説明

射出成形用金型及び熱可塑性樹脂成形体の製造方法

【課題】良好な外観の熱可塑性樹脂成形体を成形することができる射出成形用金型及び熱可塑性樹脂成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、熱可塑性樹脂が注入されるキャビティ7を形成する固定側型4及び可動側型5を備える射出成形用金型であって、キャビティ7内に熱可塑性樹脂を注入するためのゲート部G1,G2を有し、固定側型4のキャビティ面18a及び可動側型5のキャビティ面19aのうち少なくとも一方のキャビティ面は、ゲート部G1,G2から注入された少なくとも2つの熱可塑性樹脂の流れが合流する合流部に対応する合流面Cを有し、合流面Cは、熱可塑性樹脂によって合流部に形成されるウェルドラインに沿って伸びる複数の溝20を有し、溝20は、幅Wが1〜200μm、深さDが0.1〜200μm、アスペクト比D/Wが0.1以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形用金型及び熱可塑性樹脂成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂の射出成形に用いられる射出成形用金型として、例えば特許文献1記載のものが知られている。特許文献1記載の射出成形用金型は、射出成形機に取り付けられると共に、溶融樹脂の流動経路を形成するマニホールド部と、断熱板を介してマニホールド部に保持された第1の型と、この第1の型との間にキャビティを形成する第2の型とを備え、マニホールド部によって型のキャビティ面の平面度を保つことで、熱可塑性樹脂成形体のバリの発生すなわち外観不良の発生の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−15665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した従来の射出成形用金型においては、複数のゲート部から熱可塑性樹脂をキャビティ内に充填した場合に、熱可塑性樹脂の流れの合流部においてウェルドラインが発生し、成形品に外観不良が生じてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、良好な外観の熱可塑性樹脂成形体を成形することができる射出成形用金型及び熱可塑性樹脂成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る射出成形用金型は、熱可塑性樹脂が注入されるキャビティを形成する第1及び第2の型を備える射出成形用金型であって、キャビティ内に熱可塑性樹脂を注入するためのゲート部を少なくとも1つ有し、第1の型のキャビティ面及び第2の型のキャビティ面のうち少なくとも一方のキャビティ面は、ゲート部から注入された少なくとも2つの熱可塑性樹脂の流れが合流する合流部に対応する合流面を有し、合流面は、熱可塑性樹脂によって合流部に形成されるウェルドラインに沿って伸びる複数の溝を有し、溝は、幅Wが1〜200μm、深さDが0.1〜200μm、アスペクト比D/Wが0.1以上であることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る熱可塑性樹脂成形体の製造方法は、第1及び第2の型によって形成されるキャビティを有する射出成形用金型を備える射出成形機のキャビティ内に熱可塑性樹脂を注入する注入工程と、キャビティ内に充填された熱可塑性樹脂を冷却する冷却工程と、を備える熱可塑性樹脂成形体の製造方法であって、射出成形用金型は、キャビティ内に熱可塑性樹脂を注入するためのゲート部を少なくとも1つ有し、第1の型のキャビティ面及び第2の型のキャビティ面のうち少なくとも一方のキャビティ面は、ゲート部から注入された少なくとも2つの熱可塑性樹脂の流れが合流する合流部に対応する合流面を有し、合流面は、熱可塑性樹脂によって合流部に形成されるウェルドラインに沿って伸びる複数の溝を有し、溝は、幅Wが1〜200μm、深さDが0.1〜200μm、アスペクト比D/Wが0.1以上であることを特徴とする。
【0008】
また、合流面は、前述した複数の溝と略直交する方向に伸びる複数の溝を更に有することが好ましい。
【0009】
また、ゲート部を複数有し、合流面は、複数のゲート部から注入された熱可塑性樹脂の流れが合流する合流部に対応することが好ましい。
【0010】
また、ゲート部から注入された熱可塑性樹脂の流れを分流する分流部を更に有し、合流面は、分流部によって分流された熱可塑性樹脂の流れ同士が合流する合流部に対応することが好ましい。
【0011】
また、注入工程の後に、キャビティ内に注入された熱可塑性樹脂を、射出成形機における最大射出圧力の5%以上の圧力で更に加圧して保持する保圧工程を更に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、良好な外観の熱可塑性樹脂成形体を成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る射出成形用金型の第1の実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示す射出成形用金型の開状態を示す断面図である。
【図3】図1に示す固定側型を示す斜視図である。
【図4】図1に示す可動側型を示す斜視図である。
【図5】図1に示す可動側型の金属板の一例を示す平面図である。
【図6】可動側型の金属板の他の例を示す平面図である。
【図7】金属板の表面形状を示す概略拡大図である。
【図8】第2の実施形態に係る射出成形用金型の金属板を示す図である。
【図9】実施例D1及び比較例D1,D2の熱可塑性樹脂成形体の外観を示す図である。
【図10】本発明に係る射出成形用金型及び熱可塑性樹脂成形体の製造方法を利用して成形される熱可塑性樹脂成形体の例を示す図である。
【図11】表4における表面粗さの計測方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る射出成形用金型の好適な実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。また、図面に示すように、X軸及びY軸は水平面上で互いに90度をなし、鉛直方向をZ軸方向と定め、以下必要な場合にX軸、Y軸、Z軸を用いる。
【0015】
(第1の実施形態)
図1及び図2に示されるように、第1の実施形態に係る射出成形用金型1は、熱可塑性樹脂成形体の射出成形に利用される金型であり、X軸方向に対向して配置された固定側取付板2と可動側取付板3とを有している。固定側取付板2は、溶融状態の熱可塑性樹脂を射出する射出装置側に固定されており、可動側取付板3は、図示しない型開閉機構によりX軸方向に往復動する。
【0016】
固定側取付板2と可動側取付板3との間には、固定側型(第1の型)4及び可動側型(第2の型)5がX軸方向に対向して配置されている。固定側型4は、X軸方向に移動可能に構成されており、固定側取付板2の内面から突出する4本のガイドピン6によってガイドされる。また、可動側型5は、後述するスペーサーブロック10及び受け板11を介して可動側取付板3に固定されており、可動側取付板3の移動に伴ってX軸方向に往復動する。
【0017】
固定側型4と可動側型5とは、可動側取付板3の往復動に伴って、固定側型4と可動側型5とが接触した閉状態(図1参照)と、固定側型4と可動側型5とが離間した開状態(図2参照)との間を移行する。固定側型4と可動側型5とは、閉状態において、その内部に矩形板状のキャビティ7を形成する。
【0018】
固定側取付板2の中央には、図示しない射出装置のノズル先端が入り込む略漏斗状のスプルーブッシュ8が設けられている。また、固定側取付板2と固定側型4との間には、ガイドピン6に貫通されたランナストッパプレート9が配置されており、ランナストッパプレート9と固定側型4とは、溶融状態の熱可塑性樹脂の流路を構成するランナ成形部12を形成している。ランナ成形部12は、スプルーブッシュ8の出口側に接続されており、スプルーブッシュ8との接続部を中心としてZ軸方向に延在している。
【0019】
固定側型4内には、固定側型4をX軸方向に貫通するスプル成形部13が2箇所形成されている。これらのスプル成形部13は、Z軸方向におけるランナ成形部12の両端付近に形成されている。また、固定側型4と可動側型5との間には、キャビティ7の入口を構成する一対のゲート成形部14が形成されている。一対のゲート成形部14は、キャビティ7をZ軸方向で挟むように形成されている。ゲート成形部14とランナ成形部12とは、それぞれ対応するスプル成形部13を介して連通している。
【0020】
可動側型5におけるキャビティ7と反対側の面には、受け板11が固定されている。この受け板11と可動側取付板3との間には、キャビティ7内で固化した熱可塑性樹脂成形体を型から外すための4本のエジェクタピン16を保持するエジェクタプレート17が設けられている。また、受け板11と可動側取付板3との間には、X軸方向に移動するエジェクタプレート17の両側にスペーサーブロック10が配置されている。
【0021】
図4に示されるように、固定側型4のキャビティ側には、金属板18が設けられている。金属板18は、例えば鋼やSUS等の他、アルミ合金、亜鉛合金、ニッケル、ニッケル合金、銅、銅合金等の金属が用いられている。金属板18におけるキャビティ7を形成する面(以下、「キャビティ面」とする)18aは、成形される熱可塑性樹脂成形体の意匠面の模様に対応する例えば凹凸形状に形成されている。
【0022】
図3に示されるように、可動側型5のキャビティ側には、金属板19が設けられている。この金属板19は、金属板18と同様の素材であってもよく、また異なる素材であってもよい。金属板19のキャビティ面19aは、成形体の非意匠面に対応している。
【0023】
図5(a)に示されるように、キャビティ面19aのZ軸方向における中央付近(後述する合流面Cに相当)には、複数の溝20が形成されている。複数の溝20は、後述するウェルドラインに沿った方向(合流面Cにおける熱可塑性樹脂の流れの方向と略直交する方向に相当)に伸びている。ここで、図5のG1,G2は、キャビティ7の入り口であるゲート部を示し、Cは、一対のゲート部G1,G2から注入された熱可塑性樹脂の流れが合流する合流部に対応する合流面、すなわちキャビティ面19a上においてゲート部G1から流入した熱可塑性樹脂とゲート部G2から流入した熱可塑性樹脂とが衝突し混ざり合う場所を示す。なお、略直交とは、80°〜100°の角度で交差することを意味し、略平行とは、平行又は10°以下の角度で交差することを意味している。
【0024】
また、図5(b)に示されるように、キャビティ面19aの合流面Cには、成形体におけるヒケの発生を抑えるために、ウェルドラインに沿った方向に伸びる複数の溝20に加えて、複数の溝20と略直交する方向に伸びる複数の溝21が更に形成されていてもよい。
【0025】
また、図6(a)に示されるように、キャビティ面19aの全面に溝20が形成されていてもよく、図6(b)に示されるように、キャビティ面19aの全面に複数の溝20及び複数の溝21が形成されていてもよい。このような複数の溝20は、種々の方法により形成することができる。例えば、図7(a)に示す溝20は、サンドペーパを用いてキャビティ面19aを所定方向に研磨することにより形成することができ、また、図7(b)に示す溝20は、切削により形成することができ、また、図7(c)に示す溝20は、サンドブラスト等により浮遊砥粒加工によって形成することができる。また、複数の溝20を、放電加工や、電鋳等によって形成してもよく、例えばサンドペーパにより複数の溝20が形成された板を入れ子のようにキャビティ面19a上に配置してもよい。
【0026】
また、溝20の幅W(溝を形成する2つの壁の最も高い点間の距離)は1〜200μmである。溝20の深さD(溝を形成する2つの壁における最も高い点と最も低い点との差分)は0.1〜200μmであり、0.4〜25μmであることがより好ましい。また、溝20のアスペクト比(深さD/幅W)は0.1以上であり、0.2〜5.0であることがより好ましい。溝間の間隔(溝の中心軸線と隣の溝の中心軸線との間隔)は、1〜200μm程度が好ましい。サンドペーパ等により、ランダムな溝20を形成する場合には、JIS規格B0601−1994に規定された算術平均粗さRaが0.025〜50μmであることが好ましく、0.4〜25μmであることが特に好ましい。また、この場合においては、同様にJIS規格B0601−1994に規定された最大高さRyが0.1〜200μmであることが好ましく、1〜100μmであることが特に好ましい。また、ランダムな溝20を形成した場合であっても、溝20は、幅Wの平均値が1〜200μm、深さDの平均値が0.1〜200μm、アスペクト比D/Wの平均値が0.1以上である。
【0027】
また、複数の溝20と略直交する方向に伸びる複数の溝21も、方向以外は複数の溝20と同様でよいが、異なっていてもよい。
【0028】
次に、以上の構成を有する射出成形用金型1における熱可塑性樹脂成形体の製造方法について説明する。
【0029】
ここで、熱可塑性樹脂成形体の基材となる熱可塑性樹脂は特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル、アクリロニトリルースチレンーブタジエンブロック共重合体、ポリスチレン、ナイロン等のポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、アクリル樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等の一般的な熱可塑性樹脂、EPM、EPDM等の熱可塑性エラストマー、これらの混合物、これらを用いたポリマーアロイ等が挙げられる。
【0030】
また、これらの熱可塑性樹脂には、必要に応じて通常使用されるガラス繊維、各種の無機、有機フィラー等の充填材等が含有されてもよい。また、通常使用される各種の安定剤、分散剤、紫外線吸収剤、離型剤、滑材、帯電防止剤、顔料等の各種添加材が含有されてもよい。
【0031】
本実施形態における熱可塑性樹脂成形体の製造方法では、先ず溶融状の熱可塑性樹脂を用意し、射出成形用金型1を備えた射出成形機に熱可塑性樹脂を投入する。そして、射出成形用金型1の固定側型4と可動側型5とを閉状態にした後、射出装置によって溶融状態の熱可塑性樹脂を矢印A方向に射出して、スプルーブッシュ8内に注入する注入工程を行う。この注入工程によりスプルーブッシュ8内に注入された熱可塑性樹脂は、ランナストッパプレート9と固定側型4との間のランナ成形部12、固定側型4の2箇所のスプル成形部12、及び固定側型4と可動側型5との間の一対のゲート成形部13を経て、キャビティ7内に流入する。流入した熱可塑性樹脂は、それぞれキャビティ7内でZ軸方向(ゲート部G1,G2を結ぶ直線の方向)に対向するように流れ込み、その流れがキャビティ7内の合流部Cにおいて合流することによって、キャビティ7内に熱可塑性樹脂が充填される(図1参照)。そして、このときキャビティ7内の合流部において、熱可塑性樹脂の流れと略直交する方向に伸びるウェルドラインが形成される。その後、キャビティ7内に注入された熱可塑性樹脂を、射出成形機における最大射出圧力の5%以上の圧力で更に加圧して保持する保圧工程を行う。続いて、キャビティ7内に充填された熱可塑性樹脂を所定時間冷却して固化させる冷却工程を行う。この冷却工程の後、可動側取付板3を移動させて固定側型4と可動側型5とを開状態とし、エジェクタピン16を用いて熱可塑性樹脂成形体Hを可動側型5から取り外す(図2参照)。その後、所定の処理を施して製品としての成形体が完成する。
【0032】
なお、ウェルドラインは、キャビティ7の形状等に応じて、直線の他に曲線や波形等に形成される場合がある。このような場合には、溝20もウェルドラインに沿って曲線や波形等に形成されることが好ましい。また、成形時の樹脂の射出速度や、注入する樹脂の温度、金型の温度は特に限定されず、キャビティの大きさや、樹脂材料等に応じて、適切に管理をすればよい。
【0033】
以上説明した第1の実施形態に係る射出成形用金型1及びそれを用いた熱可塑性樹脂成形体の製造方法によれば、キャビティ面19aの熱可塑性樹脂の流れの合流部に対応する合流面Cにおいて、ウェルドラインに沿った方向に伸びる複数の溝20が形成されている。溝20の伸びる方向は、対向する熱可塑性樹脂の流れの先端側が合流後に流れ込む方向に相当するため、溝20の配置方向に沿って良好にガス抜きがなされ、合流部における残留ガスの巻き込みが改善される。その結果、合流面Cにおいて溶融状態の熱可塑性樹脂と型との接触面積が大きくなるので、合流面C上の樹脂の冷却速度を向上させることができ、これによってウェルドラインの隆起を抑制することが可能となると考えられる。従って、本発明によれば、良好な外観の熱可塑性樹脂成形体Hを成形することができる。
【0034】
なお、図5(b)に示されるように、上述したようにキャビティ面19aの合流面Cには、複数の溝20に加えて、熱可塑性樹脂の流れと略平行な方向に延在し、溝20と略直交する複数の溝21が更に形成されていてもよい。熱可塑性樹脂の流れの合流部では、ウェルドラインの他にも場合によってはヒケが発生する。このため、溝20と略直交する方向に伸びる複数の溝21を更に有することにより、溝21の伸びる方向において溝への樹脂充填が促進される。その結果、ヒケの発生を抑制することが可能となると考えられるので、より良好な外観の熱可塑性樹脂成形体Hを成形することができる。
【0035】
また、キャビティ7内に熱可塑性樹脂を注入した後、この熱可塑性樹脂を、射出成形機における最大射出圧力の5%以上の圧力で更に加圧して保持してもよい。
【0036】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る射出成形用金型30は、図8に示されるように、第1の実施形態に係る射出成形用金型1と比べて、キャビティ内に熱可塑性樹脂の流れを分流するピン(分流部)32を備えている点と、合流面Dがピン32によって分流された熱可塑性樹脂の流れが再び合流する合流部Tに対応する点と、ゲート部G3が一つである点及びその形状と、が主に相違する。
【0037】
図8に示されるように、第2の実施形態に係る射出成形用金型30は、キャビティに熱可塑性樹脂を注入する一つのゲートG3を有している。ゲートG3は、キャビティを形成する金属板31の幅(Y軸方向の長さ)と同じ幅の開口を有するフィルムゲートである。このゲートG3から注入された熱可塑性樹脂は、金属板31の長さ方向(Z軸方向)に流れてキャビティ内に充填される。ゲートG3から注入された直後の熱可塑性樹脂は、金属板31の幅方向(Y軸方向)で略均一な速度の流れを形成している。
【0038】
また、射出成形用金型30は、この金型によって形成される熱可塑性樹脂成形体Kに穴N(図9(a)参照)を形成するためのピン32を備えている。ピン32は、金属板31の幅方向で略中央の位置、長さ方向でゲートG3寄りの位置に設けられている。このピン32は、ゲートG3から注入された熱可塑性樹脂の流れを分流する分流部として機能する。
【0039】
この射出成形用金型30では、ゲートG3から注入されてピン32で分流された熱可塑性樹脂の流れFは、ゲートG3から見たピン32の後方において再び合流する。この熱可塑性樹脂の流れFが合流する合流部Tは、ピン32を始点としてゲートG3と反対方向に延在するように形成される。すなわち合流部TはZ軸方向に沿って延在する。射出成形用金型30により成形された成形体Kには、この合流部Tに沿うウェルドラインが形成される。
【0040】
第2の実施形態においては、金属板31のキャビティ面31aの全面が合流面Dに相当する。合流面Dは、ゲートG3から注入されてピン32で分流された熱可塑性樹脂の流れFが再び合流する合流部Tに対応している。すなわち、合流面Dには合流部Tに沿って形成されるウェルドラインの延在方向(注入直後の熱可塑性樹脂の流れと略平行な方向に相当)に延在する複数の溝33が形成されている。射出成形用金型30により成形された成形体Kには、これらの複数の溝33が転写されることになる(図9(a)参照)。
【0041】
第2の実施形態に係る溝33においても、第1の実施形態に係る溝20と同様に幅Wや深さD等の値が所定の範囲内であることが好ましい。具体的には、溝33の幅Wは1〜200μmであり、深さDは0.1〜200μmの範囲、特に0.4〜25μmであることが好ましい。また、溝33のアスペクト比(深さD/幅W)は0.1以上であり、0.2〜5.0であることがより好ましい。溝間の間隔は、1〜200μm程度が好ましい。サンドペーパ等により、ランダムな溝33を形成する場合には、JIS規格B0601−1994に規定された算術平均粗さRaが0.025〜50μmであることが好ましく、0.4〜25μmであることが特に好ましい。また、この場合においては、同様にJIS規格B0601−1994に規定された最大高さRyが0.1〜200μmであることが好ましく、1〜100μmであることが特に好ましい。また、ランダムな溝33を形成した場合であっても、溝33は、幅Wの平均値が1〜200μm、深さDの平均値が0.1〜200μm、アスペクト比D/Wの平均値が0.1以上である。
【0042】
第2の実施形態に係る射出成形用金型30においても、第1の実施形態と同様の熱可塑性樹脂成形体の製造方法を採用することができる。すなわち、まずゲート部G3からキャビティに熱可塑性樹脂を注入する注入工程が行われる。この注入工程でキャビティ内に流入した熱可塑性樹脂は、ピン32によって2つの流れに分流され、その後再び合流してキャビティ内に充填される。このとき、熱可塑性樹脂の流れと略平行な方向に伸びるウェルドラインが合流部Tに形成される。その後、キャビティ内に注入された熱可塑性樹脂を、射出成形機における最大射出圧力の5%以上の圧力で更に加圧して保持する保圧工程を行う。続いて、キャビティ7内に充填された熱可塑性樹脂を所定時間冷却して固化させる冷却工程を行う。この冷却工程の後、所定の処理を施して製品としての成形体が完成する。
【0043】
以上説明した第2の実施形態に係る射出成形用金型30及びそれを用いた熱可塑性樹脂成形体の製造方法によれば、キャビティ面31aの熱可塑性樹脂の流れの合流部に対応する合流面Dにおいて、ウェルドラインに沿った方向に伸びる複数の溝33が形成されている。溝33の伸びる方向は、ゲートG3から注入されてピン32で分流された後に再び合流する熱可塑性樹脂が合流後に流れ込む方向に相当するため、溝33の配置方向に沿って良好にガス抜きがなされ、合流部Tにおける残留ガスの巻き込みが改善される。その結果、合流面Dにおいて溶融状態の熱可塑性樹脂と型との接触面積が大きくなるので、合流面D上の樹脂の冷却速度を向上させることができ、これによってウェルドラインの隆起を抑制することが可能となると考えられる。従って、本発明によれば、良好な外観の熱可塑性樹脂成形体Kを成形することができる。
【0044】
また、第2の実施形態に係る射出成形用金型30においても、第1の実施形態に係る射出成形用金型1と同様に、合流面Dには、複数の溝33に加えて、溝33と略直交する方向に延在する複数の溝が更に形成されていてもよい。
【0045】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
【0046】
例えば、第1の実施形態に係る射出成形用金型1のように複数のゲート部を有する金型において、第2の実施形態に係る熱可塑性樹脂の流れを分流するピン等が設けられている場合であっても本発明を好適に適用可能である。この場合、複数のゲート部からそれぞれ注入された熱可塑性樹脂の流れの一部がピン等により分流され、複数箇所に合流部が形成されるため、これらの合流部に対応する複数の合流面をキャビティ面に形成することで各合流部に生じるウェルドラインの発生を抑制することができる。
【0047】
また、第1の実施形態では、矩形板状のキャビティ7を形成する金型を採用しているが、これに限られず、種々の形状の平板、曲面板、立体的形状物等の種々の物品の射出成形用の金型に適用可能である。特に、キャビティ7が大きい、例えば、樹脂のゲート部G1,G2間の距離が100mm以上であると特に効果的である。これは第2の実施形態においても同様である。
【0048】
また、第1の実施形態では、1つのキャビティ7に対して2つのゲート部G1,G2を有しているが、1つのキャビティに対して3つ以上のゲート部を有する金型にも適用することができる。この場合、溝20は、各ゲート部から注入される熱可塑性樹脂の流れの合流部にそれぞれ対応する複数の合流面において、ウェルドラインに沿って伸びるように形成される。
【0049】
また、第1の実施形態では、キャビティ7の非意匠面に複数の溝20が形成されているが、成形品の表面品質が特に要求されない場合には、意匠面に複数の溝を形成してもよく、意匠面と非意匠面の両面に複数の溝を形成するとより好ましい。これは第2の実施形態においても同様である。
【0050】
また、第1及び第2の実施形態に係るゲート部G1〜G3からの注入方式も特に限定されず、コールド式でもホットランナー式等でも構わない。
【0051】
また、第1及び第2の実施形態では、型板に設けられた金属板に複数の溝を設けているが、金属板を用いずに型に直接、複数の溝20や溝33を形成してもよい。
【0052】
また、第2の実施形態では、熱可塑性樹脂の流れを分流する分流部としてピン32が挙げられているが、ピン以外の各種部材や金型構造により分流部が形成されてもよい。
【0053】
また、第2の実施形態に係る合流面Dは、キャビティ面31aの全面に形成されている必要はなく、合流部Tに対応する部位、例えばキャビティ面31aの幅方向の中央付近にのみ形成されていても良い。
【0054】
また、本発明に係る射出成形用金型及び熱可塑性樹脂成形体の製造方法を利用して成形される熱可塑性樹脂成形体の例として自動車用バンパー40を図10に示す。このような形状の自動車用バンパー40を成形するにあたっては、図10に示すようにバンパー40の上端に5つのゲート部g1〜g5を有し、下端に3つのゲート部g6〜g8を有する金型を用いることが好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、金属板のキャビティ面が異なる実施例及び比較例を挙げ、本発明についてより具体的に説明する。まず、第1の実施形態のキャビティ面(合流面C)における溝の有無及びその延在方向の影響と成型時の保圧状態の影響とについて実施例及び比較例を挙げて説明する。
【0056】
[実施例A1]
実施例A1では、射出成形機として、日精樹脂工業(株)製のFS160(最大圧力1435kgf/cm,最大射出率195cm/s)を使用した。金属板19の材質としてアルミを選択し、完成した成形体の外寸が、長さ300mm、幅50mm、厚さ2mmとなり、長手方向の両端中央の2つのゲート部G1,G2からそれぞれ樹脂を注入する金型を採用し、金型の一方のキャビティ面の合流面C付近(Z軸方向におけるキャビティ面19aの中央からの距離が100mmの領域)に、ウェルドラインに沿った方向に伸びる溝20を♯120のサンドペーパで形成したアルミニウム板(図5(a)参照)を配置し、成形を行った。このアルミニウム板に形成した溝20についてレーザ顕微鏡による測定を行った所、溝20の幅Wの平均値が30〜60μm、深さDの平均値が5〜10μm、アスペクト比D/Wの平均値が0.1〜0.3の範囲内であった。また、溝20を形成した合流面C付近における算術平均粗さRaは、3.452μm、最大高さRyは、67.190μmであった。
【0057】
箇所
射出成形条件としては、射出成形機のシリンダ温度を220℃、金型の温度を40℃、射出速度を最大射出速度の50%とし、保圧を25%、樹脂の計量位置を65mm、サックバックを2mm、射出・保圧の合計時間を10秒、冷却時間を30秒、背圧を最大圧力の10%、1次圧を最大圧力の60%とした。V−P切替時におけるスクリュの位置は20mmであった。成形材料となる熱可塑性樹脂としてPP(ポリプロピレン:AZ864E4(MFR30g/10min,230℃):住友化学(株))を採用した。ここで、保圧とは、射出成形機の最大圧力(1435kgf/cm)に対する満充填完了後の保持圧力、V−P切替とは、射出装置における樹脂の制御を速度制御から圧力制御に切り替えるタイミングであり、射出装置におけるスクリュの位置によって表した。
【0058】
[比較例A1]
金型の一方のキャビティ面に溝を形成しなかった以外は、実施例A1と同様にした。
【0059】
[比較例A2]
金型の一方のキャビティ面の合流面C付近(Z軸方向におけるキャビティ面の中央からの距離が100mmの領域)に、ウェルドラインと直交する方向(溝20と直交する方向に相当)に伸びる溝21を♯120のサンドペーパで予め形成したアルミ板を用いた以外は、実施例A1と同様にした。
【0060】
これらの結果を表1に示す。なお、表1に示す○は、ウェルドラインの改善が目視で確認できたことを示し、×は、ウェルドラインの改善が目視で確認できなかったことを示している。
【表1】

【0061】
表1に示されるように、溝なし、あるいは、キャビティ面19aの合流部Cにウェルドラインと直交する方向に伸びる溝21のみを形成した比較例と比べて、キャビティ面19aの合流面Cにウェルドラインに沿った方向に伸びる溝20を形成した実施例においては、熱可塑性成形体の目視評価が良好であった。なお、表1,2において、「垂直溝」とは、合流面Cにおける熱可塑性樹脂の流れと直交する方向、すなわちウェルドラインに沿った方向に伸びる複数の溝を意味し、「平行溝」とは、合流面Cにおける熱可塑性樹脂の流れに平行な方向、すなわちウェルドラインと直交する方向に伸びる複数の溝を意味する。
【0062】
[実施例B1―1〜B1−3]
キャビティ面19aの全面に、ウェルドラインに沿った方向に伸びる溝20を♯240のサンドペーパで形成したアルミ板(図6(a)参照)を用い、成形材料となる熱可塑性樹脂としてタルク入りの複合PP(ポリプロピレン:タルク20wt%含有、MFR42g/10min,230℃)を採用し、冷却時間を45秒、V−P切替時におけるスクリュの位置は21mmとし、保圧をそれぞれ表2に示すように設定した以外は、実施例A1と同様にした。
【0063】
[比較例B1−1〜B1−3]
金型の一方のキャビティ面の全面に溝を形成しなかった以外は、実施例B1−1〜B1−3とそれぞれ同様にした。
【0064】
[比較例B2−1〜B2−3]
金型の一方のキャビティ面の全面に、ウェルドラインと直交する方向に伸びる溝21を♯240のサンドペーパで予め形成したアルミ板を用いた以外は、実施例B1−1〜B1−3とそれぞれ同様にした。
【0065】
これらの結果を表2に示す。なお、表2における最大表面粗さRyは、表面粗さ計によって計測された断面曲線から算出された最も高い山頂と最も低い谷底との高さの差を示している。表面粗さ計として、ミツトヨ(株)製のSURFTEST−SV400を使用した。熱可塑性樹脂の流れに略平行な方向で熱可塑性樹脂成形体の表面を3箇所計測し、その平均値を表2に示した。
【表2】

【0066】
表2に示されるように、キャビティ面19aに溝がない比較例B1−1〜B1−3及びウェルドラインと直交する方向に伸びる溝21を有する比較例B2−1〜B2−3と比べて、ウェルドラインに沿った方向に伸びる溝20を有する実施例B1―1〜B1−3の方が最大表面粗さRyの値が小さくなった。
【0067】
次に、第1の実施形態のキャビティ面(合流面C)における溝22の形状の影響について実施例及び比較例を挙げて説明する。
【0068】
[実施例C1−1〜C1−3]
キャビティ面19aの全面に、ウェルドラインに沿った方向に伸びる溝20を♯120のサンドペーパで形成したアルミ板を用いた以外は、実施例B1―1〜B1−3と同様の条件にした。溝の幅は50〜100μmの範囲内であった。
【0069】
[比較例C1−1〜C1−3]
キャビティ面19aの全面に、ウェルドラインに沿った方向に伸びる溝20を、所定のピッチで幅約200μm以上、深さ約100μmになるようにカッターの粗加工で形成したアルミ板を用いた以外は、実施例C1―1〜C1−3と同様の条件にした。
【0070】
これらの結果を表3に示す。なお、表3における最大表面粗さRyの定義及び計測方法は表2と同様である。
【表3】

【0071】
表3に示されるように、溝の幅が200μmより大きく溝サイズの粗い比較例C1―1〜C1−3の場合は、溝の幅が50〜100μmの範囲であり溝サイズの細かい実施例C1−1〜C1−3と比べてウェルドライン付近における成形体の最大表面粗さRyの値が大きくなった。この原因としては、溝のサイズが大きくなることで、溝に対する熱可塑性樹脂の転写が促進することによりガスの逃がし効果が弱まること、及び溝の転写に起因するヒケの発生が目立ってしまうことが考えられる。
【0072】
続いて、第2の実施形態に係るキャビティ面(合流面D)合流面における溝の有無及びその延在方向の影響について実施例及び比較例を挙げて説明する。
【0073】
[実施例D1]
完成した成形体の外寸が長さ120mm、幅120mm、厚さ3mmとなり,キャビティ内に直径10mmのピン32が設けられた金型を採用し、キャビティ面31aの全面にウェルドラインに沿った方向に伸びる溝20を♯120のサンドペーパで形成したアルミ板を金属板31として金型にインサートした状態で成形を行った。射出成形条件は、金型の温度を30℃、保圧を20%、樹脂の計量位置を50mm、V−P切替時におけるスクリュの位置を10mmに設定した以外は実施例A1と同様にした。また、成形材料となる熱可塑性樹脂としてタルク入りの複合PP(ポリプロピレン:タルク20wt%含有、MFR42g/10min,230℃)を採用した。実施例D1の成形体Kの外観を図9(a)に示す。図9においてLはウェルドラインを示している。
【0074】
[比較例D1]
キャビティ面31aの全面にウェルドラインLと直交する方向(溝33と直交する方向に相当)に伸びる溝を♯120のサンドペーパで予め形成したアルミ板を用いた以外は、実施例A1と同様にした。比較例D1の成形体Kの外観を図9(b)に示す。
【0075】
[比較例D2]
キャビティ面に溝を形成しなかった以外は、実施例A1と同様にした。比較例D2の成形体Kの外観を図9(c)に示す。
【0076】
これらの結果を表4に示す。なお、最大表面粗さRyの定義は表2の場合と同様である。また、表面粗さ計として表2の場合と同じミツトヨ(株)製のSURFTEST−SV400を使用した。最大表面粗さRyの計測は、図11に示されるように、成形体Kの穴NからウェルドラインLに沿って10mm間隔で選択された6箇所の計測点についてそれぞれ行った。最大表面粗さRyの計測結果は、3枚の成形体Kにおける6箇所の計測点の平均値である。なお、表4において「平行溝」とは、ゲート部G3から注入直後の熱可塑性樹脂の流れに平行な方向、すなわちウェルドラインLに沿った方向に伸びる複数の溝を意味し、「垂直溝」とは、ゲート部G3から注入直後の熱可塑性樹脂の流れと直交する方向、すなわちウェルドラインLと直交する方向に伸びる複数の溝を意味する。
【表4】

【0077】
表4に示されるように、溝なし、あるいは、キャビティ面31aにウェルドラインLと直交する方向に伸びる溝のみを形成した比較例と比べて、キャビティ面31aにウェルドラインに沿った方向に伸びる溝33を形成した実施例においては、成形体の最大表面粗さRyの値が小さくなった。
【符号の説明】
【0078】
1,30…射出成形用金型、2…固定側取付板、3…可動側取付板、4…固定側型(第1の型)、5…可動側型(第2の型)、7…キャビティ、14…ゲート成形部、18,19,31…金属板、18a,19a,31a…キャビティ面、20,21,33…溝、C,D…合流面、G1,G2,G3…ゲート部、L…ウェルドライン、T…合流部、H,K…熱可塑性樹脂成形体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂が注入されるキャビティを形成する第1及び第2の型を備える射出成形用金型であって、
前記キャビティ内に前記熱可塑性樹脂を注入するためのゲート部を少なくとも1つ有し、
前記第1の型のキャビティ面及び前記第2の型のキャビティ面のうち少なくとも一方のキャビティ面は、前記ゲート部から注入された少なくとも2つの前記熱可塑性樹脂の流れが合流する合流部に対応する合流面を有し、
前記合流面は、前記熱可塑性樹脂によって前記合流部に形成されるウェルドラインに沿って伸びる複数の溝を有し、
前記溝は、幅Wが1〜200μm、深さDが0.1〜200μm、アスペクト比D/Wが0.1以上であることを特徴とする射出成形用金型。
【請求項2】
前記合流面は、前記複数の溝と略直交する方向に伸びる複数の溝を更に有する請求項1に記載の射出成形用金型。
【請求項3】
前記ゲート部を複数有し、前記合流面は、複数の前記ゲート部から注入された前記熱可塑性樹脂の流れが合流する合流部に対応することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の射出成形用金型。
【請求項4】
前記ゲート部から注入された前記熱可塑性樹脂の流れを分流する分流部を更に有し、前記合流面は、前記分流部によって分流された前記熱可塑性樹脂の流れ同士が合流する合流部に対応することを特徴とする請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の射出成形用金型。
【請求項5】
第1及び第2の型によって形成されるキャビティを有する射出成形用金型を備える射出成形機の前記キャビティ内に熱可塑性樹脂を注入する注入工程と、
前記キャビティ内に充填された前記熱可塑性樹脂を冷却する冷却工程と、を備える熱可塑性樹脂成形体の製造方法であって、
前記射出成形用金型は、前記キャビティ内に前記熱可塑性樹脂を注入するためのゲート部を少なくとも1つ有し、
前記第1の型のキャビティ面及び前記第2の型のキャビティ面のうち少なくとも一方のキャビティ面は、前記ゲート部から注入された少なくとも2つの前記熱可塑性樹脂の流れが合流する合流部に対応する合流面を有し、
前記合流面は、前記熱可塑性樹脂によって前記合流部に形成されるウェルドラインに沿って伸びる複数の溝を有し、
前記溝は、幅Wが1〜200μm、深さDが0.1〜200μm、アスペクト比D/Wが0.1以上であることを特徴とする熱可塑性樹脂成形体の製造方法。
【請求項6】
前記注入工程の後に、前記キャビティ内に注入された前記熱可塑性樹脂を、前記射出成形機における最大射出圧力の5%以上の圧力で更に加圧して保持する保圧工程、を更に備えることを特徴とする請求項5に記載の熱可塑性樹脂成形体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−208318(P2010−208318A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25627(P2010−25627)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】