説明

射出成形機の異常検出装置

【課題】何らかの要因で可動部の負荷が変動した場合に成形運転を不必要に停止させることなく、かつ、本当に異常が発生した場合には精度良く異常を検出できる射出成形機の異常検出装置を提供すること。
【解決手段】型閉開始からの経過時間に対応させて型締用サーボモータ8に加わる負荷を基準負荷として記憶し、型閉区間のうちの一部(第一の部分)を異常検出区間として設定し、異常検出区間において基準負荷と現在の負荷との偏差が閾値を超えた場合に異常を検出する異常検出装置において、さらに型閉区間のうちの一部(第二の部分)を負荷変動検出区間として設定し、前記負荷変動検出区間において検出した負荷の変動120に基づいて前記異常判定のための閾値110を補正し、現在の負荷と基準負荷との偏差が補正後の閾値130を超えた場合に異常を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は射出成形機に関し、特に、射出成形機の異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機を用いて成形品を製造する射出成形サイクルにおける型開閉動作や成形品突き出し動作では、時間または可動部の位置に対応して前記可動部を駆動するモータの負荷を基準負荷として記憶しておき、さらに、記憶された前記基準負荷と実際のモータ負荷を時間または可動部の位置に対応させて順次比較して、その偏差が予め設定された許容範囲内か否かで型開閉動作や突き出し動作の異常を検出し、射出成形機を停止させることで、機構部や金型の破損を防止している。
【0003】
例えば、特許文献1や特許文献2には上述した破損防止のための異常検出技術として、正常な型開閉動作や突き出し動作が行われた少なくとも過去1回分の負荷或いは複数回の動作の移動平均値を算出することにより得られた負荷を、基準負荷として設定する技術が開示されている。また、特許文献3には、ショット回数が設定値に達する毎に閾値を変化させる型締制御技術が開示されている。また、特許文献4には、過去に検出されたモータ電流の平均値や分散から閾値を求める射出成形機の制御技術が開示されている。また、特許文献5には、給脂が行われて負荷が変動した場合には閾値を広げ、誤検出を防止する技術が開示されている。また、特許文献6には、外乱負荷オブザーバで可動部にかかる負荷を検出する場合に、毎成形サイクルにおいて負荷変動がないとみなされる点における負荷を基準負荷として記憶する手段と、毎成形サイクル毎に前記負荷変動がないとみなされる点における負荷を求める手段と、該負荷と基準負荷に基づいて前記外乱負荷オブザーバで検出される負荷を補正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−30326号公報
【特許文献2】特開2001−38775号公報
【特許文献3】特開2004−330527号公報
【特許文献4】特開2005−280015号公報
【特許文献5】特開2009−279891号公報
【特許文献6】特開2005−231082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、背景技術で説明した特許文献1〜6に開示される技術には次のような問題があった。
特許文献1や特許文献2に開示された技術では、例えば機構部に給脂を行うなどして、前記基準負荷の取得後に摺動抵抗が変化した場合には、摺動抵抗の変化による負荷の変動を動作の異常とみなしてしまい、成形運転を不必要に停止してしまうという問題があった。例えば、図2に示されるように、閾値110に基づいて現在の負荷と基準負荷との偏差100の異常判定が行われ、異常判定区間において現在の負荷と基準負荷との偏差100が閾値110を超えてしまうことから、射出成形機に異常が発生したと誤って判定されてしまうという問題があった。
特許文献3や特許文献4に開示された技術では、過去数ショット前の負荷の変動に基づいて閾値を変化させるため、何らかの要因で負荷変動が起こった場合に変動後の最初の1ショット目で直ちに閾値を変化させることができない。そのため、成形運転を不必要に停止してしまうという問題があった。
特許文献5に開示された技術では、閾値をどの程度大きくすればよいかわからないため、閾値を必要以上に大きく広げてしまう可能性があり、本当に異常が発生した場合の検出精度が低下してしまう可能性があった。
特許文献6に開示される技術は、モータ温度が変動したときの検出負荷と実負荷との間の誤差を低減することを課題とするものであり、実負荷が変動した場合の異常検出の精度を向上するものではなかった。
【0006】
そこで本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、何らかの要因で物理量変動が起こった場合に成形運転を不必要に停止させることなく、かつ、本当に異常が発生した場合には精度良く異常を検出できる射出成形機の異常検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の請求項1に係る発明は、サーボモータを駆動制御して可動部を駆動する駆動部と、前記サーボモータに加わる負荷、前記サーボモータの速度、電流、位置偏差のうちいずれか一つを検出する物理量検出部と、前記物理量を可動部の動作中の経過時間あるいは可動部の動作中の位置に対応させて基準物理量として記憶する記憶部と、前記可動部の動作区間の第一の部分を異常検出区間として設定する異常検出区間設定部と、前記設定した異常検出区間において、前記記憶された基準物理量と現在の物理量を可動部が動作する経過時間あるいは可動部の動作位置に対応させて順次比較し前記記憶された基準物理量と現在の物理量との偏差が閾値を超えた場合に異常を検出する異常検出部を有する射出成形機の異常検出装置であって、前記可動部の動作区間の第二の部分を物理量変動検出区間として設定する物理量変動検出区間設定部と、前記物理量変動検出区間において基準物理量と現在の物理量を可動部が動作する経過時間あるいは可動部の動作位置に対応させて順次比較し、前記記憶された基準物理量と現在の物理量との偏差に基づいて前記閾値を補正する閾値補正部と、を有することを特徴とする射出成形機の異常検出装置である。
請求項2に係る発明は、前記異常検出部は、前記記憶された基準物理量と現在の物理量との偏差の符号が正の場合の閾値と負の場合の閾値をそれぞれ有し、前記閾値補正部は、前記物理量変動検出区間における負荷の変動方向が正の場合は、前記偏差の符号が正の場合の閾値を補正し、前記物理量変動検出区間における負荷の変動方向が負の場合は、前記偏差の符号が負の場合の閾値を補正することを特徴とする請求項1に記載の射出成形機の異常検出装置である。
【0008】
請求項3に係る発明は、サーボモータを駆動制御して可動部を駆動する駆動部と、前記サーボモータに加わる負荷、前記サーボモータの速度、電流、位置偏差のうちいずれか一つを検出する物理量検出部と、前記物理量を可動部の動作中の経過時間あるいは可動部の動作中の位置に対応させて基準物理量として記憶する記憶部と、前記可動部の動作区間の第一の部分を異常検出区間として設定する異常検出区間設定部と、前記記憶された基準物理量に基づいて可動部が動作する経過時間あるいは可動部の動作位置に対応させて異常検出の閾値を設定する閾値設定部と、前記設定した異常検出区間において、前記設定した閾値と現在の物理量を可動部が動作する経過時間あるいは可動部の動作位置に対応させて順次比較し、現在の物理量が前記設定した閾値から外れた場合に異常を検出する異常検出部を有する射出成形機の異常検出装置であって、前記可動部の動作区間の第二の部分を物理量変動検出区間として設定する物理量変動検出区間設定部と、前記物理量変動検出区間において基準物理量と現在の物理量を可動部が動作する経過時間あるいは可動部の動作位置に対応させて順次比較し、前記記憶された基準物理量と現在の物理量との偏差に基づいて前記閾値を補正する閾値補正部と、を有することを特徴とする射出成形機の異常検出装置である。
請求項4に係る発明は、前記異常検出部は、現在の物理量に対する上限値としての閾値と下限値としての閾値をそれぞれ有し、前記閾値補正部は、前記物理量変動検出区間における負荷の変動方向が正の場合は、前記上限値としての閾値を補正し、前記物理量変動検出区間における負荷の変動方向が負の場合は、前記下限値としての閾値を補正することを特徴とする請求項3に記載の射出成形機の異常検出装置である。
【0009】
請求項5に係る発明は、前記閾値補正部は、前記物理量変動検出区間において前記記憶された基準物理量と現在の物理量との偏差の時間平均値または可動部の動作位置に関する平均値を算出し、該平均値の絶対値に所定の係数を乗じた値だけ前記閾値を補正することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の射出成形機の異常検出装置である。
請求項6に係る発明は、前記閾値補正部は、前記物理量変動検出区間のなかで前記記憶された基準物理量と現在の物理量との偏差が最大となる値の絶対値に所定の係数を乗じた値だけ前記閾値を補正することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の射出成形機の異常検出装置である。
請求項7に係る発明は、前記閾値補正部は、前記物理量変動検出区間のなかで最も遅い時刻または物理量変動検出区間の終了時の位置における前記記憶された基準物理量と現在の物理量との偏差の絶対値に所定の係数を乗じた値だけ前記閾値を補正することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の射出成形機の異常検出装置である。
請求項8に係る発明は、前記可動部はトグルリンク機構であり、前記所定の係数は、トグルリンク機構の力の増幅率に反比例する値であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一つに記載の射出成形機の異常検出装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、過去数サイクル前の物理量ではなく、今回のサイクルの物理量に基づいて閾値を補正するため、何らかの要因で物理量変動が起こった場合に最初の1ショット目で直ちに閾値を変化させることができ、成形運転を不必要に停止することがない射出成形機の異常検出装置を提供できる。また、本発明によれば、物理量の基準値からの変動幅に基づいて必要最小限な幅だけ閾値を補正するので、閾値を不必要に大きく広げてしまうことがなく、本当に異常が発生した場合には精度良く異常を検出できる射出成形機の異常検出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の射出成形機の異常検出装置の実施形態の要部ブロック図である。
【図2】従来技術を説明する図である。
【図3】負荷の変動に応じて閾値を補正することを説明する図である。
【図4】負荷の変動とトグルリンク機構の力の増幅率に応じて閾値を補正することを説明する図である。
【図5】請求項1の実施形態における処理のアルゴリズムを示すフローチャートを説明する図である。
【図6−1】請求項2の実施形態における処理のアルゴリズムを示すフローチャートを説明する図である(その1)。
【図6−2】請求項2の実施形態における処理のアルゴリズムを示すフローチャートを説明する図である(その2)。
【図7】請求項3の実施形態における処理のアルゴリズムを示すフローチャートを説明する図である。
【図8−1】請求項4の実施形態における処理のアルゴリズムを示すフローチャートを説明する図である(その1)。
【図8−2】請求項4の実施形態における処理のアルゴリズムを示すフローチャートを説明する図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図1は、本発明の射出成形機の異常検出装置の実施形態の要部システムブロック図である。機台15上に固定プラテン1、リアプラテン2、可動プラテン3、トグルリンク機構6などから構成される型締め部と、射出シリンダ20、射出スクリュ22、射出用サーボモータ25などから構成される射出部を備えて射出成形機の本体部が構成される。型締め部や射出部には後述するように可動プラテン3やエジェクタ装置13などの複数の可動部が備わっている。
【0013】
まず、型締め部について説明する。固定プラテン1とリアプラテン2は複数のタイバー4によって連結されている。固定プラテン1とリアプラテン2の間には可動プラテン3がタイバー4に沿って移動自在に配設されている。また、金型5の固定側金型5aが固定プラテン1に取り付けられ、可動側金型5bが可動プラテン3に取り付けられている。
【0014】
リアプラテン2と可動プラテン3間にはトグルリンク機構6が配設され、トグルリンク機構6のクロスヘッド6aに設けられたナットが、リアプラテン2に回動自在で軸方向移動不能に取り付けられたボールネジ7と螺合している。ボールネジ7に設けられたプーリ10と型締用サーボモータ8の出力軸に設けられたプーリ11間にはベルト(タイミングベルト)9がかけられている。
【0015】
型締用サーボモータ8の駆動により、プーリ11、ベルト9、プーリ10の動力伝達手段を介してボールネジ7を駆動し、トグルリンク機構6のクロスヘッド6aを前進,後進(図1において右方向,左方向)させてトグルリンク機構6を駆動し、可動プラテン3を固定プラテン1方向に前進、後退させて金型5a,5bの開閉じ・型締、型開きを行う。
【0016】
型締用サーボモータ8にはパルスエンコーダなどの型締用サーボモータ8の回転位置・速度を検出する位置・速度検出器12が取り付けられている。この位置・速度検出器12からの位置フィードバック信号により、クロスヘッド6aの位置、可動プラテン3(可動側金型5b)の位置を検出するように構成されている。
【0017】
符号13はエジェクタ装置であり、エジェクタ装置13は可動プラテン3に設けられた金型(可動側金型5b)内から成型品を突き出すための装置である。エジェクタ装置13は、エジェクタ用サーボモータ13aの回転力をプーリ、ベルト(タイミングベルト)からなる動力伝達手段13c、ボールネジ/ナット機構13dを介して、図示しないエジェクトピンに伝達し、該エジェクトピンを金型(可動側金型5b)内に突出させて成型品を金型(可動側金型5b)から突き出すものである。なお、符号13bはエジェクタ装置13のサーボモータ13aに取り付けられた位置・速度検出器であり、このエジェクタ装置13のサーボモータ13aの回転位置・速度を検出することによって、エジェクトピンの位置、速度を検出するものである。
【0018】
符号14は、リアプラテン2に設けられた型締力調整機構であり、型締力調整用モータ14aを駆動し、伝動機構を介してタイバー4に設けられたネジに螺合する図示しないナットを回転させ、タイバー4に対するリアプラテン2の位置を変える(つまり機台15上での固定プラテン1に対する位置を変える)ことによって型締力の調整を行うものである。上述した、型締装置、エジェクタ機構などは従来から射出成形機に備えられた公知のものである。
【0019】
次に、射出部について説明する。射出シリンダ20内に樹脂材料を供給するために、ホッパ27が射出シリンダ20の上部に設けられている。射出シリンダ20の先端にはノズル部21が取り付けられ、射出シリンダ20内には射出スクリュ22が挿通されている。射出スクリュ22には、射出シリンダ20内の溶融樹脂にかかる圧力を、射出スクリュ22にかかる圧力により検出するロードセル等の図示しない圧力センサが設けられている。射出スクリュ22は、スクリュ回転用サーボモータ23により、プーリ、タイミングベルト等で構成される伝動手段24を介して正,逆回転させられる。また、射出スクリュ22は、射出用サーボモータ25によって、プーリ、ベルト、ボールねじ/ナット機構などの回転運動を直線運動に変換する機構を含む伝動手段26を介して駆動され,射出シリンダ20内を射出シリンダ20の長軸方向に移動する。スクリュ回転用サーボモータ23には図示を省略したパルスコーダが取り付けられており、射出スクリュ22の回転位置や回転速度を検出する。また、射出用サーボモータ25には図示を省略したパルスコーダが取り付けられており、射出スクリュ22の軸方向の位置や速度を検出する。
【0020】
次に、射出成形機の制御装置について説明する。符号30は射出成形機を制御する制御装置である。制御装置30は、プロセッサ(CPU)35,RAM34a,ROM34b等からなるメモリ34、バス33、表示装置インタフェース36を備え、バス33でこれらの要素が接続されている。ROM34bには、可動プラテン3の動作を制御するソフトウェアやエジェクタ装置13を制御するための突き出し制御用のソフトウェアなど、射出成形機を全体として制御するソフトウェアが格納されている。また、本発明の実施形態では、メモリ34のROM34bには、本発明に係る射出成形機の異常検出を検出するための各種ソフトウェアが格納されている。
【0021】
表示装置インタフェース36には、液晶表示装置37が接続されている。また、サーボインタフェース32には、射出成形機の各可動部を駆動しサーボモータの位置、速度を制御するサーボアンプ31が接続される。そして、各可動部を駆動するサーボモータに取り付けられた位置・速度検出器がサーボアンプ31に接続されている。なお、表示装置インタフェース36には図示を省略した手動入力による入力手段が接続されている。また、図示しない給脂装置は、PMC(プログラマブル・マシン・コントローラ)38によりシーケンス制御され、射出成形機本体の可動部に潤滑用のグリースを供給する。
【0022】
射出成形機には複数の可動部を駆動するために複数のサーボモータが用いられているが、図1では、型締用サーボモータ8用とエジェクタ用サーボモータ13a用のサーボアンプ31のみを示している。そして、サーボアンプ31はそれぞれのサーボモータ8、13aの位置・速度検出器12,13bと接続され、位置・速度検出信号がそれぞれのサーボアンプ31にフィードバックされる。なお、スクリュ回転用サーボモータ23及び射出用サーボモータ25のサーボアンプ、並びに、それぞれのサーボモータ23,25に取り付けられている位置・速度検出器は図示を省略している。
【0023】
プロセッサ(CPU)35は、予めメモリ34のROM34bに格納されているプログラムを成形条件などに基づいて実行し、射出成形機の各可動部への移動指令を、サーボインタフェース32を介してサーボアンプ31に出力する。各サーボアンプ31は、この移動指令、それぞれの位置・速度検出器(12,13b)からの位置、速度フィードバック信号に基づいて位置、速度のフィードバック制御、さらには、図示しない電流検出器からの電流フィードバック信号に基づいて電流フィードバック制御を行い、各サーボモータ(8、13a)を駆動制御する。なお、各サーボアンプ31は、従来技術と同様に、プロセッサとメモリ等で構成されており、この位置、速度のフィードバック制御等の処理をソフトウェアの処理によって実行するものである。
【0024】
次に、上述した射出成形機において、射出成形機の可動部の異常を検出する例として、型開閉の異常を検出する場合、エジェクタ動作の異常を検出する場合について、本発明による射出成形機の異常検出方法を説明する。
【0025】
<型開閉の異常を検出する場合>
まず、型開閉の異常を検出する場合を説明する。
型閉開始からの経過時間に対応させて型締用サーボモータ8に加わる負荷を基準負荷としてメモリ34に記憶し、型閉区間のうちの一部(第一の部分)を異常検出区間として設定し、異常検出区間において基準負荷と現在の負荷との偏差が閾値を超えた場合に異常を検出する場合を例に挙げて説明する。
【0026】
型閉工程の異常検出を行う場合、成形品などの異物が金型内に残ったまま型閉を行うことを防止することが主な目的となるので、異常検出区間は金型5(固定側金型5a,可動側金型5b)の金型パーティング面が接触する時(または位置)の前後の区間とすることが望ましい。また、本発明では、型閉区間のうちの一部(第二の部分)を、摺動抵抗などの負荷の変動を検出するための負荷変動検出区間として設定する。負荷変動検出区間としては、負荷変動の検出結果を即座に異常検出区間の閾値の補正に反映させるために、型閉区間のうちの一部であって異常検出区間の直前の区間とすることが望ましい。
【0027】
型締め部の摺動抵抗に変動が無い場合、負荷変動検出区間の負荷は変化しないので、閾値の補正は行われない。一方、連続成形中に型締め部に(図示しない)給脂装置により給脂が行われるなどして型締め部の摺動抵抗が低下した場合、負荷変動検出区間および異常検出区間において、現在の負荷は基準負荷に対して相対的に低下するため、基準負荷と現在の負荷との偏差が増大する。このとき、負荷変動検出区間における基準負荷と現在の負荷との偏差に基づいて異常検出区間の閾値を補正することにより、異常検出区間における基準負荷と現在の負荷との偏差が閾値を超えないようになる。これによって、型締め部の摺動抵抗の変化による負荷の変動を動作の異常とみなしてしまい、成形運転を不必要に停止してしまう問題を回避できる。また、連続成形中に型締め部に給脂が行われるなどして型締め部の摺動抵抗が低下すると同時に、型閉工程に異常が発生した場合では、異常検出区間の閾値は負荷変動検出区間における基準負荷と現在の負荷との偏差に基づいて必要十分な幅だけ補正されるため、型閉工程の動作の異常を精度良く検出できる。
【0028】
図3は負荷の変動に応じて閾値を補正することを説明する図である。型閉工程の第二の部分である負荷変動検出区間における負荷の変動120に基づいて、異常判定のための閾値110を補正する。そして型閉工程の第一の部分である異常判定区間において、現在の負荷と基準負荷との偏差100と、閾値110を補正して得られた補正後の閾値130とを比較して異常判定が行われる。
【0029】
<閾値の補正方法>
ここで、閾値の補正方法を説明する。最初に、可動部の移動開始からの経過時間に対応した負荷に基づいて閾値を補正する場合について説明する。表1では、基準とする成形サイクルにおける可動部の移動開始からの経過時間に対応した負荷を基準負荷とし、同様に、現在の成形サイクルにおける負荷を現在の負荷として表している。例えば型開閉の異常を検出する場合、表1の基準負荷と現在の負荷の対象は型締用サーボモータ8となる。
【0030】
【表1】

【0031】
異常検出区間の閾値を補正するにあたっては、負荷変動検出区間における基準負荷と現在の負荷との偏差を時間に対応させてメモリ34に記憶させておき、前記記憶した偏差に基づいて閾値を補正する。例えば、前記記憶した偏差の時間に関する平均値(図3の負荷の変動120を参照)の絶対値に所定の係数をかけた値だけ閾値を広げるようにしてもよい。表1において、t1が負荷変動検出区間の開始時間,t2が負荷変動検出区間の終了時間とすると、少なくとも、この区間内の基準負荷と現在の負荷を時間に対応させてメモリ34に記憶しておく。負荷変動検出区間において記憶された基準負荷と現在の負荷との偏差を用いて閾値の補正を行う。
数1式は、負荷変動検出区間において記憶された基準負荷と現在の負荷との偏差の時間に関する平均値に所定の係数k(k>0)をかけた値により閾値αを補正する式である。これによって、閾値αは補正後の閾値α’に広げられる。ここで、αは、単独の値、あるいは、異常検出区間における所定のサンプリング周期毎に値を予め設定し、制御装置30のメモリ34に格納しておく。他の数式により異常判定を行う場合も数式に合わせて適宜な閾値を予め設定しておく。
【0032】
【数1】

【0033】
または、数2式に示されるように、負荷変動検出区間のなかで基準負荷と現在の負荷との偏差が最大となる値の絶対値をとって、その値に所定の係数kをかけた値だけ閾値αを広げるようにしてもよい。
【0034】
【数2】

【0035】
または、数3式に示されるように、負荷変動検出区間のなかで最も遅い時刻(負荷変動検出区間の終了時間)における前記偏差の値に所定の係数kをかけた値だけ閾値αを広げるようにしてもよい。
【0036】
【数3】

【0037】
なお、数1式〜数3式において所定の係数を「k」として表しているが、各式に応じてその値を変えてよい。
【0038】
(符号の方向に応じた閾値の補正)
なお、異常検出区間の閾値αを補正するにあたっては、基準負荷と現在の負荷との偏差の符号の正方向側と負方向側それぞれに個別の閾値を設定するようにしておき、負荷変動検出区間における負荷の変動方向に応じて、負荷の変動方向と同じ側の閾値を補正し、負荷の変動方向と異なる側の閾値は補正しないようにしてもよい。例えば、負荷変動検出区間における基準負荷と現在の負荷との偏差の時間平均値に基づいて負荷変動を検出する場合は、数4式、数5式のように閾値αを広げるとよい。負荷の変動をEとおくと、負荷の変動方向は数6式を用いて知ることができる。負荷の変動E≧0の場合は正方向側の閾値を補正し、負荷の変動E<0の場合は負方向側の閾値を補正する。または、負荷変動検出区間における負荷の変動方向によらず、正方向側と負方向側の両方の閾値を補正するようにしてもよい。
【0039】
【数4】

【0040】
【数5】

【0041】
【数6】

【0042】
例えば図3においては、負荷変動検出区間における負荷の変動方向が正方向側なので、負荷の変動方向と同じ側の閾値α’plusを補正し、負荷の変動方向と異なる側の閾値α’は補正しないようにしている。
なお、数1式〜数5式の前記所定の係数kはオペレータが画面(液晶表示装置37)から設定するようにしてもよいし、機械固有の値としてあらかじめ設定しておくようにしてもよい。
【0043】
次に、可動部の位置に対応した負荷に基づいて閾値を補正する場合について説明する。表2は、基準となる成形サイクルにおける可動部の位置に対応した負荷を基準負荷とし、同様に、現在の成形サイクルにおける負荷を現在の負荷として表している。例えば、型開閉の異常を検出する場合、表2の基準負荷と現在の負荷の対象は型締用サーボモータ8となる。
【0044】
【表2】

【0045】
異常検出区間の閾値を補正するにあたっては、負荷変動検出区間における基準負荷と現在の負荷との偏差を可動部の位置に対応させてメモリ34に記憶させておき、前記記憶した偏差に基づいて閾値を補正する。例えば、前記記憶した偏差の可動部の位置に関する平均値の絶対値に所定の係数をかけた値だけ閾値を広げるようにしてもよい。表2において、x1が負荷変動検出区間の開始位置,x2が負荷変動検出区間の終了位置とすると、少なくとも、この区間内の基準負荷と現在の負荷を可動部の位置に対応させてメモリ34に記憶しておく。負荷変動検出区間において記憶された基準負荷と現在の負荷との偏差を用いて閾値の補正を行う。
数7式は、負荷変動検出区間において記憶された基準負荷と現在の負荷との偏差の可動部の位置に関する平均値に所定の係数kをかけた値により閾値βを補正する式である。これによって、閾値βは補正後の閾値β’に広げられる。
【0046】
【数7】

【0047】
または、数8式に示されるように、負荷変動検出区間のなかで基準負荷と現在の負荷との偏差が最大となる値の絶対値をとって、その値に所定の係数kをかけた値だけ閾値βを広げるようにしてもよい。
【0048】
【数8】

【0049】
または、数9式に示されるように、負荷変動検出区間の終了時の位置における前記偏差の値に所定の係数kをかけた値だけ閾値βを広げるようにしてもよい。
【0050】
【数9】

【0051】
なお、数7式〜数9式に用いられる前記所定の係数kはオペレータが画面(液晶表示装置37)から設定するようにしてもよいし、機械固有の値としてあらかじめ設定しておくようにしてもよい。
【0052】
<力の増幅率に応じた閾値の補正係数>
トグルリンク機構6の力の増幅率は、表3に示されるように可動部(可動プラテン3)の位置に対応して変化する。
【0053】
【表3】

【0054】
そこで、可動部が可動プラテン3の場合において、数1式〜数5式,数7式〜数9式の前記所定の係数kは型締め部のトグルリンク機構6の力の増幅率に応じた値として、型閉工程において力の増幅率が変化するのに応じて逐次、前記所定の係数kを変更するようにしてもよい。
【0055】
例えば、金型5のパーティング面が接触する付近の位置においては、型閉リンク機構(トグルリンク機構6)の力の増幅率が大きくなっているため、トグルリンク機構6の摺動抵抗が変化しても、モータ(型締用サーボモータ8)が検出する負荷の変動は相対的に小さくなる。よって、図4に示されるように、金型5のパーティング面が接触する付近の位置においては、前記係数を力の増幅率に反比例する小さい値とし、閾値を広げる幅を相対的に小さくするようにしてもよい。
【0056】
<エジェクタ動作の異常を検出する場合>
次に、可動部としてエジェクタ装置13を例として、エジェクタ装置13のエジェクタ動作の異常を検出する場合を説明する。エジェクタ動作の異常を検出する場合、成形品の突き出し開始からの経過時間に対応させて突き出しモータに加わる負荷を基準負荷として記憶し、突き出し区間のうちの一部を異常検出区間として設定し、異常検出区間において基準負荷と現在の負荷との偏差が閾値を超えた場合に異常を検出する技術が知られている。この場合も負荷変動検出区間としては、負荷変動の検出結果を即座に異常検出区間の閾値の補正に反映させるために、異常検出区間の直前の区間とすることが望ましい。
【0057】
なお、異常検出区間の閾値を補正するにあたっては、負荷変動検出区間における基準負荷と現在の負荷との偏差を時間または可動部(エジェクタ装置13)の位置に対応させて記憶させておき、前記記憶した偏差に基づいて閾値を補正する。例えば、前記偏差の時間または位置に関する平均値の絶対値に所定の係数をかけた値だけ閾値を広げるようにしてもよい。
また、負荷変動検出区間のなかで基準負荷と現在の負荷との偏差が最大となる値の絶対値をとって、その値に所定の係数をかけた値だけ閾値を広げるようにしてもよい。また、負荷変動検出区間のなかで最も遅い時刻(負荷変動検出区間の終了時間)あるいは負荷変動検出区間の終了位置における前記偏差の値に所定の係数をかけた値だけ閾値を広げるようにしてもよい。そして、可動部がエジェクタ装置13の場合の負荷変動検出区間における基準負荷と現在の負荷との偏差に基づく閾値の補正は、数1式〜数9式を用いて行うことができる。
【0058】
<負荷の検出手段>
次に、可動部の負荷の検出手段について説明する。可動部の負荷を検出する手段としては、サーボモータ(例:型締用サーボモータ8,サーボモータ13a)を駆動するサーボ回路の中に周知の外乱負荷オブザーバを構成して負荷を検出するようにしてもよいし、または可動部に歪みゲージなどの検出手段を用意して検出するようにしてもよい。または、サーボモータの駆動電流に基づいて負荷を検出するようにしてもよい。または、可動部の進行方向と逆方向に負荷が加わった場合はサーボモータの速度が低下し、可動部の進行方向と同じ動向に負荷が加わった場合はサーボモータの速度が上昇することに基づいて、負荷を検出するようにしてもよい。または、可動部の進行方向と逆方向に負荷が加わった場合はサーボモータの位置偏差が増大し、可動部の進行方向と同じ動向に負荷が加わった場合はサーボモータの位置偏差が減少することに基づいて、負荷を検出するようにしてもよい。なお、位置偏差は、位置フィードバック量と移動指令との差分である。
【0059】
<閾値の比較対象について>
上記の本発明の実施形態の説明では、基準負荷と現在の負荷との偏差を求め、該偏差と所定の閾値とを比較することで異常を検出する場合について記載した。これに対して、特許文献3のように、過去の負荷検出値からサンプリング順位毎の閾値を求めて、現在の負荷と前記サンプリング順位毎の閾値とを比較することで異常を検出する場合でも同様に適用できる。この場合、現在の負荷が上限値としての閾値を上回った場合、閾値を外れたとして異常を検出する。また、前記の場合に加えて、現在の負荷が下限値としての閾値を下回った場合、閾値を外れたとして異常を検出するようにしてもよい。
【0060】
上述した型締用サーボモータ8やサーボモータ13aなどのサーボモータに加わる負荷、前記サーボモータの速度、電流、位置偏差は、それぞれ物理量であり、これらのそれぞれを検出する検出手段は、特許請求の範囲に記載される「物理量検出部」に対応する。また、上記の負荷変動検出区間、異常検出区間は、オペレータが画面(液晶表示装置37)から設定するようにしてもよいし、可動部の動作ストロークなどから自動的に設定するようにしてもよい。また物理量変動区間設定部は、物理量変動検出区間を明示的に設定するものだけに限らず、例えば異常検出区間の直前の所定区間や、可動部の動作開始直後の所定区間を物理量変動検出区間とするような、明示的には物理量変動区間を設定しないものも含む。
【0061】
次に制御装置30で実行される可動部の異常検出を行う処理を、図5〜8に示されるフローチャートを用いて説明する。ここでは、型閉開始からの経過時間に基づいて処理を行う場合のフローチャートを説明する。可動部の位置に対応させる場合は、図5〜8のフローチャートの処理の場合の経過時間に替えて可動部の移動開始からの位置に基づいて処理を実行すればよい。ここでは物理量として負荷を例としてフローチャートを説明するが、負荷以外の物理量に依る場合も同様である。
【0062】
図5は、請求項1に記載の発明の実施形態における処理のアルゴリズムを示すフローチャートを説明する図である。以下、各ステップに従って説明する。
●[ステップSA01]負荷基準データの有無を判断し、あり(YES)の場合にはステップSA05へ移行し、無い(NO)場合にはステップSA02へ移行する。
●[ステップSA02]型閉じを開始する。
●[ステップSA03]型閉からの経過時間に対応して基準負荷ref(0),ref(1),・・・,ref(t1),・・・,ref(t2),・・・,ref(tn)を記憶する。
●[ステップSA04]型閉じを完了する。
●[ステップSA05]型閉じを開始する。
●[ステップSA06]負荷変動検出区間か否かを判断し、負荷変動検出区間内の場合(つまりYESの場合)にはステップSA07へ移行し、負荷変動検出区間ではない場合(つまりNOの場合)にはステップSA08へ移行する。
●[ステップSA07]現在の負荷と基準負荷との偏差を記憶し、ステップSA06へ戻る。
●[ステップSA08]負荷変動検出区間において検出した偏差に基づいて閾値αを補正し、補正された閾値α’を得る。なお、補正された閾値α’は数1式を用いて算出される。
●[ステップSA09]異常検出区間であるか否か判断し、異常検出区間内の場合(つまりYESの場合)にはステップSA10へ移行し、異常検出区間ではない場合(つまりNOの場合)にはステップSA12へ移行する。
●[ステップSA10]|負荷の偏差|が補正された閾値α’より大きいか否か判断し、大きい場合(つまりYESの場合)にはステップSA11へ移行し、大きくない場合(つまりNOの場合)にはステップSA09へ戻る。なお||は絶対値の記号である。
●[ステップSA11]アラーム処理を実行し、処理を終了する。
●[ステップSA12]型閉じ完了か否かを判断し、型閉じ完了ではない場合にはステップSA09へ戻り、型閉じ完了の場合にはステップSA13へ移行する。
●[ステップSA13]型閉じを完了し、処理を終了する。
【0063】
上記フローチャートを補足して説明する。ステップSA08において補正された閾値α’は、数1式に替えて、数2式、または、数3式を用いて算出してもよい。ステップSA11のアラーム処理としては、可動部の動作を停止させたり、液晶表示装置37の表示画面に警告を表示したり、成形品を不良品として排出したり、図示しない警告灯を表示したり、警報発生器を起動し警報音を発生させたりする処理を行う。アラーム処理は他のフローチャートのアラーム処理も同様である。
【0064】
図6−1,図6−2は、請求項2の実施形態における処理のアルゴリズムを示すフローチャートを説明する図である。この実施形態の処理では、偏差の符号の正方向側と負方向側それぞれに個別の閾値を設定するようにしておき、負荷変動検出区間における負荷の変動方向に応じて、負荷の変動方向と同じ側の閾値を補正し、負荷の変動方向と異なる側の閾値は補正しない。以下、各ステップに従って説明する。
●[ステップSB01]負荷基準データの有無を判断し、あり(YES)の場合にはステップSB05へ移行し、無い(NO)場合にはステップSB02へ移行する。
●[ステップSB02]型閉じを開始する。
●[ステップSB03]型閉開始からの経過時間に対応して基準負荷ref(0),ref(1),・・・,ref(t1),・・・,ref(t2),・・・,ref(tn)を記憶する。
●[ステップSB04]型閉じを完了する。
●[ステップSB05]型閉じを開始する。
●[ステップSB06]負荷変動検出区間か否かを判断し、負荷変動検出区間内の場合(つまりYESの場合)にはステップSB07へ移行し、負荷変動検出区間ではない場合(つまりNOの場合)にはステップSB08へ移行する。
●[ステップSB07]現在の負荷と基準負荷との偏差を記憶し、ステップSB06へ戻る。
●[ステップSB08]負荷変動検出区間において検出した偏差に基づいて負荷の変動Eを算出する。なお、負荷の変動Eは数6式を用いて算出する。
●[ステップSB09]負荷の変動Eが0以上であるか否か判断し、以上である場合(つまりYESの場合)にはステップSB10へ移行し、小さい場合(つまりNOの場合)にはステップSB11へ移行する。
●[ステップSB10]正方向の閾値を補正する。正方向の補正された閾値α’plusはα+k・Eで表され。負方向の閾値α’minusは−αである。つまり、数4式に基づく補正を行う。
●[ステップSB11]負方向の閾値を補正する。負方向の補正された閾値α’minusは−α+k・Eである。つまり、数5式に基づく補正を行う。
●[ステップSB12]異常検出区間か否か判断し、異常検出区間である場合(YESの場合)にはステップSB13へ移行し、異常検出区間ではない場合(NOの場合)にはステップSB16へ移行する。
●[ステップSB13]負荷の偏差がα’plusより大きいか否か判断し、大きい場合(YESの場合)にはステップSB15へ移行し、大きくない場合(NOの場合)にはステップSB14へ移行する。
●[ステップSB14]負荷の偏差がα’minusより小さいか否か判断し、小さい場合(YESの場合)にはステップSB15へ移行し、小さくない場合(NOの場合)にはステップSB12へ戻る。
●[ステップSB15]アラーム処理を行い、処理を終了する。
●[ステップSB16]型閉じ完了か否かを判断し、型閉じ完了ではない場合にはステップSB12へ戻り、型閉じ完了の場合にはステップSB17へ移行する。
●[ステップSB17]型閉じを完了し、処理を終了する。
【0065】
図7は、請求項3に記載の発明の実施形態における処理のアルゴリズムを示すフローチャートを説明する図である。以下、各ステップに従って説明する。
●[ステップSC01]負荷基準データの有無を判断し、あり(YES)の場合にはステップSC05へ移行し、無い(NO)場合にはステップSC02へ移行する。
●[ステップSC02]型閉じを開始する。
●[ステップSC03]型閉からの経過時間に対応して基準負荷ref(0),ref(1),・・・,ref(t1),・・・,ref(t2),・・・,ref(tn)を記憶する。
●[ステップSC04]型閉じを完了する。
●[ステップSC05]型閉じを開始する。
●[ステップSC06]負荷変動検出区間か否かを判断し、負荷変動検出区間内の場合(つまりYESの場合)にはステップSC07へ移行し、負荷変動検出区間ではない場合(つまりNOの場合)にはステップSC08へ移行する。
●[ステップSC07]現在の負荷と基準負荷との偏差を記憶し、ステップSC06へ戻る。
●[ステップSC08]負荷変動検出区間において検出した偏差に基づいて閾値αを補正し補正された閾値α’を得る。なお、補正された閾値α’は数1式を用いて算出される。
●[ステップSC09]異常検出区間であるか否か判断し、異常検出区間内の場合(つまりYESの場合)にはステップSC10へ移行し、異常検出区間ではない場合(つまりNOの場合)にはステップSC12へ移行する。
●[ステップSC10]負荷が補正された閾値α’より大きいか否か判断し、大きい場合(つまりYESの場合)にはステップSC11へ移行し、大きくない場合(つまりNOの場合)にはステップSC09へ戻る。
●[ステップSC11]アラーム処理を実行し、処理を終了する。
●[ステップSC12]型閉じ完了か否かを判断し、型閉じ完了ではない場合にはステップSC09へ戻り、型閉じ完了の場合にはステップSC13へ移行する。
●[ステップSC13]型閉じを完了し、処理を終了する。
上記フローチャートを補足して説明する。ステップSC08において補正された閾値α’は、数1式に替えて、数2式、または、数3式を用いて算出してもよい。
【0066】
図8−1,図8−2は、請求項4の実施形態における処理のアルゴリズムを示すフローチャートを説明する図である。この実施形態の処理では、偏差の符号の正方向側と負方向側それぞれに個別の閾値を設定するようにしておき、負荷変動検出区間における負荷の変動方向に応じて、負荷の変動方向と同じ側の閾値を補正し、負荷の変動方向と異なる側の閾値は補正しない。以下、各ステップに従って説明する。
●[ステップSD01]負荷基準データの有無を判断し、あり(YES)の場合にはステップSD05へ移行し、無い(NO)場合にはステップSD02へ移行する。
●[ステップSD02]型閉じを開始する。
●[ステップSD03]型閉からの経過時間に対応して基準負荷ref(0),ref(1),・・・,ref(t1),・・・,ref(t2),・・・,ref(tn)を記憶する。
●[ステップSD04]型閉じを完了する。
●[ステップSD05]型閉じを開始する。
●[ステップSD06]負荷変動検出区間か否かを判断し、負荷変動検出区間内の場合(つまりYESの場合)にはステップSD07へ移行し、負荷変動検出区間ではない場合(つまりNOの場合)にはステップSD08へ移行する。
●[ステップSD07]現在の負荷と基準負荷との偏差を記憶し、ステップSD06へ戻る。
●[ステップSD08]負荷変動検出区間において検出した偏差に基づいて負荷の変動Eを算出する。なお、負荷の変動Eは数6式を用いて算出する。
●[ステップSD09]負荷の変動Eが0以上であるか否か判断し、以上である場合(つまりYESの場合)にはステップSD10へ移行し、小さい場合場合(つまりNOの場合)にはステップSD11へ移行する。
●[ステップSD10]正方向の閾値を補正する。正方向の補正された閾値α’plusはα+k・Eで表され。負の閾値α’minusは−αである。
●[ステップSD11]負方向の閾値を補正する。負方向の補正された閾値α’minusは−α+k・Eである。
●[ステップSD12]異常検出区間か否か判断し、異常検出区間である場合(YESの場合)にはステップSD13へ移行し、異常検出区間ではない場合(NOの場合)にはステップSD16へ移行する。
●[ステップSD13]負荷の偏差がα’plusより大きいか否か判断し、大きい場合(YESの場合)にはステップSD15へ移行し、大きくない場合(NOの場合)にはステップSD14へ移行する。
●[ステップSD14]負荷の偏差がα’minusより小さいか否か判断し、小さい場合(YESの場合)にはステップSD15へ移行し、小さくない場合(NOの場合)にはステップSD12へ戻る。
●[ステップSD15]アラーム処理を行い、処理を終了する。
●[ステップSD16]型閉じ完了か否かを判断し、型閉じ完了ではない場合にはステップSD12へ戻り、型閉じ完了の場合にはステップSD17へ移行する。
●[ステップSD17]型閉じを完了し、処理を終了する。
【符号の説明】
【0067】
1 固定プラテン
2 リアプラテン
3 可動プラテン
4 タイバー
5 金型
5a 固定側金型
5b 可動側金型
6 トグルリンク機構
7 ボールネジ
8 型締用サーボモータ
9 ベルト
10 プーリ
11 プーリ
12 位置・速度検出器
13 エジェクタ装置
13a サーボモータ
13b 位置・速度検出器
13c 動力伝達手段
13d ボールネジ/ナット機構
14 型締力調整機構
14a 型締力調整用モータ
15 機台

20 射出シリンダ
21 ノズル部
22 射出スクリュ
23 スクリュ回転用サーボモータ
24 伝動手段
25 射出用サーボモータ
26 伝動手段
27 ホッパ

30 制御装置
31 サーボアンプ
32 サーボインタフェース
33 バス
34 メモリ
34a RAM
34b ROM
35 プロセッサ(CPU)
36 表示装置インタフェース
37 LCD(液晶表示装置)
38 PMC(プログラマブル・マシン・コントローラ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボモータを駆動制御して可動部を駆動する駆動部と、前記サーボモータに加わる負荷、前記サーボモータの速度、電流、位置偏差のうちいずれか一つを検出する物理量検出部と、前記物理量を可動部の動作中の経過時間あるいは可動部の動作中の位置に対応させて基準物理量として記憶する記憶部と、前記可動部の動作区間の第一の部分を異常検出区間として設定する異常検出区間設定部と、前記設定した異常検出区間において、前記記憶された基準物理量と現在の物理量を可動部が動作する経過時間あるいは可動部の動作位置に対応させて順次比較し前記記憶された基準物理量と現在の物理量との偏差が閾値を超えた場合に異常を検出する異常検出部を有する射出成形機の異常検出装置であって、
前記可動部の動作区間の第二の部分を物理量変動検出区間として設定する物理量変動検出区間設定部と、
前記物理量変動検出区間において基準物理量と現在の物理量を可動部が動作する経過時間あるいは可動部の動作位置に対応させて順次比較し、前記記憶された基準物理量と現在の物理量との偏差に基づいて前記閾値を補正する閾値補正部と、
を有することを特徴とする射出成形機の異常検出装置。
【請求項2】
前記異常検出部は、前記記憶された基準物理量と現在の物理量との偏差の符号が正の場合の閾値と負の場合の閾値をそれぞれ有し、
前記閾値補正部は、前記物理量変動検出区間における負荷の変動方向が正の場合は、前記偏差の符号が正の場合の閾値を補正し、前記物理量変動検出区間における負荷の変動方向が負の場合は、前記偏差の符号が負の場合の閾値を補正することを特徴とする請求項1に記載の射出成形機の異常検出装置。
【請求項3】
サーボモータを駆動制御して可動部を駆動する駆動部と、前記サーボモータに加わる負荷、前記サーボモータの速度、電流、位置偏差のうちいずれか一つを検出する物理量検出部と、前記物理量を可動部の動作中の経過時間あるいは可動部の動作中の位置に対応させて基準物理量として記憶する記憶部と、前記可動部の動作区間の第一の部分を異常検出区間として設定する異常検出区間設定部と、前記記憶された基準物理量に基づいて可動部が動作する経過時間あるいは可動部の動作位置に対応させて異常検出の閾値を設定する閾値設定部と、前記設定した異常検出区間において、前記設定した閾値と現在の物理量を可動部が動作する経過時間あるいは可動部の動作位置に対応させて順次比較し、現在の物理量が前記設定した閾値から外れた場合に異常を検出する異常検出部を有する射出成形機の異常検出装置であって、
前記可動部の動作区間の第二の部分を物理量変動検出区間として設定する物理量変動検出区間設定部と、
前記物理量変動検出区間において基準物理量と現在の物理量を可動部が動作する経過時間あるいは可動部の動作位置に対応させて順次比較し、前記記憶された基準物理量と現在の物理量との偏差に基づいて前記閾値を補正する閾値補正部と、
を有することを特徴とする射出成形機の異常検出装置。
【請求項4】
前記異常検出部は、現在の物理量に対する上限値としての閾値と下限値としての閾値をそれぞれ有し、
前記閾値補正部は、前記物理量変動検出区間における負荷の変動方向が正の場合は、前記上限値としての閾値を補正し、前記物理量変動検出区間における負荷の変動方向が負の場合は、前記下限値としての閾値を補正することを特徴とする請求項3に記載の射出成形機の異常検出装置。
【請求項5】
前記閾値補正部は、前記物理量変動検出区間において前記記憶された基準物理量と現在の物理量との偏差の時間平均値または可動部の動作位置に関する平均値を算出し、該平均値の絶対値に所定の係数を乗じた値だけ前記閾値を補正することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の射出成形機の異常検出装置。
【請求項6】
前記閾値補正部は、前記物理量変動検出区間のなかで前記記憶された基準物理量と現在の物理量との偏差が最大となる値の絶対値に所定の係数を乗じた値だけ前記閾値を補正することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の射出成形機の異常検出装置。
【請求項7】
前記閾値補正部は、前記物理量変動検出区間のなかで最も遅い時刻または物理量変動検出区間の終了時の位置における前記記憶された基準物理量と現在の物理量との偏差の絶対値に所定の係数を乗じた値だけ前記閾値を補正することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の射出成形機の異常検出装置。
【請求項8】
前記可動部はトグルリンク機構であり、前記所定の係数は、トグルリンク機構の力の増幅率に反比例する値であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一つに記載の射出成形機の異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【公開番号】特開2013−75375(P2013−75375A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215453(P2011−215453)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【特許番号】特許第5180356号(P5180356)
【特許公報発行日】平成25年4月10日(2013.4.10)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】