説明

射出成形金型および射出成形金型の型ずれ検出システム

【課題】樹脂注入前に、固定側金型および可動側金型の型締めが適切に為されているか否かを検出することができる射出成形金型を提供する。
【解決手段】固定側金型2および可動側金型3の相互の接合面50、52を突き合せると共に、接合面内において、X軸方向およびこれに直交するY軸方向を位置決めする相互の位置決め部24、34を係合させることにより、固定側金型2と可動側金型3との型締めを行う射出成形金型1であって、型締めした固定側金型2および可動側金型3における相互の接合面50、52の平行度を検出する平行度検出手段6を、備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてプラスチックレンズを射出成形する射出成形金型および射出成形金型の型ずれ検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の射出成形金型では、固定側金型と可動側金型との型締めを行う際、金型の精度や構造的な位置決めにより、固定側金型と可動側金型との平行度やX軸方向およびY軸方向の位置精度を保証している。例えば、固定側金型と可動側金型との相互の接合面の平面度を高精度に仕上げると共に、可動側金型に配設されたパンチ部材の筒穴状嵌合部のテーパー部と、固定側金型に配設された円筒状嵌合部とを所定の公差をもって嵌合させて精度良く位置決めを行うようにしている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−142572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の射出成形金型では、相互の接合面において微小なゴミ等を噛んだ場合には、いわゆる片開きが生ずる。同様に、テーパー部と円筒状嵌合部との間にゴミを噛んだ場合には、X軸方向やY軸方向の位置ずれが生じる。かかる場合に、成形されるレンズは両面の軸芯にずれが生じた不良品となるが、その不具合を樹脂の注入前に目視等により知ることは不可能であった。すなわち、軸芯にずれが生じているかどうかの判断は、レンズを成形した後、3次元測定機等により行わざるを得ず、一定量の不良品の発生によりレンズの歩留りが悪化する要因となっていた。
【0004】
本発明は、樹脂注入前に、固定側金型および可動側金型の型締めが適切に為されているか否かを検出することができる射出成形金型および射出成形金型の型ずれ検出システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の射出成形金型は、固定側金型および可動側金型の相互の接合面を突き合せると共に、接合面内において、X軸方向およびこれに直交するY軸方向を位置決めする相互の位置決め部を係合させることにより、固定側金型と可動側金型との型締めを行う射出成形金型であって、型締めした固定側金型および可動側金型における相互の接合面の平行度を検出する平行度検出手段を、備えたことを特徴とする。
【0006】
この構成によれば、例えば、固定側金型と可動側金型との相互の接合面にゴミ等を噛んだ場合、その分、平行度検出手段は相互の接合面に平行度が出ていないことを検出する。すなわち、両金型の合わせ面に発生する、いわゆる片開きを検出する。つまり、平行度検出手段によって、事前に両金型の型締めの不良に基づくレンズ成形ミスを防止することができ、成形されるレンズの歩留りを向上させることができる。
【0007】
この場合、平行度検出手段は、固定側金型および可動側金型のいずれか一方に設けられ、接合面内において相互に離間して配設した少なくとも3つの平行検出センサを有し、各平行検出センサは、相互の接合面の微小離間距離を検出することが好ましい。
【0008】
この構成によれば、挟み込んだゴミ等が接合面内のどの位置にあっても、固定側金型と可動側金型との平行度の不良を確実に検出することができる。
【0009】
この場合、固定側金型の側面に添設した第1固定側ブロックと、可動側金型の側面に添設した第1可動側ブロックと、を更に備え、第1固定側ブロックおよび第1可動側ブロックは、型締め状態で相互に接合する擬似接合面をそれぞれ有し、平行度検出手段は、固定側金型および可動側金型の相互の接合面に代えて、第1固定側ブロックおよび第1可動側ブロックの相互の擬似接合面の平行度を検出することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、例えば、固定側金型と可動側金型との相互の接合面にゴミ等を噛んだ場合、平行度検出手段は第1固定側ブロックおよび第1可動側ブロックの擬似接合面を介して両金型の片開きを検出するため、事前に両金型の型締め不良に基づくレンズ成形ミスを防止することができ、成形されるレンズの歩留りを向上させることができる。また、既存の射出成形金型にも、第1固定側ブロックおよび第1可動側ブロックを設けることにより、平行度検出手段を容易に設けることができる。しかも、第1固定側ブロックおよび第2固定側ブロックは、平行度検出手段を設置し易い構成とすることができる。
【0011】
この場合、平行度検出手段は、第1固定側ブロックおよび第1可動側ブロックのいずれか一方に設けられ、擬似接合面内において相互に離間して配設した少なくとも3つの平行検出センサを有し、各平行検出センサは、相互の擬似接合面の微小離間距離を検出することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、挟み込んだゴミ等が接合面内のどの位置にあっても、固定側金型と可動側金型との平行度の不具合を確実に検出することができる。
【0013】
この場合、各平行検出センサは、近接センサで構成されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、近接センサの検出は非接触形態で行われるため、型締め状態の固定側金型と可動側金型との平行度を正確に検出することができる。なお、近接センサは0.1μm以下の検出精度を有することが好ましい。
【0015】
この場合、型締めした固定側金型および可動側金型における相互の位置決め部の、X軸方向の位置ずれおよびY軸方向の位置ずれを検出する位置ずれ検出手段を、更に備えたことが好ましい。
【0016】
この構成によれば、例えば、固定側金型と可動側金型との相互の位置決め部間にゴミ等を噛んだ場合、その分、位置ずれ検出手段は相互の位置決め部間のX軸方向および/またはY軸方向に位置ずれが発生していることを検出する。すなわち、固定側金型に対し可動側金型がX軸方向および/またはY軸方向に位置ずれしていることを検出する。つまり、位置ずれ検出手段によって、事前に両金型の型締めの不良に基づくレンズ成形ミスを防止することができ、成形されるレンズの歩留りを向上させることができる。
【0017】
この場合、位置ずれ検出手段は、固定側金型の位置決め部および可動側金型の位置決め部のいずれか一方に設けられ、相互の位置決め部のX軸方向の位置ずれを検出するX軸検出センサと、固定側金型の位置決め部および可動側金型の位置決め部のいずれか一方に設けられ、相互の位置決め部のY軸方向の位置ずれを検出するY軸検出センサと、を有し、X軸検出センサは、相互の位置決め部のX軸方向における相互の位置決め面の微小離間距離を検出し、Y軸検出センサは、相互の位置決め部のY軸方向における相互の位置決め面の微小離間距離を検出することが好ましい。
【0018】
この構成によれば、接合面内における固定側金型と可動側金型とのX軸方向および/またはY軸方向の位置ずれを具体的に検出することができ、原因の早期究明に資することができる。
【0019】
この場合、固定側金型の側面に添設した第2固定側ブロックと、可動側金型の側面に添設した第2可動側ブロックと、を更に備え、第2固定側ブロックおよび第2可動側ブロックは、型締め状態で相互に係合する擬似位置決め部をそれぞれ有し、位置ずれ検出手段は、固定側金型および可動側金型における相互の位置決め部に代えて、第2固定側ブロックおよび第2可動側ブロック相互の擬似位置決め部の、X軸方向の位置ずれおよびY軸方向の位置ずれを検出することが好ましい。
【0020】
この構成によれば、例えば、固定側金型と可動側金型との相互の位置決め部間にゴミ等を噛んだ場合、位置ずれ検出手段は第2固定側ブロックおよび第2可動側ブロックの擬似接合面を介して、固定側金型に対し可動側金型がX軸方向および/またはY軸方向に位置ずれしていること検出するため、事前に両金型の型締めの不良に基づくレンズ成形ミスを防止することができ、成形されるレンズの歩留りを向上させることができる。また、既存の射出成形金型にも第2固定側ブロックおよび第2可動側ブロックを設けることにより、位置ずれ検出手段を容易に設けることができる。しかも、第2固定側ブロックおよび第2可動側ブロックは、位置ずれ検出手段を設置し易い構成とすることができる。
【0021】
この場合、位置ずれ検出手段は、第2固定側ブロックの擬似位置決め部および第2可動側ブロックの擬似位置決め部のいずれか一方に設けられ、相互の擬似位置決め部のX軸方向の位置ずれを検出するX軸検出センサと、第2固定側ブロックの擬似位置決め部および第2可動側ブロックの擬似位置決め部のいずれか一方に設けられ、相互の擬似位置決め部のY軸方向の位置ずれを検出するY軸検出センサと、を有し、X軸検出センサは、相互の擬似位置決め部のX軸方向における相互の擬似位置決め面の微小離間距離を検出し、Y軸検出センサは、前記相互の擬似位置決め部のY軸方向における相互の擬似位置決め面の微小離間距離を検出することが好ましい。
【0022】
この構成によれば、接合面内における固定側金型と可動側金型とのX軸方向および/またはY軸方向の位置ずれを具体的に検出することができ、原因の早期究明に資することができる。
【0023】
この場合、X軸検出センサおよびY軸検出センサは、それぞれ近接センサで構成されていることが好ましい。
【0024】
この構成によれば、近接センサの検出は非接触形態で行われるため、型締め状態の固定側金型と可動側金型とのX軸方向およびY軸方向の位置ずれを正確に検出することができる。なお、近接センサは0.1μm以下の検出精度を有することが好ましい。
【0025】
本発明の射出成形金型の型ずれ検出システムは、上記した射出成形金型と、平行度検出手段および位置ずれ検出手段の検出結果に基づいて固定側金型と可動側金型との型締めが良好に行われているか否かを評価する評価手段と、を備えたことを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、評価手段により固定側金型と可動側金型との相互の接合面に、平行度の良否、および固定側金型と可動側金型との相互の位置ずれの存否を評価することができる。したがって、事前に両金型の型締めの不良に基づくレンズ成形ミスを防止することができ、成形されるレンズの歩留りを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る射出成形金型について説明する。この射出成形金型は、4個取りのプラスチックレンズから成るレンズ成形品を射出成形するものであり、型締めした状態で、射出成形機から射出された樹脂を内部に導入し、これを冷却して固化して4個取りのレンズ成形品を一体成形するものである。なお、この場合のプラスチックレンズは、球面レンズであってもよいし、非球面レンズであってもよい。
【0028】
図1および図2で示すように、射出成形金型1は、下側の固定側金型2と、上側の可動側金型3と、固定側金型2の側面に添設される固定側ブロック4と、可動側金型3の側面に添設される可動側ブロック5と、固定側ブロック4に設けられ、両金型2、3間の平行度を検出する平行度検出手段6と、X軸方向および/またはY軸方向の位置ずれを検出する位置ずれ検出手段7と、を備えている。また、これら平行度検出手段6および位置ずれ検出手段7は、その検出結果を評価するモニター8が接続されており、射出成形金型1とモニター8とにより、射出成形金型1の型ずれ検出システムが構成されている。平行度検出手段6は、相互に離間して配設した3つの平行検出センサ11で構成され、位置ずれ検出手段7は、X軸方向の位置ずれを検出するX軸検出センサ12と、Y軸方向の位置ずれを検出するY軸検出センサ13とで構成されている。
【0029】
固定側金型2は、金型架体である固定側金型本体21と、固定側金型本体21を支持する平板状の下取付ベース22と、固定側金型本体21の上面に嵌め込まれ、レンズ成形品Aに対応する4つの上向き光学駒23と、固定側金型本体21の四隅に立設され、可動側金型3との位置決めを行う4本のガイドピン24(位置決め部)と、固定側金型本体21の中央に形成した樹脂の流入経路を構成するランナー25と、上向き光学駒23の一部に形成されたランナー25に連なるゲート26と、固定側金型本体21の中央に穿設され、ランナー25に連なるエアベント27、とから構成されている。
【0030】
固定側金型本体21は、平面視方形に形成され、上面がパーティクルラインとなる平坦な固定側接合面50となっている。固定側金型本体21の中央部には、方形を為すように相互に離間して設けた4つの凹部85が形成され、この各凹部85に上向き光学駒23がそれぞれ嵌合している。各上向き光学駒23は、ステンレスや銅合金等で構成され、上面にはプラスチックレンズBの半部に対応する形状のキャビティ86が形成されている。また、各上向き光学駒23の上面の平坦部分は、上記と同様にパーティクルラインとなり、上記の固定側接合面50の一部を構成している。各ガイドピン24は、ステンレス等で円柱状に構成され、基部を固定側金型本体21の上面に埋め込むようにして固定側接合面50に立設されている。そして、固定側金型2に注入された樹脂は、上記のキャビティ86、ランナー25およびゲート26により構成される空隙に流入して成形される。
【0031】
可動側金型3は、金型架体である可動側金型本体31と、可動側金型本体31を上側から支持する平板状の上取付ベース32と、可動側金型本体31の下面に嵌め込まれ、上記の4つの上向き光学駒23に対応する4つの下向き光学駒33と、可動側金型本体31の四隅に上記のガイドピン24に対応して設けられ、固定側金型2との位置決めを行う4つのガイドピンブッシュ34(位置決め部)と、可動側金型本体31の中央に穿設され、射出された樹脂を導く円錐状のスプルー35と、樹脂の流入経路を構成するランナー25と、下向き光学駒33の一部に形成されランナー25に連なるゲート26、とから構成されている。
【0032】
可動側金型本体31は、平面視方形に形成され、下面がパーティクルラインとなる平坦な可動側接合面52となっている。可動側金型本体31の中央部には、相互に離間して設けた4つの凹部85が形成され、この各凹部85に下向き光学駒33がそれぞれ嵌合している。各下向き光学駒33は、ステンレスや銅合金等で構成され、下面にはプラスチックレンズBのもう一方の半部に対応する形状のキャビティ86が形成されている。また、各下向き光学駒33の下面の平坦部分は、上記と同様にパーティクルラインとなり、上記の可動側接合面52の一部を構成している。各ガイドピンブッシュ34は、ステンレスや銅合金等で円筒状に構成され、可動側金型本体31に埋め込まれている。このガイドピンブッシュ34に対し、ガイドピン24は、X軸方向およびY軸方向における固定側金型2と可動側金型3との位置決めを行うべく、所定の公差をもって嵌合する。そして、可動側金型3に注入された樹脂は、上記のキャビティ86、スプルー35、ランナー25およびゲート26により構成される空隙に流入して成形される。すなわち、上記4つの上向き光学駒23のキャビティ86と下向き光学駒33のキャビティ86とにより、レンズ成形品Aが形成され、両者のスプルー35、ランナー25およびゲート26により形成される部分は、後に切除される。
【0033】
固定側金型2の側面に添設される固定側ブロック4は、三角形を為すように相互に離間して配設された3つの第1固定側ブロック41と、手前の左隅にそれぞれ配設された2つの第2固定側ブロック42と、から構成されている。なお、以降の説明では、図1(a)における紙面の左右方向をX軸方向とし、紙面の前後方向をY軸方向とする。
【0034】
3つの第1固定側ブロック41は、その2つが固定側金型2の左側面前部および右側面前部に取り付けられ、1つが後側面中央部に取り付けられている。一方、2つの第2固定側ブロック42は、固定側金型2の手前左隅に設けたガイドピン24に対応して設けられており、ガイドピン24とY軸方向において同位置となるように固定側金型2の左側面前部に取り付けたX軸固定側ブロック42Aと、ガイドピン24とX軸方向において同位置となるように固定側金型2の前面左部に取り付けたY軸固定側ブロック42Bと、で構成されている。
【0035】
各第1固定側ブロック41は、水平検出片60と鉛直固定片61とで断面「L」字状に形成され、ステンレス等の金属ピースで構成されている。水平検出片60の上面には、上記の固定側金型2の接合面50と精度良く面一に仕上げられた固定側擬似接合面51が形成されている。また水平検出片60には、上下方向に貫通したセンサ取付孔87が形成され、このセンサ取付孔87に上記の平行検出センサ11が上向きに取り付けられている。そして、各第1固定側ブロック41は、鉛直固定片61の部分で固定側金型2の各側面にねじ止めされている。
【0036】
各第2固定側ブロック42(X軸固定側ブロック42AおよびY軸固定側ブロック42B)は、鉛直検出片65と、水平片66と、鉛直固定片67で断面クランク状に形成され、ステンレス等の金属ピースで構成されている。X軸固定側ブロック42Aの鉛直検出片65の内側面には、固定側金型2と可動側金型3とのX軸方向の位置ずれを検出する固定側X軸擬似位置決め面80が形成されている。同様に、Y軸固定側ブロック42Bの鉛直検出片65の内側面には、固定側金型2と可動側金型3とのY軸方向の位置ずれを検出する固定側Y軸擬似位置決め面81が形成されている。また、X軸固定側ブロック42Aの鉛直検出片65には、左右方向に貫通したセンサ取付孔87が形成され、Y軸固定側ブロック42Bの鉛直検出片65には、前後方向に貫通したセンサ取付孔87が形成されていて、これらセンサ取付孔87に上記のX軸検出センサ12およびY軸検出センサ13が、それぞれ横向きに取り付けられている。そして、各第2固定側ブロック42は、鉛直固定片67の部分で固定側金型2の各側面にねじ止めされている。
【0037】
一方、可動側金型3の側面に添設される可動側ブロック5は、上記の固定側ブロック4に対応して配設されており、相互に離間して配設され、各第1固定側ブロック41とそれぞれ接合する3つの第1可動側ブロック45と、各第2固定側ブロック42に対応し、手前の左隅にそれぞれ配設された2つの第2可動側ブロック46と、から構成されている。
【0038】
3つの第1可動側ブロック45は、その2つが可動側金型3の左側面前部および右側面前部に取り付けられ、1つが後側面中央部に取り付けられている。一方、2つの第2可動側ブロック46は、固定側金型2の手前左隅に設けたガイドピン24に対応して設けられており、ガイドピン24とY軸方向において同位置となるように可動側金型3の左側面前部に取り付けたX軸可動側ブロック46Aと、ガイドピン24とX軸方向において同位置となるように可動側金型3の前面左部に取り付けたY軸可動側ブロック46Bと、で構成されている。
【0039】
各第1可動側ブロック45は、水平検出片70と鉛直固定片71とで断面「L」字状に形成され、ステンレス等の金属ピースで構成されている。水平検出片70の下面には、上記の可動側金型3の接合面52と精度良く面一に仕上げられた可動側擬似接合面53が形成されている。そして、各第1可動側ブロック45は、鉛直固定片71の部分で可動側金型3の各側面にねじ止めされている。これにより、固定側金型2と可動側金型3とを型締めすると、固定側接合面50と可動側接合面52とが隙間なく面接触すると共に、各固定側擬似接合面51と可動側擬似接合面53とが隙間なく面接触することになる。なお、第1固定側ブロック41と第1可動側ブロック45とを、同一形状に形成することが好ましい(上下反転して取り付ける。)。
【0040】
各第2可動側ブロック46(X軸可動側ブロック46AおよびY軸可動側ブロック46B)は、第1固定側ブロック41や第1可動側ブロック45と同様の形態を有し、水平検出片75と鉛直固定片76とで断面「L」字状に且つステンレス等で形成されている。X軸可動側ブロック46Aは、X軸固定側ブロック42Aの鉛直検出片65および水平片66の部分に嵌まり込む形状に形成され、水平検出片75の外側面には、X軸固定側ブロック42Aの固定側X軸擬似位置決め面80に対面する可動側X軸擬似位置決め面82が構成されている。同様に、Y軸可動側ブロック46Bは、Y軸固定側ブロック42Bの鉛直検出片65および水平片66の部分に嵌まり込む形状に形成され、水平検出片75の外側面には、Y軸固定側ブロック42Bの固定側Y軸擬似位置決め面81に対面する可動側Y軸擬似位置決め面83が構成されている。そして、各第2可動側ブロック46は、鉛直固定片76の部分で可動側金型3の各側面にねじ止めされている。
【0041】
固定側金型2と可動側金型3とを型締めすると、各ガイドピン24が各ガイドピンブッシュ34に嵌合して、水平面内(接合面内)における固定側金型2と可動側金型3とのX軸方向およびY軸方向の位置決めが為される。その際、上記の固定側X軸擬似位置決め面80と可動側X軸擬似位置決め面82とが隙間なく面接触すると共に、上記の固定側Y軸擬似位置決め面81と可動側Y軸擬似位置決め面83とが隙間なく面接触することになる。
【0042】
上述のように各平行検出センサ11は、各第1固定側ブロック41の水平検出片60に形成したセンサ取付孔87に上向き(鉛直)に且つ嵌合するように取り付けられている。この場合、各平行検出センサ11は、0.1μm以下の検出精度で距離測定が可能な近接センサで構成されており、その先端がセンサ取付孔87に僅かに没入するように配設されている。これにより、平行検出センサ11の先端と上記の可動側擬似接合面53とが、微小間隙を存して対面する。実施形態の各平行検出センサ11では、固定側金型2と可動側金型3とを平行度が出た型締め状態で、可動側擬似接合面53との距離を計測し、これを平行基準値として平行度の評価を行うようになっている(詳細は後述する)。
【0043】
すなわち、平行検出センサ11は、固定側金型2と可動側金型3との相互の接合面50、52に代えて、各第1固定側ブロック41と各第1可動側ブロック45とによる3箇所の相互の擬似接合面51、53におけるそれぞれ微小離間距離を検出することにより、上記の平行度を検出する。
【0044】
一方、X軸検出センサ12は、X軸固定側ブロック42Aの鉛直検出片65に形成したセンサ取付孔87に横向き(水平)に且つ嵌合するように取り付けられている。この場合も、X軸検出センサ12は、0.1μm以下の検出精度で距離測定が可能な近接センサで構成されており、その先端がセンサ取付孔87に僅かに没入するように配設されている。これにより、X軸検出センサ12の先端と上記の可動側X軸擬似位置決め面82とが、微小間隙を存して対面する。実施形態のX軸検出センサ12では、固定側金型2と可動側金型3とをX軸方向に正しく位置決めした型締め状態で、可動側X軸擬似位置決め面82との距離を計測し、これをX軸基準値としてX軸方向の位置ずれの評価を行うようになっている(詳細は後述する)。
【0045】
同様に、Y軸検出センサ13は、Y軸固定側ブロック42Bの鉛直検出片65に形成したセンサ取付孔87に横向き(水平)に且つ嵌合するように取り付けられている。この場合も、Y軸検出センサ13は、0.1μm以下の検出精度で距離測定が可能な近接センサで構成されており、その先端がセンサ取付孔87に僅かに没入するように配設されている。これにより、Y軸検出センサ13の先端と上記の可動側Y軸擬似位置決め面83とが、微小間隙を存して対面する。実施形態のY軸検出センサ13では、固定側金型2と可動側金型3とをY軸方向に正しく位置決めした型締め状態で、可動側Y軸擬似位置決め面83との距離を計測し、これをY軸基準値としてY軸方向の位置ずれの評価を行うようになっている(詳細は後述する)。
【0046】
すなわち、X軸検出センサ12は、固定側金型2および可動側金型3におけるガイドピン24およびガイドピンブッシュ34の相互のX軸方向の位置決め面(実際には周面)に代えて、X軸固定側ブロック42AとX軸可動側ブロック46Aとの相互の擬似X軸位置決め面80、82におけるそれぞれ微小離間距離を検出することにより、上記のX軸方向の位置ずれを検出する。
同様に、Y軸検出センサ13は、固定側金型2および可動側金型3におけるガイドピン24およびガイドピンブッシュ34の相互のY軸方向の位置決め面(実際には周面)に代えて、Y軸固定側ブロック42BとY軸可動側ブロック46Bとの相互の擬似Y軸位置決め面81、83におけるそれぞれ微小離間距離を検出することにより、上記のY軸方向の位置ずれを検出する。
【0047】
モニター8では、3つの平行検出センサ11の検出結果に基づいて、固定側金型2と可動側金型3との平行度を評価する。また、X軸検出センサ12の検出結果に基づいて、固定側金型2と可動側金型3とのX軸方向の位置ずれを評価すると共に、Y軸検出センサ13の検出結果に基づいて、固定側金型2と可動側金型3とのY軸方向の位置ずれを評価する。そして、モニター8のディスプレイ9にこれら評価結果を表示するようにしている。また、「NG」の場合には、音声による警告を報知するようにしている。
【0048】
例えば、各平行検出センサ11において、成形されたプラスチックレンズBの光学性能を考慮した厚み方向の許容誤差が、予め上記の平行基準値に対する許容範囲として設定されている。したがって、少なくとも1の平行検出センサ11の計測結果がこの許容範囲を超えたときに、「NG」となる。モニター8のディスプレイ9には、平行度について、単に「良否」を表示するようにしてもよいし、計測結果と許容範囲とを併せて表示してもよい。また、射出成形金型1の模式図を用いてどの部分(どの平行検出センサ11)が「NG」であるかを、表示するようにしてもよい。すなわち、型開きがどの部分で発生しているかを表示するようにしてもよい。
【0049】
また、X軸検出センサ12において、成形されたプラスチックレンズBの光学性能を考慮した光軸のX軸方向のずれ量の許容誤差が、予め上記のX軸基準値に対する許容範囲として設定されている。したがって、X軸検出センサ12の計測結果がこの許容範囲を超えたときに、「NG」となる。同様に、Y軸検出センサ13において、成形されたプラスチックレンズBの光学性能を考慮した光軸のY軸方向のずれ量の許容誤差が、予め上記のY軸基準値に対する許容範囲として設定されている。したがって、Y軸検出センサ13の計測結果がこの許容範囲を超えたときに、「NG」となる。
【0050】
なお、X軸方向およびY軸方向の位置ずれにおいては、それぞれ逆向き方向のX軸検出センサ12およびY軸検出センサ13を更に設け(手前右側)、マイナス方向のずれ量も検出することが、より好ましい。もっとも、固定側金型2と可動側金型3とをX・Y軸方向に正しく位置決めした型締め状態で、X・Y軸方向の相互の擬似位置決め面80、82、81、83をそれぞれ僅かに離しおいて、両基準値からのプラス・マイナスの許容範囲をそれぞれ設定し、X・Y軸方向についてプラス・マイナス両方向の位置ずれを評価するようにしてもよい。
【0051】
以上のように、本実施形態によれば、固定側金型2と可動側金型3との平行度、並びにX軸方向および/またはY軸方向への位置ずれを確実に検出することができる。結果として、事前に両金型2、3の型締めの不具合に基づくレンズ成形ミスを防止することができ、成形されるレンズの歩留りを向上させることができる。また、固定側ブロック4および可動側ブロック5を用いて、平行検出センサ11、X軸検出センサ12およびY軸検出センサ13を設置するようにしているため、既存の射出成形金型にも平行度検出手段6および位置ずれ検出手段7を組み込むことができる。なお、上記の検出は、両金型2、3および平行検出センサ11の熱膨張を考慮して、常に一定の温度下で実施することが、好ましい。
【0052】
また、本実施形態においては、平行検出センサ11を各第1固定側ブロック41に設けるようにしたが、これを各第1可動側ブロック45に設けてもよい(両ブロック41、45を兼用)。同様に、各検出センサ12、13を各可動側ブロック47、48に設けてもよい。また、相互の擬似接合面51、53および相互の擬似位置決め面80、82、81、83は、型締め状態で離間している構造であってもよい。
【0053】
次に、図3を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。この実施形態では、3つの平行検出センサ11を固定側金型2の固定側金型本体21に直接取り付け、X軸検出センサ12およびY軸検出センサ13を、可動側金型3の可動側金型本体31に直接取り付けるようにしている。具体的には、3つの平行検出センサ11は、三角形を為すように相互に離間させて、すなわち固定側金型本体21の左隅、右隅および後部中央に埋め込むように設けられている。各平行検出センサ11は、固定側金型本体21に形成した「L」字状のセンサ取付孔87に挿入するようにして、上向きに取り付けられている。
【0054】
また、X軸検出センサ12は、可動側金型3の手前左隅に設けたガイドピンブッシュ34に対応して設けられており、ガイドピンブッシュ34とY軸方向において同位置となるように可動側金型本体31に埋め込まれ、同様にY軸検出センサ13は、このガイドピンブッシュ34とY軸方向において同位置となるように可動側金型本体31に埋め込まれている。X軸検出センサ12は、可動側金型本体31の左側面からガイドピンブッシュ34の位置までX軸方向に穿孔したセンサ取付孔87に挿入するようにして、横向きに取り付けられている。同様に、Y軸検出センサ13は、可動側金型本体31の前面からガイドピンブッシュ34の位置までX軸方向に穿孔したセンサ取付孔87に挿入するようにして、横向きに取り付けられている。
【0055】
第1実施形態と同様に、各平行検出センサ11は、固定側金型本体21の固定側接合面50と可動側金型本体31の可動側接合面52の微小離間距離を検出することによって、型締めした両金型2、3の平行度を検出する。また、X軸検出センサ12およびY軸検出センサ13は、それぞれ、ガイドピン24とガイドピンブッシュ34とのX軸方向およびY軸方向における相互の位置決め面(周面)の微小離間距離を検出することによって、型締めした両金型2、3間のX軸方向およびY軸方向の位置ずれを検出する。
【0056】
以上のように、第2実施形態によれば、平行検出センサ11、並びにX軸検出センサ12およびY軸検出センサ13を設けることによって、両金型2、3を精度よく型締めすることができる。結果として、事前に両金型2、3の型締めの不良に基づくレンズ成形ミスを防止し、成形されるレンズの歩留りを向上させることができる。なお、この実施形態においても、平行検出センサ11を可動側金型本体31に設けて同検出を行う構成を採ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】(a)は本発明の一実施形態に係る射出成形金型の平面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る射出成形金型の全体を示す構成図である。
【図3】(a)は本発明の第2実施形態に係る射出成形金型の平面図、(b)は同金型の断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1:射出成形金型 2:固定側金型 3:可動側金型 4:固定側ブロック 5:可動側ブロック 6:平行度検出手段 7:位置ずれ検出手段 8:モニター 11:平行検出センサ 12:X軸検出センサ 13:Y軸検出センサ 24:ガイドピン 34:ガイドピンブッシュ 41:第1固定側ブロック 42:第2固定側ブロック 43:X軸固定側ブロック 44:Y軸固定側ブロック 45:第1可動側ブロック 46:第2可動側ブロック 47:X軸可動側ブロック 48:Y軸可動側ブロック 50:固定側接合面 51:固定側擬似接合面 52:可動側接合面 53:可動側擬似接合面 80:固定側X軸擬似位置決め面 81:固定側Y軸擬似位置決め面 82:可動側X軸擬似位置決め面 83:可動側Y軸擬似位置決め面 A:レンズ成形品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側金型および可動側金型の相互の接合面を突き合せると共に、前記接合面内において、X軸方向およびこれに直交するY軸方向を位置決めする相互の位置決め部を係合させることにより、前記固定側金型と前記可動側金型との型締めを行う射出成形金型であって、
型締めした前記固定側金型および前記可動側金型における前記相互の接合面の平行度を検出する平行度検出手段を、備えたことを特徴とする射出成形金型。
【請求項2】
前記平行度検出手段は、前記固定側金型および前記可動側金型のいずれか一方に設けられ、前記接合面内において相互に離間して配設した少なくとも3つの平行検出センサを有し、
前記各平行検出センサは、前記相互の接合面の微小離間距離を検出することを特徴とする請求項1に記載の射出成形金型。
【請求項3】
前記固定側金型の側面に添設した第1固定側ブロックと、
前記可動側金型の側面に添設した第1可動側ブロックと、を更に備え、
前記第1固定側ブロックおよび前記第1可動側ブロックは、前記型締め状態で相互に接合する擬似接合面をそれぞれ有し、
前記平行度検出手段は、前記固定側金型および前記可動側金型の相互の接合面に代えて、前記第1固定側ブロックおよび前記第1可動側ブロックの相互の擬似接合面の平行度を検出することを特徴とする請求項1に記載の射出成形金型。
【請求項4】
前記平行度検出手段は、前記第1固定側ブロックおよび前記第1可動側ブロックのいずれか一方に設けられ、前記擬似接合面内において相互に離間して配設した少なくとも3つの平行検出センサを有し、
前記各平行検出センサは、前記相互の擬似接合面の微小離間距離を検出することを特徴とする請求項3に記載の射出成形金型。
【請求項5】
前記各平行検出センサは、近接センサで構成されていることを特徴とする請求項2または4に記載の射出成形金型。
【請求項6】
型締めした前記固定側金型および前記可動側金型における前記相互の位置決め部の、X軸方向の位置ずれおよびY軸方向の位置ずれを検出する位置ずれ検出手段を、更に備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の射出成形金型。
【請求項7】
前記位置ずれ検出手段は、
前記固定側金型の位置決め部および前記可動側金型の位置決め部のいずれか一方に設けられ、前記相互の位置決め部のX軸方向の位置ずれを検出するX軸検出センサと、
前記固定側金型の位置決め部および前記可動側金型の位置決め部のいずれか一方に設けられ、前記相互の位置決め部のY軸方向の位置ずれを検出するY軸検出センサと、を有し、
前記X軸検出センサは、前記相互の位置決め部のX軸方向における相互の位置決め面の微小離間距離を検出し、
前記Y軸検出センサは、前記相互の位置決め部のY軸方向における相互の位置決め面の微小離間距離を検出することを特徴とする請求項6に記載の射出成形金型。
【請求項8】
前記固定側金型の側面に添設した第2固定側ブロックと、
前記可動側金型の側面に添設した第2可動側ブロックと、を更に備え、
前記第2固定側ブロックおよび前記第2可動側ブロックは、前記型締め状態で相互に係合する擬似位置決め部をそれぞれ有し、
前記位置ずれ検出手段は、前記固定側金型および前記可動側金型における前記相互の位置決め部に代えて、前記第2固定側ブロックおよび前記第2可動側ブロック相互の擬似位置決め部の、X軸方向の位置ずれおよびY軸方向の位置ずれを検出することを特徴とする請求項6に記載の射出成形金型。
【請求項9】
前記位置ずれ検出手段は、
前記第2固定側ブロックの擬似位置決め部および前記第2可動側ブロックの擬似位置決め部のいずれか一方に設けられ、前記相互の擬似位置決め部のX軸方向の位置ずれを検出するX軸検出センサと、
前記第2固定側ブロックの擬似位置決め部および前記第2可動側ブロックの擬似位置決め部のいずれか一方に設けられ、前記相互の擬似位置決め部のY軸方向の位置ずれを検出するY軸検出センサと、を有し、
前記X軸検出センサは、前記相互の擬似位置決め部のX軸方向における相互の擬似位置決め面の微小離間距離を検出し、
前記Y軸検出センサは、前記相互の擬似位置決め部のY軸方向における相互の擬似位置決め面の微小離間距離を検出することを特徴とする請求項8に記載の射出成形金型。
【請求項10】
前記X軸検出センサおよび前記Y軸検出センサは、それぞれ近接センサで構成されていることを特徴とする請求項7または9に記載の射出成形金型。
【請求項11】
請求項6ないし10のいずれかに記載の射出成形金型と、
前記平行度検出手段および前記位置ずれ検出手段の検出結果に基づいて前記固定側金型と前記可動側金型との型締めが良好に行われているか否かを評価する評価手段と、を備えたことを特徴とする射出成形金型の型ずれ検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−162102(P2008−162102A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353404(P2006−353404)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(503295806)株式会社ナノテックス (4)
【Fターム(参考)】