説明

射出成形機監視装置

【課題】射出成形サイクルの変更に柔軟に対応した監視処理を行い得るようにする。
【解決手段】射出成形機監視装置20は、縦型ロータリー方式の射出成形機本体1について監視処理を行う場合、作業者の操作指示に従ってA型監視設定及びB型監視設定をそれぞれ記憶し、監視設定が「ON」の下側金型3についてのみ予め基準画像データVWを生成し、監視サイクルの開始後に基準画像データVSと比較して異常を検出する監視処理を行う。これにより射出成形機監視装置20は、下側金型3の一方を取り外した射出成形機本体1について、不必要な異常検出をすることなく、他方の下側金型3を用いた射出成形サイクルについて監視処理を継続することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は射出成形機監視装置に関し、例えば縦型ロータリー方式の射出成形機を監視する射出成形機監視装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形製品を製造するための2種類の金型のうち一方の金型を複数用意しておき、この金型を順次入れ替えることにより製造効率を高めた射出成形機が利用されている。
【0003】
例えば図1(A)及び(B)に示すように、射出成形機本体1は、ロータリーテーブル2の上面に下側A金型3A及び下側B金型3B(以下これらをまとめて下側金型3と呼ぶ)が取り付けられており、当該下側金型3Bと対向するように、合成樹脂材料を金型内部へ供給し得る上側金型4が配置されている。
【0004】
以下では、図1(A)及び(B)において下側A金型3A及び下側B金型3Bが位置している箇所をそれぞれ取出位置P1及び成形位置P2と呼ぶ。
【0005】
ロータリーテーブル2は、回転軸2Xを中心に右方向又は左方向に半回転させることにより、図1(C)及び(D)に示すように、上側金型4と対向する成形位置P2に下側金型3Aを移動させ得るようになされている。
【0006】
この射出成形機本体1では、例えば図1(A)及び(B)に示した状態において、成形位置P2にある下側B金型3Bに対し上側金型4を押し付ける(型締めする)と共に合成樹脂材料を供給して射出成形製品を成型する。
【0007】
続いて射出成形機本体1は、上側金型4を引き上げた(型開した)後にロータリーテーブル2を半回転させて図1(C)及び(D)に示した状態として、取出位置P1にある下側B金型3Bから成形済みの射出成形製品を取り出させる。これと並行して射出成形機本体1は、成形位置P2に移動してきた下側A金型3Aに対し上側金型4を押し付ける(型締めする)と共に合成樹脂材料を供給して射出成形製品を成型する。
【0008】
その後射出成形機本体1は、このように下側A金型3A及び下側金型3Bを交互に用いることにより、射出成形製品を順次成形していく。
【0009】
ところで射出成形機本体1では、例えば取出位置P1の下側A金型3Aに、直前に成形した射出成形製品や異物等が残っている場合には、当該下側A金型3Aが成形位置P2に回転移動されて上側金型4が型締めされる際に、下側A金型3A又は上側金型4を損傷してしまう恐れがある。
【0010】
そこで、監視処理として、撮像手段により型締め前の金型を撮像して監視画像とし、予め撮像しておいた当該金型の基準画像と得られた監視画像とを比較することにより当該金型の異常を検出する射出成形機監視装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
いわゆる縦型ロータリー方式である射出成形機本体1の場合には、例えば取出位置P1にある下側金型3A又は3Bを、射出成形機監視装置のテレビジョンカメラ21により撮像し、監視画像を得て異常を検出することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−166323号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
射出成形機本体1における2個の下側金型3A及び3Bは、互いに同一の形状であるものの、汚れ具合等が相互に異なる場合が多い。
【0014】
このため、射出成形機監視装置により同一の基準画像を用いて2種類の下側金型3A及び3Bについての異常判定を行った場合には、異常が無いにも関わらず、各下側金型3の汚れ具合に起因して、監視画像と基準画像との比較結果から異常を誤検出してしまう恐れがある。
【0015】
そこで射出成形機監視装置では、監視処理として、下側金型3A及び3Bそれぞれについて予め基準画像を作成しておき、下側金型3A及び3Bの監視画像をそれぞれと対応する基準画像と比較することにより、異常の誤検出を防止することができる。
【0016】
ところで射出成形機本体1では、例えば一方の下側金型3Aを保守等の目的で取り外し、残った下側金型3Bのみを用いて射出成形製品を成形するよう射出成形サイクルを変更して成形処理を行う場合がある。
【0017】
しかしながら射出成形機監視装置は、本来の射出成形サイクルに応じて下側金型3A及び3Bを交互に撮像すると共に比較処理を行うことを前提としているため、下側金型3Aが存在しないことにより毎回異常を検出してしまい、監視処理を適切に行うことができない、という問題があった。
【0018】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、射出成形サイクルの変更に柔軟に対応した監視処理を行い得る射出成形機監視装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
かかる課題を解決するため本発明においては、順次繰り返される射出成形サイクルごとに複数の成形用型を順次用いて同種類の成形製品を成形する射出成形機本体における所定の動作状態を撮像手段によって撮像し、当該撮像手段のビデオ信号に基づいて得た画像データの特徴量の変化に応じて、射出成形機本体の異常動作を監視する射出成形機監視装置において、射出成形機本体が所定の動作状態であること及び用いられている成形用型を表す動作状態信号を取得する動作状態取得手段と、複数の成形用型それぞれについて、動作状態信号を取得したときのビデオ信号を基に、正常動作の基準とすべき基準画像データを取得する基準画像取得手段と、順次繰り返される射出成形サイクルにおいて、動作状態信号を取得したときのビデオ信号を基に監視画像データを取得する監視画像取得手段と、監視画像データを得た際に用いられていた成形用型を動作状態信号に基づいて特定し、当該特定した成形用型に対応する基準画像データにおける所定部分の特徴量と、監視画像データにおける当該所定範囲と対応する部分の特徴量との比較処理を行う比較手段と、取得した動作状態信号に基づき比較手段により比較処理を行わせる制御手段と、複数の成形用型のうち比較処理を停止させるべき停止成形用型を指示する指示手段とを設け、制御手段は、停止成形用型についての比較手段による比較処理を停止させるようにした。
【0020】
これにより本発明では、各射出成形サイクルにおいて、停止成形用型については比較処理を行わない一方、他の成形用型については比較処理を行うことができるので、停止成形用型について成形用型の不存在による異常を誤検出することなく、他の成形用型について適切に異常を検出することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、各射出成形サイクルにおいて、停止成形用型については比較処理を行わない一方、他の成形用型については比較処理を行うことができるので、停止成形用型について成形用型の不存在による異常を誤検出することなく、他の成形用型について適切に異常を検出することができる。かくして本発明は、射出成形サイクルの変更に柔軟に対応した監視処理を行い得る射出成形機監視装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】射出成形機本体の構成を示す略線図である。
【図2】全体構成を示す略線図である。
【図3】射出成形機監視装置の機能ブロック構成を示す略線的ブロック図である。
【図4】監視処理手順を示す略線的フローチャートである。
【図5】監視設定ルーチンを示す略線的フローチャートである。
【図6】監視設定画面を示す略線図である。
【図7】基準画像取得ルーチンを示す略線的フローチャートである。
【図8】射出成形サイクル(1)を示す略線図である。
【図9】通常の監視動作における信号波形を示す略線図である。
【図10】射出成形サイクル(2)を示す略線図である。
【図11】監視サイクルルーチン(1)を示す略線的フローチャートである。
【図12】監視サイクルルーチン(2)を示す略線的フローチャートである。
【図13】射出成形サイクル(3)を示す略線図である。
【図14】射出成形サイクル(4)を示す略線図である。
【図15】制限監視動作における信号波形を示す略線図である。
【図16】射出成形サイクル(5)を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、発明を実施するための形態(以下実施の形態とする)について、図面を用いて説明する。
【0024】
[1.射出成形機監視装置の構成]
図1との対応部分に同一符号を付して図2に示すように、射出成形機本体1は、ロータリーテーブル2に取り付けられた成形用型としての下側A金型3A及び下側B金型3Bのうち、成形位置P2に位置する方に対して上側金型4を型締めし、合成樹脂材料7を射出するようになされている。
【0025】
この実施の形態においては、射出成形機本体1はいわゆるインサート成形を行うようになされている。すなわち射出成形機本体1は、取出位置P1にある下側金型3に対し、作業者の手作業により予めインサート金具6を適切な箇所にセットし、当該作業者の操作指示に従ってロータリーテーブル2を半回転させて成形位置P2に位置させる。
【0026】
続いて射出成形機本体1は、成形位置P2にある下側金型3と上側金型4との間に合成樹脂材料7を射出することにより、インサート金具6と一体化された射出成形製品8を成形する。
【0027】
次に射出成形機本体1は、ロータリーテーブル2の半回転により下側金型3を再び取出位置P1に移動させ、取出機15により当該下側金型3から成形後の射出成形製品8が取り出される。
【0028】
その後射出成形機本体1は、下側A金型3A及び下側B金型3Bを交互に用いながら射出成形処理を行い射出成形製品8を順次製造する、といった射出成形サイクルを繰り返す。
【0029】
かかる射出成形機本体1の射出成形サイクルは、射出成形機本体駆動制御装置9に設けられているシーケンサによって自動的に制御される。
【0030】
この射出成形機本体駆動制御装置9は、手動操作パネル10に設けられた回転ボタン11が作業者によって押下操作されると、ロータリーテーブル2を半回転させるよう制御する。因みにロータリーテーブル2は、回転ボタン11の押下操作に応じて、下側A金型3Aが取出位置P1にあるときには左半回転し、下側B金型3Bが取出位置P1にあるときには右半回転するようになされている。
【0031】
一方、射出成形機監視装置20は、中央処理ユニット(CPU)27により全体が統括制御されており、データメモリ28を用いながら、プログラムメモリ26のプログラムに応じた処理動作をする。また射出成形機監視装置20は、いわゆるタッチパネルでなる操作入力部35に対し作業者の操作に応じて入力される操作指令をバス25経由で取得し、当該操作指令に応じた処理を実行する。
【0032】
すなわち射出成形機監視装置20は、撮像手段としてのテレビジョンカメラ21により、射出成形機本体1の取出位置P1における射出成形動作を撮像する。このとき得られたビデオ信号VD1は、画像入力回路22においてビデオデータDATA1に変換され、画像処理回路23に入力されて保持される。
【0033】
画像処理回路23は、下側金型3にインサート金具6がセットされたタイミングで得られたビデオデータDATA1をデータメモリ28に格納する。またデータメモリ28には、後述するように異常判定をする際の基準となる基準画像データが予め格納されている。
【0034】
CPU27は、ビデオデータDATA1に基づいて得られる監視画像データと基準画像データとを比較して異常の発生の有無を判定し、さらに当該判定結果を表す判定結果画像データDATA2をバス15を介して画像処理回路23に与える。
【0035】
ここで異常とは、例えば下側金型3の所定箇所にインサート金具6がセットされていないこと、セットされているものの位置や傾き等が正しくないこと、或いは射出成形製品8等の異物が存在すること等をいう。これに対し正常とは、下側金型3に対しインサート金具6が正しくセットされていることをいう。
【0036】
画像処理回路23は、この判定結果画像データDATA2を画像表示回路29に与えることにより、画像表示回路29においてテレビジョンカメラ21から供給されるビデオ信号VD1に重畳して表示画像信号VD2としてモニタ30に与える。
【0037】
かくしてモニタ30は、入力ビデオ信号VD1に基づいて現在テレビジョンカメラ21が撮像している射出成形機本体1の画像に対して、CPU27が判定した異常状態(又は正常状態)を表す判定結果画像データDATA2に基づいて、異常が発生した画像部分に異常発生表示を表示してなる監視画面をユーザに提示する。
【0038】
CPU27は、射出成形機本体駆動制御装置6から制御信号入出力部31を介して与えられる動作状態信号S1によって監視処理動作をすべきタイミングを判知して判定動作をすると共に、当該判定動作及び判定結果に基づいて制御信号入出力部31を介して射出成形機本体駆動制御装置9に通知信号S2を与えることにより、射出成形機本体1を射出成形機監視装置20の監視動作と同期動作させるような制御を実行する。
【0039】
[2.射出成形機監視装置の機能ブロック]
ここで、射出成形機監視装置20における一連の監視動作を機能ごとに分けた場合、図3に示すような機能ブロック図として表すことができる。
【0040】
すなわち射出成形機監視装置20は、CPU27に対応する制御手段41により、全体を統括制御する。状態取得手段42は、制御信号入出力部31に対応しており、射出成形機本体1から動作状態信号S1を取得して制御手段41へ供給する。
【0041】
ここで動作状態信号S1としては、下側A金型3A又は下側B金型3Bに対するインサート金具6のセット作業が完了し、作業者により回転ボタン11が押下操作されたことを表す回転指示信号等がある。
【0042】
このとき制御手段41は、回転指示信号等を基に、射出成形機本体1において取出位置P1にある下側A金型3A又は下側B金型3Bに対しインサート金具6のセット作業が完了した状態(以下それぞれA金型セット状態又はB金型セット状態と呼ぶ)であることを認識する。
【0043】
そして制御手段41は、監視動作の開始後に最初のA金型セット状態又は最初のB金型セット状態を認識した場合、画像処理回路23に対応する基準画像取得手段43により、このとき得られたビデオデータDATA1を正常動作の基準すべき基準画像データとしてそれぞれ記憶する。
【0044】
因みに基準画像取得手段43は、ビデオデータDATA1に対し所定の画像処理を施し、また作業者により監視範囲が設定された上で、A金型セット状態のときはA金型基準画像データVSAとして、またB金型セット状態のときはB金型基準画像データVSBとして、それぞれの監視範囲と共にデータメモリ28に格納する。
【0045】
その後制御手段41は、監視動作中にA金型セット状態又はB金型セット状態であることを認識すると、画像処理回路23に対応する監視画像取得手段44により、このとき得られたビデオデータDATA1を異常判定の対象とする監視画像データVWとし、これを比較手段45へ供給する。
【0046】
また制御手段41は、A金型セット状態である場合にはA金型基準画像データVSAを、B金型セット状態である場合にはB金型基準画像データVSBを、それぞれ基準画像取得手段43から比較手段45へ供給させる。
【0047】
CPU27に対応する比較手段45は、監視画像データVWとA金型基準画像データVSA又はB金型基準画像データVSBとを比較することにより、異常状態又は正常状態のいずれであるかを判定し、その判定結果を通知手段46へ供給する。
【0048】
このとき比較手段45は、例えばA金型基準画像データVSA又はB金型基準画像データVSBに予め設定された監視範囲における明るさに対し、監視画像データVWにおける当該監視範囲に対応する範囲の各画素の明るさが所定の許容範囲内にあるか否かを演算することにより、異常状態又は正常状態のいずれであるかを判定するようになされている。
【0049】
通知手段46は、制御信号入出力部31に対応しており、判定結果が正常状態であった場合には、射出成形機本体1に通知信号S2を送出することにより、ロータリーテーブル2の回転動作を行わせて射出成形サイクルを継続させる。
【0050】
また通知手段46は、判定結果が異常状態であった場合には、射出成形機本体1に通知信号S2を送出することにより、ロータリーテーブル2の回転動作や上側金型4の型締め動作等を停止させて射出成形サイクルを一時的に停止させる。
【0051】
また指示手段47は、操作入力部35に対応しており、ユーザの操作指示を受け付けてその指示内容を制御手段41へ供給する。制御手段41は、この指示内容に応じて監視動作の一時中断や終了、或いは基準画像データを取得し直す等の各種動作を行うようになされている。
【0052】
[3.通常の監視動作]
次に、射出成形機監視装置20において、通常の監視動作を行う場合、すなわち下側A金型3A及び下側B金型3Bの双方について監視処理を行う場合の監視処理手順を、図4に示すフローチャートに従って説明する。
【0053】
射出成形機監視装置20のCPU27は、所定の監視処理開始操作を受け付けると、監視処理手順RT1を開始し、まず監視設定ルーチンRT2へ移り、図5に示すフローチャートに従った処理を実行する。
【0054】
[3−1.監視設定処理]
CPU27は、まずステップSP1へ移り、モニタ30(図2)に表示している表示画面上に、サブウィンドウとして図6に示すような監視対象設定画面D1を表示し、次のステップSP2へ移る。
【0055】
ここで監視対象設定画面D1は、いわゆるGUI(Graphical User Interface)となっており、ウィンドウ内にA型ボタンB1、B型ボタンB2及び閉じるボタンB3が配置されている。
【0056】
A型ボタンB1は、射出成形機本体1の下側A金型3Aを監視対象に含めるか否かについての設定(以下これをA型監視設定と呼ぶ)の状態を表示している。具体的にA型ボタンB1は、下側A金型3Aを監視対象に含める設定であるときは「ON」と表示し、監視対象に含めない設定であるときは「OFF」と表示する。
【0057】
B型ボタンB2は、射出成形機本体1の下側B金型3Bを監視対象に含めるか否かについての設定(以下これをB型監視設定と呼ぶ)について、A型ボタンB1と同様に表示する。
【0058】
ステップSP2においてCPU27は、作業者によるいずれかのボタンの押下操作を待ち受けると共に、閉じるボタンB3が押下されたか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは作業者にA型監視設定又はB型監視設定を変更する意思があることを表しており、このときCPU27は次のステップSP3へ移る。
【0059】
ステップSP3においてCPU27は、A型ボタンB1が押下操作された場合にはA型監視設定を「ON」又は「OFF」に交互に切り替えると共にその表示を更新し、B型ボタンB2が押下操作された場合にはB型監視設定を「ON」又は「OFF」に交互に切り替えると共にその表示を更新し、次のステップSP4へ移る。
【0060】
ステップSP4においてCPU27は、ステップSP3における切替処理後のA型監視設定及びB型監視設定をそれぞれデータメモリ28(図2)に記憶させ、再度ステップSP2へ戻る。
【0061】
一方、ステップSP2において肯定結果が得られると、このことは作業者が現在のA型監視設定及びB型監視設定を変更する意思がないことを表している。このときCPU27は、次のステップSP5へ移って監視設定ルーチンRT2を終了し、元の監視処理手順RT1(図4)へ戻る。
【0062】
このように射出成形機監視装置20のCPU27は、監視設定ルーチンRT2において、下側A金型3A及び下側B金型3Bのそれぞれについて、監視処理を行うか否かの設定を作業者の操作指示に基づき変更するようになされている。
【0063】
ここでは、A型監視設定及びB型監視設定のいずれもが「ON」に設定されたものとして説明を続ける。
【0064】
監視設定ルーチンRT2を終了したCPU27は、次に基準画像取得ルーチンRT3へ移り、図7に示すフローチャートに従った処理を実行する。
【0065】
[3−2.基準画像取得処理]
CPU27は、まずステップSP11へ移り、データメモリ28に記憶されているA型監視設定を参照して下側A金型3Aが監視対象であるか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは下側A金型3AについてA金型基準画像データVSAを生成する必要があることを示しており、このときCPU27は次のステップSP12へ移る。
【0066】
ステップSP12においてCPU27は、制御信号入出力部31(図2)を介して左方向への回転指示信号を待ち受け、これを受け付けると次のステップSP13へ移る。
【0067】
このとき射出成形機本体1では、図8(A)に示すように、作業者により、下側A金型3Aにおける所定の箇所にインサート金具6が正しくセットされた状態で、すなわちA金型セット状態で回転ボタン11が押下操作されている。またCPU27は、図9(A)に示すように、動作状態信号S1としての左回転指示信号IN1がローレベルから一時的にハイレベルへ立ち上がることにより、左方向への回転指示を受け付けるようになされている。
【0068】
ステップSP13においてCPU27は、制御信号入出力部31(図2)を介して射出成形機本体1へ出力する回転インターロック信号OUT1のレベルを変化させる。ここで通知信号としての回転インターロック信号OUT1及びOUT2は、射出成形機本体1へ送出され、ローレベルとなっている間、ロータリーテーブル2の回転を禁止するようになされている。
【0069】
すなわちCPU27は、図9(C)に示すように、左回転指示信号IN1が立ち下がった時点t1に回転インターロック信号OUT1をハイレベルからローレベルへ立ち下げ、次のステップSP14へ移る。
【0070】
ステップSP14においてCPU27は、下側A金型3AのビデオデータDATA1を取得し、次のステップSP15へ移る。
【0071】
ステップSP15においてCPU27は、取得したビデオデータDATA1に所定の画像処理を施すことにより、下側A金型3Aの異常判定時に基準となるA金型基準画像データVSAを生成すると共に作業者に監視範囲を指定させ、これらをデータメモリ28に記憶させて次のステップSP16へ移る。
【0072】
ステップSP16においてCPU27は、時点t1(図9)から所定時間(例えば1秒)が経過した時点t2に、回転インターロック信号OUT1をローレベルからハイレベルへ立ち上げてロータリーテーブル2の回転を許可し、次のステップSP17へ移る。
【0073】
一方、ステップSP11において否定結果が得られた場合には、A金型基準画像データVSAを生成する必要がないため、次のステップSP17へ移る。
【0074】
これに応じて射出成形機本体1では、ロータリーテーブル2を左半回転させることにより、図8(B)に示すように下側A金型3Aを成形位置P2に位置させて上側金型4を降下させ、さらに図8(C)に示すように下側A金型3Aと上側金型4との間に合成樹脂材料7を射出する。これにより、インサート金具6と一体化された射出成形製品8が成形される。
【0075】
次にCPU27は、ステップSP17〜SP22において、下側B金型3Bに関しステップSP11〜SP16と同様の処理を行う。
【0076】
すなわちCPU27は、データメモリ28のB型監視設定を参照して下側B金型3Bが監視対象であるか否かを判定し、肯定結果が得られた場合には、動作状態信号S1としての右回転指示信号IN2(図9(B))がハイレベルに立ち上がった時点t4に回転インターロック信号OUT2(図9(D))をローレベルへ立ち下げる。
【0077】
このとき射出成形機本体1では、図10(A)に示すように、作業者により、下側B金型3Bにおける所定の箇所にインサート金具6が正しくセットされたB型セット状態で回転ボタン11が押下操作されている。
【0078】
続いてCPU27は、下側B金型3BのビデオデータDATA1を取得し、所定の画像処理を施してB金型基準画像データVSBとして、作業者に指定された監視範囲と共にデータメモリ28に記憶させ、回転インターロック信号OUT2をハイレベルに立ち上げる。
【0079】
その後CPU27は、ステップSP23へ移って基準画像取得ルーチンRT3を終了し、元の監視処理手順RT1(図4)へ戻る。
【0080】
これに応じて射出成形機本体1では、ロータリーテーブル2を右半回転させることにより、図10(B)に示すように下側B金型3Bを成形位置P2に位置させると共に、射出成形製品8が載置された状態の下側A金具3Aを取出位置P1に位置させる。このとき射出成形製品8は、取出機15により下側A金具3Aから取り出される。
【0081】
さらに射出成形機本体1は、上側金型4を降下させ、図10(C)に示すように下側B金型3Bと上側金型4との間に合成樹脂材料7を射出する。これにより、インサート金具6と一体化された射出成形製品8が成形される。
【0082】
このように射出成形機監視装置20のCPU27は、基準画像取得ルーチンRT3において、下側A金型3A及び下側B金型3Bのうち監視対象に設定されているものについて、監視処理を行う際の基準となる基準画像データを生成するようになされている。
【0083】
基準画像取得ルーチンRT3を終了したCPU27は、次に監視サイクルルーチンRT4へ移り、図11及び図12に示すフローチャートに従った処理を実行する。
【0084】
[3−3.監視サイクル処理]
CPU27は、まずステップSP31へ移り、左方向又は右方向への回転指示情報、すなわち左回転指示信号IN1又は右回転指示信号IN2のいずれかがローレベルからハイレベルへ立ち上がるのを待ち受け、これを受け付けると次のステップSP32へ移る。
【0085】
ステップSP32においてCPU27は、取得した回転指示情報が左回転指示信号IN1であったか否かを判定する。
【0086】
ここで肯定結果が得られると、このことは図13(A)に示すように、射出成形機本体1における取出位置P1に下側A金型3Aが位置した状態で、作業者により回転ボタン11が押下操作されたことを表しており、このときCPU27は次のステップSP33へ移る。
【0087】
ステップSP33においてCPU27は、データメモリ28に記憶されているA型監視設定を参照して、下側A金型3Aが監視対象であるか否かを判定する。ここで肯定結果が得られると、このことは下側A金型3Aについて監視処理を行う必要があることを示しており、このときCPU27は次のステップSP34へ移る。
【0088】
ステップSP34においてCPU27は、図9(C)に示したように、左回転指示信号IN1が立ち下がった時点t1に回転インターロック信号OUT1をハイレベルからローレベルへ立ち下げてロータリーテーブル2の回転を禁止させ、次のステップSP35へ移る。
【0089】
ところでCPU27は、回転インターロック信号OUT1及びOUT2がローレベルであるか、又は後述するOK信号OUT4がハイレベルである間、取出機15(図2)を制御するための取出制御信号OUT5をハイレベルとするようになされている。取出機15は、この取出制御信号OUT5がハイレベルである間のみ、取出動作を行うようになされている。
【0090】
このためCPU27は、図9(F)に示すように、時点t1において回転インターロック信号OUT1を立ち下げるのと同時に取出制御信号OUT5を立ち上げ、取出機15による取出動作を開始させる。
【0091】
ステップSP35においてCPU27は、下側A金型3AのビデオデータDATA1を取得して監視画像データVWとし、次のステップSP36へ移る。
【0092】
ステップSP36においてCPU27は、データメモリ28から下側A金型3AのA金型基準画像データVSAを読み出し、これと監視画像データVWとについて所定の比較処理を行い、次のステップSP37へ移る。
【0093】
ステップSP37においてCPU27は、比較処理の結果として異常を検出したか否かを判定する。ここで否定結果が得られると、このことは監視画像データVWとA金型基準画像データVSAとの間に顕著な差異が認められなかったこと、すなわち射出成形製品8が全て取り出され、且つインサート金具6が全て正常にセットされていると判断したことを表している。このときCPU27は、射出成形サイクルを進めるべく、次のステップSP38へ移る。
【0094】
ステップSP38においてCPU27は、時点t1(図9)から所定時間(例えば1秒)が経過した時点t2に、回転インターロック信号OUT1をローレベルからハイレベルへ立ち上げてロータリーテーブル2の回転を許可し、再度ステップSP31へ戻る。
【0095】
またCPU27は、比較処理において異常が検出されなかったことを表すOK信号OUT4を、時点t2において立ち上げ、所定時間(例えば1秒間)が経過した時点t3に立ち下げる。さらにCPU27は、取出制御信号OUT5については時点t2においてもハイレベルを維持し、OK信号OUT4が立ち下がる時点t3においてローレベルに立ち下げる。
【0096】
これに応じて射出成形機本体1では、ロータリーテーブル2を左半回転させることにより、図13(B)に示すように下側A金型3Aを成形位置P2に位置させると共に、射出成形製品8が載置された状態の下側B金具3Bを取出位置P1に位置させる。
【0097】
また取出機15(図2)は、取出制御信号OUT5がハイレベルである間に、取出位置P1にある下側B金具3Bからの射出成形製品8の取出動作を完了する。
【0098】
さらに射出成形機本体1は、上側金型4を降下させ、図13(C)に示すように下側A金型3Aと上側金型4との間に合成樹脂材料7を射出する。これにより、インサート金具6と一体化された射出成形製品8が成形される。
【0099】
一方、ステップSP37において肯定結果が得られると、このことは監視画像データVWとA金型基準画像データVSAとの間に差異が認められたこと、すなわち下側A金型3Aに射出成形製品8が残っている、或いはインサート金具6のなかに正常にセットされていないものがある等と判断したことを表している。このときCPU27は、異常検出に応じた処理を行うべく、次のステップSP39へ移る。
【0100】
ステップSP39においてCPU27は、所定の異常警告モードに移行し、次のステップSP40へ移る。
【0101】
このときCPU27は、例えば監視画像データVWのうち基準画像データVSAとの間で差異を検出した部分を強調した画像をモニタ30に表示し、さらに所定のエラーメッセージを表示すると共に所定の警告音を発生させることにより、異常検出したこと及びその異常の内容を作業者に通知する。
【0102】
ステップSP40においてCPU27は、作業者により異常内容の確認やその対応処理が行われた上で、操作入力部35(図2)を介した所定のリセット操作を待ち受け、このリセット操作を受け付けると次のステップSP41へ移る。
【0103】
ステップSP41においてCPU27は、異常警告モードから復帰し、次のステップSP42へ移る。
【0104】
ステップSP42においてCPU27は、回転インターロック信号OUT1をローレベルからハイレベルへ立ち上げてロータリーテーブル2の回転を許可し、再度ステップSP31へ戻る。
【0105】
一方、ステップSP32において否定結果が得られると、このことは図10(A)に示したように、射出成形機本体1における取出位置P1に下側B金型3Bが位置した状態で、作業者により回転ボタン11が押下操作されたことを表している。この場合CPU27は、ステップSP43〜SP52(図12)において、上述したステップSP33〜SP42とそれぞれ対応する処理を行うようになされている。
【0106】
ただしCPU27は、ステップSP43ではデータメモリ28のB型監視設定を参照して下側B金型3Bが監視対象であるか否かを判定し、ステップSP44では右回転指示信号IN2が立ち下がった時点t4に回転インターロック信号OUT2をハイレベルからローレベルへ立ち下げる(図9)。
【0107】
またCPU27は、ステップSP46ではB金型基準画像データVSBと監視画像データVWとについて所定の比較処理を行い、ステップSP48では時点t5に回転インターロック信号OUT2をローレベルからハイレベルへ立ち上げ(図9)、ステップSP52でも回転インターロック信号OUT2をローレベルからハイレベルへ立ち上げる。
【0108】
このように射出成形機監視装置20のCPU27は、監視サイクルルーチンRT4において、下側A金型3A及び下側B金型3Bのそれぞれについて、得られた監視画像データVWと記憶している基準画像データとを比較して異常の有無を判定し、異常時には一連の異常警告処理を行うようになされている。
【0109】
[4.制限監視動作]
ところでCPU27は、上述したように、監視設定ルーチンRT2(図5)において、下側A金型3A及び下側B金型3Bのそれぞれについて監視処理を行うか否かを設定することができる。
【0110】
ここでは、図13(A)と対応する図14(A)に示すように、射出成形機本体1において下側A金型3Aが取り外され(すなわち下側A金具が停止成形用型となり)、下側B金型3Bのみを用いて射出成形サイクルを継続させる場合の監視動作(以下これを制限監視動作と呼ぶ)について説明する。
【0111】
すなわちCPU27は、まず監視設定ルーチンRT2(図5)のステップSP2〜SP4において、作業者の操作に基づきA型監視設定を「OFF」として記憶する。
【0112】
次にCPU27は、基準画像取得ルーチンRT3(図7)において、ステップSP11で否定結果が得られることにより、ステップSP12〜SP16によるA金型基準画像データVSAの生成処理を省略し、B金型基準画像データVSBのみを生成する。
【0113】
さらにCPU27は、その後の監視サイクルルーチンRT4(図11及び図12)において、ステップSP33で否定結果が得られることにより、ステップSP34〜SP42による下側A金型3Aについての監視処理を省略する。
【0114】
すなわちCPU27は、図14(A)のように射出成形機本体1において取出位置P1に下側金型3が無いときには監視画像データVWを取得しない。またCPU27は、図9(C)と対応する図15(C)に示すように、左回転指示信号IN1が立ち下がった時点t1において回転インターロック信号OUT1をハイレベルのままとする。
【0115】
このため射出成形機本体1は、作業者により回転ボタン11が押下操作されると何の制約もなくロータリーテーブル2を左方向へ半回転させる(図14(B))。このとき射出成形機本体1は、成形位置P2には下側金型3が無いため射出成形処理を行わず、取出位置P1の下側B金型3Bから射出成形製品8を作業者に取り出させる(図15(C))。
【0116】
一方CPU27は、B型監視設定が「ON」であるため、下側B金型3Bについては上述した通常の監視動作と同様にステップSP44〜SP52の監視サイクル処理を実行する。
【0117】
すなわちCPU27は、図16(A)のように射出成形機本体1において取出位置P1に下側B金型3Bが位置し、インサート金具6がセットされ作業者により回転ボタン11が押下操作されると、回転インターロック信号OUT2をローレベルに立ち下げる(図15(D))。
【0118】
続いてCPU27は、下側B金型3Bの監視画像データVWを取得し、これをB金型基準画像データVSBと比較して異常の有無を判定し、異常がなければロータリーテーブル2を右半回転させ(図16(B))、成形位置P2において射出成形処理を行うことにより射出成形製品8を成形させる(図16(C))。またCPU27は、ステップSP47において異常を検出した場合には、ステップSP49〜SP52の異常警告処理を行う。
【0119】
このように射出成形機監視装置20のCPU27は、制限監視動作により、監視設定が「OFF」の下側A金型3Aについての監視処理を省略する一方、監視設定が「ON」の下側B金型3Bについての監視処理を適切に継続するようになされている。
【0120】
[5.動作及び効果]
以上の構成において、射出成形機監視装置20は、縦型ロータリー方式の射出成形機本体1について監視処理を行う場合、まず監視設定ルーチンRT2(図5)において作業者に下側A金型3A及び下側B金型3Bをそれぞれ監視対象に含めるか否か設定させ、これをA型監視設定及びB型監視設定としてそれぞれ記憶する。
【0121】
続いて射出成形機監視装置20は、監視処理を開始する際、基準画像取得ルーチンRT3(図7)において、監視設定が「ON」に設定されている下側金型3についてのみ、インサート金具6が正しくセットされた状態の基準画像データを生成して記憶しておく。
【0122】
その後射出成形機監視装置20は、監視サイクルを開始すると、監視サイクルルーチンRT4(図11及び図12)において、監視設定が「ON」に設定されている下側金型3についてのみ、監視画像データVWと基準画像データVSとを比較して異常を検出する監視処理を行う。
【0123】
従って射出成形機監視装置20は、射出成形機本体1において下側金型3の一方を取り外して射出成形サイクルを継続させる場合にも、取り外した下側金型3に起因する不要な異常検出をすることなく、且つ他方の下側金型3について適切に監視処理を継続することができる。
【0124】
特に射出成形機監視装置20は、監視設定ルーチンRT2において作業者に監視設定を「OFF」にする操作をさせるだけで、基準画像データの生成処理及び監視処理のいずれをも省略することができる。
【0125】
さら射出成形機監視装置20は、例えばA型監視設定が「OFF」の場合、左回転指示信号IN1が立ち下がったとしても回転インターロック信号OUT1を立ち下げないため、ロータリーテーブル2の回転動作を不必要に停止させることがない。
【0126】
その一方で射出成形機監視装置20は、例えばB型監視設定が「ON」の場合、A型監視設定に関わらず、右回転指示信号IN2が立ち下がったときに回転インターロック信号OUT2を立ち下げてロータリーテーブル2の回転動作を停止させることができるので、監視画像データVWの取得及び異常発生時における監視サイクルの一時停止を確実に行うことができる。
【0127】
以上の構成によれば、射出成形機監視装置20は、縦型ロータリー方式の射出成形機本体1について監視処理を行う場合、作業者の操作指示に従ってA型監視設定及びB型監視設定をそれぞれ記憶し、監視設定が「ON」の下側金型3についてのみ予め基準画像データVWを生成し、監視サイクルの開始後に基準画像データVSと比較して異常を検出する監視処理を行う。これにより射出成形機監視装置20は、下側金型3の一方を取り外した射出成形機本体1について、不必要な異常検出をすることなく、他方の下側金型3を用いた射出成形サイクルについて監視処理を継続することができる。
【0128】
[6.他の実施の形態]
なお上述した実施の形態においては、下側金型3の監視設定を「OFF」にしたときに、基準画像データVSの生成処理、監視画像データVWの取得処理及び両者の比較処理をいずれも省略するようにした場合について述べた。
【0129】
本発明はこれに限らず、例えば基準画像データVSの生成処理や監視画像データVWの取得処理については行うものの両者の比較処理を省略する等、いずれの処理を省略するかについて任意に定めるようにしても良い。この場合、要は監視設定を「OFF」にした下側金型3について不必要に異常を検出しなければ良い。
【0130】
また上述した実施の形態においては、取出制御信号OUT5に従って動作する取出機15により、取出位置P1の下側金型3から射出成形製品8を取り出すようにした場合について述べた。
【0131】
本発明はこれに限らず、例えば作業者が手作業で取出位置P1の下側金型3から射出成形製品8を取り出すようにしても良い。この場合、射出成形機監視装置20は、OK信号OUT4及び取出制御信号OUT5の生成及び出力を省略することができる。
【0132】
或いは、取出位置P1の下側金型3に対するインサート金具6のセット作業を、作業者の手作業に代えて所定の金具配置機により行うようにしても良い。この場合、金具配置機は、例えば取出制御信号OUT5がハイレベルであり、且つ取出機15による取出動作の完了後にセット作業を行うようにすれば良い。さらには、当該セット作業の完了を通知する信号を金具配置機から射出成形機1へ送出することにより、当該信号の通知を回転ボタン11の押下操作に代えて射出成形サイクルを進行させるようにしても良い。
【0133】
この場合においても、監視設定が「OFF」に設定された下側金型3に関しては、取出制御信号OUT5をローレベルのままとすることにより、誤ってセット作業が行われることを防止することができる。
【0134】
その他、射出成形機監視装置20は、射出成形機本体1の射出成形サイクルに連動する種々の機器に対して、監視設定が「OFF」に設定されている下側金型3に関連して出力する信号を、監視設定が「ON」の場合とは適宜相違させるようにしても良い。
【0135】
さらに上述した実施の形態においては、ロータリーテーブル2に2個の下側金型3を設けるようにした場合について述べた。
【0136】
本発明はこれに限らず、射出成形サイクルにおける動作効率等の観点から、例えば4個や6個等、任意数の下側金型3を設けるようにしても良い。
【0137】
さらに上述した実施の形態においては、インサート成型処理において下側金型3にインサート金具6をセットした状態を監視対象として監視処理を行うようにした場合について述べた。
【0138】
本発明はこれに限らず、例えば射出成形後における射出成形製品8が下側金型3に嵌った動作状態や全ての射出成形製品8を取り出し終えた下側金型3のみの動作状態等、種々の動作状態を監視対象とするようにしても良い。この場合、射出成形機監視装置20は、射出成形機本体1や取出機15等から供給される各種信号に合わせたタイミングでテレビジョンカメラ21により撮像してビデオデータDATA1を生成すれば良い。
【0139】
さらに上述した実施の形態においては、1回の射出成形サイクル内で1つの動作状態、すなわちインサート金具6をセットした状態のみを監視対象とするようにした場合について述べた。
【0140】
本発明はこれに限らず、下側金型3ごとに複数の動作状態を監視対象とするようにしても良い。この場合、監視設定が「OFF」に設定されている下側金型3については、一括して複数の動作状態についての比較処理を行わないようにしても良く、或いは動作状態ごとに比較処理を行うか否かを詳細に設定できるようにしても良い。
【0141】
さらに上述した実施の形態においては、比較処理において、基準画像データVSにおける監視範囲の各画素の明るさに対し、監視画像データVWにおける対応する部分の各画素の明るさが所定範囲内にあるか否かを判定するようにした場合について述べた。
【0142】
本発明はこれに限らず、例えば各画素のγ値やカラー画像における色相や彩度等のような種々の特徴量を用い、或いはこれらを適宜組み合わせて比較処理を行うようにしても良い。
【0143】
さらに上述した実施の形態においては、射出成形機監視装置20がインサート成形処理を行う射出成形機1について監視処理を行う場合ついて述べた。本発明はこれに限らず、例えばインサート金具6を挿入しない通常の成形処理等、種々の方式の成形処理を行う射出成形機の監視処理を行うようにしても良い。この場合、監視対象とする動作状態は、成形処理の方式に応じて適宜定めれば良い。
【0144】
さらに上述した実施の形態においては、射出成形機監視装置20が縦型ロータリー方式の射出成形機本体1について監視処理を行うようにした場合について述べた。本発明はこれに限らず、複数の金型を順次交換して射出成形処理を行うような種々の方式の射出成形機について監視処理を行うようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明は、複数の金型を順次用いる射出成形機の監視装置でも利用できる。
【符号の説明】
【0146】
1……射出成形機本体、2……ロータリーテーブル、3……下側金具、3A……下側A金型、3B……下側B金型、4……上側金型、6……インサート金具、7……合成樹脂材料、8……射出成形製品、11……回転ボタン、15……取出機、20……射出成形機監視装置、21……テレビジョンカメラ、23……画像処理回路、26……プログラムメモリ、27……CPU、28……データメモリ、30……モニタ、31……制御信号入出力部、35……操作入力部、41……制御手段、42……状態取得手段、43……基準画像取得手段、44……監視画像取得手段、45……比較手段、46……通知手段、47……指示手段、DATA1……ビデオデータ、VW……監視画像データ、VS……基準画像データ、VSA……A金型基準画像データ、VSB……B金型基準画像データ、P1……取出位置、P2……成形位置、S1……動作状態信号、S2……通知信号、IN1……左回転指示信号、IN2……右回転指示信号、OUT1、OUT2……回転インターロック信号、OUT4……OK信号、OUT5……取出制御信号。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次繰り返される射出成形サイクルごとに複数の成形用型を順次用いて同種類の成形製品を成形する射出成形機本体における所定の動作状態を撮像手段によって撮像し、当該撮像手段のビデオ信号に基づいて得た画像データの特徴量の変化に応じて、上記射出成形機本体の異常動作を監視する射出成形機監視装置において、
上記射出成形機本体が上記所定の動作状態であること及び用いられている上記成形用型を表す動作状態信号を取得する動作状態取得手段と、
上記複数の成形用型それぞれについて、上記動作状態信号を取得したときの上記ビデオ信号を基に、正常動作の基準とすべき基準画像データを取得する基準画像取得手段と、
順次繰り返される射出成形サイクルにおいて、上記動作状態信号を取得したときの上記ビデオ信号を基に監視画像データを取得する監視画像取得手段と、
上記監視画像データを得た際に用いられていた成形用型を上記動作状態信号に基づいて特定し、当該特定した成形用型に対応する上記基準画像データにおける所定部分の特徴量と、上記監視画像データにおける当該所定範囲と対応する部分の特徴量との比較処理を行う比較手段と、
取得した上記動作状態信号に基づき上記比較手段により上記比較処理を行わせる制御手段と、
上記複数の成形用型のうち上記比較処理を停止させるべき停止成形用型を指示する指示手段と
を具え、
上記制御手段は、
上記停止成形用型についての上記比較手段による比較処理を停止させる
ことを特徴とする射出成形機監視装置。
【請求項2】
上記制御手段は、
上記停止成形用型について、上記比較処理に加えて、上記監視画像取得手段による上記監視画像データの取得処理を停止させる
ことを特徴とする請求項1に記載の射出成形機監視装置。
【請求項3】
上記制御手段は、
上記停止成形用型について、上記比較処理及び上記監視画像データの取得処理に加えて、上記基準画像取得手段による上記基準画像データの取得処理を停止させる
ことを特徴とする請求項2に記載の射出成形機監視装置。
【請求項4】
上記比較手段による比較処理の結果に基づき、上記射出成形機本体に対し正常か否かを通知する通知信号を出力する通知手段
をさらに具え、
上記通知手段は、
上記停止成形用型ついて上記通知信号の出力を停止する一方、他の上記成形用型について上記通知信号を出力する
ことを特徴とする請求項3に記載の射出成形機監視装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−91354(P2012−91354A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238989(P2010−238989)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000106852)シグマツクス株式会社 (12)
【Fターム(参考)】