導電回路一体化成形品及びその製造方法
【課題】部品点数及び製造工程を増加させることなく、リードの剥がれや破断、導電回路の腐食を防止することができる導電回路一体化成形品を提供する。
【解決手段】樹脂成形体と、樹脂成形体内に樹脂成形体の一面に対して面一になるように埋め込まれたベースフィルムと、樹脂成形体とベースフィルムとの間に配置された導電回路と、導電回路を外部装置に電気的に接続するためのリードとを有し、リードの一端部は樹脂成形体内に埋め込まれた状態で導電回路の一部と電気的に接続され、リードの他端部は樹脂成形体の外部に露出している。
【解決手段】樹脂成形体と、樹脂成形体内に樹脂成形体の一面に対して面一になるように埋め込まれたベースフィルムと、樹脂成形体とベースフィルムとの間に配置された導電回路と、導電回路を外部装置に電気的に接続するためのリードとを有し、リードの一端部は樹脂成形体内に埋め込まれた状態で導電回路の一部と電気的に接続され、リードの他端部は樹脂成形体の外部に露出している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用のオーディオ機器やエアコン機器の表示パネル、携帯電話のウインドウパネル、パソコンのディスプレイやマウス、各種家庭用機器の操作パネルやリモコン、ゲーム機器のディスプレイなどに使用される、導電回路一体化成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の導電回路一体化成形品としては、例えば、図16に示すような構造のものが知られている。図16は、従来の導電回路一体化成形品の構造を模式的に示す部分断面図である。
【0003】
図16において、従来の導電回路一体化成形品は、樹脂成形体102の外表面に意匠パターン層101が形成され、樹脂成形体102の内表面にアンテナ又は静電センサシートなどの、リード106付きの機能シート103が形成された構造を有している。
【0004】
意匠パターン層101は、オン/オフボタンやスライダースイッチなど、操作機能を表示するパターンや外観意匠パターンが形成された層である。
【0005】
樹脂成形体102は、一般に、透明性及び絶縁性を有するポリカーボネート(PC)やアクリル樹脂などで形成されている。樹脂成形体102は、意匠パターン層101及び機能シート103が形成される前にあらかじめ成形されている。
【0006】
機能シート103は、ベースフィルム131と、ベースフィルム131上に形成されたアンテナパターンや静電センサパターンなどの導電回路132と、粘着接着剤133により導電回路132上に貼着された保護フィルム134とで構成されている。機能シート103は、接着剤104によりベースフィルム131が樹脂成形体102の内表面に貼着されることで、樹脂成形体102の内表面に貼着されている。
【0007】
ベースフィルム131は、周端部の一部が切り欠かれており、当該切り欠き部分において導電回路132の一部が露出している。導電回路132の露出部分は、ACFやACPなどの異方導電性接着剤105により、FPC(フレキシブル基板)などの帯状のリード106の一端部と電気的に接続されている。リード106の他端部には、外部装置と接続するためのコネクタ107が接続されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記のように構成される従来の導電回路一体化成形品においては、導電回路132とリード106の一端部とを異方導電性接着剤105により圧着しているだけである。このため、リード106が導電回路132から剥がれやすいという課題がある。また、リード106の一端部の近傍の折り曲げ部分106aは、接着剤104、保護フィルム134、粘着接着剤133、及び異方導電性接着剤105の合計厚み分だけ樹脂成形体102から浮き上がった状態にある。このため、リード106の折り曲げ部分106aが破断しやすいという課題がある。さらに、導電回路132は外気に曝されると腐食する性質があるが、リード106の一端部のみで導電回路132の露出部分を完全に覆うことは困難である。
【0009】
前記各課題を解決する方法としては、導電回路132とリード106との接続部を封止するように封止樹脂を形成する方法がある。しかしながら、この場合、当然ながら、部品点数が増加するとともに、製造工程が増加することになる。
【0010】
従って、本発明の目的は、前記課題を解決することにあって、部品点数及び製造工程を増加させることなく、リードの剥がれや破断、導電回路の腐食を防止することができる導電回路一体化成形品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、樹脂成形体と、
前記樹脂成形体内に、前記樹脂成形体の一面に対して面一になるように埋め込まれたベースフィルムと、
前記樹脂成形体と前記ベースフィルムとの間に配置された導電回路と、
前記導電回路を外部装置に電気的に接続するための帯状のリードと、
を有し、
前記リードの一端部は、前記樹脂成形体内に埋め込まれた状態で前記導電回路の一部と電気的に接続され、
前記リードの他端部は、前記樹脂成形体の外部に露出している、
導電回路一体化成形品を提供する。
【0012】
本発明の第2態様によれば、前記導電回路は、静電センサパターン又はアンテナパターンである、第1態様に記載の導電回路一体化成形品を提供する。
【0013】
本発明の第3態様によれば、前記リードの他端部は、前記ベースフィルムを貫通して外部に露出している、第1又は2態様に記載の導電回路一体化成形品を提供する。
【0014】
本発明の第4態様によれば、前記リードの他端部は、前記樹脂成形体の一面に対して面一になるように前記樹脂成形体内に埋め込まれている、第1又は2態様に記載の導電回路一体化成形品を提供する。
【0015】
本発明の第5態様によれば、前記リードの一端部には、前記リードの厚み方向に貫通する貫通孔が形成され、
前記樹脂成形体の一部が、前記貫通孔に充填されている、
第1〜4態様のいずれか1つに記載の導電回路一体化成形品を提供する。
【0016】
本発明の第6態様によれば、前記リードの一端部の側縁部には、凹部が形成され、
前記樹脂成形体の一部が、前記凹部に入り込んでいる、
第1〜4態様のいずれか1つに記載の導電回路一体化成形品を提供する。
【0017】
本発明の第7態様によれば、前記リードの一端部の側縁部の一部は、前記樹脂成形体に食い込むように折り曲げられている、第1〜4態様のいずれか1つに記載の導電回路一体化成形品を提供する。
【0018】
本発明の第8態様によれば、帯状のリードの一端部と電気的に接続された導電回路が形成されたベースフィルムを射出成形用金型のキャビティ面に配置した後、前記金型のキャビティ空間内に溶融樹脂を射出して、樹脂成形体を射出成形すると同時に、前記樹脂成形体内に前記導電回路及び前記リードの一端部を埋め込むとともに前記リードの他端部が前記樹脂成形体の外部に露出するように前記樹脂成形体の表面に前記ベースフィルムを形成すること含む、導電回路一体化成形品の製造方法を提供する。
【0019】
本発明の第9態様によれば、前記樹脂成形体を射出成形する前に、前記リードの他端部に接続されたコネクタを、前記キャビティ空間から離して前記金型内に設けたコネクタ収納空間内に配置する、第8態様に記載の導電回路一体化成形品の製造方法を提供する。
【0020】
本発明の第10態様によれば、前記樹脂成形体を射出成形する前に、前記リードの他端部に接続されたコネクタを、前記キャビティ面に対して傾斜する方向に前記金型を貫通して摺動可能な傾斜ピン又は前記金型の前記傾斜ピンと接触する部分の少なくとも一方に設けたコネクタ収納用凹部内に配置し、その後、前記傾斜ピンの頂面が前記キャビティ面に対して面一になるように前記傾斜ピンを摺動させて前記コネクタを前記キャビティ空間から遠ざける、第8態様に記載の導電回路一体化成形品の製造方法を提供する。
【0021】
本発明の第11態様によれば、前記樹脂成形体を射出成形する前に、粘着テープにより前記リードの他端部を前記キャビティ面に貼り付ける、第8態様に記載の導電回路一体化成形品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる導電回路一体化成形品によれば、リードの一端部を樹脂成形体内に埋め込んだ状態で導電回路の一部と電気的に接続するようにしているので、リードが導電回路から剥がれることを防止することができる。また、樹脂成形体内でリードを折り曲げることにより、リードが破断等することを防止することができる。また、導電回路は、樹脂成形体とベースフィルムとの間に配置されて外気に曝されないので、導電回路が腐食することを防止することができる。さらに、導電回路とリードとの接続部を封止する封止樹脂を別途設ける必要がないので、部品点数及び製造工程の増加を抑えることができる。
【0023】
本発明にかかる導電回路一体化成形品の製造方法によれば、導電回路が形成されたベースフィルムを金型のキャビティ面に配置し、樹脂成形体の射出成形と同時に樹脂成形体の表面に前記ベースフィルムを形成するようにしている。また、樹脂成形体の射出成形時おいて、樹脂成形体内に導電回路及びリードの一端部を埋め込むとともにリードの他端部が樹脂成形体の外部に露出するようにしている。これにより、樹脂成形体がリードと導電回路との接続部を覆うので、部品点数及び製造工程を増加させることなく、リードの剥がれや破断、導電回路の腐食を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品の斜視図である。
【図2】図1の導電回路一体化成形品の構造を模式的に示す断面図である。
【図3】図1の導電回路一体化成形品におけるベースフィルムと導電回路とリードの位置関係を模式的に示す平面図である。
【図4A】本発明の第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【図4B】図4Aに続く工程を示す断面図である。
【図5A】本発明の第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品の製造方法の他の例を模式的に示す断面図である。
【図5B】図5Aに続く工程を示す断面図である。
【図6A】本発明の第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品における、リード部分の第1変形例を模式的に示す拡大平面図である。
【図6B】図6AのA1−A1線断面図である。
【図7A】本発明の第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品における、リード部分の第2変形例を模式的に示す拡大平面図である。
【図7B】図7AのA2−A2線断面図である。
【図8A】本発明の第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品における、リード部分の第3変形例を模式的に示す拡大平面図である。
【図8B】図8AのA3−A3線断面図である。
【図9A】本発明の第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品における、リード部分の第4変形例を模式的に示す拡大平面図である。
【図9B】図9AのB1−B1線断面図である。
【図10A】本発明の第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品における、リード部分の第5変形例を模式的に示す拡大平面図である。
【図10B】図10AのB2−B2線断面図である。
【図11A】本発明の第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品における、リード部分の第6変形例を模式的に示す拡大平面図である。
【図11B】図11AのB3−B3線断面図である。
【図12】本発明の第2実施形態にかかる導電回路一体化成形品の構造を模式的に示す断面図である。
【図13】図12の導電回路一体化成形品におけるベースフィルムと導電回路とリードの位置関係を模式的に示す平面図である。
【図14A】本発明の第2実施形態にかかる導電回路一体化成形品の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【図14B】図14Aに続く工程を示す断面図である。
【図15】図14AのC1−C1線断面図である。
【図16】従来の導電回路一体化成形品の構造を模式的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
《第1実施形態》
本発明の第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品の構造について、図1〜図3を用いて説明する。図1は、本第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品の斜視図である。図2は、図1の導電回路一体化成形品の構造を模式的に示す断面図である。図3は、ベースフィルムと導電回路とリードの位置関係を模式的に示す平面図である。
【0027】
本第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品は、透明性及び絶縁性を有するポリカーボネート(PC)やアクリル樹脂などの樹脂材料で形成された樹脂成形体2を備えている。
【0028】
樹脂成形体2の外表面には、図2に示すように、意匠パターン層1が形成されている。意匠パターン層1は、オン/オフボタンやスライダースイッチなど、操作機能を表示するパターンや外観意匠パターンが形成された層である。
【0029】
樹脂成形体2の内表面には、当該内表面に対して面一になるようにベースフィルム3が埋め込まれている。ベースフィルム3は、例えば、ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリルフィルムなどで形成されている。
【0030】
ベースフィルム3の樹脂成形体2側の表面には、アンテナパターンや静電センサパターンなどの導電回路4が形成されている。導電回路4は、例えば、銅メッシュや、ITO(酸化インジウムスズ)などの透明金属薄膜を所定のパターンでエッチングすることにより形成されている。この導電回路4は、接着剤5により樹脂成形体2に貼着されている。
【0031】
導電回路4の樹脂成形体2側の端部の一部は、ACFやACPなどの異方導電性接着剤6により、帯状のリード7の一端部7Aに設けられた端子部7dと電気的に接続されている。リード7は、FPC(フレキシブルプリント基板)などで構成されている。
【0032】
リード7は、ポリイミドなどのベースフィルム7a上に導体部7bを形成した構造を有している。導体部7b上には、導体部7bの保護のため、端子部7dを除いて絶縁体7cが形成されている。リード7は、樹脂成形体2内で折り曲げられ、ベースフィルム3に設けられた切欠部3aを通じて樹脂成形体2の外部に引き出されている。すなわち、リード7の一端部7Aは、樹脂成形体2内に埋め込まれ、リード7の他端部7Bは、樹脂成形体2の外部に露出している。リード7の他端部7Bには、外部装置と接続するためのコネクタ8が接続されている。
【0033】
本第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品によれば、リード7の一端部7Aを樹脂成形体2内に埋め込んだ状態で導電回路4の一部と電気的に接続するようにしているので、リード7が導電回路4から剥がれることを防止することができる。また、樹脂成形体2内でリード7を折り曲げることにより、リード7が破断等することを防止することができる。また、導電回路4は、樹脂成形体2とベースフィルム3との間に配置されて外気に曝されないので、導電回路4が腐食することを防止することができる。さらに、導電回路4とリード7との接続部を封止する封止樹脂を別途設ける必要がないので、部品点数及び製造工程の増加を抑えることができる。
【0034】
次に、本第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品の製造方法について説明する。図4A及び図4Bは、本第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【0035】
ここでは、射出成形用金型として第1金型T1、第2金型T2、及び第3金型T3の3つの金型を用いる。第2金型T2の側面には凹部T2aが設けられ、当該凹部T2aと対向する第3金型T3の側面には凹部T3aが設けられている。凹部T2aと凹部T3aとは、第2金型T2aと第3金型T3とが型閉じされることにより一体化し、コネクタ8を収納可能なコネクタ収納空間S1を形成する。また、第2金型T2には、ベースフィルム3を第2金型T2のキャビティ面T2cに吸着保持するための複数の吸引穴T2bが設けられている。各吸引穴T2bは、吸引溝(図示せず)によりそれぞれ連結されている。なお、第1金型T1と第2及び第3金型T2,T3とは、いずれが固定型(又は可動型)であってもよい。
【0036】
また、ここでは、ベースフィルム3上に導電回路4が形成され、当該導電回路4上に接着剤5があらかじめ形成されているものとする。また、導電回路4の端部の一部には、異方導電性接着剤6によりリード7の端子部7dがあらかじめ電気的に接続されているものとする。また、リード7の他端部7Bには、あらかじめコネクタ8が接続されているものとする。
【0037】
まず、図4Aに示すように、第1金型T1のキャビティ面T1aに意匠パターン層1を配置するとともに、第2金型T2のキャビティ面T2cに、導電回路4側が意匠パターン層1と対向するようにベースフィルム3を配置する。
【0038】
次いで、図示しない吸引装置により、第2金型T2の吸引穴T2b及び吸引溝を通じてベースフィルム3を吸引し、ベースフィルム3を第2金型T2のキャビティ面T2cにしっかりと吸着保持する。このとき、コネクタ8は、第2金型T2の凹部T2aの側方に位置するようにする。なお、第1金型T1にも吸引穴を設けて、意匠パターン層1を第1金型T1のキャビティ面T1aに吸着保持するようにしてもよい。
【0039】
次いで、第3金型T3を第2金型T2に向けてスライド移動させ、図4Bに示すように、第2金型T2と第3金型T3とを型閉じする。これにより、第2金型T2の凹部T2aと第3金型T3の凹部T2aとが一体化してコネクタ収納空間S1が形成され、当該空間S1にコネクタ8が収納される。なお、このとき、リード7の一部は、図4Bに示すように、第2金型T2と第3金型T3とで挟持されることになる。このため、リード7が第2金型T2と第3金型T3との型閉じにより破断等されることがないように、第2金型T2と第3金型T3のリード7と接触する部分に、リード7の厚み分の隙間を設けておくことが好ましい。
【0040】
次いで、第1金型T1〜第3金型T3の全てを型閉じしたときにそれらの間に形成されたキャビティ空間S2内に、PCやアクリル樹脂などの溶融樹脂を流し込んで、樹脂成形体2を射出成形する。これにより、図2に示す本第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品が製造される。
【0041】
前記製造方法によれば、導電回路4が形成されたベースフィルム3を第2金型T2のキャビティ面T2cに配置し、樹脂成形体2の射出成形と同時に樹脂成形体2の内表面にベースフィルム3を形成するようにしている。また、樹脂成形体2の射出成形時おいて、樹脂成形体2内に導電回路4及びリード7の一端部7Aを埋め込むとともにリード7の他端部7Bが樹脂成形体2の外部に露出するようにしている。これにより、樹脂成形体2がリード7と導電回路4との接続部を覆うので、部品点数及び製造工程を増加させることなく、リード7の剥がれや破断、導電回路4の腐食を防止することができる。
【0042】
また、従来の製造方法では、樹脂成形体102の成形後に機能シート103を貼着するようにしているため保護フィルム134及び接着剤104が必要であったが、前記製造方法では、それらを設ける必要性を無くすことができる。また、前述したように封止樹脂を別途設ける必要がないので、部品点数及び製造工程の増加を抑えることができる。
【0043】
また、従来の製造方法では、接着剤104として感圧性接着剤(PSA)を通常用いて、樹脂成形体102に機能シート103を貼着するようにしている。このため、樹脂成形体102と機能シート103との間に空気が入り込んで、柚肌状のムラが生じやすい。このようなムラが生じた場合には、透明性が低下し、導電回路一体化成形品としての意匠性に悪影響がある。また、従来の製造方法では、導電回路132がPSA内に確実に埋め込まれないため、導電回路132の微小な凹凸の界面で光が散乱することにより、ムラが発生して透明度が低下する。これに対して、前記製造方法によれば、樹脂成形体2の射出成形時の熱及び圧力により、樹脂成形体2と導電回路4との間に空気が入り込むことがなく、また、導電回路4の微小な凹凸にも樹脂が入り込んで一体化するので、前記ムラの発生を抑えて、透明性を向上させ、導電回路一体化成形品としての意匠性を向上させることができる。
【0044】
また、従来の製造方法では、樹脂成形体102が3次元曲面を有する場合には、当該曲面に機能シート103を貼り付けることが困難である。これに対して、前記製造方法によれば、樹脂成形体2の射出成形時の熱及び圧力によりベースフィルム3や導電回路4などの各部材自体も伸びるので、シワを発生させることなく、それらを容易に3次元曲面に一体化させることができる。
【0045】
また、前記製造方法によれば、コネクタ収納空間S1を設けるようにしているので、リード7の他端部7Bにコネクタ8を接続したまま、樹脂成形体2を射出成形することができる。
【0046】
なお、前記では、コネクタ8を収納するための凹部を第2金型T2と第3金型T3の2箇所に設けたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2金型T2又は第3金型T3のいずれか一方にコネクタ収納用凹部を設けるようにしてもよい。
【0047】
次に、導電回路一体化成形品の前記とは別の製造方法について説明する。図5A及び図5Bは、本第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品の製造方法の他の例を模式的に示す断面図である。
【0048】
ここでは、射出成形用金型として第1金型T1及び第2金型T4の2つの金型を用い、さらに傾斜ピンP1を用いる。第2金型T4には、傾斜ピンP1が摺動可能な傾斜穴T4aが設けられている。傾斜穴T4aは、第2金型T4のキャビティ面T4cに対して傾斜するように形成されている。傾斜ピンP1には、コネクタ8を収納可能なコネクタ収納用凹部P1aが形成されている。また、第2金型T4には、ベースフィルム3を第2金型T4のキャビティ面T4cに吸着保持するための複数の吸引穴T4bが設けられている。各吸引穴T4bは、吸引溝(図示せず)によりそれぞれ連結されている。なお、第1金型T1と第2金型T4とは、いずれが固定型(又は可動型)であってもよい。
【0049】
また、ここでは、ベースフィルム3上に導電回路4が形成され、当該導電回路4上に接着剤5があらかじめ形成されているものとする。また、導電回路4の端部の一部には、異方導電性接着剤6によりリード7の端子部7dがあらかじめ電気的に接続されているものとする。また、リード7の他端部7Bには、あらかじめコネクタ8が接続されているものとする。
【0050】
まず、図5Aに示すように、第1金型T1のキャビティ面T1aに意匠パターン層1を配置するとともに、第2金型T4のキャビティ面T4cに、導電回路4側が意匠パターン層1と対向するようにベースフィルム3を配置する。
【0051】
次いで、図示しない吸引装置により、第2金型T4の吸引穴T4b及び吸引溝を通じてベースフィルム3を吸引し、ベースフィルム3を第2金型T4のキャビティ面T4cにしっかりと吸着保持する。このとき、傾斜ピンP1は、第1金型T1側に突出し、コネクタ8は、傾斜ピンP1のコネクタ収納用凹部P1a内に位置するようにする。
【0052】
次いで、図5Aの矢印の方向に、傾斜ピンP1を第2金型T4の傾斜穴T4a内で摺動させる。これにより、図5Bに示すように、傾斜ピンP1の頂面P1bを第2金型T4のキャビティ面T4cと面一にする。このとき、リード7は、傾斜ピンP1の摺動に伴って引っ張られるので、第2金型T4のキャビティ面T4c上に密着する。
【0053】
なお、このとき、リード7の一部は、図5Bに示すように、第2金型T4と傾斜ピンP1との間で挟持されることになる。このため、リード7が破断等されることがないように、第2金型T4と傾斜ピンP1との間にリード7の厚み分の隙間を設けておくことが好ましい。また、リード7と接触する傾斜ピンP1の先端部P1cの角度θは、直角又は鋭角であることが好ましい。これにより、リード7が破断等することを抑えることができる。これに対して、角度θを鈍角にすると、第2金型T4と傾斜ピンP1とに挟まれるリード7は、鋭角に折り曲げられることになり、破断等する可能性がある。
【0054】
次いで、第1金型T1及び第2金型T4を型閉じしたときにそれらの間に形成されたキャビティ空間S3内に、PCやアクリル樹脂などの溶融樹脂を流し込んで、樹脂成形体2を射出成形する。これにより、図2に示す本第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品が製造される。
【0055】
なお、前記では、コネクタ8を収納するための凹部を傾斜ピンP1に設けたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2金型T4にコネクタ収納用凹部を設けるようにしてもよい。また、傾斜ピンP1と第2金型T4の両方にコネクタ収納用凹部を設けるようにしてもよい。
【0056】
なお、本発明は前記第1実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、前記では、図2又は図3に示すように、導電回路4とリード7の端子部7dとの接続部の近傍でリード7を折り曲げて、ベースフィルム3の切欠部3aを通じて樹脂成形体2の外部に引き出すようにしたが、本発明はこれに限定されない。
【0057】
例えば、図6A及び図6Bに示すように、切欠部3aに代えてベースフィルム3にスリット3bを設けて、リード7がスリット3bを通るように構成してもよい。
【0058】
また、例えば、樹脂成形体2とリード7に用いる材料の組合せによっては、樹脂成形体2とリード7との接着力が低く、リード7の剥離を十分に抑えることができない場合が有り得る。このため、図7A及び図7Bに示すように、樹脂成形体2中に存在するリード7の一端部7Aの長さを長くすることが好ましい。これにより、リード7と樹脂成形体2との接着力を強固にすることができる。また、図8A及び図8Bに示すように、ベースフィルム3には切欠部3aを設けず、ベースフィルム3の側方に突出した部分を有するようにリード7を設けてもよい。なお、導電回路4とリード7との接続部を除いたリード7の樹脂成形体2内での埋め込み長さは、1mm以上(例えば、3mm〜5mm)確保することが好ましい。これにより、樹脂成形体2とリード7に用いる材料の影響を受けずに、樹脂成形体2とリード7との接着力を十分に確保することができる。
【0059】
また、図9A及び図9Bに示すように、リード7に厚み方向に貫通する少なくとも1つの貫通穴7eを設けて、当該貫通穴7eに樹脂成形体2の一部が充填されるようにしてもよい。これにより、樹脂成形体2とリード7との接着力をより強固にすることができる。
【0060】
また、図10A及び図10Bに示すように、リード7の側縁部に少なくとも1つの凹部7fを設けて、当該凹部7fに樹脂成形体2の一部が充填されるようにしてもよい。これにより、樹脂成形体2とリード7との接着力をより強固にすることができる。
【0061】
また、図11A及び図11Bに示すように、リード7の側縁部の一部を折り曲げて、当該折り曲げ部7gが樹脂成形体2に食い込むように構成してもよい。これにより、樹脂成形体2とリード7との接着力をより強固にすることができる。
【0062】
なお、本第1実施形態では、導電回路4と樹脂成形体2との間に接着剤5を設けたが本発明はこれに限定されない。例えば、樹脂成形体2及びベースフィルム3にポリカーボネートを用いた場合には、互いの接着性が良いので、接着剤5を設ける必要性を無くすことができる。
【0063】
また、本第1実施形態では、意匠パターン層1を設けたが、意匠パターン層1は必ずしも設ける必要はない。
【0064】
《第2実施形態》
本発明の第2実施形態にかかる導電回路一体化成形品の構造について、図12〜図13を用いて説明する。図12は、本第2実施形態にかかる導電回路一体化成形品の構造を模式的に示す断面図である。図13は、図12の導電回路一体化成形品におけるベースフィルムと導電回路とリードの位置関係を模式的に示す平面図である。
【0065】
本第2実施形態において、リード7の他端部7Bは、コネクタ8と接続されず、樹脂成形体2の内表面に対して面一になるように配置されている。また、リード7は、絶縁体7cを備えておらず、リード7の他端部7Bの導体部7bは外部に露出している。本第2実施形態においては、この導体部7bの露出部分が外部装置と接続するための端子部となる。
【0066】
図12及び図13に示すように、リード7のベースフィルム7aには、粘着テープ9が貼り付けられている。粘着テープ9は、ベースフィルム9a上に粘着剤9bを形成した構造を有している。ベースフィルム7aの周囲に位置する粘着テープ9の一部は、樹脂成形体2の内表面に対して面一になっており、外部に露出している。
【0067】
なお、粘着テープ9の粘着剤9bが外部に露出し、当該粘着剤9bの粘着性により取扱い性等が低下する場合には、外部に露出する粘着剤9b上にシリカなどの微粉末を付着させるとよい。これにより、粘着剤9bの粘着性を無くすことができる。
【0068】
なお、リード7のベースフィルム7aは、樹脂成形体2と密着性の高い材料が用いられることが好ましい。また、リード7と樹脂成形体2との接着力を向上させるために、リード7のベースフィルム7a上に別途接着剤を形成してもよい。
【0069】
上記以外の点については、前記第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0070】
次に、本第2実施形態にかかる導電回路一体化成形品の製造方法について説明する。図14A及び図14Bは、本第2実施形態にかかる導電回路一体化成形品の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。図15は、図14AのC1−C1線断面図である。
【0071】
ここでは、射出成形用金型として第1金型T5及び第2金型T6の2つの金型を用いる。また、第2金型T6には、ベースフィルム3を第2金型T6のキャビティ面T6bに吸着保持するための複数の吸引穴T6aが設けられている。各吸引穴T6bは、吸引溝(図示せず)によりそれぞれ連結されている。なお、第1金型T5と第2金型T6とは、いずれが固定型(又は可動型)であってもよい。
【0072】
また、ここでは、ベースフィルム3上に導電回路4が形成され、当該導電回路4上に接着剤5があらかじめ形成されているものとする。また、導電回路4の端部の一部には、異方導電性接着剤6によりリード7の端子部7dがあらかじめ電気的に接続されているものとする。
【0073】
まず、図14Aに示すように、第2金型T6のキャビティ面T6bに、導電回路4側が外部に露出するようにベースフィルム3を配置する。
【0074】
次いで、図示しない吸引装置により、第2金型T6の吸引穴T6a及び吸引溝を通じてベースフィルム3を吸引し、ベースフィルム3を第2金型T6のキャビティ面T6bにしっかりと吸着保持する。
【0075】
次いで、図13に示すように、ベースフィルム3の切欠部3aを覆うように粘着テープ9を貼り付ける。これにより、粘着テープ9は、リード7のベースフィルム7a上に貼り付けられるとともに、ベースフィルム7aの周囲に位置する第2金型T6のキャビティ面T6bに貼り付けられる。
【0076】
次いで、図14Bに示すように、意匠パターン層1を配置した第1金型T5と第2金型T6とを型閉じし、第1金型T5と第2金型T6との間に形成されたキャビティ空間S4内に、ポリカーボネートやアクリル樹脂などの溶融樹脂を流し込んで、樹脂成形体2を射出成形する。これにより、図12に示す本第2実施形態にかかる導電回路一体化成形品が製造される。
【0077】
本第2実施形態にかかる導電回路一体化成形品によれば、外部装置と接続するためのリード7の端子部を樹脂成形体2の内表面に沿って設けることができる。これにより、用途に応じて本第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品と本第2実施形態にかかる導電回路一体化成形品とを使い分けることが可能になり、使い勝手を向上させることができる。
【0078】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明にかかる導電回路成形同時一体化成形品は、部品点数及び製造工程を増加させることなく、リードの剥がれや破断、導電回路の腐食を防止することができるので、車載用のオーディオ機器やエアコン機器の表示パネル、携帯電話のウインドウパネル、パソコンのディスプレイやマウス、各種家庭用機器の操作パネルやリモコン、ゲーム機器のディスプレイなどに使用される、意匠パターンと静電センサーフィルムとが一体化されたパネル、及びその製造方法等として有用である。
【符号の説明】
【0080】
1 意匠パターン層
2 樹脂成形体
3 ベースフィルム
4 導電回路
5 接着剤
6 異方導電性接着剤
7 リード
7a ベースフィルム
7b 導体部
7c 絶縁体
7d 端子部
7e 貫通穴
7f 凹部
7g 折り曲げ部
8 コネクタ
9 粘着テープ
9a ベースフィルム
9b 粘着剤
T1,T5 第1金型
T2,T4,T6 第2金型
T3 第3金型
S1〜S4 空間
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用のオーディオ機器やエアコン機器の表示パネル、携帯電話のウインドウパネル、パソコンのディスプレイやマウス、各種家庭用機器の操作パネルやリモコン、ゲーム機器のディスプレイなどに使用される、導電回路一体化成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の導電回路一体化成形品としては、例えば、図16に示すような構造のものが知られている。図16は、従来の導電回路一体化成形品の構造を模式的に示す部分断面図である。
【0003】
図16において、従来の導電回路一体化成形品は、樹脂成形体102の外表面に意匠パターン層101が形成され、樹脂成形体102の内表面にアンテナ又は静電センサシートなどの、リード106付きの機能シート103が形成された構造を有している。
【0004】
意匠パターン層101は、オン/オフボタンやスライダースイッチなど、操作機能を表示するパターンや外観意匠パターンが形成された層である。
【0005】
樹脂成形体102は、一般に、透明性及び絶縁性を有するポリカーボネート(PC)やアクリル樹脂などで形成されている。樹脂成形体102は、意匠パターン層101及び機能シート103が形成される前にあらかじめ成形されている。
【0006】
機能シート103は、ベースフィルム131と、ベースフィルム131上に形成されたアンテナパターンや静電センサパターンなどの導電回路132と、粘着接着剤133により導電回路132上に貼着された保護フィルム134とで構成されている。機能シート103は、接着剤104によりベースフィルム131が樹脂成形体102の内表面に貼着されることで、樹脂成形体102の内表面に貼着されている。
【0007】
ベースフィルム131は、周端部の一部が切り欠かれており、当該切り欠き部分において導電回路132の一部が露出している。導電回路132の露出部分は、ACFやACPなどの異方導電性接着剤105により、FPC(フレキシブル基板)などの帯状のリード106の一端部と電気的に接続されている。リード106の他端部には、外部装置と接続するためのコネクタ107が接続されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記のように構成される従来の導電回路一体化成形品においては、導電回路132とリード106の一端部とを異方導電性接着剤105により圧着しているだけである。このため、リード106が導電回路132から剥がれやすいという課題がある。また、リード106の一端部の近傍の折り曲げ部分106aは、接着剤104、保護フィルム134、粘着接着剤133、及び異方導電性接着剤105の合計厚み分だけ樹脂成形体102から浮き上がった状態にある。このため、リード106の折り曲げ部分106aが破断しやすいという課題がある。さらに、導電回路132は外気に曝されると腐食する性質があるが、リード106の一端部のみで導電回路132の露出部分を完全に覆うことは困難である。
【0009】
前記各課題を解決する方法としては、導電回路132とリード106との接続部を封止するように封止樹脂を形成する方法がある。しかしながら、この場合、当然ながら、部品点数が増加するとともに、製造工程が増加することになる。
【0010】
従って、本発明の目的は、前記課題を解決することにあって、部品点数及び製造工程を増加させることなく、リードの剥がれや破断、導電回路の腐食を防止することができる導電回路一体化成形品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、樹脂成形体と、
前記樹脂成形体内に、前記樹脂成形体の一面に対して面一になるように埋め込まれたベースフィルムと、
前記樹脂成形体と前記ベースフィルムとの間に配置された導電回路と、
前記導電回路を外部装置に電気的に接続するための帯状のリードと、
を有し、
前記リードの一端部は、前記樹脂成形体内に埋め込まれた状態で前記導電回路の一部と電気的に接続され、
前記リードの他端部は、前記樹脂成形体の外部に露出している、
導電回路一体化成形品を提供する。
【0012】
本発明の第2態様によれば、前記導電回路は、静電センサパターン又はアンテナパターンである、第1態様に記載の導電回路一体化成形品を提供する。
【0013】
本発明の第3態様によれば、前記リードの他端部は、前記ベースフィルムを貫通して外部に露出している、第1又は2態様に記載の導電回路一体化成形品を提供する。
【0014】
本発明の第4態様によれば、前記リードの他端部は、前記樹脂成形体の一面に対して面一になるように前記樹脂成形体内に埋め込まれている、第1又は2態様に記載の導電回路一体化成形品を提供する。
【0015】
本発明の第5態様によれば、前記リードの一端部には、前記リードの厚み方向に貫通する貫通孔が形成され、
前記樹脂成形体の一部が、前記貫通孔に充填されている、
第1〜4態様のいずれか1つに記載の導電回路一体化成形品を提供する。
【0016】
本発明の第6態様によれば、前記リードの一端部の側縁部には、凹部が形成され、
前記樹脂成形体の一部が、前記凹部に入り込んでいる、
第1〜4態様のいずれか1つに記載の導電回路一体化成形品を提供する。
【0017】
本発明の第7態様によれば、前記リードの一端部の側縁部の一部は、前記樹脂成形体に食い込むように折り曲げられている、第1〜4態様のいずれか1つに記載の導電回路一体化成形品を提供する。
【0018】
本発明の第8態様によれば、帯状のリードの一端部と電気的に接続された導電回路が形成されたベースフィルムを射出成形用金型のキャビティ面に配置した後、前記金型のキャビティ空間内に溶融樹脂を射出して、樹脂成形体を射出成形すると同時に、前記樹脂成形体内に前記導電回路及び前記リードの一端部を埋め込むとともに前記リードの他端部が前記樹脂成形体の外部に露出するように前記樹脂成形体の表面に前記ベースフィルムを形成すること含む、導電回路一体化成形品の製造方法を提供する。
【0019】
本発明の第9態様によれば、前記樹脂成形体を射出成形する前に、前記リードの他端部に接続されたコネクタを、前記キャビティ空間から離して前記金型内に設けたコネクタ収納空間内に配置する、第8態様に記載の導電回路一体化成形品の製造方法を提供する。
【0020】
本発明の第10態様によれば、前記樹脂成形体を射出成形する前に、前記リードの他端部に接続されたコネクタを、前記キャビティ面に対して傾斜する方向に前記金型を貫通して摺動可能な傾斜ピン又は前記金型の前記傾斜ピンと接触する部分の少なくとも一方に設けたコネクタ収納用凹部内に配置し、その後、前記傾斜ピンの頂面が前記キャビティ面に対して面一になるように前記傾斜ピンを摺動させて前記コネクタを前記キャビティ空間から遠ざける、第8態様に記載の導電回路一体化成形品の製造方法を提供する。
【0021】
本発明の第11態様によれば、前記樹脂成形体を射出成形する前に、粘着テープにより前記リードの他端部を前記キャビティ面に貼り付ける、第8態様に記載の導電回路一体化成形品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる導電回路一体化成形品によれば、リードの一端部を樹脂成形体内に埋め込んだ状態で導電回路の一部と電気的に接続するようにしているので、リードが導電回路から剥がれることを防止することができる。また、樹脂成形体内でリードを折り曲げることにより、リードが破断等することを防止することができる。また、導電回路は、樹脂成形体とベースフィルムとの間に配置されて外気に曝されないので、導電回路が腐食することを防止することができる。さらに、導電回路とリードとの接続部を封止する封止樹脂を別途設ける必要がないので、部品点数及び製造工程の増加を抑えることができる。
【0023】
本発明にかかる導電回路一体化成形品の製造方法によれば、導電回路が形成されたベースフィルムを金型のキャビティ面に配置し、樹脂成形体の射出成形と同時に樹脂成形体の表面に前記ベースフィルムを形成するようにしている。また、樹脂成形体の射出成形時おいて、樹脂成形体内に導電回路及びリードの一端部を埋め込むとともにリードの他端部が樹脂成形体の外部に露出するようにしている。これにより、樹脂成形体がリードと導電回路との接続部を覆うので、部品点数及び製造工程を増加させることなく、リードの剥がれや破断、導電回路の腐食を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品の斜視図である。
【図2】図1の導電回路一体化成形品の構造を模式的に示す断面図である。
【図3】図1の導電回路一体化成形品におけるベースフィルムと導電回路とリードの位置関係を模式的に示す平面図である。
【図4A】本発明の第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【図4B】図4Aに続く工程を示す断面図である。
【図5A】本発明の第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品の製造方法の他の例を模式的に示す断面図である。
【図5B】図5Aに続く工程を示す断面図である。
【図6A】本発明の第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品における、リード部分の第1変形例を模式的に示す拡大平面図である。
【図6B】図6AのA1−A1線断面図である。
【図7A】本発明の第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品における、リード部分の第2変形例を模式的に示す拡大平面図である。
【図7B】図7AのA2−A2線断面図である。
【図8A】本発明の第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品における、リード部分の第3変形例を模式的に示す拡大平面図である。
【図8B】図8AのA3−A3線断面図である。
【図9A】本発明の第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品における、リード部分の第4変形例を模式的に示す拡大平面図である。
【図9B】図9AのB1−B1線断面図である。
【図10A】本発明の第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品における、リード部分の第5変形例を模式的に示す拡大平面図である。
【図10B】図10AのB2−B2線断面図である。
【図11A】本発明の第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品における、リード部分の第6変形例を模式的に示す拡大平面図である。
【図11B】図11AのB3−B3線断面図である。
【図12】本発明の第2実施形態にかかる導電回路一体化成形品の構造を模式的に示す断面図である。
【図13】図12の導電回路一体化成形品におけるベースフィルムと導電回路とリードの位置関係を模式的に示す平面図である。
【図14A】本発明の第2実施形態にかかる導電回路一体化成形品の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【図14B】図14Aに続く工程を示す断面図である。
【図15】図14AのC1−C1線断面図である。
【図16】従来の導電回路一体化成形品の構造を模式的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0026】
《第1実施形態》
本発明の第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品の構造について、図1〜図3を用いて説明する。図1は、本第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品の斜視図である。図2は、図1の導電回路一体化成形品の構造を模式的に示す断面図である。図3は、ベースフィルムと導電回路とリードの位置関係を模式的に示す平面図である。
【0027】
本第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品は、透明性及び絶縁性を有するポリカーボネート(PC)やアクリル樹脂などの樹脂材料で形成された樹脂成形体2を備えている。
【0028】
樹脂成形体2の外表面には、図2に示すように、意匠パターン層1が形成されている。意匠パターン層1は、オン/オフボタンやスライダースイッチなど、操作機能を表示するパターンや外観意匠パターンが形成された層である。
【0029】
樹脂成形体2の内表面には、当該内表面に対して面一になるようにベースフィルム3が埋め込まれている。ベースフィルム3は、例えば、ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリルフィルムなどで形成されている。
【0030】
ベースフィルム3の樹脂成形体2側の表面には、アンテナパターンや静電センサパターンなどの導電回路4が形成されている。導電回路4は、例えば、銅メッシュや、ITO(酸化インジウムスズ)などの透明金属薄膜を所定のパターンでエッチングすることにより形成されている。この導電回路4は、接着剤5により樹脂成形体2に貼着されている。
【0031】
導電回路4の樹脂成形体2側の端部の一部は、ACFやACPなどの異方導電性接着剤6により、帯状のリード7の一端部7Aに設けられた端子部7dと電気的に接続されている。リード7は、FPC(フレキシブルプリント基板)などで構成されている。
【0032】
リード7は、ポリイミドなどのベースフィルム7a上に導体部7bを形成した構造を有している。導体部7b上には、導体部7bの保護のため、端子部7dを除いて絶縁体7cが形成されている。リード7は、樹脂成形体2内で折り曲げられ、ベースフィルム3に設けられた切欠部3aを通じて樹脂成形体2の外部に引き出されている。すなわち、リード7の一端部7Aは、樹脂成形体2内に埋め込まれ、リード7の他端部7Bは、樹脂成形体2の外部に露出している。リード7の他端部7Bには、外部装置と接続するためのコネクタ8が接続されている。
【0033】
本第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品によれば、リード7の一端部7Aを樹脂成形体2内に埋め込んだ状態で導電回路4の一部と電気的に接続するようにしているので、リード7が導電回路4から剥がれることを防止することができる。また、樹脂成形体2内でリード7を折り曲げることにより、リード7が破断等することを防止することができる。また、導電回路4は、樹脂成形体2とベースフィルム3との間に配置されて外気に曝されないので、導電回路4が腐食することを防止することができる。さらに、導電回路4とリード7との接続部を封止する封止樹脂を別途設ける必要がないので、部品点数及び製造工程の増加を抑えることができる。
【0034】
次に、本第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品の製造方法について説明する。図4A及び図4Bは、本第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。
【0035】
ここでは、射出成形用金型として第1金型T1、第2金型T2、及び第3金型T3の3つの金型を用いる。第2金型T2の側面には凹部T2aが設けられ、当該凹部T2aと対向する第3金型T3の側面には凹部T3aが設けられている。凹部T2aと凹部T3aとは、第2金型T2aと第3金型T3とが型閉じされることにより一体化し、コネクタ8を収納可能なコネクタ収納空間S1を形成する。また、第2金型T2には、ベースフィルム3を第2金型T2のキャビティ面T2cに吸着保持するための複数の吸引穴T2bが設けられている。各吸引穴T2bは、吸引溝(図示せず)によりそれぞれ連結されている。なお、第1金型T1と第2及び第3金型T2,T3とは、いずれが固定型(又は可動型)であってもよい。
【0036】
また、ここでは、ベースフィルム3上に導電回路4が形成され、当該導電回路4上に接着剤5があらかじめ形成されているものとする。また、導電回路4の端部の一部には、異方導電性接着剤6によりリード7の端子部7dがあらかじめ電気的に接続されているものとする。また、リード7の他端部7Bには、あらかじめコネクタ8が接続されているものとする。
【0037】
まず、図4Aに示すように、第1金型T1のキャビティ面T1aに意匠パターン層1を配置するとともに、第2金型T2のキャビティ面T2cに、導電回路4側が意匠パターン層1と対向するようにベースフィルム3を配置する。
【0038】
次いで、図示しない吸引装置により、第2金型T2の吸引穴T2b及び吸引溝を通じてベースフィルム3を吸引し、ベースフィルム3を第2金型T2のキャビティ面T2cにしっかりと吸着保持する。このとき、コネクタ8は、第2金型T2の凹部T2aの側方に位置するようにする。なお、第1金型T1にも吸引穴を設けて、意匠パターン層1を第1金型T1のキャビティ面T1aに吸着保持するようにしてもよい。
【0039】
次いで、第3金型T3を第2金型T2に向けてスライド移動させ、図4Bに示すように、第2金型T2と第3金型T3とを型閉じする。これにより、第2金型T2の凹部T2aと第3金型T3の凹部T2aとが一体化してコネクタ収納空間S1が形成され、当該空間S1にコネクタ8が収納される。なお、このとき、リード7の一部は、図4Bに示すように、第2金型T2と第3金型T3とで挟持されることになる。このため、リード7が第2金型T2と第3金型T3との型閉じにより破断等されることがないように、第2金型T2と第3金型T3のリード7と接触する部分に、リード7の厚み分の隙間を設けておくことが好ましい。
【0040】
次いで、第1金型T1〜第3金型T3の全てを型閉じしたときにそれらの間に形成されたキャビティ空間S2内に、PCやアクリル樹脂などの溶融樹脂を流し込んで、樹脂成形体2を射出成形する。これにより、図2に示す本第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品が製造される。
【0041】
前記製造方法によれば、導電回路4が形成されたベースフィルム3を第2金型T2のキャビティ面T2cに配置し、樹脂成形体2の射出成形と同時に樹脂成形体2の内表面にベースフィルム3を形成するようにしている。また、樹脂成形体2の射出成形時おいて、樹脂成形体2内に導電回路4及びリード7の一端部7Aを埋め込むとともにリード7の他端部7Bが樹脂成形体2の外部に露出するようにしている。これにより、樹脂成形体2がリード7と導電回路4との接続部を覆うので、部品点数及び製造工程を増加させることなく、リード7の剥がれや破断、導電回路4の腐食を防止することができる。
【0042】
また、従来の製造方法では、樹脂成形体102の成形後に機能シート103を貼着するようにしているため保護フィルム134及び接着剤104が必要であったが、前記製造方法では、それらを設ける必要性を無くすことができる。また、前述したように封止樹脂を別途設ける必要がないので、部品点数及び製造工程の増加を抑えることができる。
【0043】
また、従来の製造方法では、接着剤104として感圧性接着剤(PSA)を通常用いて、樹脂成形体102に機能シート103を貼着するようにしている。このため、樹脂成形体102と機能シート103との間に空気が入り込んで、柚肌状のムラが生じやすい。このようなムラが生じた場合には、透明性が低下し、導電回路一体化成形品としての意匠性に悪影響がある。また、従来の製造方法では、導電回路132がPSA内に確実に埋め込まれないため、導電回路132の微小な凹凸の界面で光が散乱することにより、ムラが発生して透明度が低下する。これに対して、前記製造方法によれば、樹脂成形体2の射出成形時の熱及び圧力により、樹脂成形体2と導電回路4との間に空気が入り込むことがなく、また、導電回路4の微小な凹凸にも樹脂が入り込んで一体化するので、前記ムラの発生を抑えて、透明性を向上させ、導電回路一体化成形品としての意匠性を向上させることができる。
【0044】
また、従来の製造方法では、樹脂成形体102が3次元曲面を有する場合には、当該曲面に機能シート103を貼り付けることが困難である。これに対して、前記製造方法によれば、樹脂成形体2の射出成形時の熱及び圧力によりベースフィルム3や導電回路4などの各部材自体も伸びるので、シワを発生させることなく、それらを容易に3次元曲面に一体化させることができる。
【0045】
また、前記製造方法によれば、コネクタ収納空間S1を設けるようにしているので、リード7の他端部7Bにコネクタ8を接続したまま、樹脂成形体2を射出成形することができる。
【0046】
なお、前記では、コネクタ8を収納するための凹部を第2金型T2と第3金型T3の2箇所に設けたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2金型T2又は第3金型T3のいずれか一方にコネクタ収納用凹部を設けるようにしてもよい。
【0047】
次に、導電回路一体化成形品の前記とは別の製造方法について説明する。図5A及び図5Bは、本第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品の製造方法の他の例を模式的に示す断面図である。
【0048】
ここでは、射出成形用金型として第1金型T1及び第2金型T4の2つの金型を用い、さらに傾斜ピンP1を用いる。第2金型T4には、傾斜ピンP1が摺動可能な傾斜穴T4aが設けられている。傾斜穴T4aは、第2金型T4のキャビティ面T4cに対して傾斜するように形成されている。傾斜ピンP1には、コネクタ8を収納可能なコネクタ収納用凹部P1aが形成されている。また、第2金型T4には、ベースフィルム3を第2金型T4のキャビティ面T4cに吸着保持するための複数の吸引穴T4bが設けられている。各吸引穴T4bは、吸引溝(図示せず)によりそれぞれ連結されている。なお、第1金型T1と第2金型T4とは、いずれが固定型(又は可動型)であってもよい。
【0049】
また、ここでは、ベースフィルム3上に導電回路4が形成され、当該導電回路4上に接着剤5があらかじめ形成されているものとする。また、導電回路4の端部の一部には、異方導電性接着剤6によりリード7の端子部7dがあらかじめ電気的に接続されているものとする。また、リード7の他端部7Bには、あらかじめコネクタ8が接続されているものとする。
【0050】
まず、図5Aに示すように、第1金型T1のキャビティ面T1aに意匠パターン層1を配置するとともに、第2金型T4のキャビティ面T4cに、導電回路4側が意匠パターン層1と対向するようにベースフィルム3を配置する。
【0051】
次いで、図示しない吸引装置により、第2金型T4の吸引穴T4b及び吸引溝を通じてベースフィルム3を吸引し、ベースフィルム3を第2金型T4のキャビティ面T4cにしっかりと吸着保持する。このとき、傾斜ピンP1は、第1金型T1側に突出し、コネクタ8は、傾斜ピンP1のコネクタ収納用凹部P1a内に位置するようにする。
【0052】
次いで、図5Aの矢印の方向に、傾斜ピンP1を第2金型T4の傾斜穴T4a内で摺動させる。これにより、図5Bに示すように、傾斜ピンP1の頂面P1bを第2金型T4のキャビティ面T4cと面一にする。このとき、リード7は、傾斜ピンP1の摺動に伴って引っ張られるので、第2金型T4のキャビティ面T4c上に密着する。
【0053】
なお、このとき、リード7の一部は、図5Bに示すように、第2金型T4と傾斜ピンP1との間で挟持されることになる。このため、リード7が破断等されることがないように、第2金型T4と傾斜ピンP1との間にリード7の厚み分の隙間を設けておくことが好ましい。また、リード7と接触する傾斜ピンP1の先端部P1cの角度θは、直角又は鋭角であることが好ましい。これにより、リード7が破断等することを抑えることができる。これに対して、角度θを鈍角にすると、第2金型T4と傾斜ピンP1とに挟まれるリード7は、鋭角に折り曲げられることになり、破断等する可能性がある。
【0054】
次いで、第1金型T1及び第2金型T4を型閉じしたときにそれらの間に形成されたキャビティ空間S3内に、PCやアクリル樹脂などの溶融樹脂を流し込んで、樹脂成形体2を射出成形する。これにより、図2に示す本第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品が製造される。
【0055】
なお、前記では、コネクタ8を収納するための凹部を傾斜ピンP1に設けたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2金型T4にコネクタ収納用凹部を設けるようにしてもよい。また、傾斜ピンP1と第2金型T4の両方にコネクタ収納用凹部を設けるようにしてもよい。
【0056】
なお、本発明は前記第1実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、前記では、図2又は図3に示すように、導電回路4とリード7の端子部7dとの接続部の近傍でリード7を折り曲げて、ベースフィルム3の切欠部3aを通じて樹脂成形体2の外部に引き出すようにしたが、本発明はこれに限定されない。
【0057】
例えば、図6A及び図6Bに示すように、切欠部3aに代えてベースフィルム3にスリット3bを設けて、リード7がスリット3bを通るように構成してもよい。
【0058】
また、例えば、樹脂成形体2とリード7に用いる材料の組合せによっては、樹脂成形体2とリード7との接着力が低く、リード7の剥離を十分に抑えることができない場合が有り得る。このため、図7A及び図7Bに示すように、樹脂成形体2中に存在するリード7の一端部7Aの長さを長くすることが好ましい。これにより、リード7と樹脂成形体2との接着力を強固にすることができる。また、図8A及び図8Bに示すように、ベースフィルム3には切欠部3aを設けず、ベースフィルム3の側方に突出した部分を有するようにリード7を設けてもよい。なお、導電回路4とリード7との接続部を除いたリード7の樹脂成形体2内での埋め込み長さは、1mm以上(例えば、3mm〜5mm)確保することが好ましい。これにより、樹脂成形体2とリード7に用いる材料の影響を受けずに、樹脂成形体2とリード7との接着力を十分に確保することができる。
【0059】
また、図9A及び図9Bに示すように、リード7に厚み方向に貫通する少なくとも1つの貫通穴7eを設けて、当該貫通穴7eに樹脂成形体2の一部が充填されるようにしてもよい。これにより、樹脂成形体2とリード7との接着力をより強固にすることができる。
【0060】
また、図10A及び図10Bに示すように、リード7の側縁部に少なくとも1つの凹部7fを設けて、当該凹部7fに樹脂成形体2の一部が充填されるようにしてもよい。これにより、樹脂成形体2とリード7との接着力をより強固にすることができる。
【0061】
また、図11A及び図11Bに示すように、リード7の側縁部の一部を折り曲げて、当該折り曲げ部7gが樹脂成形体2に食い込むように構成してもよい。これにより、樹脂成形体2とリード7との接着力をより強固にすることができる。
【0062】
なお、本第1実施形態では、導電回路4と樹脂成形体2との間に接着剤5を設けたが本発明はこれに限定されない。例えば、樹脂成形体2及びベースフィルム3にポリカーボネートを用いた場合には、互いの接着性が良いので、接着剤5を設ける必要性を無くすことができる。
【0063】
また、本第1実施形態では、意匠パターン層1を設けたが、意匠パターン層1は必ずしも設ける必要はない。
【0064】
《第2実施形態》
本発明の第2実施形態にかかる導電回路一体化成形品の構造について、図12〜図13を用いて説明する。図12は、本第2実施形態にかかる導電回路一体化成形品の構造を模式的に示す断面図である。図13は、図12の導電回路一体化成形品におけるベースフィルムと導電回路とリードの位置関係を模式的に示す平面図である。
【0065】
本第2実施形態において、リード7の他端部7Bは、コネクタ8と接続されず、樹脂成形体2の内表面に対して面一になるように配置されている。また、リード7は、絶縁体7cを備えておらず、リード7の他端部7Bの導体部7bは外部に露出している。本第2実施形態においては、この導体部7bの露出部分が外部装置と接続するための端子部となる。
【0066】
図12及び図13に示すように、リード7のベースフィルム7aには、粘着テープ9が貼り付けられている。粘着テープ9は、ベースフィルム9a上に粘着剤9bを形成した構造を有している。ベースフィルム7aの周囲に位置する粘着テープ9の一部は、樹脂成形体2の内表面に対して面一になっており、外部に露出している。
【0067】
なお、粘着テープ9の粘着剤9bが外部に露出し、当該粘着剤9bの粘着性により取扱い性等が低下する場合には、外部に露出する粘着剤9b上にシリカなどの微粉末を付着させるとよい。これにより、粘着剤9bの粘着性を無くすことができる。
【0068】
なお、リード7のベースフィルム7aは、樹脂成形体2と密着性の高い材料が用いられることが好ましい。また、リード7と樹脂成形体2との接着力を向上させるために、リード7のベースフィルム7a上に別途接着剤を形成してもよい。
【0069】
上記以外の点については、前記第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0070】
次に、本第2実施形態にかかる導電回路一体化成形品の製造方法について説明する。図14A及び図14Bは、本第2実施形態にかかる導電回路一体化成形品の製造方法の一例を模式的に示す断面図である。図15は、図14AのC1−C1線断面図である。
【0071】
ここでは、射出成形用金型として第1金型T5及び第2金型T6の2つの金型を用いる。また、第2金型T6には、ベースフィルム3を第2金型T6のキャビティ面T6bに吸着保持するための複数の吸引穴T6aが設けられている。各吸引穴T6bは、吸引溝(図示せず)によりそれぞれ連結されている。なお、第1金型T5と第2金型T6とは、いずれが固定型(又は可動型)であってもよい。
【0072】
また、ここでは、ベースフィルム3上に導電回路4が形成され、当該導電回路4上に接着剤5があらかじめ形成されているものとする。また、導電回路4の端部の一部には、異方導電性接着剤6によりリード7の端子部7dがあらかじめ電気的に接続されているものとする。
【0073】
まず、図14Aに示すように、第2金型T6のキャビティ面T6bに、導電回路4側が外部に露出するようにベースフィルム3を配置する。
【0074】
次いで、図示しない吸引装置により、第2金型T6の吸引穴T6a及び吸引溝を通じてベースフィルム3を吸引し、ベースフィルム3を第2金型T6のキャビティ面T6bにしっかりと吸着保持する。
【0075】
次いで、図13に示すように、ベースフィルム3の切欠部3aを覆うように粘着テープ9を貼り付ける。これにより、粘着テープ9は、リード7のベースフィルム7a上に貼り付けられるとともに、ベースフィルム7aの周囲に位置する第2金型T6のキャビティ面T6bに貼り付けられる。
【0076】
次いで、図14Bに示すように、意匠パターン層1を配置した第1金型T5と第2金型T6とを型閉じし、第1金型T5と第2金型T6との間に形成されたキャビティ空間S4内に、ポリカーボネートやアクリル樹脂などの溶融樹脂を流し込んで、樹脂成形体2を射出成形する。これにより、図12に示す本第2実施形態にかかる導電回路一体化成形品が製造される。
【0077】
本第2実施形態にかかる導電回路一体化成形品によれば、外部装置と接続するためのリード7の端子部を樹脂成形体2の内表面に沿って設けることができる。これにより、用途に応じて本第1実施形態にかかる導電回路一体化成形品と本第2実施形態にかかる導電回路一体化成形品とを使い分けることが可能になり、使い勝手を向上させることができる。
【0078】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明にかかる導電回路成形同時一体化成形品は、部品点数及び製造工程を増加させることなく、リードの剥がれや破断、導電回路の腐食を防止することができるので、車載用のオーディオ機器やエアコン機器の表示パネル、携帯電話のウインドウパネル、パソコンのディスプレイやマウス、各種家庭用機器の操作パネルやリモコン、ゲーム機器のディスプレイなどに使用される、意匠パターンと静電センサーフィルムとが一体化されたパネル、及びその製造方法等として有用である。
【符号の説明】
【0080】
1 意匠パターン層
2 樹脂成形体
3 ベースフィルム
4 導電回路
5 接着剤
6 異方導電性接着剤
7 リード
7a ベースフィルム
7b 導体部
7c 絶縁体
7d 端子部
7e 貫通穴
7f 凹部
7g 折り曲げ部
8 コネクタ
9 粘着テープ
9a ベースフィルム
9b 粘着剤
T1,T5 第1金型
T2,T4,T6 第2金型
T3 第3金型
S1〜S4 空間
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形体と、
前記樹脂成形体内に、前記樹脂成形体の一面に対して面一になるように埋め込まれたベースフィルムと、
前記樹脂成形体と前記ベースフィルムとの間に配置された導電回路と、
前記導電回路を外部装置に電気的に接続するための帯状のリードと、
を有し、
前記リードの一端部は、前記樹脂成形体内に埋め込まれた状態で前記導電回路の一部と電気的に接続され、
前記リードの他端部は、前記樹脂成形体の外部に露出している、
導電回路一体化成形品。
【請求項2】
前記導電回路は、静電センサパターン又はアンテナパターンである、請求項1に記載の導電回路一体化成形品。
【請求項3】
前記リードの他端部は、前記ベースフィルムを貫通して外部に露出している、請求項1又は2に記載の導電回路一体化成形品。
【請求項4】
前記リードの他端部は、前記樹脂成形体の一面に対して面一になるように前記樹脂成形体内に埋め込まれている、請求項1又は2に記載の導電回路一体化成形品。
【請求項5】
前記リードの一端部には、前記リードの厚み方向に貫通する貫通孔が形成され、
前記樹脂成形体の一部が、前記貫通孔に充填されている、
請求項1〜4のいずれか1つに記載の導電回路一体化成形品。
【請求項6】
前記リードの一端部の側縁部には、凹部が形成され、
前記樹脂成形体の一部が、前記凹部に入り込んでいる、
請求項1〜4のいずれか1つに記載の導電回路一体化成形品。
【請求項7】
前記リードの一端部の側縁部の一部は、前記樹脂成形体に食い込むように折り曲げられている、請求項1〜4のいずれか1つに記載の導電回路一体化成形品。
【請求項8】
帯状のリードの一端部と電気的に接続された導電回路が形成されたベースフィルムを射出成形用金型のキャビティ面に配置した後、前記金型のキャビティ空間内に溶融樹脂を射出して、樹脂成形体を射出成形すると同時に、前記樹脂成形体内に前記導電回路及び前記リードの一端部を埋め込むとともに前記リードの他端部が前記樹脂成形体の外部に露出するように前記樹脂成形体の表面に前記ベースフィルムを形成すること含む、導電回路一体化成形品の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂成形体を射出成形する前に、前記リードの他端部に接続されたコネクタを、前記キャビティ空間から離して前記金型内に設けたコネクタ収納空間内に配置する、請求項8に記載の導電回路一体化成形品の製造方法。
【請求項10】
前記樹脂成形体を射出成形する前に、前記リードの他端部に接続されたコネクタを、前記キャビティ面に対して傾斜する方向に前記金型を貫通して摺動可能な傾斜ピン又は前記金型の前記傾斜ピンと接触する部分の少なくとも一方に設けたコネクタ収納用凹部内に配置し、その後、前記傾斜ピンの頂面が前記キャビティ面に対して面一になるように前記傾斜ピンを摺動させて前記コネクタを前記キャビティ空間から遠ざける、請求項8に記載の導電回路一体化成形品の製造方法。
【請求項11】
前記樹脂成形体を射出成形する前に、粘着テープにより前記リードの他端部を前記キャビティ面に貼り付ける、請求項8に記載の導電回路一体化成形品の製造方法。
【請求項1】
樹脂成形体と、
前記樹脂成形体内に、前記樹脂成形体の一面に対して面一になるように埋め込まれたベースフィルムと、
前記樹脂成形体と前記ベースフィルムとの間に配置された導電回路と、
前記導電回路を外部装置に電気的に接続するための帯状のリードと、
を有し、
前記リードの一端部は、前記樹脂成形体内に埋め込まれた状態で前記導電回路の一部と電気的に接続され、
前記リードの他端部は、前記樹脂成形体の外部に露出している、
導電回路一体化成形品。
【請求項2】
前記導電回路は、静電センサパターン又はアンテナパターンである、請求項1に記載の導電回路一体化成形品。
【請求項3】
前記リードの他端部は、前記ベースフィルムを貫通して外部に露出している、請求項1又は2に記載の導電回路一体化成形品。
【請求項4】
前記リードの他端部は、前記樹脂成形体の一面に対して面一になるように前記樹脂成形体内に埋め込まれている、請求項1又は2に記載の導電回路一体化成形品。
【請求項5】
前記リードの一端部には、前記リードの厚み方向に貫通する貫通孔が形成され、
前記樹脂成形体の一部が、前記貫通孔に充填されている、
請求項1〜4のいずれか1つに記載の導電回路一体化成形品。
【請求項6】
前記リードの一端部の側縁部には、凹部が形成され、
前記樹脂成形体の一部が、前記凹部に入り込んでいる、
請求項1〜4のいずれか1つに記載の導電回路一体化成形品。
【請求項7】
前記リードの一端部の側縁部の一部は、前記樹脂成形体に食い込むように折り曲げられている、請求項1〜4のいずれか1つに記載の導電回路一体化成形品。
【請求項8】
帯状のリードの一端部と電気的に接続された導電回路が形成されたベースフィルムを射出成形用金型のキャビティ面に配置した後、前記金型のキャビティ空間内に溶融樹脂を射出して、樹脂成形体を射出成形すると同時に、前記樹脂成形体内に前記導電回路及び前記リードの一端部を埋め込むとともに前記リードの他端部が前記樹脂成形体の外部に露出するように前記樹脂成形体の表面に前記ベースフィルムを形成すること含む、導電回路一体化成形品の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂成形体を射出成形する前に、前記リードの他端部に接続されたコネクタを、前記キャビティ空間から離して前記金型内に設けたコネクタ収納空間内に配置する、請求項8に記載の導電回路一体化成形品の製造方法。
【請求項10】
前記樹脂成形体を射出成形する前に、前記リードの他端部に接続されたコネクタを、前記キャビティ面に対して傾斜する方向に前記金型を貫通して摺動可能な傾斜ピン又は前記金型の前記傾斜ピンと接触する部分の少なくとも一方に設けたコネクタ収納用凹部内に配置し、その後、前記傾斜ピンの頂面が前記キャビティ面に対して面一になるように前記傾斜ピンを摺動させて前記コネクタを前記キャビティ空間から遠ざける、請求項8に記載の導電回路一体化成形品の製造方法。
【請求項11】
前記樹脂成形体を射出成形する前に、粘着テープにより前記リードの他端部を前記キャビティ面に貼り付ける、請求項8に記載の導電回路一体化成形品の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−11691(P2012−11691A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−151141(P2010−151141)
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】
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