説明

導電性、ガスバリア性及び耐熱性に優れたポリアミド樹脂組成物

【課題】導電性とガスバリア性、耐熱性の優れるポリアミド樹脂組成物を提供する。
【解決手段】メタキシリレンジアミンを30モル%以上含み、任意にパラキシリレンを含むジアミンジアミン成分と、アジピン酸もしくはセバシン酸等の炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に、任意にイソフタル酸を含むジカルボン酸成分とを重縮合して得られるポリアミド(A)と導電性物質(B)を含む、体積抵抗率が10Ω・cm以下であるポリアミド樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性、ガスバリア性及び耐熱性に優れたポリアミド樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、強度、剛性、耐溶剤性、成形性などの特性が優れることから、自動車や電気電子部品などの射出成形材料や、食品、飲料、薬品、電子部品等の包装資材として使用されている。中でも、ポリマー主鎖にメタキシレン基を含有するポリアミドは、剛性が高く、各種ガスや薬品などに対するバリア性も優れていることから、射出成形材料や包装資材として広く用いられている。
【0003】
また、電池用電極やセパレータ用途などに樹脂の利用が検討されており、導電性を有する樹脂が求められている。近年では導電性のみならず、ガスバリア性と耐熱性を兼ね備えた導電性を有する樹脂が要求されている。
【0004】
導電性樹脂を用いた電池用セパレータとして、ポリプロピレン等を用いたセパレータが開示されている(特許文献1参照)が、この方法では耐熱性やガスバリア性が不足していた。
【0005】
導電性樹脂を用いた電池用電極とポリアミド等と導電性繊維を含有する電極が開示されている(特許文献2参照)。実施例で開示された方法では耐熱性やガスバリア性が不足していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−18850号公報
【特許文献2】特開2006−37001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記課題を解決し、導電性とガスバリア性、耐熱性の優れるポリアミド樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、メタキシリレンジアミンを30モル%以上含むジアミン成分とジカルボン酸成分とを重縮合して得られるポリアミド(A)と導電性物質(B)を含む、体積抵抗率が10Ω・cm以下であるポリアミド樹脂組成物が、上記課題を解決することを見出した。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、導電性とガスバリア性、耐熱性に優れたものであり、それを用いてなる成形品は、導電性とガスバリア性、耐熱性が要求される電池用部品等に利用でき、その工業的価値は非常に高い。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、メタキシリレンジアミンを30モル%以上含むジアミン成分とジカルボン酸成分とを重縮合して得られるポリアミド(A)と、導電性物質(B)を含み、体積抵抗率が10Ω・cm以下である。
【0011】
本発明で使用するポリアミド(A)は、メタキシリレンジアミンを30モル%以上、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上含むポリアミドである。ポリアミド(A)はバリア性が良好であり、高湿度下でのガスバリア性も良好である。ポリアミド(A)としては、例えば、メタキシリレンジアミンを主成分とするジアミン成分と各種ジカルボン酸成分を重縮合することにより得られるポリアミド等が挙げられる。これらのポリアミドは、ホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。ポリアミド(A)は、バリア性能が高く、耐熱性、成形加工性が良好である。ポリアミド(A)は、一種類もしくは複数の樹脂をブレンドして使用することができる。
【0012】
ポリアミド(A)の製造に使用できるメタキシリレンジアミン以外のジアミン成分としては、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、2−メチルペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノメチル)デカリン、ビス(アミノメチル)トリシクロデカン等の脂環族ジアミン;ビス(4−アミノフェニル)エーテル、パラフェニレンジアミン、パラキシリレンジアミン、ビス(アミノメチル)ナフタレン等の芳香環を有するジアミン類等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
ポリアミド(A)の製造に使用できるジカルボン酸成分としては、例えばコハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類などを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
ジアミン成分、ジカルボン酸成分以外にも、ポリアミド樹脂組成物を構成する成分として、本発明の効果を損なわない範囲でε−カプロラクタムやラウロラクタム等のラクタム類、アミノカプロン酸、アミノウンデカン酸等の脂肪族アミノカルボン酸類も共重合成分として使用できる。
【0015】
本発明で利用できるポリアミド(A)として、たとえば、ポリメタキシリレンイソフタラミド(PA−MXDI)、カプロラクタム/メタキシリレンイソフタラミドコポリマー(PA−6/MXDI)などを例示できる。
【0016】
本発明で好ましく利用できるポリアミド(A)として、上記以外に、メタキシリレンジアミンを含むジアミン成分と、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸を主成分とするジカルボン酸成分とを重縮合することにより得られるポリアミドが挙げられる。炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸としては、例えばコハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸が例示できるが、これら中でもアジピン酸とセバシン酸が好ましい。
【0017】
本発明で好ましく利用できるポリアミド(A)として、メタキシリレンジアミンを30モル%以上、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上含むジアミン成分と、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸を50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上含むジカルボン酸成分とを重縮合して得られるポリアミドを例示できる。
【0018】
このようなポリアミドとして、主としてメタキシリレンジアミンとアジピン酸とを重縮合して得られるポリアミド、主としてメタキシリレンジアミンとセバシン酸とを重縮合して得られるポリアミド、主としてメタキシリレンジアミンとアジピン酸とセバシン酸とを重縮合して得られるポリアミド等が例示される。
ジカルボン酸成分としてアジピン酸とセバシン酸との混合物を使用することで耐熱性やガスバリア性、結晶性を任意にコントロールできる。結晶性を低下させたい場合、あるいは非晶状態とする場合は、セバシン酸/アジピン酸比(モル比)が80/20〜30/70が好ましく、70/30〜40/60がより好ましい。ガスバリア性を重視する場合は、50/50以下が好ましく、40/60以下がより好ましく、30/70以下がさらに好ましい。耐熱性を重視する場合は、60/40以下が好ましく、40/60以下がより好ましく、30/70以下がさらに好ましい。
【0019】
また、本発明で好ましく利用できるポリアミド(A)として、主としてメタキシリレンジアミンとアジピン酸とを重縮合して得られるポリアミドと、主としてメタキシリレンジアミンとセバシン酸とを重縮合して得られるポリアミドの混合物を例示できる。主としてメタキシリレンジアミンとアジピン酸とを重縮合して得られるポリアミドと、主としてメタキシリレンジアミンとセバシン酸とを重縮合して得られるポリアミドを混合することで、結晶性を維持したまま、耐熱性やガスバリア性を任意にコントロールできる。ガスバリア性を重視する場合は、主としてメタキシリレンジアミンとセバシン酸とを重縮合して得られるポリアミド/主としてメタキシリレンジアミンとアジピン酸とを重縮合して得られるポリアミド比が50/50以下が好ましく、40/60以下がより好ましく、30/70以下がさらに好ましい。
【0020】
本発明で好ましく利用できるポリアミド(A)として、メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分と、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上、及びイソフタル酸を1〜30モル%含むジカルボン酸成分とを重縮合して得られるポリアミドを例示できる。ジカルボン酸成分としてイソフタル酸を加えることで、成形加工性、耐熱性を向上させることができる。
【0021】
また、ジアミン成分として、メタキシリレンジアミンにパラキシリレンジアミンを加えることで、ポリアミド樹脂(A)の融点やガラス転移点、耐熱性を向上させることができる。パラキシリレンジアミンは、ジアミン成分の70モル%を超えない範囲であれば、任意の割合で添加して耐熱性、バリア性や成型加工性をコントロールすることができる。好適なポリアミド(A)としては、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンを含み、メタキシリレンジアミンが30モル%以上であるジアミン成分と、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸を50モル%以上含むジカルボン酸成分とを重縮合して得られるポリアミドが例示される。
【0022】
ポリアミド(A)の製造方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法、重合条件により製造される。ポリアミドの重縮合時に分子量調節剤として少量のモノアミン、モノカルボン酸を加えてもよい。例えば、メタキシリレンジアミンとアジピン酸からなるナイロン塩を水の存在下に、加圧状態で昇温し、加えた水及び縮合水を除きながら溶融状態で重合させる方法により製造される。また、メタキシリレンジアミンを溶融状態のアジピン酸に直接加えて、常圧下で重縮合する方法によっても製造される。この場合、反応系を均一な液状状態で保つために、メタキシリレンジアミンをアジピン酸に連続的に加え、その間、反応温度が生成するオリゴアミド及びポリアミドの融点よりも下回らないように反応系を昇温しつつ、重縮合が進められる。
【0023】
また、ポリアミド(A)は、溶融重合法により製造された後に、固相重合を行っても良い。ポリアミド(A)の製造方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法、重合条件により製造される。
【0024】
ポリアミド(A)の数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定によるPMMA(ポリメタクリル酸メチル)換算値として、18000〜70000が好ましく、より好ましくは、20000〜50000である。この範囲であると、耐熱性、成形加工性が良好である。
【0025】
ポリアミド(A)の融点は、150〜300℃が好ましい。この範囲であると、導電性物質(B)と混合したときの樹脂の押出機中での融解が容易となり、生産性、成形加工性が良好となる。
【0026】
ポリアミド(A)のガラス転移点(Tg)は、55〜100℃が好ましく、より好ましくは60〜100℃、さらに好ましくは70〜100℃である。この範囲であると、耐熱性が良好である。
【0027】
なお、融点、ガラス転移点は、DSC(示差走査熱量測定)法により測定できる。測定には、例えば、島津製作所(株)製DSC−50を用い、サンプル量は約5mgとし、昇温速度は10℃/分の条件で室温から300℃まで加熱して測定することができる。雰囲気ガスは窒素を30ml/minで流した。ガラス転移点としては、いわゆる中点温度(Tgm)を採用した。なお、Tgmとは広く知られているように、DSC曲線において、ガラス状態ならびに過冷却状態(ゴム状態)のベースラインの接線と転移のスロープの接線との交点の中点温度である。
【0028】
ポリアミド(A)には、溶融成形時の加工安定性を高めるため、あるいはポリアミド(A)の着色を防止するためにリン化合物を添加することができる。リン化合物としてはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含むリン化合物が好適に使用され、例えば、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属のリン酸塩、次亜リン酸塩、亜リン酸塩が挙げられるが、特にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の次亜リン酸塩を使用したものがポリアミドの着色防止効果に特に優れるため好ましく用いられる。リン化合物の濃度はリン原子として1〜500ppm、好ましくは1〜350ppm、更に好ましくは1〜200ppmである。
【0029】
本発明のポリアミド樹脂組成物はポリアミド以外の構成成分として導電性物質(B)を含有する。導電性物質(B)としてカーボンブラック、グラファイト、アモルファスカーボン粉末、天然黒鉛粉末、人造黒鉛粉末、カーボン繊維、カーボンナノチューブ、カーボンファイバーの粉砕品、中空炭素フィブリル、銅、ニッケル、亜鉛、アルミ等の金属粉又は金属繊維、金属酸化物、導電性物質で被覆された無機又は有機化合物、イオン性や非イオン性の界面活性剤、高分子帯電防止剤などが挙げられる。中でも、カーボンブラック、グラファイト及びカーボン繊維が好ましい。これらの導電性物質は、単独でも2種以上の組合せでも良い。
【0030】
カーボンブラックとしては、アセチレンカーボンブラック、ケッチェンブラック、オイルファーネス法によるカーボンブラック等が例示されるが、これらに限定されない。
【0031】
導電性物質(B)の配合量はポリアミド(A)100重量部に対して5〜80重量部であることが好ましい。より好ましくは10〜60重量部、さらに好ましくは15〜40重量部である。上記範囲であると、導電性が良好であり、成形性も良好である。
【0032】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、体積抵抗率が10Ω・cm以下であり、好ましくは10Ω・cm以下である。
【0033】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、無機充填材を含んでも良い。無機充填材を用いることによって、成形品の剛性、寸法安定性を向上させることができる。無機充填材は、繊維状、粉末状、粒状、板状、クロス状、マット状を有する種々の充填材であり、たとえば、ガラス繊維、タルク、カタルボ、珪藻土、クレー、カオリン、マイカ、粒状ガラス、ガラスフレーク、中空ガラス等公知の物質を用いることができる。
【0034】
本発明のポリアミド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、艶消剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、核剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤、着色剤、離型剤等の添加剤等を加えることができる。
【0035】
また、本発明のポリアミド樹脂組成物には、目的を損なわない範囲で、ポリアミド(A)以外のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート等の樹脂を一種もしくは複数ブレンドできる。
【0036】
中でも、ポリアミド(A)以外のポリアミドを好ましくブレンドでき、より好ましくは、脂肪族ポリアミド樹脂をブレンドできる。脂肪族ポリアミド樹脂は、成形品の機械物性を改善できることから好ましく用いられる。脂肪族ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612ナイロン666等を単独又は複数以上を使用することができる。
【0037】
本発明のポリアミド樹脂組成物を利用してなる成形品は、導電性とガスバリア性、耐熱性を兼ね備えており、各種部品等に利用でき好ましい。特に、ポリアミド樹脂組成物を利用してなる成形品が、電池用電極又はセパレータとして好ましく使用できる。
【0038】
本発明のポリアミド樹脂組成物は、23℃、75%RHにおける酸素透過係数が1cc・mm/m・day・atm以下であることが好ましく、より好ましくは0.7cc・mm/m・day・atm以下、さらに好ましくは、0.5cc・mm/m・day・atm以下である。酸素透過係数がこの範囲であると、各種ガスに対するバリア性が良好である。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本実施例において各種測定は以下の方法により行った。
【0040】
(1)ガスバリア性
23℃、75%RHの雰囲気下にてJIS K7126に準じてフィルムの酸素透過係数(cc・mm/m・day・atm)を測定した。測定は、モダンコントロールズ社製、OX−TRAN2/21を使用した。値が低いほどガスバリア性が良好であることを示す。
【0041】
(2)導電性
JIS K7149に基づき体積抵抗率(Ω・cm)を求めた。体積抵抗率が低いほど導電性が良好であることを示す。測定には、三菱油化製ロレスター APを用いた。
【0042】
(3)ポリアミドの融点、ガラス転移点
島津製DSC−60を用いて、示差走査熱量測定(DSC)により求めた。測定条件は、約5mgのサンプルを10℃/minの条件で昇温し、300℃に到達した時点で急冷し、再び10℃/minの条件で昇温した。
【0043】
(4)数平均分子量
東ソー製HLC−8320GPCを用いて、GPC測定によりPMMA換算値を求めた。なお、測定用カラムはTSKgel SuperHM−Hを用い、溶媒にはトリフルオロ酢酸ナトリウムを10mmol/l溶解したヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を用い、測定温度は40℃にて測定した。また、検量線は6水準のPMMAをHFIPに溶解させて測定し作成した。
【0044】
<製造例1>
(ポリアミド(A1)の合成)
反応缶内でセバシン酸(伊藤製油製TAグレード)を170℃にて加熱し溶融した後、内容物を攪拌しながら、メタキシリレンジアミン(三菱ガス化学(株)製)をセバシン酸とのモル比が1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を240℃まで上昇させた。滴下終了後、260℃まで昇温した。反応終了後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化した。得られたペレットをタンブラーに仕込み、減圧下で固相重合し、分子量を調整したポリアミド(A1)を得た。
ポリアミド(A1)の融点は191℃、ガラス転移点は60℃、数平均分子量は30000、酸素透過係数は0.6cc・mm/m・day・atmであった。
【0045】
<製造例2>
(ポリアミド(A2)の合成)
アジピン酸(ローディア製)を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を攪拌しながら、パラキシリレンジアミン(三菱ガス化学(株)製)とメタキシリレンジアミンのモル比が3:7の混合ジアミンを、ジアミンとジカルボン酸とのモル比が1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を上昇させた。滴下終了後、所定の粘度になるまで攪拌、反応を続けた後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化し、ポリアミド(A2)を得た。ポリアミド(A2)の融点は258℃、ガラス転移点は89℃、数平均分子量は25000、酸素透過係数は0.15cc・mm/m・day・atmであった。
【0046】
<製造例3>
(ポリアミド(A3)の合成)
アジピン酸の代わりにセバシン酸を用いた以外は製造例2と同様にして、ポリアミド(A3)を合成した。ポリアミド(A3)の融点は215℃、ガラス転移点は60℃、数平均分子量は19000、酸素透過係数は0.8cc・mm/m・day・atmであった。
【0047】
<製造例4>
(ポリアミド(A4)の合成)
パラキシリレンジアミンとメタキシリレンジアミンのモル比が6:4の混合ジアミンを用いた以外は製造例2と同様にして、ポリアミド(A4)を合成した。ポリアミド(A4)の融点は288℃、ガラス転移点は93℃、数平均分子量は21000、酸素透過係数は0.2cc・mm/m・day・atmであった。
【0048】
<製造例5>
(ポリアミド(A5)の合成)
アジピン酸とイソフタル酸(エイ・ジイ・インタナショナル・ケミカル(株)製)のモル比が9:1の混合ジカルボン酸を窒素雰囲気下の反応缶内で加熱溶解した後、内容物を攪拌しながら、メタキシリレンジアミンを、ジアミンとジカルボン酸とのモル比が1:1になるように徐々に滴下しながら、温度を上昇させた。滴下終了後、所定の粘度になるまで攪拌、反応を続けた後、内容物をストランド状に取り出し、ペレタイザーにてペレット化した。得られたペレットをタンブラーに仕込み、減圧下で固相重合し、分子量を調整したポリアミド(A5)を得た。
ポリアミド(A5)の融点は226℃、ガラス転移点は94℃、数平均分子量は48000、酸素透過係数は0.1cc・mm/m・day・atmであった。
【0049】
<製造例6>
(ポリアミド(A6)の合成)
セバシン酸の代わりに、セバシン酸とアジピン酸のモル比が4:6の混合ジカルボン酸を用いた以外は製造例1と同様にしてポリアミド(A6)を合成した。ポリアミド(A6)の融点は185℃、ガラス転移点は75℃、数平均分子量は35000、酸素透過係数は0.7cc・mm/m・day・atmであった。
【0050】
<マスターバッチ製造例1>
アジピン酸とメタキシリレンジアミンからなるポリアミド(三菱ガス化学(株)製MXナイロン グレード6000)とグラファイト(日本黒鉛社製天然鱗片状黒鉛 グレード特CP)を二軸押出機で溶融混練してペレット化し、グラファイトを40重量%含有するポリアミドマスターバッチ(MB1)を得た。
【0051】
<マスターバッチ製造例2>
アジピン酸とメタキシリレンジアミンからなるポリアミド(三菱ガス化学(株)製MXナイロン グレード6000)とカーボンブラック(キャボット社製バルカンXC)を二軸押出機で溶融混練してペレット化し、バルカンを30重量%含有するポリアミドマスターバッチ(MB2)を得た。
【0052】
<マスターバッチ製造例3>
ポリアミドA1(<製造例1>)とケッチェンブラック(ライオン社製 グレードEC600JD)を二軸押出機で溶融混練してペレット化し、ケッチェンブラックを35重量%含有するポリアミドマスターバッチ(MB3)を得た。
【0053】
<実施例1>
アジピン酸とメタキシリレンジアミンからなるポリアミド(三菱ガス化学(株)製MXナイロン グレードS6007)とMB1、MB2をドライブレンドし、30mmφのスクリューとTダイを備える二軸押出機にて押出成形し、100μm厚のフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0054】
<実施例2〜9>
ポリアミド樹脂組成物を表1記載のものとした以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0055】
<比較例1>
ポリアミド樹脂組成物を表1記載のものとした以外は、実施例1と同様にしてフィルムを得た。評価結果を表1に示す。
【0056】
尚、表1記載の略号は以下の通りである。
A1:製造例1で得られたポリアミド(A1)
A2:製造例2で得られたポリアミド(A2)
A3:製造例3で得られたポリアミド(A3)
A4:製造例4で得られたポリアミド(A4)
A5:製造例5で得られたポリアミド(A5)
A6:製造例6で得られたポリアミド(A6)
MB1:マスターバッチ製造例1で得られたポリアミドマスターバッチ(MB1)
MB2:マスターバッチ製造例1で得られたポリアミドマスターバッチ(MB2)
MB3:マスターバッチ製造例1で得られたポリアミドマスターバッチ(MB3)
S6007:アジピン酸とメタキシリレンジアミンからなるポリアミド(三菱ガス化学(株)製MXナイロン グレードS6007)、融点は240℃、数平均分子量は45000であった。
【0057】
以上の実施例で示したように、ポリアミド(A)と導電性物質(B)を含むポリアミド樹脂組成物は、優れた導電性、バリア性、耐熱性を兼ね備えていた。
【0058】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタキシリレンジアミンを30モル%以上含むジアミン成分とジカルボン酸成分とを重縮合して得られるポリアミド(A)と導電性物質(B)を含む、体積抵抗率が10Ω・cm以下であるポリアミド樹脂組成物。
【請求項2】
ポリアミド(A)のガラス転移点Tgが55〜100℃である請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項3】
ポリアミド(A)の23℃、75%RHにおける酸素透過係数が1cc・mm/m・day・atm以下である請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項4】
ポリアミド(A)が、メタキシリレンジアミンを30モル%以上含むジアミン成分と、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸を50モル%以上含むジカルボン酸成分とを重縮合して得られるポリアミドである請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項5】
ポリアミド(A)が、メタキシリレンジアミンを70モル%以上含むジアミン成分と、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸を70モル%以上、及びイソフタル酸を1〜30モル%含むジカルボン酸成分とを重縮合して得られるポリアミドである請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項6】
ポリアミド(A)が、メタキシリレンジアミンとパラキシリレンジアミンを含み、メタキシリレンジアミンが30モル%以上であるジアミン成分と、炭素数4〜20のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸を50モル%以上含むジカルボン酸成分とを重縮合して得られるポリアミドである請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項7】
ポリアミド(A)が、主としてメタキシリレンジアミンとアジピン酸とを重縮合して得られるポリアミドである請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項8】
ポリアミド(A)が、主としてメタキシリレンジアミンとセバシン酸とを重縮合して得られるポリアミドである請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項9】
ポリアミド(A)が、主としてメタキシリレンジアミンとアジピン酸とセバシン酸とを重縮合して得られるポリアミドである請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項10】
ポリアミド(A)が、主としてメタキシリレンジアミンとアジピン酸とを重縮合して得られるポリアミドと、主としてメタキシリレンジアミンとセバシン酸とを重縮合して得られるポリアミドの混合物である請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を利用してなる成形品。
【請求項12】
成形品が電池用電極又はセパレータである請求項11記載の成形品。

【公開番号】特開2010−280873(P2010−280873A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137592(P2009−137592)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】