説明

導体線及びその製造方法、並びに太陽電池

【課題】 電子部品の不良の発生を大幅に軽減することができるとともに、複数の太陽電池素子を接続するインナーリード線として用いることにより、発電効率の低下を回避することができる導体線を提供する。
【解決手段】 太陽電池素子20の表裏面には、それぞれ、所定の接着剤30を介して銅線等の金属線を主材料とするインナーリード線40が接合される。インナーリード線40には、金属線の一端から所定長にわたって表面側にのみ接着剤30が塗布されるとともに、金属線の他端から所定長にわたって裏面側にのみ接着剤30が塗布される。接着剤30としては、異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film;ACF)が用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば複数の太陽電池素子等、複数の電子部品を電気的に接続する導体線及びその製造方法、並びにこの導体線をインナーリード線として用いた太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体の起電力効果を利用して光エネルギを直接電力に変換する太陽電池が知られている。太陽電池は、パネル状の太陽電池素子を複数接続して構成されているが、これら太陽電池素子を接続する導体線、すなわち、インナーリード線としては、通常、銅線表面にハンダコートしたものを使用している。すなわち、太陽電池素子は、フラックスを使用してインナーリード線にコートされたハンダと当該太陽電池素子上の銀(Ag)からなるバスバー電極とをハンダ接合することにより、当該インナーリード線と電気的に接続される。
【0003】
しかしながら、このようなハンダ接合における接合温度は、鉛フリーのハンダを用いた場合には240℃程度の高い温度となる。そのため、太陽電池にハンダ接合を適用した場合には、シリコン等からなる太陽電池素子と銅線からなるインナーリード線との熱収縮率の違いに起因して、これら太陽電池素子とインナーリード線との間に応力が発生する。したがって、太陽電池においては、かかる応力が太陽電池素子の反りや割れの原因となり、不良に繋がったり、太陽電池素子からバスバー電極が剥離したりする事態を招来していた。
【0004】
そこで、このような応力を軽減するために、インナーリード線を構成する銅線に代えて熱膨張係数が小さいインバー(Cu−36mass%Ni)を使用する技術が提案されている(例えば、特許文献1等参照。)。また、このようなインナーリード線の素材を変更する方法以外にも、接続の形状等を変えることにより、応力を小さくする等の工夫もなされている(例えば、特許文献2及び特許文献3等参照。)。さらに、インナーリード線ではないが、異方性導電膜を介して複数の電極を電気的に接続した太陽電池も提案されている(例えば、特許文献4等参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−54355号公報
【特許文献2】特開2005−191200号公報
【特許文献3】特開2005−302902号公報
【特許文献4】特開昭61−284973号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、熱膨張係数が小さいインバーを使用した従来の技術においては、銅線に比べてインバーの体積抵抗率が大きく、インナーリード線自体の抵抗値が高くなることから、太陽電池の発電効率を低下させるという問題があり、インナーリード線の形状や接続の形状を変更するのは実用的ではない。
【0007】
また、太陽電池素子とインナーリード線とをハンダ接合する従来の技術においては、ハンダの濡れ性を向上させるためにフラックスを必要とする。そのため、かかる技術においては、接合後にフラックスの洗浄が必要となり、この洗浄工程にも大きくタクトを取られてしまうという問題があり、また、フラックスの洗浄不足がある場合には、太陽電池素子の面上にフラックスが残存してしまうことから、発電効率の低下を招来するという問題もあった。
【0008】
なお、このような問題は、複数の太陽電池素子を電気的に接続するインナーリード線に限らず、導体線とは熱収縮率が異なることによって当該導体線との間に生じた熱膨張による応力に起因する不良が発生するような任意の複数の電子部品に共通して存在するものである。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、接続する電子部品の不良の発生を大幅に軽減することができる導体線、及びこのような導体線を極めて効率よく容易に製造することができる導体線の製造方法、並びにこの導体線をインナーリード線として用いることによって発電効率の低下を回避することができる太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は、導体線の接合に関して鋭意研究を重ねた結果、接合材料としてハンダに代わる新たな材料を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、上述した目的を達成する本発明にかかる導体線の製造方法は、複数の電子部品を電気的に接続する導体線の製造方法であって、上記導体線の主材料となる所定の金属線の一端から所定長にわたって表面側にのみ接着剤が塗布されるとともに、当該金属線の他端から所定長にわたって裏面側にのみ上記接着剤が塗布された状態となるように、上記主材料に上記接着剤を塗布する塗布工程と、上記塗布工程にて塗布された上記接着剤を乾燥又はBステージ化してフィルム化するフィルム化工程とを備えることを特徴としている。
【0012】
このような本発明にかかる導体線の製造方法においては、従来のハンダ接合ではなく、接着剤を介して電子部品と接合することが可能な導体線を、長尺状の金属箔のライン加工によって極めて効率よく容易に製造することができる。
【0013】
また、上述した目的を達成する本発明にかかる導体線は、複数の電子部品を電気的に接続する導体線であって、主材料となる所定の金属線と、上記金属線の一端から所定長にわたって表面側にのみ接着剤が塗布された第1の領域と、上記金属線の他端から所定長にわたって裏面側にのみ上記接着剤が塗布された第2の領域とから構成され、上記第1の領域及び上記第2の領域のそれぞれに塗布された上記接着剤が乾燥又はBステージ化してフィルム化されていることを特徴としている。
【0014】
このような本発明にかかる導体線は、従来のハンダ接合ではなく、接着剤を介して電子部品と接合することが可能となる。したがって、本発明にかかる導体線においては、従来のハンダ接合よりも低温度で電子部品と接合することができるため、熱膨張による応力を軽減することができ、弾性率が小さいことから低応力で接続することもでき、電子部品の不良の発生を大幅に軽減することができる。特に、本発明にかかる導体線は、太陽電池素子との接合用のインナーリード線として用いることにより、従来のハンダ接合よりも低温度で太陽電池素子と接合することができるため、太陽電池の発電効率の低下を回避することができる。
【0015】
さらに、上述した目的を達成する本発明にかかる太陽電池は、所定の規則にしたがって配列された複数の太陽電池素子と、隣接する上記太陽電池素子を電気的に接続する導体線としてのインナーリード線とを備え、上記インナーリード線は、所定の接着剤を介して、上記太陽電池素子と接合されていることを特徴としている。
【0016】
このような本発明にかかる太陽電池は、従来のハンダ接合ではなく、接着剤を介して太陽電池素子とインナーリード線とを接合することから、従来のハンダ接合よりも低温度で太陽電池素子と接合することができる。したがって、本発明にかかる太陽電池は、熱膨張による応力を軽減することができ、弾性率が小さいことから低応力で接続することもでき、太陽電池素子の不良の発生を大幅に軽減することができるとともに、発電効率の低下を回避することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電子部品の不良の発生を大幅に軽減することができ、特に電子部品としての太陽電池素子との接合用のインナーリード線として用いることにより、太陽電池の発電効率の低下を回避することができる。また、本発明によれば、このような導体線を極めて効率よく容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
この実施の形態は、半導体の起電力効果を利用して光エネルギを直接電力に変換する太陽電池である。特に、この太陽電池は、複数のパネル状の太陽電池素子と、これら太陽電池素子を電気的に接続する導体線としてのインナーリード線とを、従来のハンダ接合ではない方法で接合したものである。
【0020】
太陽電池は、例えば図1に断面図を示すように、所定のアルミニウムフレーム11に支持された、受光面となる透明強化ガラス12と、耐候性フィルム13との間に、エチレン・酢酸ビニル共重合体(Ethylene-Vinyl Acetate;EVA)等の透明樹脂14を埋め込み、この透明樹脂14内に複数の太陽電池素子20が所定の規則にしたがって配列されて構成される。
【0021】
太陽電池素子20は、概略的には、図2に断面図を示すとともに、図3に斜視図を示すように、シリコン等の半導体基板21の表面上に、銀(Ag)からなる集電用のフィンガー電極22及び出力取り出し用のバスバー電極23が同一層で互いに直交するように形成されて構成される。なお、同図においては、太陽電池素子20の表面側の断面を示しているが、太陽電池素子20の裏面側には、特に図示しないが、所定の電極が形成されている。
【0022】
また、このような太陽電池素子20の表裏面には、それぞれ、バスバー電極23に沿って、当該太陽電池素子20とは熱収縮率が異なる銅線等の金属線を主材料とするインナーリード線40が、所定の接着剤30を介して接合される。
【0023】
ここで、接着剤30としては、異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film;ACF)を用いるのが望ましい。異方性導電接着フィルムとは、フィルム状の絶縁樹脂材料中に微細な導電性粒子を分散させた素材からなり、加圧及び加温することにより、接着機能とともに、導電性粒子を介して厚み方向には電気的接続機能を有し、厚み方向と垂直方向には絶縁機能を有するものである。具体的には、異方性導電接着フィルムとしては、30重量%以下の導電性粒子を配合したエポキシ系接着剤を硬化したものが望ましく、硬化後のヤング率が0.1GPa〜30GPa程度のものが望ましい。また、導電性を必要としない場合には、接着剤30としては、非導電性フィルム(Non-conductive Film;NCF)や、硬化性樹脂をバインダとする導電性ペーストを用いてもよい。
【0024】
太陽電池素子20は、このような接着剤30を介して、図1及び図2に示すように、インナーリード線40の一端を表面側のバスバー電極23の略全長にわたって配線して当該バスバー電極23と接合することにより、当該インナーリード線40と電気的に接続される。また、インナーリード線40の他端は、接着剤30を介して、隣接する太陽電池素子20の裏面側の電極と電気的に接続される。すなわち、太陽電池素子20は、バスバー電極23を介してインナーリード線40と接合することにより、隣接する太陽電池素子20と電気的に接続している。なお、インナーリード線40としては、その耐候性を向上させるために、金属線単体を使用するのではなく、金属線表面に錫メッキやプリコート等の防錆処理を施すのが望ましい。また、太陽電池においては、接着剤30とインナーリード線40とを別個の単体として提供するのではなく、接着剤30を金属線表面に塗布したインナーリード線40として提供してもよい。具体的には、太陽電池においては、銅箔に異方性導電接着フィルムを塗布し、それをスリット状に切断することにより、異方性導電接着フィルム付きのインナーリード線40を使用するようにしてもよく、この場合、太陽電池素子20上への異方性導電接着フィルムの仮貼付等の工程を省略することができる。このような接着剤付きのインナーリード線の製造方法については、後に詳述するものとする。
【0025】
このような太陽電池素子20を備える太陽電池を製造するにあたっては、例えば図4中(a)に示すように、太陽電池素子20を用意すると、図4中(b)に示すように、接着剤30を介して、太陽電池素子20にインナーリード線40を接続する。そして、図4中(c)に示すように、このような太陽電池素子20を複数配列し、隣接する太陽電池素子20同士を電気的に接続した状態で、図4中(d)及び図4中(e)に示すように、耐候性フィルム13、透明樹脂14となる透明樹脂フィルム、太陽電池素子20、透明樹脂14となる透明樹脂フィルム、及び、透明強化ガラス12を、この順序で下から積層して熱プレスによってラミネートし、所定のフレーム端子を取り付けることにより、太陽電池が製造される。
【0026】
このように、太陽電池においては、太陽電池素子20とインナーリード線40とを、従来のハンダ接合ではなく、異方性導電接着フィルム等からなる接着剤30を介して接合する。したがって、太陽電池においては、接着剤30の樹脂が硬化する180℃程度といったように、従来のハンダ接合よりも低温度で太陽電池素子20とインナーリード線40とを接合することができるため、熱膨張による応力を軽減することができ、太陽電池素子20の反りや割れやバスバー電極23の剥離等の不良が発生するのを大幅に軽減することができる。また、接着剤30自体も、ハンダに比べてヤング率が小さいことから、応力緩和に効果的である。そして、太陽電池においては、インナーリード線40の形状や接続の形状を変更する必要がないことから、発電効率の低下を回避することができ、ハンダ接合のようにフラックスを必要としないことから、余計な洗浄工程等にタクトを取られたり、洗浄不足による発電効率の低下を懸念したりすることもなく、高い歩留まりでの製造を実現することができる。
【0027】
本願発明者は、このような接着剤30を使用することによる効果を確認するために、太陽電池素子20を模擬したサンプルを作製し、その状態を観察した。
【0028】
具体的には、図5に示すように、ガラス基板51の表面上に焼成タイプの銀ペースト52を塗布し、その上にインナーリード線40を模擬したタブ線53を設けたサンプルを作製した。銀ペースト52を塗布したガラス基板51としては、横15mm×縦80mm×厚さ0.7mmの大きさからなり、線膨張係数がシリコンと近い無アルカリガラス仕様からなるものを用いた。タブ線53としては、幅2mm×厚さ0.15mmの銅線に、Sn−Ag−Cu鉛フリーハンダを片面に40μmの厚さでディップメッキした仕様のものを用いた。そして、このタブ線53を、ソニーケミカル&インフォメーションデバイス社製の異方性導電接着フィルム「CP5832KS」を用いて、銀ペースト52を塗布したガラス基板51の表面上に接合した。このときの接合条件は、温度180℃、圧力2MPaでの15秒間の加温及び加圧である。なお、異方性導電接着フィルム「CP5832KS」は、約13重量%の導電性粒子がエポキシ系接着剤に配合されたものであり、硬化後のヤング率は、約2GPaである。
【0029】
また、比較対象のサンプルとして、上述した仕様からなる銀ペースト52を塗布したガラス基板51及びタブ線53を用い、タブ線53を、千住金属工業社製のフラックス「デルタフラックス」を用いて、銀ペースト52を塗布したガラス基板51の表面上にハンダ接合したものを作製した。このときの接合条件は、温度240℃、圧力2MPaでの15秒間の加温及び加圧である。
【0030】
このようにして作製した2種類×2個の合計4個のサンプルの外観を観察し、割れ等の不良が発生したか否かを確認した。この結果を図6(A)及び図6(B)に示す。
【0031】
サンプルの裏面外観を観察したところ、図6(A)に示すハンダ接合によるサンプルについては、同図中四角で囲った領域からわかるように、4本のタブ線のうち3本のタブ線が接合したガラス基板に割れが発生したのに対して、図6(B)に示す異方性導電接着フィルムを用いた接合によるサンプルについては、ガラス基板の割れが全く発生しないという結果が得られた。
【0032】
この結果から明らかなように、太陽電池に異方性導電接着フィルム等の接着剤30を用いることは、太陽電池素子20の不良の発生軽減に大いに有効であるといえる。
【0033】
さて、太陽電池においては、上述したように、接着剤30とインナーリード線40とを別個の単体として提供するのではなく、接着剤30を金属線表面に塗布したインナーリード線40として提供してもよい。
【0034】
ここで、太陽電池においては、上述したように、1本のインナーリード線40の一端を太陽電池素子20の表面側のバスバー電極23に接合するとともに、その他端を隣接する太陽電池素子20の裏面側の電極に接合する必要がある。そのため、接着剤30を金属線表面に塗布したインナーリード線40としては、例えば図7に断面図を示すように、金属線60の一端から所定長にわたって表面側にのみ接着剤30が塗布されるとともに、他端から所定長にわたって裏面側にのみ接着剤30が塗布されたものを製造する必要がある。
【0035】
このようなインナーリード線40としては、当該インナーリード線40の主材料となる金属箔の片面のみに接着剤30を塗布し、当該接着剤30を乾燥又はBステージ化(半硬化)してフィルム化した金属箔を、図8(a)上段及び図8(b)上段に示すように、長手方向の略中央部分で屈曲させることによって略Z字状に形成された金属線60となるように、いわゆるトムソン刃型(ビク刃型)等の所定の切断装置を用いて切断し、さらに、図8(a)下段及び図8(b)下段に示すように、切断した金属線60を1本の直線状にするように、当該金属線60の一端から屈曲させた部分までの領域を折曲することにより、その一端を太陽電池素子20の表面側のバスバー電極23に接合するとともに、その他端を隣接する太陽電池素子20の裏面側の電極に接合することができるように形成したものが挙げられる。
【0036】
また、かかるインナーリード線40としては、図9に示すように、金属箔の片面のみに接着剤30を塗布して乾燥又はBステージ化してフィルム化し、所定の切断装置を用いて所定幅でスリット状に切断することによって形成した2本の金属線60における当該接着剤30が塗布されていない端部同士を、所定の接合剤70を用いて接合することにより、その一端を太陽電池素子20の表面側のバスバー電極23に接合するとともに、その他端を隣接する太陽電池素子20の裏面側の電極に接合することができるように形成したものが挙げられる。
【0037】
さらに、かかるインナーリード線40としては、特に図示しないが、金属箔の片面のみに接着剤30を塗布して乾燥又はBステージ化してフィルム化し、所定の切断装置を用いて所定幅でスリット状に切断することによって形成した金属線60を、太陽電池素子20との接合時に、長手方向の略中央部分で捻ることにより、その一端を太陽電池素子20の表面側のバスバー電極23に接合するとともに、その他端を隣接する太陽電池素子20の裏面側の電極に接合することができるように形成したものが挙げられる。
【0038】
さらにまた、インナーリード線40は、以下のような方法により、効率よく容易に製造することもできる。
【0039】
具体的には、図10に示すように、長尺状の銅箔100をインナーリード線40の主材料として用意し、この銅箔100をライン加工することにより、インナーリード線40を製造する。なお、銅箔100の短手方向の長さは、太陽電池を構成するために所定の間隔を設けて配列された2枚の太陽電池素子20を接続する1本のインナーリード線40の長さと同一とされる。
【0040】
まず、インナーリード線40を製造するにあたっては、銅箔100を裏面が上方になるように製造ラインにセットすると、所定のコーター101を用いて、当該銅箔100の裏面に液体状の接着剤30を塗布する。ここで、コーター101は、接着剤30の塗布領域が、銅箔100の一方の端縁から当該銅箔100の短手方向の半分長未満の所定長の幅を有するように、当該銅箔100の一方の端縁近傍に設けられる。したがって、接着剤30は、銅箔100の一方の端縁から当該銅箔100の短手方向の半分長未満の所定長の幅で、当該銅箔100の長手方向にわたって塗布される。
【0041】
このようにして裏面のみに接着剤30が塗布された銅箔100は、表面が上方になるように、2つのローラー102,103によって反転される。ここで、塗布された接着剤30がローラー102,103に付着することによって銅箔100から剥がれないように、ローラー102,103は、銅箔100が接触する回転軸方向の長さが、銅箔100の短手方向の長さの略半分長とされ、且つ、接着剤30の塗布領域に近い銅箔100の一方の端縁とは反対側の他方の端縁近傍に設けられる。
【0042】
そして、表裏面が反転された銅箔100の表面には、所定のコーター104を用いて液体状の接着剤30が塗布される。このコーター104も、接着剤30の塗布領域が、銅箔100の他方の端縁から当該銅箔100の短手方向の半分長未満の所定長の幅を有するように、当該銅箔100の他方の端縁近傍に設けられる。したがって、接着剤30は、銅箔100の他方の端縁から当該銅箔100の短手方向の半分長未満の所定長の幅で、当該銅箔100の長手方向にわたって塗布されることになる。
【0043】
このようにして表裏面ともに接着剤30が塗布された銅箔100は、液体状の接着剤30を乾燥又はBステージ化してフィルム化するために、フィルム化装置105に供給される。具体的には、フィルム化装置105としては、接着剤30の樹脂が熱硬化性樹脂である場合には、供給された銅箔100に塗布された接着剤30を所定温度に加熱して乾燥するオーブン等の乾燥装置が用いられ、樹脂が光硬化性樹脂である場合には、供給された銅箔100に塗布された接着剤30に紫外光等を照射するレーザ装置等の光照射装置が用いられる。
【0044】
そして、銅箔100は、フィルム化装置105を通過して液体状の接着剤30がフィルム化されると、カッター等の図示しない切断装置を用いて、所定幅でスリット状に短手方向に沿って切断される。これにより、先に図7に示したように、銅線の表裏面に接着剤30が塗布されたインナーリード線40を製造することができる。
【0045】
このように、長尺状の銅箔100をライン加工することにより、接着剤30を塗布したインナーリード線40を極めて効率よく容易に製造することができる。このような製造方法は、均一品質のインナーリード線40を量産する方法として極めて有効である。また、この製造方法においては、接着剤30がフィルム化された銅箔100を、リールを用いて巻き取って保管しておき、インナーリード線40に形成するための切断工程を後工程とすることができるため、保管が容易であり、また、受注に応じて必要本数のみを切断すればよいため、歩留まりを向上させることができる。
【0046】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施の形態では、主にシリコン系の太陽電池に適用した例について説明したが、本発明は、導体線を介して隣接する太陽電池素子同士を接続するものであれば適用することができる。したがって、本発明は、単結晶シリコン型、多結晶シリコン型、微結晶シリコン型、アモルファスシリコン型をはじめとする任意のシリコン系の太陽電池の他、GaAs型やカルコバイライト型等の他の半導体化合物系の太陽電池や、色素増感太陽電池等の色素系の太陽電池にも適用することができる。また、本発明は、薄膜型や多接合型等、形態に限定されることもない。
【0047】
また、上述した実施の形態では、バスバー電極を介して太陽電池素子とインナーリード線とを接合した太陽電池について説明したが、本発明は、例えばコストの削減を図ることができるバスバー電極がないタイプのもの等、バスバー電極に比べると電極幅が狭いフィンガー電極を介して太陽電池素子とインナーリード線とを接合することにより、隣接する太陽電池素子と電気的に接続した太陽電池であっても適用することができる。この場合、接着剤としては、半導体基板等に電気的に接合可能なものであればよく、異方性導電接着フィルムやその他の導電性接着剤を用いればよい。このようなフィンガー電極を介して太陽電池素子とインナーリード線とを接合する太陽電池においては、フィンガー電極の電極幅が狭いことに起因して、ハンダ接合では必要な強度を持たせることができないため、本発明のように導電性接着剤を用いることは極めて有効である。
【0048】
さらに、上述した実施の形態では、複数の太陽電池素子を電気的に接続するインナーリード線について説明したが、本発明は、導体線とは熱収縮率が異なることによって当該導体線との間に生じた熱膨張による応力に起因する不良が発生するような任意の複数の電子部品を電気的に接続する場合であっても容易に適用することができる。
【0049】
さらにまた、上述した実施の形態では、長尺状の銅箔をライン加工する製造方法について説明したが、本発明は、導体線の主材料に限定されるものではなく、他の金属箔をライン加工する場合であっても適用することができる。
【0050】
このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態として示す太陽電池の構成を説明する側断面図である。
【図2】本発明の実施の形態として示す太陽電池が備える太陽電池素子の構成を説明する側断面図である。
【図3】本発明の実施の形態として示す太陽電池が備える太陽電池素子の構成を説明する斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態として示す太陽電池の製造方法を説明するための図である。
【図5】太陽電池素子を模擬したサンプルの構成を説明する斜視図である。
【図6(A)】ハンダ接合によるサンプルを実写した図である。
【図6(B)】異方性導電接着フィルムを用いた接合によるサンプルを実写した図である。
【図7】本発明の実施の形態として示す太陽電池が備えるインナーリード線の構成を説明する側断面図である。
【図8(a)】接着剤を塗布したインナーリード線の具体例を説明する平面図である。
【図8(b)】図8(a)に示すインナーリード線の斜視図である。
【図9】接着剤を塗布したインナーリード線の他の具体例を説明する側断面図である。
【図10】接着剤を塗布したインナーリード線の製造方法を説明するための図であり、製造ラインの構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0052】
11 アルミニウムフレーム
12 透明強化ガラス
13 耐候性フィルム
14 透明樹脂
20 太陽電池素子
21 半導体基板
22 フィンガー電極
23 バスバー電極
30 接着剤
40 インナーリード線
51 ガラス基板
52 銀ペースト
53 タブ線
60 金属線
70 接合剤
100 銅箔
101,104 コーター
102,103 ローラー
105 フィルム化装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子部品を電気的に接続する導体線の製造方法であって、
上記電子部品とは熱収縮率が異なる上記導体線の主材料となる所定の金属線の一端から所定長にわたって表面側にのみ接着剤が塗布されるとともに、当該金属線の他端から所定長にわたって裏面側にのみ上記接着剤が塗布された状態となるように、上記主材料に上記接着剤を塗布する塗布工程と、
上記塗布工程にて塗布された上記接着剤を乾燥又はBステージ化してフィルム化するフィルム化工程とを備えること
を特徴とする導体線の製造方法。
【請求項2】
上記塗布工程は、
第1のコーターを用いて、上記主材料としての長尺状の金属箔の裏面に、当該金属箔の一方の端縁から当該金属箔の短手方向の半分長未満の所定長の幅で、当該金属箔の長手方向にわたって液体状の上記接着剤を塗布する工程と、
所定のローラーを用いて、上記裏面のみに上記接着剤が塗布された上記金属箔の表裏面を反転する工程と、
第2のコーターを用いて、表裏面が反転された上記金属箔の表面に、当該金属箔の他方の端縁から当該金属箔の短手方向の半分長未満の所定長の幅で、当該金属箔の長手方向にわたって液体状の上記接着剤を塗布する工程とを有すること
を特徴とする請求項1記載の導体線の製造方法。
【請求項3】
所定の切断装置を用いて、上記フィルム化工程にて上記接着剤がフィルム化した上記金属箔を、所定幅でスリット状に短手方向に沿って切断し、上記導体線を形成する工程をさらに備えること
を特徴とする請求項2記載の導体線の製造方法。
【請求項4】
上記ローラーは、上記金属箔が接触する回転軸方向の長さが、上記金属箔の短手方向の長さの略半分長とされ、且つ、上記接着剤の塗布領域に近い上記金属箔の一方の端縁とは反対側の他方の端縁近傍に設けられていること
を特徴とする請求項2記載の導体線の製造方法。
【請求項5】
上記フィルム化工程では、所定のフィルム化装置を用いて、上記接着剤を乾燥又はBステージ化してフィルム化すること
を特徴とする請求項1又は請求項2記載の導体線の製造方法。
【請求項6】
上記フィルム化装置は、上記接着剤の樹脂が熱硬化性樹脂である場合には、当該接着剤を所定温度に加熱して乾燥する乾燥装置であり、上記樹脂が光硬化性樹脂である場合には、当該接着剤に光を照射する光照射装置であること
を特徴とする請求項5記載の導体線の製造方法。
【請求項7】
上記塗布工程では、上記主材料としての金属箔の片面のみに上記接着剤を塗布し、
当該導体線の製造方法は、さらに、
上記フィルム化工程にて上記接着剤がフィルム化した上記金属箔を、長手方向の略中央部分で屈曲させることによって略Z字状に形成された金属線となるように、所定の切断装置を用いて切断する工程と、
切断された上記金属線を1本の直線状にするように、当該金属線の一端から屈曲させた部分までの領域を折曲する工程とを備えること
を特徴とする請求項1記載の導体線の製造方法。
【請求項8】
上記塗布工程では、上記主材料としての金属箔の片面のみに上記接着剤を塗布し、
当該導体線の製造方法は、さらに、
上記フィルム化工程にて上記接着剤がフィルム化した上記金属箔を、所定の切断装置を用いて所定幅でスリット状に切断する工程と、
切断することによって形成された2本の金属線における当該接着剤が塗布されていない端部同士を、所定の接合剤を用いて接合する工程とを備えること
を特徴とする請求項1記載の導体線の製造方法。
【請求項9】
上記塗布工程では、上記主材料としての金属箔の片面のみに上記接着剤を塗布し、
当該導体線の製造方法は、さらに、
上記フィルム化工程にて上記接着剤がフィルム化した上記金属箔を、所定の切断装置を用いて所定幅でスリット状に切断する工程と、
切断することによって形成された金属線を、長手方向の略中央部分で捻る工程を備えること
を特徴とする請求項1記載の導体線の製造方法。
【請求項10】
上記接着剤として、導電性接着剤を用いること
を特徴とする請求項1記載の導体線の製造方法。
【請求項11】
上記導電性接着剤として、異方性導電接着フィルムを用いること
を特徴とする請求項10記載の導体線の製造方法。
【請求項12】
上記異方性導電接着フィルムとして、30重量%以下の導電性粒子を配合したエポキシ系接着剤を硬化したものであり、硬化後のヤング率が0.1GPa〜30GPaのものを用いること
を特徴とする請求項11記載の導体線の製造方法。
【請求項13】
上記金属線として、表面に防錆処理が施されているものを用いること
を特徴とする請求項1乃至請求項12のうちいずれか1項記載の導体線の製造方法。
【請求項14】
上記複数の電子部品は、所定の規則にしたがって配列された複数の太陽電池素子であり、
上記導体線は、上記複数の太陽電池素子を電気的に接続するインナーリード線であること
を特徴とする請求項1乃至請求項13のうちいずれか1項記載の導体線の製造方法。
【請求項15】
複数の電子部品を電気的に接続する導体線であって、
上記電子部品とは熱収縮率が異なる当該導体線の主材料となる所定の金属線と、
上記金属線の一端から所定長にわたって表面側にのみ接着剤が塗布された第1の領域と、
上記金属線の他端から所定長にわたって裏面側にのみ上記接着剤が塗布された第2の領域とから構成され、
上記第1の領域及び上記第2の領域のそれぞれに塗布された上記接着剤が乾燥又はBステージ化してフィルム化されていること
を特徴とする導体線。
【請求項16】
上記接着剤は、導電性接着剤であること
を特徴とする請求項15記載の導体線。
【請求項17】
上記導電性接着剤は、異方性導電接着フィルムであること
を特徴とする請求項16記載の導体線。
【請求項18】
上記異方性導電接着フィルムは、30重量%以下の導電性粒子を配合したエポキシ系接着剤を硬化したものであり、硬化後のヤング率が0.1GPa〜30GPaのものであること
を特徴とする請求項17記載の導体線。
【請求項19】
上記金属線は、表面に防錆処理が施されているものであること
を特徴とする請求項15乃至請求項18のうちいずれか1項記載の導体線。
【請求項20】
上記複数の電子部品は、所定の規則にしたがって配列された複数の太陽電池素子であり、
当該導体線は、上記複数の太陽電池素子を電気的に接続するインナーリード線であること
を特徴とする請求項15乃至請求項19のうちいずれか1項記載の導体線。
【請求項21】
所定の規則にしたがって配列された複数の太陽電池素子と、
隣接する上記太陽電池素子を電気的に接続する導体線としてのインナーリード線とを備え、
上記インナーリード線は、所定の接着剤を介して、上記太陽電池素子と接合されていること
を特徴とする太陽電池。
【請求項22】
上記接着剤は、上記インナーリード線の主材料となる所定の金属線の一端から所定長にわたって表面側にのみ塗布されるとともに、当該金属線の他端から所定長にわたって裏面側にのみ塗布され、乾燥又はBステージ化してフィルム化されたものが硬化していること
を特徴とする請求項21記載の太陽電池。
【請求項23】
上記太陽電池素子は、当該太陽電池素子の表面に形成された集電用電極を介して上記インナーリード線と接合することにより、隣接する太陽電池素子と電気的に接続していること
を特徴とする請求項21又は請求項22記載の太陽電池。
【請求項24】
上記接着剤は、導電性接着剤であること
を特徴とする請求項21乃至請求項23のうちいずれか1項記載の太陽電池。
【請求項25】
上記導電性接着剤は、異方性導電接着フィルムであること
を特徴とする請求項24記載の太陽電池。
【請求項26】
上記異方性導電接着フィルムは、30重量%以下の導電性粒子を配合したエポキシ系接着剤を硬化したものであり、硬化後のヤング率が0.1GPa〜30GPaのものであること
を特徴とする請求項25記載の太陽電池。
【請求項27】
上記金属線は、表面に防錆処理が施されているものであること
を特徴とする請求項22記載の太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6(A)】
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【図6(B)】
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【図7】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−300403(P2008−300403A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141795(P2007−141795)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000108410)ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社 (595)
【Fターム(参考)】