説明

導電ポスト形成方法、多層配線基板の製造方法及び電子機器の製造方法

【課題】位置や大きさの制御性に優れた導電ポスト形成方法、多層配線基板の製造方法、電子機器の製造方法。
【解決手段】絶縁層18に覆われる導電層14に絶縁層18を貫通して接続する導電ポスト24の形成方法であって、導電層14上の導電ポスト形成領域に撥液材料を配置し、厚みが100nm以下となるように撥液部16を形成する工程と、撥液部16が形成された導電層14上に絶縁層形成材料を含む第2液状体L2を配置し、絶縁層形成材料を重合させて導電ポスト形成領域と重なる領域に開口部19を有する絶縁層18を形成する工程と、開口部19に金属微粒子22Aを配置する工程と、金属微粒子22Aを金属微粒子22Aの融着温度以上の温度で加熱し、金属微粒子22A同士を融着させて導電ポスト24を形成すると共に、金属微粒子22Aと導電層14とを融着させて導電ポスト24と導電層14とを接続する工程と、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電ポスト形成方法、多層配線基板の製造方法及び電子機器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出法(インクジェット方式)を用いて所望の材料を含む液状体を吐出し、所定位置に着弾させることによって一定の材料パターンを形成する技術が活発に開発されている。このパターン形成技術は、用いるインクジェットヘッドの解像度に応じて微少な液状体を所望の位置に塗布することが可能であり、そのため微細なパターンの形成ができるという特長を有する。例えば、回路基板の微細な配線パターンを形成するには、配線材料または配線材料の溶液を塗布することにより配線パターンを形成することができる。
【0003】
しかしこの方法は、液状体を塗布する面の性質の影響を受けやすい。例えば、液状体の液滴を着弾させる箇所が液状体に対して濡れやすく(親液性)なっていると、塗布された液滴は所望の形状以上に塗れ広がってしまうことがある。逆に、着弾箇所が液状体に対して濡れにくく(撥液性)なっていると、液状体が着弾面で凝集し液溜り(バルジ)を形成してしまい、やはり所望の形状が形成できないという場合がある。
【0004】
ところで、近年の電子装置の小型化・多機能化という市場の要求に応え、電子回路は高密度化・高集積化する傾向を示している。この電子回路の高集積化を果たす技術の一つとしては、回路の多層配線構造が挙げられる。このような構造を備えた回路では、電子回路を平面的に形成するだけでなく、回路基板を積層させて縦方向にも回路を形成することで、小さい設置面積で高集積化された回路を実現している。このような多層配線構造を採る場合、各層の配線パターン同士を接続する方法としては、各層間の絶縁膜に導電ポストを形成し、形成した導電ポストを介して各層を接続するという方法が挙げられる。このような方法を採用する場合には、回路の高密度化・高集積化の要求のため、形成する導電ポストも微細なものであることが求められている。
【0005】
この導電ポストを形成する技術として、特許文献1や特許文献2には液滴吐出法を用いた形成方法が挙げられている。詳しくは、液滴吐出法にて絶縁膜の形成材料を含む液状体(絶縁インク)を塗布し層間絶縁膜を形成する際に、導電ポストの形成領域にのみ絶縁インクの塗布を行わないことで絶縁膜を形成しない領域を設け、この絶縁層を形成しない領域を導電ポストとする方法である。
【特許文献1】特開2003−282561号公報
【特許文献2】特開2006−140437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した方法では、例えば金属配線等の濡れ性がよい箇所に導電ポストを形成する場合に、塗布した絶縁インクが所望の領域外に濡れ広がりやすいため、導電ポストを所望の大きさに制御することが困難であるという課題があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、位置や大きさの制御性に優れた導電ポスト形成方法を提供することを目的とする。また、このような導電ポスト形成方法を用いて製造することにより、微細な導電ポストを備えた多層配線基板の製造方法を提供することを目的とする。更には、このような多層配線基板を備えた電子機器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための本発明の第1の導電ポスト形成方法は、絶縁層に覆われる導電層に前記絶縁層を貫通して接続する導電ポストの形成方法であって、前記導電層上の導電ポスト形成領域に撥液材料を配置し、厚みが100nm以下となるように撥液部を形成する工程と、前記撥液部が形成された前記導電層上に絶縁層形成材料を含む液状体を配置し、前記絶縁層形成材料を重合させて前記導電ポスト形成領域と重なる領域に開口部を有する前記絶縁層を形成する工程と、前記開口部に前記金属微粒子を配置する工程と、前記金属微粒子を前記金属微粒子の融着温度以上の温度で加熱し、前記金属微粒子同士を融着させて前記導電ポストを形成すると共に、前記金属微粒子と前記導電層とを融着させて前記導電ポストと前記導電層とを接続する工程と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
導電ポスト形成領域に撥液部が形成された導電層を覆って絶縁層形成材料を含む液状体(絶縁インク)を塗布すると、絶縁インクは撥液部の撥液性によりはじかれるため、導電ポスト形成領域に開口部を備えた絶縁層を容易に形成することができる。続いて導電ポスト形成領域に形成された開口部に金属微粒子を配置し、次いで金属微粒子の融着温度以上の温度で加熱すると、金属微粒子同士が融着し導電ポストを形成する。
【0010】
ここで、導電層上の導電ポスト形成領域には撥液部が形成されているが、この撥液部は厚みが100nm以下と微少量となっている。そのため、金属微粒子の融着温度以上の温度で加熱すると、撥液部の部分的な分解が起こりながら金属微粒子同士が融着し、また、融着による金属微粒子の形状変化により撥液部を押しのけ、やがて金属微粒子は撥液部を貫通して導電ポスト形成材料と接続する。結果、絶縁層を貫通して絶縁層に覆われる導電層に接続される導電ポストを形成することができる。したがってこの方法によれば、撥液部の撥液性により精度良く導電ポストの位置決めが出来る上に、導電ポストの形成材料に金属微粒子を用い、且つ撥液部の厚みを100nm以下にすることで確実に導電ポストと導電層との導通をとることができる。また、導電ポストの形成前に撥液部を除去する必要がないため作業が簡素化し、生産性を向上させることができる。
【0011】
また、上記の課題を解決するための第2の導電ポスト形成方法は、絶縁層に覆われる導電層に前記絶縁層を貫通して接続する導電ポストの形成方法であって、前記導電層を形成する導電層形成領域に金属微粒子を配置し、前記金属微粒子からなる金属微粒子層を形成する工程と、前記金属微粒子層上の導電ポスト形成領域に撥液材料を配置し、厚みが100nm以下となるように撥液部を形成する工程と、前記撥液部が形成された前記金属微粒子層上に絶縁層形成材料を含む液状体を配置し、前記絶縁層形成材料を重合させて前記金属微粒子層の前記導電ポスト形成領域と重なる領域に開口部を有する前記絶縁層を形成する工程と、前記開口部に導電ポスト形成材料を配置する工程と、前記金属微粒子層を前記金属微粒子の融着温度以上の温度で加熱し、前記金属微粒子同士を融着させて前記導電層を形成すると共に、前記金属微粒子と前記導電ポスト形成材料とを融着させて前記導電層と前記導電ポストとを接続する工程と、を備えていることを特徴とする。
【0012】
まず、金属微粒子を配置して金属微粒子層を形成した上で、金属微粒子層上の導電ポスト形成領域に撥液部を形成する。次いで、金属微粒子層を覆って絶縁インクを塗布すると、絶縁インクは撥液部の撥液性によりはじかれるため、導電ポスト形成領域に開口部を備えた絶縁層を容易に形成することができる。続いて、導電ポスト形成領域に形成された開口部に導電ポスト形成材料を配置した上、金属微粒子層を金属微粒子の融着温度以上の温度で加熱すると、金属微粒子層の金属微粒子同士が融着し導電層を形成する。
【0013】
ここで、金属微粒子層上の導電ポスト形成領域には撥液部が形成されているが、この撥液部は厚みが100nm以下と微少量となっている。そのため、金属微粒子の融着温度以上の温度で加熱すると、撥液部の部分的な分解が起こりながら金属微粒子同士が融着し、また、融着による金属微粒子の形状変化により撥液部を押しのけ、やがて金属微粒子は撥液部を貫通して導電ポストと接続する。結果、絶縁層を貫通して絶縁層に覆われる導電層に接続する導電ポストを形成することができる。したがってこの方法によれば、撥液部の撥液性により精度良く導電ポストの位置決めが出来る上に、導電層の形成材料に金属微粒子を用い、且つ撥液部の厚みを100nm以下にすることで確実に導電ポストと導電層との導通をとることができる。また、導電ポストの形成前に撥液部を除去する必要がないため作業が簡素化し、生産性を向上させることができる。
【0014】
本発明においては、前記導電ポスト形成材料は、前記金属微粒子層を構成する金属微粒子と同一の金属微粒子であり、前記金属微粒子層および前記導電ポスト形成材料を前記金属微粒子の融着温度以上の温度で加熱し、前記導電ポスト形成材料である前記金属微粒子同士を融着させて前記導電ポストを形成すると共に、前記金属微粒子層が備える前記金属微粒子と前記導電ポスト形成材料とを融着させて前記導電層と前記導電ポストとを接続することが望ましい。
この方法によれば、金属微粒子層を構成する金属微粒子と開口部に配置される金属微粒子の両方で溶融・融着が起こり、両方の金属微粒子が撥液部を貫通するように融着し成長する。そのため、より確実に導通が得られ容易に導電ポストを形成することができる。
【0015】
本発明においては、前記金属微粒子層を形成する工程は、前記導電層形成領域の周囲に撥液材料を配置し第2撥液部を形成する工程と、前記第2撥液部が周囲を囲む領域に前記金属微粒子を含む液状体を配置する工程と、を備えていることが望ましい。
この方法によれば、導電層形成領域からはみ出て配置された金属微粒子を含む液状体は第2撥液部にはじかれるため、所定の導電層形成領域に高精度に金属微粒子を配置することができる。そのため、高精度に形成された導電層に導電ポストを接続することが可能となる。
【0016】
本発明においては、前記金属微粒子層を形成する工程は、前記金属微粒子を含む液状体を配置した後、前記金属微粒子層の形成材料である前記金属微粒子を融着温度以上で加熱し、前記金属微粒子同士を部分的に融着させる工程を含むことが望ましい。
金属微粒子同士を部分的に融着させると、金属微粒子が互いに連結し配置した箇所に定着する。そのため、配置した金属微粒子がずれにくくなるため以後の加工工程が容易になり、確実に導電ポストを形成することができる。
【0017】
本発明においては、前記撥液部または前記第2撥液部は、液滴吐出法を用いて前記撥液材料を含む液状体を塗布することにより形成されることが望ましい。
この方法によれば、撥液材料の量や配置箇所を精密に制御し所望の形状を形成することが可能である。そのため、撥液部の形状を制御することで精細に導電ポストの位置や大きさを制御することができ、第2撥液部の形状を制御することで微細な形状の導電層を形成することができる。
【0018】
本発明においては、前記撥液材料は、シラン化合物又はフルオロアルキル基を含む化合物の少なくとも一方を含むことが望ましい。
この方法によれば、撥液材料として必要な撥液性を十分に確保し、良好な撥液部及び第2撥液部を形成することが出来る。
【0019】
本発明においては、前記撥液材料は、前記撥液材料を配置した面で自己組織化膜を形成することが望ましい。
この方法によれば、撥液材料を塗布すると自己組織化により即座に塗布面で単分子膜を形成し、良好な撥液性を発現することができる。そのため、容易に撥液部及び第2撥液部を形成することができる。また、使用する撥液材料の分子構造により単分子膜の膜厚が規定されるため、撥液材料の選択により撥液部の厚みを容易に制御でき、確実に撥液部の厚みを100nm以下とすることができる。
【0020】
本発明においては、前記撥液材料は前記撥液部または前記第2撥液部を構成する高分子の前駆体であり、前記撥液部または前記第2撥液部を形成する工程は、前記撥液材料を加熱して重合させる工程を含むことが望ましい。
この方法によれば、前駆体を加熱して重合させることにより確実に撥液性を発現させることができる。
【0021】
本発明においては、前記絶縁層形成材料は、光硬化性樹脂であることが望ましい。
光硬化性樹脂は一般に硬化収縮が少ないため、所望の形状の導電ポストを容易に形成することができる。また、短時間の光照射により樹脂が硬化するので、硬化中に配置した絶縁層形成材料が流動し形状が変形することを避け、導電ポストの形状・大きさを精度よく制御することができる。更に、短時間の光照射により樹脂が硬化し導電ポストを形成することができるので、熱硬化性樹脂と比較して作業効率が良く生産性を向上させることができる。
【0022】
また、本発明の多層配線基板の製造方法は、第1導電層と第2導電層とが絶縁層を介して積層され、前記第1導電層と前記第2導電層とが導電ポストを介して電気的に接続されてなる多層配線基板の製造方法であって、前記導電ポストは前述の導電ポスト形成方法により形成されることを特徴とする。
この方法によれば、優れた制御性で導電ポストの大きさが設定された小型化・高集積化された多層配線基板を製造することができる。また、前述の導電ポスト形成方法を用いることで導電ポストを形成する工程が簡素化し、生産効率を向上させることができる。
【0023】
また、本発明の電子機器の製造方法は、前述の多層配線基板の製造方法により製造される多層配線基板を用いることを特徴とする。
この方法によれば、高品質の多層配線基板を用いることで、高品質の電子機器を製造することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[第1実施形態]
【0025】
以下、図1〜図6を参照しながら、本発明の実施形態に係る導電ポスト形成方法について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の膜厚や寸法の比率などは適宜異ならせてある。
【0026】
(液滴吐出装置)
まず、図1及び図2を用いて、本実施形態に係る導電ポストの形成方法に用いる液滴吐出装置について説明する。本実施形態では、この液滴吐出装置をソルダーレジストの形成に用いる。図1は、液滴吐出装置の概略的な構成図である。本装置の説明においては、XYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。水平面内における所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、水平面の鉛直方向をZ軸方向とする。本実施形態の場合、後述する液滴吐出ヘッドの非走査方向をX軸方向、液滴吐出ヘッドの走査方向をY軸方向としている。
【0027】
液滴吐出装置300は、液滴吐出ヘッド301から基板12に対して液滴Lを吐出するものであって、液滴吐出ヘッド301と、X方向駆動軸304と、Y方向ガイド軸305と、制御装置306と、ステージ307と、クリーニング機構308と、基台309と、ヒータ315とを備えている。
【0028】
液滴吐出ヘッド301は、複数の吐出ノズルを備えたマルチノズルタイプの液滴吐出ヘッドであり、液滴吐出ヘッド301の形状の長手方向とX軸方向とを一致させている。複数の吐出ノズルは、液滴吐出ヘッド301の下面にX軸方向に並んで一定間隔で設けられている。液滴吐出ヘッド301の吐出ノズルからは、ステージ307に支持されている基板12に対し液状体の液滴Lが吐出される。本実施形態では、液状体は撥液材料を含む液状体(第1液状体L1)であり、絶縁材料を含む液状体(第2液状体L2)であり、金属微粒子を含む液状体(第3液状体L3)である。
【0029】
X方向駆動軸304は、基台309に対して動かないように固定されており、X方向駆動モータ302が接続されている。X方向駆動モータ302はステッピングモータ等であり、制御装置306からX方向の駆動信号が供給されると、X方向駆動軸304を回転させる。X方向駆動軸304が回転すると、液滴吐出ヘッド301はX軸方向に移動する。
【0030】
Y方向ガイド軸305は、基台309に対して動かないように固定されており、Y方向駆動モータ303を介してステージ307が接続されている。Y方向駆動モータ303はステッピングモータ等であり、制御装置306からY方向の駆動信号が供給されると、Y方向ガイド軸305に沿ってステージ307をY方向に移動させる。
【0031】
制御装置306は、液滴吐出ヘッド301に液滴Lの吐出制御用の電圧を供給する。また、X方向駆動モータ302には液滴吐出ヘッド301のX方向の移動を制御する駆動パルス信号を、Y方向駆動モータ303にはステージ307のY方向の移動を制御する駆動パルス信号を、それぞれ供給する。また、後述のヒータ315の電源投入及び遮断も制御する。
【0032】
ステージ307は、この液滴吐出装置300により液状体を配置するために後述する基板12を支持するものであって、基板12を基準位置に固定する不図示の固定機構を備えている。また、ステージ307は基板12を固定する面とは反対の面に先述のY方向駆動モータ303を備えている。
【0033】
クリーニング機構308は、液滴吐出ヘッド301をクリーニングするものである。クリーニング機構308には、図示しないY方向の駆動モータが備えられている。このY方向の駆動モータの駆動により、クリーニング機構は、Y方向ガイド軸305に沿って移動する。クリーニング機構308の移動も制御装置306により制御される。
【0034】
ヒータ315は、ここではランプアニールにより基板12を熱処理する手段であり、基板12上に塗布された液滴Lに含まれる溶媒の蒸発及び乾燥を行う。
【0035】
液滴吐出装置300は、液滴吐出ヘッド301と基板12を支持するステージ307とを相対的に走査しつつ基板12に対して液滴Lを吐出する。本実施形態では、液滴吐出ヘッド301の吐出ノズルは、非走査方向であるX方向に一定間隔で並んで設けられている。なお、図1では、液滴吐出ヘッド301は、基板12の進行方向に対し直角に配置されているが、液滴吐出ヘッド301の角度を調整し、基板12の進行方向に対して交差させるようにしてもよい。このようにすれば、液滴吐出ヘッド301の角度を調整することで、ノズル間のピッチを調節することが出来る。また、基板12とノズル面との距離を任意に調節することが出来るようにしてもよい。
【0036】
図2は、液滴吐出ヘッド301の断面図である。
液滴吐出ヘッド301には、液状体を収容する液体室321に隣接してピエゾ素子322が設置されている。液体室321には、液状体を収容する材料タンクを含む液状体供給系323を介して液状体が供給される。
【0037】
ピエゾ素子322は駆動回路324に接続されており、この駆動回路324を介してピエゾ素子322に電圧を印加し、ピエゾ素子322を変形させることにより、液体室321が変形して内圧が高まり、ノズル325から液状体の液滴Lが吐出される。この場合、印加電圧の値を変化させることにより、ピエゾ素子322の歪み量を制御し、液状体の吐出量を制御する。また、印加電圧の周波数を変化させることにより、ピエゾ素子322の歪み速度を制御する。ピエゾ方式による液滴吐出は材料に熱を加えないため、材料の組成に影響を与えにくいという利点を有する。
【0038】
なお、液滴吐出法の吐出技術としては、上記の電気機械変換式の他に、帯電制御方式、加圧振動方式、電気熱変換方式、静電吸引方式などが挙げられる。帯電制御方式は、材料に帯電電極で電荷を付与し、偏向電極で材料の飛翔方向を制御してノズルから吐出させるものである。また、加圧振動方式は、材料に例えば30kg/cm程度の超高圧を印加してノズル先端側に材料を吐出させるものであり、制御電圧をかけない場合には材料が直進してノズルから吐出され、制御電圧をかけると材料間に静電的な反発が起こり、材料が飛散してノズルから吐出されない。
【0039】
また、電気熱変換方式は、材料を貯留した空間内に設けたヒータにより、材料を急激に気化させてバブル(泡)を発生させ、バブルの圧力によって空間内の材料を吐出させるものである。静電吸引方式は、材料を貯留した空間内に微小圧力を加え、ノズルに材料のメニスカスを形成し、この状態で静電引力を加えてから材料を引き出すものである。また、この他に、電場による流体の粘性変化を利用する方式や、放電火花で飛ばす方式などの技術も適用可能である。液滴吐出法は、材料の使用に無駄が少なく、しかも所望の位置に所望の量の材料を的確に配置できるという利点を有する。なお、液滴吐出法により吐出される液状材料(流動体)の一滴の量は、例えば1〜300ナノグラムである。
【0040】
上記の液滴吐出装置300により吐出する液滴の表面張力は0.02N/m以上0.07N/m以下の範囲内であることが好ましい。液滴吐出法にて液体を吐出する際、表面張力が0.02N/m未満であると、液滴のノズル面に対する濡れ性が増大するため飛行曲りが生じやすくなり、0.07N/mを超えるとノズル先端でのメニスカスの形状が安定しないため、吐出量や吐出タイミングの制御が困難になる。表面張力を調整するため、上記分散液には、基板12との接触角を大きく低下させない範囲で、フッ素系、シリコーン系、ノニオン系などの表面張力調節剤を微量添加するとよい。ノニオン系表面張力調節剤は、液滴の基板12への濡れ性を向上させ、膜のレベリング性を改良し、膜の微細な凹凸の発生などの防止に役立つものである。上記表面張力調節剤は、必要に応じて、アルコール、エーテル、エステル、ケトン等の有機化合物を含んでもよい。
【0041】
上記液滴の粘度は1mPa・s以上50mPa・s以下であることが好ましい。液滴吐出法を用いて液滴を吐出する際、粘度が1mPa・sより小さい場合には液滴の流出によりノズル325周辺部が汚染されやすく、また粘度が50mPa・sより大きい場合は、ノズル325での目詰まり頻度が高くなり円滑な液滴の吐出が困難となる。
【0042】
(液滴吐出法)
続いて、図3と図4には液滴吐出法による液状体の塗布方法を示す概略図を示す。図3に示すように、液滴吐出ヘッド301から連続的に吐出された液滴Lは、基板12の表面に着弾する。このとき液滴Lは、隣接する液滴同士で重なり合う位置に吐出・塗布される。これにより、液滴吐出ヘッド301と基板12との1回の走査で、塗布した液滴Lが描く塗布パターンが、途切れることなく形成されることになる。また、吐出される液滴Lの吐出量及び隣接する液滴Lとのピッチにより所望の塗布パターンの制御が可能である。図では塗布パターンは線状になる場合を示しているが、隣接する塗布パターンの隙間(図に示す幅W)を無くすことで、面状に液滴Lを塗布することもできる。
【0043】
塗布する液滴Lが撥液材料を含む場合、図4に示すように、液滴Lの塗布パターンを備える撥液パターンPを形成することになる。この撥液パターンPの間に対して例えば金属微粒子を含む第3液状体L3を塗布すると、撥液パターンPの間が形成するパターンにしたがって金属微粒子が配置される。撥液パターンPに重なって塗布される第3液状体L3は、撥液パターンPの撥液性によりはじかれるため、第3液状体L3は撥液パターンPの間に効率的に濡れ広がる。この第3液状体L3に所定の処理を行うことで幅Wの配線を形成することができる。
【0044】
(撥液材料・第1液状体)
続いて、本実施形態において液滴吐出装置300で塗布される液状体について、順を追ってそれぞれ説明する。まず、撥液部を形成する撥液材料を含む液状体(第1液状体L1)について説明する。本実施形態では撥液材料として、シラン化合物、フルオロアルキル基を有する化合物、フッ素樹脂(フッ素を含む樹脂)、及びこれらの混合物を用いることができる。シラン化合物としては、一般式(1)
SiX…(1)
(式中、R は有機基を表し、X は−OR ,−Clを表し、X及びXは−OR ,−R,−Clを表し、R は炭素数1から4のアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1から4のアルキル基を表す。X,X,Xは同一でも異なっても良い)
で表される1種又は2種以上のシラン化合物を用いることができる。
【0045】
一般式(1)で表されるシラン化合物は、シラン原子に有機基が置換し、残りの結合手にアルコキシ基またはアルキル基または塩素基が置換したものである。有機基Rの例としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ヒドロキシフェニル基、クロロフェニル基、アミノフェニル基、ナフチル基、アンスレニル基、ピレニル基、チエニル基、ピロリル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、ピリジニル基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクタデシル基、n−オクチル基、クロロメチル基、メトキシエチル基、ヒドロキシエチル基、アミノエチル基、シアノ基、メルカプトプロピル基、ビニル基、アリル基、アクリロキシエチル基、メタクリロキシエチル基、グリシドキシプロピル基、アセトキシ基等を例示できる。
【0046】
−ORで示されるアルコキシ基及び塩素基は、Si−O−Si結合を形成するための官能基であり、水で加水分解されてアルコールや酸として脱離する。アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等を挙げることができる。アルコキシ基の炭素数は、脱離するアルコールの分子量が比較的小さく除去が容易であり、形成される膜の緻密性の低下を抑制できるという観点から、1から4の範囲であることが好ましい。
【0047】
一般式(I)で表されるシラン化合物としては、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、1−プロペニルメチルジクロロシラン、プロピルジメチルクロロシラン、プロピルメチルジクロロシラン、プロピルトリクロロシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、テトラデシルトリクロロシラン、3−チオシアネートプロピルトリエトキシシラン、p−トリルジメチルクロロシラン、p−トリルメチルジクロロシラン、p−トリルトリクロロシラン、p−トリルトリメトキシシラン、p−トリルトリエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−ブチロキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−sec−ブチロキシシラン、ジ−t−ブチルジ−t−ブチロキシシラン、オクタデシルトリクロロシラン、オクタデシルメチルジエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルジメチルクロロシラン、オクタデシルメチルジクロロシラン、オクタデシルメトキシジクロロシラン、7−オクテニルジメチルクロロシラン、7−オクテニルトリクロロシラン、7−オクテニルトリメトキシシラン、オクチルメチルジクロロシラン、オクチルジメチルクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、10−ウンデセニルジメチルクロロシラン、ウンデシルトリクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、メチルオクタデシルジメトキシシラン、メチルドデシルジエトキシシラン、メチルオクタデシルジメトキシシラン、メチルオクタデシルジエトキシシラン、n−オクチルメチルジメトキシシラン、n−オクチルメチルジエトキシシラン、トリアコンチルジメチルクロロシラン、トリアコンチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルイソプロポキシシラン、メチル−n−ブチロキシシラン、メチルトリ−sec−ブチロキシシラン、メチルトリ−t−ブチロキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルイソプロポキシシラン、エチル−n−ブチロキシシラン、エチルトリ−sec−ブチロキシシラン、エチルトリ−t−ブチロキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−ドデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリエトキシシラン、2−〔2−(トリクロロシリル)エチル〕ピリジン、4−〔2−(トリクロロシリル)エチル〕ピリジン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、1,3−(トリクロロシリルメチル)ヘプタコサン、ジベンジルジメトキシシラン、ジベンジルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルジメチルメトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、フェニルジメチルエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルメチルジメトキシシラン、ベンジルジメチルメトキシシラン、ベンジルジメトキシシラン、ベンジルジエトキシシラン、ベンジルメチルジエトキシシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ジベンジルジメトキシシラン、ジベンジルジエトキシシラン、3−アセトキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、4−アミノブチルトリエトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、6−(アミノヘキシルアミノプロピル)トリメトキシシラン、p−アミノフェニルトリメトキシシラン、p−アミノフェニルエトキシシラン、m−アミノフェニルトリメトキシシラン、m−アミノフェニルエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシシラン、ω−アミノウンデシルトリメトキシシラン、アミルトリエトキシシラン、ベンゾオキサシレピンジメチルエステル、5−(ビシクロヘプテニル)トリエトキシシラン、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、8−ブロモオクチルトリメトキシシラン、ブロモフェニルトリメトキシシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、2−クロロメチルトリエトキシシラン、クロロメチルメチルジエトキシシラン、クロロメチルメチルジイソプロポキシラン、p−(クロロメチル)フェニルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、クロロフェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、2−(4−クロロスルフォニルフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリエトキシシラン、2−シアノエチルトリメトキシシラン、シアノメチルフェネチルトリエトキシシラン、3−シアノプロピルトリエトキシシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリメトキシシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリエトキシシラン、3−シクロヘキセニルトリクロロシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルトリクロロシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルジメチルクロロシシラン、2−(3−シクロヘキセニル)エチルメチルジクロロシシラン、シクロヘキシルジメチルクロロシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジクロロシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、(シクロヘキシルメチル)トリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロオクチルトリクロロシラン、(4−シクロオクテニル)トリクロロシラン、シクロペンチルトリクロロシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、1,1−ジエトキシ−1−シラシクロペンタ−3−エン、等が挙げられる。
【0048】
他にも、3−(2,4−ジニトロフェニルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、(ジメチルクロロシリル)メチル−7,7−ジメチルノルピナン、(シクロヘキシルアミノメチル)メチルジエトキシシラン、(3−シクロペンタジエニルプロピル)トリエトキシシラン、N,N−ジエチル−3−アミノプロピル)トリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、(フルフリルオキシメチル)トリエトキシシラン、2−ヒドロキシ−4−(3−トリエトキシプロポキシ)ジフェニルケトン、3−(p−メトキシフェニル)プロピルメチルジクロロシラン、3−(p−メトキシフェニル)プロピルトリクロロシラン、p−(メチルフェネチル)メチルジクロロシラン、p−(メチルフェネチル)トリクロロシラン、p−(メチルフェネチル)ジメチルクロロシラン、3−モルフォリノプロピルトリメトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、1,2,3,4,7,7,−ヘキサクロロ−6−メチルジエトキシシリル−2−ノルボルネン、1,2,3,4,7,7,−ヘキサクロロ−6−トリエトキシシリル−2−ノルボルネン、3−ヨードプロピルトリメトキシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、(メルカプトメチル)メチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチル{2−(3−トリメトキシシリルプロピルアミノ)エチルアミノ}−3−プロピオネート、7−オクテニルトリメトキシシラン、R−N−α−フェネチル−N’−トリエトキシシリルプロピルウレア、S−N−α−フェネチル−N’−トリエトキシシリルプロピルウレア、フェネチルトリメトキシシラン、フェネチルメチルジメトキシシラン、フェネチルジメチルメトキシシラン、フェネチルジメトキシシラン、フェネチルジエトキシシラン、フェネチルメチルジエトキシシラン、フェネチルジメチルエトキシシラン、フェネチルトリエトキシシラン、(3−フェニルプロピル)ジメチルクロロシラン、(3−フェニルプロピル)メチルジクロロシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−(トリエトキシシリルプロピル)ダンシルアミド、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、2−(トリエトキシシリルエチル)−5−(クロロアセトキシ)ビシクロヘプタン、(S)−N−トリエトキシシリルプロピル―O―メントカルバメート、3−(トリエトキシシリルプロピル)−p−ニトロベンズアミド、3−(トリエトキシシリル)プロピルサクシニック無水物、N−〔5−(トリメトキシシリル)−2−アザ−1−オキソ−ペンチル〕カプロラクタム、2−(トリメトキシシリルエチル)ピリジン、N−(トリメトキシシリルエチル)ベンジル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、フェニルビニルジエトキシシラン、3−チオシアナートプロピルトリエトキシシラン、(トリデカフロオロ−1,1,2,2,−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン、N−{3−(トリエトキシシリル)プロピル}フタルアミド酸、(3,3,3−トリフルオロプロピル)メチルジメトキシシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシシラン、1−トリメトキシシリル−2−(クロロメチル)フェニルエタン、2−(トリメトキシシリル)エチルフェニルスルホニルアジド、β−トリメトキシシリルエチル−2−ピリジン、トリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミン、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)ピロール、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリブチルアンモニウムブロマイド、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリブチルアンモニウムクロライド、N−トリメトキシシリルプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロライド、ビニルメチルジエトキシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルフェニルジクロロシラン、ビニルフェニルジエトキシシラン、ビニルフェニルジメチルシラン、ビニルフェニルメチルクロロシラン、ビニルトリス−t−ブトキシシラン、アダマンチルエチルトリクロロシラン、アリルフェニルトリクロロシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、3−アミノフェノキシジメチルビニルシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、ベンジルトリクロロシラン、ベンジルジメチルクロロシラン、ベンジルメチルジクロロシラン、フェネチルジイソプロピルクロロシラン、フェネチルトリクロロシラン、フェネチルジメチルクロロシラン、フェネチルメチルジクロロシラン、5−(ビシクロヘプテニル)トリクロロシラン、5−(ビシクロヘプテニル)トリエトキシシラン、2−(ビシクロヘプチル)ジメチルクロロシラン、2−(ビシクロヘプチル)トリクロロシラン、1,4−ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン、ブロモフェニルトリクロロシラン、3−フェノキシプロピルジメチルクロロシラン、3−フェノキシプロピルトリクロロシラン、t−ブチルフェニルクロロシラン、t−ブチルフェニルメトキシシラン、t−ブチルフェニルジクロロシラン、p−(t−ブチル)フェネチルジメチルクロロシラン、p−(t−ブチル)フェネチルトリクロロシラン、1,3−(クロロジメチルシリルメチル)ヘプタコサン、((クロロメチル)フェニルエチル)ジメチルクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)メチルジクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)トリクロロシラン、((クロロメチル)フェニルエチル)トリメトキシシラン、クロロフェニルトリクロロシラン、2−シアノエチルトリクロロシラン、2−シアノエチルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルメチルジエトキシシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルジメチルエトキシシラン、3−シアノプロピルメチルジクロロシラン、3−シアノプロピルトリクロロシラン、等が挙げられる。
【0049】
撥液材料としてシラン化合物を用いることにより、配置した箇所にシラン化合物の自己組織化膜が形成されるので、膜の表面に優れた撥液性を付与することができる。
【0050】
シラン化合物の中でも、Siと直接結合するアルキル基にフッ素を含有する含フッ素アルキルシラン化合物は、C2n+1で表されるパ−フルオロアルキル構造を有するものが好適に用いられる。これには、下記の一般式(2)
2n+1(CHSiX …(2)
(式(2)中、nは1から18の整数を、mは2から6までの整数をそれぞれ表している。X は−OR ,−Clを表し、X及びXは−OR ,−R,−Clを表し、R は炭素数1から4のアルキル基を表し、Rは水素原子または炭素数1から4のアルキル基を表す。X,X,Xは同一でも異なっても良い)
で表される化合物を例示することができる。
【0051】
−ORで示されるアルコキシ基及び塩素基は、Si−O−Si結合を形成するための官能基であり、水で加水分解されてアルコールや酸として脱離する。アルコキシ基としては例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等を挙げることができる。アルコキシ基の炭素数は、脱離するアルコールの分子量が比較的小さく除去が容易であり、形成される膜の緻密性の低下を抑制できるという観点から、1から4の範囲であることが好ましい。
【0052】
上記のような含フッ素アルキルシラン化合物を用いることにより、膜の表面にフルオロアルキル基が位置するように各化合物が配向して自己組織化膜が形成されるので、膜の表面に優れた撥液性を付与することができる。
【0053】
より具体的には、CF−CHCH−Si(OCH、CF(CF−CHCH−Si(OCH、CF(CF−CHCH−Si(OCH、CF(CF−CHCH−Si(OC、CF(CF−CHCH−Si(OCH、CF(CF11−CHCH−Si(OC、CF(CF−CHCH−Si(CH)(OCH、CF(CF−CHCH−Si(CH)(OCH、CF(CF−CHCH−Si(CH)(OC、CF(CF−CHCH−Si(C)(OC等が挙げられる。
【0054】
また、撥液材料としてフッ素樹脂を用いる場合には、所定量のフッ素樹脂を所定溶媒に溶解させたものが用いられる。具体的には、住友スリーエム株式会社製「EGC1720」(HFE(ハイドロフルオロエーテル)溶媒にフッ素樹脂を0.1wt%溶解させたもの)を用いることができる。この場合、HFEにアルコール系、炭化水素系、ケトン系、エーテル系、エステル系の溶剤を適宜混合することにより、液滴吐出ヘッド301から安定して吐出可能に調整可能である。この他に、フッ素樹脂としては、旭硝子株式会社製「ルミフロン」(各種溶媒に溶解可能)、ダイキン工業株式会社製「オプツール」(溶媒;PFC、HFE等)、大日本インキ化学工業株式会社製「ディックガード」(溶媒;トルエン、水・エチレングリコール)等を用いることができる。更に、フッ素を含む樹脂としては、側鎖にF基、−CF、−(CF)nCFが含まれるものや、主鎖に−CF−、−CFCF、−CFCFCl−が含まれるものを用いることが可能である。また、撥液性の発現のために加熱・重合の必要があるものについては、必要に応じて例えば150℃から200℃の加熱を行って塗布したフッ素を含む樹脂を重合させ、撥液性を発現させることができる。本実施形態では撥液材料にオクタデシルトリメトキシシラン(ODS)を用いる。
【0055】
(絶縁層形成材料・第2液状体)
続いて、本実施形態の絶縁層を形成する絶縁層形成材料を含む液状体(第2液状体L2)について説明する。本実施形態では、前述の液滴吐出法を用いて第2液状体を導電ポスト形成領域以外に塗布し導電ポスト形成領域に開口部を備えた絶縁層を形成する。
【0056】
この絶縁層形成材料としては、本実施形態では光硬化性を有する材料を用いる。具体的には、本実施形態の光硬化性材料は、光重合開始剤と、アクリル酸のモノマーおよび/またはオリゴマ−と、を含んでいる。一般的には、この光硬化性材料は、溶剤と、溶剤に溶解した樹脂と、を含有してよい。ここで、この場合の光硬化性材料は、それ自体が感光して重合度を上げる樹脂を含有してもよいし、あるいは、樹脂と、その樹脂の硬化を開始させる光重合開始剤と、を含有していてもよい。また、このような形態に代えて、光硬化性材料として、光重合して不溶の絶縁樹脂を生じるモノマーと、そのモノマーの光重合を開始させる光重合開始剤と、を含有してもよい。ただしこの場合の光硬化性材料は、モノマー自体が光官能基を有していれば、光重合開始剤を含有しなくてもよい。また、本実施形態では光硬化性樹脂を用いるが、ポリイミド等の熱硬化性樹脂を用いることもできる。
【0057】
(金属微粒子・第3液状体)
続いて、本実施形態の導電ポストを形成する金属微粒子を含む液状体(第3液状体L3)について説明する。本実施形態では、前述の液滴吐出法を用いて第3液状体を所定の領域に塗布し導電ポストを形成する。この第3液状体に含まれる金属微粒子は、例えば金、銀、銅、パラジウム、ニッケル及びITOうちのいずれか、及びこれらの酸化物であり、第3液状体はこれらの金属微粒子を分散媒に分散させた分散液である。これらの金属微粒子は、分散性を向上させるため、有機物などをコーティング剤として用い表面をコーティングして使うこともできる。
【0058】
金属微粒子の粒子径は1nm以上0.1μm以下であることが好ましい。0.1μmより大きいと、図2に示す液滴吐出ヘッド301のノズル325に目詰まりが生じるおそれがある。また、1nmより小さいと、金属微粒子に対するコーティング剤の体積比が大きくなるため、コーティング剤由来の夾雑物が残留し品質が低下する懸念が大きくなる。
【0059】
分散媒としては、上記の金属微粒子を分散できるもので、凝集を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、水の他に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼンなどの炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサンなどのエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノンなどの極性化合物を例示できる。これらのうち、微粒子の分散性と分散液の安定性の点で、水、アルコール類、炭化水素系化合物、エーテル系化合物が好ましく、より好ましい分散媒としては、水、炭化水素系化合物を挙げることができる。
【0060】
(導電ポスト形成方法)
以上を踏まえ、図5及び図6を用いて本実施形態の導電ポストの形成方法を説明する。図5は本実施形態の導電ポスト形成方法により形成される導電ポストの一例を示す断面図である。
【0061】
図5に示す構造は、基板12と、基板12上に配置された配線(導電層)14と、配線14上の導電ポスト形成領域に配置された撥液部16と、配線14上の撥液部16が形成された領域以外の領域に形成された絶縁層18と、撥液部16と平面的に重なる絶縁層18の領域に形成された開口部19と、開口部19に形成された導電ポスト24とを備えている。
【0062】
基板12は、ガラス、石英ガラス、Siウエハ、プラスチックフィルム、金属板など各種の材料を用いることができる。また、これら各種の素材基板の表面に半導体膜、金属膜、誘電体膜、有機膜などが下地層として形成されたものも含む。
【0063】
基板12上に配置された配線14は、例えば金属膜を通常知られた方法により加工することで形成される。本実施形態では、フォトリソグラフィ法によりパターニングした後に所定のマスクを介してエッチングすることにより形成している。金属膜は、メッキ、スパッタ、蒸着、スクリーン印刷等の方法を用いて基板12上に形成される。
【0064】
配線14上には、形成する導電ポストの形成領域と重なる領域に撥液部16が形成されている。撥液部16は、液滴吐出法により前述の撥液材料を配置することで形成される。ここでは撥液部16を示しているが、後述する工程により撥液部16は消失しても良い。以後の説明図においては、発明の理解のため撥液部16が残存していることとして図示している。
【0065】
配線14上には、撥液部16以外の領域に絶縁層18が形成されている。絶縁層18は、液滴吐出方により前述の絶縁層形成材料を配置することで形成される。
【0066】
絶縁層18には、撥液部16と平面的に重なる領域に開口部19が設けられている。この開口部19には、導電ポスト24が形成されており配線14と電気的に接続している。導電ポスト24は、開口部19の上部で形成され開口部19の上部を充填する上部プラグ24Aと、開口部19の下部で形成され撥液部16を貫通して配線14と接続する下部プラグ24Bとが一体となり構成されている。
【0067】
次に図6を用い、図5の導電ポスト24を形成する方法を説明する。図6は導電ポスト24の形成方法を示す工程図である。
【0068】
まず、図6(a)に示すように、基板12に形成された配線14の導電ポスト形成領域に、液滴吐出ヘッド301から撥液材料を含む第1液状体L1を塗布し、撥液部16を形成する。本実施形態では、撥液材料として自己組織化膜を形成するODSを用いることとしているため、ODSは第1液状体L1が配置された領域で即座に撥液性を発現する撥液部16を形成する。図では撥液部16は厚みを持たせて図示しているが、ODSが形成する自己組織化膜は単分子膜であるので、撥液部16の厚みは数nm程度である。
【0069】
次いで、図6(b)に示すように、配線14上の撥液部16を形成していない領域に、液滴吐出ヘッド301から絶縁層形成材料を含む第2液状体L2を塗布する。塗布された第2液状体L2が撥液部16に一部重なって配置された場合は、撥液部16の撥液性によりはじかれるため、第2液状体L2は導電ポスト形成領域外に流動する。配置された第2液状体L2に紫外線を照射する(不図示)ことで、第2液状体L2に含まれる光硬化性樹脂が硬化し、導電ポスト形成領域に開口部19を備えた絶縁層18が形成される。
【0070】
次いで、図6(c)に示すように、開口部19に液滴吐出ヘッド301から第3液状体L3を塗布する。第3液状体L3は、金属微粒子22Aと分散媒22Bとを備えている。また、金属微粒子22Aは、不図示のコーティング剤により覆われている。第3液状体L3の塗布により、導電ポストの形成材料である金属微粒子22Aが開口部19内に配置される。
【0071】
次いで、図6(d)に示すように、基板12全体を金属微粒子22Aの融着温度以上で加熱し、開口部19に配置した第3液状体L3に含まれる金属微粒子22Aを熱処理する。本実施形態では金属微粒子22Aとして10nmの粒子径の銀(Ag)微粒子を用い、180℃で60分間熱処理を行う。
【0072】
ここで、本発明の加熱温度は「金属微粒子の融着温度以上」であって「金属の融点以上」ではない。一般に、物質の融点は微粒子になると低下する傾向がある。本実施形態で用いる金属である銀は融点が961℃であるが、用いる銀微粒子の粒子径は10nmと非常に小さいため、融点は120℃程度にまで低下している。そのため、金属微粒子を120℃程度に加熱すると溶融が始まり、金属微粒子同士は融着を始める。つまり、本実施形態の加熱処理条件である180℃という温度は用いる金属微粒子の融着温度以上の温度となっている。
【0073】
上記処理条件で加熱処理をすると、基板12上に配置された第3液状体L3の分散媒22Bが除去され、金属微粒子22Aの表面に分散性を向上させるために有機物などのコーティング剤がコーティングされている場合には、このコーティング剤も合わせて除去される。本実施形態では電気炉(不図示)により加熱を行い導電ポストを形成する。
【0074】
加熱処理は通常大気中で行なわれるが、必要に応じて、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガス雰囲気中で行ってもよい。また、処理温度は、分散媒22Bの沸点(蒸気圧)、雰囲気ガスの種類や圧力、金属微粒子22Aの分散性や酸化性等の熱的挙動、コーティング剤の有無や量、基材の耐熱温度などを考慮して適宜決定される。
【0075】
例えば、有機物からなるコーティング剤を除去するためには、約300℃で加熱することが作業効率や確実性から好ましい。また、プラスチックなどの基板を使用する場合には、室温以上100℃以下で行なうことが好ましい。
【0076】
加熱処理は、例えばホットプレート、電気炉などの加熱手段を用いた一般的な加熱処理の他に、ランプアニールを用いて行ってもよい。ランプアニールに使用する光の光源としては、特に限定されないが、赤外線ランプ、キセノンランプ、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを使用することができる。
【0077】
加熱処理を行うと、分散媒22Bの蒸発と不図示のコーティング剤の除去が進行し、金属微粒子22Aの溶融、及びそれによる金属微粒子22A同士の融着が起こる。開口部19の上部に配置された金属微粒子22Aは、互いに融着し上部プラグ24Aを形成する。また、開口部19の下部に配置された金属微粒子22Aも互いに融着する。ここで、撥液部16の厚みが数nm程度と微少量であるため、金属微粒子22Aの融点以上の温度で熱処理を行うと、撥液部16の部分的な分解が起こりながら開口部19の下部に配置された金属微粒子22A同士が融着する。すると、やがて金属微粒子22Aは撥液部16を貫通して配線14と接続し、下部プラグ24Bを形成する。これら上部プラグ24Aと下部プラグ24Bは、金属微粒子22Aの融着により互いに一体となり形成されているため、全体として導電ポスト24を形成する。したがって導電ポスト24は配線14と接続することとなる。以上のようにして、配線14に電気的に接続する導電ポスト24が完成する。
【0078】
以上のような構成の導電ポスト24の形成方法によれば、撥液部16の撥液性により精度良く導電ポスト24の位置決めが出来る。その上、導電ポスト24の形成材料に金属微粒子22Aを用い、且つ撥液部16の厚みを100nm以下にすることで、形成する導電ポスト24は撥液部16を貫通し、配線14と電気的に接続させることができる。また、導電ポスト24の形成前に撥液部16を除去する必要がないため作業が簡素化し、生産性を向上させることができる。
【0079】
また本実施形態では、液滴吐出法にて撥液材料を含む液状体である第1液状体L1を塗布し撥液部16を形成することとしている。そのため、精密な塗布量は塗布位置の制御が可能であり、精度良く導電ポスト24の位置や大きさを制御することができる。
【0080】
また本実施形態では、撥液部16の形成材料にODSを用いている。ODSは配置した面で自己組織化膜を形成するシラン化合物である。そのため、液材材料として必要な撥液性を十分に確保し、良好な撥液部16を形成することが出来る。更に、ODSは塗布すると自己組織化により即座に塗布面で単分子膜を形成する。単分子膜の厚みは膜を構成する分子構造により規定され、使用するODSの分子構造から、形成される単分子膜の厚みが数nm程度になることが容易に規定できる。そのため、容易且つ確実に撥液部16の厚みを100nm以下にすることができる。
【0081】
また、本実施形態では、絶縁層18の形成材料は光硬化性樹脂であることとしている。光硬化性樹脂は一般に硬化収縮が少ないため、所望の形状の開口部19及び導電ポスト24を容易に形成することができる。また、短時間の光照射により樹脂が硬化するので、硬化中に配置した第2液状体L2が流動し形状が変形することを避け、導電ポスト24の形状・大きさを精度よく制御することができる。更に、短時間の光照射により樹脂が硬化し導電ポスト24を形成することができるので、熱硬化性樹脂と比較して作業効率が良く生産性を向上させることができる。
【0082】
なお、本実施形態においては、液滴吐出法にて撥液材料を配置することとしているが、所望の形状の撥液部16を形成できれば、スクリーン印刷法、ディスペンサー法等の他の方法を用いて撥液部16を形成することもできる。また、金属微粒子22Aの配置の方法も所定の開口部19に配置できれば、配置方法は液滴吐出法に限られない。
【0083】
また、本実施形態においては、撥液材料は自己組織化膜を形成するシラン化合物であるODSを用いるものとしたが、撥液材料は撥液部16を構成する高分子の前駆体であっても構わない。このような前駆体として、例えばフッ素樹脂が挙げられる。その場合には、撥液部16を形成する工程には、配置した撥液材料を加熱して重合させる操作を含むことが望ましい。この方法によれば、フッ素樹脂を加熱して重合させることにより確実に撥液性を発現させることができる。また、形成する撥液部16の厚みは、塗布する第1液状体L1の塗布量や濃度によって制御することが望ましい。こうすることで、容易に所望の厚みの撥液部16を形成することができる。
【0084】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る導電ポスト形成方法について図7及び図8を参照しながら説明する。本実施形態の導電ポスト形成方法は、第1実施形態と一部共通している。異なるのは、配線パターン通りに塗布された金属微粒子を2段階に分けて加熱処理することで配線を形成し、導電ポストの形成材料を成膜により配置することである。したがって、本実施形態において第1実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0085】
まず、図7を用いて、本実施形態における配線14の形成について説明する。本実施形態では、配置した金属微粒子に対し2段階に分けて加熱処理を施し配線を形成する。2段階の加熱処理とは、ひとつは導電層形成領域に配置した後に金属微粒子同士を部分的に融着させる工程(仮焼成工程)であり、もうひとつは導電ポスト形成材料の配置後に金属微粒子同士を完全に溶融し融着させて一体にする工程(本焼成工程)である。これらの工程では、いずれも金属微粒子の融着温度以上で加熱処理を行う。図7には、加熱処理を行った金属微粒子が形成する配線14を示す概略断面図であり、図7(a)が加熱処理前、(b)が仮焼成工程後、(c)が本焼成工程後を示す。
【0086】
図7(a)に示すように、基板12に所定のパターンで第3液状体L3の塗布を行うと、金属微粒子22Aが基板12上に配置される。第3液状体L3は、金属微粒子22Aと分散媒22Bとを備えている。
【0087】
仮焼成工程を行うと、図7(b)に示すように、第3液状体L3に含まれる分散媒22Bは蒸発し、金属微粒子22Aを覆う不図示のコーティング剤が除去される。合わせて、金属微粒子22Aは一部溶融し、互いに部分的に融着して仮配線(金属微粒子層)14aを形成する。仮配線14aは、金属微粒子22Aが完全に溶融して一体となったものではなく、所々に互いに融着していない金属微粒子を含んでいることもある。しかし、分散媒22Bが蒸発し、電気的に導通が得られる程度には金属微粒子22A同士が融着しているため、仮配線14aは容易に変形することなく、安定に配置された面で留まる。仮焼成工程では120℃で60分間熱処理を行う。
【0088】
次いで本焼成工程を行うと、図7(c)に示すように、仮配線14aが更に溶融して融着し、完全に一体となった配線14を形成する。本焼成工程では180℃で60分間熱処理を行う。仮焼成工程との違いは、加熱温度である。
【0089】
ここで、加熱処理後の金属微粒子22Aが配線14を成しているかどうかを知る方法として、例えば導電性を指標とし比較することが考えられる。上述の仮配線14aと配線14との導電性を比較すると、配線14のほうが高い導電性を示す。これは、仮配線14aでは金属微粒子22Aが完全に一体となるまで溶融していないため、仮配線14aの中に導体断面積が小さく抵抗が高い箇所が存在するためである。したがって、あらかじめ加熱処理条件と導電性との関係を調べておくことで、適切な仮焼成工程の条件と本焼成工程の条件を設定することが可能である。
【0090】
また、処理条件の制御方法としては、加熱処理の温度を制御する方法と加熱処理の時間を制御する方法とが考えられる。本実施形態では加熱処理の温度を制御し、仮焼成工程では120℃と本焼成工程より低い温度で熱処理することとしている。また別の方法としては、本焼成工程と同じ温度で処理を行うが処理時間を短くし、例えば180℃で15分間処理を行うことが考えられる。いずれの方法においても、金属微粒子22Aの熱履歴を変化させ金属微粒子22Aの溶融を制御することができ、容易に仮配線14aを形成することができる。また、加熱温度と加熱時間との両方を制御して仮焼成工程を制御することとしても良い。
【0091】
以上を踏まえて、図8を用いて本実施形態の導電ポストの形成方法を説明する。図8には、本実施形態の導電ポストの形成方法を示す工程断面図を示す。
【0092】
まず、図8(a)に示すように、液滴吐出ヘッド301から基板12に所定のパターンで第3液状体L3の塗布を行う。塗布を行うと、金属微粒子22Aが所定のパターンで基板12上に配置される。
【0093】
次いで、図8(b)に示すように、第3液状体L3を塗布した基板12を加熱し、前述した条件で熱処理(仮焼成)を行い(仮焼成工程)、仮配線14aを形成する。
【0094】
次いで、図8(c)に示すように、仮配線14aの導電ポスト形成領域に、液滴吐出ヘッド301から第1液状体L1を塗布し、撥液部16を形成する。本実施形態では、撥液材料として自己組織化膜を形成するODSを用いることとしているため、ODSは第1液状体L1が配置された領域で即座に撥液性を発現する撥液部16を形成する。撥液部16の厚みは数nm程度である。
【0095】
次いで、図8(d)に示すように、仮配線14a上の撥液部16を形成していない領域に、液滴吐出ヘッド301から第2液状体L2を塗布し紫外線を照射する(不図示)ことで、導電ポスト形成領域に開口部19を備えた絶縁層18が形成される。
【0096】
次いで、図8(e)に示すように、開口部19に導電ポスト形成材料を成膜することで、導電ポスト形成材料を配置する。成膜は、蒸着、スパッタ等の通常用いられる方法にて行うことができる。配置された導電ポスト形成材料は、導電ポストの上部プラグ24Aを形成し、絶縁層16を挟んで仮配線14aと重なる。
【0097】
次いで、図8(f)に示すように、基板12全体を加熱することで基板12に配置された仮配線14aを加熱し、前述した条件で熱処理(本焼成)を行い(本焼成工程)、配線14を形成する。基板12全体の加熱により、仮配線14aの更なる溶融と融着が進行し、配線14を形成する。その際、撥液部16の厚みが数nm程度と微少量であるため、本焼成の温度で熱処理を行うと、撥液部16に重なる領域の仮配線14aは、撥液部16の部分的な分解が起こりながら仮配線14aの溶融と融着が進行する。その結果、やがて撥液部16に重なる領域の仮配線14aは撥液部16を貫通して上部プラグ24Aと接続する下部プラグ24Bを形成する。これら上部プラグ24Aと下部プラグ24Bは、全体として導電ポスト24を形成する。したがって導電ポスト24は配線14と接続することとなる。以上のようにして、配線14に電気的に接続する導電ポスト24が完成する。
【0098】
以上のような構成の導電ポスト24の形成方法によれば、撥液部16の撥液性により精度良く導電ポスト24の位置決めが出来る上に、配線14の形成材料に金属微粒子22Aを用い、且つ撥液部の厚みを100nm以下にすることで確実に導電ポスト24と配線14とを導通させることができる。更に、導電ポスト24の形成前に撥液部16を除去する必要がないため作業が簡素化し、生産性を向上させることができる。
【0099】
また、本実施形態では、仮焼成工程を行うことで金属微粒子22Aを部分的に融着させた仮配線14aを形成することとしている。金属微粒子22A同士を部分的に融着させることで金属微粒子22Aが配置した箇所に定着するため、以後の加工工程が容易になり、確実に導電ポスト24を形成することができる。
【0100】
なお、液滴吐出ヘッド301から基板12に第3液状体L3の塗布を行い金属微粒子層を形成する工程において、導電層形成領域の周囲に撥液材料を配置して第2撥液部を形成した上で、第2撥液部で囲まれた領域に第3液状体L3の塗布を行うこととしても良い。すなわち、図4に示したように、まず塗布を行う導電層形成領域の周囲に、撥液材料を配置して第2撥液部を形成し、第2撥液部に囲まれた領域に第3液状体L3を塗布することで、第3液状体L3の塗布を実施することとしても良い。ここで撥液材料の配置に液滴吐出法を用いると精細な第2撥液部が形成可能であり望ましいが、スクリーン印刷法、ディスペンサー法等の他の方法で撥液材料を配置することとしても良い。撥液材料は、撥液部16を形成する撥液材料と同じでも異なっていて良い。
【0101】
このように塗布を行うと、形成する配線用撥液部により所定の配線パターンの逆パターンを形成した上で、相対的に親液性を有する配線形成面に第3液状体L3を塗布することになる。そのため、第2撥液部にはじかれた第3液状体L3を所定の配線パターン通りに高精度に配置することができ、高精度に仮配線14aを形成することができる。したがって、精度良く形成された仮配線14aに導電ポスト24を接続することができる。
【0102】
[第3実施形態]
図9は、本発明の第3実施形態に係る導電ポスト形成方法の説明図である。本実施形態の導電ポスト形成方法は、第1及び第2実施形態と一部共通している。異なるのは、導電ポストと接続する配線及び導電ポストが金属微粒子により形成されることである。したがって、本実施形態において第1及び第2実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0103】
図9は、本実施形態の導電ポストの形成方法を示す工程断面図である。まず、図9(a)に示すように、第2実施形態で説明した方法にて、基板12上に仮配線14aと、仮配線14a上の導電ポスト形成領域に配置された撥液部16と、撥液部16に重なる領域に開口部19を備えた絶縁層18と、を形成する。本実施形態の撥液部16の厚みは数nm程度である。図9(a)は、第2実施形態の説明に用いた図8(d)に対応する図である。
【0104】
次いで、図9(b)に示すように、開口部19に液滴吐出ヘッド301から第3液状体L3を塗布し、開口部19に金属微粒子22Aと分散媒22Bとを配置する。
【0105】
次いで、図9(c)に示すように、基板12全体を加熱することで基板12に配置された仮配線14aと、開口部19に配置された金属微粒子22Aを加熱し、前述した条件で本焼成工程を行う。加熱処理により、仮配線14aでは更なる溶融と融着が進行し配線14が形成される。合わせて、撥液部16の部分的な分解が起こりながら、撥液部16の下面では仮配線14aの溶融と融着が進行し、撥液部16の上面では金属微粒子22Aの溶融と融着が進行する。その結果、撥液部16を貫通して上部プラグ24Aと接続する下部プラグ24Bを形成する。これら上部プラグ24Aと下部プラグ24Bは、全体として導電ポスト24を形成する。したがって導電ポスト24は配線14と接続することとなる。以上のようにして、配線14に電気的に接続する導電ポスト24が完成する。
【0106】
以上のような構成の導電ポスト24の形成方法によれば、本焼成工程で、仮配線14aを形成する金属微粒子22Aと、導電ポスト形成領域に配置される金属微粒子22Aとの両方で溶融・融着が進行する、成長する金属微粒子22Aがより容易に撥液部16を貫通する。そのため、より確実に導通が得られ、より容易に導電ポスト24を形成することができる。
【0107】
[多層配線基板]
続いて、上記のような導電ポストの形成方法を用いて製造される多層配線基板の一例について図10を参照して説明する。ここでは、携帯電話に搭載される多層配線基板500を例に挙げて説明する。図10に示す多層配線基板500は、酸化シリコンからなる基材12上に、3つの配線層P1、P2、P3が積層されてなるものである。以下の説明では、各配線層の積層方向を上方向、基材12が配置されている方向を下方向として各構成部材の上下関係を示す。
【0108】
基材12は、他にもガラス、石英ガラス、金属板など各種のものが挙げられる。さらに、これら各種の素材基板の表面に半導体膜、金属膜、絶縁膜、有機膜、などが下地層として形成されたものも含む。
【0109】
配線層P1は、基板12上に形成された絶縁層13と、基板12上で且つ絶縁層13に埋め込まれて配置された抵抗20及びコンデンサ21と、抵抗20及びコンデンサ21と接続される配線15A,15B,15Cと、各配線を覆って絶縁層13上に形成される第1層間絶縁膜(絶縁層)60を備える。
【0110】
基板12上に配置された抵抗20は、2つの電極部20aを備えている。これら電極部20aは、抵抗20の上面に形成されている。また、抵抗20と同様に基板12上に配置されたコンデンサ21は、2つの電極部21aを備えており、これら電極部21aもコンデンサ21の上面に形成されている。
【0111】
なお、実際には電極部20a、21aは、抵抗20、コンデンサ21の上面から略突出なく形成されているが、ここでは、突起状に図示している。また、液滴吐出法等を用いて導電性材料を吐出することで実際に突起を形成してもよい。
【0112】
基板12の上面であって、抵抗20及びコンデンサ21の周囲及び上面には絶縁層13が形成されている。絶縁層13は、前述した液滴吐出法をもちいて光硬化性の絶縁層形成材料を含む液状体を塗布し、絶縁層形成材料を重合・硬化させることで形成される。
【0113】
絶縁層13の上面には、配線15A,15B,15Cが形成されている。各配線も、上述した液滴吐出法を用いて導電性材料を含む機能液を塗布することで形成される。本実施形態では、導電性材料として銀微粒子を含む機能液を用いている。これらの配線のうち、配線15Bは一端が電極部20aの一方と、他端が電極部21aの一方と接続しており、抵抗20とコンデンサ21を電気的に接続している。また、配線15Aは他方の電極部20aと接続しており、配線15Cは他方の電極部21aと接続している。
【0114】
絶縁層13の上面には、配線15A,15B,15Cを覆って、第1層間絶縁膜60が形成されている。第1層間絶縁膜60は、絶縁層13と同様に液滴吐出法をもちいて光硬化性の絶縁層形成材料を配置し硬化させることで形成される。
【0115】
第1層間絶縁膜60には、配線15Aと接続する第1導電ポストH1と、配線15Cと接続する第2導電ポストH2が形成されている。これら各導電ポストは、各配線の形成材料と同一材料で形成されている。
【0116】
配線層P2は、第1層間絶縁膜60上に配置される半導体チップ70と、同じく第1層間絶縁膜60上に配置される配線61と、これら半導体チップ70及び配線61を覆い第1層間絶縁膜60上に形成される第2層間絶縁膜62と、を備えている。第1層間絶縁膜60上に備えられた半導体チップ70は、上面に外部接続用の端子72を備えている。
【0117】
第1層間絶縁膜60上に備えられた配線61は、第1導電ポストH1に接続されている。配線61は配線15A,15B,15Cと同じく、液滴吐出法にて導電性材料を塗布することにより形成されている。また配線61は、配線15A,15B,15Cと同一材料により形成されている。
【0118】
第1層間絶縁膜60の上面には、配線61、半導体チップ70を覆って、第2層間絶縁膜62が形成されている。第1層間絶縁膜60は、絶縁層13及び第1層間絶縁膜60と同様に液滴吐出法をもちいて光硬化性の絶縁層形成材料を配置し硬化させることで形成される。
【0119】
第2層間絶縁膜62には、第2層間絶縁膜62を貫通して配線61に接続する第3導電ポストH3と、同じく第2層間絶縁膜62を貫通する上述した第2導電ポストH2の一部と、が形成されている。各導電ポストは、各配線の形成材料と同一材料で形成されている。
【0120】
配線層P3は、第2層間絶縁膜62上に形成された配線63A及び63Bと、これらの配線63A,63Bを覆って第2層間絶縁膜62上に形成される第3層間絶縁膜64と、第3層間絶縁膜64上に配置されたアンテナ素子24及び水晶振動子25と、を備えている。
【0121】
第2層間絶縁膜62上に形成された配線63Aは、第2導電ポストH2を介して配線15Cと接続している。また、配線63Aは半導体チップ70が備える一方の端子72と接続している。したがって、配線63A、第2導電ポストH2、配線15Cを介して半導体チップ70とコンデンサ21が接続している。
【0122】
また、第2層間絶縁膜62上に形成された配線63Bは、第3導電ポストH3を介して配線61と接続している。また、配線63Bは半導体チップ70が備える他方の端子72と接続している。したがって、配線63B、第3導電ポストH3、配線61、第1導電ポストH1を介して半導体チップ70と抵抗20が接続している。
【0123】
これら配線63A,63Bは前述の液滴吐出法にて導電性材料を塗布することにより形成され、また配線15A,15B,15C,61と同一材料により形成されている。
【0124】
第3層間絶縁膜64には、第3層間絶縁膜64を貫通して配線63Aと水晶振動子25とを接続する第4導電ポストH4と、同じく第2層間絶縁膜62を貫通し配線63Bとアンテナ素子24とを接続する第5導電ポストH5が形成されている。各導電ポストは、各配線の形成材料と同一材料で形成されている。
【0125】
このような多層配線基板500の各導電ポストH1からH5は、前述した導電ポストの形成方法を用いて形成されている。そのため、各導電ポストを位置精度良く形成された多層配線基板500とすることが出来る。
【0126】
(電子機器)
図11は、本発明にかかる多層配線基板を用いて製造される電子機器の一実施形態としての携帯電話の斜視構成図である。この携帯電話1300の製造工程は、前述の多層配線基板の製造工程を含むものである。この携帯電話1300は、本発明の液晶装置を小サイズの表示部1301として備え、複数の操作ボタン1302、受話口1303、及び送話口1304を備えて構成されている。
【0127】
本実施形態においては、微細な導電ポストで層間が接続された多層配線基板の製造工程を備えた工程で携帯電話1300を製造することで、基板を高密度化することが可能となり、小型化された携帯電話1300を製造することができる。
【0128】
上記の実施形態の多層配線基板の製造工程は、上記携帯電話1300の製造工程に限らず、電子ブック、パーソナルコンピュータ、ディジタルスチルカメラ、液晶テレビ、プロジェクタ、ビューファインダ型あるいはモニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等の製造に好適に用いることができる。高密度化された配線基板を用いることにより装置の小型化が可能となり、また、高集積化された配線基板を用いることでより高性能な演算能力を備えた電子機器を製造することが可能となる。
【0129】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【実施例】
【0130】
本発明の実施例として、形成する撥液部の厚みと導電ポストの導通について評価した結果を説明する。本実施例では、撥液部の厚みを変化させて形成したサンプルを用意して、第1実施形態の方法にて配線上に導電ポストを形成し評価を行った。また、本実施例では、撥液材料としてフッ素樹脂を用い、塗布する撥液材料を含む液状体の濃度・塗布量を変化させることで、撥液部の厚みを変化させたサンプルを用意した。
【0131】
図12は、撥液層の厚みに対する導電ポストと配線との導通を評価した結果を示す表である。図12においては、形成した導電ポストと配線との導通が得られたものを○、導通が確認されなかったものを×で示してある。
【0132】
評価した結果、撥液層の厚みが100nmまでは導通が得られるが、100nmを超える厚みの撥液層を挟んで配線上に導電ポストを形成した場合には導通が得られないことが分かり、本発明の有効性が確かめられた。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】液滴吐出装置の概略的な構成図である。
【図2】液滴吐出装置に備わる液滴吐出ヘッドの断面図である。
【図3】液滴吐出法によるパターン形成方法を示す概略図である。
【図4】液滴吐出法によるパターン形成方法を示す概略図である。
【図5】導電ポストの一例を示す断面図である。
【図6】第1実施形態の導電ポストの形成方法をしめす工程図である。
【図7】熱処理条件の違いによる金属微粒子の融着状態を示す概略断面図である。
【図8】第2実施形態の導電ポストの形成方法をしめす工程図である。
【図9】第3実施形態の導電ポストの形成方法をしめす工程図である。
【図10】多層配線基板を示す断面図である。
【図11】電子機器の一例を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施例を示す表である。
【符号の説明】
【0134】
12…基板、14…配線(導電層)、16…撥液部、18…絶縁層、19…開口部、22A…金属微粒子、24…導電ポスト、15A,15B,15C,61,63A,63B…配線(第1導電層、第2導電層)60…第1層間絶縁膜(絶縁層)、62…第2層間絶縁膜(絶縁層)、64…第3層間絶縁膜(絶縁層)、500…多層配線基板、1300…携帯電話(電子機器)、H1〜H5…第1〜第5導電ポスト(導電ポスト)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層に覆われる導電層に前記絶縁層を貫通して接続する導電ポストの形成方法であって、
前記導電層上の導電ポスト形成領域に撥液材料を配置し、厚みが100nm以下となるように撥液部を形成する工程と、
前記撥液部が形成された前記導電層上に絶縁層形成材料を含む液状体を配置し、前記絶縁層形成材料を重合させて前記導電ポスト形成領域と重なる領域に開口部を有する前記絶縁層を形成する工程と、
前記開口部に前記金属微粒子を配置する工程と、
前記金属微粒子を前記金属微粒子の融着温度以上の温度で加熱し、前記金属微粒子同士を融着させて前記導電ポストを形成すると共に、前記金属微粒子と前記導電層とを融着させて前記導電ポストと前記導電層とを接続する工程と、を備えていることを特徴とする導電ポスト形成方法。
【請求項2】
絶縁層に覆われる導電層に前記絶縁層を貫通して接続する導電ポストの形成方法であって、
前記導電層を形成する導電層形成領域に金属微粒子を配置し、前記金属微粒子からなる金属微粒子層を形成する工程と、
前記金属微粒子層上の導電ポスト形成領域に撥液材料を配置し、厚みが100nm以下となるように撥液部を形成する工程と、
前記撥液部が形成された前記金属微粒子層上に絶縁層形成材料を含む液状体を配置し、前記絶縁層形成材料を重合させて前記金属微粒子層の前記導電ポスト形成領域と重なる領域に開口部を有する前記絶縁層を形成する工程と、
前記開口部に導電ポスト形成材料を配置する工程と、
前記金属微粒子層を前記金属微粒子の融着温度以上の温度で加熱し、前記金属微粒子同士を融着させて前記導電層を形成すると共に、前記金属微粒子と前記導電ポスト形成材料とを融着させて前記導電層と前記導電ポストとを接続する工程と、を備えていることを特徴とする導電ポスト形成方法。
【請求項3】
前記導電ポスト形成材料は、前記金属微粒子層を構成する金属微粒子と同一の金属微粒子であり、
前記金属微粒子層および前記導電ポスト形成材料を前記金属微粒子の融着温度以上の温度で加熱し、前記導電ポスト形成材料である前記金属微粒子同士を融着させて前記導電ポストを形成すると共に、前記金属微粒子層が備える前記金属微粒子と前記導電ポスト形成材料とを融着させて前記導電層と前記導電ポストとを接続することを特徴とする請求項2に記載の導電ポスト形成方法。
【請求項4】
前記金属微粒子層を形成する工程は、
前記導電層形成領域の周囲に撥液材料を配置し第2撥液部を形成する工程と、
前記第2撥液部によって囲まれた領域に前記金属微粒子を含む液状体を配置する工程と、を備えていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の導電ポスト形成方法。
【請求項5】
前記金属微粒子層を形成する工程は、前記金属微粒子を含む液状体を配置した後、前記金属微粒子層の形成材料である前記金属微粒子を融着温度以上で加熱し、前記金属微粒子同士を部分的に融着させる工程を含むことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の導電ポスト形成方法。
【請求項6】
前記撥液部または前記第2撥液部は、液滴吐出法を用いて前記撥液材料を含む液状体を塗布することにより形成されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の導電ポスト形成方法。
【請求項7】
前記撥液材料は、シラン化合物又はフルオロアルキル基を含む化合物の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の導電ポスト形成方法。
【請求項8】
前記撥液材料は、前記撥液材料を配置した面で自己組織化膜を形成することを特徴とする請求項7に記載の導電ポスト形成方法。
【請求項9】
前記撥液材料は、前記撥液部または前記第2撥液部を構成する高分子の前駆体であり、
前記撥液部または前記第2撥液部を形成する工程は、前記撥液材料を加熱して重合させる工程を含むことを特徴とする請求項7に記載の導電ポストの形成方法。
【請求項10】
前記絶縁層形成材料は、光硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の導電ポスト形成方法。
【請求項11】
第1導電層と第2導電層とが絶縁層を介して積層され、前記第1導電層と前記第2導電層とが導電ポストを介して電気的に接続されてなる多層配線基板の製造方法であって、
前記導電ポストは、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の方法により形成されることを特徴とする多層配線基板の製造方法。
【請求項12】
多層配線基板の製造工程を備えた電子機器の製造方法であって、前記多層配線基板の製造工程は請求項11に記載の多層配線基板の製造方法を用いて行われることを特徴とする電子機器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−76744(P2009−76744A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245305(P2007−245305)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】