説明

射出成形機

【課題】循環電流を抑えつつ、整流時に発生する高調波を抑制できる、射出成形機を提供すること。
【解決手段】モータと、前記モータを駆動する駆動回路と、前記駆動回路に電力を供給する整流器102と、前記駆動回路と整流器102との間の直流電力を交流電力に変換して出力するブリッジ回路104とを備える射出成形機であって、交流電源電圧が一次側に入力される変圧器67と、ブリッジ回路104によって変換された交流電力の電流波形が正弦波になるようにブリッジ回路104の動作を制御するコントローラ26とを有し、変圧器67の第一の二次巻線の接続先が整流器102の入力側であり、変圧器67の第二の二次巻線の接続先がブリッジ回路104の出力側であることを特徴とする、射出成形機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータと、前記モータを駆動する駆動部と、前記駆動部に電力を供給する整流部と、前記駆動部と前記整流部との間の直流電力を交流電力に変換して出力する変換部とを備える射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、電源の交流電力を直流電力に変換する整流部と、整流部の出力側に接続されているコンデンサと、コンデンサの直流電力を交流電力に変換するインバータと、整流部に並列接続されたPWMスイッチ回路を有する集合制御部とを備え、その集合制御部に、高調波除去と電力回生の機能を持たせた電力制御装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この集合制御部は、コンデンサの電圧が所定値よりも低い場合には、アクティブフィルタとして機能することで、電源の交流電力中の高調波を除去し、コンデンサの電圧が所定値よりも高い場合には、電力回生変換器として機能することで、コンデンサの電力を電源に供給するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−223999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来技術のように、PWMスイッチ回路を整流部に単純に並列接続すると、整流部の電流の還路がPWMスイッチ回路に形成される。そのため、無駄な循環電流が整流部に流れ、電力損失が発生してしまう。
【0005】
そこで、本発明は、循環電流を抑えつつ、整流時に発生する高調波を抑制できる、射出成形機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る射出成形機は、
モータと、
前記モータを駆動する駆動回路と、
前記駆動回路に電力を供給する整流部と、
前記駆動回路と前記整流部との間の直流電力を交流電力に変換して出力する変換部とを備える射出成形機であって、
交流電源電圧が一次側に入力される変圧器を有し、
前記変圧器の第一の二次巻線の接続先が前記整流部の入力側であり、前記変圧器の第二の二次巻線の接続先が前記変換部の出力側であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、循環電流を抑えつつ、整流時に発生する高調波を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態である射出成形機1の構成図である。
【図2】射出成形機1のコンバータ装置100を含むモータ駆動用電源回路の一例を概略的に示す図である。
【図3】コンバータ装置100の回路構成の一例を示す図である。
【図4】変圧器67の構成例である。
【図5】高調波成分抑制部63の第1の構成例である。
【図6】高調波成分抑制部63の第2の構成例である。
【図7】コントローラ26の機能ブロック図である。
【図8】本実施例によるコンバータ装置100の制御方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の説明を行う。図1は、本発明の一実施形態である射出成形機1の構成図である。
【0010】
射出成形機1は、本例では電動式射出成形機であり、射出用のサーボモータ11を備える。射出用のサーボモータ11の回転はボールネジ12に伝えられる。ボールネジ12の回転により前後進するナット13はプレッシャプレート14に固定されている。プレッシャプレート14は、ベースフレーム(図示せず)に固定されたガイドバー15、16に沿って移動可能である。プレッシャプレート14の前後進運動は、ベアリング17、ロードセル18、射出軸19を介してスクリュ20に伝えられる。スクリュ20は、加熱シリンダ21内に回転可能に、しかも軸方向に移動可能に配置されている。加熱シリンダ21におけるスクリュ20の後部には、樹脂供給用のホッパ22が設けられている。射出軸19には、ベルトやプーリ等の連結部材23を介してスクリュ回転用のサーボモータ24の回転運動が伝達される。すなわち、スクリュ回転用のサーボモータ24により射出軸19が回転駆動されることにより、スクリュ20が回転する。
【0011】
可塑化/計量工程においては、加熱シリンダ21の中をスクリュ20が回転しながら後退することにより、スクリュ20の前部、すなわち加熱シリンダ21のノズル21−1側に溶融樹脂が貯えられる。射出工程においては、スクリュ20の前方に貯えられた溶融樹脂を金型内に充填し、加圧することにより成形が行われる。この時、樹脂を押す力がロードセル18により反力として検出される。つまり、スクリュ前部における樹脂圧力が検出される。検出された圧力は、ロードセル増幅器25により増幅され、制御手段として機能するコントローラ26(制御装置)に入力される。また、保圧工程では、金型内に充填した樹脂が所定の圧力に保たれる。
【0012】
プレッシャプレート14には、スクリュ20の移動量を検出するための位置検出器27が取り付けられている。位置検出器27の検出信号は増幅器28により増幅されてコントローラ26に入力される。この検出信号は、スクリュ20の移動速度を検出するためにも使用されてもよい。
【0013】
サーボモータ11、24にはそれぞれ、回転数を検出するためのエンコーダ31、32が備えられている。エンコーダ31、32で検出された回転数はそれぞれコントローラ26に入力される。
【0014】
サーボモータ42は、型開閉用のサーボモータであり、サーボモータ44は、成形品突出し(エジェクタ)用のサーボモータである。サーボモータ42は、例えばトグルリンク(図示せず)を駆動して型開閉を実現する。また、サーボモータ44は、例えばボールネジ機構を介してエジェクタロッド(図示せず)を移動させることで成形品突出しを実現する。サーボモータ42、44にはそれぞれ、回転数を検出するためのエンコーダ43、45が備えられている。エンコーダ43、45で検出された回転数はそれぞれコントローラ26に入力される。
【0015】
コントローラ26は、マイクロコンピュータを中心に構成されており、例えば、CPU、制御プログラム等を格納するROM、演算結果等を格納する読書き可能なRAM、タイマ、カウンタ、入力インターフェイス、及び出力インターフェイス等を有する。
【0016】
コントローラ26は、射出成形工程において、複数の各工程に応じた電流(トルク)指令をモータ駆動回路に送る。モータ駆動回路は、その指令に従って、各工程で使用されるサーボモータ11,24,42,44を駆動する。例えば、コントローラ26は、サーボモータ24の回転数をモータ駆動回路52により制御して可塑化/計量工程を実現する。また、コントローラ26は、サーボモータ11の回転数をモータ駆動回路51により制御して射出工程及び保圧工程を実現する。同様に、コントローラ26は、サーボモータ42の回転数をモータ駆動回路53により制御して型開工程及び型閉工程を実現する。コントローラ26は、サーボモータ44の回転数をモータ駆動回路54により制御して成形品突出し工程を実現する。
【0017】
ユーザインターフェース35は、型開閉工程、射出工程等の各成形工程のそれぞれに対して、成形条件を設定可能な入力設定部を備える。その他、ユーザインターフェース35は、ユーザからの各種指示を入力する入力部を備えると共に、ユーザに対して各種情報を出力する出力部(例えば表示部)を備える。
【0018】
射出成形機1における射出成形工程の1サイクルは、典型的には、金型を閉じる型閉工程と、金型を締め付ける型締め工程と、金型のスプル(図示せず)にノズル21−1を押しつけるノズルタッチ工程と、加熱シリンダ21内のスクリュ20を前進させて、スクリュ20前方に溜まった溶融材料を金型キャビティ(図示せず)内に射出する射出工程と、その後、気泡、ヒケの発生を抑制するために保持圧力をしばらくかける保圧工程と、金型キャビティ内に充填された溶融材料が冷却されて固まるまでの間の時間に次のサイクルのために、スクリュ20を回転させて、樹脂を溶融しながら加熱シリンダ21の前方にため込む可塑化/計量工程と、固化された成形品を金型から取り出すために、金型を開く型開工程と、成形品を金型に設けられた突出しピン(図示せず)によって押し出す成形品突出し工程とを含む。
【0019】
図2は、射出成形機1のコンバータ装置100を含むモータ駆動用電源回路の一例を概略的に示す図である。図2では、一例として、射出用のサーボモータ11とサーボモータ11を駆動するモータ駆動回路51が示される。他のサーボモータ24,42,44とモータ駆動回路52,53,54についても同様であってよい。代替実施例では、コンバータ装置100には、サーボモータ及びそのサーボモータを駆動するモータ駆動回路が、並列的に複数接続されてもよい。
【0020】
コンバータ装置100は、電源200に接続される。電源200は、交流電源であってよい。また、コンバータ装置100は、DCリンク300及びモータ駆動回路51を介してサーボモータ11に接続され、電源200からの電力を変換してDCリンク300及びモータ駆動回路51を介してサーボモータ11に供給する。モータ駆動回路51は、例えば、コンバータ装置100の出力(直流電力)を3相交流電力に変換するインバータであって、例えば6個のパワートランジスタで構成される3相ブリッジ回路を含むものでよい。DCリンク300は、コンデンサ(キャパシタ)、バスバー、ケーブル等から構成される。
【0021】
電圧検出部190は、コンバータ装置100の整流器102(図3参照)の直流出力側とモータ駆動回路51の直流入力側との間に配置されたDCリンク300の両極間電圧を検出するように設けられる。電圧検出部190により検出される直流電圧は、コントローラ26に供給される(図3,7参照)。
【0022】
図3は、コンバータ装置100の回路構成の一例を示す図である。図3に示す例では、コンバータ装置100は、交流電源に接続される端子R,S,Tと、DCリンク300に接続される端子P,Nを備える。コンバータ装置100は、6個のダイオードを含む3相ダイオードブリッジで構成される整流器(力行用回路部)102と、6個のトランジスタを含む3相インバータで構成されるブリッジ回路(回生用回路部)104とを備える。尚、図3には、力行時の電力の流れと回生時の電力の流れが矢印にて示される。
【0023】
整流器102は、ダイオード整流により、交流電力からDCリンク300における直流電力への変換動作(力行運転)を行うものとする。ブリッジ回路104は、PWM生成器71が出力する駆動信号に応じて、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御により、DCリンク300における直流電力から交流電源における交流電力への変換動作(電源回生運転)を行う。そして、その電源回生運転における、交流電源とブリッジ回路104との間の交流電力(交流電流)、及び、DCリンク300の直流電力(直流電圧)の大きさを制御する。
【0024】
図3に示されるように、コンバータ装置100は、力行経路81に並列接続された回生経路82を備える。力行経路81は、交流電源とモータ駆動回路との間の経路であり、変圧器(絶縁トランス)67及び整流器102が設けられている。変圧器67の一次側に交流電源の交流電圧が入力され、変圧器67の二次側に整流器102の交流入力部側が接続される。回生経路82は、整流器102の入出力部に並列接続され、回生経路82上に、ブリッジ回路104と高調波成分抑制部63との直列回路が挿入されて設けられている。回生経路82の一方の端部は、ブリッジ回路104の交流出力部と整流器102の交流入力部を絶縁させた状態で、変圧器67の二次側に接続され、もう一方の端部は、ブリッジ回路104の直流入力部と整流器102の直流出力部とを導通させた状態で、整流器102の直流出力部側の力行経路81の直流経路部分に接続される。
【0025】
変圧器67は、例えば図4に示されるように、三相三巻線のYYY結線の構成を有する。交流電源の交流電圧は、一次巻線68に印加される。二次巻線69Aと69Bは絶縁されていて、二次巻線69Aが整流器102の交流入力部に接続され、二次巻線69Bが高調波成分抑制部63を介してブリッジ回路104の交流出力部側に接続される。
【0026】
ブリッジ回路104は、整流器102の直流出力側とモータ駆動回路51(図2参照)の直流入力側との間の直流電力を、交流電力に変換する変換部である。高調波成分抑制部63は、ブリッジ回路104の電力変換動作によって出力された交流電力が入力される。高調波成分抑制部63は、リアクトル部として機能するとよい。
【0027】
高調波成分抑制部63は、例えば、R,S,Tの各相に直列に挿入されたリアクトルがコンデンサ(キャパシタ)に接続されるLC回路構成であって、図5に示されるように、各相に一端が接続された複数のコンデンサが中性点で共通接続されるY結線構成でもよいし、図6に示されるように、各相間にコンデンサが挿入されるΔ結線構成でもよい。また、高調波成分抑制部63は、各相に直列にリアクトルのみが挿入される構成でもよい。
【0028】
また、射出成形機1は、コンバータ装置100の制御部として、コントローラ26と、PWM駆動信号を生成するPWM生成器71と、交流電源の交流電圧の位相を検出する位相検出回路72とを備える。
【0029】
コントローラ26は、電圧検出部190(図2参照)によって検出された直流電圧値Vdcが所定の閾値電圧Vth1よりも高いとき、PWM生成器71によってブリッジ回路104を電力回生変換器として機能するようにPWM制御することにより、モータ駆動回路51を介してブリッジ回路104に入力されるサーボモータ11の電力を電源に回生する。コントローラ26は、ブリッジ回路104から出力される交流電流の波形が正弦波になるように、ブリッジ回路104の回生動作を、PWM生成器71によって生成されるPWM駆動信号により制御する。
【0030】
コントローラ26は、例えば、電圧検出部190(図2参照)によって検出された直流電圧値Vdcと、電流検出部61によって検出された交流電流値Iacfと、電圧検出部62で検出された交流電圧値Vacfとに基づいて、ブリッジ回路104から出力される交流電流の波形が目標周波数の正弦波になるように、PWM生成器71によってブリッジ回路104のスイッチング動作による回生動作を制御する。位相検出回路72は、電圧検出部62で検出された交流電圧値Vacfに基づいて、交流電源の交流電圧の位相を検出できる。また、電流検出部61は、ブリッジ回路104の交流出力部と変圧器67の二次巻線69Bとの間の回生経路82に流れる三相電流の合計電流値を交流電流値Iacfとして検出する。電流検出部61は、高調波成分抑制部63の交流出力部と変圧器67の二次巻線69Bとの間に流れる交流電流を検出するものでもよいし、ブリッジ回路104の交流出力部と高調波成分抑制部63の交流入力部との間に流れる交流電流を検出するものでもよい。
【0031】
コントローラ26は、例えば、直流電圧の指令値Vrと電圧検出部190から供給される直流電圧値Vdcとの誤差に応じて生成された電圧誤差出力Verrを、位相検出回路72から供給される交流電圧値Vacfと乗算等することにより、交流電流の正弦波指令値Irを生成する。そして、コントローラ26は、正弦波指令値Irと電流検出部61から供給される交流電流値Iacfとの誤差に応じて生成された電流誤差出力Ierrを、PWM生成器71に供給する。PWM生成器71は、電流誤差出力Ierrを三角波等の所定の搬送波と比較することにより、ブリッジ回路104内の各トランジスタのゲートを駆動して回生動作させるPWM駆動信号を生成する。
【0032】
また、コントローラ26は、電圧検出部190(図2参照)によって検出された直流電圧値Vdcが所定の閾値電圧Vth2(<Vth1)よりも低いとき、PWM生成器71によってブリッジ回路104をアクティブフィルタとして機能するようにPWM制御することにより、力行経路81を流れ整流器102に入力される交流電流に含まれる高調波電流を抑制する。コントローラ26は、ブリッジ回路104から出力される交流電流の波形が正弦波になるように、ブリッジ回路104の高調波抑制動作を、PWM生成器71によって生成されるPWM駆動信号により制御する。
【0033】
コントローラ26は、例えば、電圧検出部190(図2参照)によって検出された直流電圧値Vdcと、電流検出部61によって検出された交流電流値Iacfと、電圧検出部62で検出された交流電圧値Vacfと、電流検出部66によって検出された交流電流値Iaclとに基づいて、ブリッジ回路104から出力される交流電流の波形が目標周波数の正弦波になるように、PWM生成器71によってブリッジ回路104のスイッチング動作による高調波抑制動作を制御する。電流検出部66は、変圧器67の二次巻線69Aと整流器102の交流入力部との間の力行経路81に流れる三相電流の合計電流値を交流電流値Iaclとして検出する。
【0034】
コントローラ26は、例えば、直流電圧の指令値Vrと電圧検出部190から供給される直流電圧値Vdcとの誤差に応じて生成された電圧誤差出力Verrを、位相検出回路72から供給される交流電圧値Vacfと乗算等することにより、交流電流の正弦波指令値Irを生成する。また、コントローラ26は、電流検出部66から供給される交流電流値Iaclから、交流電流値Iaclに含まれる高調波電流値Ihを算出する。コントローラ26は、正弦波指令値Irと高調波電流値Ihとの誤差に応じて、補正指令値Irrを生成する。コントローラ26は、補正指令値Irrと電流検出部61から供給される交流電流値Iacfとの誤差に応じて生成された電流誤差出力Ierrを、PWM生成器71に供給する。PWM生成器71は、電流誤差出力Ierrを三角波等の所定の搬送波と比較することにより、ブリッジ回路104内の各トランジスタのゲートを駆動して高調波抑制動作させるPWM駆動信号を生成する。
【0035】
図7は、コンバータ装置100の制御装置として機能するコントローラ26の機能ブロック図である。尚、コンバータ装置100の制御装置は、コントローラ26とは別の制御装置により実現されてもよい。
【0036】
コントローラ26は、コンバータ装置制御部261と、回生判定部263と、力行判定部264とを含む。コントローラ26は、一又は二以上の演算処理装置、及びソフトウェア(プログラム)やデータ等を格納するためのRAMやROM等の記憶媒体等を備えて構成されている。そして、コントローラ26の各機能部261,263,264は、前記演算処理装置を中核部材として、入力されたデータに対して種々の処理を行うための機能部がハードウェア又はソフトウェア或いはその両方により実装されて構成されている。各機能部261,263,264の機能については、図8を参照して説明する。
【0037】
図8は、本実施例によるコンバータ装置100の制御方法の一例を示すフローチャートである。図8に示す制御処理は、コントローラ26により実現され、サーボモータ11の回生時(サーボモータ11の場合は、例えば射出減速時)に関連して実行される。
【0038】
ステップS10では、回生判定部263は、モータの回生状態を判断するため、電圧検出部190によってDCリンク300のコンデンサの両端電圧Vdcを取得する。
【0039】
ステップS12では、回生判定部263は、DCリンク300の電圧Vdcが所定の閾値電圧Vth1よりも大きいか否かを判定する。回生判定部263は、電圧Vdcが閾値電圧Vth1よりも大きくない場合には、モータが減速状態ではない、すなわちモータの回生電力が発生していないと判定する。コンバータ装置制御部261は、回生判定部263によって電圧Vdcが閾値電圧Vth1よりも大きくないと判定された場合には(モータの回生電力が発生していないと判定された場合には)、ブリッジ回路104の回生動作を行わず、後述のステップS22以降の動作を行う。一方、回生判定部263は、電圧Vdcが閾値電圧Vth1よりも大きい場合には、モータが減速状態であるとして、モータの回生電力を回生可能と判定する。
【0040】
ステップS14では、コンバータ装置制御部261は、回生判定部263の判定結果に基づき電圧Vdcが閾値電圧Vth1よりも大きい場合には、ブリッジ回路104から出力される交流電流波形が正弦波になるようにブリッジ回路104のトランジスタをPWM制御でスイッチング動作させて、回生動作を開始する(ステップS16)。
【0041】
ステップS16,S18,S20では、コンバータ装置制御部261は、回生判定部263によって回生終了条件が満たされていると判定された場合、ブリッジ回路104のトランジスタを全てオフにすることにより、ブリッジ回路104の回生動作を停止させる。回生判定部263は、例えば、電圧検出部190によって検出された直流電圧値が閾値電圧Vth1以下に設定された所定の電圧値以下であり、且つ、電流検出部61によって検出された交流電流のピーク値が所定の電流値以下である場合、回生終了条件が満たされていると判定する。
【0042】
ステップS22では、力行判定部264は、モータの力行状態を判断するため、DCリンク300の電圧Vdcが閾値電圧Vth1よりも低く設定された閾値電圧Vth2よりも小さいか否かを判定する。コンバータ装置制御部261は、力行判定部264によって電圧Vdcが閾値電圧Vth2よりも小さくないと判定された場合には、ブリッジ回路104のトランジスタが全てオフになるように制御して、ブリッジ回路104のトランジスタのスイッチング動作を行わない。
【0043】
一方、ステップS22において、力行判定部264は、電圧Vdcが閾値電圧Vth2よりも小さい場合には、モータが力行状態であるとして、整流器102に入力される高調波電流を抑制すべき状態と判定する。
【0044】
ステップS24では、コンバータ装置制御部261は、力行判定部264の判定結果に基づき電圧Vdcが閾値電圧Vth2よりも小さい場合には、ブリッジ回路104から出力される交流電流波形が正弦波になるようにブリッジ回路104のトランジスタをPWM制御でスイッチング動作させて、高調波抑制動作を開始する(ステップS26)。
【0045】
ステップS26,S28,S30では、コンバータ装置制御部261は、力行判定部264によって力行終了条件が満たされていると判定された場合、ブリッジ回路104のトランジスタを全てオフにすることにより、ブリッジ回路104の高調波抑制動作を停止させる。力行判定部264は、例えば、電圧検出部190によって検出された直流電圧値が閾値電圧Vth2よりも大きく設定された所定の電圧値以上であり、且つ、電流検出部61によって検出された交流電流のピーク値が所定の電流値以上である場合、力行終了条件が満たされていると判定する。
【0046】
このように、本実施例によれば、変圧器67によって回生経路82と力行経路81が絶縁されることにより、整流器102に流れる電流の還路が形成されないため、無駄な循環電流が整流器102に流れず、電力損失の発生を抑制できる。また、ブリッジ回路104のPWM制御によって、整流器102で整流される時に発生する高調波を抑制できる。
【0047】
また、回生経路82が力行経路81に並列に設けてあるので、モータの回生電力を効率的に交流電源に回収でき、省エネルギー化を図ることができる。また、ブリッジ回路104及び高調波成分抑制部63は、力行電力が流れずに回生電力のみが流れるため、力行経路と回生経路が同じ経路である場合に比べて、定格を下げることができる(力行電力ではなく回生電力に合わせて、トランジスタ等のスイッチング素子やリアクトルなどの部品を選定できる)。また、PWM生成器71を用いてPWM制御で回生することで、高力率の回生を実現できる。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0049】
例えば、本実施例では、電圧値又は電流値の次元の物理量を用いて制御を行っているが、エネルギー等のような、等価的に異なる次元の物理量を用いて同様の制御を行うことは可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 射出成形機
11 サーボモータ
12 ボールネジ
13 ナット
14 プレッシャプレート
15,16 ガイドバー
17 ベアリング
18 ロードセル
19 射出軸
20 スクリュ
21 加熱シリンダ
21−1 ノズル
22 ホッパ
23 連結部材
24 サーボモータ
25 ロードセル増幅器
26 コントローラ
27 位置検出器
28 増幅器
31,32 エンコーダ
35 ユーザインターフェース
42 サーボモータ
44 サーボモータ
43,45 エンコーダ
51,52,53,54 モータ駆動回路
61,66 電流検出部
62 電圧検出部
63 高調波成分抑制部
64a〜64c リアクトル
65a〜65f コンデンサ(キャパシタ)
67 変圧器(絶縁トランス)
68 一次巻線
69A,69B 二次巻線
71 PWM生成器
72 位相検出回路
81 力行経路
82 回生経路
100 コンバータ装置
102 整流器(整流部)
104 ブリッジ回路(変換部)
190 電圧検出部
200 電源
261 コンバータ装置制御部
263 回生判定部
264 力行判定部
300 DCリンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータを駆動する駆動回路と、
前記駆動回路に電力を供給する整流部と、
前記駆動回路と前記整流部との間の直流電力を交流電力に変換して出力する変換部とを備える射出成形機であって、
交流電源電圧が一次側に入力される変圧器を有し、
前記変圧器の第一の二次巻線の接続先が前記整流部の入力側であり、前記変圧器の第二の二次巻線の接続先が前記変換部の出力側であることを特徴とする、射出成形機。
【請求項2】
前記変換部の出力側が、前記第二の二次巻線に高調波成分抑制部を介して接続された、請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記変換部は、変換した交流電力の電流波形が正弦波になるようにスイッチング動作する、請求項1又は2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記変換部のスイッチング動作を制御する制御部を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記制御部は、
前記駆動回路と前記整流部との間の直流電圧が第1の閾値よりも高いとき、前記変換部を電力回生変換器としてスイッチング動作させ、
前記直流電圧が前記第1の閾値よりも低く設定された第2の閾値よりも低いとき、前記変換部をアクティブフィルタとしてスイッチング動作させ、
前記直流電圧が前記第2の閾値以上前記第1の閾値以下のとき、前記変換部のスイッチング動作を停止させる、請求項4に記載の射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−27986(P2013−27986A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163694(P2011−163694)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】