説明

導電体被覆装置

【課題】繊維の周囲に導電体を均一に被覆できると共に、導電体が被覆されていない繊維表面を極めて少なくできる導電体被覆装置を提供する。
【解決手段】処理室内で繰り出し側ロール102から繰り出された繊維集合体10が巻き取り側ロール108で巻き取られるまでの間に、両方のシート面から繊維集合体10の繊維表面に導電体を被覆する導電体被覆装置100は、一方のシート面から繊維集合体10の繊維表面に金属を被覆する真空蒸着室110と、一方のシート面と異なる他のシート面から、真空蒸着室110で得られた導電体被覆繊維集合体12の繊維表面に金属を被覆する真空蒸着室120とを有する。真空蒸着室110で金属被覆する繊維集合体10のシート面と、真空蒸着室120で金属被覆する導電体被覆繊維集合体12のシート面が異なるように、真空蒸着室110,120間でシート面を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維集合体の表面に導電体を被覆する導電体被覆装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー繊維の表面に導電体を蒸着させて、導電体被覆繊維を製造することが知られている(特許文献1参照)。特許文献1によれば、この導電体被覆繊維は、豪華な外観、各種の物理的性質(導電性、静電抵抗、化学的抵抗、熱反射性、熱放射性、光学的反射性)、望ましい柔軟性、弾性、柔らかさ及びドレープを有する。
【0003】
特許文献1に記載の導電体被覆繊維は、図15に示す導電体被覆装置910を用いて次のように製造される。圧力が約10−6〜約10−4mmHgである真空チェンバー912の内部で、供給ロール914が図15の矢印の方向に回転し、ポリマー繊維であるエラストマー生地916が二つのスタックローラー920,922からなるS字型ロール機構918方向に進む。
【0004】
そして、エラストマー生地916は、S字型ロール機構918の隙間を通過した後、アイドルローラ924を通過し、チルロール926に接触する。エラストマー生地916がチルロール926に接触している間、エラストマー生地916は溶融金属槽930から発散する金属蒸気928にさらされる。金属蒸気928はエラストマー生地916上で凝縮され、繊維表面に金属が被覆され導電体被覆繊維であるエラストマー金属化生地932が形成される。
【0005】
その後、エラストマー金属化生地932は、アイドルローラ934を通過し、さらに二つの駆動ローラ938,940からなる駆動ローラ機構936の隙間を通過した後、巻取ロール942に巻き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−10262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の導電体被覆方法は、一方のシート面のみから繊維集合体の繊維表面に導電体を被覆するため、導電体を均一に被覆しにくい上、導電体が被覆されていない繊維表面部分が生じてしまう。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、繊維の周囲に導電体が均一に被覆できると共に、導電体が被覆されていない繊維表面の割合を極めて低くした導電体被覆繊維が得られる導電体被覆装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の導電体被覆装置は、処理室内で繰り出し機構から繰り出されたシートが巻き取り機構で巻き取られるまでの間に、両方のシート面からシートに含まれる繊維集合体の繊維表面に導電体を被覆する導電体被覆装置であって、一方のシート面から繊維集合体の繊維表面に導電体を被覆する第1導電体被覆室と、前記一方のシート面と異なる他のシート面から、前記第1導電体被覆室で得られた導電体被覆繊維集合体の繊維表面に導電体を被覆する第2導電体被覆室とを有することを特徴とする。
【0010】
(2)本発明の導電体被覆装置において、前記シートは繊維集合体から構成されていてもよい。
(3)本発明の導電体被覆装置において、前記シートは、基材と、この基材表面に形成された繊維集合体とを有し、前記繰り出し機構と前記第1導電体被覆室との間に、前記繊維集合体から前記基材を剥離する剥離機構と、前記剥離機構で剥離された基材を巻き取る基材巻き取り機構とを有していてもよい。
【0011】
(4)本発明の導電体被覆装置において、前記シートは、基材と、この基材表面に形成された繊維集合体とを有し、前記第1導電体被覆室と前記第2導電体被覆室との間に、前記第1導電体被覆室から搬出された導電体被覆繊維集合体から前記基材を剥離する剥離機構と、前記剥離機構で剥離された基材を巻き取る基材巻き取り機構とを有していてもよい。
【0012】
(5)本発明の導電体被覆装置において、前記第2導電体被覆室と前記巻き取り機構との間に、基材を繰り出す基材繰り出し機構と、前記基材繰り出し機構から繰り出された基材を前記第2導電体被覆室から搬出された導電体被覆繊維集合体に接合する基材接合機構とを有していてもよい。
【0013】
(6)本発明の導電体被覆装置において、前記第1導電体被覆室と前記第2導電体被覆室との間に、シートを進行させながらねじることによってシート面を反転させる反転機構を有していてもよい。
(7)本発明の導電体被覆装置において、前記処理室内を減圧状態に保持する減圧手段をさらに有していてもよい。
【0014】
なお本発明において、例えば、「第1導電体被覆室と第2導電体被覆室との間」とは、シートの進行順序に沿って、第1導電体被覆室から第2導電体被覆室までにシートが通過する地点を意味する
【発明の効果】
【0015】
本発明の導電体被覆装置によれば、繊維の周囲に導電体が均一に被覆できると共に、導電体が被覆されていない繊維表面の割合を極めて低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1に係る導電体被覆装置の断面模式図である。
【図2】実施形態1における導電体被覆繊維集合体の製造工程を説明するために示す図である。
【図3】実施形態1で用いるエレクトロスピニング装置の断面模式的図である。
【図4】実施形態2に係る導電体被覆装置の断面模式図である。
【図5】実施形態2における導電体被覆繊維集合体の製造工程を説明するために示す図である。
【図6】実施形態3に係る導電体被覆装置の断面模式図である。
【図7】実施形態3における導電体被覆繊維集合体積層シートの製造工程を説明するために示す図である。
【図8】実施形態4に係る導電体被覆装置の断面模式図である。
【図9】実施形態4における導電体被覆繊維集合体積層シートの製造工程を説明するために示す図である。
【図10】実施形態5に係る導電体被覆装置の断面模式図である。
【図11】実施形態6に係る導電体被覆装置を説明するために示す図である。
【図12】実施形態7に係る導電体被覆装置の断面模式図である。
【図13】実施形態8に係る導電体被覆装置の断面模式図である。
【図14】実施形態9に係る導電体被覆装置の断面模式図である。
【図15】従来の導電体被覆装置の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の各実施形態に係る導電体被覆装置について、図面を参照しながら説明する。なお、重複説明は適宜省略する。
【0018】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る導電体被覆装置100の断面模式図である。導電体被覆装置100は、繰り出し機構である繰り出し側ロール102と、送りローラ132,134からなる送りローラ機構130と、送りローラ104と、冷却ローラ106aと、第1導電体被覆室である真空蒸着室110と、真空蒸着ユニット112と、遮蔽板116と、冷却ローラ106bと、第2導電体被覆室である真空蒸着室120と、真空蒸着ユニット122と、遮蔽板126と、送りローラ142,144からなる送りローラ機構140と、巻き取り機構である巻き取り側ロール108とを処理室内に備える。
【0019】
導電体被覆装置100を用いた以下の工程によって、両方のシート面から繊維集合体10の繊維表面に導電体が被覆された導電体被覆繊維集合体14が得られる。まず、排気ポンプ等の減圧手段(不図示)によって減圧状態に保持された処理室内で、シート状の繊維集合体10が巻き付けられた繰り出し側ロール102を矢印方向に回転させて、繊維集合体10が送りローラ機構130の方向に進む。つぎに、繊維集合体10は、送りローラ132,134の間を通過し、送りローラ104を経由して、冷却ローラ106aに密着した状態で減圧雰囲気の真空蒸着室110内に進む。なお、真空蒸着室110内は、排気ポンプ等の減圧手段(不図示)によって、真空蒸着室110の外側周辺より圧力が低くなっている。
【0020】
真空蒸着室110では、加熱された真空蒸着ユニット112から蒸発した導電体の蒸気である金属蒸気114に繊維集合体10がさらされ、金属蒸気114は繊維集合体10の繊維表面で冷却されて金属被膜となる。なお、遮蔽板116が金属蒸気114を遮ることによって、繊維集合体10の所望の個所が金属蒸気114にさらされるようになっている。
【0021】
本実施形態及び後述する各実施形態で用いられる導電体としては、金属からなる導電体及びカーボンからなる導電体が挙げられる。金属としては、例えば、アルミニウム、銅、すず、亜鉛、ニッケル、クロム、チタン、シリコン、鉛、モリブデン、鉄、金、銀、白金、パラジウム、銅系合金、アルミニウム系合金、チタニウム系合金及び鉄系合金など各種の金属が挙げられる。
【0022】
導電体は、導電体被覆繊維集合体14に用途に応じて最適なものを選択すればよい。例えば、導電体被覆繊維集合体14の用途が保温材の場合には、銀、銅、アルミニウムなどを好適に用いることができ、用途が電磁波吸収シールド材の場合には、金、白金、銀、銅、ニッケルなどを好適に用いることができ、用途が電磁波吸収材の場合には、カーボン、アルミニウムなどを好適に用いることができる。
【0023】
こうして、一方のシート面から繊維集合体10の繊維表面に導電体が被覆された導電体被覆繊維集合体12が得られる。なお、本実施形態では、真空蒸着室110内で真空蒸着ユニット112を加熱することにより金属蒸気114を発生させるが、金属の種類に応じて、この金属に電子ビームを照射することにより金属蒸気114を発生させてもよいし、真空蒸着室110内の減圧雰囲気によって金属蒸気114を発生させてもよい。
【0024】
導電体被覆繊維集合体12は、冷却ローラ106aを通過した後、真空蒸着室110から搬出されて、送りローラ104,104を経由し、冷却ローラ106bに密着した状態で真空蒸着室120内に進む。
【0025】
真空蒸着室120内は、排気ポンプ等の減圧手段(不図示)によって、真空蒸着室120の外側周辺より圧力が低くなっている。また、冷却ローラ106bに密着している導電体被覆繊維集合体12のシート面は、真空蒸着室110において繊維集合体10を金属蒸気114にさらした方のシート面である。
【0026】
真空蒸着室120では、真空蒸着ユニット122から蒸発した金属蒸気124に導電体被覆繊維集合体12がさらされ、金属蒸気124は導電体被覆繊維集合体12の繊維表面で冷却されて金属被膜となる。なお、遮蔽板126が金属蒸気124を遮ることによって、導電体被覆繊維集合体12の所望の個所が金属蒸気124にさらされるようになっている。
【0027】
こうして、両方のシート面から繊維集合体10の繊維表面に導電体が被覆された導電体被覆繊維集合体14が得られる。その後、導電体被覆繊維集合体14は、真空蒸着室120から搬出されて、送りローラ104を経由し、送りローラ142,144の間を通過して巻き取り機構である巻き取り側ロール108に巻き取られる。
【0028】
本実施形態では処理室内が減圧状態に保持されており、真空蒸着室110から真空蒸着室120に導電体被覆繊維集合体12が搬送される過程で、繊維表面に被覆された導電体が空気に触れない。したがって、真空蒸着室110で繊維表面に被覆される導電体層と真空蒸着室120で繊維表面に被覆される導電体層との界面の劣化、例えば酸化等が抑えられる。このため、本実施形態では、繊維表面に高品質の導電体被覆が形成できる。
【0029】
なお、導電体被覆装置100において、繊維集合体10及び導電体被覆繊維集合体12,14が進行するのは、繰り出し側ロール102、送りローラ104,132,134,142,144、冷却ローラ106a,106b、及び巻き取り側ロール108の中から選択される少なくとも1つの部材が駆動しているからである。導電体被覆条件等に応じて、駆動させる部材を適宜決定すればよい。
【0030】
図2は、本実施形態における導電体被覆繊維集合体の製造工程を説明するために示す図である。図2(a)は、導電体で被覆される前の繊維集合体10を示し、図2(b)は、一方のシート面から繊維集合体10の繊維表面に導電体が被覆された導電体被覆繊維集合体12を示し、図2(c)は、上記一方のシート面とは異なる他方のシート面から導電体被覆繊維集合体12の繊維表面に導電体が被覆された導電体被覆繊維集合体14を示す。このように、両方のシート面から繊維集合体10の繊維表面に導電体を被覆することによって、繊維の周囲に導電体を均一に被覆できると共に、導電体が被覆されていない繊維表面の割合を極めて低くすることができる。
【0031】
図3は、導電体被覆繊維集合体14の材料である繊維集合体10の製造工程に用いるエレクトロスピニング装置200の断面模式的図である。繊維集合体10は、エレクトロスピニング法により、可撓性基材16の一方のシート面に繊維集合体10の層を形成することによって製造される。ここで、可撓性基材16は、例えば、ポリエステル繊維の不織布からなる。可撓性基材16への繊維集合体10の形成は、以下の工程によって行われる。
【0032】
まず、繊維集合体10の原料である樹脂を、溶媒に溶解した状態で樹脂原料タンク220に供給する。繊維集合体10の原料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)など各種の原料が挙げられる。導電体被覆繊維集合体14の用途に応じて好適なものを選択すればよい。
【0033】
つぎに、可撓性基材16が巻き付けられた繰り出し側ロール202から、可撓性基材16を繰り出す。そして、可撓性基材16が送りローラ204を経由して対向電極226上を通過するときに、高圧電源228によってノズル224と対向電極226の間に高圧電圧が印加された状態でバルブ222を開いて、ノズル224から樹脂原料液体230を可撓性基材16に向けて飛ばす。ノズル224から飛び出た樹脂原料液体230は、可撓性基材16上でシート状の繊維集合体10となる。
【0034】
溶媒は樹脂原料液体230がノズル224から可撓性基材16に向かう途中で蒸発する。また、ヒータ(不図示)によって対向電極226が加熱されており、仮に繊維集合体10中に溶媒が残存したとしても、この溶媒はヒータからの熱によって蒸発する。こうして、可撓性基材16と繊維集合体10の層からなる繊維集合体積層シート18が得られる。繊維集合体10の層の厚さは、例えば、30μm〜500μmである。繊維集合体10を構成する繊維の平均直径は、例えば、50nm〜800nmである。その後、繊維集合体積層シート18は、送りローラ204を経由して巻き取り側ロール208に巻き取られる。
【0035】
[実施形態2]
図4は、実施形態2に係る導電体被覆装置100aの断面模式図である。実施形態1に係る導電体被覆装置100では、繊維集合体10が巻き付けられた繰り出し側ロール102を用いるが、本実施形態に係る導電体被覆装置100aでは、繊維集合体積層シート18が巻き付けられた繰り出し側ロール102を用いる。つまり、導電体被覆装置100では、エレクトロスピニング装置200で製造された繊維集合体積層シート18から可撓性基材16を剥離し、得られた繊維集合体10が巻き付けられた繰り出し側ロール102を用いるが、導電体被覆装置100aでは、エレクトロスピニング装置200で製造された繊維集合体積層シート18が巻き付けられた巻き取り側ロール208を繰り出し側ロール102としてそのまま使用する。
【0036】
導電体被覆装置100aを用いた導電体被覆繊維集合体14の製造方法は、以下の工程によって行われる。まず、繊維集合体積層シート18が巻き付けられた繰り出し側ロール102が矢印方向に回転すると、繊維集合体積層シート18は、送りローラ104,104の間を通過しながら、金属刃等の剥離機構(不図示)によって可撓性基材16と繊維集合体10に分離される。その後、可撓性基材16は、送りローラ104を経由して基材巻き取り機構である巻き取り側ロール150に巻き取られる。
【0037】
一方、繊維集合体10は、送りローラ機構130に進む。その後は、実施形態1と同様な工程を経て、両方のシート面から繊維集合体10の繊維表面に導電体が被覆された導電体被覆繊維集合体14が製造される。実施形態1では、繊維集合体積層シート18が巻き付けられた巻き取り側ロール208から繊維集合体積層シート18を引き出して、繊維集合体積層シート18から可撓性基材16を剥離した後、再び繊維集合体10を巻き付けて繰り出し側ロール102を準備するのに対して、本実施形態では、繊維集合体積層シート18が巻き付けられた巻き取り側ロール208を繰り出し側ロール102としてそのまま使用できるため、導電体被覆繊維集合体14の製造工程数を減らすことができる。
【0038】
図5は、本実施形態における導電体被覆繊維集合体の製造工程を説明するために示す図である。図5(a)は、可撓性基材16と繊維集合体10からなる繊維集合体積層シート18を示し、図5(b)は、導電体で被覆される前の繊維集合体10を示し、図5(c)は、一方のシート面から繊維集合体10の繊維表面に導電体が被覆された導電体被覆繊維集合体12を示し、図5(d)は、上記一方のシート面とは異なる他方のシート面から導電体被覆繊維集合体12の繊維表面に導電体が被覆された導電体被覆繊維集合体14を示す。
【0039】
[実施形態3]
図6は、実施形態3に係る導電体被覆装置100bの断面模式図である。実施形態2に係る導電体被覆装置100aでは、製造された導電体被覆繊維集合体14がそのまま巻き取り側ロール108に巻き取られるが、本実施形態に係る導電体被覆装置100bでは、製造された導電体被覆繊維集合体14は、可撓性基材20が接合された導電体被覆繊維集合体積層シート22の状態で巻き取り側ロール108に巻き取られる。こうして巻き取り側ロール108で巻き取られた導電体被覆繊維集合体14は、その層間に可撓性基材20が存在するため、巻き取り側ロール108を保管又は運搬する際、導電体被覆繊維集合体14のシート同士の接触がなく、導電体被覆繊維集合体14から導電体被覆が剥離するのが抑えられる。
【0040】
本実施形態に係る導電体被覆装置100bを用いた導電体被覆繊維集合体積層シート22の製造方法は、以下の工程によって行われる。まず、実施形態2と同様な製造工程を経て、導電体被覆繊維集合体14は真空蒸着室120から搬出される。つぎに、導電体被覆繊維集合体14は、送りローラ104を経由し、送りローラ142,144の間を通過した後、基材繰り出し機構である繰り出し側ロール160から送り出された可撓性基材20と共に送りローラ104,104の間を通過しながら、基材接合機構(不図示)によって可撓性基材20に接合される。そして、導電体被覆繊維集合体積層シート22は、巻き取り側ロール108に巻き取られる。
【0041】
図7は、本実施形態における導電体被覆繊維集合体積層シートの製造工程を説明するために示す図である。図7(a)は、可撓性基材16と繊維集合体10からなる繊維集合体積層シート18を示し、図7(b)は、導電体で被覆される前の繊維集合体10を示し、図7(c)は、一方のシート面から繊維集合体10の繊維表面に導電体が被覆された導電体被覆繊維集合体12を示し、図7(d)は、上記一方のシート面とは異なる他方のシート面から導電体被覆繊維集合体12の繊維表面に導電体が被覆された導電体被覆繊維集合体14を示し、図7(e)は、可撓性基材20と導電体被覆繊維集合体14からなる導電体被覆繊維集合体積層シート22を示す。
【0042】
[実施形態4]
図8は、実施形態4に係る導電体被覆装置100cの断面模式図である。実施形態3に係る導電体被覆装置100bでは、繊維集合体積層シート18から可撓性基材16が剥離された繊維集合体10の状態で真空蒸着室110に搬入されるが、本実施形態に係る導電体被覆装置100cでは、繊維集合体積層シート18が真空蒸着室110に搬入され、繊維集合体10の繊維表面に導電体が被覆された後、真空蒸着室110の外で導電体被覆繊維集合体積層シート19から可撓性基材16が剥離される。このため、冷却ローラ106aに金属蒸気114に起因する金属が付着しにくくなり、冷却ローラ106aの洗浄回数を減らせる。
【0043】
本実施形態に係る導電体被覆装置100cを用いた導電体被覆繊維集合体積層シート22の製造方法は、以下の工程によって行われる。まず、繊維集合体積層シート18が巻き付けられた繰り出し側ロール102が矢印方向に回転すると、繊維集合体積層シート18は送りローラ機構130に進む。そして、繊維集合体積層シート18は、送りローラ132,134の間を通過し、送りローラ104を経由して、冷却ローラ106aに密着した状態で減圧雰囲気の真空蒸着室110内に進む。
【0044】
真空蒸着室110内では、真空蒸着ユニット112から蒸発した金属蒸気114に、繊維集合体積層シート18を構成する繊維集合体10がさらされ、金属蒸気114は繊維集合体10の繊維表面で冷却されて金属被膜となる。なお、遮蔽板116が金属蒸気114を遮ることによって、繊維集合体10の所望の個所が金属蒸気114にさらされるようになっている。こうして、一方のシート面から繊維集合体10の繊維表面に導電体が被覆された導電体被覆繊維集合体12と可撓性基材16からなる導電体被覆繊維集合体積層シート19が製造される。
【0045】
つづいて、冷却ローラ106aを通過した導電体被覆繊維集合体積層シート19は、真空蒸着室110から搬出され、送りローラ104を経由した後、送りローラ104,104の間を通過しながら、金属刃等の剥離機構(不図示)によって可撓性基材16と導電体被覆繊維集合体12に分離される。その後は、実施形態3と同様な工程を経て、両方のシート面から繊維集合体10の繊維表面に導電体が被覆された導電体被覆繊維集合体14が可撓性基材20に接合された導電体被覆繊維集合体積層シート22が製造される。
【0046】
図9は、本実施形態における導電体被覆繊維集合体積層シートの製造工程を説明するために示す図である。図9(a)は、可撓性基材16と繊維集合体10からなる繊維集合体積層シート18を示し、図9(b)は、可撓性基材16と一方のシート面から繊維集合体10の繊維表面に導電体が被覆された導電体被覆繊維集合体12からなる繊維集合体積層シート19を示し、図9(c)は、上記一方のシート面から繊維集合体10の繊維表面に導電体が被覆された導電体被覆繊維集合体12を示し、図9(d)は、上記一方のシート面とは異なる他方のシート面から導電体被覆繊維集合体12の繊維表面に導電体が被覆された導電体被覆繊維集合体14を示し、図9(e)は、可撓性基材20と導電体被覆繊維集合体14からなる導電体被覆繊維集合体積層シート22を示す。
【0047】
[実施形態5]
図10は、実施形態5に係る導電体被覆装置100dの断面模式図である。本実施形態に係る導電体被覆装置100dと実施形態1に係る導電体被覆装置100との主な相違点は、繰り出し側ロール102及び巻き取り側ロール108の位置と、冷却ローラ106a,106b間を進行する導電体被覆繊維集合体12の位置である。本実施形態における導電体被覆繊維集合体14の製造工程は、実施形態1における導電体被覆繊維集合体14の製造工程とほぼ同じである。
【0048】
[実施形態6]
図11は、実施形態6に係る導電体被覆装置100eを説明するために示す図である。図11(a)は、実施形態6に係る導電体被覆装置100eの断面模式図であり、図11(b)は、導電体被覆装置100eの反転部180の内部を示す図である。導電体被覆装置100eは反転機構を有し、この反転機構は、ローラ170,170と、反転部180と、ローラ172,172とを備える。導電体被覆装置100eでは、真空蒸着室110で金属被覆された導電体被覆繊維集合体12の一方のシート面12bを下に、他方のシート面12aを上にした状態で、導電体被覆繊維集合体12が送りローラ170,170に進む。
【0049】
そして、導電体被覆繊維集合体12は、送りローラ170,170を通過した後、ねじられながら進行して反転部180で上下のシート面が反転される。そして、真空蒸着室110で金属被覆された導電体被覆繊維集合体12の一方のシート面12bを上に、他方のシート面12aを下にして送りローラ172,172に進む。送りローラ172,172を通過した導電体被覆繊維集合体12は、送りローラ104を経由して真空蒸着室120に搬入される。
【0050】
本実施形態に係る導電体被覆装置100eと実施形態1に係る導電体被覆装置100との主な相違点は、真空蒸着室110,120間で導電体被覆繊維集合体12のシート面を反転させる手法である。導電体被覆装置100eは反転部180で導電体被覆繊維集合体12のシート面を反転させるため、真空蒸着室110,120間における導電体被覆繊維集合体12の移動距離を導電体被覆装置100より短くできる。このため、導電体被覆装置の小型化が可能となる。
【0051】
導電体被覆繊維集合体12のシート面の反転方法を除き、本実施形態における導電体被覆繊維集合体14の製造工程は、実施形態1における導電体被覆繊維集合体14の製造工程とほぼ同じである。なお、ローラ170,170と、ローラ172,172との間に、互いに45ーねじれた関係にある3組の方向変換ローラが配設されていてもよい。
【0052】
[実施形態7]
図12は、実施形態7に係る導電体被覆装置100fの断面模式図である。本実施形態に係る導電体被覆装置100fでは、スパッタリングユニット112a,122aによるプラズマ114a,124aを用いて繊維集合体10及び導電体被覆繊維集合体12に金属を被覆しており、真空蒸着ユニット112,122から蒸発した金属蒸気114,124を用いて繊維集合体10及び導電体被覆繊維集合体12に金属を被覆している実施形態1に係る導電体被覆装置100等と相違する。繊維集合体10及び導電体被覆繊維集合体12の金属被覆の手法を除き、本実施形態における導電体被覆繊維集合体14の製造工程は、実施形態1における導電体被覆繊維集合体14の製造工程とほぼ同じである。
【0053】
[実施形態8]
図13は、実施形態8に係る導電体被覆装置100gの断面模式図である。本実施形態に係る導電体被覆装置100gでは、冷却プレート107a,107bを用いて繊維集合体10及び導電体被覆繊維集合体12に金属被覆している点が、冷却ローラ106a,106bを用いて繊維集合体10及び導電体被覆繊維集合体12に金属被覆している実施形態1に係る導電体被覆装置100等と相違する。繊維集合体10及び導電体被覆繊維集合体12の金属被覆の手段を除き、本実施形態における導電体被覆繊維集合体14の製造工程は、実施形態7における導電体被覆繊維集合体14の製造工程とほぼ同じである。
【0054】
[実施形態9]
図14は、実施形態9に係る導電体被覆装置100hの断面模式図である。本実施形態に係る導電体被覆装置100hは、エレクトロスピニング装置200を備える。したがって、導電体被覆工程の直前に繊維集合体10の製造工程を行える。このため、樹脂原料から導電体被覆繊維集合体14を連続的に製造できる。エレクトロスピニング装置200を備える点を除き、本実施形態における導電体被覆繊維集合体14の製造工程は、実施形態2における導電体被覆繊維集合体14の製造工程とほぼ同じである。
【実施例】
【0055】
導電体被覆装置100を用いて、以下の工程で得られた繊維集合体に、金属を被覆して導電体被覆繊維集合体を製造した。まず、ポリエステル繊維の不織布からなる長尺の可撓性基材16を準備した。可撓性基材16の厚さは200μmであり、1m当たりの質量は50gであった。つぎに、エレクトロスピニング装置200を用いて、エレクトロスピニング法によって可撓性基材16上にポリウレタンからなる繊維集合体10を製造した。
【0056】
繊維集合体10の厚さは10μmであり、1m当たりの質量は5gであった。また、繊維集合体10を構成するポリマー繊維の平均直径は300nmであった。ここで、ポリマー繊維の平均直径は、電子顕微鏡写真に写っている多数のポリマー繊維における測定個所を無作為に100点抽出し、その個所における繊維幅を測定し、測定された繊維幅を平均することよって算出した。
【0057】
つづいて、導電体被覆装置100を用いて、一方のシート面から上記工程で得られた繊維集合体の繊維表面に銀が被覆された導電体被覆繊維集合体12を製造し、さらに、上記一方のシート面とは異なる他方のシート面から導電体被覆繊維集合体12の繊維表面に銀が被覆された導電体被覆繊維集合体14を製造した。導電体被覆繊維集合体14の断面顕微鏡写真を撮影して銀の厚さを数個所計測したところ、銀の厚さはいずれも約50nmであった。
【0058】
以上、本発明の導電体被覆装置を各実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、次のような変形も可能である。
【0059】
(1)各実施形態においては、エレクトロスピニング法を用いて繊維集合体10を形成するが、例えば、メルトブロウン法によって繊維集合体10を形成してもよい。
【0060】
(2)各実施形態のエレクトロスピニング装置200においては、繊維集合体の原料樹脂を溶媒に溶解して液体としているが、例えば、繊維集合体の原料樹脂を加熱して液体としてもよい。
【0061】
(3)各実施形態のエレクトロスピニング装置200においては、可撓性基材16上に繊維集合体10を形成し、繊維集合体積層シート18の状態で巻き取るが、例えば、可撓性基材16上に繊維集合体10を形成した後、エレクトロスピニング装置200内で可撓性基材16から繊維集合体10を剥離し、可撓性基材16と繊維集合体10とをそれぞれ巻き取ってもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…繊維集合体、12,14…導電体被覆繊維集合体、16,20…可撓性基材、18…繊維集合体積層シート、19,22…導電体被覆繊維集合体積層シート、100,100a,100b,100c,100d,100e,100f,100g,100h,910…導電体被覆装置、102,160…繰り出し側ロール、104,132,134,142,144…送りローラ、106a,106b…冷却ローラ、107a,107b…冷却プレート、108,150…巻き取り側ロール、110,120…真空蒸着室、110a,110b,120a,120b…スパッタ室、112,122…真空蒸着ユニット、112a,112b,122a,122b…スパッタリングユニット、114,124…金属蒸気、114a,114b,124a,124b…プラズマ、180…反転部、200…エレクトロスピニング装置、220…樹脂原料タンク、222…バルブ、224…ノズル、226…対向電極、228…高圧電源、230…樹脂原料液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内で繰り出し機構から繰り出されたシートが巻き取り機構で巻き取られるまでの間に、両方のシート面からシートに含まれる繊維集合体の繊維表面に導電体を被覆する導電体被覆装置であって、
一方のシート面から繊維集合体の繊維表面に導電体を被覆する第1導電体被覆室と、
前記一方のシート面と異なる他のシート面から、前記第1導電体被覆室で得られた導電体被覆繊維集合体の繊維表面に導電体を被覆する第2導電体被覆室とを有することを特徴とする導電体被覆装置。
【請求項2】
請求項1に記載の導電体被覆装置において、
前記シートは繊維集合体から構成されることを特徴とする導電体被覆装置。
【請求項3】
請求項1に記載の導電体被覆装置において、
前記シートは、基材と、この基材表面に形成された繊維集合体とを有し、
前記繰り出し機構と前記第1導電体被覆室との間に、前記繊維集合体から前記基材を剥離する剥離機構と、前記剥離機構で剥離された基材を巻き取る基材巻き取り機構とを有することを特徴とする導電体被覆装置。
【請求項4】
請求項1に記載の導電体被覆装置において、
前記シートは、基材と、この基材表面に形成された繊維集合体とを有し、
前記第1導電体被覆室と前記第2導電体被覆室との間に、前記第1導電体被覆室から搬出された導電体被覆繊維集合体から前記基材を剥離する剥離機構と、前記剥離機構で剥離された基材を巻き取る基材巻き取り機構とを有することを特徴とする導電体被覆装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の導電体被覆装置において、
前記第2導電体被覆室と前記巻き取り機構との間に、基材を繰り出す基材繰り出し機構と、前記基材繰り出し機構から繰り出された基材を前記第2導電体被覆室から搬出された導電体被覆繊維集合体に接合する基材接合機構とを有することを特徴とする導電体被覆装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の導電体被覆装置において、
前記第1導電体被覆室と前記第2導電体被覆室との間に、シートを進行させながらねじることによってシート面を反転させる反転機構を有することを特徴とする導電体被覆装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の導電体被覆装置において、
前記処理室内を減圧状態に保持する減圧手段をさらに有することを特徴とする導電体被覆装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−248650(P2010−248650A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97659(P2009−97659)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(504180239)国立大学法人信州大学 (759)
【出願人】(508231821)トップテック・カンパニー・リミテッド (40)
【氏名又は名称原語表記】TOPTEC Co., Ltd.
【Fターム(参考)】