疎水性とする。
β)クラウンの形をとるパターンの穴形状を有するネガ型感光性樹脂(参考品は供給者シップレー社(Shipley)のNFR−015)を用いるフォトリソグラフィによって、取り込み区域(すなわち湿潤性の帯)を形成する。
γ)Plassys MDS 150プラズマリアクタ(Plassys社製(フランス))における以下の条件、すなわち、電力500W、反応時間4分、圧力21.33Pa(160mTorr)、酸素流速25cm/min.、室温での処理による、感光性樹脂のオープンパターンにおける疎水性シランの分解。
δ)アミン官能基(水性の対象液体に対して湿潤性である官能基)を有するシランを用いたシラン処理による取り込み区域の準備。基板は、エタノール中の体積比で10%のγ−アミノプロピルトリエトキシシランを含有する溶液中に放置される。一晩室温で放置した後、基板をエタノールで洗浄し、最後に110℃のオーブン内に3時間放置した。
【0104】
実施例5:本発明のプロセスの実施態様に使用され得る、縁から成る取り込み区域の製造
新しいシリコンウェハ上で、フォトリソグラフィ工程が、厚みのある感光性樹脂であるClariant AZ4562(商品名)により、以下の様式、すなわち、
120℃のオーブン内での、この場合はヘキサメチレンジシラザンである接着促進剤の堆積、
200rpm/sの加速を有する、1,000rpm、30秒間のスピンコーター上での樹脂によるコーティング、
ホットプレート上で115℃、2分間のアニーリング、
マスクを通した、バッチ方式(5秒間の中断を設けて、5×10秒)で50秒間のKarl Suss MA750(商品名)絶縁装置における絶縁、
1:3の脱イオン水で割合で希釈されたShipley MF319(商品名)溶液中での現像、
脱イオン水での洗浄、及び窒素流の下での乾燥、
ホットプレート上で115℃、3分間、その後150℃、1分間のアニーリング、
厚み測定:13μm
によって実行される。
【0105】
絶縁に使用されるマスク上で、全てのパターンがリングを示し、そのリングの壁は35μmの幅であり、リングの直径(100〜1,000μm)と、2つの縁(クラウン)間の内部中心距離(50〜1,000μm)との様々な組み合わせを有する。
【0106】
1cmの区域上に3,025個のキュベット(c)が容易に得られた。
【0107】
図11の右側に、縁の形態の得られる取り込み区域(Zc)を図示する。これらの取り込み区域は、対象液体の小滴(g)を取り込むことが可能なキュベット(c)を形成する。
【0108】
実施例6:本発明のプロセスに使用され得る、プローブによって官能化される作用区域の製造
本実施例において、4つの電極を備える作用区域が製造され、使用される。300nmのSiO層を有するSi基板上に、マイクロエレクトロニクス分野における熟練者にとっては基本的な工程、すなわち、
噴霧による白金(Pt)の300nmの堆積、
マイクロセル、取り込み電極及び電流インレットストリップのパターンの穴形状を有する感光性樹脂を用いるフォトリソグラフィ、
プラズマリアクタにおける、樹脂の無い区域でのPtの完全なイオンエッチング、
硝酸浴中での樹脂の除去、
プラズマリアクタにおける、SiOの500nmの化学気相蒸着、
マイクロセルの電極及び取り込み電極のパターンの穴形状を有する感光性樹脂を用いるフォトリソグラフィ、
プラズマリアクタにおける、樹脂の無い区域でのSiOの500nmの完全なイオンエッチング、及び
硝酸浴中での樹脂の除去
が実行される。
【0109】
取り込み区域(Zc)を形成するのに用いられる作用電極(We)(図8参照)、対電極(CE)及び付属電極は、白金(約5,000Åの堆積)から作成される。Ag/AgCl/Clの参照電極(Rf)も存在する(図8参照)。
【0110】
Ag/AgCl/Clの参照電極(Rf)も存在する。この電極は、白金上に銀を堆積することによる以下のプロトコルにより得られる。
0.2MのAgNOと、2MのKIと、0.5mMのNaとを含有する10mlの溶液の調製、
飽和カロメル電極(SCE)の電位に対して−0.65Vの電位が、参照電極に(クロノアンペロメトリに従って)90秒間印加されること。灰色/白の堆積物が得られる。作用区域は次いで水で洗浄され、
改質された電極を有する作用区域は0.1MのHCl溶液中に浸漬され、SCEの電位に対して0.5Vの電位を30秒間印加して、銀の堆積物を塩素化処理する。基板は続いて水で洗浄される。
【0111】
各作用区域は、実施例1に記載されるプロトコルに従って疎水性シランを用いて完全にシラン処理された。
【0112】
親水性障壁は、実施例4.1−δに記載されるプロトコルに従って取り込み電極上に製造される。
【0113】
対電極(CE)は次に、ピロール/1位を生物学官能基によって官能化されたピロールの導電性コポリマー(この場合、オリゴヌクレオチドプローブ)によって官能化される[5]。電解重合は作用区域の対電極上に局在化される。
【0114】
この作用区域を試験するために、オリゴヌクレオチドプローブを、緩衝液(1MのNaCl/10mMのTris/1mMのEDTA/0.05%のTriton X100)中の酵素マーカー(HRP「ホースラディッシュペルオキシダーゼ」)を有する標的オリゴヌクレオチド(100pM)とハイブリダイズ(hydribized)する。同じ緩衝液だがTritonを含まない液中で洗浄後、現像溶液(OPD+H+50mMのリン酸−クエン酸緩衝液)が本発明の装置上へ導入され、その後吸引によって除去される。液体の画分は明らかに、図9の写真に示されるように、作用区域上に局在的に残される。
左側には、装置が現像溶液によって覆われる前の、小滴を含まない本発明の装置が識別され、且つ
右側には、現像溶液が吸引によって除去された後の、取り込み区域(親水性の帯)によって現像溶液の小滴が取り込まれた本発明の装置が識別される。
【0115】
5分間の現像の後、酵素産物が測定電極(WE)上で微分パルスボルタンペロメトリ(voltamperometry)によって検出される。この検出の結果を添付される図10のグラフに示す。
【0116】
図8は、本実施例のプロトコルを用いて得られる本発明による装置の電気化学マイクロセルの図示である。この図では、作用区域は、測定電極すなわち作用電極(WE)、対電極(CE)上に堆積されるオリゴヌクレオチドを有する導電性ポリマー(Po)、及びアルコール官能基を有するポリマーが堆積される最外電極(Pm)により形成される取り込み区域(Zc)から構成される。全体は非湿潤性活性表面(Sa)上に製造される。
【0117】
実施例7:本発明のプロセスを実施するのに好適なボックスの製造
ポリジメチルシロキサン(PDMS)の中空蓋が、1mmの余分な厚み(overthickness)を有する正方形パターンを有するガラスの型上で成形することによって製造される。
【0118】
先行の実施例で得られるような本発明の平面装置上に、この中空蓋は、紫外線照射による架橋接着剤(VITRALIT 6181)で接着することによって、漏洩しないように取り付けられる。流体注入口及び排出口の連通部は、小径ニードルを用いて蓋に穴を開けることによって製造される。注入口用ニードルは、流体輸送管、及び対象液体で満たされたシリンジに連通される。液体が連通目的で備えられた連通部のみを通るであろうということを考慮して、最終組立体いかなる漏洩も検出するために試験する。
【0119】
図3は本実施例で得られるボックスの図示である。
【0120】
注入口連通部及び排出口連通部の他の配置は容易に作成可能であり、図2は、種々のボックスの図示を与える。この図において、B1、B2及びB3は、注入口(o)及び排出口(s)が別個に設けられる本発明による3種類のボックスを示す。Sb、Sa、Zc及びZtは、上述された図と同様の意味を有する。本発明のボックスを構成する様々な構成要素は3つの図に同様に示される。
【0121】
図4は、本発明によるボックスを製造するのに用いられる活性表面の上面図における図示である。この活性表面は12個の取り込み区域及び12個の対応する作用区域を備える。活性表面は基板に対して非湿潤性である。本発明のプロセスの実施態様に使用され得る種々の形の取り込み区域、特にリング又はディスクの形をとる取り込み区域が、製造された。これらの取り込み区域を図5及び図6に示す。
【0122】
実施例8:小滴の局在的分配のための本発明のプロセスの実施、及び結果
本発明のプロセスの実施態様を上記の実施例7に従って製造されるボックス上で試験する。このボックスは上記の実施例2〜6に従って製造される種々の取り込み区域を有する。
【0123】
図1は、密閉ボックスの作用を示す。このボックスは対象液体をボックス内へ導入する第1の開口(o)、及び対象液体をボックスから取り出す第2の開口(s)を有する。対象液体Eは、第1の開口(o)を介してボックス(上図)内へ注入されて、ボックスを満たし(中央図)、その後第2の開口(s)を介して取り出される(下図)。用いられる注入手段は、シリンジであり、用いられる取出し手段もシリンジである。小滴マトリクス(g)は、取り込み区域(Zc)によって添付の図4に示されるように活性表面上に得られる。
【0124】
図3は、密閉ボックスの作用を示す。このボックスは対象液体をボックス内へ導入し且つ対象液体をボックスから取り出す第1の開口(o)、及びボックス内の空気を対象液体の導入時に出して、対象液体の取り出し時に入れることが可能な第2の開口(s)を有する。対象液体Eは、1つの開口のみを通ってボックス内へ注入され且つその後ボックスから取り出される。小滴マトリクス(g)は、添付の図4に示されるように得られる。
【0125】
本実施例は、種々の取り込み区域上に明らかに局在化される小滴マトリクス(g)が本発明のプロセスによって得られることを示す。様々な取り込み区域が対象液体によって覆われるのであれば、ボックスの充填は必須ではない。
【0126】
図5及び図6に示される形のような異なる形を有する取り込み区域によって行われる実験は、作用区域と共に配置されるこれらの取り込み区域が本発明のプロセスの実施にとっても機能的であることを示す。
【0127】
実施例9:電気化学検出プロセス
実施例6に従って製造される取り込み区域及び作用区域を有するボックスは、実施例7のプロトコルに従って製造される。
【0128】
対象液体は、酵素HRPの基質を含む現像溶液、すなわち過酸化水素(H)及び色素源オルトフェニレンジアミン(OPD)から成る。この溶液は密閉ボックス内へ導入され、取り込み区域を覆い、その後このボックスから吸引によって除去される。
【0129】
対象液体の小滴は、添付の図9の写真によって示されるように、取り込み区域によって明らかに取り込まれ、作用区域を覆う。
左側には、活性表面が対象液体によって覆われる前、小滴を含まない作用区域が識別され、且つ
右側には、対象液体が吸引によって除去された後、対象液体の小滴を取り込んだ取り込み区域が識別される。
【0130】
5分間放置した後、酵素反応を展開するように作用する、酵素産物は微分パルスボルタンペロメトリによって検出される。この検出の結果を、添付の図10のグラフに示す。
【0131】
作用区域を囲む取り込み区域はそのため実際に機能的であり、本発明のプロセスは実際に、各捕捉された小滴中の検体を検出することを可能にする。
【0132】
実施例10:電解重合プロセス
実施例6に従って製造される取り込み区域及び作用区域を有する作用ボックスは実施例7のプロトコルに従って製造される。
【0133】
上記の実施例6と同様に、官能化又は非官能化ピロールの重合は、取り込み区域によって取り込まれた小滴において局在的に得られた。
【0134】
[参考文献リスト]
[1]国際公開第02/16023号パンフレット:プロトジーン・ラボラトリーズ・インコーポレーテッド(Protogene Laboratories Inc.)
[2]米国特許第6,040,193号明細書:アフィメトリックス インコーポレイテッド(Affymetrix Inc.)
[3]国際公開第99/03684号パンフレット:イーペン・セイジ(Eapen Saji)他
[4]アゼック(Azek)他著、Analytical Biochemistry, 2000年, 284, 107〜113頁
[5]国際公開第00/36145号パンフレット:コミッサリア ア レネルジー アトミーク(Commissariat a l'Energie Atomique).
[6]国際公開第02/090573号パンフレット:インフィネオン(Infineon).
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[10]ミラ・ボンチェヴァ(Mila Boncheva)他著、「インターフェースにおけるオリゴヌクレオチド配列の設計(Design of Oligonucleotide Arrays at Interfaces)」、Langmuir 1999年, 15, 4317〜4320頁
[11]H.ヤンセン(H. Jansen)他著、「ブラックシリコン法:プロファイル制御によりディープシリコントレンチエッチングにおけるフッ素系反応性イオンエッチャーのパラメータ設定を確定する汎用法(The black silicon method: a universal method for determining the parameter setting of a fluorine-based reactive ion etcher in deep silicon trench etching with profile control)」、J. Micromech. Microeng. 5, 1995年, 11〜120頁
[12]仏国特許出願公開第2,818,662号明細書
[13]欧州特許第561,722号明細書
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】小滴マトリクスの作成のための本発明のプロセスの実施態様の例を断面において示す図である。
【図2】異なる密閉ボックスを使用する本発明のプロセスの種々の可能な実施形態の図示であり、これらの実施形態は、対象液体の出入りのための開口の配置において特に異なる。
【図3】本発明のプロセスの実施態様に使用され得る装置を断面において示す図であり、ここでは、対象液体を密閉ボックス内へ導入し且つ対象液体をボックスから取り出す手段はこのボックスの同一の開口を使用している。
【図4】小滴マトリクスが本発明のプロセスを用いて形成される活性表面(S)の実験写真から製造される上面図における図であり、左側はこのプロセスを実施する前の小滴を有さない表面であり、右側は、本発明のプロセスの最終工程において対象液体がボックスから取り出された際に取り込み区域(Zc)によって保持される小滴(g)のマトリクスを有する表面である。
【図5】特にこれらの区域が作用区域を囲む場合の、本発明のプロセスの実施態様に使用され得る種々の形の取り込み区域を図示する。
【図6】特にこれらの区域が作用区域を囲む場合の、本発明のプロセスの実施態様に使用され得る種々の形の取り込み区域を図示する。
【図7a】特にこれらの区域が作用区域を囲む場合の、本発明のプロセスの実施態様に使用され得る種々の形の取り込み区域を図示する。
【図7b】特にこれらの区域が作用区域を囲む場合の、本発明のプロセスの実施態様に使用され得る種々の形の取り込み区域を図示する。
【図7c】特にこれらの区域が作用区域を囲む場合の、本発明のプロセスの実施態様に使用され得る種々の形の取り込み区域を図示する。
【図8】作用区域が電気化学マイクロシステムである本発明のプロセスの実施態様に使用され得る装置を図式的に示す。
【図9a】対象液体の小滴を取り込む前の、作用区域が電気化学マイクロセルである装置における本発明のプロセスの実施態様を示す写真である。
【図9b】対象液体の小滴を取り込んだ後の、作用区域が電気化学マイクロセルである装置における本発明のプロセスの実施態様を示す写真である。
【図10】作用区域において、本発明の実施態様によって取り込まれた小滴における、酵素反応の生成物の検出を示すグラフである。
【図11】2種類のキュベットの断面における図示である。左側が従来技術のキュベットであり、右側が本発明によるキュベットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の活性表面上に対象液体の小滴を局在的に分配させるプロセスであって、
前記対象液体を導入手段によってボックス内へ導入する工程であって、該ボックスは前記活性表面を取り囲んでいる、導入する工程と、
前記対象液体を前記ボックスから取り出し手段によって取り出す工程と
を含み、
前記活性表面及び前記ボックス内部の他の表面は、前記活性表面上に既定の方法で形成され且つ前記対象液体の小滴を取り込むのにそれぞれ好適であるいくつかの局在化された取り込み区域を除いて、前記対象液体に対して実質的に非湿潤性であり、
前記ボックス内の前記対象液体を導入する手段及び取り出す手段は、前記対象液体が前記ボックス内へ導入される際に、前記取り込み区域を覆うように、且つ前記対象液体が前記ボックスから取り出される際に、前記対象液体の小滴が各取り込み区域に分配され且つ局在化された状態で捕捉されるように配置される、基板の活性表面上に対象液体の小滴を局在的に分配させるプロセス。
【請求項2】
各取り込み区域は、前記活性表面上に形成される少なくとも1つの作用区域が前記対象液体の捕捉された小滴と接触するように、該作用区域と共に配置される請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
少なくとも1つの作用区域が、前記対象液体に対して非湿潤性の区域である請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
少なくとも1つの取り込み区域が、該取り込み区域と共に配置される前記少なくとも1つの作用区域を取り囲む開放リング形状又は閉リング形状を有する請求項2又は3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記対象液体の小滴の取り込みのための区域が、複数の作用区域を取り囲む請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記作用区域が、前記対象液体中に存在し得る化学種の検出のための区域である請求項1〜5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記作用区域が、生物学的プローブによって官能化される区域である請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記プローブが、酵素、酵素基質、オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、タンパク質、真核細胞又は原核細胞の膜受容体、抗体、抗原、ホルモン、生体の代謝物、生体の毒、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオシド又は相補的DNAから成る群より選択される請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記作用区域が、化学分子によって官能化される区域である請求項6に記載のプロセス。
【請求項10】
前記作用区域が、前記捕捉された小滴との電気的相互作用及び/又は化学的相互作用を有する区域である請求項2〜9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記作用区域が電気化学マイクロセルである請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記作用区域が、光学センサ、電気センサ、磁気センサ、静電気センサ、機械センサ、熱センサ及び化学センサから成る群より選択されるセンサを備える請求項2〜9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記作用区域が、光学アクチュエータ、電気アクチュエータ、磁気アクチュエータ、静電気アクチュエータ、機械アクチュエータ、熱アクチュエータ及び化学アクチュエータから成る群より選択されるアクチュエータを備える請求項2〜9のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記対象液体の小滴の取り込みのための少なくとも1つの区域が、電気的取り込み区域又は物理的な取り込み区域である請求項1〜13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記取り込み区域が、毛管力によって前記対象液体の小滴を取り込む請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記取り込み区域が、ウェッティングによって前記対象液体の小滴を局在的に取り込む請求項14に記載のプロセス。
【請求項17】
前記取り込み区域が、前記活性表面の湿潤性よりも大きい前記対象液体のための該取り込み区域の湿潤性によって、前記対象液体の小滴を局在的に取り込む請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記取り込み区域が、エレクトロウェッティングによって前記対象液体の小滴を局在的に取り込む請求項16に記載のプロセス。
【請求項19】
前記取り込み区域が、前記対象液体の親水性/疎水性型の相互作用によって、前記対象液体の小滴を取り込む請求項14に記載のプロセス。
【請求項20】
少なくとも1つの前記取り込み区域が、該取り込み区域が形成される前記活性表面に対して起伏部又は凸部にある請求項1〜19のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記活性表面上に所定の方法で分配された前記局在的な取り込み区域が、マトリクスを形成する請求項1〜20のいずれか1つに記載のプロセス。
【請求項22】
前記対象液体を取り出す手段が、該対象液体を前記ボックスから吸引によって除去する手段であり、前記取り出し工程は、前記対象液体を前記ボックスから吸引によって除去することである請求項1〜21のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項23】
前記対象液体を取り出す手段が、ガス流体を前記ボックス内へ注入する手段であり、前記取り出し工程は、ガス流体を前記ボックス内へ注入して、それによって前記対象液体を前記ボックスから追い出すことである請求項1〜22のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項24】
前記注入されるガス流体が、前記対象液体の蒸気で飽和される請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
ラボオンチップ又は化学もしくは生物学に関するマイクロシステムにおける請求項1〜24のいずれか1項に記載のプロセスの使用。
【請求項26】
DNAチップ、RNAチップ、タンパク質チップ、抗体チップ、抗原チップ及び細胞チップから成る群より選択されるバイオチップにおける請求項1〜25のいずれか1項に記載のプロセスの使用。
【請求項27】
対象液体中に存在し得る少なくとも1つの分子を検出するプロセスであって、
請求項1に記載のプロセスに従って、ボックス内の活性表面上に対象液体の小滴を局在的に分配する工程と、
前記対象液体中に存在し得る前記少なくとも1つの分子の前記小滴において、電気化学的検出を行う工程と
を含む、対象液体中に存在し得る少なくとも1つの分子を検出するプロセス。
【請求項28】
対象液体中に存在し得る少なくとも1つの分子を光学的に検出するプロセスであって、
請求項1に記載のプロセスに従って、ボックス内の活性表面上に対象液体の小滴を局在的に分配する工程と、
前記対象液体中に存在し得る前記少なくとも1つの分子の前記小滴において、光学的検出を行う工程と
を含む、対象液体中に存在し得る少なくとも1つの分子を光学的に検出するプロセス。
【請求項29】
前記対象液体中に存在し得る様々な分子の検出が、前記ボックス内の前記活性表面上に捕捉された対象液体の異なる小滴において並行して実施される請求項27又は28に記載のプロセス。
【請求項30】
対象液体中に存在する分子の電解重合のためのプロセスであって、
請求項1に記載のプロセスに従って、ボックス内の活性表面上に対象液体の小滴を局在的に分配する工程と、
前記ボックス内で、前記対象液体の小滴において、重合される前記分子を電解重合する工程と
を含む、対象液体中に存在する分子の電解重合のためのプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−510148(P2007−510148A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−537381(P2006−537381)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050527
【国際公開番号】WO2005/042164
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(500348697)コミッサリア ア レネルジー アトミーク (21)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L´ENERGIE ATOMIQUE
【出願人】(506138889)
【氏名又は名称原語表記】BIOMERIEUX SA
【住所又は居所原語表記】Chemin de l’Orme,69280 MARCY L’ETOILE, France
【Fターム(参考)】