説明

射出成形機

【課題】求められる制御精度がそれぞれ異なる複数のサーボモータをより効率的に集中制御する多軸サーボドライバを搭載する射出成形機を提供すること。
【解決手段】四つのサーボモータM1〜M4を集中制御する多軸サーボドライバEQを搭載する射出成形機において、その多軸サーボドライバEQは、それら四つのサーボモータM1〜M4のそれぞれに関する演算のために用いられる一のCPU資源を備える。また、その多軸サーボドライバEQは、それら四つのサーボモータM1〜M4の制御周期を個別に設定する制御周期設定部C13を備え、成形サイクル中にそれら四つのサーボモータM1〜M4のうちの少なくとも一つの制御周期が変化するように、それら四つのサーボモータのそれぞれの制御周期を設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のサーボモータを集中制御する多軸サーボドライバを搭載した射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のサーボモータを制御する多軸サーボドライバが知られており(例えば、特許文献1参照。)、この多軸サーボドライバは、一つのCPUで複数のサーボモータの位置制御及び速度制御を実行し、複数のサーボモータのそれぞれに搭載されたLSIに、そのCPUとは独立したタイミングで、各サーボモータの電流制御を実行させるようにする。
【0003】
また、この多軸サーボドライバは、接続されるサーボモータの数に合わせて制御周期を設定し、接続されるサーボモータの数が少ない程、その制御周期を短くすることができ、その多軸サーボドライバが搭載される機械システムの制御精度を最大化させるようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−262636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の多軸サーボドライバは、接続されるサーボモータの数のみに応じてそれら複数のサーボモータの全てに共通する制御周期を設定するのみであり、求められる制御精度がそれぞれ異なる複数のサーボモータを効率的に集中制御することができない。
【0006】
上述の点に鑑み、本発明は、求められる制御精度がそれぞれ異なる複数のサーボモータをより効率的に集中制御する多軸サーボドライバを搭載する射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明の実施例に係る射出成形機は、複数のサーボモータを集中制御する多軸サーボドライバを搭載する射出成形機であって、前記多軸サーボドライバは、前記複数のサーボモータのそれぞれに関する演算のために用いられる一のCPU資源を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上述の手段により、本発明は、求められる制御精度がそれぞれ異なる複数のサーボモータをより効率的に集中制御する多軸サーボドライバを搭載する射出成形機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例に係る射出成形機に搭載される多軸サーボドライバの構成例を示す機能ブロック図である。
【図2】四つの一軸サーボドライバのそれぞれにおけるCPU使用量の時間的推移を示す図である。
【図3】本発明の実施例に係る多軸サーボドライバにおけるCPU使用量の時間的推移を示す図(その1)である。
【図4】本発明の実施例に係る多軸サーボドライバにおけるCPU使用量の時間的推移を示す図(その2)である。
【図5】CPU使用量の調節方法を説明するための図(その1)である。
【図6】CPU使用量の調節方法を説明するための図(その2)である。
【図7】CPU使用量の調節方法を説明するための図(その3)である。
【図8】CPU使用量の調節方法を説明するための図(その4)である。
【図9】CPU使用量の調節方法を説明するための図(その5)である。
【図10】CPU使用量の調節方法を説明するための図(その6)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施例について説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施例に係る射出成形機に搭載される多軸サーボドライバEQの構成例を示す機能ブロック図であり、多軸サーボドライバEQは、主に、制御装置C、サーボモータM1〜M4、エンコーダE1〜E4、及び射出成形機制御装置MCから構成される。
【0012】
制御装置Cは、CPU(Central Processing Unit)、揮発性記憶媒体(例えば、RAM(Random Access Memory)である。)、不揮発性記憶媒体(例えば、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable ROM)、FLASHメモリ等である。)等を備えたコンピュータであって、例えば、位置制御部C10、速度制御部C11、電流制御部C12、及び制御周期設定部C13のそれぞれに対応するプログラムを不揮発性記憶媒体から読み出して揮発性記憶媒体上に展開しながら、各部に対応する処理をCPUに実行させる。
【0013】
サーボモータM1〜M4は、射出成形機に搭載される各種可動部を駆動するためのモータであり、例えば、第一サーボモータM1が射出用モータ、第二サーボモータM2が計量用モータ、第三サーボモータM3が型締用モータ、第四サーボモータM4がエジェクタ用モータであって、制御装置CがサーボモータM1〜M4のそれぞれに対して出力するPWM(Pulse Width Modulation)指令に応じて回転する。
【0014】
エンコーダE1〜E4のそれぞれは、サーボモータM1〜M4のそれぞれの回転角度(位置)を制御装置Cに対して出力する。
【0015】
なお、多軸サーボドライバEQは、二つ、三つ、又は五つ以上のサーボモータを集中制御するものであってもよい。
【0016】
射出成形機制御装置MCは、射出成形機を制御するための装置であり、CPU、揮発性記憶媒体、不揮発性記憶媒体等を備えたコンピュータであって、例えば、所望のタイミングで射出用モータ、計量用モータ、型締用モータ、エジェクタ用モータ等を動作させるために、多軸サーボドライバEQの制御装置Cに対して位置指令値や制御周期等の各種情報を提供する。
【0017】
次に、制御装置Cが有する各種機能要素について説明する。
【0018】
位置制御部C10は、サーボモータM1〜M4のそれぞれの回転位置が所望の回転位置となるように制御するための機能要素であり、例えば、射出成形機制御装置MCから受信した、サーボモータM1〜M4のそれぞれに対する位置指令値と、エンコーダE1〜E4のそれぞれが出力する回転位置の値との間の差に基づいて、その差を打ち消すようにサーボモータM1〜M4のそれぞれに対する速度指令値を算出し、算出した速度指令値を速度制御部C11に対して出力する。
【0019】
速度制御部C11は、サーボモータM1〜M4のそれぞれの回転速度が所望の回転速度となるように制御するための機能要素であり、例えば、位置制御部C10から受信した、サーボモータM1〜M4のそれぞれに対する速度指令値と、エンコーダE1〜E4のそれぞれが出力する回転角度(位置)の値に基づいて算出される回転速度の値との間の差に基づいて、その差を打ち消すようにサーボモータM1〜M4のそれぞれに対するトルク指令値を算出し、算出したトルク指令値を電流制御部C12に対して出力する。
【0020】
電流制御部C12は、サーボモータM1〜M4のそれぞれに供給される電流値が所望の電流値となるように制御するための機能要素であり、例えば、速度制御部C11から受信した、サーボモータM1〜M4のそれぞれに対するトルク指令値と、サーボモータM1〜M4のそれぞれに供給される電流値を検出するための電流検出器(図示せず。)が出力する電流値との間の差に基づいて、その差を打ち消すようにサーボモータM1〜M4のそれぞれに供給されるべき電流値を算出し、算出した電流値をサーボモータM1〜M4のそれぞれに供給する。
【0021】
制御周期設定部C13は、サーボモータM1〜M4のうちの少なくとも一つに関する演算の演算周期(制御周期)を独立して設定できるようにするための機能要素であり、例えば、射出成形機に付属の入力装置(図示せず。)を通じて射出成形機制御装置MCに入力された設定値、又は、射出成形機制御装置MCに予め記憶された設定値を受けて、サーボモータM1〜M4のそれぞれに関する制御周期を個別に設定する。
【0022】
例えば、制御周期設定部C13は、特定のサーボモータに関する制御周期を短縮することによって、その特定のサーボモータに供給すべき電流の値がより短い間隔で更新されるようにしてその特定のサーボモータの制御精度を向上させるようにする。
【0023】
また、制御周期設定部C13は、特定のサーボモータに関する制御周期を延長することによって、その特定のサーボモータに供給すべき電流の値がより長い間隔で更新されるようにしてその特定のサーボモータに関する無駄な処理(必要以上の制御精度による処理)を抑制するようにする。
【0024】
次に、図2〜図4を参照しながら、サーボドライバにおけるCPU使用量の推移について説明する。
【0025】
図2は、四つの一軸サーボドライバのそれぞれにおける、四つのサーボモータのそれぞれを動作させるための演算に必要とされるCPU使用量の一成形サイクルにおける時間的推移を示すものである。
【0026】
ここで、図2(A)は、射出用モータに関するCPU使用量の時間的推移を示し、図2(B)は、計量用モータに関するCPU使用量の時間的推移を示し、図2(C)は、型締用モータに関するCPU使用量の時間的推移を示し、図2(D)は、エジェクタ用モータに関するCPU使用量の時間的推移を示す。
【0027】
図2(A)〜図2(D)は何れも、縦軸にCPU使用量を配し、横軸に時間軸を配する。また、斜線でハッチングされた領域U1〜U4のそれぞれは、四つのサーボモータのそれぞれに関する単位時間当たりのCPU使用量を表し、白抜き領域N1又はドットでハッチングされた領域N2〜N4のそれぞれは、四つのサーボモータのそれぞれに関するCPU残量(単位時間当たりの最大演算量であるCPU許容量からCPU使用量を差し引いた量である。)を表す。
【0028】
なお、図2(A)〜図2(D)は、本発明の実施例に係る多軸サーボドライバEQとは異なり、同じ大きさのCPU資源(CPU許容量)が四つのサーボモータのそれぞれに関する演算のために個別に割り当てられていることを示し、これら四つのサーボドライバのそれぞれは、一のサーボモータのために割り当てられたCPU資源(CPU許容量)におけるCPU残量を、他のサーボモータのために使用することができないものとする。
【0029】
なお、同じ大きさのCPU資源(CPU許容量)が四つのサーボモータのそれぞれに関する演算のために個別に割り当てられている場合とは、例えば、四つのサーボモータのそれぞれに同じ能力を有するCPUが一つずつ用いられる場合であり、それらCPUは、CPU使用量が最も大きくなる射出用モータを円滑に動作させるのに十分なCPU資源(CPU許容量)を有し、その結果、他の三つのサーボモータに対しては過剰なCPU資源(CPU許容量)を提供することとなっている。
【0030】
この場合、図2(A)及び図2(B)で示されるように、時刻T1において、射出用モータに関するCPU使用量がそのCPU許容量に近づき、一方で、計量用モータに関するCPU残量が十分にある場合であっても、CPUは、その計量用モータに関するCPU残量を用いて射出用モータに関する演算を実行することができない。
【0031】
また、CPUは、場合によっては、その計量用モータに関するCPU残量を十分に残したまま、その射出用モータに関するCPU使用量がそのCPU許容量を超えないように、その射出用モータに関する演算の周期を低減させなければならなくなる。また、計量用モータに関するCPU残量は、その計量用モータに関する演算で使用されない限り、他のサーボモータに関する演算のために用いられることのない無駄な資源となる。
【0032】
これに対し、図3は、一のサーボモータのために割り当てられたCPU資源(CPU許容量)におけるCPU残量を他のサーボモータのために使用することができる本発明の実施例に係る多軸サーボドライバEQにおけるCPU使用量の時間的推移を図解する。
【0033】
図3は、図2と同様に、縦軸にCPU使用量を配し、横軸に時間軸を配する。また、斜線でハッチングされた領域U1〜U4のそれぞれは、図2(A)〜図2(D)で示される四つのサーボモータのそれぞれに関する単位時間当たりのCPU使用量を表し、白抜き領域N1又はドットでハッチングされた領域N2〜N4のそれぞれは、図2(A)〜図2(D)で示される四つのサーボモータのそれぞれに関するCPU残量を表す。
【0034】
なお、多軸サーボドライバEQでは、一のCPU資源(CPU許容量)が四つのサーボモータのそれぞれに関する演算のために用いられるものとし(例えば、四つのサーボモータのそれぞれで共用される単一のCPUが用いられる場合である。)、領域N1〜N4のそれぞれで示されるCPU残量が四つのサーボモータのうちの何れのサーボモータの演算にも使用され得ることとなる。
【0035】
更に、図4は、図3における比較的大きなCPU残量(領域N1〜N4の合計であり、結果として過剰なCPU資源となっているものである。)を低減させるために、CPU 資源(CPU許容量)を低減させた場合について図解する。
【0036】
図4は、図2及び図3と同様に、縦軸にCPU使用量を配し、横軸に時間軸を配する。また、斜線でハッチングされた領域U1〜U4のそれぞれは、図2(A)〜図2(D)で示される四つのサーボモータのそれぞれに関する単位時間当たりのCPU使用量を表し、白抜き領域NはCPU残量を表す。
【0037】
また、図4は、四つのサーボモータのそれぞれに関する単位時間当たりのCPU使用量が、図3のものと同じであることを示す一方で、CPU残量が、図3における領域N1〜N4の合計よりも大幅に縮小され、実際のCPU使用量により適したCPU資源(CPU許容量)が選択されていることを示す。
【0038】
このように、多軸サーボドライバEQは、一のCPU資源(CPU許容量)が四つのサーボモータのそれぞれに関する演算のために用いられるものとし、CPU残量が四つのサーボモータのうちの何れのサーボモータの演算にも使用され得るようにするので、四つのサーボモータのそれぞれに一つずつCPU資源(CPU許容量)を割り当てて、一のサーボモータのために割り当てられたCPU資源(CPU許容量)におけるCPU残量を他のサーボモータのために使用することができないこととなる複数の一軸サーボドライバを使用する場合に比べ、CPU資源(CPU許容量)をより有効に利用することができる。
【0039】
また、多軸サーボドライバEQは、上述のようにCPU資源(CPU許容量)をより有効に利用することができるので、そのCPU資源(CPU許容量)を、実際のCPU使用量に適合した過不足のないスペックとすることができ、複数の一軸サーボドライバを使用する場合に比べ、搭載するCPU資源(CPU許容量)の適正化を図ることができる。
【0040】
また、多軸サーボドライバEQは、上述のようにCPU資源(CPU許容量)をより有効に利用することができるので、複数の一軸サーボドライバを使用する場合に比べ、必要なCPU資源(CPU許容量)を増大させることなく、制御対象となる駆動軸の数を増大させたり、或いは、そのCPU資源を利用する同時並行で動作するソフトウェアを追加したりすることができる。
【0041】
また、多軸サーボドライバEQは、複数の一軸サーボドライバを使用する場合に比べ、四つのサーボモータのそれぞれの間におけるデータの受け渡しで発生するタイムラグを低減させることができ、四つのサーボモータのそれぞれをより高精度に(すなわち、より短い制御周期で)制御することができる。
【0042】
次に、図5〜図10を参照しながら、多軸サーボドライバEQが制御するサーボモータM1〜M4のそれぞれの制御周期の設定方法の例について説明する。
【0043】
図5〜図10は、図2〜図4と同様に、縦軸にCPU使用量を配し、横軸に時間軸を配してサーボモータに関するCPU使用量の時間的推移を示すものであり、四つのサーボモータM1〜M4のそれぞれに関する単位時間当たりのCPU使用量を斜線でハッチングされた領域U1〜U4のそれぞれで表し、四つのサーボモータM1〜M4のそれぞれに関するCPU残量を白抜き領域N1又はドットでハッチングされた領域N2〜N4のそれぞれで表す。
【0044】
その上で、図5は、射出用モータM1に関するCPU使用量の調節方法を示し、図6は、計量用モータM2に関するCPU使用量の調節方法を示し、図7は、型締用モータM3に関するCPU使用量の調節方法を示し、そして、図8は、エジェクタ用モータM4に関するCPU使用量の調節方法を示す。
【0045】
図5で示されるように、多軸サーボドライバEQは、制御周期設定部C13の設定に基づいて射出用モータM1に関する演算の制御周期を成形サイクルの進行と共に変更し、これまでCPU使用量が比較的低かった期間Ta、Tbの制御周期を短縮することによって、射出用モータM1に関するCPU使用量を成形サイクル全体に亘って均一化させるようにしてもよい。
【0046】
これにより、多軸サーボドライバEQは、制御周期を短縮した期間Ta、Tbにおける射出用モータM1の制御精度をその短縮前に比べ向上させることができる。
【0047】
また、図6で示されるように、多軸サーボドライバEQは、制御周期設定部C13の設定に基づいて計量用モータM2に関する演算の制御周期を成形サイクルの進行と共に変更し、これまでCPU使用量が比較的高かった期間Tcの制御周期を延長することによって、計量用モータM2に関するCPU使用量を成形サイクル全体に亘って均一化させるようにしてもよい。
【0048】
これにより、多軸サーボドライバEQは、制御周期を延長した期間TcにおけるCPU残量をその延長前に比べ増大させることができる。なお、多軸サーボドライバEQは、その延長後の制御周期であっても、計量用モータM2を必要十分な精度で駆動できるものとする。
【0049】
また、図7で示されるように、多軸サーボドライバEQは、制御周期設定部C13の設定に基づいて型締用モータM3に関する演算の制御周期を成形サイクルの進行と共に変更し、成形サイクルの一部の期間Td、Teにおける制御周期を短縮し、一方で、別の一部の期間Tfにおける制御周期を延長することによって、型締用モータM3を必要十分な精度で駆動しながらも、他のサーボモータM1、M2、又はM4で必要とされるCPU資源を確保するために、必要十分なCPU残量を確保するようにしてもよい。
【0050】
更に、図8で示されるように、多軸サーボドライバEQは、制御周期設定部C13の設定に基づいてエジェクタ用モータM4に関する演算の制御周期を成形サイクルの進行と共に変更し、成形サイクルの一部の期間Tgにおける制御周期を延長し、一方で、別の一部の期間Thにおける制御周期を短縮することによって、エジェクタ用モータM4を必要十分な精度で駆動しながらも、他のサーボモータM1、M2、又はM3で必要とされるCPU資源を確保するために、必要十分なCPU残量を確保するようにしてもよい。
【0051】
なお、多軸サーボドライバEQは、上述の調節以外にも、制御周期設定部C13の設定に基づいて、サーボモータM1〜M4のそれぞれに関する制御周期を任意に短縮或いは延長できるものとする。
【0052】
図9及び図10は、図5〜図8で図解したサーボモータM1〜M4のそれぞれのCPU使用量の調節によって最終的に得られる多軸サーボドライバEQ全体としてのCPU使用量の時間的推移の例を示す。
【0053】
また、図9は、サーボモータM1〜M4のそれぞれのCPU使用量が時間経過にかかわらず一定となるようにサーボモータM1〜M4のそれぞれに関する制御周期が個別に且つ時間的に変化するように設定された場合を示し、図10は、射出用モータM1の制御精度を向上させるために射出用モータM1に関する制御周期が短縮して設定された場合を示す。
【0054】
なお、図10で示されるように、射出用モータM1に関する制御周期の短縮の程度は、時間と共に変化し、また、その短縮後の射出用モータM1に関するCPU使用量V1は、時間経過にかかわらず一定となるようにされ、複数の一軸サーボドライバを用いる際にその射出用モータに関する演算のために割り当てられるCPU資源(CPU許容量)V2(図2(A)のCPU使用量U1に図2(A)のCPU残量N1を加えた量に相当する。)よりも大きいものとされ得る。
【0055】
このように、多軸サーボドライバEQは、サーボモータM1〜M4のそれぞれに関するCPU使用量をより柔軟に変化させることができ、必要に応じて、サーボモータM1〜M4のそれぞれの制御精度を向上或いは抑制することができる。
【0056】
以上の構成により、多軸サーボドライバEQは、求められる制御精度がそれぞれ異なる複数のサーボモータをより効率的に集中制御することができる。
【0057】
また、多軸サーボドライバEQは、複数のサーボモータのそれぞれの制御精度に影響を与えることなく、無駄なCPU資源を削減することができる。
【0058】
また、多軸サーボドライバEQは、CPU資源(CPU許容量)を増大させることなく、特定のサーボモータの制御精度を向上させることができる。
【0059】
また、多軸サーボドライバEQは、CPU資源(CPU許容量)を低減させることにより、電源設計や基板設計における要求仕様を緩和して設計の自由度を増大させることができる。
また、多軸サーボドライバEQは、CPU資源(CPU許容量)を低減させることにより、省エネを実現させることができる。
【0060】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0061】
例えば、上述の実施例において、制御周期設定部C13は、サーボモータM1〜M4のそれぞれの制御周期を個別に且つ時間的に変化するように設定できるようにするが、サーボモータM1〜M4のうちの一つの制御周期のみを、他のサーボモータの制御周期とは独立して設定できるものであってもよく、サーボモータM1〜M4のうちの二つ又は三つの制御周期のみを、他のサーボモータの制御周期とは独立して設定できるものであってもよい。
【符号の説明】
【0062】
C・・・制御装置 C10・・・位置制御部 C11・・・速度制御部 C12・・・電流制御部 C13・・・制御周期設定部 E1〜E4・・・エンコーダ EQ・・・多軸サーボドライバ M1〜M4・・・サーボモータ MC・・・射出成形機制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサーボモータを集中制御する多軸サーボドライバを搭載する射出成形機であって、
前記多軸サーボドライバは、前記複数のサーボモータのそれぞれに関する演算のために用いられる一のCPU資源を備える、
ことを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記複数のサーボモータのうちの少なくとも一つの制御周期を独立して設定可能な制御周期設定部を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記制御周期設定部は、前記複数のサーボモータのそれぞれの制御周期を個別に設定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記制御周期設定部は、成形サイクル中に前記複数のサーボモータのうちの少なくとも一つの制御周期が変化するように、前記複数のサーボモータのうちの少なくとも一つの制御周期を設定する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の射出成形機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−100422(P2012−100422A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245604(P2010−245604)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】