説明

対象物体の高さ評価法及びレーダーシステム

【課題】低い対象物体及び高い対象物体間を識別する車両用レーダーシステムの提供。
【解決手段】本発明は、対象物体(202)が反射したレーダー信号(206,209)を使用して対象物体の高さを評価する方法及びレーダーシステムに関する。レーダーシステムは、受信器(43)、プロセッサ(44)、相関器(45)及び決定回路(47)を有する。受信器は、対象物体が反射した複数のレーダー信号を検出する。プロセッサは、異なる複数の射程のそれぞれで複数の反射信号の振幅を解明して対象物体振幅データ組を生成する。相関器は、対象物体振幅データ組が対象物体の特定高さと相関があるかどうかを決定する。決定回路は、対象物体の高さが、対象物体振幅データ組と最もよく合致する保存された振幅データ組の一つに対応する高さであると宣言する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダーシステムに関し、より特定すると、対象物体の仰角すなわち高さの決定法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーダーは、航空機、軍事標的及び車両等の対象物体を検出する多くの用途に使用される。レーダーの比較的最近の用途は、自動車用のレーダーシステムである。自動車用のレーダーシステムは、運転手の車の駐車、安全な距離で交通の流れに乗ること、及び障害物の検出の際に運転手を補助する使用が知られている。このような用途において、レーダーシステムが車両の前部において障害物又は交通の減速を検出する際に、警告音又はダッシュボード上の警告灯等により運転手に警告を発し、事故を回避するためにブレーキをかけること等の方法により車両を実際に制御することができる。
【0003】
代表的なレーダーシステムは、対象物体で反射した後、レーダー信号の発信及びレーダーに戻る信号の受信間の往復遅延時間を決定することにより、対象物体までの射程(すなわち距離)を検出する。半分に割って放射速度cを乗じたこの往復遅延は、(送信アンテナ及び受信アンテナは同一のアンテナであるか互いに極めて接近しているとの仮定の下で)レーダーシステム及び対象物体間の距離を与える。対象物体の位置は、代表的には、一般的な3方法のうちの一つで決定される。第1技法においてレーダービームは狭いので、対象物体の反射戻り信号という結果となる信号を送ると、対象物体への方位は、ビームが指している方位角及び仰角の双方の方向で与えられる。方位、仰角及び射程の組合せは、対象物体の位置を与える。第2技法において、複数のレーダー送信器及び受信器の一方又は双方をアレー状に配列することができ、複数の送信器及び受信器の一方又は双方から集められた射程情報を相互に関連付けることができ、三辺測量により対象物体の位置を決定する。特に、既知の位置(例えば特定の受信器)から対象物体の射程を知ることは、対象物体が存在する球面を定める。この球面は、レーダー受信器の中心にあり、計測された射程と等しい半径を有する。異なる位置の異なる複数の受信器から単一の対象物体用の射程球面を決定することにより、これら全ての球面が交差する点の中心を計算することができる。多くの実際的な用途において、対象物体が存在する単一点を一義的に識別するのに十分なデータを提供するためには、わずか3個の受信器で十分である。モノパルスレーダー技法として知られる対象物体の方位角及び仰角を検出する第3技法において、方位角、仰角及び射程の共通カバー範囲で、2個以上のレーダーアンテナからの反射信号の相対振幅は、方位角及び仰角を決定するのに使用される。
【特許文献1】特開平6−168400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くのレーダーは射程、方位角及び仰角で対象物体の位置を決めるが、代表的な自動車レーダーは仰角を無視する。しかし、(車が容易に横断できる極めて低い対象物体等の)不要なレーダー検出を生ずる迷惑物体は、仰角すなわち高さにおいて区別する必要があるかもしれない。
【0005】
仰角の区別が有用であることが証明できる一例は、障害物回避に使用される自動車レーダーシステムである。障害物回避において、車両の前部で車両が移動する方向に接近する対象物体の高さを決定することが望ましい。特に、所定高さ以下の対象物体は、車両がその対象物体上を走行する場合に車両又はその搭乗者に対しておそらく危害がないのに対し、所定高さの障害物の上又はその中を走行することはおそらく危険であろう。例えば、アルミニウム缶及び他の小さなごみ等の小さな物体の上を車両が走行することは、安全である。実際、かなりの質量又は電磁反射率を有する物体(例えば、金属物体)は、事実上地面にある場合であっても、レーダーシステムに反射を返すおそれがある。このような障害物には、マンホールのカバーや道路の延長結合部が含まれる。
【0006】
従って、高さで対象物体間を区別するレーダーシステムに対する需要がある。例えば、本当は障害物ではないが車両又はその搭乗者に危害を与える物体に関して、不要なほど頻繁に警告を発しブレーキをかけるようなことが無いように、低い対象物体及び高い対象物体間を識別する車両用レーダーシステムに対する需要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による解決手段は、対象物体が反射したレーダー信号を使用して対象物体の高さを評価する方法により提供される。この方法は、異なる複数の射程でそれぞれ対象物体から反射された複数のレーダー信号を検出する工程と、異なる複数の射程のそれぞれでの複数の反射信号の振幅を解明(resolve)して対象物体振幅データ組を生成する工程と、対象物体振幅データ組が対象物体の特定高さと相関があるかどうかを決定する工程とを有する。
【0008】
本発明による解決手段はまた、レーダー信号を送信する送信器と、対象物体が反射したレーダー信号を受信する受信器と、異なる複数の射程のそれぞれでの複数の反射信号の振幅を解明して対象物体振幅データ組を生成するプロセッサと、対象物体振幅データ組が対象物体の特定高さと相関があるかどうかを決定する相関器と、対象物体の高さが、対象物体振幅データ組と最もよく合致する保存された振幅データ組の一つに対応する高さであると宣言する決定回路とを有するレーダーシステムにより提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明は、対象物体から反射されたレーダー信号を使用して対象物体の高さを評価する方法及び装置に関する。ここで、受信器は、異なる複数の射程でそれぞれ対象物体から反射された複数のレーダー信号を受信し、異なる複数の射程のそれぞれでの複数の反射信号の振幅を解明して振幅データ組を生成し、振幅データ組が特定高さと相関があるかどうかを決定する。
【0011】
図1は、典型的なレーダーアンテナアレーのブロック図である。図1の構成は、単に実際のアンテナアレーの典型例に過ぎない。本発明は、基本的に任意のレーダーシステムとよく機能する。このレーダーシステム10は、1個の送信アンテナアレー11及び2個の受信アンテナアレー13の使用により射程/方位レーダーとして機能する。送信アンテナアレー11は、6個のアンテナ素子12の線形垂直アレーからなる。受信アンテナアレー13は、6個のアンテナ素子14の2列の線形垂直アレー13a,13bを有する。各アレーの6個の素子は、マイクロ波カプラを介して合算され、マイクロ波分布ネットワーク(図示せず)に合致する。モノパルス型アルゴリズムが、受信アンテナ線形アレー13a,13bの双方からの信号を使用して、受信器の射程の範囲内である対象物体の方位を決定する。受信アンテナ仰角ビームを形成するために6個の素子全てが合算されるので、1本の仰角ビームのみが存在する。このため、この構成によれば、対象物体仰角は、方位が方位角平面内で計測される同一の方法で計測することができない。
【0012】
本発明は、レーダーシステムにより検出される対象物体の高さを決定するための技法を有する。本明細書に開示された技法は、低コストで効率的である。特に、全体がソフトウエアで実施することができるので、レーダーシステムのハードウエアに対する変更を一般的には要しない。
【0013】
特定の実施に依存して、システムは、条件が許容する正確性で対象物体の高さを決定するよう構成されてもよく、又は、所定高さより高い対象物体と所定高さより低い対象物体との間を単に区別するよう構成されてもよい。例えば、障害物回避用の自動車レーダーにおいて、対象物体が所定高さより高いか低いかを決定することのみが有用かもしれない。例えば、代表的な車両は、車両のバンパーの高さの約半分より低い障害物を安全に横断できる。バンパーは地上から約34cmが代表的であるので、区別高さは約17cmであると決定される。
【0014】
対象物体のレーダー検出は、送信アンテナ12からの電磁ビームを送信し、ビームの経路内で対象物体のビーム反射の受信により機能する。対象物体の表面の方向性に依存して、対象物体が反射した電磁放射は、受信アンテナ14に戻ってもよいし、戻らなくてもよい。しかし、一般的には、対象物体は放射の或る部分を反射し、対象物体の或る点又は表面のレーダー受信アンテナに戻る。実際、反射された放射は、対象物体の複数の点又は表面の受信アンテナに戻ることができる。しかし、実際問題として、多くの物体は、受信アンテナに戻るレーダーエネルギーを反射する1個の又は小数の反射点を有する。一般的に、レーダーは、sの約1/2波長の大きさで特徴を見ることができる。このため、(1.24cmの波長に対応する)典型的な24GHzレーダーは、1cm未満の解像度を有する。この解像度では、レーダー受信器は、道路上で遭遇するかもしれない典型的な物体上の複数の点で複数の反射を受信することが多いが、通常は1点が支配的である。従って、実際の多くの用途において、検出目的のためには、対象物体の単一の主な反射経路を使用することが安全である。さらに、アルゴリズムは、周知であり、受信アンテナで受信された戻り信号を処理することができると共に対象物体の位置及び射程の一方又は両方に関して予測することができる広い用途がある。反射されたビームは同じ対象物体に対応し、その情報は一般的に、対象物体の本当の性質を最も正確に反射する。
【0015】
パルスレーダーシステムと同様に、連続波レーダーシステムも周知であり、いずれのタイプも本発明との関係で使用することができる。
【0016】
さらに、地面又は別の大表面に近接しているが地面の上に無視できない高さ又は距離を有する対象物体は代表的には、レーダーシステムに直接戻る放射を反射するのみならず、地面を反射する放射を反射しレーダー受信器に戻る。この減少は多経路(multipath)として知られており、通常は望ましくない干渉信号と考えられている。多経路干渉補償用のアルゴリズムは公知である。
【0017】
本発明は実際には、決定された対象物体の高さを決定するためにこの多経路現象を使用する。特に、地面は、大きな、一般的には地面付近の対象物体に近接した平坦面である。このため、地面上の無視できない高さ又は距離の対象物体に関して、地面の対象物体からの及び受信レーダーアンテナに戻る間接反射経路があるのが通常である。さらに、航空機滑走路又は自動車道路の場合に典型的にあるように、地面が、レーダー信号の波長と等しいか長い寸法の著しい異状がないほぼ平坦であるなら、例えば、受信レーダーアンテナに戻る地面の著しい間接反射経路のみがある。
【0018】
このことは図2の概略図に示される。図2において、レーダーの受信器(例えば、受信アンテナ)は参照番号201で示される。受信器は、地面203上の公知の高さhreceiverにある。残りのレーダーシステムは、図を分かりにくくしないようにするために、図示していない。同様に、説明を分かりにくくしないようにするために、対象物体は、レーダー受信器201から所定距離(すなわち射程)rである理想化された球面点対象物体202であると仮定されている。実際、この仮定は、対象物体の高さを予測する際に正確性を著しく損なうことなく、本発明に関するリアルタイムで入ってくるデータを処理する目的ですることができる。この図2において、送信アンテナ及び検知アンテナは同一のアンテナであるが、これは典型例に過ぎず、図1に図示されている等の異なる受信及び送信アンテナを使用してもよい。
【0019】
多経路現象は、全対象物体について自然に生ずると共に対象物体の高さに係る特性を変化させるので、地面上の対象物体の高さ及び距離の一方又は双方により、対象物体を区別するための一方法を提供する。図2は、双方とも地面203から任意の高さであるレーダー受信器及び理想点対象物体202間の空間的関係を示す。図2は、単純化した光線工学幾何多経路モデルを仮定している。レーダーは、図2に図示されていない広い波面を送信するのが代表的であり、放射は、地面での反射を含む多方向に対象物体202を反射するが、少ない数の反射経路のみが受信器に戻るエネルギーを反射することを理解されたい。図2に示されるように、送信されたレーダー信号205のいくつかは、対象物体202に当たり、直接反射信号経路206で受信器201に戻る。直接反射された信号の伝播経路は、送信された信号の伝播経路と同一と考えることができるが、方向は逆である。
【0020】
受信器201に当たる直接反射された放射206に加えて、放射のいくつかも、地面203の方へ対象物体202で反射され、次に地面に反射されて受信器201に戻る。
【0021】
一般的に、ごく少量のエネルギーのみが、地面で反射し、経路209で図示されるように受信器に戻る。間接経路の対象物体の反射角θは、送信された信号経路の入射角θと等しいが、極性は逆である。単独でとられた対象物体の直接反射信号206の振幅は一般に、レーダー及び対象物体間の距離が減少するにつれて単調増加する。特に、約r4での距離とは逆に増加する。ここで、rは対象物体までの射程すなわち距離である。しかし、間接反射されたビーム209からの多経路干渉がある場合、直接反射されたビーム206及び間接反射されたビーム209は、互いに相互作用し、多経路が無い場合に予測される標準的な射程依存の1/r4振幅曲線からの結合受信信号の特定形状を変化させる。
【0022】
間接経路信号及び直接経路信号の双方は、伝播して受信器201に戻り、対象物体202の変化に対して建設的又は破壊的に射程として付加する。対象射程の関数として結合された受信信号振幅は、異なる対象高さ用の射程をずらすピーク及びヌルからなる。
【0023】
従って、受信された合計信号の振幅は、レーダー受信器201及び対象物体202間の距離の関数として変化し、このため、振幅は、距離の関数としてのピーク及びヌルで上下に変動する。多経路干渉のない場合に予測される対象物体により接近して移動するにつれ、振幅は単調増加しないように見える。一般的に、低い対象は、比較的離間したピーク及びヌルが殆どない振幅パターンを有する。高い対象は、高さ増大と共に接近するより多くのピーク及びヌルを有する振幅パターンを有する。
【0024】
地面203に対して同じ高さの対象物体は、レーダーからの距離の関数として同一の振幅パターンを一般に有するべきであるのに対し、異なる高さの対象物体は距離の関数として異なる振幅パターンを有する。
【0025】
図3は、例えば、地面上47cmに配置されたレーダー受信アンテナを仮定した射程の関数として5〜30mの射程にわたって、地面上の異なる3高さ、すなわち1cm、25cm及び45cmでの対象物体のノイズのない正規化された対象振幅を示すグラフである。曲線301は、地面から1cm離れた対象物体のデータを示す。多経路干渉効果は最小限であり、曲線301は、多経路が無い場合に存在するであろう単調変化する振幅対射程の曲線に極めて近似することに留意されたい。しかし、曲線303により示された地面から25cm離れた対象物体について、戻り信号振幅の平均は、依然として距離とは逆に増加するが、距離の関数として上下変動する。この変動は、距離が小さくなると、振幅及び周波数において増加する。さて、地面から45cm離れた対象物体の情報を表わす第3曲線305を参照すると、距離の関数として振幅の実質的な変動を有するのに対し、対象物体及び受信器間の距離が減少するにつれて平均が増加する。しかし、曲線305の変動は、地面から25cm離れた対象物体に対応する曲線303の変動と明白に異なるパターンを有することに留意されたい。
【0026】
このため、振幅と、対象物体がアンテナに接近するにつれて距離の範囲にわたる受信アンテナでの信号の振幅を観測することにより生成された距離曲線とを精査することにより、対象物体の高さを予測することができる。
【0027】
図4(A)は、本発明の特定実施形態によるレーダーシステムの受信経路40の基本構成要素を示すブロック図である。図4(A)は、本発明にとって重要な構成要素のみを示しており、代表的なレーダーシステムは、本明細書で説明していない機能を果たすための追加回路を有することを理解されたい。さらに、図4(A)に示されたブロック構成要素は、工程に対応するが必ずしも物理的構成要素を表わしていないことを理解されたい。種々のブロックで以下に説明する工程は、通常、マイクロプロセッサ、コンピュータ、状態機械、ASIC(特定用途向け集積回路)、組み合わせロジック回路等の1個以上のデジタルデータプロセッサ装置で実行される。特に周波数下降変換及びフィルタリングのような受信回路で実行される所定の機能は、アナログ回路によって実行することができる。
【0028】
反射信号は、アンテナ42から受信回路43に受信される。これら信号は、従来の方法(フィルタリング、周波数変換)で受信回路43により処理され、デジタルデータに変換され、プロセッサ44に供給される。プロセッサ44は、受信信号から振幅データを抽出し、射程の関数として特定の対象物体に対応する受信信号の振幅についての情報を含むデータ組を作り上げる。相関器45は、このデータを、振幅対(メモリ47に保存された種々の高さの対象物体用の)射程データと比較し、入ってくるデータと、保存された振幅対射程データ組(以下、振幅データ組と称する)との間のベストマッチを決定する。決定回路46は、相関器45の出力に基づいてどの高さを宣言するかを決定する。詳細に後述するように、いくつかの場合には、この決定は、高さを宣言する前に入っている追加情報を待つようにしてもよい。
【0029】
本発明の好適な一実施形態において、データはリアルタイムで収集され、特性振幅対種々の高さの対象物体の距離特性からなる保存された振幅データ組と比較する。例えば、所望の解像度、距離の範囲及び関連する高さ範囲に依存して、これらの曲線を生成するために経験的データを収集し、リアルタイムデータと比較するためにメモリに情報を保存することができる。
【0030】
例えば、一例として自動車障害物回避レーダーを使用すると、このようなシステムは、対象物体を検出するための約30mの最大射程、5cmの所望距離、50cmの最大高さ範囲、及び1cmの所望高さ解像度を有するかもしれない。このため、レーダーから30m離して高さ1cmの対象物体を配置し、振幅データを収集することができる。次に、対象物体に5cm接近するように移動して、この距離での振幅データを収集することができる。これは、30mから5cm刻みで5cmまで繰り返すことができる。この工程は、高さ2cmの対象物体について、次に高さ3cmの対象物体について等行って、高さ50cmの対象物体まで繰り返すことができる。このデータから、30mから1cmの範囲にわたって1cmから50cmまで高さを変化させた対象物体について特性振幅対射程の曲線を形成し、保存することができる。或いは、特性射程に依存する振幅曲線を、数学的モデルを介して形成することもできる。本発明の好適な一実施形態において、曲線データは、特定の距離スペクトルにわたる振幅対距離の形状を示す1個又は数個の数的指標(メトリクス)に圧縮される。
【0031】
次に、ソフトウエアは、車両が対象物体に接近するにつれてリアルタイムデータを収集し、そのリアルタイムデータを種々の保存振幅データ組と比較し、ベストマッチした候補曲線に対応する高さの対象物体の高さか、追加の安全性のために、最高の高さを表わす小数の最も近いマッチした候補の一つを宣言する。
【0032】
比較が行われる前に収集されたデータにわたる距離は、特定の用途に依存する。例えば、一例として自動車障害物回避レーダーを使用すると、30mの最大検出射程を有することができる。さらに、代表的には決定がされる必要があるのに対し、対象物体は、物体に当たるか物体付近で急に向きを変える前に停止する十分な時間を車両に与えるために、車両から離れた最小距離にある。従って、この特定実施形態において、30〜10mの距離範囲を選択するかもしれない。本発明の好適な一実施形態において、対象物体の高さについて比較及び決定をするための距離範囲は可変である。例えば、ノイズが殆どなく、対象物体が重要な反射点で反射する場合、5mほどの射程(例えば、30〜25mの射程)にわたってデータを有する対象物体の高さについて、極めて正確な予測をすることができる。従って、検出アルゴリズムは、データが不明確且つ一貫していない場合と比較してデータが明確且つ一貫している場合、かなり早期に(車両は対象物体からかなり離れているが)高さを宣言するように構成することができる。
【0033】
多くの状況において、検出された対象物体が理想化された点物体であることを仮定するアルゴリズムを使用することが安全である。また、アルゴリズムは公知であり、単一の対象物体の複数点の反射間を区別して最も強い反射を決定するために、使用することができる。
【0034】
対象物体の主な又は最も高い反射点さえも対象物体の高さを正確に反射する等保証はないのに対し、実際問題として、対象物体の高さの正確な予測をする傾向がある。
【0035】
反射信号の絶対振幅は、環境条件(雨、霧、物体レーダーの断面積)を含む、対象物体までの高さ又は距離の関数ではない多くの条件に基づいて変化する。このため、信号の絶対振幅よりも信号の相対振幅を使用することが好ましい。換言すると、好ましいのは、絶対振幅値とは逆に、対象物体の高さを最も正確に示す振幅対射程の曲線の形状である。
【0036】
好適な一実施形態において、本発明の2つの基本的な構成要素がある。すなわち、
a.可能な全ての対象物体の高さについて、射程の関数としての対象物体の振幅応答の予測(すなわち、保存された振幅対射程データ組を生成すること)、及び
b.受信された対象物体信号を特定の対象物体高さに関連する保存振幅データ組の一つにマッチさせること。
【0037】
多くの用途において、所定閾値の高さより上か下かを単に決定するだけで、対象物体の正確な高さを決定することは必要ないかもしれない。例えば、自動車障害物回避用途において、対象物体が車両のバンパーの高さの半分により高いかどうかを決定すれば十分である。このような用途において、第3工程を追加することができる。すなわち、
c.検出判定条件及び対象物体が排除の候補であるかどうかを決定するための閾値を適用すること。
【0038】
第1構成要素である予測構成要素は、既存の数学的多経路予測モデルにより実施することができる。第2構成要素である信号マッチング構成要素は、所望の高さ解像度及び射程、例えば0〜50cmまで1cm刻みで種々の対象物体の高さについて可能な各受信対象物体信号の、正規化された版すなわち複製を含むバンクで複数バンク相関器により実施することができる。最後の構成要素である検出構成要素は、適応できる閾値技法と、シミュレーションされた対象物体振幅データ及び生の対象物体振幅データの双方から引き出される検出判定条件とを使用する。アルゴリズムの3構成要素は、以下の3部分でより詳細に説明する。
【0039】
任意の適当な多経路予測モデルは、複数バンク比較器に使用される、予測された信号複製データ組(異なる高さの対象物体用の振幅対射程モデル)を生成するために使用することができる。振幅対射程モデルとしてモデルについて言及しているが、データは振幅対射程の形態に直接保存されている必要はなく、メモリの要求事項を最小化するために任意の合理的な形態で保存されていてもよい。例えば、任意の数のアルゴリズムは、グラフィックプロットデータのような大量のデータを1又は数個のメトリクスに低減するために知られている。好適な一実施形態において、モデルは、幾何光線工学技法を使用して、対象物体の射程、対象物体の高さ、対象物体レーダー断面積、受信器の高さ、受信器のビーム幅、受信器の利得、複雑な地面反射係数、及び信号の(水平)極性の関数として戻りレーダー信号の相対振幅を決定する。絶対戻り信号振幅は、保存された振幅データ組で戻り信号の相関に影響を与えないので、送信された信号電力は単一に正規化される。戻り信号振幅は、各候補の高さ(例えば、1cm刻みで0〜50cm)について、及び問題の各射程(例えば、レーダーの0から最大射程まで)について予測される。データは連続している必要はないが、レーダーサイクルタイム及びシステムの稼動が意図されている最大車両速度を考慮して合理的な離散的間隔であってもよい。
【0040】
前に記載したように、特定の高さで理想点対象物体からの射程に依存したレーダー戻り信号振幅応答は、特性形状を有する。これは、対象物体高さに関してこれらの信号から情報を抽出することが可能であることを示唆している。M個の可能な受信レーダー信号があり、各々は特定の対象物体高さに対応している。例示目的で、これらの信号のアナログ表現は以下のように表わされる。
【数1】

ここで、um(t)は同等の非直交ローパス信号であり、fcはレーダー信号(24GHz)の搬送周波数である。送信チャンネルは、減衰α及び位相シフトΦを追加する。受信レーダー信号モデルは以下の通りになる。
【数2】

ここで、信号z(t)は付加的なホワイトガウスノイズ(AWGN)である。Φは搬送位相計測により正確に解明することができるが、4cm(1σ)の受信器の限定された射程精度のため、不明瞭である。送信されたレーダー信号の波長の半分、すなわち0.625mmに等しい射程の対象物体の移動は、1.25cmの往復経路長の変化という結果となる。これは、信号位相計測に依存すると共に受信された信号の振幅のみに依存する非コヒーレント検出スキームを強制する。
【0041】
相互相関スキームは、受信されたレーダー振幅データ組r(t)を保存された振幅データ組um(t)と比較するために使用された。可能な全信号が等しいエネルギーを有して同様に等しいと仮定すると、以下の決定変数が計算される。
【数3】

【0042】
図4(B)は、図4(A)の相関器45として使用できる基本多バンク相関器400を示す。この相関器の各列は、積分器413及び包絡線検出器415の前にマルチプライヤ411を有する。相関器の出力は、全ての決定変数の値を比較すると共に最も可能性が高い候補信号を選択する検出器417に供給される。各決定変数は、可能な各対象物体高さ用の、受信された振幅データ組と保存された振幅データ組との相関を表わす。従来の相互相関器は、入力信号を遅延させ、保存された振幅データ組の複素共役と乗算し、信号の積を積分する。この用途では、受信されたレーダー振幅信号は好適には射程より指標が付されるので、(マルチプライヤ411における)乗算の前に他の信号に対して一信号を遅延させる必要はない。その代わり、各特定射程に対応する各信号用振幅が、乗算されると共に遅延無しで一度だけ積分される。
【0043】
検出器が特定の決定変数を選択すると、特定の決定変数に関連する対象物体高さは、候補の対象物体高さとして宣言される。古典的決定論によれば、AWGNでのランダム位相を有する信号用の最適復調器は、最大値の決定変数候補を選択する検出器の前の相関器又はマッチしたフィルタである。これは、予測された信号が直交すなわち相関のない信号組を形成する場合、よく機能する。ここでは該当しないので、別の検出器が使用され、次で説明する。
【0044】
この特定用途について、相関値は正規化された。正規化、及び離散的変数tをnに、TをNに置換すると、以下の通りになる。
【数4】

ここで、Ri[N]は、N個の計測された振幅とi番目に予測された信号振幅組との相関により形成された相関値であり、
r[n]は、各計測射程について計測された受信信号振幅であり、
i[n]は、各計測射程についてi番目に予測された信号振幅組であり、
Nは、レーダー射程及び振幅計測の合計数であり、
σrは、計測された受信信号振幅の標準偏差であり、
σuiは、i番目に予測された受信信号振幅組の標準偏差である。
式(4)は以下の式にすることができる。
【数5】

ここで、Cruiは、予測された受信信号振幅ui(n)のi番目の組を有する計測された受信信号振幅の共分散である。
【0045】
本発明の一実施形態において、検出器は、最高の相関を有するui[n]を単に選択し、最も可能性のある対象物体高さとして関連する高さを宣言することができる。この検出スキームは、多くの用途で十分である。しかし、環境(例えばノイズ)、所望の高さ解像度、所望の距離解像度、及び所望の正確さに依存して、この簡単なスキームは容認できる正確さを与えないことがある。図5は、障害物が所与の高さ閾値より大きいか小さいかのみを正確に決定すれば十分である自動車障害物回避レーダー用途に適合する他の実施形態を示すフローチャートである。この一連の機能は、各レーダー受信器計算サイクル用に行われる。
【0046】
図5に示されるように、初期の1次相関閾値は工程501で設定されている。これは、マッチしていると考えられるように、入力信号が保存された振幅データ組に相関しなければならない最小閾値である。閾値は、いくつかの生の対象物体のシミュレーション結果及び相関結果に基づいて選択することができる。決定変数は、受信振幅データ組と、可能な各対象物体高さ用に保存された振幅データ組との相互相関を有する。好適な一実施形態において、若干低い2次閾値も、後述するように、相関品質ファクタを計算する際に使用するために設定される。
【0047】
工程502において、検出器は、1次閾値を超える相関のピーク用の決定変数を検索する(すなわち、特定高さに対応する保存された振幅データ組と生のデータとの間の相関が現在の相関閾値より大きいかどうか)。工程503を参照すると、全ての決定変数が検索され、閾値を超える相関ピークがない場合、閾値を下げる(工程504)と共に工程502が繰り返される。これは、現在の閾値を超える少なくとも1個の相関ピークが見つかるまで、現在のレーダー受信器サイクル(サイクル当たり40ミリ秒)の間、反復して行われる。相関は、ホストの車両が問題の対象物体に接近するにつれて、連続するレーダー受信器サイクル(すなわち、車両が移動している場合、異なる射程)のための連続して更新される。
【0048】
工程505において、1次閾値より大きい相関ピークが見つかった後、アルゴリズムは、1次閾値より低いが2次閾値より高い相関ピークを探す。工程506において、アルゴリズムは、これら2次ピークの大きさ及び両を考慮し、1次相関閾値を超える相関ピークの同様の正確さを示す相関品質メトリクスを発生させる。
【0049】
例えば、メトリクスは、1次ピーク及び2次ピーク間の差の2乗の合計かもしれない。この場合、メトリクスが低いほど、差は少なく、1次ピークの品質はより良い(良好な高さ予測に対応する可能性がより高い)。例えば、2次相関ピークのより大きな数は一般に、1次ピークが高品質である可能性が低いことを示すであろう。他方、2次ピークが、1次ピークの対応する高さに接近する高さに対応する場合、2次ピークが1次ピークの対応する高さから離れた高さに対応する場合とは反対であるように、1次ピークの品質が良好である高い可能性を示す傾向があるであろう。差の2乗の合計は、これらのファクタの双方を考慮に入れ、推測の品質が向上するにつれて相関メトリクス用に低い値を有する。もちろん、任意の2次ピークが完全に欠如していることは、1次ピークが極めて高品質であることを示すが、メトリクスは0の値を与える。この異常は、対象物体の高さとして1次ピークに対応する高さを自動的に宣言する等の、2次ピークがない場合の特別な例外を作ることにより、容易に修正することができる。
【0050】
工程507において、相関品質メトリクスが所定の品質閾値より上か下かが決定される。(品質が良好でないことを示す)上の場合、フローは、高さが分からないことをアルゴリズムが宣言する工程508bに進む。フローは、レーダーが対象物体により接近するにつれて次のレーダーサイクルでより多いデータが収集された工程512に進む。工程512の後、次のレーダーサイクル用に工程502以下が繰り返される。
【0051】
他方、相関品質メトリクスが閾値より下である(高品質であることを示す)場合、フローは、決定工程507から、高さが1次相関閾値より上の相関ピークに対応する高さとして宣言される工程508aに進む。
【0052】
次に、工程509において、選択された高さが指定の区別高さ、例えば17cmより上か下かが決定される。17cmと同じか大きい場合、対象物体は、高い仰角対象物体として宣言される(工程510a)。17cmより小さい場合、対象物体は、低い仰角対象物体として宣言される(工程510b)。いずれの場合においても、フローは、工程510a又は工程510bから工程511,512を通って進み、次のレーダーサイクル用の仮定を繰り返すように工程502に戻る。
【0053】
正確さの改善の補助とするために使用できる別の技法は、各距離において相関データを記録し、その距離で最もよく予測された高さを示すメトリクス(本明細書ではフィルタがかけられた対象クラスのメトリクスと称する)に各距離でのデータを割当て、そのデータを蓄積し、距離の所定数にわたるデータが十分に一貫性がある場合、高さを宣言することである。例えば、区別する高さが17cmである自動車障害物回避システムの簡単な一実施形態において、各距離で計算された相関データは、対象物体の高さが17cmより上であると予測される場合には+1の値を、対象物体の高さが17cmより下であると予測される場合には−1の値を、未だ決定できない場合には0が割当てられる。次に、距離の所定の最小数に対して相関データが計算された後、+1が合計され、−1が別に合計され、
(1)合計データ点の数で割られた正の合計が所定の正の値を超え、合計データ点の数で割られた負の合計が所定の負の値より大きい場合、システムは、対象物体の高さが17cmより上であることを宣言し、
(2)合計データ点の数で割られた正の合計が所定の正の値を下回り、合計データ点の数で割られた負の合計が所定の負の値より小さい場合、システムは、対象物体の高さが17cmより下であることを宣言し、
(3)2個の正規化された合計が前述の正の値及び負の値の間にある場合、システムは、対象物体の高さを未だ正確に予測することができないことを宣言する。
【0054】
所定高さに対応する保存された振幅データ組が、間違いとなる著しく異なる高さを有する他の保存された振幅データ組に非常に類似することが判明した場合、相関データベースからこれらの高さのいくつかの保存された振幅データ組を除去することが妥当である。例えば、シミュレーションは、いくつかの低い対象物体(特に、1cm、3cm、4cm及び7cmの高さを有する対象物体)が高い対象物体とよく相関することを明らかにした。単一の閾値高さより上及び下の対象物体間を区別することのみが必要なシステムにおいて、相関器データベースからこれらの振幅データのいくつかを除去することが妥当である。例えば、自動車障害回避に関連して使用される図5に関連して上述した検出アルゴリズムでは、相関器データベースから1cm、3cm、4cm及び7cmに対応する振幅データ組を削除するかもしれない。これは、閾値高さを実際に超える対象物体は、閾値高さより下であると誤って決定されるという誤決定の回数を無くすか、低減するだろう。他方、閾値高さを実際に下回る対象物体は、閾値高さより上であると誤って決定されるという誤決定の回数は増加するだろう。しかし、前者は後者よりもずっと好ましい。
【0055】
より堅牢な検出アルゴリズム、並びに対象物体高さ及び相関閾値の微調整により、性能も向上させることができる。例えば、1次及び2次相関閾値の一方又は両方を超える各ピーク用に1個のみの相関値を使用する代わりに、各相関ピークの相対高さ又は相対幅のアイデアを与えるように、3個以上の点を使用してもよい。相関ピーク値と比較した場合、可能な全ての対象物体の高さにわたる相関関数の平均値は、高さ評価の間違いをさらに低減するであろう相関ピークの幅及び相対高さに関する付加情報を生み出すかもしれない。
【0056】
リアルタイムの振幅データの収集において、レーダーにより検出される対象物体が複数あることが多い。これは、レーダーの使用に際に一般的に起こることであり、複数の対象物体のうちで反射されたレーダー信号を分離する複数の対象物体トラッカーは周知である。代表的な自動車レーダーシステムは、複数の対象物体追跡用のハードウエア及びソフトウエアの一方又は両方を有することが多い。ハードウエア及びソフトウエアの一方又は両方は、複数の追跡された対象物体の振幅データを同時に収集する目的で、複数の対象物体のうちで反射レーダー信号を分離するのに使用される。
【0057】
さらに、レーダーは、再度捉まえるためのみに、所定時間(又は所定距離)にわたって対象物体を追いかけて見失うことが多い。この脱落は、任意のファクタの数により生じ得る。実際、直接反射信号及び地面からの間接反射信号の間の破壊的位相干渉が完全であるので、所定時間の間、受信信号の振幅がレーダーの感度範囲を下回る結果となり得る。本発明の好適な一実施形態において、ソフトウエアは、脱落してレーダーにより対象物体で新たに検出された対象物体と、新たに検出された対象物体が一時的に脱落した以前に追跡された対象物体の代わりに再現したかどうかを決定するために脱落した対象物体とを相関させようとした後に、少なくとも所定時間の間に脱落した対象物体の振幅データと同様に追跡データを維持する。好適には、ソフトウエアは、より大きな生の振幅データ組自体よりも相関データを保存する。追跡データ及び相関データは、同一の対象物体であるかどうかについて決定するために比較することができる。そうである場合、このような対象物体用のより完全な相関関数を提供するために、脱落前及び再現後の対象物体用の相関データを結合することができる。各受信器計算サイクル用に保存された相関データには、過去に計測された全ての振幅の合計、過去に計測された全ての振幅の2乗の合計、及び過去に計測された全ての振幅の積の合計が含まれるが、これらに限定されない。さらに、可能な全ての量子化された対象物体高さに対して、保存された振幅データ組、保存された全ての振幅データ組の合計、保存された全ての振幅データ組の2乗の合計をさらに含めてもよい。これらのデータと共に、計測された数、最終対象物体のxy座標、x方向の速度(Vx)、y方向の速度(Vy)、対象物体追跡が脱落してからの経過時間、及び最終評価の対象物体高さを保存してもよい。
【0058】
最も大きな改善点は、各対象物体について起こる受信信号脱落を有する混んだ多対象物体環境で実現することである。次に、各対象物体用の射程断片は、最高の評価アルゴリズムに利用できる最も堅牢な相関値を提供するために、一緒に「縫い込まれる」ことが必要であろう。
【0059】
さらに、本発明の好適な一実施形態において、振幅値はスカラー値である。例えば、レーダーは、受信信号を同相成分I及び直交成分Qからなる2チャンネル虚数信号に分離するよう構成されることが多い。振幅のスカラー値Aは以下の通りになる。
【数6】

しかし、複素振幅を使用することも可能である。特に、複素振幅は、10〜20cm当の非常に短い距離にわたる情報に基づいて最高の相関を提供するという潜在的利点を有する。特に、対象物体が高く、レーダーに接近している場合、複素振幅の変動は、非常に短い距離にわたって膨大になり得る。このような状況における位相情報の利用可能性は、超高解像射程情報を提供することができる。超高解像射程情報は、非常に短い射程にわたり高さを使用するデータを予測するために使用してもよい。特に、直接反射経路及び間接反射経路間の同位相差に関する情報は、レーダー信号の単一波長内で実質的な射程解像度を提供する。一般に、距離を決定するためだけに往復遅延を使用すると、位相情報ほどの高い解像度の射程情報を提供できない。このような位相情報は、実際には、微解像度のみを提供し、レーダーシステムの波長より大きな距離対レーダーシステムの波長より小さな距離間を区別できない。従って、本発明のこのような一実施形態において、コース射程解像度情報に往復遅延が依然として使用されるのに対し、位相は微射程解像度情報に使用される。
【0060】
本発明のいくつかの特定実施形態を説明したが、当業者には種々の変形、変更及び改良が容易に想起されよう。本開示により明白になったこのような変形、変更及び改良は本明細書に明示していなくても本明細書の一部であることが意図されており、本発明の真髄の範囲内であることが意図されている。従って、上述の説明は、例示目的であって本発明を限定することを意図したものではない。本発明は、特許請求の範囲に規定されるもの及びその等価物にのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態による典型的なレーダーアレーを示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による対象物体からの反射を検出するレーダーシステムを示す正面図である。
【図3】各々異なる高さで3個の対象物体の(レーダー受信アンテナから5m及び30mの間の)射程の関数として典型的な振幅データを示すグラフである。
【図4】(A)本発明の特定実施形態によるレーダーシステムの基本部品を示すブロック図、(B)本発明の一実施形態による検出アルゴリズムを示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態による対象物体の高さを決定するための方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0062】
43 受信器
44 プロセッサ
45 相関器
47 決定回路
202 対象物体
203 地面
206 反射信号
209 ビーム(反射信号)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物体(202)が反射したレーダー信号を使用して前記対象物体の高さを評価する方法であって、
異なる複数の射程でそれぞれ前記対象物体から反射された複数のレーダー信号(206,209)を検出する工程と、
前記異なる複数の射程のそれぞれでの複数の反射された前記信号の振幅を解明して対象物体振幅データ組を生成する工程と、
該対象物体振幅データ組が前記対象物体の特定高さと相関があるかどうかを決定する工程と
を具備することを特徴とする高さ評価方法。
【請求項2】
前記決定工程は、前記対象物体振幅データ組を、複数の保存された振幅データ組と比較する工程を有し、
振幅データ組を代表するデータに対応する保存された前記振幅データ組の各々は、特定高さの対象物体に対応することを特徴とする請求項1記載の高さ評価方法。
【請求項3】
前記保存された振幅データ組は、前記データ組内の他の振幅に対する前記データ組内の各振幅の相対値に関するデータからなることを特徴とする請求項2記載の高さ評価方法。
【請求項4】
前記保存された振幅データ組は、前記対象物体からレーダー受信器に直接反射された波、及び前記対象物体から前記レーダー受信器に間接的に反射された波の重ね合わせの結果、前記振幅の変動からなることを特徴とする請求項3記載の高さ評価方法。
【請求項5】
前記対象物体から間接的に反射された前記波は、地面(203)で反射された波であることを特徴とする請求項4記載の高さ評価方法。
【請求項6】
前記検出工程は、複数の前記対象物体から反射されたレーダー信号を検出する工程と、前記複数の対象物体のうちで前記反射されたレーダー信号を分離するために多対象物体トラッカーを使用する工程を有することを特徴とする請求項1記載の高さ評価方法。
【請求項7】
前記高さ評価方法は、
前記複数の対象物体を追跡する工程と、
脱落した対象物体用の追跡データ及び振幅データを維持する工程と、
以前に観測されていない新たな対象物体の検出に応じて、該新たな対象物体の追跡データと、前記脱落した対象物体用の前記追跡データとを相関させて、前記新たな対象物体が前記脱落した対象物体の一つであるかどうかを決定する工程と、
前記新たな対象物体が前記脱落した対象物体の一つである場合、特定の対象物体用の情報の連続を構成する振幅データ組を総括して提供するように、前記新たな対象物体の前記振幅データを、前記脱落した対象物体の前記振幅データと関連付ける工程と
をさらに具備することを特徴とする請求項6記載の高さ評価方法。
【請求項8】
前記振幅はスカラー振幅からなることを特徴とする請求項1記載の高さ評価方法。
【請求項9】
前記振幅は、同位相成分及び直交位相成分を有する複素振幅からなることを特徴とする請求項1記載の高さ評価方法。
【請求項10】
前記決定工程は、前記対象物体の振幅データ組が、所定の高さより大きな高さ又は低い高さに対応するかを決定する工程からなることを特徴とする請求項1記載の高さ評価方法。
【請求項11】
前記決定工程は、
(a)前記対象物体振幅データ組及び保存された振幅データ組間の類似性についての類似閾値を選択する工程と、
(b)任意の保存された振幅データ組が前記類似閾値を超えるかどうかを決定する工程と、
(c)前記保存された振幅データ組の少なくとも1個が前記類似閾値を超える場合、前記類似閾値を超える前記保存された振幅データ組の1個を選択する工程と、
(d)前記振幅データ組の1個に対応する高さが前記対象物体の高さであることを宣言する工程と
を具備することを特徴とする請求項10記載の高さ評価方法。
【請求項12】
前記決定工程は、
(e)前記選択された振幅データ組と比較して、前記対象物体振幅データ組に対する他の保存された振幅データ組の相対類似性に少なくとも部分的に基づいて前記選択された振幅データ組の予測された正確性を評価する工程と、
(f)前記予測された正確性が所定の水準を超えていない場合、さらに異なる射程で前記検出工程を続ける工程と
をさらに有することを特徴とする請求項11記載の高さ評価方法。
【請求項13】
前記検出工程は、距離の射程にわたって検出する工程からなり、
前記射程は30〜10mであることを特徴とする請求項2記載の高さ評価方法。
【請求項14】
前記検出工程は、距離の第1の射程にわたって前記対象物体振幅データ組を検出した後、前記対象物体振幅データ組が、最小相関閾値より良い保存された振幅データ組に関連するかどうかを決定する工程と、
前記対象物体振幅データ組が前記相関閾値よりも良い保存された振幅データ組に相関しない場合、別の異なる射程で前記検出工程を続け、前記検出工程で収集された別のデータで前記対象物体振幅データ組を補完し、次に前記決定工程を繰り返す工程と
を有することを特徴とする請求項2記載の高さ評価方法。
【請求項15】
レーダー信号を送信する送信器と、
対象物体が反射した前記レーダー信号を受信する受信器(43)と、
異なる複数の射程のそれぞれでの複数の反射信号の振幅を解明して対象物体振幅データ組を生成するプロセッサ(44)と、
前記対象物体振幅データ組が前記対象物体の特定高さと相関があるかどうかを決定する相関器(45)と、
前記対象物体の高さが、前記対象物体振幅データ組と最もよく合致する保存された振幅データ組の一つに対応する高さであると宣言する決定回路(47)と
を有することを特徴とするレーダーシステム。
【請求項16】
前記レーダーシステムは自動車に搭載されていることを特徴とする請求項15記載のレーダーシステム。
【請求項17】
前記相関器は、前記対象物体振幅データ組を複数の保存された振幅データ組と比較し、
振幅データ組を代表するデータに対応する前記保存された振幅データ組の各々は、特定高さの対象物体に対応することを特徴とする請求項16記載のレーダーシステム。
【請求項18】
前記決定回路は、前記対象物体振幅データ組が、所定の高さより大きな高さ又は低い高さに対応するかを決定することを特徴とする請求項15記載のレーダーシステム。
【請求項19】
前記相関器は、
前記対象物体振幅データ組及び保存された振幅データ組間の類似性の閾値を選択する手段と、
前記保存された振幅データ組が前記閾値を超えているかどうかを決定する手段と、
少なくとも1個の前記保存された振幅データ組が前記閾値を超える場合、最大の高さに対応する前記閾値を超える前記保存された振幅データ組の1個を選択する手段と、
前記最大高さが前記対象物体の高さであると宣言する手段と
を具備することを特徴とする請求項18記載のレーダーシステム。
【請求項20】
前記決定回路は、
前記選択された振幅データ組と比較して、前記対象物体振幅データ組に対する他の保存された振幅データ組の相対類似性に少なくとも部分的に依存して前記選択された振幅データ組の予測された正確性を評価する手段と、
前記予測された正確性が所定レベルを超えない場合、さらに別の射程で検出を続行する手段と
をさらに具備することを特徴とする請求項18記載のレーダーシステム。
【請求項21】
前記決定回路は、
距離の第1範囲にわたり前記対象物体振幅データ組を検出した後、前記対象物体振幅データ組が最小相関閾値よりも良好に、保存された振幅データ組に相関するかどうかを決定する手段と、
前記対象物体振幅データ組が前記相関閾値よりも前記保存された振幅データ組に相関しない場合、異なる射程でさらに検出を続行し、検出で収集されたべつのデータで前記対象物体振幅データ組を補完し、その後検出を繰り返す手段と
を具備することを特徴とする請求項17記載のレーダーシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−122391(P2008−122391A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296546(P2007−296546)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(503084750)メイコム インコーポレイテッド (39)
【Fターム(参考)】