説明

射出成形装置および射出成形方法。

【課題】 気泡跡が無い射出成形品を得る。
【解決手段】 射出成形金型100のキャビティ110内を一旦真空にしてから、該キャビティ110内に溶融樹脂を充填して成形品を成形する射出成形装置において、前記キャビティ110に連通するスプルーブッシュ120と該スプルーブッシュ120に溶融樹脂を射出する射出ノズル130との接触部で、スプルーブッシュ120の先端の突出円筒部120TEにOリング120Rを嵌め込んで接触部をOリング120Rでシールした。この結果、接触部からの外部空気の侵入が無くなり、キャビティ110内の真空状態が良くなり、気泡が無い外観品質の優れた成形品を得ることが可能になり、また歩留まりが向上し、作業性も改善され、射出成形加工におけるトータル的な製品コストの削減が可能になった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性樹脂の射出成形装置および射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の従来技術を図4、図5用いながら説明する。
【0003】
図4は、従来の射出成形装置の一例で、金型部分は断面図で、その他の部分は配管模式図で示し、図5は、図4で示した従来の射出成形装置の本体側に設けた射出ノズルと、金型側に設けたスプルーブッシュとの接触部を、三種類拡大断面図で示し、図5(a)は、スプルーブッシュの接触部凹球面の曲率半径が、射出ノズルの先端の曲率半径より大きい場合を、図5(b)は、スプルーブッシュの接触部凹球面内に、射出ノズル先端と同じ曲率半径の突出部を設けた場合を、図5(c)はスプルーブッシュの接触部凹球面と同じ曲率半径の突出部を射出ノズル先端部に設けた場合を示す。
【0004】
射出成形において、溶融樹脂を金型のキャビティ内に充填する際、キャビティ内の空気や、溶融樹脂から発生するガスにより、射出成形製品内部に気泡跡が形成され、外観品質上問題を生じることが多かった。このトラブルを解決する対策の一例として、例えば、下記の特許文献1で開示した従来技術1があった。
【0005】
【特許文献1】特開平7−178783号公報
【0006】
以下、特許文献1に開示された技術を、図4を用いて説明する。
【0007】
図4の射出成形金型1では、固定側型板2は固定側取付板3に取付けられ、可動側型板4は可動側取付板5に取付けられ、可動側取付板5の移動により射出成形金型1の開閉を行っていた。また、固定側型板2の中央部にはスプルー6を設け、溶融樹脂は、このスプルー6を通してキャビティ7内に充填され、射出成形品を成形していた。ところで、従来技術1では、キャビティ7内の空気や、溶融樹脂から発生するガスにより、射出成形製品内部に気泡跡が形成されるトラブルを避ける為、溶融樹脂の充填に先立ち、高温気体をキャビティ7内に先ず充填し、次に、真空引きすることで、キャビティ7内を高温の真空状態にしておいてから、溶融樹脂をキャビティ7内に射出して成形品を成形していた。この為、高温気体発生装置12で製造した高温気体を、切換弁13、供給通路11、10を通って高温気体の供給部8からキャビティ7に供給し、更に、高温気体の排出部9から、排出通路14、15を経由し、切換弁17を経て真空装置16により排出していた。
【0008】
ところで、従来技術1の射出成形装置で、キャビティ7内を真空引きする際は、排気回路から空気が漏洩しないように配管する必要がある。図4で示した特許文献1の図面に、想像線を用いながら説明用として追記したスプルーブッシュ18と射出ノズル19の接触部は、射出成形品を工業的に量産する場合、圧接と分離を繰返すので、空気漏れ対策が特に難しい箇所の一つであった。この接触部に関しては、例えば、下記の特許文献2で開示された従来技術がある。
【0009】
【特許文献2】特開2004−17347号公報
【0010】
そこで特許文献2に開示された技術を、従来技術2として図5を用いながら三種類説明する。
【0011】
図5(a)は射出ノズル21とスプルーブッシュ22との接触部の従来の典型的な構成を示す。即ち、固定側型板23と可動側型板24でキャビティ25を形成し、固定側型板23に設けたスプルーブッシュ22の凹球面22OUの曲率半径を、射出ノズル21の先端に設けた凸球面21TOの曲率半径より少し大きく加工し、両者は、凹凸の球面接触をしている。このため、スプルーブッシュ22と射出ノズル21は隙間の少ない接触が可能になり、また、位置合わせも容易のため従来から広く用いられてきた。
【0012】
また、図5(b)では、射出ノズル31の先端の温度を降下し易くして、糸引き(金型より射出成形品を取出す時、棒状のスプルー突出部の先端に糸状の樹脂が発生する現象)発生を防止するため、図5(a)の改良型として、スプルーブッシュ32の凹球面32OU内に突出部32TOを設け、かつ、該突出部32TOの先端の凹球面の曲率半径を射出ノズル31の先端の凸球面31TOの曲率半径と同じにしており、また図5(c)では、射出ノズル41先端側にスプルーブッシュ42の凹球面42OUと同じ曲率半径の突出部41TOを設けていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
射出成形においては、キャビティ内の空気や、キャビティ内壁や充填溶融樹脂から発生するガスの悪影響を避ける為、キャビティ内を真空に保っておく必要があり、このため、例えば、射出ノズルとスプルーブッシュとの接触部に、図5(a)の構成を用いたり、また、図5(a)の構成の変形としての図5(b)、図5(c)方式を用いたりしていたが、キャビティ内を高真空に維持する為のシール性という点ではいずれも不十分で、キャビティ内の空気や、溶融樹脂から発生するガスにより、成形品内部に気泡跡が形成され、外観品質上の問題発生は避けられなかった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、解決する手段として、本発明の請求項1記載に係わる射出成形装置は、射出成形金型のキャビティ内を真空状態にしておいてから、該キャビティ内に溶融樹脂を充填して成形品を成形する射出成形装置において、前記キャビティに連通するスプルーブッシュと該スプルーブッシュに向け溶融樹脂を射出する射出ノズルとの接触部にOリングを介在させて接触部をシールしたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項2記載に係わる本発明の射出成形装置は、前記Oリングが、前記スプルーブッシュの先端に設けた突出円筒部に嵌め込まれてスプルーブッシュ端に装着されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項3記載に係わる射出成形装置は、前記Oリングが、前記射出ノズルの先端に設けた突出円柱部に嵌め込まれて、射出ノズルの樹脂射出孔周辺に装着されていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項4記載に係わる本発明の射出成形方法は、本発明の請求項の射出成形装置を用い、金型のキャビティ内を真空状態にしておいてから、該キャビティ内に溶融樹脂を充填して成形品を成形する射出成形方法において、前記キャビティに連通するスプルーブッシュと該スプルーブッシュに向け溶融樹脂を射出する射出ノズルとの接触部にOリングを介在させて接触部をシールすることでキャビティ内の真空度を高めたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
続いて本発明の効果を説明する。本発明の効果として、請求項1記載にかかわる本発明の射出成形装置では、スプルーブッシュと射出ノズルとの接触部にOリングを介在させてシールしたので、配管内の気密性が高まり、キャビティ内の真空度を高めることが可能になり、その結果、射出成形品に気泡跡が見られなくなり、射出成形品の外観品質が向上した。また、射出成形品の寸法精度が安定し、製品歩留まりが向上した。また、真空度を高める為新たに追加した構成は簡単で、従って、金型のコストアップは僅かで済んだ。また、射出成形後、製品と一緒に取出すスプルー部分にもボイドが無くなることでスプルー部分の強度がアップしたので、射出成形品の取出し工程でのスプルー折損によるトラブルが無くなり、射出成形作業全体の能率が向上する効果を得られた。また、通常、キャビティ部分に樹脂を空隙無く充填する為には、溶融樹脂をキャビティ部分から少量オーバーフローさせなくてはならなかったが、このオーバーフロー量を減少させる事が可能になり、この結果、製品取出し後のオーバーフロー部切除作業も簡単になり、作業性アップと樹脂材料の削減の結果が製品コストの削減へと繋がった。
【0019】
また、本発明の効果として、請求項2記載にかかわる本発明の射出成形装置では、Oリングを、スプルーブッシュの先端に設けた突出円筒部に嵌め込んでスプルーブッシュ端に装着したので、射出成形機のユーザー側が設計製作する金型の一部であるスプルーブッシュに夫々好適な加工を施し、射出成形機のメーカー側では、従来通りの汎用的射出ノズルを提供すればすむ効果が得られた。
【0020】
また、本発明の効果として、請求項3記載にかかわる本発明の射出成形装置では、Oリングを、射出ノズルの先端に設けた突出円柱部に嵌め込んで、射出ノズルの樹脂射出孔周辺に装着したので、射出成形機のメーカー側で、追加工を施した射出ノズルを準備する必要はあるが、この方式が広く普及した時は、量産効果により、射出成形機のユーザーが個々に加工する場合より反って安く製造できる可能性を秘めている。
【0021】
また、本発明の効果として、請求項4記載にかかわる本発明の射出成形方法では、射出成形金型のキャビティ内を真空状態にしておいてから、該キャビティ内に溶融樹脂を充填して成形品を成形する射出成形方法において、前記キャビティに連通するスプルーブッシュと溶融樹脂をスプルーに向け射出する射出ノズルとの接触部にOリングを介在させて接触部をシールしたので、キャビティ内の真空度が高まり、その結果、射出成形品に気泡跡が見られなくなり、射出成形品の外観品質が向上し、また、射出成形品の寸法精度安定化で、製品歩留まりが向上し、また、スプルー部分のボイドが無くなることで射出成形品の取出し工程でのスプルー折損によるトラブルが無くなり、射出成形作業全体の能率が向上する効果を得られた。また、キャビティからの溶融樹脂のオーバーフロー量を減少させる事で、後処理作業が簡単になり、製品コストの削減へと繋がった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、発明を実施するための最良の形態を、実施例1〜2として図1〜3を用いながら説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明の実施例1におけるプラスチック射出成形用の金型構造の断面図で、図2は、図1に示した金型構造のスプルーブッシュ部へ射出ノズルを接触させた時の部分拡大断面図である。
【0024】
図1では、射出成形用金型100のキャビティ110を構成する固定金型101は固定側受板102に固定され、更に固定側取付板103を介して射出成形機の固定側プラテンに固定されている。一方、キャビティ110を構成する可動金型104は可動側受板105に固定され、更に可動側取付板106を介して射出成形機の可動側プラテンに固定されている。そして、可動側取付板106の移動で射出成形金型100の開閉を行っている。
【0025】
固定側取付板103から、キャビティ110方向に向け、固定側受板102、固定金型101を貫通しながら溶融樹脂の通り道となるスプルーブッシュ120が設けてある。このスプルーブッシュ120は略円筒状で、一端面に鍔部120Tを有し、中心軸に沿って貫通孔120Kが設けられ、該貫通孔120Kは孔径が徐々に拡大しつつキャビティ110内に通じている。
【0026】
このスプルーブッシュ120を通して溶融樹脂をキャビティ110内に充填し、射出成形品を成形するが、実施例1では、溶融樹脂の充填に先立ち、キャビティ110内を真空引きする。この為、実施例1では、射出ノズル130からキャビティ110迄の溶融樹脂が充填する部分の全ての通路を真空引きする為の排気流路が設けてある。
【0027】
この流路はキャビティ110の下流側に設けている。このため、先ず、可動金型104の底面にキャビティ110に通じる排気流路104Hを設け、更にこの排気流路104Hは、可動側受板105に設けたL型排気流路105Hの一端と通じ、該L型排気流路105Hの他端は、可動側受板105の端面に設けた吸引口105Kに通じている。また、前記吸引口105Kは真空ポンプ(図示省略)に接続されている。また、外部の空気が漏洩し易い流路の継ぎ目部分で排気流路内に空気が漏洩してこない様に、可動側受板105と可動金型104の合わせ面では、排気流路104Hの周囲をOリング105Rでシールしている。
【0028】
また、キャビティ110の上流側では、スプルーブッシュ120の外周を通って空気が漏洩してこないように固定金型101とスプルーブッシュ120の外周との間をOリング101Rでシールしている。また、固定金型101と可動金型104の合わせ面もOリング104Rでシールしている。
【0029】
更に、本実施例で特徴的なシールとして、スプルーブッシュ120の鍔側端面に、貫通孔120Kを中心に突出円筒部120TEを設け、該突出円筒部120TEにはOリング120Rを嵌合装着している。そして、固定側取付板103に固定するロケートリング121により、Oリングホルダー122を介して、前記Oリング120Rの外周をスプルーブッシュ120の鍔部120Tに軽く圧接している。
【0030】
続いて、上述した実施例1の射出成形用金型100の利用法を説明する。利用に際しては、先ず、固定金型101に可動金型104を密着させ、この状態で、射出ノズル130をスプルーブッシュ120の突出円筒部120TEに圧接する。これにより、スプルーブッシュ120の貫通孔120Kと射出ノズル130の樹脂射出孔130Jとが連通するが、この時、射出ノズル130外側の先端斜面130Sがスプルーブッシュ120の突出円筒部120TEに設けたOリング120Rによってシールされ、キャビティ110やスプルーブッシュ120内は外部の大気から遮断される。
【0031】
この状態で、射出ノズル130からキャビティ110迄の間の溶融樹脂を充填する全ての空間を真空引きする。即ち、可動側受板105の端面に設けた吸引口105Kに接続されている真空ポンプ(図示省略)を用いて可動金型104の底面の排気流路104Hおよび可動側受板105に設けたL型排気流路105Hを通し、キャビティ110内と、スプルーブッシュ120内の大気やガスを排気する。
【0032】
この後、引き続いて溶融樹脂の充填を開始し、キャビティ110内の樹脂の充填が完了し、更に、この樹脂が硬化した段階で、排気流路104H、105Hからの真空引きを停止し、射出ノズル130をスプルーブッシュ120の突出円筒部120TEから分離し、更に可動金型104を開いて、スプルー付きの射出成形製品を取出す。
【0033】
続いて実施例1の射出成形装置で得られた効果の説明を行う。実施例1では、スプルーブッシュと射出ノズルとの接触部にOリングを介在させて接触部での気密性を確保したので、キャビティ内の真空度を高めることが可能になり、その結果、射出成形品に気泡跡の発生が無くなり射出成形品の外観品質が向上し、また、同時に射出成形品の寸法精度も安定して、製品歩留まりが向上する効果が得られた。また、真空度を高める為追加した構成は簡単で、従って、金型のコストアップも僅かで済み、また、射出成形製品と一緒に取出すスプルー部分にもボイド発生が無くなることで強度がアップし、その結果、射出成形品の取出し工程でのスプルー折損トラブルが無くなり、射出成形作業全体の能率が向上する効果も得られた。また、キャビティ部分に樹脂を空隙無く充填する為のオーバーフロー量を減少させる事が可能になり、これが製品コストの削減へと繋がった。また、実施例1の射出成形装置では、Oリングを、スプルーブッシュの先端に設けた凸部に嵌め込んで装着したので、射出成形機のメーカーが提供する汎用的射出ノズルを用い、射出成形機のユーザー側でスプルーブッシュに夫々好適な改良を施すことが可能になる効果が得られた。
【実施例2】
【0034】
次に、図3を用いながら本発明の実施例2の金型構造を説明する。図3(a)は本発明の射出成形装置の装置本体側に設けた射出ノズルと、金型側に設けたスプルーブッシュとの接触部近傍の断面図、図3(b)は図3(a)のA部拡大図である。尚、実施例2の要部(即ち、射出ノズルとスプルーブッシュの接触部)以外は既に説明した実施例1の場合と実質的に同一であり、従って同一部分に関しては、図面は省略した。
【0035】
図3(a)、図3(b)に於ては、キャビティ210は固定金型201と可動金型204で構成され、固定金型201に設けたスプルーブッシュ220の貫通孔220Kがキャビティ210内に連通している。また、実施例2の場合は、射出ノズル230の先端に突出円柱部230TEを有し、該突出円柱部230TEの端面はスプルーブッシュ220の凹面220OUと同じ曲率半径を持つ凸面にしてある。また、突出円柱部230TEにはOリング230Rが挿入装着され、該Oリング230Rは、突出円柱部230TEに刻設した溝部に嵌合したOリングホルダー230RHにより、射出ノズル230の太径側に軽く押圧され、射出ノズル230上での移動や抜け落ちが防止されている。
【0036】
次に本発明の実施例2におけるプラスチック射出成形用金型の利用法の説明に移る。実施例2の場合は、射出ノズル230とスプルーブッシュ220の接触部以外の構成は既に説明した実施例1の場合と同一であり、従って同一部分の説明は簡単に留める。
【0037】
金型を閉じた状態で、先ず、射出ノズル230をスプルーブッシュ220方向に移動させて、スプルーブッシュ220の凹面220OUに圧接する。射出ノズル230先端の突出円柱部230TEの端面はスプルーブッシュ220の凹面220OUと同じ曲率半径の凸面になっているので、両面は密着し、その結果、スプルーブッシュ220の貫通孔220Kと射出ノズル230の樹脂射出孔230Jは連通し、更に、突出円柱部230TEに挿入装着されていたOリング230Rが、スプルーブッシュ220の凹面220OUに圧接して、シールされ、キャビティ210やスプルーブッシュ220内は外部の大気から遮断される。
【0038】
この状態で、射出ノズル230からキャビティ210迄の溶融樹脂充填部分の全空間を実施例1の場合と同様に真空ポンプを用いて真空引きする。そして、キャビティ210内と、スプルーブッシュ220内が真空状態になったら、溶融樹脂の充填を開始し、樹脂の充填が完了し、続いて、キャビティ210内の樹脂が硬化した段階で、排気流路を通した金型内部の真空引きを停止し、射出ノズル230をスプルーブッシュ220の凹面220OUから引き離し、その後、金型を開いて、スプルー付き射出成形製品を金型から取出し、スプルー部分を切断して射出成形製品が完成する。
【0039】
次に実施例2の効果の説明に移る。先ず、従来例と実施例2の射出成形装置を比較すると、スプルーブッシュと射出ノズルとの接触部にOリングを介在させてシールした場合の効果、即ち、配管内の気密性が高まり、キャビティ内の真空度を高めることが可能になり、その結果、射出成形品に気泡跡が無くなり成形品の外観品質が向上し、また、射出成形品の寸法精度の安定により製品歩留まりが向上した。また、新たに追加した構成は簡単で、従って、金型のコストアップは僅かで済み、また、ボイドが無くなってスプルー部分の強度もアップしたので、スプルー折損トラブルが無くなり、射出成形作業全体の能率が向上する効果を得られた。また、キャビティ部分に樹脂を空隙無く充填する為のオーバーフロー量を減少させる事が可能になり、これが製品コストの削減へとつながった。
【0040】
更に、実施例2では、Oリングを、射出ノズルの先端に設けた突出円柱部に嵌め込んで、シールしているが、この方式だと、射出成形機のメーカー側で、追加工を施した射出ノズルを準備する必要があり、一見不都合の様にも見える。しかし、本発明のスプルーブッシュと射出ノズルとの接触部にOリングを介在させて接触部での気密性を確保するシール方式が広く普及すれば、量産効果により、射出成形機のユーザーが個々に加工する場合より反って安く製造できる可能性を秘めていることも実施例2に特有の効果としてあげられる。
【0041】
最後に本発明全体の効果を総括する。本発明では、スプルーブッシュと射出ノズルの接触部をOリングでシールすることで、接触部からの漏れが無くなり、キャビティ内の真空状態が良くなり、気泡跡が無い外観品質の優れた成形品を得ることができるようになり、また、成形性が安定して歩留まりが向上し、後工程での作業性も良くなり、射出成形加工におけるトータル的な製品コストの削減が可能になる効果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施例1における射出成形用金型の断面図である。
【図2】図1に示した本発明の射出成形用金型のスプルーブッシュと、射出ノズルとの接触部近傍の拡大断面図である。
【図3】本発明の実施例2における射出成形用金型のスプルーブッシュと、射出ノズルとの接触部近傍の断面図で、図3(a)は、スプルーブッシュと射出ノズルとの接触部近傍の断面図、図3(b)は図3(a)のA部拡大断面図である。
【図4】従来の射出成形装置の一例を示し、金型部分は断面図で、その他の部分は配管模式図である。
【図5】図4で示した従来の射出成形装置の射出ノズルと、スプルーブッシュとの接触部近傍を、三種類拡大断面図を用いて示し、図5(a)は、スプルーブッシュの接触部凹球面の曲率半径が、射出ノズルの先端の曲率半径より大きい場合を、図5(b)は、スプルーブッシュの接触部凹球面内に、射出ノズル先端と同じ曲率半径の突出部を設けた場合を、図5(c)はスプルーブッシュの接触部凹球面と同じ曲率半径の突出部を射出ノズル先端部に設けた場合を示す。
【符号の説明】
【0043】
100 射出成形金型
110 キャビティ
120 スプルーブッシュ
120R Oリング
120TE 突出円筒部
130 射出ノズル
230 射出ノズル
230J 樹脂射出孔
230R Oリング
230TE 突出円柱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形金型のキャビティ内を真空状態にした後、該キャビティ内に溶融樹脂を充填して成形品を成形する射出成形装置において、前記キャビティに連通するスプルーブッシュと該スプルーブッシュに向け溶融樹脂を射出する射出ノズルとの接触部にOリングを介在させて接触部をシールしたことを特徴とする射出成形装置。
【請求項2】
前記Oリングは、前記スプルーブッシュの先端に設けた突出円筒部に嵌め込まれてスプルーブッシュ端に装着されていることを特徴とする請求項1に記載の射出成形装置。
【請求項3】
前記Oリングは、前記射出ノズルの先端に設けた突出円柱部に嵌め込まれて、射出ノズルの樹脂射出孔周辺に装着されていることを特徴とする請求項1に記載の射出成形装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の射出成形装置を用い、射出成形金型のキャビティ内を真空状態にしておいてから、該キャビティ内に溶融樹脂を充填して成形品を成形する射出成形方法において、前記キャビティに連通するスプルーブッシュと該スプルーブッシュに向け溶融樹脂を射出する射出ノズルとの接触部にOリングを介在させて接触部をシールすることでキャビティ内の真空度を高めたことを特徴とする射出成形方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−262383(P2009−262383A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113383(P2008−113383)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】