説明

射出成形方法

【課題】多点ゲート方式にて射出成形を行うにあたって、二方向から溶融樹脂材料が流入する場合であってもウエルドの発生を抑制するとともに、仮にそのウエルドの発生が不可避であっても当該ウエルドを目立ちにくいものとする。
【解決手段】バンパーフェイシアBfのバンパーサイド部Sbにはモール溝Mが延在していて、そのモール溝Mの底部に開口部としての複数の係合溝Hが間歇的または不連続で形成されている。バンパーサイド部Sbの成形に際して、矢印D方向からの溶融樹脂材料の流入をもってモール溝Mの末端まで回り込ませるものとする。その後にサイドゲート21から溶融樹脂材料を流入させる。これにより、モール溝mまたはその近傍でのウエルドの発生を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンパーフェイシア等の比較的大型の樹脂成形品をいわゆる多点ゲート方式にて成形する射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用バンパーのバンパーフェイシアに代表されるような長尺で且つ大型の樹脂成形品を射出成形する場合に、開閉可能なバルブ付き多点ゲート(複数のバルブゲート)を用いてゲートを順次開閉して溶融樹脂材料を射出・充填するようにした成形法がある。そして、このような成形法では多くの場合にホットランナーシステムが採用され、一般にカスケード射出成形法等と呼ばれている。かかるカスケード射出成形法のもとでバンパーフェイシアを成形するにあたって、特にウエルド(ウエルドラインまたはウエルドマーク)の発生を抑制することを目的とした技術が特許文献1にて提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−291296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術では、ゲートでの溶融樹脂同士の合流に基づくウエルドの発生を抑制し、もってそのウエルドが製品形状部空間であるキャビティ側に持ち込まれるのを回避しようとするもので、キャビティへの溶融樹脂材料の流入方向が特定の一方向である場合には相応の効果が期待できる。
【0005】
その一方、例えばバンパーフェイシアの正面または側面からの投影形状を想定し、この投影形状部位をバンパーフェイシアの一部の薄板状の成形品領域と仮定した場合に、その成形品領域内において例えば互いに交差する二方向から溶融樹脂材料が流入するような場合には、キャビティ内において二方向からの溶融樹脂材料同士が直接的に衝突するかたちで合流することになるため、なおもウエルドの発生が不可避となる。そして、この傾向は上記成形品領域内の一部に開口部を同時成形する場合に顕著となる。
【0006】
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、多点ゲート方式にて射出成形を行うにあたって、二方向から溶融樹脂材料が流入する場合であってもウエルドの発生を抑制するとともに、仮にそのウエルドの発生が不可避であっても当該ウエルドを目立ちにくいものとすることが可能な射出成形方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一部に薄板状の成形品領域を含んでいて且つその薄板状の成形品領域の長手方向に沿って当該方向と同じ方向を長手方向とする開口部が形成された成形品を多点ゲート方式の射出成形法にて成形する方法である。その際に、成形品領域の長手方向に向かって樹脂材料を射出するメインゲート部と、成形品領域の長手方向と交差する方向に向かって樹脂材料を射出する補助ゲート部とをそれぞれ設定しておくものとする。そして、メインゲート部から射出した樹脂材料が少なくとも開口部の長手方向全長に回り込んだ後に、補助ゲート部から樹脂材料を射出するものとする。ここに言う開口部とは、単一の穴状のもののほか、比較的小さな穴状の複数の開口部が間欠的または不連続で並設されている場合をも含むものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、成形品領域内に二方向から樹脂材料が流入する場合であって且つその成形品領域内に所定の開口部を同時成形する場合であっても、開口部の周りに先に樹脂材料を満たしてしまうことで、その開口部の存在の影響によるウエルドの発生を抑制することができるとともに、仮にそのウエルドの発生が不可避であったとしても、ウエルド発生位置を積極的にコントロールして、比較的目立ちにくい位置にとどめておくことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る射出成形方法を実施するための第1の形態を示す図で、射出成形による成形品の一例として自動車のバンパーフェイシアの概略構造を示す斜視図。
【図2】図1のA−A線に沿う拡大断面図。
【図3】図1のバンパーフェイシアを射出成形するための金型装置のうち図1のQ部相当部の構造を示す断面説明図。
【図4】図3のコールドランナーの詳細を示す拡大断面説明図。
【図5】図4の型開き状態におけるC方向矢視図。
【図6】図4のB−B線に沿う拡大断面説明図。
【図7】図3,4の金型装置のうちバンパーサイド部に相当する部分での溶融樹脂材料の流動状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1〜7は本発明を実施するためのより具体的な形態を示し、特に図1は射出成形による成形品の一例として自動車のバンパーフェイシアBfを示し、図2は図1のA−A線に沿う拡大断面図を、図3は上記バンパーフェイシアBfを射出成形するための金型装置のうち図1のQ部相当部の構造を示している。
【0011】
図1に示すように、バンパーフェイシアBfは自動車用樹脂部品のなかでも長尺で且つ大型の部品に属し、しかもいわゆるふところの長さ(バンパーフェイシアBfの前後方向長さ)が大きいために、先に述べたようにホットランナーブロックや複数のバルブゲートを併用したカスケード射出成形法によって成形される。
【0012】
この場合において、バンパーフェイシアBfの大部分は複数のバルブゲートを順次開閉することでいわゆるランナーレス方式にて成形されることになるものの、バンパーフェイシアBfの一部、例えば図1に示すバンパーフェイシアBfにおけるバンパーサイド部Sbについては、ホットランナーブロックのレイアウト上の制約等から、コールドランナーを併用するかたちで成形しようとしている。なお、バンパーフェイシアBfを成形すべき成形品とするならば、その一部であるバンパーサイド部Sbが特許請求の範囲で言うところの薄板状の成形品領域に相当している。
【0013】
図1はそのコールドランナー4の痕跡であるコールドランナー跡Rsおよびゲート跡Gsが非製品部領域として成形品であるバンパーフェイシアBfのバンパーサイド部Sbに付帯したままで金型装置から取り出された後の状態を示していて、コールドランナー跡Rsおよびゲート跡Gsは後工程において成形品であるバンパーフェイシアBfから切断除去されることになる。
【0014】
また、図1のほか図2に示すように、バンパーフェイシアBfの正面からそのバンパーサイド部Sbにまたがるかたちで、加飾のための図示外のモールを後から取り付けるための断面チャンネル状または断面コの字状のモール溝Mが凹溝として形成されている。さらに、そのモール溝Mの底部には、モールと凹凸嵌合してその相対移動や抜け止めを司ることになる開口部としての複数の係合溝Hが間歇的または不連続でモール溝Mの長手方向に沿って形成されている。そして、図2から明らかなように、モール溝Mのうち少なくともバンパーサイド部Sbの長手方向(前後方向)で延在している部分においては、その肉厚が上下の一般部よりも厚肉のものとされている。
【0015】
図3において、1は一方の金型要素としてのコアブロック、2は同じく他方の金型要素としてのキャビティブロック、3はそれらのコアブロック1とキャビティブロック2との型締め状態にておいて形成される製品形状部空間としてのキャビティを示す。また、図3の紙面と直交方向でオフセットするかたちで図1のコールドランナー跡Rsに相当するコールドランナー4が設けられている。
【0016】
ここで、図1から明らかなように、バンパーサイド部Sbとその一部に付帯するコールドランナー跡Rsとは、左右方向で位置的に一部オーバーラップしていることから、図3のキャビティ3のうちバンパーサイド部Sbに相当する部分とコールドランナー4との関係についても、実際にはバンパーフェイシアBfの左右方向(図3では上下方向)で両者が位置的に一部オーバーラップしていることになる。ただし、図3では同図面上での両者の重複による錯綜化を回避するため、キャビティ3のうちバンパーサイド部Sbに相当する部分に対してコールドランナー4を外側に位置をずらして描いてある。
【0017】
キャビティブロック2側にはホットランナーブロック5が付帯していて、このホットランナーブロック5にはスプルーブッシュ6を介して射出ノズル7から溶融樹脂材料が供給される。また、ホットランナーブロック5側からキャビティ3に向けて実質的にホットランナーとして機能する複数のランナースリーブ8が臨んでいて(ただし、図3では一つのみ図示)、各ランナースリーブ8にはシリンダ10によって進退駆動されるバルブピン9が内挿されている。そして、バルブピン9によりランナースリーブ8の先端側のゲート11を積極的に開閉することで、キャビティ3に対する溶融樹脂材料の射出とその遮断が可能となっており、これによってバルブゲートとしての機能が発揮されることになる。なお、上記ランナースリーブ8とバルブピン9との組み合わせからなるバルブゲートが特許請求の範囲で言うところのメインゲート部に相当している。
【0018】
また、ホットランナーブロック5にはホットランナーとして機能する別のランナースリーブ12が付帯しているとともに、このランナースリーブ12にもシリンダ14によって進退駆動されるバルブピン13が内挿されていて、ランナースリーブ12はコールドランナー4の二次スプルー部15に臨ませてある。そして、バルブピン13によりランナースリーブ12の先端側の二次スプルー部15をゲートとして積極的に開閉することで、コールドランナー4に対する溶融樹脂材料の射出とその遮断が可能となっており、これによってバルブゲートとしての機能が発揮されることになる。
【0019】
すなわち、ホットランナーブロック5やランナースリーブ12によって形成されるホットランナーを延長するかたちでランナースリーブ12と直列にコールドランナー4が設けられていて、両者の接続部である二次スプルー部15においてバルブゲートの機能が発揮されることになる。さらに、後述するようにコールドランナー4の長手方向に一部にはサイドゲート21が付帯してして、このコールドランナー4を経由した溶融樹脂材料は最終的にはサイドゲート21からキャビティ3に射出されることになるので、これが多点ゲート方式の射出成形法である所以であるとともに、上記サイドゲート21が特許請求の範囲に言うところの補助ゲート部に相当している。
【0020】
なお、ホットランナーブロック5やそれぞれのランナースリーブ8,12は、周知のように図示しないヒータにより所定温度の加熱状態とされ、それらの内部の溶融樹脂材料の流動性が保たれている。
【0021】
図4は図3に示したコールドランナー4の詳細を示しており、また図5は図4の型開き状態でのC方向矢視図を示している。さらに、図6は図3のA−A線に沿う拡大断面図を示している。コールドランナー4は一方の金型要素である図3のコアブロック1の一部として機能する分割ブロック16,17と図3のキャビティブロック2との間に形成されていて、これらの分割ブロック16,17とキャビティブロック2は成形品であるバンパーフェイシアBfの取り出し時にその都度開閉、すなわち型開きされる。
【0022】
より詳しくは、分割ブロック16,17のうちキャビティブロック2との分割面18に図6に示すように断面略半円状の溝部19が形成されれいて、型締め時においてキャビティブロック2側の分割面20がその溝部19を閉塞することでいわゆる半円状(ハーフラウンド)のコールドランナー4が形成される。コールドランナー4の長手方向の一部には製品形状部空間として機能するキャビティ3につながるサイドゲート21が形成されているとともに、サイドゲート21側の端末部はコールドスラグ等を溜めるためのスラグウェル22とされている。また、コールドランナー4の長手方向の他端は先に述べたように二次スプルー部15として機能するようになっていて、この二次スプルー部15には図3に基づいて先に述べたようにバルブゲートとして機能するランナースリーブ12を臨ませてある。
【0023】
ここで、ホットランナーを延長するかたちで当該ホットランナーと直列にコールドランナー4が形成されてはいても、そのコールドランナー4の長さが長くなるとホットランナーと併用したことによる効果が半減してしまい、コールドランナー4において溶融樹脂材料が固化が必要以上に促進されてしまう可能性がある。その対策として、本形態では、コールドランナー4としての流路に断熱層23を設けて、溶融樹脂材料がコールドランナー4を流通する過程での冷却固化が緩慢なものとなるように考慮してある。
【0024】
より詳しくは、図4,5および図6に示すように、分割ブロック16,17側の分割面18のうちコールドランナー4の空間に臨んで当該コールドランナー4を形成している部位、すなわちコールドランナー4として分割ブロック16,17側に形成された断面略半円状の溝部19の底部相当部であって且つスラグウェル22として機能する部分を除いた部分に、長手方向に沿って例えばセラミックシートを貼り付けて所定厚みの断熱層23を形成してある。この断熱層23の厚みは溝部19の最深部から当該溝部19の開放側または分割面18の一般部に向かって、すなわちキャビティブロック2側の分割面20に向かって漸次小さくなるように徐変していて、溝部19が形成された分割面18の一般部(分割面18のうち溝部19以外の部分)に至る直前で消失している。つまり、溝部19に設けられた断熱層23の断面形状は、図6から明らかなようにほぼ三日月状のものとなっている。
【0025】
これにより、コールドランナー4として機能することになる溝部19の深さ方向において、断熱層23による断熱効果に熱勾配を持たせたかたちとなっている。同時に、溝部19のうちでも分割面18の一般部に近い部分と、分割面18それ自体、およびもう一方の分割面20については、断熱層23が設けられておらず、いわゆる非断熱構造となっている。
【0026】
したがって、図1に示したようなバンパーフェイシアBfを成形するにあたって、バンパーフェイシアBfの大部分は複数のバルブゲートを順次開閉することでいわゆるランナーレス方式にて成形される一方、バンパーフェイシアBfにおけるバンパーサイド部Sbの一部については、ランナースリーブ12に相当するホットランナーと直列関係にあるコールドランナー4を併用するかたちで成形が行われることは先に述べたとおりである。
【0027】
そして、バルブゲートして機能するランナースリーブ12をバルブピン13により開くと、ランナースリーブ12側から二次スプルー部15を介してコールドランナー4側に溶融樹脂材料が射出され、さらに溶融樹脂材料はコールドランナー4からサイドゲート21を経由してキャビティ3側に射出されて、バンパーフェイシアBfのうちバンパーサイド部Sbの一部を形づくることになる。
【0028】
この場合において、コールドランナー4を経由してサイドゲート21からキャビティ3への溶融樹脂材料の射出のタイミングを他の部位よりも遅らせるように積極的にコントロールするものとする。より具体的には、図7はバンパーフェイシアBfの一部の薄板状の成形品領域であるところのバンパーサイド部Sbでの溶融樹脂材料の流動状態を示しており、同図(A)のほか同図(B)に矢印Dにて示すように、バンパーサイド部Sbに流れ込んだ溶融樹脂材料がそのバンパーサイド部Sbに形成されたモール溝Mの全長に及ぶまでまたは回り込むまでは、コールドランナー4を経由してサイドゲート21からキャビティ3への溶融樹脂材料の射出を行わないものとする。なお、図7は図1のバンパーフェイシアBfの上下を反転させた状態を示している。
【0029】
ここで、図1,2に示したように、バンパーサイド部Sbのうちでもモール溝Mはその肉厚が他の部位よりも相対的に厚肉に形成されているので、このモール溝Mに相当する部分では他の部位に比べて溶融樹脂材料の流通抵抗が減じられて、流通しやすいものとなっている。そのため、図7の(A)に示すように、同図の左側(バンパーフェイシアBfの正面側)からバンパーサイド部Sbに流入した溶融樹脂材料はモール溝Mに相当する部分で最も流速が速くなり、同図(B)に示すようにサイドゲート21からの射出を行わないかぎり他の部位に先行してモール溝Mの長手方向の末端まで到達することになる。つまり、コールドランナー4経由でサイドゲート21からキャビティ3側に溶融樹脂材料を射出するのを待たずに、ホットランナーとして機能する複数のランナースリーブ8(図3参照)から射出される溶融樹脂材料をもって、バンパーサイド部Sbではモール溝Mの長手方向の末端まで一気に充填してしまうものである。なお、図7の(B)に示すように、当然のことながらバンパーサイド部Sbのうちモール溝Mよりも相対的に薄肉の一般部の一部にも溶融樹脂材料が充填される。
【0030】
こうしてモール溝Mの長手方向の末端まで溶融樹脂材料が及んだならば、この時点で初めてランナースリーブ12の二次スプルー部15を開き、コールドランナー4側に溶融樹脂材料を射出する。すなわち、矢印D方向からの射出と並行して、さらに図7の(C)に示すようにコールドランナー4を経由した溶融樹脂材料を矢印Eにて示すようにサイドゲート21からキャビティ3に射出する。このサイドゲート21からの溶融樹脂材料の射出により、バンパーサイド部Sbのうち未充填の部分がサイドゲート21から射出される溶融樹脂材料で満たされて、成形が完了することになる。
【0031】
なお、図7の(C)の矢印D方向からのバンパーサイド部Sbへの溶融樹脂材料の流入は、そのバンパーサイド部Sbの長手方向(モール溝Mの長手方向)のものとなるので、サイドゲート21からの溶融樹脂材料の射出または流入はバンパーサイド部Sbの長手方向(モール溝Mの長手方向)とほぼ直交する方向に射出することになるものの、矢印D方向からの溶融樹脂材料の流入の影響を受けることになり、サイドゲート21から射出された溶融樹脂材料の流入方向は同図に矢印Eにて示すように斜め方向を指向するものとなる。
【0032】
この場合において、上記のようにモール溝Mおよびその近傍への溶融樹脂材料の充填を優先することを考慮せずに射出を行うと、当然のことながら矢印D方向から流入する溶融樹脂材料とコールドランナー4を経由してサイドゲート21から射出される溶融樹脂材料とがバンパーサイド部Sbのうちモール溝Mやその近傍で合流するかたちとなるため、ウエルドの発生が不可避となる。特に、モール溝Mのうちでも開口部としての複数の係合溝Hとなるべき部分では、その係合溝Hに臨んでいる金型の一部によって、サイドゲート21から射出される溶融樹脂材料の流れが部分的に遮られるかたちとなるため、溶融樹脂材料同士の合流角の変化によってウエルドの発生が顕著になりやすい傾向にある。
【0033】
これに対して、本実施の形態のように、サイドゲート21からの溶融樹脂材料の射出を待たずにバンパーフェイシアBfの正面部側(矢印D方向)から回り込む溶融樹脂材料をもってモール溝Mの長手方向の末端まで一気に充填してしまい、その後から図7の(B),(C)に示すようにサイドゲート21から溶融樹脂材料を射出することにより、少なくともモール溝Mやその近傍でのウエルドの発生を抑制することができる。
【0034】
その上、バンパーサイド部Sbにおいて少なくとも二方向から溶融樹脂材料を流入させると、それぞれの方向からの溶融樹脂材料同士の合流およびそれに伴うウエルドの発生が程度の差こそあれ不可避とされるが、上記のようにサイドゲート21からの溶融樹脂材料の射出タイミングを積極的にコントロールすることにより、ウエルドの発生位置までもコントロールして、例えばバンパーサイド部Sbのうちでも外観上目立ちにくい位置とすることができる。
【0035】
本実施の形態は、モール溝Mの長手方向の末端まで溶融樹脂材料が及んだ後、サイドゲート21からの溶融樹脂材料を射出タイミングを積極的にコントロールすることにより、ウエルドをモール溝Mの長手方向の延長線上の位置として目立ちにくいものとすることができる。
【0036】
また、上記実施の形態では、コールドランナー4の長手方向に沿って断熱層23を設けてあるため、溶融樹脂材料がそのコールドランナー4を通流する過程での冷却固化作用が緩慢なものとなり、仮にコールドランナー4の長さが長くなっても溶融樹脂材料の固化促進を防いで、バンパーフェイシアBfの成形に必要な射出速度および射出圧力の制御が可能となる。
【0037】
ここで、上記実施の形態では、モール溝Mの底部に開口部としての複数の係合溝Hが間歇的または不連続でモール溝Mの長手方向に沿って形成されている場合の例を示しているが、モール溝Mを有しないタイプのものでも本発明を適用することができる。また、開口部としての複数の係合溝Hが間歇的または不連続でモール溝Mの長手方向に沿って形成されているタイプ以外にも、例えば所定幅で且つ所定長さの開口部が単一のものとして形成されている場合でも本発明を適用することができる。
【0038】
さらに、上記実施の形態では、コールドランナー4の一部に形成されたサイドゲート部21を補助ゲート部としているが、要はバンパーサイド部Sbの成形に際して当該バンパーサイド部Sbに二方向から溶融樹脂材料が射出または流入すれば多点ゲート方式の射出成形法とみなし得ることから、補助ゲート部は図3に示したようなランナースリーブ8とバルブピン9との組み合わせからなるものであっても良い。
【符号の説明】
【0039】
4…コールドランナー
5…ホットランナーブロック
8…バルブゲートであるランナースリーブ(メインゲート部)
9…バルブゲートであるバルブピン(メインゲート部)
21…サイドゲート(補助ゲート部)
Bf…バンパーフェイシア(成形品)
Sb…バンパーサイド部(薄板状の成形品領域)
M…モール溝(凹溝)
H…係合穴(開口部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一部に薄板状の成形品領域を含んでいて且つその薄板状の成形品領域の長手方向に沿って当該方向と同じ方向を長手方向とする開口部が形成された成形品を多点ゲート方式の射出成形法にて成形する方法であって、
上記成形品領域の長手方向に向かって樹脂材料を射出するメインゲート部と、上記成形品領域の長手方向と交差する方向に向かって樹脂材料を射出する補助ゲート部とをそれぞれ設定しておき、
上記メインゲート部から射出した樹脂材料が少なくとも開口部の長手方向全長に回り込んだ後に、補助ゲート部から樹脂材料を射出することを特徴とする射出成形方法。
【請求項2】
上記開口部の長手方向に沿ってその直近位置の板厚を他の部位よりも大きく設定してあることを特徴とする請求項1に記載の射出成形方法。
【請求項3】
上記薄板状の成形品領域の長手方向に沿って当該方向と同じ方向を長手方向とする凹溝が形成されていて、この凹溝の底壁部に開口部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の射出成形方法。
【請求項4】
上記成形品が自動車用バンパーにおけるバンパーフェイシアであり、そのバンパーフェイシアの一部に含まれる薄板状の成形品領域がバンパーサイド部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の射出成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−1019(P2013−1019A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135889(P2011−135889)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】