説明

導体形成シート及び導体形成シートを用いた配線板の製造方法

【課題】フォトリソグラフィーにより配線基板上に簡便に配線パターンを形成する事ができると共に、電子部品と基板との接合によって生じる応力を低減し、電子部品や配線基板のクラックや接合部分の剥離の発生を防止する配線板を形成するための導体形成シートを提供する。また、その導体形成シートを用いた配線板の製造方法を提供する。
【解決手段】導体形成シート10として、銅を含有し、厚みが1μm以上1mm以下で光透過率が1%以上の多孔質金属シート1を備え、前記多孔質金属シート1の孔部にはフォトレジストが充填されると共に、前記多孔質金属シート1の両面には厚みが1μm以上のフォトレジスト層2が形成されているものを作成する。また、この導体形成シート10を用いて、フォトリソグラフィー処理とエッチング処理をすることにより、所望の配線パターンを有する導体回路が形成された配線板を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板上に配線パターンを形成するための導体形成シート、及び、その導体形成シートを用いた配線板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ノートPC、携帯電話、デジタルビデオカメラなど電子・電気機器の小型化、軽量化、多機能化の進展に伴い、これら機器に組み込まれる半導体集積回路用基板として多層配線基板が多く用いられている。そして、これらの多層配線基板においては、回路パターンの細線化や高密度化、また基板全体の薄型化や高多層化の要望が強まっており、その要望に応えるため、プリント基板上に絶縁層と配線層を交互に形成することで微細な配線を形成することができる樹脂付銅箔を使用するビルドアップ工法が知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
樹脂付銅箔で回路を形成する場合、樹脂付銅箔を多層配線板に張り合わせ加熱加圧して成形し、銅箔にドライフィルムをラミネートし、フォトリソグラフィーによりパターンを形成した後、銅箔をエッチングして回路を形成する方法が一般的に使用されている。一方、それらのビルドアップ配線板にフリップチップ型の半導体装置やチップサイズパッケージ(CSP)等のような面実装型の電子部品を実装した場合、配線板と電子部品との熱膨張係数が異なることから、それらの間で生じた熱応力が原因となって半導体素子や実装基板にクラックを発生させたり、配線板と半導体素子とのはんだ接合部において剥離を引き起こしたりするといった問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、半導体素子を搭載するパッケージ側に熱応力を緩和する緩衝部分を設け、半導体素子に過大な応力を与えないようにする方法が知られている。そのような方法として、例えば、エラストマー等のフィルム形態の緩衝材によって形成した緩衝層を介して半導体素子を基板に搭載する方法(特許文献2)や、応力を緩和するために多孔質基材フィルムを使用する方法(特許文献3)などが知られている。
【特許文献1】国際公開第2006/028207号パンフレット
【特許文献2】特開2001−298272号公報
【特許文献3】特開2003−298196号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、熱応力を緩和するために上記のような緩衝層やフィルムなどの緩衝部分を設けた場合でも、半導体素子等の電子部品や配線基板との接合部分における接着性が十分でないため剥離が起ったり、熱応力を緩衝部分が十分に吸収できずに電子部品や配線基板にクラックが生じたりすることがあり、上記のような問題を十分には解決できなかった。また、配線パターンの形成と緩衝部分の形成とを別の工程で行えば作業が複雑化し、電子部品が実装された配線板を簡単に製造することができなかった。
【0006】
本発明は、フォトリソグラフィーにより配線基板上に簡便に配線パターンを形成する事ができると共に、電子部品と基板との接合によって生じる応力を低減し、電子部品や配線基板のクラックや接合部分の剥離の発生を防止する配線板を形成するための導体形成シートを提供すること、及び、その導体形成シートを用いた配線板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る導体形成シート10は、銅を含有し、厚みが1μm以上1mm以下で光透過率が1%以上の多孔質金属シート1を備え、前記多孔質金属シート1の孔部にはフォトレジストが充填されると共に、前記多孔質金属シート1の両面には厚みが1μm以上のフォトレジスト層2が形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に係る導体形成シート10は、上記構成に加え、上記多孔質金属シート1が、銅粉末及び気体を含む気孔形成体と結合用樹脂とで形成されたシートを脱脂及び焼結してなる焼結金属又は発泡金属であって、その気孔率が25%以上99%未満であると共に、その孔径が0.1μm以上1000μm以下であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に係る導体形成シート10は、上記構成に加え、上記多孔質金属シート1が、ステンレス箔上にフォトレジスト膜を形成し、当該フォトレジスト膜をフォトリソグラフィー処理することによりレジストからなる微細円柱を形成し、次いでステンレス箔に銅電気めっきを行った後、このステンレス箔を剥離することにより銅箔を形成し、さらに銅箔に残存するレジストを除去してなる多孔質銅箔であって、その開孔率が10%以上90%未満であると共に、その孔径が0.1μm以上1000μm以下であることを特徴とするものである。
【0010】
請求項4に係る導体形成シート10は、上記構成に加え、上記多孔質金属シート1の両面に形成された上記フォトレジスト層2の一方の層が、光硬化の後、アルカリ溶液により除去することが可能な光硬化性樹脂組成物により形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5に係る導体形成シート10は、上記構成に加え、上記多孔質金属シート1の両面に形成された上記フォトレジスト層の少なくとも他方の層が、ポリイミド樹脂又はエポキシ樹脂を含んでいることを特徴とするものである。
【0012】
請求項6に係る導体形成シート10は、上記構成に加え、上記フォトレジスト層2の他方の層が、粒径1000μm以下のはんだ粒子を含有することを特徴とするものである。
【0013】
請求項7に係る配線板の製造方法は、上記構成の導体形成シート10と配線基材11とをラミネートし、配線パターン状に光照射することによりフォトレジストを光硬化させ、未硬化のフォトレジストを現像により除去し、露出した部分の多孔質金属シート1をエッチングで除去して多孔質金属シート1を配線パターン状にすることにより導体回路を形成する工程を含むことを特徴とするものである。
【0014】
請求項8に係る配線板の製造方法は、上記構成の導体形成シート10を配線パターン状に光照射することによりフォトレジストを光硬化させ、未硬化のフォトレジストを現像により除去し、ポリイミド樹脂又はエポキシ樹脂を含んだフォトレジスト層2が配線基材11と接するように導体形成シート10を配線基材11に重ね、加熱して前記フォトレジスト層2を熱硬化させて導体形成シート10と配線基材11を接着し、露出した部分の多孔質金属シート1をエッチングで除去して多孔質金属シート1を配線パターン状にすることにより導体回路を形成する工程を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に係る導体形成シートによれば、多孔質金属シートが光透過性を有することにより、光照射によって導体形成シートの裏側まで光が透過するので、配線基材との接着面である裏面までフォトレジストを光硬化させることができ、レジストの形成と共に配線基材との接着を行うことができる。また、光硬化させた多孔質金属シートの表面に配線パターン状のレジストが形成されることにより、レジストが形成されていない部分の金属をエッチングにより除去することができるので、微細な配線パターンを簡単に形成することができる。さらに、導体シートにより形成された導体回路はフォトレジストに由来する樹脂を含んだ多孔質の金属材質でできており、孔部に存在する樹脂成分が孔部の変形を妨げず、熱応力により金属が変形しようとする場合でも孔部が変形することにより応力を緩和して導体回路自体の変形を抑えることができるので、電子部品や配線基材のクラックや接合部分の剥離の発生を防止することができる。
【0016】
請求項2に係る導体形成シートによれば、多孔質金属シートの光透過性を高めることができ、多孔質金属シートの裏面側まで光硬化を確実に行うことができる。
【0017】
請求項3に係る導体形成シートによれば、多孔質金属シートの光透過性を高めることができ、多孔質金属シートの裏面側まで光硬化を確実に行うことができる。
【0018】
請求項4に係る導体形成シートによれば、フォトレジスト層の一方の層が、光硬化の後、アルカリ溶液により除去することが可能な光硬化性樹脂組成物により形成されていることにより、このフォトレジスト層を配線基材とは反対側に配置すれば、銅をエッチングして所望の配線パターンの導体回路を形成した後、導体回路の上に残存するフォトレジスト層をアルカリ溶液により簡単に除去することができる。そのため、レジストを機械加工等で削るなどの作業を行うことなく導体回路を露出させることができ、半導体素子等の電子部品の実装に適した配線板を簡単に得ることができる。
【0019】
請求項5に係る導体形成シートによれば、上記多孔質金属シートの両面に形成された上記フォトレジスト層の少なくとも他方の層が、ポリイミド樹脂又はエポキシ樹脂を含んでいることにより、このフォトレジスト層を配線基材側に配置すれば、これらの樹脂が加熱により硬化して配線基材と導体回路との接着性を向上させることができるので、配線基材の接合部分の剥離の発生をさらに防止することができる。
【0020】
請求項6に係る導体形成シートによれば、上記フォトレジスト層の他方の層が粒径1000μm以下のはんだ粒子を含んでいることにより、導体形成シートによって形成される導体回路と配線基材上の導体や電子部品とを確実に導通させることができる。また、粒径の小さいはんだ粒子が加熱により溶融された後、配線基材や電子部品と固着することにより導電回路との接着を強固にし、電子部品や配線パターンの接合部分の剥離の発生をさらに防止することができる。
【0021】
請求項7に係る配線板の製造方法によれば、請求項1〜6のいずれかに記載の導体形成シートを用いて配線板を製造することにより、光照射によって導体形成シートの裏側まで光が透過して配線基材との接着面である裏面までフォトレジストを光硬化させることができ、レジストの形成と共に配線基材との接着を行うことができる。また、レジストが形成されていない部分の多孔質金属シートをエッチングにより除去することができるので、微細な配線パターンを簡単に形成することができる。また、導体シートにより形成された導体回路はフォトレジストに由来する樹脂を含んだ多孔質の金属材質でできており、孔部に存在する樹脂成分が孔部の変形を妨げず、熱応力により金属が変形しようとする場合でも孔部が変形することにより応力を緩和して導体回路自体の変形を抑えることができるので、電子部品や配線基材のクラックや接合部分の剥離の発生が防止された配線板を製造することができる。
【0022】
請求項8に係る配線板の製造方法によれば、請求項5又は6に記載の導体形成シートを用いて配線板を製造することにより、光照射によって導体形成シートの裏側まで光が透過して配線基材との接着面である裏面までフォトレジストを光硬化させることができる。また、ポリイミド又はエポキシ樹脂を含んだフォトレジスト層が熱硬化して配線基材に接着されているので、導体回路と配線基材との接着性を向上することができる。また、レジストが形成されていない部分の多孔質金属シートをエッチングにより除去することができるので、微細な配線パターンを簡単に形成することができる。また、導体シートにより形成された導体回路はフォトレジストに由来する樹脂を含んだ多孔質の金属材質でできており、孔部に存在する樹脂成分が孔部の変形を妨げず、熱応力により金属が変形しようとする場合でも孔部が変形することにより応力を緩和して導体回路自体の変形を抑えることができるので、電子部品や配線基材のクラックや接合部分の剥離の発生が防止された配線板を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0024】
図1は本発明の導体形成シート10の一例を示す断面図であり、光硬化性樹脂を含むフォトレジストが孔部に充填された多孔質金属シート1と、フォトレジストによって形成されたフォトレジスト層2とが示されている。
【0025】
多孔質金属シート1は、導体回路の形成に適した銅を含んでいる箔状、シート状又はフィルム状のシートであり、金属組成としては銅を90%以上含有しているのが好ましい。この多孔質金属シート1は、単独又は連結された孔部により厚さ方向に貫通した孔を多数有しているものである。多孔質金属のシートの厚みは1μm以上1mm以下であり、光透過率は1%以上、好ましくは10%以上である。厚みが1μm未満であると薄すぎてその取り扱いが難しくなり、1mmを超えると厚さ方向の貫通孔が形成されにくくなるため樹脂の光硬化が十分でなくなると共に、シートの柔軟性が低下して配線基材11へ樹脂が接合しない部分が発生するため実用的でなくなる。また、光透過率が1%未満であると貫通する孔が微量になり、透過光での硬化接合を十分にできなくなる。なお、光透過率の上限は実質上85%である。ここで、光透過率は、可視光線の透過率であり、例えば、日立分光光度計U−4000を用いて、スリット8nm、波長530nmの設定により測定することができる。
【0026】
このような多孔質金属シート1は、公知の製造方法により得ることができ、そのような方法として、例えば、電析によって平均粒径1〜50μmの銅粒子を平面方向に互いに接合することにより、孔径1〜20μm、気孔率10〜50%の多孔質銅箔を形成する方法が挙げられる。しかしながら、本発明においては光透過率がさらに向上された次の多孔質金属シート1が好ましく用いられるものである。
【0027】
多孔質金属シート1の好ましい第1の態様としては、銅粉末及び気体を含む気孔形成体と結合用樹脂とで形成されたシートを脱脂及び焼結した焼結金属又は発泡金属である。そして、その気孔率が25%以上99%未満であると共に、その孔径が0.1μm以上1000μm以下であることが好ましい。なお、気孔率とは、孔部によって多孔質金属シート1中にできた空隙の体積率のことである。気孔率が25%未満では多孔質金属シート1の光透過率が低くなるおそれがあり、一方、気孔率が99%を超えると多孔質金属シート1の強度が取り扱いに十分なものではなくなるおそれがある。また、孔径が0.1μm未満では光透過性が悪くなるとともに十分な気孔率を得ることができなくなるおそれがあり、一方、孔径が1000μmを超えると、本発明の導体形成シート10により形成される導体回路において十分な導通を得ることが困難になるおそれがある。
【0028】
この多孔質金属シート1を形成する焼結金属としては、金属粉末と有機バインダー及び膨張材を加圧成型し、ついでこれを焼結したものや、金属粉末とバインダー及び樹脂粒を成形し脱脂焼結を行うことにより得たものなどが例示される。また、発泡金属としては、金属粉末と界面活性剤と水溶性バインターと水とを混合し、これに発泡体として非水溶性有機溶剤を添加混合し、この混合された発泡性スラリーを加熱して発泡体とし、さらにこれを焼結することにより得たものなどが例示される。このようにして得た焼結金属及び発泡金属は、その気孔率が25%以上99%未満であると共に、その孔径が0.1μm以上1000μm以下である多孔質の金属となることが可能なものである。
【0029】
多孔質金属シート1の好ましい第2の態様としては、ステンレス箔上にフォトレジスト膜を形成し、このフォトレジスト膜をフォトリソグラフィー処理することによりレジストからなる微細円柱を形成し、次いでステンレス箔に銅電気めっきを行った後、このステンレス箔を剥離することにより銅箔を形成し、さらに銅箔に残存するレジストを除去して得られる多孔質の銅箔である。そして、その開孔率は10%以上90%未満であると共に、その孔径は0.1μm以上1000μm以下であるのが好ましい。なお、開孔率とは、銅箔の表面上に観察される空隙の面積率のことである。開孔率が10%未満では多孔質金属シート1の光透過率が低くなるおそれがあり、一方、開孔率が90%以上になると多孔質金属シート1の強度を取り扱うのに十分なものとすることができなくなるおそれがある。また、孔径が0.1μm未満では光透過性が悪くなるとともに十分な気孔率を得ることができなくなるおそれがあり、一方、孔径が1000μmを超えると、1mm以下の導体形成シート10により形成される導体回路において十分な導通が困難になるおそれがある。
【0030】
なお、この多孔質金属シート1を形成する際において、フォトレジスト膜は、セミアディティブ用のネガ型ドライフィルムをラミネートしたり、ネガ型フォトレジストを塗工乾燥したりすることにより形成することができる。また、微細円柱は、フォトリソグラフィー処理により形成することができ、具体的には、微細多円のネガマスクを用いて露光してフォトレジストを光硬化させた後、現像により未硬化のフォトレジストを除去することにより形成することができる。また、銅箔に残存するレジストの除去は、加熱脱脂することにより行うことができる。
【0031】
多孔質金属シート1の好ましいその他の態様としては、銅箔にブラスト加工、エッチング加工、放電加工、パルスレーザー加工により多数の貫通孔を形成して多孔質の金属とする方法により得られるものである。
【0032】
以上のようにして得られた多孔質金属シート1は、光が導体形成シート10の裏側まで透過すると共に、多数の孔部が形成されていることにより、シートに応力がかけられた場合でも、その孔部が変形して外部からの応力を吸収することが可能なものである。
【0033】
フォトレジストは、光硬化性の樹脂を含有した樹脂組成物であり、光硬化性樹脂組成物として一般的に知られているものを用いることができる。すなわち、可視光から紫外光までの間で適宜設定された波長の光照射により硬化反応をする樹脂を用いることができ、活性エネルギー線で硬化反応を開始できるものであればよい。
【0034】
また、このフォトレジストは、熱硬化性樹脂も含有することが好ましい。熱硬化性樹脂を含有することにより、加熱により硬化を促進させて配線基材11との接着性を向上させることができる。熱硬化性樹脂としては、ポリイミド、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂を配合した樹脂組成物などを用いることができ、このうち、ポリイミド樹脂又はエポキシ樹脂が含まれた樹脂組成物を用いるのが好ましい。このようなポリイミド樹脂又はエポキシ樹脂を含んだフォトレジストにより、多孔質金属シート1の両面に形成された上記フォトレジスト層2の少なくとも一方の層、特に、配線基材11に重ねられる側の層を形成することによって、導体形成シート10と配線基材11との接着性が向上するものである。
【0035】
エポキシ樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂等を挙げることができる。
【0036】
フォトレジストを形成する樹脂組成物には、さらに、充填材を含有することができる。充填材を含有することにより、照射された光を散乱させることができるので、光照射された周辺部のフォトレジストも硬化させることができ、配線基材11との接着性をさらに向上させることができる。充填材としては、シリカ、微粉状酸化ケイ素、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、雲母粉、テフロン(登録商標)粉等などを用いることができる。さらに、フォトレジストには、光重合開始剤、熱硬化促進剤、着色用染料、発色用染料、発色開始剤などの成分を含有させることができる。このフォトレジストは、室温において多孔質金属シート1の柔軟性に追従しうるようなものであればよく、また、配線板を製造するために、配線基材11との密着性、エッチング耐性、電気絶縁性、はんだ耐熱性を有するものであればよい。
【0037】
多孔質金属シート1の孔部に充填されるフォトレジストと、フォトレジスト層2を形成するフォトレジストとは、同じ樹脂組成物であってもよく、別の樹脂組成物であってもよい。このうち、配線基材11側に配置されるフォトレジスト層2は、粒径1000μm以下のはんだ粒子を含有するのが好ましい。これにより、導体形成シート10によって形成される導体回路と配線基材11上の導体や電子部品とを確実に導通させることができると共に、はんだの溶融固化によって、配線基材11との接着性を向上させることができる。はんだ粒子の粒径が1000μmを超えると、フォトレジストの光硬化を妨げるおそれがある。はんだ粒子の粒径の下限は、実用上0.1μmである。はんだを構成する金属としては、スズや鉛が主成分である一般的なものを用いることができ、これに金、銀、銅などを適量含有させたものを用いることができる。なお、このフォトレジスト層2は、上述したように熱硬化性樹脂を含有するのが好ましい。
【0038】
一方、配線基材11側とは反対側に配置されるフォトレジスト層2は、光硬化の後、アルカリ溶液により除去することが可能な光硬化性樹脂組成物により形成されているのが好ましい。配線パターン部分以外の銅をエッチングにより除去した後に、アルカリ溶液によりレジストを剥離することができれば、機械加工等で削ることなくアルカリ溶液で簡単に導体回路を露出させることができ、配線板の製造を簡単に行うことができる。アルカリ溶液としてはアルカリ水溶液を用いることができ、そのpHは10〜11であるのが好ましい。pHがこの範囲より下ではレジストを十分に除去できなくなるおそれがある。一方、pHがこの範囲より上では配線板を腐食させるおそれがある。
【0039】
このようなフォトレジスト層2を形成する樹脂組成物としては、従来のプリント配線基板のパターニング用のドライフィルムに使用されている公知の重合性モノマーを使用することができる。例えば、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、その他スチレン系あるいは(メタ)アクリレート系等の種々のエチレン性不飽和化合物を使用することができ、具体的には、例えば、エチレンオキサイドを分子内に5〜20個含有する二官能(メタ)アクリル系モノマー;一分子中に水酸基を2個以上含有するエポキシ(メタ)アクリレート系化合物;エチレン性不飽和基を有する(メタ)アクリル系モノマー成分;2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート系化合物;(メタ)アクリレート官能性ウレタンオリゴマー;N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;イソホロンジイソシアネート等イソシアネート基含有不飽和化合物などが挙げられる。
【0040】
フォトレジスト層2の厚みは、1μm以上であることが好ましい。配線基材11側のフォトレジスト層2の厚みが1μm未満では、配線基材11との接着性が十分ではなくなる。また、配線基材11とは反対側のフォトレジストの厚みが1μm未満ではレジストの形成が十分ではなくなり、エッチングにより不要な銅を除去する際に、導体回路の銅もエッチングしてしまうおそれがある。このフォトレジスト層2の厚みの上限は500μmであるのが好ましい。フォトレジスト層2の厚みがこれよりも厚くなると、導体形成シート10を取り扱いにくくなるおそれがある。
【0041】
図2は、本発明の導体形成シート10の別の例を示す断面図であり、上述したようなアルカリ溶液で剥離が可能なフォトレジスト層2を有する導体形成シートが示されている。図2(a)の例では、フォトレジスト層2の一方が、剥離可能なフォトレジスト層2aとして形成されている。また、図2(b)の例では、フォトレジスト層2の一方が、剥離可能なフォトレジスト層2aとして形成されると共に、他方のフォトレジスト層2は、はんだ粒子を含むフォトレジスト層2bとして形成されている。
【0042】
図3は、導体形成シート10の作成方法の好ましい一例を示した説明図であり、図2(b)の導体形成シート10の作成される様子が示されている。この方法では、フォトレジストのワニス20に多孔質金属シート1を含浸させて孔部にフォトレジストを充填した後、キャリアシート3を用いてこの多孔質金属シート1の両面にフォトレジスト層2を形成している。
【0043】
具体的には、まず、図3(a)で示されるように、多孔質金属シート1をフォトレジストのワニス20に含浸させ、スクイズロール21で絞り出した後、乾燥することにより、フォトレジストが孔部に充填された多孔質金属シート1が得られる。このとき、フォトレジストの含浸性を向上させる為に、メタノールやエタノールのアルコール溶液に、エポキシシランカップリング剤やメルカプトシランカップリング剤等のシランカップリング剤を配合した処理液を用い、多孔質金属シート1を前処理してもよい。また、フォトレジストのワニス20は、前述の光硬化性樹脂、光硬化開始剤、熱硬化性樹脂、熱硬化促進剤、充填剤、はんだ粒子と、必要に応じて溶剤及び各種の添加剤とを配合し、ビーズミル等で均一に混合、溶解、分散等することで調製することができる。
【0044】
なお、ワニス20の溶剤としては、例えばアセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶剤、γ−ブチロラクトン等の有機溶剤類などを用いることができる。
【0045】
一方、図3(b)に示されるようにそれぞれのフォトレジスト層2を形成するためのフォトレジストが、それぞれのキャリアシート3に塗工される。そして、図3(c)に示されるように、多孔質金属シート1の一方の面にははんだ粒子を含有したフォトレジストのワニス20を塗工したキャリアシート3を配置し、他方の面には強アルカリ液により剥離可能なフォトレジストのワニス20を塗工したキャリアシート3を配置して、これらのキャリアシート3と多孔質金属シート1とをラミネート装置22でラミネートする。最後にキャリアシート3を剥離することにより、図2(b)のような導体形成シート10を作成することができる。
【0046】
このようにフォトレジストの含浸とキャリアシート3とを併用する方法によって導体形成シート10を形成することにより、フォトレジスト層2を形成するためのフォトレジストと、多孔質金属シート1に含浸させるフォトレジストとを異ならせるものとすることができ、配線基材11側のフォトレジスト層2では、熱硬化性樹脂やはんだ粒子を含有させて接着性と導電性を向上させ、その反対側のフォトレジスト層2では、アルカリ溶液により剥離可能な樹脂にしてエッチング工程後のレジストの除去を簡単にすることができる。
【0047】
また、導体形成シート10の別の作成方法として、フォトレジストのワニス20に多孔質金属シート1を含浸し、次いで、スクイズロール21等で過剰な液を絞り出し、所定の薬液を付着させて多孔質金属シート1の両面にフォトレジスト膜を形成した後、乾燥するだけの方法を用いてもよい。それにより、孔部にフォトレジストが充填されると共に、フォトレジスト層2が形成された導体形成シート10を簡単に得ることができる。また、多孔質金属シート1の両面に、フォトレジストのワニス20が塗工されたPETフィルム等のキャリアフィルム3を配置し、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター等の各種コーターやスクリーン印刷機にて表裏面からフォトレジストを転写塗工することにより、フォトレジストを多孔質金属の孔部へ充填しつつフォトレジスト層2を形成して、導体形成シート10を作成することもできる。
【0048】
このような方法により導体形成シート10を作成するためには、多孔質金属シート1は、長尺に形成された連続シートであることが好ましい。
【0049】
本発明は、さらに、このように形成された導体形成シート10を用いて、配線板を製造する方法に関するものである。
【0050】
図4は、本発明の配線板の製造方法の一例を示した説明図である。まず、表面に配線部12を有する配線基材11に図2(b)の導体形成シート10を重ねて、これをロールラミネート装置22や真空ラミネート装置にて加熱ラミネートする(図4(a)及び(b))。次いで、配線部12と接続されるように配線パターンが形成されたネガマスク23を配置し、露光装置で光照射パターニングし、現像を行う(図4(c)及び(d))。そして、露出された不要な部分の多孔質の銅を塩化第二銅などのエッチング液24で除去する(図4(e))。さらに、強アルカリ液で剥離可能なフォトレジスト層2aを剥離する(図4(f))。最後に、半導体素子13(Siチップ)と導体回路とを、はんだリフロー処理によりはんだ接合すると共に、加熱による樹脂の硬化促進を行うことにより、所定の配線パターンの導体回路を有し、半導体素子13が実装された配線板を得ることができる(図4(g)及び(h))。なお、はんだ接合は、半導体素子13に配置されたはんだ14に加えて、フォトレジスト層2bのはんだ粒子が溶融後固化することにより行われる。
【0051】
図5は、本発明の配線板の製造方法の別の一例を示した説明図である。まず、図2(a)の導体形成シート10に配線パターンが形成されたネガマスク23を配置し、露光装置で光照射パターニングし、現像を行う(図5(a)〜(c))。次いで、配線基材11にこの導体形成シート10を重ねて加熱成形装置25により加熱プレスすることにより導体形成シート10と配線基材11とを接着する(図5(d))。そして、露出された不要な部分の多孔質の銅を塩化第二銅などのエッチング液24で除去する(図5(e))。最後に、強アルカリ液で剥離可能なフォトレジスト層2aを剥離する(図5(f))。このようにして、所定の配線パターンの導体回路を有した配線板を得ることができる。なお、得られた配線板は、図4の場合と同様にさらに半導体素子13を実装することができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0053】
[実施例1:導体形成シート]
(フォトレジストAの調製)
次に示す化合物をビーズミルにて混合してフォトレジスト用ワニス20を調製し、フォトレジストAを得た。
・ビスフェノールF型エポキシアクリレート樹脂:40重量部
・光重合性モノマー:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:40重量部
・光重合開始剤:2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン):5重量部
テトラブロモビスフェノールAエポキシ:EPICLON 1121N(DIC株式会社製):20重量部
・イミダゾール系硬化剤:2E4MZ(四国化成工業社製):2重量部
・微粉シリカ(日本アエロジル株式会社製、商品名:アエロジルR972):5重量部
【0054】
(フォトレジストBの調製)
次に示す化合物をビーズミルにて混合してフォトレジスト用ワニス20を調製し、フォトレジストBを得た。なお、このフォトレジストBは、銅エッチング後、アルカリ溶液によって剥離可能なフォトレジストである。
・ビスフェノールFEO変性(n=2)ジアクリレート(東亜合成株式会社製アロニックスM−208):50重量部
・ビスフェノールAEO変性(m+n≒30)ジアクリレート(新中村化学工業株式会社製NKエステルA−BPE−30):50重量部
・ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製イルガキュア819):1重量部
【0055】
(多孔質金属シート)
発泡金属(光透過性多孔質銅箔:三菱マテリアル株式会社製)を用いた。この多孔質金属シート1の仕様は次の通りである。
・呼び孔径50μm(孔径0.1μm以上1000μm以下)
・気孔率:90%
・厚み:0.1mm
・光透過率:35%
【0056】
(導体形成シートの作成)
導体形成シート10として図2(a)に示されるようなシートを形成した。
【0057】
まず、多孔質金属シート1をフォトレジストAに含浸させた後、2本の金属のスクイズロール21に挟みながら引き上げて表面の樹脂を取り除き、熱風循環乾燥炉を用いて100℃で30分間乾燥して、フォトレジストAが含浸された多孔質金属シート1を得た。一方、キャリアフィルムとして25μm厚の離型PETフィルムを用い、このキャリアフィルムにフォトレジストAをバーコーターで塗工した後、80℃で10分間乾燥を行い膜厚5μmのフォトレジストA付きフィルムを得た。また、25μm厚のコロナ放電加工を施したPETフィルムにフォトレジストBをバーコーターで塗工した後、80℃で10分間乾燥を行い膜厚5μmのフォトレジストB付きフィルムを得た。
【0058】
次に、フォトレジストAが含浸された多孔質金属シート1の一方の面にフォトレジストA付きフィルムを配置し、このシートの他方の面にフォトレジストB付きフィルムを配置し、これらを120℃に加熱したロールラミネーターに通すことにより厚み50μmの配線基板用の導体形成シート10を得た。
【0059】
[実施例2:導体形成シート]
(フォトレジストCの作成)
フォトレジストAの100質量部と、はんだ粉(Sn−Ag−Cu、質量比96.5:3:0.5、三井金属鉱業株式会社製)100質量部とを混合し、3本ロールで混練してペースト状のフォトレジストCを得た。
【0060】
(多孔質金属シートの作成)
ステンレス基材として、SUS301(76%Fe,17%Cr,7%Ni)、調質3/4H、厚み100μm、大きさ15cm角のものを用いた。このステンレス基材の上に、セミアディティブ用ドライフィルム(ニチゴー・モートン株式会社製:ALPHONIT2025)を重ねた。この重ねられたドライフィルムに対して円径20μm、ピッチ50μmの連続パターンを有したガラスマスクを用いて露光を行った後、現像して、微細円柱のレジストを形成した。次に、電気銅めっき溶液で銅電気めっきを行い、20μmの厚みの銅箔を形成した。ステンレス基材を銅箔から剥離した後、銅箔を真空炉で500℃30分加熱し更に800℃で1時間熱処理を行い、銅箔に残存するレジストを除去した。これにより、光透過率18%、開孔率18%、平均孔径17μmの多孔質金属シート1を得た。
【0061】
(導体形成シートの作成)
導体形成シート10として図3に示されるようなシートを形成した。
多孔質金属シート1として上記により得た銅箔を用いた。また、実施例1のフォトレジストA付きフィルムの代わりにフォトレジストC付きフィルムを用いた。それ以外は実施例1と同様の方法により導体形成シート10を得た。
【0062】
[実施例3:導体形成シート]
実施例1の導体形成シート10において、フォトレジスト層2として多孔質金属シート1の一方の面にフォトレジストBを用い、他方の面にフォトレジストCを用いた。それ以外は、実施例1と同じ材料及び方法により導体形成シートを作成した。
【0063】
[実施例4:配線板の製造]
図4の方法にて、実施例3で得た導体形成シート10を用いて配線板の製造を行った。
配線基材11として、ガラスエポキシ基板(松下電工株式会社製:R−1705)の回路基板にビルドアップ多層用材料のプリプレグ(松下電工株式会社製:R−1551)を熱プレスで積層することにより得た絶縁基板を用いた。この配線基材11に実施例3で得た導体形成シート10を重ねて、真空ラミネーター(70℃、0.2MPa)にてラミネートした。次に、ネガマスク23に配線幅75μmで形成された所定の配線パターン部分に光照射することによりフォトレジストを光硬化させて焼付けた後、配線パターン部分以外の未硬化のフォトレジストを除去することにより、配線パターン状に形成されたレジストを現像した。このレジストの現像により、レジストが形成されていない部分には多孔質金属シート1に含まれている銅が露出された。そして、塩化第二銅溶液のエッチング液24で露出した銅をエッチングすることにより、配線パターン以外の部分の多孔質金属を除去した。続いて、50℃に加温した3%水酸化ナトリウム水溶液を剥離液として用いてフォトレジスト層2aを剥離した。さらに、180℃で30分間、加熱することにより、所定の配線パターンを有する導体回路が形成された配線板を得た。得られた配線板は断線がなく、平均配線幅70μmの配線パターンからなる導体回路を有していた。
【0064】
[実施例5:配線板の製造]
図5の方法にて、実施例1で得た導体形成シート10を用いて配線板の製造を行った。また、配線基材11は実施例4と同様の絶縁基板を用いた。
まず、配線幅75μmで所定の配線パターンとなるように導体形成シート10をマスキングし、この配線パターン部分に光照射することによりフォトレジストを光硬化させた後、配線パターン部分以外の未硬化のフォトレジストを除去することにより、配線パターン状に形成されたレジストを現像した。このレジスト現像された導体形成シート10を配線基材11に重ねて、180℃で30分間、加熱して配線基材11面側に残存するフォトレジスト層2を熱硬化させることにより導体形成シート10と配線基材11とを接着した。次に、塩化第二銅溶液のエッチング液24で、レジストが形成されずに露出している銅をエッチングすることにより、配線パターン以外の部分の多孔質金属を除去した。これにより、所定の配線パターンを有する導体回路が形成された配線板を得た。得られた配線板は断線がなく、平均配線幅70μmの配線パターンからなる導体回路を有していた。
【0065】
[実施例6:配線板の製造]
実施例2で得た導体形成シート10を用いて、実施例4と同じ材料及び方法にて、配線板を製造した。
【0066】
[比較例1]
配線基材11として、ガラスエポキシ基板(松下電工株式会社製 R−1705)の絶縁基板を用い、この配線基材11の上にビルドアップ多層用材料の樹脂付銅箔(厚み:18μm)を熱プレスすることにより積層して、表面に銅箔が形成された回路基板を得た。次に、銅箔の上にドライフィルムを重ねてラミネートし、フォトリソグラフィーによりパターンを形成した後、銅箔をエッチングすることにより、実施例4と同じ配線パターンを有する導体回路が形成された配線板を得た。
【0067】
[評価]
上記の実施例4〜6及び比較例1で得られた配線板を用い、リフロー硬化はんだ接合により半導体素子13を実装した。これらの実装化された配線板について、−55℃で30分、125℃で30分を1サイクルとする温度サイクル試験を500サイクル実施し、半導体素子13や配線板の剥離、配線基材11のクラック等の観察を行った。
【0068】
各実施例で得られた配線板は、上記温度サイクル試験において、剥離、クラック等の発生がないことを確認した。一方、比較例1で作製した配線基板は、上記温度サイクル試験において配線板の剥離やクラック等の発生があることを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の導体形成シートの一例を示す断面図である。
【図2】本発明の導体形成シートの別の例を示す断面図であり、(a)及び(b)はそれぞれ別の一例を示している。
【図3】本発明の導体形成シートの作成方法の一例を示す説明図である。(a)はワニス含浸工程、(b)はキャリアシート塗工工程、(c)はラミネート工程を示している。
【図4】本発明の配線板の製造方法の一例を示す説明図である。(a)〜(h)は配線板を製造する各工程を示している。
【図5】本発明の配線板の製造方法の別の一例を示す説明図である。(a)〜(f)は配線板を製造する各工程を示している。
【符号の説明】
【0070】
1 多孔質金属シート
2,2a,2b フォトレジスト層
10 導体形成シート
11 配線基材
12 配線部
13 半導体素子
20 ワニス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅を含有し、厚みが1μm以上1mm以下で光透過率が1%以上の多孔質金属シートを備え、前記多孔質金属シートの孔部にはフォトレジストが充填されると共に、前記多孔質金属シートの両面には厚みが1μm以上のフォトレジスト層が形成されていることを特徴とする導体形成シート。
【請求項2】
上記多孔質金属シートは、銅粉末及び気体を含む気孔形成体と結合用樹脂とで形成されたシートを脱脂及び焼結してなる焼結金属又は発泡金属であって、その気孔率が25%以上99%未満であると共に、その孔径が0.1μm以上1000μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の導体形成シート。
【請求項3】
上記多孔質金属シートは、ステンレス箔上にフォトレジスト膜を形成し、当該フォトレジスト膜をフォトリソグラフィー処理することによりレジストからなる微細円柱を形成し、次いでステンレス箔に銅電気めっきを行った後、このステンレス箔を剥離することにより銅箔を形成し、さらに銅箔に残存するレジストを除去してなる多孔質銅箔であって、その開孔率が10%以上90%未満であると共に、その孔径が0.1μm以上1000μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の導体形成シート。
【請求項4】
上記多孔質金属シートの両面に形成された上記フォトレジスト層の一方の層は、光硬化の後、アルカリ溶液により除去することが可能な光硬化性樹脂組成物により形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の導体形成シート。
【請求項5】
上記多孔質金属シートの両面に形成された上記フォトレジスト層の少なくとも他方の層は、ポリイミド樹脂又はエポキシ樹脂を含んでいることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の導体形成シート。
【請求項6】
上記フォトレジスト層の他方の層は、粒径1000μm以下のはんだ粒子を含有することを特徴とする請求項5に記載の導体形成シート。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の導体形成シートと配線基材とをラミネートし、配線パターン状に光照射することによりフォトレジストを光硬化させ、未硬化のフォトレジストを現像により除去し、露出した部分の多孔質金属シートをエッチングで除去して多孔質金属シートを配線パターン状にすることにより導体回路を形成する工程を含むことを特徴とする配線板の製造方法。
【請求項8】
請求項5又は6に記載の導体形成シートを配線パターン状に光照射することによりフォトレジストを光硬化させ、未硬化のフォトレジストを現像により除去し、ポリイミド樹脂又はエポキシ樹脂を含んだフォトレジスト層が配線基材と接するように導体形成シートを配線基材に重ね、加熱して前記フォトレジスト層を熱硬化させて導体形成シートと配線基材を接着し、露出した部分の多孔質金属シートをエッチングで除去して多孔質金属シートを配線パターン状にすることにより導体回路を形成する工程を含むことを特徴とする配線板の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−56179(P2010−56179A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217417(P2008−217417)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】