説明

導波路型光モジュール、光導波路フィルム及びその製造方法

【課題】 簡便な構成により発光点からの出力をモニターすることができる導波路型光モジュールを提供することにあり、特にマルチ発光点をもつ発光素子と光導波路フィルムを用いた導波路型光モジュールにおいて、光導波路毎にそれぞれモニター用受光素子を付けた場合でも出力特性が均一となる導波路型光モジュールを提供する。
【解決手段】 発光素子と、該発光素子から出射した光を導波光として導く導波路コアを有する光導波路フィルムと、前記発光素子の出力をモニターするモニター用受光素子と、を有する導波路型光モジュールであって、前記光導波路フィルムにおける導波路コアはその一部に、導波光が漏出する漏出面と、該漏出面から漏出した導波光を前記モニター用受光素子の受光面の方向に光路変換する光路変換面とを有する切れ込み部が設けられていることを特徴とする導波路型光モジュールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路フィルムとVCSEL等の発光素子とを組み合わせた安価な導波路フィルム型光モジュール、それに用いる光導波路フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子光導波路の製造方法としては、
(1)フイルムにモノマーを含浸させてコア部を選択的に露光して屈折率を変化させフイルムを貼り合せる方法(選択重合法)、(2)コア層及びクラッド層を塗布後、反応性イオンエッチングを用いてクラッド部を形成する方法(RIE法)、(3)高分子材料中に感光性の材料を添加した紫外線硬化性樹脂を用いて、露光・現像するフォトリソグラフィー法を用いる方法(直接露光法)、(4)射出成形を利用する方法、(5)コア層及びクラッド層を塗布後、コア部を露光してコア部の屈折率を変化させる方法(フォトブリーチング法)等が提案されている。
【0003】
しかし、(1)の選択重合法はフイルムの貼り合わせに問題があり、(2)や(3)の方法は、フォトリソグラフィー法を使うためコスト高になり、(4)の方法は、得られるコア径の精度に課題がある。また、(5)の方法はコア層とクラッド層との十分な屈折率差が設けられないという問題がある。
現在、性能的に優れた実用的な方法は、(2)や(3)の方法のみであるが前記のごときコスト高の問題がある。そして(1)ないし(5)のいずれの方法も、大面積でフレキシブルなプラスチック基材に高分子光導波路を形成するのに適用し得るものでない。
【0004】
これに対し本発明者等は、前記のごとき従来の高分子光導波路の製造方法とは全く異なる方法として、鋳型を用いることによる高分子光導波路の製造方法を発明し出願した(以下の特許文献1から3までを参照)。この方法は、極めて簡便に低コストで高分子光導波路を作製することが可能で、鋳型作製が可能であればどのようなパターン形状を有するものでも簡易に作製可能である。更に、従来作製が困難であったフレキシブル基材の上に光導波路を作製することが可能となった。
【0005】
ところで、最近、IC技術やLSI技術において、動作速度や集積度向上のため、高密度な電気配線の代わりに、機器装置間、機器装置内の基板間、チップ内において光配線を用いることが注目されている。
【0006】
光配線のための素子として、例えば、以下の特許文献4には、コアとコアを包囲するクラッドを有する高分子光導波路の、コア・クラッド積層方向に発光素子及び受光素子を備え、更に発光素子からの光をコアに入射させるための入射側ミラーとコアからの光を受光素子に出射させるための出射側ミラーを有する光学素子であって、発光素子から入射側ミラー及び出射側ミラーから受光素子に至る光路に相当する箇所において、クラッド層を凹状に形成し、発光素子からの光及び出射側ミラーからの光を収束させた光学素子が記載されている。また、以下の特許文献5には、コアとコアを包囲するクラッドを有する高分子光導波路のコア端面に発光素子からの光を入射させる光学素子において、コアの光入射端面を発光素子に向かって凸面となるように形成し、発光素子からの光を収束させて導波損失を抑えた光学素子が記載されている。
【0007】
さらに、以下の特許文献6には、電子素子と光素子とを集積化した光電融合回路基板の上に高分子光導波路回路が直接組み立てられた光電子集積回路が記載されている。
前記光配線において前記のごとき素子を実装して、装置内に組み込むことができれば、光配線の組み立てを考える際の自由度を大きくすることが可能になり、その結果としてコンパクトで小さな受発光素子を作ることができる。
【0008】
しかしながら、これまでに提案されている方法は、光路を90°折り返すミラーを形成するためにミラー部を埋め込む必要があったり、光導波路と受発光素子を貼り合わせる場合にも位置合わせを高精度に行う必要があり、実装に要するコストが大きな問題となっていた。
【0009】
ところで、VCSEL等の発光素子の光を光ファイバに接続するためのコネクタに導く目的の光モジュールでは、マイクロレンズ及び45°ミラーを通して光を結合させる形式のものが一般的である。しかしこの構成では発光素子側に1つもしくは2つ、また光ファイバ側にも1つはマイクロレンズが必要となり、それらを形成するコスト及び光軸合わせのコストが掛かる。また空間伝搬する光を45°ミラーで反射させるため、効率を高めるためにアルミ等を蒸着する必要がある。これもコスト高を招く。
【0010】
そこで光導波路フィルムを用いた光モジュールが低コスト化のために注目されている。その理由は、光導波路フィルムの端面を45°ミラー面に加工して、VCSEL等の平面型発光素子に直接接着することにより、マイクロレンズが不要で結合が可能になるからである。ここで光導波路フィルムを作製する方法としては、下記特許文献1ないし3に記載の製造方法が低コスト化のために有力である。
【0011】
ところがVCSEL等のレーザー素子は、例えば外部温度によりその光出力が変動する。安定した光出力を得るには光出力をモニターし、その変化量を観測してこの光出力が一定になるようにレーザー素子の駆動電流を変化させるフィードバック制御を行う必要があるため、例えば導波路型光モジュールの場合は、分岐導波路を設定して光出力の一部をモニター用に取り出すなどの工夫がなされている。しかし1×4のVCELアレイのようにマルチ発光点を用いる場合、モニター用フォトディテクタ(PD)の配置場所及び該PDまで分岐した導波路による光路をつなぐことが難しい。例えば光導波路フィルムの側面にモニター用PDを配置すれば、外側の2つの発光点に結合している導波路から分岐させ、簡単にPDまで出力光の一部をモニター用に導くことができる。しかし内側の2つの発光点に結合している導波路から分岐して導波路側面のPDに光を導くには、外側の導波路と交差してしまう。交差部分を直交させればクロストークはほとんど生じないものの、外側の導波路はこの部分で若干の導波損失が発生して内側と外側で出力特性が異なるという問題があった。この場合、コストダウンのためにモニター用PDを1×4にまとめて外側に配置すると、さらにモニター用導波路の交差が増え損失が増加する可能性があり、さらにアレイ導波路の出力特性が異なる問題が生じる。
【特許文献1】特開2004−29507号公報
【特許文献2】特開2004−86144号公報
【特許文献3】特開2004−109927号公報
【特許文献4】特開2000−39530号公報
【特許文献5】特開2000−39531号公報
【特許文献6】特開2000−235127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は前記のごとき問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡便な構成により発光点からの出力をモニターすることができる導波路型光モジュールを提供することにあり、特にマルチ発光点をもつ発光素子と光導波路フィルムを用いた導波路型光モジュールにおいて、光導波路毎にそれぞれモニター用受光素子を付けた場合でも出力特性が均一となる導波路型光モジュールを提供すること、さらに前記導波路型光モジュールに用いる光導波路フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決する手段は以下の通りである。即ち、
<1> 発光素子と、該発光素子から出射した光を導波光として導く導波路コアを有する光導波路フィルムと、前記発光素子の出力をモニターするモニター用受光素子と、を有する導波路型光モジュールであって、前記光導波路フィルムにおける導波路コアはその一部に、導波光が漏出する漏出面と、該漏出面から漏出した導波光を前記モニター用受光素子の受光面の方向に光路変換する光路変換面とを有する切れ込み部が設けられていることを特徴とする導波路型光モジュールである。
【0014】
<2> 前記発光素子が平面型発光素子であり、該平面型発光素子の光出射部が前記光導波路フィルムの端部近傍の側面に結合されていて、かつ前記光導波路フィルムの前記平面型発光素子との結合部と対向する位置に、前記平面型発光素子から出射した導波光を反射し光路変換する光路変換用ミラー面を有することを特徴とする前記<1>に記載の導波路型光モジュールである。
【0015】
<3> 前記切れ込み部の漏出面と光路変換面とが空気に接していることを特徴とする前記<1>に記載の導波路型光モジュールである。
【0016】
<4> 前記光路変換面が、導波路コアの延伸方向に対し30°〜60°傾斜している面であることを特徴とする前記<1>に記載の導波路型光モジュールである。
【0017】
<5> 前記<1>に記載の導波路型光モジュールに用いる光導波路フィルムであって、下部クラッドフィルム、導波路コア、及び上部クラッドフィルムを有し、前記導波路コアはその一部に導波光が漏出する漏出面と、該漏出面から漏出した導波光を光路変換する光路変換面とを有する切れ込み部を有することを特徴とする光導波路フィルムである。
【0018】
<6> 前記<5>に記載の光導波路フィルムの製造方法であって、
1)鋳型形成用硬化性樹脂の硬化層から形成され、かつ、導波路コア凸部に対する凹部と、該凹部の一端及び他端にそれぞれ連通する貫通孔が2以上設けられた鋳型を準備する工程、
2)前記鋳型に該鋳型との密着性が良好な下部クラッドフィルムを密着させる工程、
3)下部クラッドフィルムを密着させた鋳型の凹部の一端にある貫通孔に、コア形成用硬化性樹脂を充填し、鋳型の凹部の他端にある貫通孔から減圧吸引してコア形成用硬化性樹脂を前記鋳型凹部に充填する工程、
4)充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させ、鋳型を下部クラッドフィルムから剥離する工程、
5)導波路コアが形成された下部クラッドフィルムの上に上部クラッドフィルムを形成する工程、
6)上部クラッドフィルムまたは下部クラッドフィルムの表面から、導波路コアの一部に導波光が漏出する漏出面と、該漏出面から漏出した導波光を光路変換する光路変換面とを有する切れ込み部を形成する工程、
を有することを特徴とする光導波路フィルムの製造方法である。
【0019】
<7> 前記切れ込み部における光路変換面を、光導波路フィルムに対する該光路変換面の傾斜角と同じ傾斜角を有するダイシングブレードを用いたダイシングソーの切削加工により形成することを特徴とする前記<6>に記載の光導波路フィルムの製造方法。
【0020】
<8> 前記光導波路フィルムの一端を、45°傾斜付きダイシングブレードを用いたダイシングソーの切削加工によりミラー面を形成することを特徴とする前記<6>に記載の光導波路フィルムの製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の導波路型光モジュールによれば、導波路コアに特定の切れ込み部を形成した光導波路フィルムを、発光素子と発光素子の出力をモニターするモニター用受光素子に配置することのみで、発光素子の出力をモニター可能であり、従来においては必要であったマイクロレンズの位置合わせなどの工程が不要である。
また、本発明の導波路型光モジュールにおいては、発光素子は光導波路フィルムの端部に結合させるだけでよく、特別に作製したミラー、レンズ等を用いる必要がない。従って本発明の導波路型光モジュールは、実装が容易であるとともにシンプルな構造を有しており、極めて安価に作製可能である。また、実装されたモジュールは非常にコンパクトである。
また、本発明の導波路型光モジュールに用いる光導波路フィルムも簡便な方法で作製でき、切れ込み部作製のための工程増加も最小限に留められるので、光導波路フィルムも安価に作製可能である。
さらに、光導波路フィルムの導波路コアが複数ある場合、各導波路コアからのモニター光の取り出しが導波路コア毎に独立していて他の導波路コアに影響を与えず、各導波路コアからのモニター光は発光点の出力を正確に反映するため、モニターによるフィードバック制御が正確に行われ、その結果、各導波路コア末端から均一な出力がなされることになる。また従来技術のように、導波路コアを分岐させることにより生ずる交差に起因した導波損失の発生の可能性もないので、この点からも各導波路コアからの出力が均一となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、先ず、本発明の導波路型光モジュールについて説明する。
<導波路型光モジュール>
本発明の導波路型光モジュールは、発光素子と、該発光素子から出射した光を導波光として導く導波路コアを有する光導波路フィルムと、前記発光素子の出力をモニターするモニター用受光素子(以下単に「モニター用受光素子」又は「受光素子」という。)と、を有し、前記光導波路フィルムにおける導波路コアはその一部に、導波光が漏出する漏出面と、該漏出面から漏出した導波光を前記モニター用受光素子の受光面の方向に光路変換する光路変換面とを有する切れ込み部が設けられていることを特徴とする。
【0023】
光導波路フィルムの端部と発光素子との結合は、発光素子の種類により適宜選択される。例えば、発光素子が平面型発光素子の場合には、光導波路フィルムの一端部に光路変換用ミラー面(例えば45°ミラー面)を形成し、該光路変換用ミラー面と対向する位置に発光素子を結合する。また、発光素子が端面発光型の場合には、光導波路フィルムの端面を端面発光素子と直接結合が可能なように、例えば垂直端面を形成し端面同士を結合する。
以下の光導波路フィルムにおいては、その一端部に光路変換用ミラー面を設けたものについて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0024】
図1を用いて本発明の導波路型光モジュールの例を説明する。
まず、図1に、切れ込み部が空気に接触している態様を示す。図1中、10は光導波路フィルムを、10aは光路変換用ミラー面を、12は下部クラッドフィルムを、14は導波路コアを、16は上部クラッドフィルムを、18は切れ込み部を、18aは導波路コアを導波した光が漏出する漏出面を、18bは該漏出した光が光路変換される光路変換面をそれぞれ示す。また、20は発光素子を、22は発光点を、24は電極をそれぞれ示す。30はモニター用受光素子である。光路変換用ミラー面10aが形成された光導波路フィルム10の端部側面には図示しない接着剤で発光素子20と結合されていて、また、モニター用受光素子30は下部クラッドフィルム12と同様に結合されている。また、点線は発光点からの光路を示す。
【0025】
前記光路変換用ミラー面10a及び漏出した光を光路変換する光路変換面18bにおいて、90°光路変換を行うためには、光路変換用ミラー面10aを45°ミラー面に、光路変換面18bを45°傾斜面とすればよく、図1においてはこのような構成となっている。
発光点から出射する光は45°ミラー面たる光路変換用ミラー面10aにより光路変換された後、導波路コア14中を導波し、大部分が導波路コア14の他端部から出射するが、その一部は切れ込み部18の漏出面18aから漏れ出し、該漏れ出した光が直進して光路変換面18bにより光路を変換され、モニター用受光素子30に受光される。この態様の導波路型光モジュールにおいては、切れ込み部18は下部クラッドフィルム12の表面から導波路コア14内側に向かって形成されており、切れ込み部18は低屈折率の空気に接しているので、その一部が反射されモニター光となりモニター用受光素子30に入射する。
【0026】
光路変換面18bの傾斜角度は、30°〜60°であることが好ましい。モニター用受光素子の受光面の大きさと下部クラッドフィルムの厚みにもよるが、30°より小さいとモニター用受光素子の受光面が、導波光の漏出面18a側の下部クラッドフィルムの下部へ隠れてしまい、モニター用受光素子の受光面へ到達する光量が少なくなり、光検出が困難となる場合がある。また、60°を超えると、前記同様、漏出した導波光が光路変換される面18b側の導波路下側クラッドの下部へ隠れてしまい、モニター用受光素子の受光面へ到達する光量が少なくなり、光検出が困難となる場合がある。
【0027】
本態様の光導波路フィルムにおいては、コア寸法に対する切れ込み部深さの割合により損失が決まる。例えば50μm角の導波路コアに対して、クラッドフィルム表面から導波路コア上面の5μmまで切れ込み部を加工する場合、この切れ込み構造による損失は約1割に抑えられる。
【0028】
切れ込み部の深さ(大きさ)は、導波路コアの導波光を切れ込みにより漏出させ、該漏出した光を光路変換面によって光路変換される光の量がモニター用受光素子においてモニターするのに必要かつ十分な量となるように形成することが好ましい。
切れ込み部の光路変換面により光路変換される光量は、光路変換面の深さだけでなく、モニター用受光素子の有する特性によって、モニターするために必要な光量も変化する。
従って、導波路コアにおける切れ込み深さは、これら要因を考慮して適宜決められる。
また、前記切れ込み部を設ける位置は、適切なモード分散状態を得るために、水平方向から見て発光素子の発光点から若干離れた位置、即ち光導波路フィルムの光路変換用ミラー面にかからないような位置にすることが望ましい。具体的には水平方向で変換ミラー面から1mm以上の間隔があることが望ましい。またモニター用受光素子を配置する都合からも発光点から1mm以上の間隔があることが望ましい。
【0029】
切れ込み部の形成方法に制限はなく、切れ込み部の形成箇所、大きさ、形状等により適宜選択可能である。
前記の図1における切り込み部の場合には、例えば、先端断面が所望角度と同様の傾斜をもつダイシングブレードを備えたダイシングソーでダイシングする方法が可能で簡便な方法である。
ダイシングソーとして、例えば、(株)ディスコ製DAD321などが用いられる。ダイシングソーを用いることにより、例えば実質的なブレード位置誤差を3μm程度に抑えることが可能である。従って、50×50μm角の導波路コアに対して、導波路コア上面から10μm程度の深さまで切れ込みを形成する制御が可能になる。また導波路アレイを構成する複数の導波路コアに対して、均等に切れ込みを形成するため、アレイ間のバラツキが生じない。またこのような方法で作製した場合、切れ込み部にクラッド材が流れ込んでいても、透過光が放射モードになる比率が少なくなるため、損失が減少する利点がある。
【0030】
一方、前記光路変換用ミラー面は、発光素子から出射した光を導波路コアに導くためのミラー面となるように形成する。特に、45°傾斜付きダイシングブレードを用いたダイシングソーの切削加工により形成することが簡便に形成することができ好ましい。
45°傾斜付きダイシングブレードとして、例えば、(株)ディスコ製45°形状ブレードなどが用いられる。また、高い反射率を確保するには、該ダイシングソーを用いて傾斜面を形成後、該傾斜面に、金、白金、アルミニウムなどの金属の薄膜を成膜することが好ましい。前記光路変換用ミラー面に金属薄膜を成膜すると、高い反射率が得られ、該ミラー面での損失が少なくでき、発光素子の出射光を十分に利用することができる。
【0031】
次に、本発明の導波路型光モジュールの更に他の態様について図2により説明する。図2は、光導波路フィルムの導波光出射端部を他の素子(例えば光ファイバ)に接続するためのコネクタ、例えば市販のMTコネクタと互換性のあるコネクタを結合した導波路型光モジュールの一例を示す。図2(A)はその平面図を、図2(B)は図2(A)のX−X断面図を、図2(C)は図2(A)のY−Y断面図をそれぞれ示す。図2(A)ないし図2(C)において、10は光導波路フィルムを、10aは45°ミラー面を、14は導波路コア(図3参照)を、20は発光素子を、30は受光素子を、40はセラミックパッケージを、42は電極を、44は電極ピンをそれぞれ示す。60はコネクタであり、62及び64は他の素子(例えば光ファイバ)に設けたコネクタ(図示せず)と位置合わせするためにコネクタ60に設けた孔である。図示しないが発光素子20の電極24(図3参照)はセラミックパッケージにおける電極42と結線される。
【0032】
また、図3は、図2(A)中のA部分を拡大した詳細図であり、図3(A)はその平面図を、図3(B)はそのX−X断面図である。図3(A)及び図3(B)中、14は導波路コアを、18は光導波路フィルムに設けた切り込み部を、22は発光素子の発光点を、24は発光素子の電極をそれぞれ示す。
この導波路型光モジュールにおいては、発光素子、光導波路フィルム及び受光素子はセラミックパッケージの上に配置される。発光素子、態様によっては受光素子もセラミックパッケージ上に接着剤等で接合され、発光素子と光導波路フィルムの端部(45°ミラー面形成端部)も接着剤等で接合される。この際、光導波路フィルムと発光素子は、発光素子の発光点からの光が光導波路フィルムの光路変換用ミラー面に入射されるように位置合わせされ、また受光素子は、光導波路フィルムに設けられた切れ込み部により漏出した導波光を光路変換する面からの反射光が入射する位置に受光素子の受光点が配置される。
【0033】
受光素子の電極は、受光がモニターできるよう結線されていればよく、またセラミックパッケージとワイヤーボンディング等による結線が行える位置に設計されていればよいので、導波路外側となるよう設計されていてもよいが、受光点傍にすると前記光導波路フィルムに設けられた切れ込み部が空隙となっているため、ワイヤーボンディング等による結線を妨げるものではなく、受光素子アレイのサイズを小さくできるので、素子作製の集積度が向上してコストを低減できる。さらに光モジュールとしても、実装面積を低減できるので、モジュールサイズを小さくすることができる利点がある。
【0034】
《発光素子及びモニター用受光素子》
発光素子としては、光導波路フィルムの端部と接着結合させる点から、平面型発光素子が好ましく用いられる。平面型発光素子としては、VCSEL、LED等が挙げられる。
また、モニター用受光素子としては、光導波路フィルムのクラッドフィルムと接着結合させる点から、平面型受光素子が好ましく用いられる。モニター用に用いる平面型受光素子としては、Pinフォトダイオード、アバランシェフォトダイオード等が挙げられる。
【0035】
《光導波路フィルム》
本発明において用いる光導波路フィルムは、図1に示すように下部クラッドフィルム、導波路コア、上部クラッドフィルム、及び切れ込み部を有している。光導波路フィルムは、例えば、以下の工程により作製することが好ましい。
【0036】
図1(A)、図1(B)及び図1(C)で示される態様の光導波路フィルムを作製するには、以下の方法が好ましく用いられる。
1)鋳型形成用硬化性樹脂の硬化層から形成され、かつ、導波路コア凸部に対する凹部と、該凹部の一端及び他端にそれぞれ連通する貫通孔が2以上設けられた鋳型を準備する工程、
2)前記鋳型に該鋳型との密着性が良好な下部クラッドフィルムを密着させる工程、
3)下部クラッドフィルムを密着させた鋳型の凹部の一端にある貫通孔に、コア形成用硬化性樹脂を充填し、鋳型の凹部の他端にある貫通孔から減圧吸引してコア形成用硬化性樹脂を前記鋳型凹部に充填する工程、
4)充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させ、鋳型を下部クラッドフィルムから剥離する工程、
5)コアが形成された下部クラッドフィルムの上に上部クラッドフィルムを形成する工程、
6)上部クラッドフィルムまたは下部クラッドフィルムの表面から、導波路コアの一部に導波光が漏出する漏出面と、該漏出面から漏出した導波光を光路変換する光路変換面とを有する切れ込み部を形成する工程、
【0037】
以上の、光導波路フィルムの製造工程の1)から6)までの工程を図4により説明する。なお、説明を簡明にするため、導波路コアを1本設けたものについて説明する。図4(A)は原盤100を示し、120は導波路コアに対応する凸部である。この原盤100の凸部形成面に鋳型形成用硬化性樹脂を塗布又は注型した後硬化させる(図4(B)参照)。図4(B)中、200aは硬化樹脂層である。その後硬化樹脂層200aを剥離すると、凹部が形成された硬化樹脂層200aが得られる。凹部220が形成された硬化樹脂層200aに、凹部220に連通する貫通孔260及び280を凹部両端に打抜き等により形成して鋳型200(図4(C)参照)を得る。
【0038】
次に、図4(D)が示すように、鋳型にクラッドフィルム300を密着させる。その後鋳型に形成されている貫通孔260にコア形成用硬化性樹脂を入れ、他端の貫通孔280から減圧吸引して鋳型凹部220にコア形成用硬化性樹脂を充填する。その後該樹脂を硬化させ鋳型を剥離すると、図4(E)に示されるように、クラッドフィルム300上に光導波路コア320が形成される。
【0039】
この後、導波路コアが形成されたクラッドフィルムの上に、クラッドフィルム400を形成し(図4(F)参照)、最後に貫通孔260及び280内で硬化した樹脂部分をダイシングソー等で切り落として光導波路フィルム10とする(図4(G)参照)。
【0040】
次に、各工程について詳述する。
1)鋳型形成用硬化性樹脂の硬化層から形成され、かつ、導波路コア凸部に対応する凹部と、該凹部の一端及び他端にそれぞれ連通する貫通孔が2つ以上設けられた鋳型を準備する工程
鋳型の作製は、導波路コアに対応する凸部を形成した原盤を用いて行うことが好ましいが、これに限定されるものではない。以下では、原盤を用いる方法について説明する。
【0041】
<原盤の作製>
導波路コアに対応する凸部を形成した原盤の作製には、従来の方法、例えばフォトリソグラフィー法を特に制限なく用いることができる。また、本出願人が先に出願した電着法又は光電着法により高分子光導波路を作製する方法(特願2002−10240号)も、原盤を作製するのに適用できる。原盤に形成される光導波路に対応する凸部の大きさは高分子光導波路の用途等に応じて適宜決められる。例えばシングルモード用の光導波路の場合には、10μm角程度の導波路コアを、マルチモード用の光導波路の場合には、50〜100μm角程度の導波路コアが一般的に用いられる。しかしながら、用途によっては数百μm角程度とさらに大きなコア部を持つ光導波路も利用される。
【0042】
<鋳型の作製>
鋳型作製の一例として、前記のようにして作製した原盤の凸部形成面に、鋳型作製用硬化性樹脂を塗布したり注型する等の方法により鋳型形成用硬化性樹脂の層を形成した後、必要に応じて乾燥処理をし、硬化処理を行い、その後硬化樹脂層を原盤から剥離して前記凸部に対応する凹部が形成された型をとり、その型に凹部の一端及び他端にそれぞれ連通する貫通孔を形成する方法が挙げられる。前記連通孔は、例えば、前記型を所定形状に打ち抜くことにより形成できる。打ち抜いた貫通孔の場合であっても、鋳型とクラッド用フィルム基材との密着性がよく、鋳型凹部以外にクラッドフィルムとの間に空隙が形成されないため、凹部以外にコア形成用硬化性樹脂が浸透するところはない。
前記型(樹脂硬化層)の厚さは、鋳型としての取扱性を考慮して適宜決められるが、一般的に0.1〜50mm程度が適切である。
また、前記原盤にはあらかじめ離型剤塗布等の離型処理を行って鋳型との剥離を促進することが望ましい。
【0043】
コア形成用硬化性樹脂進入側に設ける貫通孔は液(コア形成用硬化性樹脂)溜めの機能を有する。進入側の貫通孔の形状や大きさは、貫通孔が凹部の進入端に連通し、かつ、液溜めの機能を有していれば特に制限はないが、液溜め機能を有するため、その断面積が、鋳型をクラッドフィルムに密着させた場合、該基材に接する側が大きく基材から離れるに従い小さくなるような錐形にすると、コア形成用硬化性樹脂を凹部に充填、硬化後、鋳型とコア用樹脂が硬化形成されたクラッドフィルムとの剥離がしやすくなる。また、コア形成用硬化性樹脂排出側に設ける貫通孔は、該樹脂を鋳型凹部に充填する際、鋳型凹部を減圧するための減圧吸引口に用いられる。排出側の貫通孔は、凹部の排出端に連通し、かつ、減圧吸引に用いることができれば、その形状や大きさに特に制限はない。
【0044】
次に鋳型作製の他の例として、原盤に光導波路コアに対応する凸部だけでなく貫通孔形成のための凸部(この凸部の高さは鋳型形成用硬化性樹脂の硬化層の厚さより高くする)を設け、この原盤に鋳型形成用硬化性樹脂を貫通孔形成のための凸部が樹脂層を突き抜けるように塗布等し、次いで樹脂層を硬化させ、その後硬化樹脂層を原盤から剥離する方法を挙げることができる。
【0045】
鋳型作製に用いる鋳型作製用硬化性樹脂としては、その硬化物が原盤から容易に剥離できること、鋳型(繰返し使用する)として一定以上の機械的強度や寸法安定性を有すること、凹部形状を維持する硬さ(硬度)を有すること、クラッドフィルムとの密着性が良好なことが好ましい。鋳型形成用硬化性樹脂には、必要に応じて各種添加剤を加えることができる。
【0046】
鋳型形成用硬化性樹脂には、原盤の表面に塗布や注型等することが可能で、また、原盤に形成された個々の光導波路コアに対応する凸部を正確に転写しなければならないので、ある限度以下の粘度、例えば、500〜7000mPa・s程度を有することが好ましい。(尚、本発明において用いる「鋳型形成用硬化性樹脂」の中には、硬化後、弾性を有するコム状体となるものも含まれる。)また、粘度調節のために溶剤を、溶剤の悪影響が出ない程度に加えることができる。
【0047】
前記鋳型形成用硬化性樹脂としては、前記のごとき剥離性、機械強度・寸法安定性、硬度、クラッド用基材との密着性の点から、硬化後、シリコーンゴム(シリコーンエラストマー)又はシリコーン樹脂となる硬化性オルガノポリシロキサンが好ましく用いられる。前記硬化性オルガノポリシロキサンは、分子中にメチルシロキサン基、エチルシロキサン基、フェニルシロキサン基を含むものが好ましい。また、前記硬化性オルガノポリシロキサンは、一液性のものでもまた硬化剤と併せて用いる二液性のものでもよく、また、熱硬化型のものでも、また室温硬化型(例えば空気中の水分で硬化するもの)のものでもよく、更に他の硬化(紫外線硬化等)を利用するものであってもよい。
【0048】
硬化性オルガノポリシロキサンとしては、硬化後シリコーンゴムとなるものが好ましく、これには通常液状シリコーンゴム(「液状」の中にはペースト状のように粘度の高いものも含まれる)と称されているものが用いられ、硬化剤と組み合わせて用いる二液型のものが好ましく、中でも付加型の液状シリコーンゴムは、表面と内部が均一にかつ短時間に硬化し、またその際、副生成物がなく又は少なく、かつ離型性に優れ、収縮率も小さいので好ましい。
【0049】
前記液状シリコーンゴムの中でも特にジメチルシロキサンゴムが密着性、剥離性、強度及び硬度の点から好ましい。また、液状ジメチルシロキサンゴムの硬化物は、一般に屈折率が1.43程度と低いために、これから作った鋳型は、クラッド用基材から剥離させずに、そのままクラッドフィルムとして好ましく利用することができる。この場合には、鋳型と、充填したコア形成用樹脂及びクラッド用基材とが剥がれないような工夫が必要になる。
【0050】
液状シリコーンゴムの粘度は、光導波路コアに対応する凸部を正確に転写し、かつ気泡の混入を少なくして脱泡し易くする観点と、数ミリの厚さの鋳型形成の点から、500〜7000mPa・s程度のものがより好ましい。
【0051】
鋳型の表面エネルギーは、10〜30dyn/cm、好ましくは15〜24dyn/cmの範囲にあることが基材フィルムとの密着性の点からみて好ましい。
鋳型のシェア(Share)ゴム硬度は、15〜80、好ましくは20〜60であることが、型取り性能や凹部形状の維持、剥離性の点からみて好ましい。
鋳型の表面粗さ(二乗平均粗さ(RMS))は、0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下にすることが、型取り性能の点からみて好ましい。
【0052】
また、鋳型は、紫外線領域及び/又は可視領域において光透過性であることが好ましい。鋳型が可視領域において光透過性であることが好ましいのは、以下の2)の工程において鋳型をクラッドフィルムに密着させる際に位置決めが容易に行え、また以下の3)の工程において、コア形成用硬化性樹脂が鋳型凹部に充填される様子が観察でき、充填完了等が容易に確認しうるからである。また鋳型が紫外領域において光透過性であることが好ましいのは、コア形成用硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合に、鋳型を透して紫外線硬化を行うためであり、鋳型の紫外領域(250〜400nm)における透過率が80%以上であることが好ましい。
【0053】
前記硬化性オルガノポリシロキサン、中でも硬化後シリコーンゴムとなる液状シリコーンゴムは、クラッドフィルムとの密着性と剥離性という相反した特性に優れ、ナノ構造を転写する能力を持ち、シリコーンゴムとクラッドフィルムを密着させると液体の侵入を防ぐことができる。このようなシリコーンゴムを用いた鋳型は、高精度に原盤を転写し、クラッドフィルムに良く密着するため、鋳型とクラッドフィルムの間の凹部のみに効率良くコア形成用樹脂を充填することが可能となり、さらにクラッドフィルムと鋳型の剥離も容易である。従って、この鋳型からは高精度に形状を維持した高分子導波路を、極めて簡便に作製することができる。
【0054】
2)鋳型に、鋳型との密着性が良好な下部クラッドフィルムを密着させる工程
本発明の高分子光導波路から作製される光学素子は、種々の階層における光配線に用いられるので、前記クラッドフィルムの材料は光学素子の用途に応じ、屈折率、光透過性等の光学的特性、機械的強度、耐熱性、鋳型との密着性、フレキシビリティー等を考慮して選択される。
【0055】
前記フィルムとしては、指環式アクリル樹脂フィルム、指環式オレフィン樹脂フィルム、三酢酸セルロースフィルム、含フッ素樹脂フィルム等が挙げられる。フィルム基材の屈折率は、導波路コアとの屈折率差を確保するため、1.55より小さく、好ましくは1.52より小さくすることが望ましい。クラッドフィルムは可撓性を有していることが好ましい。
前記脂環式アクリル樹脂フィルムとしてはトリシクロデカン等の脂肪族環状炭化水素をエステル置換基に導入した、OZ−1000、OZ−1100(日立化成(株)製)等が用いられる。
【0056】
また、指環式オレフィン樹脂フィルムとしては、主鎖にノルボルネン構造を有するもの、及び主鎖にノルボルネン構造を有し、かつ側鎖にアルキルオキシカルボニル基(アルキル基としては炭素数1から6のものやシクロアルキル基)等の極性基をもつものが挙げられる。中でも前記のごとき主鎖にノルボルネン構造を有しかつ側鎖にアルキルオキシカルボニル基等の極性基をもつ指環式オレフィン樹脂は、低屈折率(屈折率が1.50近辺であり、コア・クラッドの屈折率の差を確保できる)及び高い光透過性等の優れた光学特性と有し、鋳型との密着性に優れ、更に耐熱性に優れているので特に本発明の光導波路シートの作製に適している。
【0057】
また、前記クラッドフィルムの厚さは、積層する際のハンドリングの容易さや、光導波路フィルムに与える機械的強度を保つために、少なくとも20μmあることが望ましい。フィルムの厚さが20μmより薄いと製造時に導波路コア部分に曲げの力が加わり、コア部分に歪みが入り易く、歩留まりの悪化もしくは性能が著しく低下する。また、光導波路フィルムの機械強度を確保する意味ではクラッドフィルムは厚い方が望ましい。
【0058】
一方、クラッドフィルムは、受光素子及び発光素子にマイクロレンズを介さず、またモニター光は導波路コアから空気に出て伝搬するため、その厚さはそのまま、光導波路フィルムの光路変換用ミラー面と発光点との間の光路長、及び導波光が漏出する切れ込み部から該漏出した導波光を光路変換する面、そして受光素子の受光点との間の光路長となる。従って、結合効率を高めるためにはクラッドフィルムの厚さは薄い方が望ましい。このことを考慮すると、クラッドフィルムの厚さ上限は、200μm以下、望ましくは100μm以下更に望ましくは70μm以下となる。
【0059】
3)下部クラッドフィルムを密着させた鋳型の凹部の一端にある貫通孔に、コア形成用硬化性樹脂を充填し、鋳型の凹部の他端にある貫通孔から減圧吸引してコア形成用硬化性樹脂を前記鋳型に凹部に充填する工程
この工程においては、コア形成用硬化性樹脂を、該樹脂の進入部側に設けた貫通孔に充填し、該樹脂の排出側に設けた貫通孔から減圧吸引して、鋳型とクラッドフィルムとの間に形成された空隙(鋳型の凹部)に充填する。減圧吸引することにより、鋳型とクラッドフィルムとの密着性が向上し、気泡の混入を避けることができる。減圧吸引は、例えば、吸引管を排出部側に設けた貫通孔に挿入し、吸引管をポンプにつなげて行われる。
コア形成用硬化性樹脂としては、放射線硬化性、電子線硬化性、熱硬化性等の樹脂を用いることができ、中でも紫外線硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。
前記コア形成用の紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂としては、紫外線硬化性又は熱硬化性のモノマー、オリゴマー若しくはモノマーとオリゴマーの混合物が好ましく用いられる。
【0060】
また、前記紫外線硬化性樹脂として、エポキシ系、ポリイミド系、アクリル系紫外線硬化性樹脂が好ましく用いられる。
コア形成用硬化性樹脂は、毛細管現象により鋳型とクラッドフィルムの間に形成された空隙(鋳型の凹部)に充填されるため、用いるコア形成用硬化性樹脂はそれが可能なように十分低粘度であることが必要である。従って、前記硬化性樹脂の粘度は、10〜2000mPa・s、望ましくは20〜1000mPa・s、更に望ましくは30〜500mPa・sにするのが好ましい。
【0061】
この他に原盤に形成された光導波路コアに対応する凸部が有する元の形状を高精度に再現するため、前記硬化性樹脂の硬化前後の体積変化の小さいことが必要である。例えば、体積が減少すると導波損失の原因になる。従って、コア形成用硬化性樹脂は、体積変化ができるだけ小さいものが望ましく、10%以下、好ましくは6%以下であるのが望ましい。溶剤を用いて低粘度化することは、硬化前後の体積変化が大きいので、できれば避ける方が好ましい。
【0062】
コア形成用硬化性樹脂の硬化後の体積変化(収縮)を小さくするため、前記樹脂にポリマーを添加することができる。前記ポリマーはコア形成用硬化性樹脂との相溶性を有し、かつ該樹脂の屈折率、弾性率、透過性に悪影響を及ぼさないものが好ましい。またポリマーを添加することにより体積変化を小さくする他、粘度や硬化樹脂のガラス転移点を高度に制御できる。前記ポリマーとしては、例えばアクリル系、メタクリル酸系、エポキシ系のものが用いられるがこれに限定されるものではない。
【0063】
コア形成用硬化性樹脂の硬化物の屈折率は、クラッドとなる前記フィルム(以下5)の工程における積層するクラッドフィルムを含む)より大きいことが必要で、1.50以上、好ましくは1.53以上である。クラッド(以下の5)の工程における積層するクラッドフィルムを含む)と導波路コアの屈折率の差は、0.01以上、好ましくは0.02以上である。
【0064】
4)充填したコア形成溶硬化性樹脂を硬化させ、鋳型を下部クラッドフィルムから剥離する工程
この工程では充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させる。紫外線硬化性樹脂を硬化させるには、紫外線ランプ、紫外線LED、紫外線照射装置等が用いられ、熱硬化性樹脂を硬化させるには、オーブン中での加熱等が用いられる。
また前記1)〜3)の工程で用いる鋳型は、屈折率等の条件を満たせばそのまま積層するクラッドフィルムに用いることも可能で、この場合には、鋳型を剥離する必要はなく、そのまま積層するクラッドフィルムとして利用することができる。この場合、鋳型とコア材料の接着性を向上させるために鋳型をオゾン処理することが好ましい。
【0065】
5)導波路コアが形成された下部クラッドフィルムの上に上部クラッドフィルムを形成する工程
導波路コアが形成された下部クラッドフィルムの上に上部クラッドフィルムを形成するが、積層する上部クラッドフィルムとしては、フィルム(例えば前記2)の工程で用いたようなクラッドフィルムが同様に用いられる)や、クラッド用硬化性樹脂を塗布して硬化させた層、高分子材料の溶剤溶液を塗布して乾燥して得られる高分子膜等が挙げられる。クラッド用硬化性樹脂としては、紫外線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が好ましく用いられ、例えば、紫外線硬化性又は熱硬化性のモノマー、オリゴマー若しくはモノマーとオリゴマーの混合物が用いられる。紫外線硬化性樹脂としては、アクリル系、エポキシ系等各種存在するが、無溶剤系のもので体積収縮率が4〜5%のものが市販されており入手可能である。紫外線硬化性樹脂を用いることによって、良好な光透過性を確保することができる。熱硬化性樹脂は紫外線硬化性樹脂に比べ体積収縮率はより小さいが、一般的にその反面光透過性が若干低下する。
【0066】
クラッド用硬化性樹脂の硬化後の体積変化(収縮)を小さくするために、該樹脂と相溶性を有し、また該樹脂の屈折率、弾性率、透過特性に悪影響を及ぼさないポリマー(例えばメタクリル酸系、エポキシ系)を該樹脂に添加することができる。
【0067】
積層する上部クラッドフィルムとしてフィルムを用いる場合は、接着剤を用いて貼り合わされるが、その際、接着剤の屈折率が該フィルムの屈折率が近いことが望ましい。用いる接着剤は紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂が好ましく用いられ、例えば、紫外線硬化性又は熱硬化性のモノマー、オリゴマー若しくはモノマーとオリゴマーの混合物が用いられる。
前記紫外線硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂の硬化後の体積変化(収縮)を小さくするために、積層するクラッドフィルムに添加するポリマーと同様のポリマーを添加することができる。
積層するクラッドフィルムの屈折率は、導波路コアとの屈折率差を確保するため、1.55以下、好ましくは1.52以下にすることが望ましい。また積層するクラッドフィルムの屈折率を前記フィルム基材の屈折率と同じにすることが、光の閉じ込めの点からみて好ましい。
【0068】
6)上部クラッドフィルムまたは下部クラッドフィルムの表面から、導波路コアの一部に導波光が漏出する漏出面と、該漏出面から漏出した導波光を光路変換する光路変換面とを有する切れ込み部を形成する工程、
この工程においては、導波路コアの一部に導波光が漏出する漏出面と、該漏出した導波光を光路変換する光路変換面を有する切れ込み部を形成する。これは、既述の本発明の導波路型光モジュールにおいて説明したので説明を省略する。
【0069】
また、前記6)の工程の前後に、既述のように光路変換用ミラー面を形成する工程を設けることができる。
【実施例】
【0070】
以下に実施例を示し本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0071】
[実施例1]
<原盤の作製>
Si基板に厚膜レジスト(マイクロケミカル(株)製、SU−8)をスピンコート法で塗布した後、80℃でプリベークし、フォトマスクを介して露光して、現像し、断面が正方形の4本の導波路コア凸部(幅:50μm,高さ:50μm,長さ:50mm,250μmピッチ)を形成した。次に、これを120℃でポストベークして、導波路コア作製用原盤を作製した。
【0072】
<鋳型の作製>
次に、この原盤に離型剤を塗布した後、熱硬化性ジメチルシロキサン樹脂(ダウコウニングアジア社製:SYLGARD184)を流し込み、120℃で30分間加熱して固化させた後剥離して、断面が正方形の光導波路用及びアライメントマーク用凸部に対応する凹部を持った鋳型(鋳型の厚さ:5mm)を作製した。
さらに、前記凹部の両端が露出するように鋳型凹部の両端にそれぞれ直径3mmの貫通孔を形成し、下記紫外線硬化性樹脂の入出力部を作り鋳型とした。
【0073】
<光導波路フィルムの作製>
この鋳型と、鋳型より一回り大きい設計膜厚100μmのフィルム基材(下部クラッドフィルム、JSR(株)製,アートンフィルム,屈折率1.510)とを用意した。このフィルム基材と鋳型を密着させた。次に、鋳型に形成されている光導波路作製用凹部の各一端の孔に、粘度が1300mPa・sの紫外線硬化性樹脂を数滴垂らし、ダイヤフラム式吸引ポンプ(最大吸引圧33.25kPa)で20kPaの吸引力で吸引したところ、前記各凹部に紫外線硬化性樹脂が充填された。次いで、50mW/cm2の紫外光を鋳型を透して5分間照射して紫外線硬化させた。鋳型をフィルム基材から剥離したところ、フィルム基材上に前記原盤凸部と同じ形状の導波路コアが形成された。導波路コアの屈折率は1.53であった。その上に屈折率1.51のクラッド用紫外線硬化性樹脂及び厚さ100μmのアートンフィルム(上部クラッドフィルム)を積層し、50mW/cm2の紫外光を10分間照射して硬化させ、2枚のフィルム基材でサンドイッチ構造をもつ光導波路フィルムを作製した。さらにダイシングソーで導波路コアが中心に位置するように幅2mmに切断し、さらに光ファイバとの接合部分を導波路コアと直交する方向に真直ぐ切断して垂直な鏡面を露出させた。
【0074】
<光路変換面の作製>
前記垂直な鏡面から25mm離れた位置に、まずVCSEL光を入力するための45°ミラー面を作製した。これは、ダイシングソーに先端断面45°形状のダイシングブレードを取り付け、ダイシングすることで作製した。さらに45°ミラー面と垂直鏡面の間であって、45°ミラー面先端部(光導波路フィルム先端部)から2mm離れた位置において、該光導波路フィルムの下部クラッドフィルム基材下表面から導波路コアに、導波路コア下面から5μmの深さとなるように切れ込み部を作製した。この際、該切れ込み部略垂直面が、該光導波路フィルムの45°ミラー面側となるように加工し、漏出した導波光を光路変換する面の傾斜角が45°となるように加工した。
【0075】
<導波路型光モジュール作製>
セラミックパッケージを用意し、発光素子として1×4VCSEL(富士ゼロックス製)及び駆動ドライバを実装した。VCSELに隣接して1×4のPD(モニター用フォトディテクター(モニター用受光素子))を実装し、PDからの出力を駆動ドライバのフィードバックポートに接続した。
光導波路フィルムを、クラッド用硬化性樹脂を用いて、VCSEL及びPD上に接着した。その際に45°ミラー面の位置がVCSEL発光面に、途中の切れ込み部により形成された空隙にモニター用PDが配置されるように接着した。
さらに光導波路フィルム端部に、市販のMTコネクタと互換性のあるコネクタを接着により取り付け、導波路型光モジュールを完成させた。
【0076】
この光モジュールの挿入損失は、VCSELの出力を基準として、2.8dBで、各ポートのバラツキは、0.2dBに収まった。
また、モニタPDで光出力の変化量が観測され、フィードバック制御によるVCSELの駆動電流を変化させることで、外部温度が80℃まで安定した出力を確保した。
【0077】
[比較例1]
モニター用PDを持たないこと以外は、実施例1と同様にして、同様の構造の導波路型光モジュールを作製したところ、外部温度が20℃の時に対して、80℃まで上がったときの出力が1/10に減少してしまった。
【0078】
[実施例2]
<原盤の作製>
Si基板に厚膜レジスト(マイクロケミカル(株)製、SU−8)をスピンコート法で塗布した後、80℃でプリベークし、フォトマスクを通して露光して、現像し、断面が正方形の4本の光導波路凸部(幅:50μm,高さ:50μm,長さ:50mm,250μmピッチ)を形成した。次に、これを120℃でポストベークして、導波路コア作製用原盤を作製した。
【0079】
<鋳型の作製>
次に、この原盤に離型剤を塗布した後、熱硬化性ジメチルシロキサン樹脂(ダウコウニングアジア社製:SYLGARD184)を流し込み、120℃で30分間加熱して固化させた後剥離して、断面が正方形の光導波路用及びアライメントマーク用凸部に対応する凹部を持った型(鋳型の厚さ:5mm)を作製した。
さらに、前記凹部の両端が露出するように鋳型凹部の両端にそれぞれ直径3mmの貫通孔を形成し、下記紫外線硬化性樹脂の入出力部を作り鋳型とした。
【0080】
<光導波路フィルムの作製>
この鋳型と、鋳型より一回り大きい設計膜厚100μmのフィルム基材(下部クラッドフィルム、JSR(株)製,アートンフィルム,屈折率1.510)とを用意した。このフィルム基材と鋳型を密着させた。次に、鋳型に形成されている光導波路作製用凹部の各一端の孔に、粘度が1300mPa・sの紫外線硬化性樹脂を数滴垂らし、ダイヤフラム式吸引ポンプ(最大吸引圧33.25kPa)で20kPaの吸引力で吸引したところ、前記各凹部に紫外線硬化性樹脂が充填された。次いで、50mW/cm2の紫外光を鋳型を透して5分間照射して紫外線硬化させた。鋳型をフィルム基材から剥離したところ、フィルム基材上に前記原盤凸部と同じ形状の導波路コアが形成された。導波路コアの屈折率は1.53であった。その上に屈折率1.51のクラッド用紫外線硬化性樹脂及び厚さ100μmのアートンフィルム(上部クラッドフィルム)を積層し、50mW/cm2の紫外光を10分間照射して硬化させ、2枚のフィルム基材でサンドイッチ構造をもつ光導波路フィルムを作製した。さらにダイシングソーで導波路コアが中心に位置するように幅2mmに切断し、さらに光ファイバとの接合部分を導波路コアと直交する方向に真直ぐ切断して垂直な鏡面を露出させた。
【0081】
<光路変換面の作製>
前記垂直な鏡面から25mm離れた位置に、まずVCSEL光を入力するための45°ミラー面を作製した。これは、ダイシングソーに先端断面45°形状のダイシングブレードを取り付け、ダイシングすることで作製した。さらに45°ミラー面と垂直鏡面の間であって、45°ミラー面先端部(光導波路フィルム先端部)から2mm離れた位置において、該光導波路フィルムの下部クラッドフィルム基材下表面から導波路コアに、導波路コア下面から5μmの深さとなるように切れ込み部を作製した。この際、該切れ込み部略垂直面が、該光導波路フィルムの45°ミラー面側となるように加工し、漏出した導波光を光路変換する面の傾斜角が60°となるように加工した。
【0082】
<導波路型光モジュール作製>
セラミックパッケージを用意し、発光素子として1×4VCSEL(富士ゼロックス製)及び駆動ドライバを実装した。VCSELに隣接して1×4のPD(モニター用フォトディテクター(モニター用受光素子))を実装し、PDからの出力を駆動ドライバのフィードバックポートに接続した。
光導波路フィルムを、クラッド用硬化性樹脂を用いて、VCSEL及びPD上に接着した。その際に45°ミラー面の位置がVCSEL発光面に、途中の切れ込み部により形成された空隙にモニター用PDが配置されるように接着した。
導波路コアからの漏出光を光路変換させる面の傾斜が浅くなったことで、PD電極と駆動ドライバの結線用ボンディングワイヤーを配線するスペースが広がり、配置や実装がしやすくなった。
さらに光導波路フィルム端部に、市販のMTコネクタと互換性のあるコネクタを接着により取り付け、光モジュールを完成させた。
【0083】
この光モジュールの挿入損失は、VCSELの出力を基準として、2.8dBで、各ポートのバラツキは、0.2dBに収まった。
また、モニタPDで光出力の変化量が観測され、フィードバック制御によるVCSELの駆動電流を変化させることで、外部温度が80℃まで安定した出力を確保した。
【0084】
[実施例3]
<原盤の作製>
Si基板に厚膜レジスト(マイクロケミカル(株)製、SU−8)をスピンコート法で塗布した後、80℃でプリベークし、フォトマスクを通して露光して、現像し、断面が正方形の4本の光導波路凸部(幅:50μm,高さ:50μm,長さ:50mm,250μmピッチ)を形成した。次に、これを120℃でポストベークして、導波路コア作製用原盤を作製した。
【0085】
<鋳型の作製>
次に、この原盤に離型剤を塗布した後、熱硬化性ジメチルシロキサン樹脂(ダウコウニングアジア社製:SYLGARD184)を流し込み、120℃で30分間加熱して固化させた後剥離して、断面が正方形の光導波路用及びアライメントマーク用凸部に対応する凹部を持った型(鋳型の厚さ:5mm)を作製した。
さらに、前記凹部の両端が露出するように鋳型凹部の両端にそれぞれ直径3mmの貫通孔を形成し、下記紫外線硬化性樹脂の入出力部を作り鋳型とした。
【0086】
<光導波路フィルムの作製>
この鋳型と、鋳型より一回り大きい設計膜厚100μmのフィルム基材(下部クラッドフィルム、JSR(株)製,アートンフィルム,屈折率1.510)とを用意した。このフィルム基材と鋳型を密着させた。次に、鋳型に形成されている光導波路作製用凹部の各一端の孔に、粘度が1300mPa・sの紫外線硬化性樹脂を数滴垂らし、ダイヤフラム式吸引ポンプ(最大吸引圧33.25kPa)で20kPaの吸引力で吸引したところ、前記各凹部に紫外線硬化性樹脂が充填された。次いで、50mW/cm2の紫外光を鋳型を透して5分間照射して紫外線硬化させた。鋳型をフィルム基材から剥離したところ、フィルム基材上に前記原盤凸部と同じ形状の導波路コアが形成された。導波路コアの屈折率は1.53であった。その上に屈折率1.51のクラッド用紫外線硬化性樹脂及び厚さ100μmのアートンフィルム(上部クラッドフィルム)を積層し、50mW/cm2の紫外光を10分間照射して硬化させ、2枚のフィルム基材でサンドイッチ構造をもつ光導波路フィルムを形成した。さらにダイシングソーで導波路コアが中心に位置するように幅2mmに切断し、さらに光ファイバとの接合部分を導波路コアと直交する方向に真直ぐ切断して垂直な鏡面を露出させた。
【0087】
<光路変換面の作製>
前記垂直な鏡面から25mm離れた位置に、まずVCSEL光を入力するための45°ミラー面を作製した。これは、ダイシングソーに先端断面45°形状のダイシングブレードを取り付け、ダイシングすることで作製した。さらに45°ミラー面と垂直鏡面の間であって、45°ミラー面先端部(光導波路フィルム先端部)から2mm離れた位置において、該光導波路フィルムの上部クラッドフィルム基材上表面から導波路コアに、導波路コア上面から5μmの深さとなるように45°の切れ込み部を作製した。この際、該切れ込み部略垂直面が、該光導波路フィルムの45°ミラー面側となるように加工し、漏出した導波光を光路変換する面も45°となるように加工した。
【0088】
<導波路型光モジュール作製>
セラミックパッケージを用意し、発光素子として1×4VCSEL(富士ゼロックス製)及び駆動ドライバを実装した。
光導波路フィルムを、クラッド用硬化性樹脂を用いて、VCSELに接着した。その際に45°ミラー面の位置がVCSEL発光面に配置されるように接着した。
次に、裏面入射型PD(浜松ホトニクス製)を、光導波路フィルムの途中切れ込み部で漏出し光路変換された導波光がモニターできる位置に合わせ、光導波路フィルム上に接着し、該裏面入射型PDからの出力を駆動ドライバのフィードバックポートに接続した。
モニターするための光導波路フィルムの途中切れ込み部を、該フィルム上面から加工することで、ダイシングソー切削による、45°ミラー面形成と、該切れ込み部の形成が、同一工程で行えるため、工程削減、ハンドリング作業の低減及び該作業に伴う精度バラツキ抑制を行うことができた。
さらに光導波路フィルム端部に、市販のMTコネクタと互換性のあるコネクタを接着により取り付け、導波路型光モジュールを完成させた。
【0089】
この導波路型光モジュールの挿入損失は、VCSELの出力を基準として、2.8dBで、各ポートのバラツキは、0.2dBに収まった。
また、モニタPDで光出力の変化量が観測され、フィードバック制御によるVCSELの駆動電流を変化させることで、外部温度が80℃まで安定した出力を確保した。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の導波路型光モジュールの態様を示す図であり、図1(A)及び図1(B)は、切れ込み部がセラミックパッケージ側である下側に形成されている態様を、図1(C)は、切れ込み部がセラミックパッケージと反対側に形成されている態様を示す。
【図2】本発明の導波路型光モジュールの態様を示す図で、図2(A)は平面図を、図2(B)はX−X断面図を、図2(C)はY−Y断面図を示す。
【図3】図2(A)のA部分を示す詳細図である。
【図4】光導波路フィルムの作製プロセスを示す概念図である。
【符号の説明】
【0091】
10 光導波路フィルム
10a 光路変換用ミラー面
12 下部クラッドフィルム
14 導波路コア
16 上部クラッドフィルム
18 切れ込み部
18a 漏出面
18b 光路変換面
20 発光素子
30 モニター用受光素子
40 セラミックパッケージ
60 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、該発光素子から出射した光を導波光として導く導波路コアを有する光導波路フィルムと、前記発光素子の出力をモニターするモニター用受光素子と、を有する導波路型光モジュールであって、
前記光導波路フィルムにおける導波路コアはその一部に、導波光が漏出する漏出面と、該漏出面から漏出した導波光を前記モニター用受光素子の受光面の方向に光路変換する光路変換面とを有する切れ込み部が設けられていることを特徴とする導波路型光モジュール。
【請求項2】
前記発光素子が平面型発光素子であり、該平面型発光素子の光出射部が前記光導波路フィルムの端部近傍の側面に結合されていて、かつ前記光導波路フィルムの前記平面型発光素子との結合部と対向する位置に、前記平面型発光素子から出射した導波光を反射し光路変換する光路変換用ミラー面を有することを特徴とする請求項1に記載の導波路型光モジュール。
【請求項3】
前記切れ込み部の漏出面と光路変換面とが空気に接していることを特徴とする請求項1に記載の導波路型光モジュール。
【請求項4】
前記光路変換面が、導波路コアの延伸方向に対し30°〜60°傾斜している面であることを特徴とする請求項1に記載の導波路型光モジュール。
【請求項5】
請求項1に記載の導波路型光モジュールに用いる光導波路フィルムであって、下部クラッドフィルム、導波路コア、及び上部クラッドフィルムを有し、前記導波路コアはその一部に導波光が漏出する漏出面と、該漏出面から漏出した導波光を光路変換する光路変換面とを有する切れ込み部を有することを特徴とする光導波路フィルム。
【請求項6】
請求項5に記載の光導波路フィルムの製造方法であって、
1)鋳型形成用硬化性樹脂の硬化層から形成され、かつ、導波路コア凸部に対する凹部と、該凹部の一端及び他端にそれぞれ連通する貫通孔が2以上設けられた鋳型を準備する工程、
2)前記鋳型に該鋳型との密着性が良好な下部クラッドフィルムを密着させる工程、
3)下部クラッドフィルムを密着させた鋳型の凹部の一端にある貫通孔に、コア形成用硬化性樹脂を充填し、鋳型の凹部の他端にある貫通孔から減圧吸引してコア形成用硬化性樹脂を前記鋳型凹部に充填する工程、
4)充填したコア形成用硬化性樹脂を硬化させ、鋳型を下部クラッドフィルムから剥離する工程、
5)導波路コアが形成された下部クラッドフィルムの上に上部クラッドフィルムを形成する工程、
6)上部クラッドフィルムまたは下部クラッドフィルムの表面から、導波路コアの一部に導波光が漏出する漏出面と、該漏出面から漏出した導波光を光路変換する光路変換面とを有する切れ込み部を形成する工程、
を有することを特徴とする光導波路フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記切れ込み部における光路変換面を、光導波路フィルムに対する該光路変換面の傾斜角と同じ傾斜角を有するダイシングブレードを用いたダイシングソーの切削加工により形成することを特徴とする請求項6に記載の光導波路フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記光導波路フィルムの一端を、45°傾斜付きダイシングブレードを用いたダイシングソーの切削加工によりミラー面を形成することを特徴とする請求項6に記載の光導波路フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−208794(P2006−208794A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21594(P2005−21594)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】